2019年05月31日

【若い目が見た沖縄】 米兵との「共存」に苦しむ女性 北海道支部・小村優さん報告

JCJは、30歳以下の若者を沖縄に派遣し、自由なテーマで取材してもらう「沖縄特派員」を今春、始めた。北海道支部の公募で選ばれた札幌の大学4年小村優さん(4月から赤旗記者)と北広島市の通訳、竹内章浩さんの報告を2回に分けてお届けする。
            ☆
新聞で沖縄と言えば基地問題だ。しかし、厚労省や沖縄県によると、沖縄の離婚率は2・59%と14年連続全国1位。全世帯に対する母子世帯出現率は5.46%で全国平均の2倍だ。ジェンダーの視点からは「強くなければ生きていけない」沖縄の女の問題が胸を衝く。

地元紙で驚いたのはお悔やみ欄だ。喪主だけでなく家族全員の氏名や、独立したとみられる子や孫、その配偶者、ひ孫、県外や海外の親類、友人代表まで載る。「長男嫁」「孫婿」などの続柄もつく。新聞社に「プライベートをさらし過ぎでは」と尋ねると「親しいのに名前を出さない方が失礼になる」との答えが返ってきた。故人と面識がなくても知人の親戚ならお参りする。おくやみ欄は、地域コミュニティの強さ、それを構成する「家」を重視する沖縄社会を象徴しているようだ。

その「家」で、位牌の継承には@父系の長男が引き継ぐA女性が引き継いではいけない、などの「決まり」がある(波平エリ子著「トートーメーの民俗学講座」)。家父長制の典型で、女性は、家とコミュニティを守る「土台」として、ひたすら働くことを求められる。火事、育児、仕立て屋の内職をこなしてきた那覇市内の親泊嘉子さん(84)は、家庭で男性のサポートは「期待薄」で「女の人は働いて、子供を産んで育てて。とにかく働き者でないとだめ」と話す。長男秀尚さん(56)も「基本、男は働かないからー」。

喜納育江琉球大学教授は「沖縄の女は強い、強くなければ沖縄の女ではないという前近代的な価値観が沖縄の女性を苦しめている」と見る。過重な家事労働やDX等から「家」を去る女性は少なくない。それが、離婚率などの高さに現れている。

しかし、待ち受けているのは貧困だ。非正規雇用率は全国で最も高い43,1%(2017年)で、その6割が女性。一人当たりの県民所得(15年)も216万6000円で最下位だ。観光中心の産業構造で、より高い収入を求めて水商売、風俗などで働く女性も多い。若年出産の多さはその反映でもある。

家やコミュニティから守られなくなった女性は、米軍基地と向き合うことになる。人を殺傷する訓練と実戦を続けている兵士との「共存」は沖縄の女性を否応なしに苦しめる。

「家の恥じ」をおそれ、表面化しない米兵による性暴力被害は少なくないといわれる。「日本の安全保障」と、二重の重荷を沖縄の女性たちは負わされている。

自分が無知と無関心という名の加害者であることを、思い知らされた特派員取材だった。

小村優

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
posted by JCJ at 13:31 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月25日

【編集長EYE】 欧州では外国軍占有空域はゼロ=橋詰雅博

 日本弁護士連合会(日弁連)が主催した「日米地位協定を検証する〜ドイツ・イタリアと比較して〜」と題するシンポジウムが5月11日に弁護士会館2階講堂で開かれた。当日は定員280人の講堂に約400人が参加。日弁連は「こんなに大勢くるとは予想していなかた」とうれしい悲鳴を上げていた。

 パネリストとして琉球新報の島袋良太記者や日弁連基地問題担当の福田護弁護士、沖縄弁護士会の松崎暁史弁護士らと共に沖縄県の池田竹州知事公室長も出席した。沖縄県は駐留米軍活動を対象としたドイツ、イタリア、ベルギー、イギリス4カ国の地位協定などを調査した報告書を4月に発表した。各国の取材をした池田さんは報告書作成の中心メンバーだ。

 欧州各国への調査動機について池田さんはこう語った。

 「2016年末の名護市でのオスプレイ墜落事故に続き翌年10月には東村高江でヘリ不時着炎上事故が起きた。しかし、日米地位協定により米軍が現場を封鎖し、県の事故調査は阻まれた。当時の翁長雄志知時が『日本の米軍専用施設は沖縄に70%集中しているが、残る30%は本土にある。米軍機事故は日本全体の問題。外国はどう対応しているか調査したい』と言ったのがきっかけでした。2年前から調査を開始した」

 日本では米軍が管制業務を行う空域があり、特に横田基地管制官が担当する横田空域は有名。新潟県から静岡県まで1都9県に及ぶ広大なエリアだ。欧州の事情はどうなっているのか。

 「航空関係機関のヒアリング調査では、横田空域のような外国軍が占有する空域の存在は確認できませんでした」(池田さん)

 池田さんによると、横田空域や沖縄周辺の20カ所に広がる米軍訓練空域の話を航空関係者にしたら「日本は本当に主権を回復しているのか」と驚いていたという。

 しかも4カ国とも、駐留米軍の活動に対して国内法を適用している。国内法が適用されない日本とは雲泥の差だ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
posted by JCJ at 12:33 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月18日

伊藤詩織さんにスラップ訴訟 山口氏側 1億3千万賠償を求める=編集部

レイプ疑惑事件で民事係争中の伊藤詩織さんと山口敬之・元ТBSワシントン支局長の訴訟で、被告山口氏側が1億3千万円の損害賠償と謝罪広告掲載などを求め、伊藤さんを反訴したことが明らかとなった。事件後、伊藤さんは様々なバッシングにさらされてきた。その中身はイギリスのBBCドキュメンタリー「日本の隠された恥」に余すところなく描かれた。反訴は明らかなスラップ訴訟。「恥を知れ」としか言いようがない。

 事件発生は2015年春。伊藤さんは数日後に準強姦容疑で告訴。翌16年6月に逮捕状も出たが山口氏逮捕は中村格警視庁刑事部長(当時)の執行停止命令で見送られた。同年7月、東京地検が嫌疑不十分で不起訴処分。伊藤さんの検察審査会への不服申し立ても17年秋、不起訴相当とされた。

刑事裁判での真相解明の道を閉ざされた伊藤さんは「望まない性行為」への民事訴訟を提起。同年暮れから民事に舞台が移ったが、第1回口頭弁論以降は弁論準備で非公開が続く中、今年2月に山口氏側の反訴が提起された。この反訴を受け、4月、市民らが立ち上がり、伊藤さんを「支援する会」も発足。事件の全容解明に迫る取り組みが再び燃え上がろうとしている。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
posted by JCJ at 08:18 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月08日

【沖縄リポート】 ジュゴンの死 環境省危機感のなさに唖然=浦島悦子

 3月18日、沖縄島北部西海岸の今帰仁村運天港にジュゴンの死体が漂着した。

 世界の分布の北限であり絶滅に瀕した沖縄のジュゴンは現在、辺野古新基地建設に伴って沖縄防衛局が行った環境アセスメントで3頭(A・B・C)が確認されている。基地建設工事の進捗とともに2015年6月以降、大浦湾(東海岸)を主な餌場としていた個体C(雌雄不明)が行方不明となり、また、少なくとも過去20年間、大浦湾に隣接する嘉陽海域に定住していた個体A(雄)も昨年10月以降、食み跡や姿が見えなくなった。

私もメンバーの一人である地元のジュゴン保護市民グループ(北限のジュゴン調査チーム・ザン、ジュゴンネットワーク沖縄)は沖縄ジュゴンの最大の危機と捉え、地元の活動を終始バックアップしてきた日本自然保護協会と連名で3月5日、「沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える緊急声明」を発し、基地建設の中止と広域調査の緊急実施を求めたばかりだった。

その時点で唯一確認され、繁殖の希望もあった個体B(雌。個体Cの母親であり、西海岸の古宇利島周辺を主な生息域とする)の死というあまりにもショックな出来事を受けて、私たちは4月16日、ジュゴンの保護に向けた緊急院内集会と環境省及び防衛省交渉を行った。

この20年来、地元でジュゴンの食み跡・食性調査を続けてきたジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎さんは、市民調査や防衛局によるアセス調査のデータを解析しながら、個体ごとの経緯や基地建設工事の影響は明らかであることを詳細に説明したが、防衛省は、A・Cの行方不明は「工事による影響とは言えない」、環境省は、基地建設工事による影響について「環境省としては把握していない」と、事前に提出した各8項目の質問に対してほぼゼロ回答。とりわけ、国の天然記念物でもあるジュゴン保護の責務を負うべき環境省のあまりの危機感のなさ、当事者意識の欠如には唖然とさせられた。

これまで3回にわたって、日米両政府に対し沖縄ジュゴンの保全勧告を行ってきたIUCN(国際自然保護連合)がこの状況を見過ごすはずはない。

3頭以外の未確認情報も少なからずある中で、環境省は琉球諸島全域の調査に早急に取り組むべきだ。    

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
posted by JCJ at 12:45 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月04日

【支部リポート】 関西 女性中学教師が教育現場語る 行政による不当介入が強まる=阿部裕一

3月の関西支部の2019年度総会では、大阪府吹田市内の中学校教師・平井美津子さんを招き、自身の授業を掲載した新聞記事を巡る教育現場への行政介入について語ってもらった。

私が1997年に制作・放送したNNNドキュメント「許そうしかし忘れまい〜戦争と教科書」で紹介させていただいた平井さんは、近現代の歴史教育に力を入れておられ、数々の著書もある。今回の出来事は、去年8月に取材を受けた共同通信の配信記事が10月愛媛新聞(写真)で掲載されたことに端を発した。記事は「憲法マイストーリー」という表題で、2年社会科の授業を取り上げている。平井さんは、戦争のあらゆる面を生徒に伝え、特に性暴力かつ女性差別でもある慰安婦問題を熱心に教えているという内容だ。授業そのものも事実に基づいていて、抗議を受けるようなものではない。

ところがこの記事がネット上で拡散され、府教育庁が「記事にある授業が事実なら不適切」と回答。これを受け、吹田市教委が調査に乗り出した。その際、校長の許可を得ず校内で取材を受けたことは問題とされたが、授業の内容は「適切」と判断された。さらに大阪府教育委員会も聴取を行った。当日の記者とのやりとりだけでなく、本来関係のない平井さんの著作についての質問や過去30年もさかのぼるような質問もあったそうだ。これで事態は沈静化すると思われたが、今年1月12日、京都新聞に同様の記事が掲載されたことで再燃した。

2月、府教委から平井さんに再度聴取要請があったが、学校内で同席した校長からの質問に市教委が立ち会うという形で聴取に応じた。これは教育現場への行政の介入が強まっていることをうかがわせる恐ろしい実態だ。歴史にきちんと向き合う教育が脅かされる昨今、再び、戦前の教育が繰り返されないよう注視していく必要があることを痛感させる話だった。

なお平井さんは訓告処分を受けた(履歴に残らず)が、府教委は、授業の内容は「不適切ではなかった」と述べ、府教育庁も「事実誤認はない」としている。       

阿部裕一 

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
posted by JCJ at 12:09 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月30日

【編集長EYE】 目標額未達成なら手数料不要=橋詰雅博

 先のJCJ総会でも話題になったクラウドファンディング―。このごろネットや新聞などで名前をよく目にする新しい資金調達法・クラウドファンディングについて、ぼんやりと分かっている程度の人も多いだろうから、改めてどんなものなのかを調べた。これは大衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた造語で、インターネットを介して自分が描いたプロジェクトを発信することで、これに共感する人から資金を募る仕組みだ。ソーシャルファンディングとも呼ばれる。

 プロジェクトは、映画、映像、演劇、出版、ファッション、食品や精神障害児の就労支援施設をつくるなどの社会貢献など多岐にわたる。要するにありとあらゆるものが対象になるのだ。お金を出す立場から見てクラウドファンディングは、おおむね寄付型、購入型、投資型の3種に分かれる。寄付型は出資者に大きな見返りがなく、購入型は出来上がった製品などを見返りとして受け取れ、発展途上国の事業者や株式、不動産などをターゲットとした投資型は分配金が見返りだ。投資型は支援よりも資産運用に重点が置かれている。

 総会で指摘されたJCJ賞カンパ活動でクラウドファンディングを使いお金を集めるとしたら寄付型で行うことになる。現在、カンパは目標額800万の半分にも達していない。期限の8月集会まで、あと4カ月余り。クラウドファンディングの利用で目標額に近づけたいのはやまやまだが。

 寄付型を取り扱う会社は「Makuake」、「Readyfor」、「CAMPFIRE」が代表格だ。IT企業のサイバーエージェントが親会社であるMakuakeは、プロジェクトの相談や審査に合格後のサイトでのプロジェクトの掲載は無料。目標額を達成した場合、手数料として20%支払う。一方、未達成なら手数料の支払いはない。また支援金は出資者に返される。

 利用する、止める―悩んでしまう。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
posted by JCJ at 10:09 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月09日

【映画の鏡】 破天荒な生きざま貫く「全身画家」─『ぼくの好きな先生』─子どもたち自由と勇気を=今井 潤

 画家、瀬島匠は56歳、山形の東北芸術工科大学で学生たちに教え、全国を飛び回って創作活動を行っている。30年間“runner”というタイトルで絵を描き続ける。
 映画監督、前田哲は全身アーティスト瀬島匠に出会い、自らカメラを回し、しゃべりながら、漫才を演じながら、観る者の心を激しく揺さぶる人間ドキュメンタリーを作った。

 広島県因島に生まれた瀬島は、造船所に勤めながら地方画家として活動していた父と同じく、絵や彫刻を作り続ける母の影響もあり、幼いころから画家の道をこころざした。
 現在は大学で絵を教える立場になったが、因島、飯山、川崎などで創作活動を続けている。

 前田監督としゃべりながら描くのは、大きなトタン板のキャンパスに、海辺と広がる空をナイフで白と青の絵の具を塗りたくっていく。紹介される受賞作は具象画で廃船、大きな山など迫力に満ちたもので、いずれも“runner”とタイトルがついている。なぜ”runner”なのか答えはない。瀬島匠という画家の絵を描く姿勢そのものが、走る男なのかも知れない。

 前田監督は<どんどん不寛容になる社会の中で、窮屈に生きさせられている若者たち、子供たちへ「もっと自由に生きていいんだよ」、「失敗を恐れず楽しもうよ」と瀬島匠の破天荒な生き様と創作姿勢と学生たちの交流を通して、“エール”を送りたいと思ったのです>と述べている。
(公開は3月23日(土)新宿ケーズシネマ、3月30日(土)大阪シネヌーボなど全国順次)

今井 潤

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 12:44 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月05日

【小森陽一対談チャンネル】 21世紀版「大日本帝国」が狙い 浜矩子さん アベノミクス痛烈に批判=河野慎二

 九条の会事務局長の小森陽一氏(国文学者)がキャスターを務め、ジャーナリストや研究者ら各界を代表するゲストと安倍暴走政治≠フ問題を論じ合うFⅿA自由メディア「小森陽一対談チャンネル」の放送が3月から始まった。
 第1回のゲストは、浜矩子・同志社大学大学院教授。アベノミクスについて「どアホノミクス」と名付け、舌鋒鋭い批判を展開している。

 番組で浜氏はまず、アベノミクスの目玉である「異次元の金融緩和」を取り上げ「日銀が財政破たんを隠蔽するため国債を買いまくる。今は、市場で買っているが、日銀が政府と相対で国債を直接買うという、禁じ手の体制を作ろうとしている」と喝破し「そうなると、国の財政収支が全く分からなくなり、完全にファシズム経済になってしまう」と警告した。
 その上で浜氏は「安倍が目指すのは、21世紀版の大日本帝国という軍事大国づくりだ。憲法は絶対に変えると言っている。アホノミクスはそのための足場作りだ。我々はその狙いを片時たりとも見落としてはならない」と強調した。

 浜氏は、安倍政権が進めているキャッシュレス化の問題について「キャッシュレスとは、カネが電子暗号化され、自分の銀行口座から現金を引き落とすことが出来なくなる。国民の資産を、国民の手元から21世紀版大日本帝国の枠組み作りの財源に持っていってしまう」と警鐘を鳴らした。
 浜氏はこの他「ソサイエティ5・0」や「未来投資会議」など、安倍政権の危険な計画についても言及した。

「小森陽一対談チャンネル」は19日にユーチューブで発信した。FⅿAは、第2回以降のゲストとして、中野晃一・上智大学教授(4月)、香山リカ・立教大学教授(5月)、佐々木寛・新潟国際情報大学教授(6月)を確定し、準備を進めている。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 13:42 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月02日

【市民活動】 東海道五十三次いっせい行動 弥次さん 喜多さん「政治変えようぜ」  安倍退陣へ55カ所=仲筑間卓蔵

安倍早期退陣の声を強めようとマスコミ九条の会が呼びかけた「東海道五十三次いっせいアピール」行動が9日、五十三次宿場など55カ所で行われた。

京都三条大橋では東映の俳優さんが弥次・喜多に扮してアピールし関心を集めた。東京は日本橋と品川。日本橋にはJCJやマスコミ九条の会、九条の会東京連絡会など50人が参加。10人の弁士は異口同音に「アベ政治を終わりにしよう」と訴えた。天気も味方してくれた。

 マスコミ九条の会は昨年12月14日「東海道五十三次いっせいアピール」呼びかけを決め、各地九条の会に要請したが、年初まで動きははかばかしくなく、苦闘が続いた。

 「面白い行動を提起してくれて有難う」(滋賀)の言葉に元気をもらう。問題は、最も宿場の多い静岡。元国労東海の委員長だったY氏の尽力で道が開けた。

 2月に入って「賛同」が集まり始める。手応えを感じる。3月5日。大磯が参加決定。これで神奈川全宿。

 行動当日。愛知の東海市からとりくみの連絡。11日、滋賀の石部宿がとりくんだという連絡。これで滋賀も全宿。

 そして、京都・さがみ九条の会(帷子辻子駅)がやったという。これで48宿55ヶ所が行動したことになる。涙が出てきた。

 神奈川宿からメールが届いた。「今回は提案していただきありがとう。次は全国で九条の会いっせいに行動できればいいですねえ」と。

 3月9日は、「点」が「線」になった。「九条の会」は、5月3日に向けて「3000万署名」を達成して「決起しよう」と改めて「檄」をとばしている。

この国の有権者はおよそ1億人。投票率50%として5000万人。市民と野党共闘で3000万人が決起すれば、政治は変わる。今年はまさに「正念場」の年です。

仲築間卓蔵

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 13:59 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月01日

【リアル北朝鮮】 経済成長と生活向上を強調 金委員長 内政に重点移す

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は8日付論評で、第2回米朝首脳会談が合意なしに終わったことに初めて言及した。

「全世界が朝鮮半島における平和過程が順調に進展し、朝米関係が一日も早く改善されることを願っている。だから、ハノイで行なわれた第2回朝米首脳会談が成功し良い結実があることを願ってやまなかった内外(の関係者)は、合意文なしに終わったことについて、米国に責任があると一様に主張している」

 ただ、論評の趣旨は安倍政権を批判するものだった。

 北朝鮮のメディアは、現段階で先の米朝首脳会談が決裂したとは報じていない。「朝鮮中央通信」は1日、両首脳が「互いへの尊重と信頼をより厚くし、両国関係を新たな段階へと跳躍させられる重要な契機になったと評価した」ことを報じ、「朝鮮半島の非核化と朝米関係の画期的発展のために、今後も緊密に連携し、ハノイ首脳会談で議論された問題解決のための対話を継続することにした」と強調した。トランプ米大統領も、「突然立って出ていくような交渉決裂ではなく、友好的なものだった」と2月28日の記者会見で述べており、米朝ともに「会談は決裂ではない」ことを強調している。

 金正恩朝鮮労働党委員長の関心はすでに内政へと向かっているようだ。10日は最高人民会議(国会)第14期議員選挙の投票日だったが、金委員長も参加し、候補者を激励しながら、経済の活性化や人民生活向上について強調した。9日発朝鮮中央通信によると、党末端組織の活動家大会に書簡を送っているが、「制裁圧力も破綻を禁じえない」としながら、「わが党にとって経済発展と人民生活向上より切迫した任務はない」と強調している。

 来年は、金委員長が16年の党大会で提唱した「国家経済発展5カ年戦略」の締めくくりの年。金委員長は、なんとか経済的成果を出さねばならないと思っているはずだ。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 13:57 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月29日

【支部リポート】 福岡 特筆すべき2つの出来事 新加入者の活躍と「望月講演会」=白垣詔男

 この1年、福岡支部では2件の特筆することがあった。

ひとつは昨年9月の支部幹事会に参加した西嶋真司さん(福岡の民放RKB毎日放送を同月退社のOB)が新加入して同時に支部幹事になった。

 西嶋さんは、現役時代、記者、ディレクターなどを歴任した。ディレクター時代、福岡県田川市在住の記録作家、林えいだいさん(2017年逝去)を濃密に取材。2016年には林さんを主人公にしたドキュメンタリー映画「抗(あらが)い〜記録作家林えいだい」を監督として制作、公開した。林さんは、日本統治時代の朝鮮人徴用工問題など朝鮮半島の人々に思いをいたした著作が多いことで知られている。

 西嶋さんはまた、記者時代、ソウル特派員も経験、その後、朝日新聞の特派員になった植村隆さんと親交を結び、「植村バッシング」に対して大きな疑問を感じ、RKB在任中から植村さんのドキュメンタリー「標的」の制作を始めた。植村さんの裁判を傍聴、その後の記者会見などにも参加してカメラを回している。「標的」は5月に完成する予定だ。

 西嶋さんには5月末に開く支部総会で「標的」を公開してもらうことにしている。

もう一つは、昨年12月8日(土)、「NHKを考える福岡の会」主催の「望月衣塑子講演会」を九州民放OB会とともに共催した。外部の団体とともにこの種の総会を共催するのは、福岡支部としては久しぶりのことだった。支部長の私が「NHKを考える福岡の会」の事務局次長になっていることで、福岡支部は同会とは連絡を密にしており、「望月講演会」も支部機関紙「ジャーナリスト福岡」に告知記事、終了後は講演会報告を載せた。

 「望月講演会」は定員270の会場に280人が詰め掛けた。望月さんはいつものように早口と身振り手振り、声色、ユーモアを交えて話してくれた。参加者は、ほとんど私語もなく、望月さんの話術に感心して耳を傾けていた。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 11:16 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月27日

【編集長EYE】 ナゾ深まるオリパラ選手村疑惑=橋詰雅博

 開幕まで500日を切った東京五輪の晴海選手村建設をめぐり住民訴訟が起きていることを本紙でも2、3回取り上げた。33人の都民が大手デベロッパーに9割以上の値引きで都有地を売却したのは違法であり、小池百合子知事らに損害賠償の請求を都に求めたのである。東京地裁での口頭弁論は、2月下旬に行われた裁判を含め5回を数えた。

 これまでの審理で、廉価な売却額について、都側の代理人は「オリンピック選手村という特殊事情」で決めたと主張している。ところが肝心のオリンピック要因≠フ中身になると、説明を渋っているというより言わないのだ。売却額の算出根拠である日本不動産研究所の調査報告書の全面開示も拒否している。傍聴者は理解しがたく、オリンピック要因という言葉だけが頭に残る。

 そもそもこの13・4fの土地は、防潮堤の外側にあり、住宅を建てられなかった。そこで都は2・5b盛り土した上で道路、下水道など540億円かけてインフラ整備した。それなのに約130億円で売却したのである。完全な原価割れだ。

 異様なのは売却額だけではない。他にも都はデベロッパーに優遇措置を与えている。

○大会中、選手村建物を都などに貸したデベロッパーは賃料を受け取る。

○大会終了後、選手村で使った1万5000台のエアコンや4900台のユニットバス、3900台の給湯器、3900戸分の内装などはマンションに改装するため取り外されるが、その費用は都が負担。金額を小池知事は「数百億円かかる」と発言している。

○土地所有権の移転は、マンション建築の完了確認後とされている。完了の最終期限は「平成36年3月末」だから、所有権移転時までは固定資産税を支払わなくていい。

○譲渡価格の9割の支払いは建築完了後だ。

 原告代理人は「このような歪な権利関係は、公共の財産の処分としては不自然」という。

 ナゾは深まるばかり。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号
posted by JCJ at 13:18 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月05日

《スポーツコラム》楕円球が生むW杯の絶妙な空気=大野晃

 ラグビーのワールドカップ(W杯)開幕まで半年に迫った。全国12会場では施設整備が完成を迎え、9回目で初めてアジアの日本で開催される4年に1度の世界一決定戦への意気込みを示している。過去8回の大会を現地で目の当たりにしてきたがスポーツの原点を見つめ直す好機である。
 
 ラグビーの魅力は、気まぐれに転がる楕円球を集団で制御して前へ運ぶことにある。阻むものとの不測の激突を結束して乗り越え、かわし、つなぐ。鍛えられた体と知恵と技術、そして精神力で結束を持続する。総合的人間力の競い合いだ。安全を求めてルール改変が進められたが、対戦者同士の協力とフェアプレーがなければケガが続出する危険な競技でもある。 
 競技者はもちろん観戦者もその全体を楽しむ。
 最高峰のプレーが集中するW杯には人間の営みに熱中する空気がある。 
 観戦者たちが自然に溶け込んでゲームの余韻に浸るのも特徴だった。国代表の勝利を喜び大騒ぎするが、排他的でないのは熱中したことの満足感があったからだろう。
 
 過去の大会では、南アフリカ・マンデラ政権の政治利用やテレビ放映権をめぐる商業主義的利用が目立つようになり、興行化が進んだが、競技者と観戦者が醸し出すW杯の空気に大きな変化はなかった。日本代表候補たちが夢の舞台へ懸命な努力を続けているのは、W杯の空気に浸りたいからに違いない。 
 会場の自治体などは外国人観光客の誘致期待が先行しているようだがW杯の空気が、人と人との根源的なつながりを再認識させそうだ。  
 大会興行の負担対策や巨大化した施設の大会後の有効利用策など難問山積だが、W杯の空気と人のつながりを重視した対応が求められる。
 興行が終わったら遺産処分では、W杯の空気は引き継がれない。
 マスメディアには日本の躍進を追うばかりでなくW杯の空気を伝える努力が不可欠だ。(スポーツジャーナリスト)
posted by JCJ at 18:32 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月02日

《沖縄リポート》「辺野古利権」が自然を破壊 =浦島悦子 


 2月9日の沖縄地元2紙は1面トップで、辺野古新基地建設のための埋め立て工事で、政府は大浦湾側の超軟弱地盤改良工事に、浅瀬も含め約7万7千本の砂杭を打つ予定だと報道した。これまで報道されていた4万本、6万本をさらに上回る規模に県民は絶句した。軟弱地盤の最深部は水深90mにも及び、専門家によると作業できる船は日本にはないという。

 埋め立て工事の先行きは全く目途が立たないことがますます明白になった。にもかかわらず、政府は、現在、土砂投入している工区の隣接工区に土砂投入を3月25日に開始すると発表した。さらに、埋め立て土砂の陸揚げをスピードアップするために新たな護岸の建設にも着手した。
沖縄の民意も県の指導も一切無視し、違法・不法の限りを尽くしてここまで強行するのはなぜなのか、不思議でならない。安倍晋三政権がいくら米国に忠実だとしても、自然条件が許さないから工事は無理だと伝えれば面子を潰さずにすむ。血税を湯水のように使う(「4万本」の段階で2兆5500億円と沖縄県は試算)この計画を、「国の威信」を保ったままやめることのできる絶好のチャンスだと思うのだが…。

 考えられるのはこの巨大工事にまつわる利権だ。沖縄防衛局のHPで辺野古側浅瀬埋め立て工事の落札状況を見ると、安藤・間、大成建設、五洋建設、大林組、東洋建設等々国内大手ゼネコンの名前がずらりと並ぶ。工事が途中で頓挫しようが、その間に儲ければいいということか。沖縄に残るのは破壊された自然だけ。

 2月24日に行われる県民投票は、そんな未来にさせないための行動でもある。市長が実施を拒否した5市の市民らの「投票権を奪うな!」という声が市政を揺るがすほどに高まり、「『辺野古』県民投票の会」の元山仁士郎代表の「全県実施」を求めるハンガーストライキが大きな反響を呼び、公明党も自民党も支持者の声を無視できなくなった。「賛成・反対」の2択に「どちらでもない」を加えた3択という変則的な形ではあれ、全県実地にこぎつけたのはひとえに市民活動の成果だ。その過程は苦難に満ちていたが、民主主義の実践でもあった。それを投票に活かし、圧倒的「反対」の民意を示したい。

 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
posted by JCJ at 22:42 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月25日

【編集長EYE】 東欧の陸上イージスの経費は米国が負担=橋詰雅博

 米国務省は1月末に安倍晋三政権が購入を決めている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基などの売却を承認し、米議会に通知した。売却額は21億5千万j(約2350億円)。当初は一基約800億円と算出されていたが、米国による価格つり上げで大幅にアップ。しかも30年間の維持・運用経費などを含めると合計6千億円にも跳ね上がる。

 安倍政権が爆買い≠オた陸上イージスは、強力なレーダー波の発生による電磁波問題がかねてから指摘されている。イージス艦のレーダー作動時では、乗員の甲板活動が禁じられるほどシステムが発する電磁波は強力だ。日本での配備予定地である秋田市と山口県萩市阿武町の地元でも、電磁波が健康や医療機器、防災無線、テレビ放送などに悪影響を与える恐れがあると配備反対運動は広がっている。阿武町在住の女性グループは有事の際、標的になる可能性があるので身の安全が心配だと計画撤回を求めている。

 地元住民の反対の声に押されて菅義偉官房長官はレーダーの電磁波影響調査の実施を明言。現在、防衛省は秋田と山口の両県で陸上自衛隊の対空レーダー装置を使った電磁波の影響調査を行っており、結果を4月以降に地元で説明する。しかし、そのレーダーは実際に陸上イージスに搭載される米ロッキード・マーチン社製ではない。代替品≠使った影響調査であるから結果に疑問が生じる。

 陸上イージスは2016年にルーマニアに配備され、ポーランドへの配備も近い。米国を狙うイランの弾道ミサイルを撃ち落とすためだから米国がコストを負担。日本の2基も米軍ハワイとグアムの両基地を狙う北朝鮮ミサイルに対処するためだが、コストは日本が負担する。住民を軽視した上に多額の血税を使い米国を守るというわけだ。今月末に2回目の米朝首脳会談がある。米朝関係は好転している。陸上イージスは無用の長物になるかも。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
posted by JCJ at 10:50 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月13日

【若い目が見た沖縄】 平和集会に参加 中2のリポート 戦争できる国止めなければ=北村めぐみ・長妻萌

 平和や社会問題について学び交流する「高校生平和ゼミナール」主催の全国高校生平和集会が昨年12月22〜24日、沖縄で開かれ、広島から私が引率して中2と小6の姉妹が参加した。
 各地から小中高生58人が参加。南部戦跡を見学、辺野古ゲート前や米軍ヘリが墜落した沖縄国際大で学習した。グループ討議で、沖縄・広島以外の生徒から「米軍基地容認論」や「米軍基地本土引き取り論」が出たのにはショックを受けたが、これが日本社会の縮図に思えた。姉の長妻萌さんのリポートを紹介する。

北村めぐみ(広島支部)

 私がこの集会に参加したのは、広島は被爆地で学校でも平和について学ぶけど、沖縄戦については学んだことがないので、この機会に知ってみたいと思ったからです。

 一日目は、轟の壕とひめゆり平和祈念資料館と白梅之塔を見学した後、沖縄戦体験者の中山キクさんの話を聞きました。轟の壕に入り灯りを全て消すととても暗く、ここで過ごすのは大変だったと思いました。ひめゆり資料館では沖縄戦体験者の証言を読み、戦争は本当に悲惨なものだったと知りました。中山さんの話から、当時の様子がリアルに伝わってきてよく知ることができました。

 二日目は、辺野古ゲート前に行き、前市長の稲嶺進さんと島袋文子さんの話を聞きました。その後2004年に米軍のヘリコプターが墜落した沖縄国際大学で当時の話を聞き、屋上から普天間基地を見て、前泊博盛教授の話を聞いた後、教室で「基地問題について考える」というテーマでグループ討議をしました。

 島袋さんは、沖縄戦で家族を守るために苦労された時のことを思い出して話すのは辛いはずなのに、次世代の私たちの事を考えてくれていることにとても感動しました。島袋さんたちが、基地を造るのをやめさせようと毎日座り込みをしていてとても努力をされていることを知りました。

 沖縄戦について詳しく知ることができ、あらためて戦争の悲惨さを知りました。今の日本は戦争のできる国にしようとしているので私たちの世代が戦争を体験した人たちの気持ちも踏まえて、戦争をしようとする人達を止めていかなければならないと思いました。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 15:25 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月12日

【支部リポート】 広島 講演会を主催・共催・協力 白井聡、相澤冬樹、本間龍の各氏話す=難波健治

 広島支部は、昨年秋から年末にかけて、広島市内で3つの講演会[o1] を主催、共催、協力し、一つのアピールを出した。

 毎年9月2日前後に催す恒例の「不戦のつどい」。本年度は、京都精華大学講師の白井聡さんに「平成の終わりと『戦後の国体』の終焉」と題して講演してもらった。若者たちの間でも広く読まれている『国体論 菊と星条旗』の著者が被爆地広島で何を語るのか、と市民の関心も高く、会場は141人の聴衆で埋まった。

 11月19日には、政府から独立したNHKをめざす広島の会(略称・NHKを考える広島の会)設立4周年のつどいを、広島マスコミ九条の会とともに共催。NHKを8月末に退職し大阪日日新聞に移籍した相澤冬樹氏を呼んで「森友事件の本質と移籍の思い」を語ってもらった。その後の相澤氏の活躍はご存知の通りだが、当時はまだ「関西圏の外に出て講演するのはこれが初めて」と言い、抑制のきいた話し方でNHK大阪での報道の実態を明らかにした。狭い会場からあふれるほどの105人が参加した。

 そして12月2日。JCJ広島のメンバーの多くが世話人として参加し、事務局長も務めている市民団体・ヒロシマ総がかり行動が主催する、「国民投票法」を学習する講演会があった。地元の山田延廣弁護士が法の仕組みと問題点を解説、広告代理店・博報堂に18年間勤務したジャーナリストの本間龍さんが「電通の広報戦略を暴く」というテーマで話した。市民約150人が集まった。

 そして12月13日には「市民の願いにこたえる広島市長を誕生させよう」とのアピールを、広島マスコミ九条の会、NHKを考える広島の会との3者連名で出した。11月に広島に里帰りしたカナダ在住の被爆者サーロー節子さんが「核兵器廃絶のために具体的な行動を起こそう」「広島からもっと発信を」と訴えたことに反応した動きでもある。いまこの呼びかけは4月の市長選挙を前に、市民の間にさまざまな動きを呼び起こしつつある。

難波健治

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 13:37 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月05日

【全国交流集会東京報告会】 災害大国なのに手薄い「公助」 防衛費の増強で置き去り=古川英一

 「戦闘機を100機も購入するという、へんな時代に。バランスが悪すぎるのでは」―来年度の防衛費について、去年12月のJCJ全国交流集会の東京報告会で出た声だ。
 全国交流集会についてはすでに本紙でも報告(11月25日号)したが、去年10月に2泊3日で熊本地震・九州北部豪雨の被災地を回り、被災者や医療、メディア関係者から話を聞いた。その体験を一過性にせず、参加者が追体験し、共有し合うため2カ月後に東京で報告会が開かれた。

復興とはほど遠い
 交流集会を企画した北九州支部のジャーナリスト兼歯科医師の杉山正隆さんが今回、問題提起したのは安倍政権下での「自助・共助・公助」論に、どのような対抗軸を示していけるか、であった。それを災害という本来ならば国が一番責任をもって支援しなければならない場において検証していこうというのが、交流集会で被災地を回った狙いでもあった。
 報告会では杉山さんが被災地を回った3日間を映像と共に振り返った後、参加者が各自感想や意見を出し合った。それによって安倍政権のもとで進行する「自助・共助・公助」による政治のひずみが改めて浮き彫りになった。というのも、私たちが訪れた被災地は、熊本地震からは2年半、九州北部豪雨からは1年3カ月余りが経っていたのに「復興」とはほど遠く感じられたからだ。杉山さんは「災害の被害が過疎地で大きくなる傾向があり、その場合、地域の力だけでは財政面などから立ち直りは難しい」と指摘した。  
 意見交換では医療関係の参加者からジャーナリズムの側にとって、気づきとなる意見が多く出された。北九州市の看護師の女性は「出身地が台風に見舞われるので、災害には太刀打ちできないという実感で、それを埋めるのが国の支援ではないか」と述べた
 保険医を束ねる全国保険医団体連合会の男性は、九州北部豪雨の時に医療活動にあたった医師が、被災者の投薬代を自己負担したことを聞き、支援が現場の人たちの倫理観に支えられていることに驚いたとして「人の生死が関わる場所では薄氷を踏むような状態であることを感じた。自助・共助・公助というとするりと聞き流してしまうが、災害時の国の支援の薄さを感じた」と憤りをこめて語った。

国に粘り強く発信
 また、阪神淡路大震災以後、全国各地の被災地の支援を続けている兵庫保険医協会の男性は「行政は復興と言いながら被災者に向き合っていないと感じた。それが取り組みの原点で、一人ひとりの暮らしを取り戻すことを政府に向き合わせなければ」と述べた。
 さらに「防衛費の増強の一方で被災地の問題がある。それを権力に対して粘り強く発信していかなければならない。そして記録し続けること、記録しなければ忘却するし、記録することも抵抗ではないか」と呼びかた。
 そういえば、この報告会も、被災地を巡った交流会をまさに記録するものではないか。そして災害の多い日本で、災害対策や被災地の支援に時の政権がどのように向き合っているのかが、政権を測るリトマス試験紙≠ナはないだろうか。そのリトマス試験紙の色を絶えず確かめていくことが、私たちジャーナリズムに課せられているのである。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 13:10 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月31日

【シンポジウム】 戦場取材と自己責任論 シリア拘束 安田純平さん語る=編集部

 髭をたくわえ、黒いシャツを着た痩身の男性が、ごく自然体でむしろ飄々とした感じで壇上に上がった。安田純平さん。拘束されていたシリアで3年4カ月ぶりに解放され、去年の10月に帰国したフリージャーナリストだ。      

安田さんを招いて、戦場取材の意義と「自己責任」論について考えるシンポジウムが、去年12月に、東京で開かれた。司会を務めた月刊「創」編集長の篠田博之さんは「ジャーナリストが戦場に行く意義が伝われば、極めて日本的な、自己責任論など出てこないのではないか」と議論の口火を切った。

拘束者いまだ不明

安田さんはまず、なぜ戦場に行くのかについて「対テロ戦争では『テロリスト』と人間を記号にあてはめる。権力やメディアにテロリストと呼ばれた時点で人権がゼロになってしまう。しかしそう呼ばれた人たちは生身の人間であり、それぞれの人生があることを現場で見ておきたかった」と淡々とした口調で語った。また、単独でシリアへ入ったことへの批判や自己責任論に対しては「今になっても誰に拘束されたのか、自分でも分かっていない。批判されるのはかまわないが、事実関係をきちんと知ったうえでしてほしい。ジャーナリズムは事実を明らかにするもの、事実に基づくことの重要性が共有できなければ話ができない」と、この時の口調は強く感じられた。

シンポでは戦地での取材にあたってきたフリーやメディアに属するジャーナリストたちも登場し、各人こう指摘した。

TVキャスターの金平茂紀さんは「政府に従わないなら叩いても当然、今の政権を支持する人たちが声高に叫ぶ、同調圧力をかけてはじき出していこうという風潮だ」と、自己責任論の声が大きくなる背景を分析した。中東ジャーナリストの川上泰徳さんは「なぜ中東に行くのか、戦争が続いているからだ。戦争がどういうものか、想像するのではなく行って、調べて、伝えるのがジャーナリスト。しかし自己責任論が広がると、メディアは委縮してしまう」と指摘した。なぜ危険を冒してまで戦場へ行くのか?この問いにアジアプレスの野中章弘さんは「戦争は我々の世界で起きている最も不条理なことで、そこにジャーナリストが取材する価値がある」と答えた。

先行きはまだ未定

 シンポの中で浮かび上がってきたのは、今の日本で広がっている、外の世界に目を向けない排外主義だ。そこには中東で起きていることがいつ日本で起きるかわからない、という想像力の欠如がある。さらに、若い人たちの多くが、中東だけでなく沖縄や福島で起きていることが全部、自分の外部にあることとして、ジャーナリストと若い人たちとの間で対話が成立しない状況にあるという指摘もあった。

こうした排外主義にどう向き合うのか?一つの問題提起が、次の問題を連鎖的に引き寄せるという、会場の参加者にとっても宿題を与えられた形だ。

それは私たちの想像を絶するような体験をした安田さんが、私たちに気づかせてくれた問いでもあるのだろう。「これからどうするのですか?」―会場からの問いに安田さんは、「これからどこへ行くのか、事前には言えませんし、まだ決めていません」と穏やかな表情で答えていた。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 14:59 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【映画の鏡】 穏やかな家庭で銃撃事件 『ナポリの隣人』  駆けつける父親と娘の葛藤=今井 潤

高齢化社会は世界共通で、映画も「ガンジスに還る」(インド)、「ボケますから、よろしく」(日本)と老人問題を扱った作品が増えている。

この作品もナポリのアパートにひとり住む老弁護士のロレンツオが主人公だ。今は引退し、妻は数年前に亡くなり、法廷通訳をしているシングルマザーの娘とクラブ経営の息子がいるが、関係は良くない。娘は父の女性関係を許せずに来ている。

 そんなある日、アパートの隣にミケーラと夫のファビオと二人の子供が越してきて、バルコニーでつながっているので、隣人の付き合いが始まる。食事に招かれたロレンツオは、まるで本物のお爺ちゃんのように二人の子供と遊び、ミケーラとファビオと楽しく食事をし、おだやかな時間を過ごす。束の間の疑似家族のようだ。

 しかし、事件は起きる。ある雨の夜、ファビオがミケーラと二人の子供を撃ち、最後に自分も自殺したのだった。ロレンツオは重体で病院へ運ばれたミケーラのもとに駆け付ける。ミケーラの父親のふりをして、病棟に入り込んだことがわかり、息子はあきれて帰るが、娘は父親を見つめていた。ミケーラのそばで語り続けるロレンツオだったが、通報されてしまう。ロレンツオと実の娘はわかりあえることが出来るのか?

 映画の中盤で、ロレンツオとファビオがそれぞれナポリの古い石壁と石畳の路地を歩くシーンがカットバックされるが、二人の孤独が象徴化されていて胸に響いてくる。21世紀のネオリアリズムという印象が強く漂っている。

(公開は2月9日(土)から神田・岩波ホール)

今井 潤

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
posted by JCJ at 12:52 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする