2023年05月13日
【放送法】官邸の圧力 白日に 総務省文書 磯崎補佐官ら暗躍=編集部
3月2日、小西洋之参院議員(立憲民主党)が記者会見して、これを明らかにした総務省文書を発表した。総務省もこの文書を「行政文書」と認め、7日ホームページで公開した。
文書によると磯崎氏は「1つの番組でも明らかにおかしいものがある」「コメンテーターが『あすは自民党に投票しましょう』と言ってもいいのか」と働きかけ、「この件は局長ごときが言う話ではない。俺と総理と2人で決める。俺の顔を潰すようなことになれば、ただではすまない。首が飛ぶ」などと発言、「補足説明」を出させた。
解釈変更を迫る
放送法は「不偏不党・真実と自律の保障」を決め「表現の自由」を確保すること(第1条)を決め、誰からも「干渉」「規律」されてはならず(第3条)、編集では「公序良俗」とともに「政治的公平」と「事実を曲げない」「対立している問題ではできるだけ多くの角度から論点を明らかにする」(第4条)よう決めている。この「政治的公平」は個々の番組の中での公平性を求めているのではなく、ある放送全体のバランスを求めていると解釈されている。
磯崎氏の「解釈変更圧力」は、これを個々の番組にも及ぼさせようとするもので、磯崎氏の発言に符合するように放送への「圧力事件」が続いた。
続出した「圧力」
磯崎氏の総務省への要請はちょうど、14年12月の総選挙直前から。
当時の安倍首相は11月18日、TBSの「NEWS23」で街頭インタビューの映像に政権批判が多いとして「全然声が反映されていない」と反発。20日には自民党が在京テレビ各社に「報道の政治的公平を求める」とする文書を出すなど、放送への圧力を強めていた。その「背景」が明らかにされた形でもある。
こうした中で、15年5月、安倍内閣の高市早苗総務相(当時)は参院総務委員会で、「政府のこれまでの説明を補足する」と断りつつ、「1つの番組だけでも、極端な場合には政治的に公平性を確保していると認められないことがある」と発言、16年2月の衆院予算委でも「行政が何度要請しても全く改善しない放送局に何の対応もしないとは約束できない。将来にわたり可能性が全くないとはいえない」と答弁。「電波停止発言」として問題になった。
18年3月には政府の規制改革推進会議が放送法4条の廃止を盛り込んだ「放送事業改革原案」を作成。反対で立ち消えになっている。
自由へ闘い続く
安倍内閣の官邸が、各社の番組をモニターし、さまざまな形で圧力をかけてきたことは比較的よく知られている。この文書当時大きな話題になったのは、「サンデーモーニング」への攻撃は、TBSの株主総会などでも行われていたが、16年3月には、テレビ朝日の「報道ステーション」古舘伊知郎キャスター、NHKの「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターが降板するなどの「事件」もあり、「放送の自由」をめぐる闘いは今なお続いている。
高市経済担当相「捏造」と強弁するが
総務省が「行政文書」と認めた「放送法の解釈変更圧力」について、高市早苗・経済安保担当相は3月3日の予算委員会で、問題の総務省文書について、「ねつ造」と決めつけた。
「仮にこれがねつ造でなければ議員を辞職すると言うことでよろしいですね」と追及する小西洋之議員に「結構ですよ」と応じた。
その後、総務省が「行政文書」と認めてホームページで公開すると「私について書かれた4枚については捏造。相手様が証明しなければ」などと弁明していたが、10日には「当時総務大臣だった私としては、一部正確性が確認されていない文書が保存されていたと言うことは責任を感じます」と陳謝した。
大臣と議員の辞職については、「内容が不正確」で逃げ切れるかどうかわからないが、野党側はいまなお高市氏の再回答と磯崎氏らの参考人招致を求めている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
2021年05月08日
【放送】総務官僚接待とメディアの責任 通信・放送への政治介入を許すな=隅井孝雄
衛星放送事業会社東北新社、日本電信電話株式会社(NTT)による総務省幹部の接待が、次々に明るみに出ている。総務省の通信放送分野は菅義偉首相の拠点とみられ、また首相の長男菅正剛氏が接待の席の多くに姿を見せている。首相自身の関与も含め、大きな政治問題となっている。
週刊文春/文春オンラインの特ダネで詳細が明らかになった。新聞放送などの後追い取材は基幹メディアとしての責任が問われる事態だ。
役人の無軌道
東北新社では2016年以降4年間に39回、13人の総務官僚らが接待された。またNTTでは2018年から20年にかけての間、10件の接待が確認されている。接待を受けた総務官僚の中には首相側近、谷脇康彦総務審議官(当時)の名もあり、また同じく首相側近の山田真貴子内閣広報官(当時)も高額接待を受けていた。
谷脇氏や巻口英司国際戦略局長らはNTTからも4回にわたって15万円の高額接待を受けた、また武田良太総務相がNTT沢田純社長と会食(2020.11.11)している。
11人の総務省官僚が懲戒処分された(うち3人は更迭)。菅首相側近、山田氏は3月1日、谷脇氏康彦氏は3月16日辞任に至った。
総務官僚たちの無軌道ぶりは目を覆うばかりだ。
すべて申請通りに
東北新社は外国映画の日本語吹き替え業として1961年に設立された。初代社長の植村伴次郎氏(故人)は、テレビの初期に米国テレビ映画「ハイウエー・パトロール」、「ララミー牧場」、「奥様は魔女」など日本語版制作の豊富な経験を持つ。その後映画専門の「スターチャンネル」をきっかけに、1989年以降、衛星放送業界に参入した。
総務省官僚の度重なる会食について、当初総務省は業務の話はなかったとしていたが、文春が報じた音声記録で衛星関連の会話が確認された。
東北新社は衛星で多くの問題を抱えていた。「囲碁将棋チャンネル」のCS認可(18年4月)、「ザ・シネマ4K」の認可(18年12月)、「スターチャンネル」の免許更新(20年12月)など、すべて申請通り認可された。
総務省の「衛星放送の未来像」研究会(2018年~2020年)では、新4K/8K衛星について議論されたが、利用料低減など衛星業界に有利な報告書が出た。東北新社は衛星協会の会長社だ。ここでも総務省への働きかけがあった。
追及の過程で、明らかになった外資規制違反時に認可された「ザ・シネマ4K」は5月1日をもって放送休止となる。
NTTの谷脇氏らへの接待は2018年6月から2020年12月にかけてだった。菅官房長官(当時)が「携帯電話料金を4割程度下げる余地がある」と発言(2018年9月)、総裁選出馬会見(2020年9月)で「更なる携帯値下げ」を表明した時期だった。
NTTは2020年11月、ドコモを子会社化した。これにより、菅政権の携帯値下げ要請下、NTTドコモが携帯業界で断然優位に立った。
まるで独裁国家
総務省は2001年の中央官庁再編時に、自治省、郵政省、総務庁を統合して設置された。戦前の内務省に似た機能を持つ巨大組織だ。
総務省は解体し、運輸、郵便、通信、放送などの分野は政府から切り離し、行政委員会に任せるべきだ。特に不祥事多発の通信放送の独立は急務だ。
国が直接通信、放送の監督権限を握っているのは、中国、北朝鮮、ロシアなどの社会主義独裁国家だ。通信、放送は第三者行政委員会に委ねるのが世界の常識、アメリカ連邦通信委(FCC)、イギリス放送通信委(Ofcom)、韓国放送通信委(KCC)などである。
日本にもあった!
日本でも実は「放送委員会」が存在していた。「(戦時中)輿論を表現する重要な機関(筆者注、日本放送協会)の管理運営に関し日本国民は発言権を有さず今日に至った」との占領軍からの批判が出された。1945年年(昭和20年)12月のハンナーメモである。再組織を促された日本放送協会は1946年 (昭和21年)1 月、放送委員会を発足させた。
委員は17人、科学技術、農業、実業、芸術、学界、婦人、労働、新聞出版、青年の9分野を代表する人物で構成された。委員中には大村英之助(映画人)、加藤シヅエ(社会党議員)、宮本百合子(作家)、荒畑寒村(労働運動家)、岩波茂雄(岩波書店主)など名がみられる。放送委員会は同年3月、戦後初のNHK会長に高野岩三郎(大原社研所長)を選出した。放送委員会はその後放送協会労組の調停役になった以外目立った動きがなく、 1949年(昭和24年)5月、解散した。日本政府はGHQの要請に渋々ながら従い、電波と放送を管理監督する電波監理委員会を政府から独立した行政委員会として1950年(昭和25年)6月発足させた。
しかし1952年(昭和27年)、日本の主権が回復されると、その年の7月電波監理委員会は廃止され、郵政省(のち総務省に移管)が直轄することになった。
野党が共通政策
1996年(平成8年)橋本竜太郎政権下の行政改革会議で、通信放送委員会を設置する案が出されたが、郵政省の反対で実現しなかった。また、2009年に民主党が与党となり、通信・放送委員会を設置する方針を決めたが、これも郵政省の反対で法案提出には至らなかった。
最近では2016年(平成28年)と2019年(令和1年)の参議院選挙の際に、市民連合と5野党との間で交わされた「共通政策」の項目に「国民の知る権利を確保するという観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から外し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築すること」との一項が設けられている。
菅政権はデジタル庁を構想しているが、これは総務省と両輪で通信、メディア、IT、インターネットなどを掌握し、市民の情報を管理する危険なたくらみだ。
汚職まみれの総務省の即刻解散と通信放送第三者委員会の設立が急務だ。
隅井孝雄(JCJ代表委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年4月25日号
2018年09月02日
【メディアの動き】民放連:CM規制のルールづくりを 公平・公正な国民投票の実現へ 本間龍氏に聞く=河野慎二
――衆議院の憲法審査会が先月、国民投票運動のテレビCM規制について民放連の意見を聞いた。民放連は慎重な姿勢を示したとされるが。
民放連内でもの意見は、二分されているようだ。何らかの自主規制策を打ち出すべきだとの意見と、「CM規制はとんでもない。自分たちは注文を受けて流していればいい」との意見に割れている。
民放連と話し合い
――民放連は自主規制ルールを作れるのか。
民放連が自主規制案をつくり、国会がそれを追認するのが、一番手っ取り早い。民放連への働きかけを強めようと、超党派の議員連盟が今月末に発足する。座長は自民党の船田元(はじめ)衆院議員が就任する予定だ。議連の最初の仕事は民放連との懇談。その際、議連としての案を持って行く。CMの回数などを決めているイギリス方式がいい国民投票法の改正については、議連としても提出する方向で考える。民放連を動かすことと法改正の両輪で動いて行く。
――民放連は、CM規制は「表現の自由」制約につながると懸念するが。
テレビCMの規制は放映の回数だけで、内容は規制しない。イギリスでは国民投票に使える予算を国が賛成と反対の両派に渡している。その上限は決まっている。テレビCM規制と表現の自由は両立する。
ただ、国民投票法成立11年後の今日、ネットの力が急増している。ネットは規制の対象外。仮にポータルサイトは規制しても、個人の発信規制は「表現の自由」にリンクしてくる。
護憲勢力は不利に
――米国では、トランプ勝利の一因に、ビッグデータの活用が上げられているが。
日本では、電通がビッグデータを社内に保有している。「ビッグデータ解析プラットフォーム」という機材、組織を持っているから、当然国民投票に使うだろう。投票の公平性は失われ、護憲派は不利な戦いを強いられる。
ネットの問題については、早急に研究会などを作って対応する必要がある。
安倍常人ではない
――現状のまま、国民投票を実施すると、大変な事態になる。
それは目に見えている。世界一の広告代理店、電通がバックについて、準備版万端怠りなくやる。護憲派は何もやっていないから、赤子の手をひねるようなものだ。
じゃあ、安倍首相が3選されて、年内か年始に国民投票までに持って行けるか、現実的にはかなり難しいと思う。憲法審査会は、与野党合意の上で進めるというのが大前提で、国民投票を実施するまでに、国会の手順としては15回ぐらいの採決が必要とされる。
否決されたら、各会派が持ち帰り、やり直す。そう見てくると、年内、年初の発議、来年の天皇退位までの国民投票は不可能に近い。
ただ、安倍首相は常人では計り知れないところがある。国民投票が自己目的化している面がある。普通の考えの持ち主なら、国民投票は出来ませんが、安倍首相は違う。
――国民投票が否決されたら、内閣総辞職ものですね。
そうです。大差で否決されたら、内閣はブッ飛んで、政権交代が起こるかもしれない。政権を失うかもしれないという覚悟で突っ込んでくるから、そこをしっかり見据えた対応が必要だ。
世論を盛り上げる
――ただ、国民がどう考えるかです。強行突破的なやり方は国民の批判を招くのでは。
大量の改憲CMをバンバン流しても、強面の態度が国民にどう映るか。強権を発動し、偉そうなことを言うことに、民意は極めて敏感だから、いくら電通がついていても、浮動票が改憲派に大量に流れることはないのではないか。
超党派議連発足を契機に、議連と民放連との話し合いなどをはじめ、国民投票の問題点の報道をメディアに働きかけ、世論を盛り上げて行きたい。
聞き手 河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号
2016年11月04日
沖縄県紙「権力監視が基本動作」―JCJ賞「なぜペンをとるのか―沖縄の新聞記者たち」見る会=JCJ放送部会
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2014年03月24日
NHK会長と経営委員2氏の罷免要求 署名は1万3000筆を突破=石井長世
籾井氏はこの問題発言を個人的な見解として、一応取り消したが、慰安婦問題や国際放送など5項目について発言した真意は、今も変わらないと 居直り、辞任を拒否している。
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2011年03月03日
空の安全が危ない/報道が口をつぐむ、日航整理解雇の実態=仲築間卓蔵
昨年12月16日、日本航空のキャビンクルーユニオン(CCU)の集会に呼ばれて話をした。内容は「日本航空問題とメディア」
である。
大会議室は満員。寒い日だったが熱気ムンムン。久しぶりに高揚感を味わった。
日本航空労働組合と日本テレビ労働組合とのつき合いは古い。お互いに賃金昇格差別問題で共同行動をやったものである。
当時は「千代田総行動」華やかなりし頃である。そんな中で日航労組も日テレ労組も勝利的解決をみた。だから、
日本航空問題となれば他人事ではないのである。
2011年02月01日
<年頭に当たってメディアに望む>問題を関連づけて報道する「触媒」の役目を果たせ=仲築間卓蔵
卯年は明けたが、「兎ぶ春」になるのだろうか……。どうもそうはいかないようだ。
菅直人首相の年頭会見に対して、全国紙5紙(朝日、読売、日経、毎日、産経)が揃って中身の同じ社説を掲載した。「6月をめどに、
社会保障財源を口実とした消費税増税と環太平洋連携協定(TPP)への参加方針を決めるとした菅首相に実現を迫るもので、
見出しも各社横並びという異様な状況を呈している」(1月9日付「しんぶん赤旗」)という。
2009年05月29日
NHKスペシャル「アジアの"一等国"」に対する批判について=放送を語る会
2009年5月27日
放送を語る会
2009年4月5日に放送されたNHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー」第1回「アジアの”一等国”」にたいして、激しい抗議、攻撃が加えられていると伝えられています。その組織的な動きが集中的に示された例に、5月18日、産経新聞が掲載した1ページ全面の意見広告「NHKの大罪」があります。
この意見広告は、「日本文化チャンネル桜二千人委員会」と称する団体ほか、幾つかの団体、国会議員らが名を連ねて、「日本が一方的に台湾人を弾圧したとするような視点で番組を制作した」「日台友好関係を破壊」「放送法違反の情報犯罪」などと主張し、番組担当者、NHK経営者の謝罪と辞任、「JAPANデビュー」シリーズの放送中止を求め、「全国民の受信料不払い」を実現しよう、と呼びかけています。この番組の放送以後、この意見広告にとどまらず、似たような主張が、複数の週刊誌、雑誌などで展開されてきました。
2009年05月05日
NHKは「政治家への事前説明」をやめ、放送と政治の分離を明確にすべきだ=石井長世
すでに新聞報道などで伝えられている通り、放送界の第三者機関であるBPO(放送倫理・
番組向上機構)の放送倫理検証委員会は、8年前の従軍慰安婦を扱ったNHK教育テレビの番組「問われる戦時性暴力」の改変問題で、
4か月に亘る審議を経て、先月28日、「自主自律の観点から問題があった」とする意見書を公表した。
その中では、「番組制作部門の責任者である放送総局長が、放送前日に当時の安倍官房副長官と面談して、番組内容を説明したりした行為は、
公共放送の自主・自律を危うくするもの」また、「日頃国会議員を接触する立場の担当局長が、面談に立ち会った後、
現場のプロデューサーやディレクターに直接改変を指示したほか、NHK幹部が入れ替わり立ち替わり改変を指示し、番組が散漫になった」
と指摘。公共放送として、やってはならない行為だという見識を示した。
2009年04月06日
封印された記憶を残しておきたい〜現役プロデューサーの志〜
3月27日、NHKの現役プロデューサーを招いて第32回放送フォーラムが開催された。
ゲストは、NHK番組制作局の塩田純氏。南京大虐殺の史実にも踏み込んだNHKスペシャル「日中戦争〜なぜ戦争は拡大したか〜」で、
文化庁芸術祭テレビ部門大賞を受賞するなど活躍している。
「こういう場で話すのははじめて」という塩田氏は、番組制作の秘話から現代史ドキュメンタリーにかける思いまで、
40名を超える参加者を前に語りかけた。
2009年01月20日
BPOの「ETV2001」改変事件「審議入り」決定について=放送を語る会
すでに報道されているように、NHKと民間放送連盟が設立した第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)
の放送倫理検証委員会が、1月9日の定例会議で、NHK「ETV2001」改変事件について「審議」に入ることを決定しました。
昨年9月、NHK職員とOBの有志が、事件の真相究明を求めて、放送倫理検証委員会(以下「検証委員会」という)に申し入れを行い、
続いて10月には、放送を語る会の呼びかけで、市民・各分野の研究者・
ジャーナリストの方々を賛同者とした同様の要請を検証委員会に対して行いました。
2008年05月04日
「ETV2001」番組改変裁判・最高裁で問われるもの=小滝一志(放送を語る会)
7年前NHKが放送した『ETV2001・問われる戦時性暴力』の改変を巡る裁判は、5月24日、最高裁での上告審の口頭弁論で結審し、6月21日に判決が言渡されるが、一連の裁判を通して、被告NHK側の事実を隠蔽する不誠実な姿勢が明らかになり、最高裁がどのような判断を下すか監視が必要だ。この裁判で、二審の東京高裁判決は、NHKが番組の改変を巡って番組の取材対象者である『「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク』(略称バウネット・ジャパン)に対する「説明義務」を怠り、また、バウネット側の「期待と信頼」の権利を侵害したと認定した。
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2008年02月06日
02・15 第28回放送フォーラム NHKはどこへ行くのか―記者が見た会長選出劇―
●日時:2008年2月15日(金)19:00〜21:00
●場所:渋谷勤労福祉会館 第1洋室 (渋谷公園通りパルコ角 tel03−3462−2511)
●講師:臺 宏士(だい ひろし)毎日新聞社会部記者
●参加費:800円(学生・会員500円)
●主催/放送を語る会 協賛/日本ジャーナリスト会議 メデイア総研
1月下旬、NHKの現役記者、ディレクターらによる株のインサイダー取引が発覚しました。安倍前首相の後押しによる経営委員長の就任や、視聴者の意向を無視した新会長人事など、協会を揺るがす大波が続く中、さらに大きな衝撃です。NHKは果たして言論報道機関たり得るのか? 視聴者からは重い問いが投げかけられています。
今日の事態を招いた協会経営の体質と、こうした混乱に乗じようとする政府権力・財界との関係をどう考えたらいいのか、今回の会長選出劇を中心に、取材した記者に率直な感想をお聞きします。(次頁に放送を語る会見解、「最近のNHKの動きについて〜インサイダー取引・会長・役員の辞任と交代〜」を掲載)。
2008年01月29日
いま、組織を変えるための行動を――NHKの連続する不祥事に思う=沖野 皓一
■一連の不祥事と通底する経営の無自覚さが原因
放送の現場で「ジャーナリスト」という言葉が聞かれなくなったと嘆く声を耳にする。しかし、特にここ1、2年のNHKの番組を見る限りでは、ジャーナリズムとして優れた番組が何本も出ている。黙々と頑張っている人たちが沢山居るのだと思う。ところが一方で、今回のような恥ずかしい事件が起きるのは何故なのだろうか。私は、職場での本音の議論が無くなっているのではないかと思う。
NHKは言論報道機関としての責任を果たせ=石井 長世
1月17日に発覚したNHK現役記者らの株のインサイダー取引をめぐって、メディアなどから、報道情報端末の管理のずさんさや、職場の気の緩み、コンプライアンス意識の欠如が指摘されているが、形式的な精神論では済まされない、もっと根本的な問題が根底にあるように思えてならない。
2008年01月28日
「インサイダー取引」の衝撃=報道局の現場から
記者やディレクター、カメラマン、編集などからなる報道局職員は、NHKの報道を支えているという自負があり、協会内では、よくも悪くもエリート意識の強い集団だ。これまでの不祥事についても、主に番組制作局などの職員によるもので、自分たちは、むしろ尻ぬぐいをさせられているという意識があった。しかるに、今回の事態は「身内」の不祥事で、言い訳ができない苦々しさを感じている。(報道局・現役記者)
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「インサイダー取引」――背景にNHKの巨大化
今回の問題では、記者らの倫理観の欠如と報道情報の管理のずさんさが指摘されているが、実は20年前からのNHKの商業主義化・巨大化が背景にあると考えられる。(NHK報道局OB)
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2007年12月16日
放送法改定とNHK会長後任人事=水上一郎
政府・ 自民党が、放送・通信分野での管理統制を強化する目的で出した放送法改正案は、世論などの批判を受けて、先の通常国会で継続審議となり、今臨時国会で民主党との合意によって、修正を加えたうえ再提出された。しかし、その中身を見ると、(1)捏造放送などを理由にした行政処分の条項を削除、(2)NHK経営委の野放しの権限強化のニュアンスを弱める、(3)NHK国際放送への放送命令の文言を「要請」に変える、(4)放送持株会社の出資上限を厳しくする、など、一見、批判の声に配慮したように見せかけた内容であるに過ぎない。
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2007年10月15日
REPORT:放送を語るつどい「今、テレビ“力”を問う」 水上一郎
「今、テレビ“力”を問う」をテーマに、9月22日東京で開かれた「放送を語るつどい」で、テレビマン・ユニオンの今野勉氏は、『あるある大事典U』事件などを例に、いま日本のテレビ界が抱える病理を指摘し、番組制作の質の低下に警鐘を鳴らした。
2007年10月14日
アニメ文化とアニメーター・演出家の生活向上めざし 協会を設立
いまや日本発の表現文化として世界に広がるアニメの世界。放送だけでなくネット配信も広がっている。原作を生み出す出版界との縁も深い。だがアニメーターたちの現実は厳しい。13日、アニメーターや演出家らが「日本アニメーター・演出協会」(略称:JAniCA=ジャニカ)設立を発表した。【編集部】