2024年02月20日

【出版界の動き】政治家が購入した<ヨイショ本>の使いみち=出版部会

◆「政治とカネ」をめぐる問題に関連し、「裏金」の使途が問われている。自民党の二階俊博元幹事長の資金管理団体「新政経研究会」は、2020〜23年の政治資金収支報告書を1月に訂正した。その報告書によると、17種類の書籍を27,700冊・総額3,470万円の支出が追加されていた。
 とりわけ大量に購入した本は、大仲吉一『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』(ブックマン社・2020年12/8刊)である。これを2021年に5,000冊・1,045万円も購入している。ほかに購入した6冊も、二階氏が主役≠フ<ヨイショ本>である。
 総選挙があった2021年には、15,800冊・総計2,264万円も書籍代として支出している。二階氏の資金管理団体・支出総額の54%を占める。日本の公共図書館が1年間に購入する図書費は、1館あたり平均836万円、それの約3倍近い金額を二階氏は使っていることになる。何の目的のために購入したのか。誰しも疑問に思うだけでなく、自分の当選に向けて使ったと判断するのは、しごく当然ではないか。
 著者も出版社も、買い切りを前提に返品のリスクもなし、印税も売り上げも確実、儲かればよいで済むのだろうか。もし「裏金」などが充てられているとしたら、<汚いカネのマネー・ロンダリング>に手を貸したことにならないか、疑問は尽きない。

◆今年に入って書店の閉店・廃業の深刻な状況は驚くばかり。書店数の減少はここ20年近く続き、年間で500〜600店が閉店に陥っている。その流れは2023年も食い止められず、2023年の閉店または廃業した書店は669店にのぼる。今年2024年には売場をもつ書店の数が7000店台に突入するのは確実な状況となっている。
 紙媒体の市場規模が急速に縮小し、とくに雑誌と紙コミックの売上げ低下が、大きな影響を及ぼしている。書店数の減少は、配送効率の低下を引き起こし、出版物流の根幹を揺るがす深刻な状況になっている。

◆23年12月の出版物販売金額887億円(前年比8.94%減)、書籍483億円(同7.5%減)、雑誌404億円(同10.0%減)。月刊誌354億円(同8.8%減)、週刊誌50億円(同17.9%減)。返品率は書籍29.1%、雑誌40.3%、月刊誌38.5%、週刊誌50.4%。相変わらず週刊誌の落ち込みが続く。週刊誌の売り上げは前年比マイナス20%に加え、返品率が最悪な状況になっている。
 おそらく今年は月刊誌だけでなく週刊誌の休刊も続出する気配が濃厚だ。

◆紙の雑誌・書籍の売上げは1996年2兆6,564億円をピークに減り続け、全国の書店も2000年の2万1654店舗から2020年には1万1024店舗へと20年で半減した。さらに今年は物流の2024年問題にも直面する日本の出版業界である。
 ところが世界の書籍出版業界は、2019年に約859億ドルと評価され、2020〜2027年には2%以上の成長率が見込まれる成長市場だという。なのに日本では、なぜそうならないか。そこには業界平均で約40%という「返本率の高さ」があると指摘されている。
 こうした出版業界の課題に立ち向かうために、ブックセラーズ&カンパニーが組織された。大手書店の紀伊國屋書店、TSUTAYAや蔦屋書店などを運営するCCC、取次の日販が共同出資して設立された。
 現在、同社の事業に約1000書店が参加し、出版社との直接取引をまとめ、流通の効率化を支援する。このほど出版社4社と直取引で合意し、3月から順次スタートする。

◆トップカルチャーの連結決算が発表され、当期純損失13億7600万円、減収損失の決算となった。メインである「蔦屋書店事業」は売上高179億6500万円(前年比12.2%減)、その他の部門でも全てがマイナス。日販からトーハンへの帳合変更によりトーハンの筆頭株主となり、26年までに売上高181億円を目ざす。そのためには「TSUTAYA」を減らさざるを得ない状況が続く。
 トップカルチャーは1987年からCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)とフランチャイズ契約を締結し、CCCは1都9県に書店「TSUTAYA」74店舗を展開している。 その閉鎖が止まらない。1月には30年の歴史を持つ東京・世田谷の象徴的な店舗も閉鎖。この10年で半数近くが消えた。書店ビジネスの再生や東京・渋谷のスクランブル交差点に面した新型「TSUTAYA」の開発など、再構築を進めるが、果たして成功するかどうか問われている。
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2024年01月26日

【出版トピックス】能登半島地震が招いた2つの出来事、そして本屋「書楽」再開=出版部会

■「インプ稼ぎ」
 能登半島地震が発生した直後から、12年前の東日本大地震で起きた大津波の動画を、自分の動画に貼り付け、あたかも能登地震に関係するかのように装い、Xに投稿するユーザーが急増した。
 これはフェイク動画を付けて「アッと驚かせ」、アクセス回数を増やし、広告収入を見込む金儲けを目的にした「インプレッション(表示回数)稼ぎ」が指摘されている。
 2023年夏にX社のイーロン・マスクが導入し展開している「広告収益分配プログラム」が悪用され、フェイク拡散を助長させている。
 この「広告収益分配プログラム」とは、有料サービスの「Xプレミアム」に登録したアカウントを使い、特定の条件を満たしたユーザーの投稿に「返信」の形で広告が掲載されると、広告収益の一部がユーザーに分配されるプログラムだ。こうしたフェイクを助長しかねない「インプ稼ぎ」には、何らかの規制が必要ではないか。

■本送らないで
 能登半島地震の被災地へ送られる「迷惑な支援物資」が問題となっている。賞味期限が切れている食品類、すでに使ったと思われる衣類や消耗品の残り、たとえ善意からの支援だとしても、現地では扱いに困っているのが実情だ。
 そんな中、「日本図書館協会」は、被災地以外に住む一般の人々に向け「被災地や避難所に直接、本は送らないでください」と呼びかけている。阪神・淡路大震災や東日本大震災の経験から、「被災地に本を送っても、読書ニーズよりも被災の片づけ作業にてんてこ舞いの上、置き場所がなく廃棄せざるをえないケースが出た」という。
 それでは、どう支援すべきか。日本図書館協会は、被災地の県立図書館と連絡を取り合い、設備を復旧した後に本を補充する援助に傾注したいとする。本を直接送るのではなく資金援助により、各図書館が現地のニーズや要望に合わせた本を選書し揃えていく手助けだ。「図書館災害対策のための指定寄付金」も募集している。

■営業を継続
 東京のJR中央線阿佐ヶ谷駅前南口のロータリーにある書店「書楽」は、ビル1階の110坪を擁し43年間営業してきたが、今年1月に閉店を表明していた。その後、閉店を惜しむ声が大きくなり、八重洲ブックセンターが店舗を引き継ぎ、2月中旬には再オープンすることになった。
 この営業継続に多くの人々が慶び、応援しているという。とりわけ東京都内でも区市町村62自治体のうち7自治体が書店ゼロ、書店1軒の自治体と合わせれば2割に近い。書店が減ることへの危機感が広がり、「町の本屋さん」存続への取り組みが、業界内外で共有されるようになってきた成果である。
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2024年01月18日

【出版界の動き】読者・クリエイター・地域と協働する新たな挑戦=出版部会

◆能登半島地震による書店被害状況は、1月5日午前10時時点で被災書店309店。そのうち「再開未定」が24店、「状況確認中」が5店。280店が「すでに営業再開および一部のみで営業再開」している。
 北陸地方に店舗展開する勝木書店では、ほぼ全店で商品落下などの被害。石川県内の6店舗が大きな被害。天井やガラス什器が破損。同地域が断水のため臨時休業中。復旧のめどがたっていない。

◆23年11月の出版物販売金額865億円(前年比5.4%減)、書籍493億円(同2.9%減)、雑誌372億円(同8.5%減)。月刊誌313億円(同9.2%減)、週刊誌58億円(同4.2%減)。返品率は書籍34.0%、雑誌42.2%、月刊誌41.0%、週刊誌47.8%。相変わらず週刊誌の落ち込みが続く。
 23年の年間販売金額は1兆638億円前後。かろうじて1兆円は維持したが、それも定価値上げに負うところが大きい。

◆出版物のルート別販売金額を見ると、マイナス幅が大きいのはコンビニルート。23年度の売り上げは1000億円を下回り、22年1172億円から20.4%減となった。1996年はコンビニでの出版物販売額が5571億円でピークとなったが、その後、漸減し続け今や6分の1となった。
 日販のコンビニ配送からの撤退、紀伊國屋書店・CCC・日販の新会社ブックセラーズ&カンパニーが設立されたことも、影響しているのは間違いない。しかし、書店1万店の輸送網は6万店のコンビニルートによって成立している以上、コンビニ流通を守ることは書店配達を維持することと直結する。出版配送網インフラを拡充するうえで、コンビニ配送の位置づけを再確認すべきではないか。

◆メディアドゥは、昨年12月期の電子書籍・流通額(ジャンル別)の成長率を発表した。「コミック」が前年比2.5%増、「縦スクロールコミック」が同88.6%増、「写真集」が同3.3%減、「書籍」が同3.8%増、「雑誌」が同0.6%減。総合では前年同月比2.7%増だった。
 ここで特筆すべきなのは「縦スクロールコミック」の急成長である。本においてはジャンルを問わず、いかに「縦読み」が読み手の自然な習慣になっているか、その証明でもある。

◆日販が運営する入場料のある本屋「文喫」が、名古屋にある中日新聞社の「中日ビル」に4月23日にオープンする。これまでの2店舗(六本木、福岡天神)と比べて圧倒的な広さを誇る、約370坪の大規模な店舗。
 162席の座席を有する大喫茶ホールに、一点一点選書した約3万冊の書籍を取り揃える。さらに、おかわり自由の珈琲、紅茶サービスも用意する。

◆インターネット上の 誹謗 中傷への対策を強化するため、政府はプロバイダー責任制限法の改正案を、1月26日の通常国会に提出する。X(旧ツイッター)やメタ、グーグルなどを念頭に、SNSを運営する大手企業に対し、不適切な投稿を削除するよう申請があった場合、迅速な対応や削除基準の公表などを義務付ける。
 SNSの運営企業の大半は海外勢で、削除の手続きや窓口のわかりにくさなどが指摘され、申請後も対応結果が確認できないケースもあった。今回の法改正は、誹謗中傷など権利を侵害する違法な投稿を対象としている。同様に対応が急務になっている偽情報や誤情報への対策は引き続き検討する。

◆創設50年になる仮説社という小さな出版社がある。東京・巣鴨にあるビルの3階の社内は3分の1が、本やグッズを販売する書店になっている。自社の本はもちろんだが、古本や個人出版の本(「ガリ本」と呼ぶ)から、実験器具やおもちゃ、手品からミジンコ、ガチャなども並べている。
 この売り場の一隅に机と椅子をおき、夏休み自由研究講座や煮干しの解剖講座、近所の子どもたちを集めて仮説実験授業などを教える科学教室まで始めている。ちなみに同社発行の『うに―とげとげいきもの きたむらさきうにの ひみつ』が、こども家庭庁の2023年度児童福祉文化財の推薦作品となっている。

◆映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」がブームとなるなか、水木しげるさんの故郷・鳥取県境港市でスタートした、「とっとりクリエイターズ・ビレッジ」と名付けるプロジェクトが大反響を呼んでいる。
 講談社「クリエイターズラボ」が、鳥取県と連携し地方創生とデジタルクリエイター支援を併せ持つプロジェクトを開始。あらゆるデジタルツールを駆使して創作活動している県外のクリエイターを境港市に呼び、生活の心配をせずに創作に打ち込んでもらう取り組みだ。
 4月1日から2年間は境港市に居住して活動すること、その後も鳥取県に住み続ける意志があることなどを条件に、毎月約20万円(税別)が支給されるという。さらに担当編集がついて活動を支援し、創作講座が受けられるなどの特典が付く。このプロジェクトに参加できるクリエイターは5人。応募締め切りは2024年1月15日。

◆末尾ながら、今年2024年は世界的な選挙イヤーになる。台湾総統選挙(2024年1月)→インドネシア大統領選挙(2024年2月)→ロシア大統領選挙(2024年3月)→韓国総選挙(2024年4月)→インド総選挙(2024年4月〜5月)→欧州議会議員選挙(2024年6月)→メキシコ大統領選挙(2024年6月)→東京都知事選挙(2024年7月までに)→自由民主党総裁選挙(2024年9月までに)→アメリカ大統領選挙(2024年11月5日)→参議院議員選挙(2025年)
 なかでも影響が大きいのは、アメリカ大統領選挙。ドナルド・トランプ再選でもなれば、“同盟国にとっての「悪夢」”が再来、動向が注目される。
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2023年12月23日

【出版トピックス】北海道や香川での地道な出版活動にエール!=出版部会

「北海道デジタル出版推進協会」は、北海道で出版された本で、道外の人が入手困難な作品を電子化して全国に売る事業を始めている。現在販売している電子化した会員出版社の書籍・雑誌は約1050点。電子書店で一般向けに販売する。
 史上最悪の被害とされた苫前町の三毛別ヒグマ事件を記録した木村盛武『慟哭の谷』(共同文化社)が良く売れているという。do.jpg

2023年下半期の直木賞にノミネートされた作品には河ア秋子『ともぐい』(新潮社)がある。内容は「明治後期の北海道の山で、犬を相棒にひとり狩猟をして生きていた熊爪は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていた。人と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬の果てに待つ運命がすべてを狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!」と紹介されている。
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小豆島などがある四国の香川県で建築家の安藤忠雄さんが提案する、本を積んだ船「図書館船」を2025年春に運航開始することになった。県内の島などを行き来して、本の閲覧などを促進する「図書館船」は、子どもの郷土愛を育み、地域活性化や離島との交流拡大に役立つ。
 この5月に安藤さんから「3000冊程度の図書を搭載できる小型の船舶を取得して改造し、来年末までに県に寄贈するので、子どもたちのために有効活用してほしい」という意向が示されていた。

香川県・高松市に“ひとり出版社”を立ち上げた作家の佐々木良さんが、万葉集を現代の言葉で読み解いた本を刊行。これまでの発行部数、計20万部・1億円を売り上げというヒット作となった。高松市内の小さなオフィス(家賃は月4千円)を拠点に、執筆から販売までひとりで手掛けて出版した。
 また8月に、ユニークなシステムの“ひとり書店”が丸亀市にオープンした。地元出身の藤田一輝さんが立ち上げた。店内には四方30センチほどの本棚スペースが60、このスペースを一般に貸し出している。本棚ひとつひとつが “個人経営の書店”として、思い思いに自分でセレクトした本を置き販売できる。

黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)が1981年3月6日に刊行されて42年。ついに全世界で2500万部を突破し、「世界一売れている自叙伝」として、この12月14日、ギネス世界記録に認定された。
 国内では現在まで108 刷と増刷を重ね、単行本だけで 585 万部、文庫版などの形態を含めると、800 万部以上を売り上げている。世界では20 以上の言語で翻訳され、特に中国では小学校の教科書にも収録され、1600 万部を記録している。
 なお『続 窓ぎわのトットちゃん』も発売2カ月で 50 万部を突破、初の映像化となるアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』も好評だ。

10月から始まった「インボイス制度」について、フリーランス協会が調査した結果、フリーランスの41.5%が登録し、34.9%が登録せず免税事業者を継続している。報酬については「変わらず」が55.9%、「一方的な通知で契約解除や値下げ」になったのが17.2%だった。
 報酬が値下げされた場合、発注業者との取引について継続を見直すというフリーランスは51.3%にのぼる。

LINEヤフーが主催する、2023年「LINEジャーナリズム賞」の大賞に、毎日新聞デジタルの連載「『私はなにを』…1年後も続く罪悪感 新型出生前診断(NIPT)は命の選別か、それとも希望か」を選んだ。出生前診断に悩む妊婦と先天的な障害を持って生まれた子の家族を追った。
 同賞は「LINE NEWS」に配信された各媒体の記事から社会課題を工夫して伝えたものを表彰しようと19年に創設された。
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2023年12月12日

【出版とメディアの動き】日本の電子出版とEUの「AI規制」=出版部会

◆2023年10月の出版物の販売金額848億円(前年比0.4%増)。書籍498億円(同2.8%増)、雑誌350億円(同2.9%減)。月刊誌295億円(同0.2%減)、週刊誌54億円(同15.6%減)。返品率は書籍33.8%、雑誌44.9%、月刊誌43.7%、週刊誌50.4%。週刊誌の月次の50%超えは初めて。
 なお書籍の売り上げは9月に続いて2ヵ月連続のプラス。これは初版30万部の『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社)の刊行や既刊の平均価格アップに依るところが大きい。

◆日販による「出版物販売額の実態」最新版(2023年版)によると、2022年度の出版物総売り上げは1兆4020億円(前年比3.1%減)。販売ルート別にみると書店経由8157億円(全体比58.2%)、インターネット経由2872億円(同20.5%)。インターネット経由の出版物販売額は著しい成長率を見せ、出版物の総売り上げに占めるシェアを拡大しつつある。
 とりわけ電子出版物の市場は、2022年度 6670億円(前年比7.5%増)という伸長ぶりからして、ますますインターネット経由での購入が増えるのは確実だ。
 これまで出版物は本屋さんでの購入が唯一のルートだったが、今やコンビニやインターネット経由での購入が強まり、電子出版の購入に至ってはインターネット経由が激増している。

◆今年の出版業界は、電子出版の市場拡大に負うところが大きい1年となった。2023年度の出版物推定販売金額は約1兆1千億円(前年比3.7%減)と低迷が見込まれる中で、電子出版市場だけは約5千億円(同 7.1%増)を超える見通しで、その勢いは止まらない。
 紙の出版物が大幅な販売減に陥いり、それを補うのが電子出版市場の成長だと言える。この成長の背景には、米Amazon社が販売する「Kindle電子書籍リーダー」など、読書端末の技術開拓と高度化がある上に、各出版社が多様なコンテンツを提供するようになり、販売面でもオンライン販売やプラットフォームの拡大を進め、ユーザーの利便性とアクセス可能性を向上させているからだ。この流れを無視しての出版事業は、もう成り立たないのではないか。

◆イーロン・マスクCEOのX(旧ツイッター) に見切りをつける大手広告主の動きが加速している。その引きがねの一つとなったのが、彼の反ユダヤ主義的な発言を含むコメントにある。IBM、Apple、CNN、ディズニーなどの大手広告主がXへの広告出稿を停止している。
 一方、マスク氏は、広告ボイコットを一種の陰謀と見なし、広告主を糾弾しているため、さらなる打撃をこうむる可能性がある。これまでXの経営陣は、他のプラットフォームと比較して、広告主との関係を第一優先にせず、広告主との溝を深めているという背景も指摘されている。

◆欧州連合(EU)が世界で初となる人口知能(AI)を包括的に規制する法案を発表した。EU域内人口4億5千万人に適用する「AI法案」は、今後、「世界標準」になる可能性がある。EUは細部を詰めたうえで2026年には施行を目指すという。
 この法案は、基本的人権の尊重を前提にして、AIの利用を@容認できないA高いB限定的C最小限の4段階に分け、段階ごとに義務を課す。まず最も危険な分類@「許容できないリスク」では、行政が経歴などを使って個人を点数化してAIに信用評価をさせたりすることや政府が個人の遠隔生体認証に使うことが禁止される。
 2番目に危険とされる分類A「高リスク」には、プロファイリングによる犯罪予測や入試・採用試験での評価などが入り、企業はどのようにAIを使ったか追跡や監査ができるよう記録を残す義務が課される。さらに生成AIの「チャットGTP」や「汎用AI」にも、厳しいルールを課す。
 対応を怠った企業には、最も重い違反の場合「3500万ユーロ(約54億円)」か「年間世界売上高の7%」を上限に制裁金を科す。
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2023年12月04日

【出版トピックス】注目! 2つの老舗雑誌が挑戦、新しい試み=出版部会

雑誌「世界」25年ぶりリニューアル
 敗戦後すぐに発売された(1945年12月)クオリティ雑誌「世界」(岩波書店 月刊)が、25年ぶりに2024年1月号(12/8発売)からリニューアルする。女性や若い世代をはじめ、幅広い読者と豊かなコミュニケーションの場がつくれるよう、身近で血の通った雑誌を目指し、アカデミア・社会運動・ジャーナリズムを繋ぐ雑誌を目指すという。
 リニューアルのポイントは、新デザイナーに須田杏菜さんを迎え、題字の書体を始め表紙や誌面のデザインを一新し、ジェンダーやAIなど、これまで大きく扱ってこなかったテーマにも積極的に挑戦、新しい書き手の登場、新時代の作家によるリレー・エッセイ、電子版の配信開始などに取り組む。
 編集長は堀由貴子さん:大阪府生まれ。2009年に岩波書店に入社し、2017年末まで「世界」編集部に所属。その後単行本編集部で坂上香『プリズン・サークル』、伊藤詩織『裸で泳ぐ』、榎本空『それで君の声はどこにあるんだ?』など担当。2022年10月より「世界」編集長に就任。

「小説現代」漫画245ページ収載
 「小説現代」(講談社刊)は、10月号で加藤シゲアキさんの小説「なれのはて」を大特集し、創刊60年になる同誌の史上3度目の完売を果たした。それに続いて同誌12月号(11/22発売)に、樺ユキ「画家とAI」の漫画作品を収録した。芸術・AI・戦争を描いた全編245ページの大作である。
 作品の概要は、「戦争の影が忍び寄る小さな国に生きる若き画家・モーリスが新種の生物ノームと出会い、そのノームの能力に感激するが、次第に自分たちの仕事がノームに奪われていく物語」である。
 もともとは漫画配信サイト「モーニング・ツー・WEB」で連載されていた。ここでの発表後、紙で読みたいという要望もあり、「小説現代」に掲載となった。同編集部では、「画家とAI」はウクライナやパレスチナでの戦争や生成AIが惹起している課題などを彷彿とさせる作品で、活字読者も読んでほしいと意気込んでいる。
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2023年11月14日

【出版界の動き】本離れ打開で創意あふれる意欲的な取り組み=出版部会

◆今や日本全国の自治体の4分の1以上が本屋のない「無書店自治体」と言われる。身近に本が買える環境を、どう作り維持するか模索が進んでいる。そのユニークな取り組みの一つを紹介する。
 岩手県西和賀町は、過疎化が進む人口約5千人の町、そこを通るJR北上線「ほっとゆだ」駅から近い「湯本屋内温泉プール」のロビーに、「本屋」が20年ぶりに復活した。約3千冊の小説や絵本、漫画が売られている。
 いわゆる新刊書店とは異なり、町と「ブックオフ」が協定を結び、住民側が運営する「ふるさとブックオフ」の1号店としてスタート。本はブックオフ側が選び、施設の指定管理者である西和賀町水泳協会に委託し1冊100〜300円で販売する。1冊売れるごとに販売価格の10%が同協会に支払われる。
 いま紅葉の名所として観光客も訪れる「ほっとゆだ」駅、「湯本屋内温泉プール」に浸かった後、ロビーで本に出合い楽しめる粋な取り組みとして注目されている。

◆直木賞作家の今村翔吾さんが、JR佐賀駅に新しい「佐賀之書店」を12月3日にオープンする。7年前に今村さんが「九州さが大衆文学賞」を受賞したのを縁に、佐賀市在住の「カリスマ書店員」本間悠さんを店長にして、「様々な形で出版の光を絶やさないよう模索していく」と意気込んでいる。今村さんにとっては、21年11月に大阪府箕面市で書店を事業継承した「きのしたブックセンター」に次ぐ書店経営になる。

◆日販が運営する「ほんたす ためいけ」溜池山王メトロピア店(店舗面積15坪)も注目されている。完全なる無人書店。ここに入るにはLINEミニアプリを活用し、決済はキャッシュレス決済のみ。
 これからの無人書店の活用を想定すれば、大学周辺では学術書・専門書を並べ学生・研究者をサポート。各種スタジアム近くでは球技やスポーツ、音楽やアーティストらの関連書。山深い地方のサービスエリアではアウトドア関連書、大病院内には健康増進書・入院患者の心休まる書物など、場所や施設の特徴を視野に、その場所にあった顧客のニーズに応える本を揃える、無人書店の設置が考えられるという。巨額な設備投資や書店員を確保しなくとも、一定の収益が得られるのは出版界にとっても大きい。

◆黒柳徹子『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社、10/3発売)の発行部数が、発売1週間で30万部を突破。国内で800万部、世界では2500万部超のベストセラーとなった『窓ぎわのトットちゃん』の42年ぶりの続編ということもあり、書店からの注文が殺到している。
 12月8日に公開のアニメ映画「窓ぎわのトットちゃん」(監督・脚本:八鍬新之助、配給:東宝)に合わせて、『映画 窓ぎわのトットちゃん ストーリーブック』(本体1500円)を11月に刊行する。

◆「秋の読書推進月間」が10月27日から始まったのを機に、「第31回神保町ブックフェスティバル」が28日〜29日に開催された。初日の売上げ4200万円、2日目3300万円、計7500万円(前年比18%増)。来場者は2日間で推定13万人、前回の10万人から3割増えた。出店した出版社は156社(前回14社)。決して本が見放されているわけではない。ニーズに合わせた企画の大切さが鍵となっている。

◆23年9月の出版物販売金額1078億円(前年比2.6%増)、書籍668億円(同5.3%増)、雑誌409億円(同1.6%減)。月刊誌353億円(同0.1%増)、週刊誌55億円(同11.1%減)。返品率は書籍29.3%、雑誌39.4%、月刊誌37.8%、週刊誌48.0%。
 書籍・雑誌を合計した販売金額が前年比プラスは21年11月以来、書籍の前年比プラスは22年1月以来となる。
 23年度の推定販売金額は、1兆570億円前後と試算されている。ピーク時の1996年には2兆6564億円の販売金額があったのだから、なんと27年間で半分以下の40%にまで落ち込んでしまったことになる。
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2023年10月20日

【出版トピックス】21歳の読書率─1カ月に読んだ本「0冊」が62.3%=萩山 拓(ライター)

10年で激減の読書量
 文科省が2022年に行った「21世紀出生児縦断調査」の結果内容を公開した。これは少子化対策を企画立案するため、2001年度から始めた調査だ。すなわち2001年に生まれた特定の子供に対し、毎年多岐にわたる質問をして、その後の変化を調べている。今回は21歳になる約2万2千人分の回答を分析した。
 その質問の一つとして、「この1カ月に読んだ紙の書籍(本)の数」を尋ねたところ、なんと「0冊」が62.3%、「1冊」は19.7%、「2〜3冊」が12.3%、「4冊以上」は5.8%だった。電子書籍(本)の数を尋ねても「0冊」が78.1%を占めた。
 同じ特定の子供が10歳の時には「1カ月に0冊」は10.3%(保護者からの回答を集計)だった実態と比べて、10年の間に読書量が大きく落ち込んでいるのが顕著になっている。本を読まないだけでなく新聞を読みテレビをみる若者もかなり減っているという。

「読書離れ」深く考える
 背景には何があるのだろう。交流サイト(SNS)や動画投稿サイトの普及が一因と指摘されている。その一方で若者たちの社会参画の機会が増え、読書以外に目が向くようになったというポジティブな要因も考慮すべきだろう。
 21歳という時点に限っての結果だけで、若者の「読書離れ」を論ずる危惧も指摘されている。10歳から21歳、さらには30歳へと成長していく過程で、人生にも変化が起き、図書館の充実・文化施設の拡充などの社会環境の変化と合わせ、一人ひとりに訪れる転機や機会を得て「読書」に戻ることもある。
 こうした視野を踏まえての議論が必要になっているのではと思う。この6月に刊行された飯田一史『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)は、この20年間でV字回復した小中学生の読書力を考察し、21歳以降の若者たちへ示唆に富む提言をしている。読書を通じZ世代のカルチャーにも迫る。参考になる一冊だ。               
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2023年10月13日

【出版界の動き】売り上げ急減、雑誌再建、フリーランス保護へ=出版部会

◆出版の売り上げが今夏は急減し、前年8月と比較して11.3%も落ち込んだ。8月の出版物販売金額711億円(前年同月比11.3%減)、書籍378億円(同10.6%減)、雑誌350億円(同0.5%増)。月刊誌277億円(同12.0%減)、週刊誌55億円(同12.0%減)。返品率は書籍40.2%、雑誌44.4%、月刊誌43.7%、週刊誌47.6%。いずれも40%を超える高返品率が続く。出版物販売金額の減少は23年4月の12.8%に続く二桁マイナス。猛暑が影響したか。

◆1999年にオープンした「SHIBUYA TSUTAYA」が、改装のために10月1日から一時休業し、来年春に再開業する。DVDやCDのレンタル業態の旗艦店として、地上2Fから屋上まで11フロアを有し、雑誌・書籍も販売してきた。その一方、TSUTAYAの大型店が閉店する流れは加速し、8月も6店が閉店している。

◆朝日新聞出版が10月5日、国内の一般向け科学雑誌「Newton」(発行元・ニュートンプレス)を買収。40年以上の歴史を持つ「Newton」は、創刊当時は数十万部を発行し、1980年代の科学雑誌ブームの火付け役となった。だが現在の販売数は約8万部と低迷。負債総額は約18億円。
 科学雑誌ブームも2000年代に入ると逆風にさらされ、朝日新聞発行の「科学朝日」(1941年創刊)が2000年に休刊、驚異的な部数を誇っていた学研の小学生向け「科学」(1946年創刊)も2010年に休刊。その後 、2022年夏に「学研の科学」として復刊した。
 「Newton」の発行元・ニュートンプレスも経営危機に陥ったが、2020年9月に民事再生手続きが終結。今後は事業基盤の安定化に向けた再生計画の推進を、朝日新聞グループが全面的にサポートしながら、2024年に民事再生債権の完済を予定しているという。「Newton」の紙面充実を図り、新たな読者獲得に全力を挙げる。

◆東京地裁は10月10日、出版大手KADOKAWAの元専務に、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。東京五輪のスポンサー契約をめぐる汚職事件で、大会理事に約7000万円の賄賂を渡した罪が問われた。
 裁判長は「大きなビジネスチャンスを得たいなどという利己的な動機から相当高額な賄賂を渡し、大会に汚点を残した。専務として違法行為の可能性を十分認識しながら元理事の要求に応じ、臭いものに蓋をしたまま犯行に及んだ」と指摘した。

◆「フリーランス新法」が2023年4月28日に成立し、来年11月に施行される。それまでに指針・政省令を策定する。現在、策定に向けた検討会が開かれ、フリーランス各団体へのヒヤリングが行われている。
 出版ネッツは厚生労働省や公正取引委員会等からヒヤリングを受け、すでに実施したフリーランス新法アンケート調査結果(https://union-nets.org/archives/9110)をもとに、出版・WEB関連で働くフリーランスの実態と声を伝えている。
 「取引条件の明示事項」に入れてほしいものとして、<契約についての教育・研修の実施と、契約書に関する相談窓口の設置>などを挙げ、「就業環境整備」に関しては、<妊娠や子育てを理由に発注取り消しや契約打ち切りを行わないこと、勤務時間の変更や納期についての配慮>などを要望している。

◆イーロンマスクがツイッター社を買収し、ブランド名をTwitterからXに変更して以降、力を入れていたニュース部門を縮小し大量のレイオフを行なった。その結果、広告主が離れ広告収入が50%減少する中で新しいCEOを雇い、立て直しをはかっている。コンテンツ収益化を打ち出し、メディアに積極的なプロモーションをかけている。だが「メディア側は用心したほうが良い。ニュース部門を縮小させている以上、Xの狙いがどこにあるか、吟味したほうが得策だ」という識者の声を尊重したい。
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2023年10月10日

【出版の現場】インボイス制度による価格・報酬の引き下げを許すな!=萩山 拓(ライター)

もうシワ寄せが
 10月1日に施行されたインボイス制度で、もうフリーランスら小規模事業者が影響を受けている。フリーランスの一部には、9月いっぱいで契約終了、10月から報酬を2%引き下げると、発注者から言われる事例が発生している。
 とりわけ雑誌などの出版分野で働くフリーランスには、「このイラスト1点4千円で、この取材記事1200字2千円で」といった、狭い人間関係による口約束での仕事が多い。税抜きか税込みかの区別もなく、中には振り込まれるまで金額が分からず、あいまいな受発注による仕事が横行している。その上にインボイス制度で、消費税分を収めるとなれば、踏んだり蹴ったりになるのは目に見えている。


買い手側に勧告
 こうしたフリーランスの実態を受けてか、政府はインボイス制度の運営を巡り、施行直前の9月29日、関係閣僚会議を開いた。インボイス登録申請件数は、9月15日時点で約403万件。売り上げが年間1000万円以下の免税事業者が、インボイス登録を申請したのは約111万者。免税事業者160万者の約7割にあたる。
 経産省は「中小企業・小規模事業者(売り手側)が、消費税負担によって生じる減収分を、発注事業者(買い手側)に取引価格に上乗せできるよう、環境整備と対策を粘り強く継続していきたい」という。
 さらに公正取引委員会は、これまでに寄せられた相談約3,000 件に対応し、価格転嫁の円滑化にそぐわない優越的地位の濫用につながる事案が35件に上り注意したという。
 公取では引き続き、違反行為の未然防止を図り、独占禁止法や下請法に違反する行為には厳正に対処していくとしている。

必要な価格転嫁
 政府として、弱い立場におかれるフリーランスや小規模事業者が、インボイス制度によって、発注業者から強要される「報酬・取引価格」の引き下げを防ぎ、価格転嫁をバックアップする姿勢を明示したのは前進だが、有効に実行されるか、それが肝心だ。
 フリーランス協会では、報酬適正化に向けた価格転嫁の重要性と、「買いたたき」など法令違反の取り締まりが必要だと言い続けている。人出不足の中、優秀なフリーランスと取引するには、適正な価格・報酬を支払わなければダメ。その企業責任を、事業者は自覚すべきである。
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2023年09月23日

【出版トピックス】紀伊国屋書店・CCC・日販3社が進める流通改善計画=萩山 拓(ライター)


23年間で1万の本屋消えた
 人口減少やネット販売の浸透で、書店数は減り続けている。2022年度の日本の書店数は11,495店、1年間で477店が閉鎖に追い込まれた。1999年には22,296店あったのだから、なんと23年間で半減、約11,000店もの「町の本屋さん」が消えたことになる。また全国市区町村のうち4分の1を超える自治体が書店ゼロの市町村となっている。

書店が出版社から直仕入れ
 こうした書店をめぐる苦境を打開するために、ここにきて取次各社や書店業界が書店の利益率を増やすために、出版流通の改善計画を加速させている。その一つの動きが粗利率30%以上の取引拡大を図る紀伊国屋書店、「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、出版取次大手・日販の3社が設立した共同出資会社である。
 書店が主導して、出版社から直接に本を仕入れる流通スキームの構築を目指している。各出版社が発行する多種多様な出版物を、書店を通じて全国各地の読者に届けられる流通サイクルを作り出し、そのサイクルが持続可能になるように共同プロジェクトを進める会社だ。業界の成長に加えて日本の文化と社会の発展に寄与することも狙う。

AI発注システムの活用
 3社の協議を通じて、書店と出版社が販売・返品について協議を重ねながら送品数を決定する、新たな直仕入れスキームの構築を目指す。粗利率が30%以上となる取引を増やすことで書店事業の経営健全性を高め、街に書店が在り続ける未来を実現させていきたい考えだという。
 新たな直仕入スキームの構築に際し、紀伊國屋書店・CCC・日販各社が保有するシステムやインフラストラクチャー、単品販売データなどを活用し、欠品による販売機会の喪失を最小化する。と同時に売り上げ増大と返品削減、環境に優しい流通を実現し、読者・書店・取次・出版社全員のメリットを向上させることを構想している。
 さらにAI発注システムを活用した、精度の高い需要予測に基づく適正仕入れや、適時適量かつESGに基づくサスティナブルな環境・働く人に優しい流通の実現を図る。ユーザーの利便性を向上させる努力で購入者の拡大・購入数の増加に向け、書店横断型サービス・共通アプリなども視野に入れた新たな販売促進施策やレコメンド施策を実施する。
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2023年09月15日

【出版界の動き】<鵺(ぬえ)の政権>といわれる再改造内閣の狙い=出版部会

第2次岸田政権の再改造内閣が発足した13日、朝日新聞政治部『鵺(ぬえ)の政権─ドキュメント岸田官邸620日』(朝日新書)が発売された。官邸の中枢や岸田首相の周辺を徹底取材し、その「状況追従主義」を浮き彫りにし、衆院解散・総選挙や総裁再選をめざす首相の動向も考察。
  「鵺」といえば、京極夏彦「百鬼夜行」シリーズの書き下ろし・17年ぶりの最新長編『鵼の碑(ぬえのいしぶみ)』(講談社ノベルス)も、14日に発売。累計部数1000万部を突破する同シリーズ。紀伊國屋書店では発売日から全店でオリジナルブックカバー1万枚を配布する。
 また黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』の続編が、42年ぶりの10月3日、講談社から刊行される。初めてアニメ映画化も決定し、12月8日(金)から全国東宝系にて公開される。
 『窓ぎわのトットちゃん』は、現在までに累計発行部数は日本国内で800万部、全世界で2500万部を突破。20以上の言語で翻訳され、世界中の人々の心を捉え、今もなお世代を超えて愛され続けている。

23年7月の出版物販売金額738億円(前年比0.9%減)、書籍388億円(同2.2%減)、雑誌350億円(同0.5%増)。月刊誌293億円(同3.2%増)、週刊誌56億円(同11.7%減)。返品率は書籍41.0%、雑誌42.9%、月刊誌42.0%、週刊誌47.1%。いずれも40%を超える高返品率が続く。

出版大手3社(講談社・小学館・集英社)が共同して、新刊コミックスなどに入れる「しおり」に、PubteX が供給するRFIDタグを埋めこみ、製本会社で本体に挿入作業をしたうえで配本する実証実験を、9月から一部の書店で開始している。その成果や問題点を把握し、流通や在庫管理などに応用する。
 さらにAIによる配本最適化ソリューション事業も進め、出版界のサプライチェーンを再構築していく予定だという。

2023年度新聞協会賞(9/6発表)は以下の通り。
▼読売新聞東京本社:<「海外臓器売買・あっせん」を巡る一連のスクープ>
▼神戸新聞社:<神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道>
▼毎日新聞西部本社:<「伝えていかねば」沖縄・渡嘉敷島 集団自決の生存者>
▼NHK:<「精神科病院で患者虐待や高い死亡退院率」の一連のスクープと調査報道>
▼西日本新聞社:<人権新時代>
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2023年09月05日

【出版トピック】紙雑誌と電子コミックの現在が示す出版の未来について=萩山拓

 メディアドゥの新名 新さんが、日本電子出版協会のJEPAニュース316号(8/31付け)に上記の見出しタイトルで、一文を寄せている。その内容を要約して紹介したい。

驚異的な電子の伸張
 いまや電子コミックの売上げは4479億円。いっぽう紙雑誌(コミックを除く)の売上げは2767億円。電子コミックが紙雑誌の1.6倍もの売り上げだ。雑誌扱いコミックや紙のコミック雑誌を加えてみても紙雑誌の売り上げは4795億円だから、ほぼ拮抗する。
 電子コミックの驚異的な伸びが、紙出版の売上げ減を補い、出版界の衰退をくい止めている勘定になる。

ビジネスモデル革新
 電子コミックはなぜこんなに売上げが伸びたのか。
1)『鬼滅の刃』を始めとするヒット作に恵まれ、2)コロナによる引き籠もり特需も効果があり、3)アニメの製作数と放送(配信)枠が増えた─などなどが考えられる。
 しかし、電子コミックの流通におけるビジネスモデルの革新が、大きな理由のひとつだと考えている。まず合本によるまとめ買い、分冊による離し売り、読み放題のサブスクリプションモデル、一定期間まで待てば無料で読める連載、大胆な無料施策と価格政策、極めつけは縦スクロールという新しい形式の開発と導入である。

紙書籍復権に向けて
 今後、雑誌の復権は無理としても、一般書籍がかつての輝きを取り戻すためには、この技術とビジネスモデルの革新が必要だと思う。それはNFTデジタル特典付書籍のような紙書籍の新しいビジネスモデルなのか、もしかすると技術革新ではなく、旧来の委託制と再版制の抜本的変革なのかもしれない。
 いずれにせよ、業界にとってある種の痛みを伴う改革の時が迫って来ているように思える。過去10年間、アメリカやドイツの書籍出版市場も、ほぼ横ばいで推移している。両国ともセルフパブリッシングが盛んなので、それを含めれば実際にはやや成長しているかもしれない。
 日本の出版市場が、欧米のような健全性を取り戻すためには、そろそろ痛みを引き受ける覚悟をしなければならないようだ。
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2023年08月19日

【出版界の動き】漫画『はだしのゲン』50年─今に生きる貴重な叫び=出版部会

■23年6月の出版物販売金額792億円(前年比8.1%減)、書籍420億円(同4.7%減)、雑誌371億円(同11.9%減)。月刊誌313億円(同11.7%減)、週刊誌58億円(同15.0%減)。返品率は書籍41.5%、雑誌48.4%、月刊誌41.6%、週刊誌48.4%。いずれも40%を超える高返品率が2カ月続く。

■23年3月末時点で、日本にある書店は1万1149店(前年比457店減)。だが一定の坪数がある書店に限ると8478店(同328店減)に減る。1960年代には2万6000店あったので、4分の1になってしまった。
 4月には鳥取の老舗書店・定有堂の閉店に続き、6月までに書店閉店は62店と続出。TSUTAYAの大型店7店、西友の9店、トップカルチャーが不採算の10〜20店を閉店、7月末には名古屋のちくさ正文館が閉店。八重洲BCの赤字1.9億円も伝えられ、書店の窮状は深刻だ。

■インボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP!インボイス)が、10月に実施を強行する政府に、1カ月前の9月4日、インボイス制度の延期を求める緊急提言(案)と実施強行に反対する署名を提出する。いまだに免税事業者の登録は1割にとどまっており、不安と混乱の声が日に日に増えている。
 9月4日(月)13時〜14時半 衆議院第1議員会館 多目的ホール(予定)

■大修館書店が『無礼語辞典』を8月に刊行。同書は、昨年7月に刊行された『品格語辞典』の姉妹編。相手に「無礼」と受け取られる600語を取り上げ、解説に加え例文・言いかえ表現を収録。また人気漫画家・いのうえさきこさんの挿絵、1コマ漫画、「無礼マップ」も収録。書店からの注文が多いため、すぐに2刷8000部を増刷した。

■8月12〜13日に東京ビッグサイトで開催のコミックマーケット(コミケ)102は、2日間で26万人が来場。コロナ禍により、2020年から2021年夏までコミケ開催はなく、2021年冬からはチケットを事前抽選販売し、入場者数を制限する形で行われてきた。
 今回は、午後からであればリストバンド型参加証を、当日購入しての入場も可能。多種多様な創作コミック、同人誌、グッズ、音楽などの展示即売ブースに、熱心なマニアが群がり競って購入するなど熱気に包まれた。

■広島原爆の惨状を描いた漫画「はだしのゲン」が今年、雑誌の連載開始から50年を迎えた。単行本(汐文社、中公文庫など)になってからも読み継がれ、累計発行部数1,000万以上。世界24カ国でも翻訳され原爆の恐ろしさを伝えている。
 にもかかわらず、戦後78年を迎えた今年2月に、広島市教育委員会は、平和教育副教材から漫画「はだしのゲン」を削除すると決めた。こうした対応に批判が広がっている。こうした事態を深く捉え、8月12日(土) 7:30〜の「TBS報道特集」で、<「原爆ってやつは、大事な大事なおふくろの骨まで…」漫画『はだしのゲン』が伝えた被爆の実相とは>を放映した。たいへん内容の濃い好企画であるだけに、未視聴者にはYouTubeなどで視聴してほしい。
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2023年08月07日

【出版の現場】岩波書店・創業110年で単行本110点を電子書籍化=出版部会

上半期の電子出版7%増
 今年2023年・上半期(1〜6月)における出版物の推定販売金額が発表された(出版科学研究所)。紙と電子を合わせた推定販売額8024億円(前年同期比3.7%減)。紙の出版物5482億円(同8.0%減)、電子出版物2542億円(同7.1%増)となった。
 紙の出版物の内訳は、書籍3284億円(同6.9%減)、雑誌2197億円(同9.7%減)。雑誌では月刊誌1839億円(同9.6%減)、週刊誌358億円(同10.6%減)。週刊誌の落ち込みが激しい。
 電子出版物の内訳は、電子コミック2271億円(同8.3%増)、電子書籍229億円(同0.4%減)、電子雑誌42億円(同8.7%減)。相変わらず電子コミックの伸長が著しい。

核廃絶に向けた熱い訴え
 電子書籍への需要も無視できない現状を踏まえ、岩波書店も「広辞苑」の電子出版化以降、急いでの電子出版化を控えていたが、この8月に創業110年を迎えるのを機に、話題作110点を精選して電子書籍化し、創業記念の8月5日から年末にかけて順次配信する。
 主として21世紀に刊行された単行本から、読売文学賞、大佛次郎賞、サントリー学芸賞、毎日出版文化賞などの受賞作や、読者から多くの支持を受けた名著を電子出版する。
 第1弾:8月5日配信開始(18点30冊)とし、その1点にサーロー節子、金崎由美『光に向かって這っていけ─核なき世界を追い求めて』を加える。いま緊急となっている核廃絶に向け、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル平和賞授賞式でスピーチを行った「意志と行動の人」の決定版自伝に注目が集まる。
 第2弾:8月24日配信開始(15点23冊)。以降、毎月配信開始予定。配信書目の目録を各電子書籍ストアにて公開中(無料)。なお詳細は下記をクリックする。
  https://www.iwanami.co.jp/news/n53090.html
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2023年07月23日

【出版界の動き】波紋を呼ぶツイッター社の凍結対応と混乱=出版部会

●23年5月の出版物販売金額667億円(前年比7.7%減)、書籍366億円(同10.0%減)、雑誌311億円(同4.9%減)。月刊誌252億円(同6.1%減)、週刊誌58億円(同0.7%増)。返品率は書籍40.8%、雑誌45.9%、月刊誌46.3%、週刊誌44.3%。いずれも40%を超える高返品率が続く。

●日販からトーハンへの帳合変更が激しさを増す。10月1日からトップカルチャー59店舗の帳合がトーハンへ変更される。日販は未来屋とトップカルチャー2社を合わせ、700億円以上の売上を失う。
 この事態はトーハンによる日販の一部吸収合併と見なされてもおかしくない。なお未来屋の決算は最終損益9億2800万円の赤字、トップカルチャーの第2四半期の営業損益は1億6600万円の赤字。この赤字2社の取引がトーハンにどのような影響をもたらすか、注目される。

●22年度の日書連加盟書店は2665店(前年比138店減)。1986年のピーク時には1万2935店だから5分の1。東京は前年より13店減の264店。22年の公共図書館は全国で3305館。それををはるかに下回る。公共図書館は2006年以降3000館を超えている。

●「チャットGPT」などを開発した生成AI企業への訴訟が米国で相次ぐ。原告は著作権やプライバシーの侵害を訴えており、同様の訴訟が続く可能性が高い。オンライン上で大量のデータを収集する生成AIに対するルール作りが急務となっている。すでにEUでは6月、著作権への配慮を盛り込んだAI法修正案を採択している。米国や日本でも規制に向けた議論が進む。
 とりわけ教育現場では深刻な事態が進んでいる。教員たちからは「生成AIでレポートを書かれたら、見分けがつかない」の声が挙がり、のちに盗作の疑いありとして訴訟でも起こされたら対応できないという。

●月刊誌「世界」(岩波書店)の公式ツイッターアカウントが、ツイッター社の判断で7/18付で凍結され、憶測が広がっている。ツイッター社からは「プラットフォームの悪用とスパム(迷惑行為)を禁止するルールに違反している」とのメールが届いただけ。
 「世界」のアカウントが凍結されたのは初めてなので、当該編集部は「思い当たる節はない。ツイッター社のサイトを通じ異議申し立てをしている」という。
 7日発売の8月号で「特集:安倍政治の決算」を組み、総点検かつ課題を論じている。19日昼時点で、「世界」8月号はアマゾンなどのネット書店で購入できない状況になっている。

●Instagram や Facebook で有名な Meta社が開発した独自のアプリ「Threads(スレッズ)」が、日本でも使えるようになった。このアプリはイーロン・マスク氏率いるTwitter社からユーザーを奪うことを目指して設計され、Twitter社との競争に参戦する。
 マスク氏が買収して引き継いで以降、Twitter社は人員整理や利用システムの変更など、混乱から抜け出せない状態にある。しかも1日に閲覧できるツイート数の制限などに、不満を抱くTwitterユーザーを取り込もうと、多数の競合サービスが登場しているが、Twitterを凌駕する決定的なアプリはなかった。
 しかし、Meta社が開発した「Threads」は、Twitter社に深刻な脅威を与えている。、Meta社は30億人のFacebookユーザーと23億人を超えるInstagramユーザーを擁し、「Threads」へ切り替える可能性は大きい。Instagramのアカウントがあれば、すぐ利用できる。ゼロから始める必要はない上に、同アプリは無料で30を超える言語で提供されるとあって、あっという間に登録者数が7000万人を超えた。
 なお、Meta社のマーク・ザッカーバーグCEOは、ユーザーが10億人規模に達したら収益化を考えると表明。しばらくは広告のない状態で利用できる。広告まみれで閲覧数まで制限のTwitterとは好対照。
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2023年07月19日

【出版の現場】出版フリー労働者の実態アンケート結果から見えてきたもの 「出版ネッツ」の3カ月に及ぶ調査=萩山 拓(ライター)

 フリーランスのライターや編集者、イラストレーターらが集まるユニオン「出版ネッツ」が主体となって取り組んだ、出版社などに出向いて働くフリーランス(常駐フリー)の実態調査結果が6月半ばに公表された。出版ネッツのホームページにアンケート調査フォームを掲載し、2022年12月16日から23年2月20日までの3カ月間、インターネット調査への回答者は42人。
 ここでいう出版界で働く常駐フリーとは、出版社と業務委託契約や請負契約を結び、出版社に出向いて社員の指示のもとに働き、1 社で1 週間 20 時間以上、または月 80 時間以上就業し1 カ月以上の業務継続が見込まれる人を指す。

「定額働かせ放題」

 集計結果から見えてきた実態は、まず月額固定給の弊害が挙げられる。報酬の形態を尋ねた設問では、「月額固定給・年俸」という回答が最も多かった。月額固定給とは、1 日 8 時間以上働いても報酬額は変わらず、それ以上働いた分は、割増どころか無報酬である。
 これは2018 年頃より、「労働者性の判断基準」にある「報酬の労務対償性があるか否か」を意識して 時給から月額固定給に改変するケースが増えている結果と推測される。「定額働かせ放題」は大きな問題である。
 労働者かどうかを判断するには「労働者性の判断基準」が用いられるが、なかでも「業務遂行上の指揮監督があるか」は、「諾否の自由があるか」「時間的・場所的拘束性があるか」 と並び、重要な判断要素とされている。

新たな判断基準を

 これに対する設問項目として「業務上の指示」についての問いには、「どの仕事をするかを含め、自分の判断で決められる」は5人(11.9%)と少数である。「自分の判断では決められない」が11人(26.2%)。
 また「どの仕事をするかは指示されるが、仕事の進め方などは自分で決められる」「どの仕事をするかは指示されるが、最初にやり方を教えてもらい、あとは自分の判断で進めている」の合計が20人(47.6%)と約半数を占める。  
 こうした実態からみても、社員からの細かい「業務上の指示」がないから「業務遂行上の指揮監督がない」ので、フリーランス(常駐フリー)は労働者でないとみなすのは無理がある。
 これらの実態を踏まえ、出版ネッツは「1985 年に作られた古くて狭い<労働者性の判断基準>に当てはめて判断するのではなく、働き方の実態や仕事の性質を丁寧に見て、その業界の仕事の性質や労働実態にあった<判断基準>を作成するよう求めていくことが必要だと思われる」とまとめている。
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2023年06月19日

【出版界の動き】 新聞メディアが自社以外での執筆・言論・著作活動に規制=出版部会

●23年4月の出版物販売金額865億円(前年比12.8%減)、書籍483億円(同11.6%減)、雑誌382億円(同14.2%減)。月刊誌324億円(同15.1%減)、週刊誌57億円(同8.9%減)。返品率は書籍31.9%、雑誌42.3%、月刊誌41.2%、週刊誌47.9%。
各部門とも、前月から2倍以上の大幅な減となり、村上春樹の6年ぶりの長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)・重版合わせ35万部の発行は上半期書籍ベストセラー第1位となったが、出版界の低迷打破の起爆剤とはならず。

●KADOKAWAの連結決算─売上高2554億円(前年比15.5%増)、営業利益259億円(同40.0%増)は共に過去最高額。当期純利益126億8千万円(同9.9%減)。要因は「ゲーム事業」の好調による。売上高303億円(同55.7%増)、営業利益142億(同173.4%増)の数字が如実に示す。

●日販グループ35社の連結決算では売上高4440億円(前年比12.1%減)、営業損失4億円(前年は28億4000万円の利益)、取次・小売店事業が減収・営業赤字により全体を押し下げた。
日販単体の売上高3551億(同12.9%減)、当期純損失22億9700万円(同4億8500万円の利益)。「書籍」「雑誌」「コミックス」「開発商品」の全4分野で減収。市場全体が縮小し、取引書店の閉店や帳合変更も大きく影響、前年の売上高から約523億円減少。

●公立小中学校の学校図書館を充実させるため図書の購入費用として、文科省は220億円を各自治体に交付したが、図書購入に使われたのは6割弱の約126億円(57%)にとどまる。財政難などを理由に他の目的に回され、図書購入費は7年連続で減少している。
 学校規模に応じた蔵書数を示す「学校図書館図書標準」を達成している学校の割合は、小学校71%、中学校61%にとどまる。

●絵本作家・田島征彦(ゆきひこ)さんが、長年の取材の集大成として「沖縄戦」を描いた絵本『なきむしせいとく─沖縄戦にまきこまれた少年の物語』(童心社)が、第54回講談社絵本賞を受賞。
 絵本の内容は、1945年戦争末期の沖縄を舞台に、8歳の男の子である泣き虫せいとくの視点から、沖縄での空襲や艦砲射撃、そして地上戦……。家族を失い、死体を踏み越えて逃げ、味方と避難場所を奪い合う沖縄戦など、悲惨な現場を絵本に仕上げ、戦争を見せて怖がらせるのではなく、平和の大切さを伝える画期的な労作。

●廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(全20巻・偕成社)が、2013年5月に刊行されて以降からロングセラーを続けている。累計発行部数400万部を突破。とりわけ2020年9月にNHK教育テレビで放映され、小学生だけでなく中学生にも人気のシリーズとなった。「銭天堂」の内容的なエグさ、登場人物の身につまされる内面描写は、中学生をも惹きつける魅力がある。

●新聞労連が「言論機関の言論の自由を考える」と題するシンポジウムを開催(6/3)。そこで「社外での言論活動」に関するアンケート結果が公表され、会社による規制強化の進行が報告された。 社外執筆の禁止事例8件、講演ダメ3件、出版ストップ1件、形式上「届け出制」でも不許可の事例も出ているという。「慰安婦問題など見解が割れるもの、政治家から反論があったものなどに、規制強化の傾向がある」という。
 日刊ゲンダイDIGITAL(6/5付)によると、シンポジウムではTBSのキャスター・金平茂紀氏が「米NYタイムズや英BBCなどは社員にSNS発信や社外活動を推奨している。むしろ社外言論が会社の価値を高めるとの判断だ」と発言。元共同通信記者のジャーナリスト・青木理氏は「言論・報道の自由の担い手たるメディアが言論・報道の自由を守れなければ、社会に流通する情報が減る。誰が被害を受けるのか自明ではないか」と話した。「新聞社が萎縮すれば権力の思うツボ。これでは21世紀の大政翼賛会になってしまいます」(政治評論家・本澤二郎氏)と指摘する。
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2023年05月19日

【出版界の動き】「紙の本」を扱う新しい試みへの期待=出版部会

●23年3月の出版物販売金額1371億円(前年比4.7%減)、書籍905億円(同4.1%減)、雑誌466億円(同5.7%減)。月刊誌398億円(同5.0%減)、週刊誌67億円(同10.1%減)。返品率は書籍25.6%、雑誌39.6%、月刊誌38.7%、週刊誌44.2%。

●丸善グループ(子会社47社・関連会社3社)の連結決算によると、売上高1628億円(前期比78億円減)、当期純利益17.7億円(同18.3%減)。主要な部門の売上高は丸善ジュンク堂などの「店舗・ネット販売事業」663億円、丸善雄松堂の「文教市場販売事業」が480億円、TRCの「図書館サポート事業」337億円、岩崎書店や丸善出版などの「出版事業」41億円。
 丸善ジュンク堂などの108店舗は赤字、TRCなどの図書館事業で利益が計上されている。

●民事再生のマキノ出版がブティック社と資産譲渡契約を締結。ブティック社がマキノ出版の雑誌、書籍、ムックの版権およびウェブサイト事業を引き継ぐ。月刊誌「壮快」と「安心」を6月下旬からそれぞれ隔月刊として発行。ブティック社は、月刊誌「レディブティック」やニット、手芸、料理、園芸、ネイル、ビーズ、住まいなど、実用書を出版している。

●俳優・音楽家がAIのもたらす権利侵害などについて危険性を訴える。俳優や音楽家らでつくる日本芸能従事者協会は、AI(人工知能)によって芸術・芸能の担い手が失職する可能性を指摘し、権利擁護の法整備を求めた。実演家は「著作物の伝達」に重要な役割を果たしているため、著作隣接権で守られている。それが侵される危険性を指摘している。

●『レコード芸術』(音楽之友社)が7月号で休刊。1952年創刊のクラシック音楽界の重要なメディア(発行部数10万部)が消滅する。ヤマハの子会社となっていた音楽之友社にもかかわらず、苦境に追いやられていた。また日本棋院が発行する唯一の週刊専門誌『週刊碁』も9月に休刊。ピーク時20万部も今や2万部まで激減。

●「本屋と紙の本の未来」について、吉永明弘・法政大学教授(環境倫理学)が提言(「SYNODOS」5/15付)をしている。要約すると、以下のような内容である。
 紙の本に対する電子書籍の割合が増えたことにより、リアルな「本屋」の存在意義が問われ始めている。その一方で、新たにリアルな「本屋」を始める人たちがいる。また、新しい形で「紙の本」をやりとりする場所が各地で生まれている。新しく本屋を始めた人たちの思いと、紙の本をやりとりする現代的な意義を再確認すべきだ。
 例えば日本各地で開かれている「一箱古本市」は、まさに個人がお寺・神社の一角を借りて、段ボール一箱分の本を個人が売る本屋を開く試みである。本を売ることを通じて本好きの人たちと交流するのが一つの楽しみになっている。
 あるいは個人が本屋のなかの「棚」を借りて蔵書の貸出と販売ができる本屋スペースを運営する。また自宅を開放して「八畳一間と玄関土間だけの小さな古本屋」にする。客が減少したスナックに古本屋を開設する事例もある。こうした既存の建物を利用しての「本屋」の試みは、きわめて有効なエコ活動でもある。
 リアルな「紙の本」を直接やりとりする「本屋」は、人との出会いを強め、交流が始まり、さらにはコミュニティの拠点としての機能も持つ。その可能性への期待は大きい。
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2023年04月14日

【出版界の動き】 2冊の風─凪良ゆう『汝、星のごとく』と村上春樹『街とその不確かな壁』=出版部会

●23年2月の出版物販売金額997億円(前年比7.6%減)、書籍634億円(同6.3%減)、雑誌363億円(同9.7%減)。月刊誌305億円(同8.9%減)、週刊誌58億円(同13.4%減)。返品率は書籍31.0%、雑誌41.2%、月刊誌39.9%、週刊誌47.3%。

●新刊本の値段が11年連続上昇し、この間に159円高くなっている。出版科学研究所によると、2021年の上昇率は2.8%に達し25年ぶりの大きさ。2022年になると新刊書籍・税抜き本体価格は平均1268円(前年比2.2%増)。特にエネルギー価格が高騰し、製紙に加え印刷、輸送コストの膨張が大きな要因だ。
 さらにインターネットを使った娯楽の普及などで販売部数の落ち込みが止まらず、出版社が少ない部数でも利益を確保するため、値上げを続けてきたという事情もある。

●いま書店業界や本好きな人々の間では、芥川賞や直木賞など、出版社が主催する著名な選考委員による「お墨付き本」より、本屋さんの店員などが推奨する「○○本」と銘打つ「お薦め本」が人気を呼んでいる。この12日に発表された「本屋大賞」の凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)は、さっそくコーナーが特設され店頭に積み上げられた。
 村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)の発売と合わせ、久しぶりに購入客で活況を呈している。

●千葉県富津市は、「イオンモール富津」内に図書館流通センター(TRC)を指定管理者として市立図書館を開館。面積446坪、座席数134席、蔵書数6万5千冊、開館時間10時〜20時。同市は公共図書館がなく、初の公共図書館となる。

●有隣堂が新規に41店目を開設。東京・台東区の「上野マルイ」地下1階に書店「STORY STORY UENO」を出店。店舗面積166坪で、書籍6万冊のほか文具、雑貨、食品なども取り扱う。「『昨日より楽しい自分』を見つける場所」をコンセプトに、本がもつ物語を紡いで人生を豊かにするワークショップを毎日開催する。

●図書館でも本屋でもない施設「8BOOKs SENDAI(エイトブックス仙台)」が注目されている。宮城県を拠点に不動産・リノベーション事業を手がけるアイ・クルールが運営。本を読んでも読まなくても、子どもが遊んでもOKの会員制の図書施設。利用料金を払えば館内にある約1万冊の蔵書が読めるほか、施設内を自由に利用することができる。ただし本は貸出も販売もしていない。
 2階には授乳室やおむつ替えシートのスペースやキッズ・コーナーも設置、靴を脱いで遊ぶこともできる。

●KADOKAWA、アニメホテル事業から撤退。ところざわサクラタウン内にある「EJアニメホテル」と成田国際空港にある「成田アニメデッキ」は集客に苦戦し、収益確保が困難と判断し撤退を決めた。
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