◆11月紙書籍・雑誌の販売金額771億円・5.5%減
直販ルートを除く取次ルート軽油で771億3700万円(前年同月比5.5%減)、書籍477億9300万円(同1.4%減)、雑誌293億4400万円(同11.5%減)。雑誌の内訳は、月刊誌が同8.4%減、週刊誌が同28.4%減。返品率は書籍が同1.2ポイント減の31.3%、雑誌は同0.7ポイント増の44.7%。
書店店頭での売れ行きは、書籍が約3%増で、文芸約6%増、文庫本約5%増、ビジネス書約6%増、学参約8%増、児童書約2%増、新書本約3%増。雑誌は定期誌が約5%減、雑誌扱いコミックスが約6%減、ムックが約5%増。
◆生成AI×知的財産保護の新ルール案にパブコメ
内閣府は生成AIと知的財産権の保護に関する規制案=「プリンシプル・コード」について、パブリックコメントの募集を始めた。
これは「AI事業者コーポレートサイトで使用モデルの名称や設計仕様、AIのトレーニング法、学習データの種類などを開示する」など、生成AIサービスの基本情報を誰にでも見える形で開示するよう求めている。プリンシプル・コードは強制開示を求めるものではないものの、これに則らないAI事業者はその理由を説明する必要があるという。
提出方法はWebと郵送に対応。募集期間は2026年1月26日まで。
◆無書店の島根・大田市が事業者公募
開設資金として最大500万円支援。加えて家賃や販売促進費などの費用を1年につき最大500万円、10年間通して助成。同市役所で26年1月30日午後5時まで受け付け。
主な応募条件は以下の通り。
1. 一般書から専門書まで多様な分野・ジャンルにわたる書籍を取り扱うこと
2. 書籍・雑誌に係る売り場面積が100u以上あること
3. 所定の定休日を除き、常時継続的かつ安定的に営業する店舗であること。不定期な営業形態によらないこと。
4. 計画認定の日(概ね2月頃)から1年以内に事業開始する見込みがあること
◆スマートニュース、KADOKAWAと提携
スマートニュースは自社のアプリで、KADOKAWAの漫画サイト「カドコミ」から厳選した作品の紹介コンテンツを順次配信をスタート。本取り組みを通じて、ユーザーが“知らなかった漫画に出会える”新しい読書体験の創出を目指す。
あらすじや見どころを伝えるテキストとビジュアルを組み合わせ、ユーザーが気になる作品を見つけられる構成としている。取り上げる代表的な作品は以下のとおり。
『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ / 漫画:春河35)
『義妹生活』(原作:三河ごーすと / 漫画:奏ユミカ/ キャラクター原案:Hiten)
『夜は猫といっしょ』(著者:キュルZ)
◆年間ベストセラー1位『大ピンチずかん3』
有隣堂が「25年間ベストセラー」ランキングを発表。書籍1位は『大ピンチずかん3』(小学館)、2位は『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』(朝日新聞出版)、3位は『カフネ』(講談社)。
有隣堂のシステム「Book Store Central」のデータをもとに算出。集計期間は24年12月〜25年11月。有隣堂全店における雑誌・文庫・コミックを除いた販売数上位をランキング化。
◆「直木賞」候補作、14日に決定
日本文学振興会が直木賞の候補作を下記の通り発表。受賞作は1月14日に決定。
嶋津輝『カフェーの帰り道』(東京創元社)
住田祐『白鷺立つ』(文藝春秋)
大門剛明『神都の証人』(講談社)
葉真中顕『家族』(文藝春秋)
渡辺優『女王様の電話番』(集英社)
◆「夏の100分de名著フェア」好成績
7月から9月末にかけて行ったNHK出版の同フェアの売上金額が、本体価格ベースで4026万円、4000万円の大台を突破。前年の約2480万円から1.6倍規模となり好調だった。参加書店は981店(前年は669店)で、受注金額は約1億0800万円(同約5800万円)。売上ベスト3の書店は、1位:丸善丸の内本店(東京)2位:紀伊國屋書店新宿本店 3位:ジュンク堂書店池袋本店。
2026年01月03日
2025年12月11日
【出版界の動き】12月 コンテンツ産業支援に予算350億円
◆日販赤字16億円 物流費高騰
日販の25年4〜9月期の連結決算は、売上高1633億円(前年同期比12%減)、営業損益16億円の赤字(前年同期は2400万円の赤字)。本業の取次事業でトラックなどの運搬物流コストが高騰、赤字幅が広がったことが要因。
純利益は前年同期比3倍の3億3600万円。コンビニエンスストア向けの雑誌配送をトーハンに順次移管し、6月にコンビニ向けの物流から完全撤退。そのため閉鎖した物流拠点の不動産売却益21億円の計上が大きい。
◆トーハンも3年ぶり8億円赤字
トーハンの単独決算(2025年4〜9月期)によると、最終損益8億9200万円の赤字(前年同期は6億4300万円の黒字)。赤字となるのは3年ぶり。書店やコンビニへの運賃費が高騰し、キロ当たり62円。25年3月期比で3割も高くなっている。
26年3月期通期の経常損益は4億1000万円の赤字を見込む。27年3月期は経常黒字への転換を目指す。なお子会社を含めた25年4〜9月期の連結決算は、売上高1977億円(前年同期比5%増)、最終損益15億円の赤字(前年同期は2億7600万円の黒字)。
◆漫画海賊版に5億円を賠償命令
講談社、集英社、小学館、KADOKAWAの出版大手4社が、「ONE PIECE(ワンピース)」など、人気漫画を無断で掲載する海賊版サイトへデータ配信サービスを提供した米IT企業「クラウドフレア」を相手取り、権利侵害を訴えていた。このほど東京地裁は約5億円の賠償を命じた。「権利侵害を幇助した」として、配信業者に賠償を認めた初の司法判断である。
東京地裁はクラウド社が、出版社から著作権侵害と通知された後もサービス提供を続けた事態を「提供を停止する義務を怠った」と重くみた。クラウド社は「インターネットの効率、信頼性に深刻な影響を及ぼす」とし控訴する意向だというが、悪用を許していいわけはない。IT企業側はネットの利活用を進める上でも重い責任を自覚すべきだ。
出版社などでつくる海賊版対策団体「ABJ」によると、被害額は推計で年約8兆5000億円にも上る。
◆出遅れコンテンツ産業底上げへ
アニメや漫画などのコンテンツ産業支援に向け、大規模映像作品の制作や日本発海外向け配信サービスの流通網の整備など、日本発のコンテンツの海外展開を後押しする。これまでコンテンツ産業に関する日本の予算規模は約252億円、米国は6176億円、中国は1238億円、韓国は762億円と比べても、出遅れている。
日本発コンテンツは現在、アニメやゲームが中心となっている。経産省の支援では、マンガ・アニメコンテンツだけに限らず、日本のすべての出版コンテンツが、世界中の読者に届けやすくなる環境を整備し、日本のコンテンツ産業を底上げする方向で取り組むべきである。
◆マンガに続け小説など輸出開拓
「漫画を除いた書籍の海外売り上げは、2019年比で3倍ほどになっている」。こうした状況を踏まえ、日本の出版各社が書籍の海外展開に力を入れている。11月初旬に開かれた商談会には過去最多の108社が出展し、海外の出版社と翻訳の交渉に臨んだ。漫画以外のジャンルでも海外からの関心が高まっている。それを捉えようと情報発信を強化するほか、マイナビ出版では自前で市場開拓する動きも出ている。
◆北米海外事業・拠点をサポート
講談社は、コロナ禍以降の世界的なアニメ、マンガブームの隆盛を受け、昨年6月に海外ライツ事業と海外拠点をサポートするグローバル統括室を新設。海外、特に同社が現地に出版社を置き、直接出版活動を行っている北米では、日本マンガに対する需要が盛り上がり、『進撃の巨人』英語版が1千万部を超える。
◆海外事業好調で最高益更新
紀伊国屋書店の売上高は1407億円(前期比4%増)だが、純利益が47億円(前期比37%増)、3期連続で最高益を更新。売り上げの25%を占める海外事業が好調だったほか、24年12月に完全子会社化した老舗書店「旭屋書店」と「東京旭屋書店」の業績が貢献した。
とりわけ北米と東南アジアを軸にした海外店舗は11月末で47店舗になる。さらに26年8月期中までに10店舗以上の開業を見込む。26年春にはバングラデシュへの初出店を予定し、インド進出への足掛かりとする。
◆常駐フリー呼びかけチラシ配布
出版ネッツは、先月11日に神保町交差点および地下鉄護国寺駅・講談社前にて、幟を立てハンドマイクで呼びかけをしながら、チラシを配布、年1回実施し今回で3回目となる。チラシの内容は、常駐フリーで働く人に向けての情報提供と、「働くうえで困っていることや不安なことはありませんか?」と呼びかけるもの。解決・交渉事例や、アンケート調査等で寄せられた常駐フリーの声(不安や要望)、相談窓口の連絡先も載せている。
配布チラシは下記からダウンロードできる。
https://union-nets.org/wp-content/uploads/2025/11/a4b2484ae748d3e4341dad3a5027de78.pdf
日販の25年4〜9月期の連結決算は、売上高1633億円(前年同期比12%減)、営業損益16億円の赤字(前年同期は2400万円の赤字)。本業の取次事業でトラックなどの運搬物流コストが高騰、赤字幅が広がったことが要因。
純利益は前年同期比3倍の3億3600万円。コンビニエンスストア向けの雑誌配送をトーハンに順次移管し、6月にコンビニ向けの物流から完全撤退。そのため閉鎖した物流拠点の不動産売却益21億円の計上が大きい。
◆トーハンも3年ぶり8億円赤字
トーハンの単独決算(2025年4〜9月期)によると、最終損益8億9200万円の赤字(前年同期は6億4300万円の黒字)。赤字となるのは3年ぶり。書店やコンビニへの運賃費が高騰し、キロ当たり62円。25年3月期比で3割も高くなっている。
26年3月期通期の経常損益は4億1000万円の赤字を見込む。27年3月期は経常黒字への転換を目指す。なお子会社を含めた25年4〜9月期の連結決算は、売上高1977億円(前年同期比5%増)、最終損益15億円の赤字(前年同期は2億7600万円の黒字)。
◆漫画海賊版に5億円を賠償命令
講談社、集英社、小学館、KADOKAWAの出版大手4社が、「ONE PIECE(ワンピース)」など、人気漫画を無断で掲載する海賊版サイトへデータ配信サービスを提供した米IT企業「クラウドフレア」を相手取り、権利侵害を訴えていた。このほど東京地裁は約5億円の賠償を命じた。「権利侵害を幇助した」として、配信業者に賠償を認めた初の司法判断である。
東京地裁はクラウド社が、出版社から著作権侵害と通知された後もサービス提供を続けた事態を「提供を停止する義務を怠った」と重くみた。クラウド社は「インターネットの効率、信頼性に深刻な影響を及ぼす」とし控訴する意向だというが、悪用を許していいわけはない。IT企業側はネットの利活用を進める上でも重い責任を自覚すべきだ。
出版社などでつくる海賊版対策団体「ABJ」によると、被害額は推計で年約8兆5000億円にも上る。
◆出遅れコンテンツ産業底上げへ
アニメや漫画などのコンテンツ産業支援に向け、大規模映像作品の制作や日本発海外向け配信サービスの流通網の整備など、日本発のコンテンツの海外展開を後押しする。これまでコンテンツ産業に関する日本の予算規模は約252億円、米国は6176億円、中国は1238億円、韓国は762億円と比べても、出遅れている。
日本発コンテンツは現在、アニメやゲームが中心となっている。経産省の支援では、マンガ・アニメコンテンツだけに限らず、日本のすべての出版コンテンツが、世界中の読者に届けやすくなる環境を整備し、日本のコンテンツ産業を底上げする方向で取り組むべきである。
◆マンガに続け小説など輸出開拓
「漫画を除いた書籍の海外売り上げは、2019年比で3倍ほどになっている」。こうした状況を踏まえ、日本の出版各社が書籍の海外展開に力を入れている。11月初旬に開かれた商談会には過去最多の108社が出展し、海外の出版社と翻訳の交渉に臨んだ。漫画以外のジャンルでも海外からの関心が高まっている。それを捉えようと情報発信を強化するほか、マイナビ出版では自前で市場開拓する動きも出ている。
◆北米海外事業・拠点をサポート
講談社は、コロナ禍以降の世界的なアニメ、マンガブームの隆盛を受け、昨年6月に海外ライツ事業と海外拠点をサポートするグローバル統括室を新設。海外、特に同社が現地に出版社を置き、直接出版活動を行っている北米では、日本マンガに対する需要が盛り上がり、『進撃の巨人』英語版が1千万部を超える。
◆海外事業好調で最高益更新
紀伊国屋書店の売上高は1407億円(前期比4%増)だが、純利益が47億円(前期比37%増)、3期連続で最高益を更新。売り上げの25%を占める海外事業が好調だったほか、24年12月に完全子会社化した老舗書店「旭屋書店」と「東京旭屋書店」の業績が貢献した。
とりわけ北米と東南アジアを軸にした海外店舗は11月末で47店舗になる。さらに26年8月期中までに10店舗以上の開業を見込む。26年春にはバングラデシュへの初出店を予定し、インド進出への足掛かりとする。
◆常駐フリー呼びかけチラシ配布
出版ネッツは、先月11日に神保町交差点および地下鉄護国寺駅・講談社前にて、幟を立てハンドマイクで呼びかけをしながら、チラシを配布、年1回実施し今回で3回目となる。チラシの内容は、常駐フリーで働く人に向けての情報提供と、「働くうえで困っていることや不安なことはありませんか?」と呼びかけるもの。解決・交渉事例や、アンケート調査等で寄せられた常駐フリーの声(不安や要望)、相談窓口の連絡先も載せている。
配布チラシは下記からダウンロードできる。
https://union-nets.org/wp-content/uploads/2025/11/a4b2484ae748d3e4341dad3a5027de78.pdf
2025年11月05日
【出版界の動き】読書の秋━<本との出会い>へ各種イベント始まる=出版部会
◆9月期紙の出版物販売額936億5200万円(前年同月比1.8%減)
その内訳は、書籍597億3100万円(同1.0%増)、雑誌339億2000万円(同6.5%減)。雑誌では月刊誌が同6.9%減、週刊誌が同4.3%減。返品率は書籍が29.3%(同1.6%減)、雑誌は41.2%(同0.9%減)。
書店店頭での売れ行きは、書籍2%減で、文芸3%増、文庫本ほぼ前年並み、ビジネス書2%増、学参3%減、児童書3%減、新書本7%増。雑誌は定期誌3%減、雑誌扱いコミックス19%減、ムック2%減。
なお、出版科学研究所による上記の販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。電子出版市場は1月と7月の年2回発表される。
◆「日刊ゲンダイ」創刊50年 政権批判を恐れぬタブロイド紙
1975(昭和50)年10月27日に創刊し、このほど50年を迎えた、永久保存版「創刊50周年特別号」を発売した。
「日刊ゲンダイ」といえば一面の長〜い見出し。最近号でも庶民の声を反映し政権批判の<世にもおぞましい短命連立><高市も玉木もろくでなし まともな首相候補はいないのかと庶民の悲鳴><有権者はこの連立に呆然だ>と一面に踊る。ライバルとみなされる「夕刊フジ」は、56年の歴史に幕を閉じ、今年2月6日に休刊したが、「日刊ゲンダイ」は、なぜイエロージャーナリズムが悪い? と意気軒高だ。
作家の五木寛之さんは、創刊1号から「流されゆく日々」を執筆、10月27日から51年目に入ったことを記念して、漫画家ちばてつや氏と特別対談を行っている。
◆「小学一年生」創刊100年 世相反映した付録の歴史
1925年に創刊し、今年100周年を迎えた小学館の学習雑誌「小学一年生」。やさしい文章とわかりやすい図解で、子どもたちの学びと好奇心に応え、ピーク時には発行部数128万部を記録した。小学校に入学するピカピカの1年生が読んで楽しい雑誌。毎号、ワクワクするふろく、人気キャラのまんが・パズル、旬の話題など、さまざまなテーマの記事を収載。11月号には創刊&昭和100年━節目記念の付録<組み立て・くろでんわ>をつけている。
◆「オール読物新人賞」休止、藤沢周平ら人気作家を生む
文芸春秋は、伝統ある公募文学賞「オール読物新人賞」を今年度の第105回で休止すると発表。同賞は優れた短編小説に贈られる文学賞で、1952年の創設。藤沢周平など多くのエンターテインメント系の人気作家を生んだ。
1962年からはミステリーを対象とした「オール読物推理小説新人賞」も実施し、赤川次郎さんや宮部みゆきさんらを輩出した。2021年の第101回からは、歴史・時代小説に特化した賞になっていた。
◆政府の書店支援の取り組みに対する「評価」70%、期待が募る
読売新聞社が「秋の読書推進月間」に合わせて実施した、全国世論調査の結果が出た。政府が書店の経営や新たな出店を支援する取り組みを「評価する」と答えた人は70%、「評価しない」の27%を大きく上回った。
政府は6月、街の書店を地域の重要な文化拠点と位置づけ、減少に歯止めをかける「書店活性化プラン」を公表した。書店の経営効率化を支援し、自治体や図書館を含めた連携を促す取り組み。
具体的な支援策に関しても、日本の文学作品がもっと世界で知られるよう、外国語への翻訳や海外発信を支援する政府の方針を「評価する」は86%。絵本の知識や読み聞かせの技術を身につけた「絵本専門士」が、子どもの読書活動を推進するために活躍することに「期待する」は87%に上った。
◆「読書の秋の国内最大級イベント」始まる
「本との新しい出会い、はじまる」をスローガンに今年も「BOOK MEETS NEXT」が始まった。書店が減少し、読書離れが進む時代の中でも、「本が好きな人」をこれまで以上にワクワクさせ、「本との距離感が遠い人」には魅力的な出会いを届けるため、出版業界が一丸となって実施する。今年で4回目を迎える。
開催期間:2025年10月25日(土)〜11月23日(日) 主なイベントは以下の通り
BOOKスタンプラリー:全国3千の書店ポスターに表示のQRコードを読み取り、LINEアカウントを友達追加するとスタンプがもらえる。スタンプを貯めると本にちなんだ商品に応募することができる。
「最強王図鑑」シリーズ店頭フェア:「最強王図鑑」シリーズ(書籍・雑貨)を1冊買うと1枚もらえる。どのデザインが当たるかは引いてのお楽しみ! コレクションしたくなるキラキラカードくじ(全10種、うちレア2種)。配布期間:2025年11月7日(金)〜なくなり次第終了。
◆電通3期連続の赤字見通し━AIで代理店が不要な時代に
2025年12月期は193億円の最終利益を予想していたものの、660億円もの損失見込みに一転。2023年も赤字の上に、2024年12月期は1922億円もの損失を出していた。その結果、3期連続の赤字見通しとなった。その苦戦の主要な要因はアメリカ事業で、人員削減などに必要な構造改革費用、さらにのれんの減損損失が甚大な影響を与えている。
アメリカではデジタル広告を中心に広告代理店を通さないインハウス化が進み、その背景にはAIの浸透によって、自前での製作が容易となり、コスト削減へシフトしている。日本の広告業界の未来も暗示しているようだ。
その内訳は、書籍597億3100万円(同1.0%増)、雑誌339億2000万円(同6.5%減)。雑誌では月刊誌が同6.9%減、週刊誌が同4.3%減。返品率は書籍が29.3%(同1.6%減)、雑誌は41.2%(同0.9%減)。
書店店頭での売れ行きは、書籍2%減で、文芸3%増、文庫本ほぼ前年並み、ビジネス書2%増、学参3%減、児童書3%減、新書本7%増。雑誌は定期誌3%減、雑誌扱いコミックス19%減、ムック2%減。
なお、出版科学研究所による上記の販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。電子出版市場は1月と7月の年2回発表される。
◆「日刊ゲンダイ」創刊50年 政権批判を恐れぬタブロイド紙
1975(昭和50)年10月27日に創刊し、このほど50年を迎えた、永久保存版「創刊50周年特別号」を発売した。
「日刊ゲンダイ」といえば一面の長〜い見出し。最近号でも庶民の声を反映し政権批判の<世にもおぞましい短命連立><高市も玉木もろくでなし まともな首相候補はいないのかと庶民の悲鳴><有権者はこの連立に呆然だ>と一面に踊る。ライバルとみなされる「夕刊フジ」は、56年の歴史に幕を閉じ、今年2月6日に休刊したが、「日刊ゲンダイ」は、なぜイエロージャーナリズムが悪い? と意気軒高だ。
作家の五木寛之さんは、創刊1号から「流されゆく日々」を執筆、10月27日から51年目に入ったことを記念して、漫画家ちばてつや氏と特別対談を行っている。
◆「小学一年生」創刊100年 世相反映した付録の歴史
1925年に創刊し、今年100周年を迎えた小学館の学習雑誌「小学一年生」。やさしい文章とわかりやすい図解で、子どもたちの学びと好奇心に応え、ピーク時には発行部数128万部を記録した。小学校に入学するピカピカの1年生が読んで楽しい雑誌。毎号、ワクワクするふろく、人気キャラのまんが・パズル、旬の話題など、さまざまなテーマの記事を収載。11月号には創刊&昭和100年━節目記念の付録<組み立て・くろでんわ>をつけている。
◆「オール読物新人賞」休止、藤沢周平ら人気作家を生む
文芸春秋は、伝統ある公募文学賞「オール読物新人賞」を今年度の第105回で休止すると発表。同賞は優れた短編小説に贈られる文学賞で、1952年の創設。藤沢周平など多くのエンターテインメント系の人気作家を生んだ。
1962年からはミステリーを対象とした「オール読物推理小説新人賞」も実施し、赤川次郎さんや宮部みゆきさんらを輩出した。2021年の第101回からは、歴史・時代小説に特化した賞になっていた。
◆政府の書店支援の取り組みに対する「評価」70%、期待が募る
読売新聞社が「秋の読書推進月間」に合わせて実施した、全国世論調査の結果が出た。政府が書店の経営や新たな出店を支援する取り組みを「評価する」と答えた人は70%、「評価しない」の27%を大きく上回った。
政府は6月、街の書店を地域の重要な文化拠点と位置づけ、減少に歯止めをかける「書店活性化プラン」を公表した。書店の経営効率化を支援し、自治体や図書館を含めた連携を促す取り組み。
具体的な支援策に関しても、日本の文学作品がもっと世界で知られるよう、外国語への翻訳や海外発信を支援する政府の方針を「評価する」は86%。絵本の知識や読み聞かせの技術を身につけた「絵本専門士」が、子どもの読書活動を推進するために活躍することに「期待する」は87%に上った。
◆「読書の秋の国内最大級イベント」始まる
「本との新しい出会い、はじまる」をスローガンに今年も「BOOK MEETS NEXT」が始まった。書店が減少し、読書離れが進む時代の中でも、「本が好きな人」をこれまで以上にワクワクさせ、「本との距離感が遠い人」には魅力的な出会いを届けるため、出版業界が一丸となって実施する。今年で4回目を迎える。
開催期間:2025年10月25日(土)〜11月23日(日) 主なイベントは以下の通り
BOOKスタンプラリー:全国3千の書店ポスターに表示のQRコードを読み取り、LINEアカウントを友達追加するとスタンプがもらえる。スタンプを貯めると本にちなんだ商品に応募することができる。
「最強王図鑑」シリーズ店頭フェア:「最強王図鑑」シリーズ(書籍・雑貨)を1冊買うと1枚もらえる。どのデザインが当たるかは引いてのお楽しみ! コレクションしたくなるキラキラカードくじ(全10種、うちレア2種)。配布期間:2025年11月7日(金)〜なくなり次第終了。
◆電通3期連続の赤字見通し━AIで代理店が不要な時代に
2025年12月期は193億円の最終利益を予想していたものの、660億円もの損失見込みに一転。2023年も赤字の上に、2024年12月期は1922億円もの損失を出していた。その結果、3期連続の赤字見通しとなった。その苦戦の主要な要因はアメリカ事業で、人員削減などに必要な構造改革費用、さらにのれんの減損損失が甚大な影響を与えている。
アメリカではデジタル広告を中心に広告代理店を通さないインハウス化が進み、その背景にはAIの浸透によって、自前での製作が容易となり、コスト削減へシフトしている。日本の広告業界の未来も暗示しているようだ。
2025年11月01日
【月刊マスコミ評・出版】矛盾と危機が臨界点を超えた自民党政治=荒屋敷 宏
「とても首班指名で『高市早苗』と書くことはできない」(公明党の斉藤鉄夫代表)。10月10日、筆者が『高市早苗のぶっとび永田町日記』(サンドケー出版局、1995年)を読んでいる最中に自公連立解消のニュースが飛び込んできた。
自民党総裁選前から極右雑誌の高市氏応援キャンペーンの過熱ぶりは異常だった。『WiLL』11月号の高市早苗氏「日本を強く豊かに 初の女性総理誕生へ!」では、「特に、自民党の選挙公約に『スパイ防止法』の文言が入った意義は大きい」と、統一教会と同じ政策を掲げたことを自画自賛した。『Hanada』では文芸評論家の小川榮太カ氏が「高市早苗戦闘宣言」で「高市早苗よ、政策暴走族として花と散れ」と時代錯誤の檄を飛ばしている。世論と乖離した議論が痛々しい。同誌の公明党前衆議院議員・伊佐進一氏による「自公連立解消!?公明党は高市さんともやっていけます」との太鼓判は何だったのか?
『サンデー毎日』10月19・26日合併号で倉重篤郎氏は「高市早苗新総裁に3つの壁」として衆参両院での少数与党という壁、トランプ米国の壁、安倍政治がもたらした政治・経済の歪みという壁を鋭く指摘した。しかし、公明党の連立解消という壁はベテラン政治記者の予想を超えていたようだ。
同誌の鈴木哲夫氏の「とんだ茶番劇だった自民党総裁選 今から始まる多党化戦国時代」の記事が参考になる。「公明から手厚く選挙協力をしてもらっている自民党議員は、公明の意向に沿って林氏に入れた者もいる」(自民党2回生議員)と、公明党は自民党総裁選で林芳正氏を応援していたとの証言がある。
選挙では自公政権を批判しても、選挙が終わったら自民と組む政治状況が続いてきた。野党がまとまって政権交代をすべきだという声も多くなっている。
日本共産党の志位和夫議長が『サンデー毎日』で倉重氏のインタビューに答えている。「『戦争国家』の暴走を許さない」との見出しがついているが、安保法制10年をどう総括するか、参院選結果と政治の排外主義化をどう見るか、マルクスブーム再燃の中で資本論から何を学ぶかの三つの問いかけが面白い。「自民政治には大企業・財界中心と対米従属という二つの歪みがあるが、その矛盾と危機が臨界点を超えた状態だ」との志位氏の話に耳を傾けるべき時代になってきたのかもしれない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
自民党総裁選前から極右雑誌の高市氏応援キャンペーンの過熱ぶりは異常だった。『WiLL』11月号の高市早苗氏「日本を強く豊かに 初の女性総理誕生へ!」では、「特に、自民党の選挙公約に『スパイ防止法』の文言が入った意義は大きい」と、統一教会と同じ政策を掲げたことを自画自賛した。『Hanada』では文芸評論家の小川榮太カ氏が「高市早苗戦闘宣言」で「高市早苗よ、政策暴走族として花と散れ」と時代錯誤の檄を飛ばしている。世論と乖離した議論が痛々しい。同誌の公明党前衆議院議員・伊佐進一氏による「自公連立解消!?公明党は高市さんともやっていけます」との太鼓判は何だったのか?
『サンデー毎日』10月19・26日合併号で倉重篤郎氏は「高市早苗新総裁に3つの壁」として衆参両院での少数与党という壁、トランプ米国の壁、安倍政治がもたらした政治・経済の歪みという壁を鋭く指摘した。しかし、公明党の連立解消という壁はベテラン政治記者の予想を超えていたようだ。
同誌の鈴木哲夫氏の「とんだ茶番劇だった自民党総裁選 今から始まる多党化戦国時代」の記事が参考になる。「公明から手厚く選挙協力をしてもらっている自民党議員は、公明の意向に沿って林氏に入れた者もいる」(自民党2回生議員)と、公明党は自民党総裁選で林芳正氏を応援していたとの証言がある。
選挙では自公政権を批判しても、選挙が終わったら自民と組む政治状況が続いてきた。野党がまとまって政権交代をすべきだという声も多くなっている。
日本共産党の志位和夫議長が『サンデー毎日』で倉重氏のインタビューに答えている。「『戦争国家』の暴走を許さない」との見出しがついているが、安保法制10年をどう総括するか、参院選結果と政治の排外主義化をどう見るか、マルクスブーム再燃の中で資本論から何を学ぶかの三つの問いかけが面白い。「自民政治には大企業・財界中心と対米従属という二つの歪みがあるが、その矛盾と危機が臨界点を超えた状態だ」との志位氏の話に耳を傾けるべき時代になってきたのかもしれない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
2025年10月06日
【出版界の動き】ガンバレ! 出版振興に向けての地道な取り組み
◆8月期・紙の出版物630億円(前年比5.0%減)
その内訳は、書籍365億7400万円(同0.1%減)、雑誌264億7900万円(同10.9%減)。雑誌では月刊誌が同8.4%減、週刊誌が同23.8%減。返品率は書籍が36.6%(同1.2%減)、雑誌は46.3%(同0.3%増)。
書店店頭での売れ行きは、書籍が5%増で、文芸6%増、文庫本8%増、ビジネス書11%増、学参5%増、児童書4%増、新書本4%増と、主要ジャンルすべてで前年を上回った。雑誌は定期誌が3%減、雑誌扱いコミックスが8%減、ムックは15%増。
なお、出版科学研究所による上記の販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。電子出版市場は1月と7月の年2回発表される。
◆書店なし上郡町とトーハンが協定
書店がない自治体の解消を目指すトーハンと兵庫県上郡町が、書店の創業支援や地域の活性化にむけ、ともに取り組む「地域連携協力に関する協定」を結んだ。トーハンによると県内では初めて、全国では7例目になるという。
上郡町内では2018年に店舗を構える書店が姿を消し、「無書店自治体」になった。図書館はあるが、町民からは「本を買う機会がほしい」という声が根強い。上郡町とは昨年春から話し合いを始め、トーハンが町主催の催しに移動販売車を派遣するなど、関係を築き上げてきた。協定では、教育、地域の活性化、産業振興、書店の創業など7項目で協力する。
◆“本のまち”八戸「ブックフェス」盛況
「本のまち」を掲げる青森県八戸市で、本に親しむ毎年恒例のイベント「ブックフェス」が
9月最終日の土日に実施された。全国でも珍しい公営の書店、八戸ブックセンターが毎年開いている。市の中心部にあるブックセンターと近くの市の施設などに、市内外の書店が古本を販売するコーナーや、全国の小規模な出版社がおすすめの本を展示・販売するコーナーが設けられた。訪れた人たちは、本を次々に手に取って買い求めた。
◆神保町は<世界で最もクールな街>
世界各地の活気に満ちた魅力的な街を選出する、タイムアウトの「世界で最もクールな街」ランキングが発表された。2025年版では、東京の神保町が堂々の第1位に輝いた。
この調査は、タイムアウトの現地ライターや編集者による広範なネットワークを通じて得られた地域の知見と内側からの専門的視点に基づき、世界各都市の街を評価したもの。基準となったのは、文化・コミュニティー・住みやすさ・ナイトライフ・飲食店・街のにぎわい、そして「今らしさ」といった要素である。その結果、神保町は「世界で最もクールな街」という枠を超え、「世界で最も活気にあふれた街」として頭角を現した。
東京の知識人たちに何世代にもわたり愛されてきた神保町は、歴史ある大学街であり、書店好きにとっての楽園だ。東京のビジネス街からほど近い距離にありながら、独特の雰囲気を保っている。最大の魅力は約130軒に及ぶ古書店で、「小宮山書店」や「北沢書店」といった老舗もその中に含まれる。これらの店の多くは、昔ながらの喫茶店やカレー店と同じ建物に入った、やや古めかしい低層の雑居ビルに軒を連ねている。
◆「次にくるマンガ大賞 2025」1位は‥‥
「次にくるマンガ大賞」は、これからのブレイクが予想される作品を発掘し紹介するという趣旨で2014年に創設された賞。一般ユーザーからの投票で大賞が決定する。このほど結果が発表された。コミックス部門の1位は、西修原作による宇佐崎しろ「魔男のイチ」、Webマンガ部門の1位は住吉九「サンキューピッチ」が受賞。
「魔男のイチ」は、山暮らしをしている狩人の少年・イチを主人公に描く“魔法ハンティングファンタジー”。週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中。「サンキューピッチ」は、少年ジャンプ+で連載中だが、「ハイパーインフレーション」の住吉が描く野球譚。1日3球しか全力投球できない天才投手と、野球部員たちの物語だ。
◆ナンバーナイン、漫画出版に参入
9年ほど前に創業したナンバーナインは、すべての漫画を電子コミック配信するデジタル配信サービスを業務としてきたが、「漫画で待ち遠しい未来をつくる。」をモットーに掲げ、自社で発掘・育成するオリジナル作品の価値を最大化するため、紙書籍出版事業へ新規参入する。新レーベル「No.9 Comics」「Blend Comics」を創刊し、第一弾5作品を10月28日に発売する。
今回の紙書籍出版事業への参入は、デジタルでヒットした作品や有望なクリエイターの活躍の場をリアル書店へと広げ、デジタルとリアルの両軸で作品を盛り上げていくことを目的としている。
◆「陰謀論的思考の傾向」に差出る
スマートニュース社の社内シンクタンク・スマートニュース メディア研究所は、日本国内の政治的・社会的分断や、人々のメデイア接触状況を概観する「スマートニュース・メディア価値観全国調査」(郵送方式)の結果を公表した。
主なニュース情報源に、ユーチューブなどの動画系SNSを多く利用している人ほど、陰謀論的な思考をする傾向があり、新聞を多く利用している人は逆の傾向があるという。調査では陰謀論的思考の強さを測るため、5項目の内容について、どの程度正しいと思うかをそれぞれ5段階で尋ねた。
「思う」と答えた割合が、最も高かった項目は「一般の人には決して知らされない、とても重大なことが世界で数多く起きている」の87%、最も低かったのは「政府当局が、すべての市民を厳重に監視している」の22%だった。
ここには主なニュースの情報源として、ユーチューブ、インスタグラム、TikTokを週4日以上見ると答えた人、すなわち動画系SNSでニュースを視聴する頻度が高い人ほど、陰謀論的思考が強い傾向がみられた。一方、主に新聞を週4日以上見ると答えた人では、陰謀論的思考が薄かった。
陰謀論的思考は、社会的孤立や生活上の不満と結びついている可能性があり、特定の層に限られた現象ではない。特に動画プラットフォームでは、視聴履歴に基づいて感情的・扇情的なコンテンツがアルゴリズムによって優先的に表示されやすく、それが陰謀論的な認識を強化する構造になっている可能性がある。
その内訳は、書籍365億7400万円(同0.1%減)、雑誌264億7900万円(同10.9%減)。雑誌では月刊誌が同8.4%減、週刊誌が同23.8%減。返品率は書籍が36.6%(同1.2%減)、雑誌は46.3%(同0.3%増)。
書店店頭での売れ行きは、書籍が5%増で、文芸6%増、文庫本8%増、ビジネス書11%増、学参5%増、児童書4%増、新書本4%増と、主要ジャンルすべてで前年を上回った。雑誌は定期誌が3%減、雑誌扱いコミックスが8%減、ムックは15%増。
なお、出版科学研究所による上記の販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。電子出版市場は1月と7月の年2回発表される。
◆書店なし上郡町とトーハンが協定
書店がない自治体の解消を目指すトーハンと兵庫県上郡町が、書店の創業支援や地域の活性化にむけ、ともに取り組む「地域連携協力に関する協定」を結んだ。トーハンによると県内では初めて、全国では7例目になるという。
上郡町内では2018年に店舗を構える書店が姿を消し、「無書店自治体」になった。図書館はあるが、町民からは「本を買う機会がほしい」という声が根強い。上郡町とは昨年春から話し合いを始め、トーハンが町主催の催しに移動販売車を派遣するなど、関係を築き上げてきた。協定では、教育、地域の活性化、産業振興、書店の創業など7項目で協力する。
◆“本のまち”八戸「ブックフェス」盛況
「本のまち」を掲げる青森県八戸市で、本に親しむ毎年恒例のイベント「ブックフェス」が
9月最終日の土日に実施された。全国でも珍しい公営の書店、八戸ブックセンターが毎年開いている。市の中心部にあるブックセンターと近くの市の施設などに、市内外の書店が古本を販売するコーナーや、全国の小規模な出版社がおすすめの本を展示・販売するコーナーが設けられた。訪れた人たちは、本を次々に手に取って買い求めた。
◆神保町は<世界で最もクールな街>
世界各地の活気に満ちた魅力的な街を選出する、タイムアウトの「世界で最もクールな街」ランキングが発表された。2025年版では、東京の神保町が堂々の第1位に輝いた。
この調査は、タイムアウトの現地ライターや編集者による広範なネットワークを通じて得られた地域の知見と内側からの専門的視点に基づき、世界各都市の街を評価したもの。基準となったのは、文化・コミュニティー・住みやすさ・ナイトライフ・飲食店・街のにぎわい、そして「今らしさ」といった要素である。その結果、神保町は「世界で最もクールな街」という枠を超え、「世界で最も活気にあふれた街」として頭角を現した。
東京の知識人たちに何世代にもわたり愛されてきた神保町は、歴史ある大学街であり、書店好きにとっての楽園だ。東京のビジネス街からほど近い距離にありながら、独特の雰囲気を保っている。最大の魅力は約130軒に及ぶ古書店で、「小宮山書店」や「北沢書店」といった老舗もその中に含まれる。これらの店の多くは、昔ながらの喫茶店やカレー店と同じ建物に入った、やや古めかしい低層の雑居ビルに軒を連ねている。
◆「次にくるマンガ大賞 2025」1位は‥‥
「次にくるマンガ大賞」は、これからのブレイクが予想される作品を発掘し紹介するという趣旨で2014年に創設された賞。一般ユーザーからの投票で大賞が決定する。このほど結果が発表された。コミックス部門の1位は、西修原作による宇佐崎しろ「魔男のイチ」、Webマンガ部門の1位は住吉九「サンキューピッチ」が受賞。
「魔男のイチ」は、山暮らしをしている狩人の少年・イチを主人公に描く“魔法ハンティングファンタジー”。週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中。「サンキューピッチ」は、少年ジャンプ+で連載中だが、「ハイパーインフレーション」の住吉が描く野球譚。1日3球しか全力投球できない天才投手と、野球部員たちの物語だ。
◆ナンバーナイン、漫画出版に参入
9年ほど前に創業したナンバーナインは、すべての漫画を電子コミック配信するデジタル配信サービスを業務としてきたが、「漫画で待ち遠しい未来をつくる。」をモットーに掲げ、自社で発掘・育成するオリジナル作品の価値を最大化するため、紙書籍出版事業へ新規参入する。新レーベル「No.9 Comics」「Blend Comics」を創刊し、第一弾5作品を10月28日に発売する。
今回の紙書籍出版事業への参入は、デジタルでヒットした作品や有望なクリエイターの活躍の場をリアル書店へと広げ、デジタルとリアルの両軸で作品を盛り上げていくことを目的としている。
◆「陰謀論的思考の傾向」に差出る
スマートニュース社の社内シンクタンク・スマートニュース メディア研究所は、日本国内の政治的・社会的分断や、人々のメデイア接触状況を概観する「スマートニュース・メディア価値観全国調査」(郵送方式)の結果を公表した。
主なニュース情報源に、ユーチューブなどの動画系SNSを多く利用している人ほど、陰謀論的な思考をする傾向があり、新聞を多く利用している人は逆の傾向があるという。調査では陰謀論的思考の強さを測るため、5項目の内容について、どの程度正しいと思うかをそれぞれ5段階で尋ねた。
「思う」と答えた割合が、最も高かった項目は「一般の人には決して知らされない、とても重大なことが世界で数多く起きている」の87%、最も低かったのは「政府当局が、すべての市民を厳重に監視している」の22%だった。
ここには主なニュースの情報源として、ユーチューブ、インスタグラム、TikTokを週4日以上見ると答えた人、すなわち動画系SNSでニュースを視聴する頻度が高い人ほど、陰謀論的思考が強い傾向がみられた。一方、主に新聞を週4日以上見ると答えた人では、陰謀論的思考が薄かった。
陰謀論的思考は、社会的孤立や生活上の不満と結びついている可能性があり、特定の層に限られた現象ではない。特に動画プラットフォームでは、視聴履歴に基づいて感情的・扇情的なコンテンツがアルゴリズムによって優先的に表示されやすく、それが陰謀論的な認識を強化する構造になっている可能性がある。
2025年09月28日
【おすすめ本】萩原 健『ガザ、戦下の人道医療援助 』破壊しつくされる日常 その中で命を救う活動= 猫塚義夫(北海道パレスチナ医療奉仕団団長)
イスラエルによるガザの軍事侵攻は、2年弱の 間に6万人の犠牲者と14万人の負傷者を生み出した。瓦礫と化したガザでは、多くの餓死者が出るなど、多面的なジェノサイドが進行中だ。
著者は運動体としての国境なき医師団(MSF)に参加し、人道医療援助の活動を実践してきた。
MSFには、医療者が中心と思われているが、その医療支援を実行するためには、水・食料や医 薬品の確保と組織の適切な運営が活動の前提である。また現地での医療団体や公的医療機関・行政との折衝も必要不可欠である。その大切な任務を遂行するのがMSF緊急対応コーディネーターである著者の働きである。
本書での臨場感ある交渉場面は、パレスチナで医療支援活動を行う私たちに、大きな示唆を与えてくれた。また戦時下での状況判断やMSFの連携・調整活動、現地社会 との関係性構築の成否が使命達成に最重要なことがわかる。
一方、私たち医療者の活動には国境はない。私の周りの地域医療とガザでの戦下での緊急医療には、状況の違いこそあれ理念的には連続性があるのだ。
本書を通して、医療者以外からも、MSFなど人道支援の活動へ参加してくれる人が増える契機になることを、私は願ってやまない。
著者も言うように、ガザ停戦と人道支援の活動は、すでに人道的視点の枠を超えて、政治の問題となっている。日本政府には外交の底力を示してほしい。そして私たちには「ガザ停戦」の声をい っそう強くすることを、著者は願っているのである。(ホーム社 2000円)
著者は運動体としての国境なき医師団(MSF)に参加し、人道医療援助の活動を実践してきた。
MSFには、医療者が中心と思われているが、その医療支援を実行するためには、水・食料や医 薬品の確保と組織の適切な運営が活動の前提である。また現地での医療団体や公的医療機関・行政との折衝も必要不可欠である。その大切な任務を遂行するのがMSF緊急対応コーディネーターである著者の働きである。
本書での臨場感ある交渉場面は、パレスチナで医療支援活動を行う私たちに、大きな示唆を与えてくれた。また戦時下での状況判断やMSFの連携・調整活動、現地社会 との関係性構築の成否が使命達成に最重要なことがわかる。
一方、私たち医療者の活動には国境はない。私の周りの地域医療とガザでの戦下での緊急医療には、状況の違いこそあれ理念的には連続性があるのだ。
本書を通して、医療者以外からも、MSFなど人道支援の活動へ参加してくれる人が増える契機になることを、私は願ってやまない。
著者も言うように、ガザ停戦と人道支援の活動は、すでに人道的視点の枠を超えて、政治の問題となっている。日本政府には外交の底力を示してほしい。そして私たちには「ガザ停戦」の声をい っそう強くすることを、著者は願っているのである。(ホーム社 2000円)
2025年09月27日
【お知らせ】出版研究集会:出版をあきらめない━「紙の本」にこだわる・手放さない理由は
デジタル化を基礎に版権ビジネスでの収益化に成功し、最高益を更新している大手出版社がある一方で、紙の出版物を柱に置く中小零細出版社の多くはデジタル化を進めつ つも、紙の雑誌の下げ止まらない売上減少などによって、きびしい経営を強いられている。またこの10年間で書店の総店舗数が3割減少し1万417店、2024年には書店ゼロの自治体数は493(28.2%)に増えている。
戦後80年、治安維持法100年の今年、平和な社会だからこそ言論・出版・表現の自由を存分に行使し、旺盛に出版活動してきた原点に立ち返り、出版の意義を再発見するとともに、出版産業のこれからを展望する。
期間: 10月2日(木)〜10月30日(木) 18:30〜20:30
会場: 出版労連会議室&Zoom
参加費:A 通し券:2,000円(全体会+全分科会のすべてに参加できます。アーカイブ視聴あり)
B 特別分科会券:1,000円(10月4日特別分科会に参加できます。)
内容-日時・会場:チラシ参照
https://syuppan.net/s24/wp-content/uploads/2025/09/51syukken_akiramenai.pdf
申込方法:Peatixでチケットをご購入ください。https://51syukken.peatix.com/
問い合せ:電話03-3816-2911/メール:51syukken@syuppan.net
★概要は以下の通り。なお開始時間および会場は18:30〜20:30 出版労連会議室&Zoom
全体会:10月24日(金) 「紙の本」にこだわる・手放さない理由
講師 下中美都さん(一般社団法人出版梓会理事長/平凡社会長)
分科会@:10月2日(木) メディアとしての出版の役割
講師:美浦克教さん(共同通信/元新聞労連委員長)+講師:熊谷伸一郎さん(地平社・代表)
分科会A:10月10日(金) KADOKAWA・BECプロジェクトの全貌
講師:五十嵐健一さん(KADOKAWA BEC推進部 部長)
分科会B:10月17日(金) 地元書店と連携した図書館運営
講師:中沢孝之さん(福島県白河市立図書館館長)★オンラインで講演の予定★
分科会C:10月30日(木) デジタル教科書とAI活用の危険
講師:酒井邦嘉さん(東京大学大学院教授・言語脳科学者)
特別分科会:10月4日(土)13:00〜15:00 Workshop 「あなたもハマる紙の世界」
講師:小川亮さん(京橋紙業執行役員)
主催 出版労連・第51回出版研究集会実行委員会
戦後80年、治安維持法100年の今年、平和な社会だからこそ言論・出版・表現の自由を存分に行使し、旺盛に出版活動してきた原点に立ち返り、出版の意義を再発見するとともに、出版産業のこれからを展望する。
期間: 10月2日(木)〜10月30日(木) 18:30〜20:30
会場: 出版労連会議室&Zoom
参加費:A 通し券:2,000円(全体会+全分科会のすべてに参加できます。アーカイブ視聴あり)
B 特別分科会券:1,000円(10月4日特別分科会に参加できます。)
内容-日時・会場:チラシ参照
https://syuppan.net/s24/wp-content/uploads/2025/09/51syukken_akiramenai.pdf
申込方法:Peatixでチケットをご購入ください。https://51syukken.peatix.com/
問い合せ:電話03-3816-2911/メール:51syukken@syuppan.net
★概要は以下の通り。なお開始時間および会場は18:30〜20:30 出版労連会議室&Zoom
全体会:10月24日(金) 「紙の本」にこだわる・手放さない理由
講師 下中美都さん(一般社団法人出版梓会理事長/平凡社会長)
分科会@:10月2日(木) メディアとしての出版の役割
講師:美浦克教さん(共同通信/元新聞労連委員長)+講師:熊谷伸一郎さん(地平社・代表)
分科会A:10月10日(金) KADOKAWA・BECプロジェクトの全貌
講師:五十嵐健一さん(KADOKAWA BEC推進部 部長)
分科会B:10月17日(金) 地元書店と連携した図書館運営
講師:中沢孝之さん(福島県白河市立図書館館長)★オンラインで講演の予定★
分科会C:10月30日(木) デジタル教科書とAI活用の危険
講師:酒井邦嘉さん(東京大学大学院教授・言語脳科学者)
特別分科会:10月4日(土)13:00〜15:00 Workshop 「あなたもハマる紙の世界」
講師:小川亮さん(京橋紙業執行役員)
主催 出版労連・第51回出版研究集会実行委員会
2025年09月25日
【出版トピックス】小学館労組が出版労連脱退を決め、他のメディア系労組に波紋と衝撃が=篠田博之(月刊『創』編集長)
最大勢力、小学館労組脱退
マスメディアの労働組合がご多分に漏れずいろいろ難しい問題に直面している。先頃のフジテレビ問題で、同社の労組への加入が急激に増えたという話があったが、多くの場合、任意加入の労働組合は、組織率が相当落ち込んでいる。時代の変化を受けたものと言ってよいだろう。
そんな中でいまだに高い組織率を誇っているのはユニオンショップ制、つまり管理職以外は原則として社員が全員加盟という仕組みの会社だ。電通や朝日新聞社がそれにあたる。出版社の場合は、講談社や小学館、集英社を始め、ユニオンショップ制が多い。ただその場合も時代の変化を受けて、例えば講談社などは出版労連(日本出版労働組合連合会)に加盟せず、独自の方針をとっている。
そしてこの夏、その出版労連に激震を走らせたのが、最大の勢力を誇った小学館労組が脱退を決議したことだ。社員が全員加盟制だから当然組合員も多いし、その組合費から一人当たり年間2万円が出版労連に収められていたというから、財政面でも労連を支えていたと言ってよい。
そこが脱退ということ自体、大きな打撃なのだが、この決定が出版労連加盟の他の組合にも影響を及ぼすのではないかと言われている。
オンライン投票の結果だが
小学館労組が出版労連脱退を決めたのはこの夏の臨時組合大会だった。給料が上がらず物価ばかり上がっている現状で、組合費が生活の負担になっているという声が出た。お金がかかる割にはメリットが少ないという、一人の意見だったが、その人物は執行委員に自ら立候補し、出版労連を脱退する公約を掲げたという。
組合員がこう語る。
「臨時組合大会を開いて賛否を問う投票を行うことになったのです。組合大会といえば昔は組合員が顔を揃えて議論も行われたのですが、コロナ禍以降、代議員会議(職場討議)もオンラインになり、今回もネットを使って投票ということになりました。このやり方自体も結果に影響を及ぼしたと思います」
その結果はどうだったかといえば、脱退に賛成が約5割、反対が1割だった。一見圧倒的多数で可決したと見えるが、特徴的なのは棄権・保留が約4割もあったことだ。顔を合わせて議論していればこの保留票が反対に回った可能性もある。反対と棄権・保留の票は49%に達したというから、考え方によっては51対49の僅差だったともいえる。しかし、ともあれ賛成票が過半数に達したとして労連脱退は可決されてしまった。
かつて組合員が集まって顔を合わせて組合大会が開かれていた時期には、参加者に弁当が支給されるなど、人を集める努力もなされていたが、オンラインで大会が開かれるようになってそういう取り組みもなされなくなった。
決定に至る経緯に混乱も
今回の経緯について、ある組合員がこう語る。
「出版労連からの脱退が提案されるというのが伝わって、実は2度にわたって小学館労組の労連脱退に関する説明会が設けられました。社内の狭い会議室に労連の執行部や小学館労組の役員などが集まり、それはオンラインで全組合員が視聴できるようにしたのです。
ところが驚いたことに、その会議を視聴していた組合員が極端に少なかった。もともと今、出版社の社員はみんな忙しいし、顔を合わせて熱い議論を交わす機会自体が減ってしまったので、そういう機会を設けても参加者がわずかという状況になってしまったのです。出席者の中には、これでは民主主義的プロセスとして機能していないではないかと怒り出す人もいました」
今回の決定に至る経緯には混乱も見られたようで、何らかの「不正」が行われたのではないか、実際には51対49が覆る可能性もあったのではという指摘もなされている。脱退を提案した執行委員の一人は次期、小学館執行委員会には留まらず一般組合員に戻り、小学館執行委員会委員長もその座を退いた。何となく後味の悪い結末だけが残ったようだ。
昔は小学館労組といえば熱心な組合員がおり、それは学生運動を体験した団塊の世代が多かったためと言われるが、その世代もほとんど定年を迎えてリタイアしてしまった。昔の学生運動がそうだったように、組合活動においても各自がイデオロギーを闘わせるという光景も見られたのだが、今はそういう状況もほとんどなくなってしまった。
労働組合といっても政治的テーマに取り組むというよりも賃上げや福利厚生に活動の重点が置かれるようになっていたので、それにしては組合費やカンパばかりとられて…という不満が大きくなってしまったわけだ。
相賀昌弘会長は憂慮‥‥
小学館労組は出版労連最大の勢力だっただけに、毎年、出版労連委員長は同労組から選出されていた。また新聞労連、民放労連、出版労連、広告労協、さらに印刷、映画、音楽などマスコミ業界の横断組織としてマスコミ文化情報労組会議(MIC)という組織があるのだが、その議長は新聞労連委員長が務め、副議長は出版労連委員長である小学館の組合員が務めてきた。今回、小学館労組が出版労連を脱退することで、当然その副議長の座も明け渡すことになる。
今後、波紋は出版労連全体に大きく広がっていきそうだが、時代の変化によるものとはいえ、いろいろなことを考えさせられる事態といえる。
ある小学館社員がこう語っていた。
「相賀昌弘会長は、戦後の紙の調達が大変だった時代を知っており、従業員側の繋がりである労働組合の大切さを理解されている方です。今回の出版労連脱退の経緯については憂慮されていると聞きました」(Yahoo 2025/9/13付け)
マスメディアの労働組合がご多分に漏れずいろいろ難しい問題に直面している。先頃のフジテレビ問題で、同社の労組への加入が急激に増えたという話があったが、多くの場合、任意加入の労働組合は、組織率が相当落ち込んでいる。時代の変化を受けたものと言ってよいだろう。
そんな中でいまだに高い組織率を誇っているのはユニオンショップ制、つまり管理職以外は原則として社員が全員加盟という仕組みの会社だ。電通や朝日新聞社がそれにあたる。出版社の場合は、講談社や小学館、集英社を始め、ユニオンショップ制が多い。ただその場合も時代の変化を受けて、例えば講談社などは出版労連(日本出版労働組合連合会)に加盟せず、独自の方針をとっている。
そしてこの夏、その出版労連に激震を走らせたのが、最大の勢力を誇った小学館労組が脱退を決議したことだ。社員が全員加盟制だから当然組合員も多いし、その組合費から一人当たり年間2万円が出版労連に収められていたというから、財政面でも労連を支えていたと言ってよい。
そこが脱退ということ自体、大きな打撃なのだが、この決定が出版労連加盟の他の組合にも影響を及ぼすのではないかと言われている。
オンライン投票の結果だが
小学館労組が出版労連脱退を決めたのはこの夏の臨時組合大会だった。給料が上がらず物価ばかり上がっている現状で、組合費が生活の負担になっているという声が出た。お金がかかる割にはメリットが少ないという、一人の意見だったが、その人物は執行委員に自ら立候補し、出版労連を脱退する公約を掲げたという。
組合員がこう語る。
「臨時組合大会を開いて賛否を問う投票を行うことになったのです。組合大会といえば昔は組合員が顔を揃えて議論も行われたのですが、コロナ禍以降、代議員会議(職場討議)もオンラインになり、今回もネットを使って投票ということになりました。このやり方自体も結果に影響を及ぼしたと思います」
その結果はどうだったかといえば、脱退に賛成が約5割、反対が1割だった。一見圧倒的多数で可決したと見えるが、特徴的なのは棄権・保留が約4割もあったことだ。顔を合わせて議論していればこの保留票が反対に回った可能性もある。反対と棄権・保留の票は49%に達したというから、考え方によっては51対49の僅差だったともいえる。しかし、ともあれ賛成票が過半数に達したとして労連脱退は可決されてしまった。
かつて組合員が集まって顔を合わせて組合大会が開かれていた時期には、参加者に弁当が支給されるなど、人を集める努力もなされていたが、オンラインで大会が開かれるようになってそういう取り組みもなされなくなった。
決定に至る経緯に混乱も
今回の経緯について、ある組合員がこう語る。
「出版労連からの脱退が提案されるというのが伝わって、実は2度にわたって小学館労組の労連脱退に関する説明会が設けられました。社内の狭い会議室に労連の執行部や小学館労組の役員などが集まり、それはオンラインで全組合員が視聴できるようにしたのです。
ところが驚いたことに、その会議を視聴していた組合員が極端に少なかった。もともと今、出版社の社員はみんな忙しいし、顔を合わせて熱い議論を交わす機会自体が減ってしまったので、そういう機会を設けても参加者がわずかという状況になってしまったのです。出席者の中には、これでは民主主義的プロセスとして機能していないではないかと怒り出す人もいました」
今回の決定に至る経緯には混乱も見られたようで、何らかの「不正」が行われたのではないか、実際には51対49が覆る可能性もあったのではという指摘もなされている。脱退を提案した執行委員の一人は次期、小学館執行委員会には留まらず一般組合員に戻り、小学館執行委員会委員長もその座を退いた。何となく後味の悪い結末だけが残ったようだ。
昔は小学館労組といえば熱心な組合員がおり、それは学生運動を体験した団塊の世代が多かったためと言われるが、その世代もほとんど定年を迎えてリタイアしてしまった。昔の学生運動がそうだったように、組合活動においても各自がイデオロギーを闘わせるという光景も見られたのだが、今はそういう状況もほとんどなくなってしまった。
労働組合といっても政治的テーマに取り組むというよりも賃上げや福利厚生に活動の重点が置かれるようになっていたので、それにしては組合費やカンパばかりとられて…という不満が大きくなってしまったわけだ。
相賀昌弘会長は憂慮‥‥
小学館労組は出版労連最大の勢力だっただけに、毎年、出版労連委員長は同労組から選出されていた。また新聞労連、民放労連、出版労連、広告労協、さらに印刷、映画、音楽などマスコミ業界の横断組織としてマスコミ文化情報労組会議(MIC)という組織があるのだが、その議長は新聞労連委員長が務め、副議長は出版労連委員長である小学館の組合員が務めてきた。今回、小学館労組が出版労連を脱退することで、当然その副議長の座も明け渡すことになる。
今後、波紋は出版労連全体に大きく広がっていきそうだが、時代の変化によるものとはいえ、いろいろなことを考えさせられる事態といえる。
ある小学館社員がこう語っていた。
「相賀昌弘会長は、戦後の紙の調達が大変だった時代を知っており、従業員側の繋がりである労働組合の大切さを理解されている方です。今回の出版労連脱退の経緯については憂慮されていると聞きました」(Yahoo 2025/9/13付け)
2025年09月23日
【Bookガイド】9月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)
ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)。
◆平野雄吾『パレスチナ占領』ちくま新書 9/11刊 950円
「パレスチナ占領」.jpg パレスチナ自治区ガザの戦闘は、イスラエル軍によるガザの死者は6万人を超える未曽有の大惨事に至った。これは長い間のイスラエルによるパレスチナ占領が招いた悲劇である。2024年までエルサレム特派員を務めた著者は、パレスチナの人々が抱き続ける故郷喪失と抵抗の記憶を聞きとり、イスラエル国内で被害者意識が強化される構造を読みとく。その歴史から現在まで、パレスチナ問題を一望する必読の書。
著者は1981年東京都生まれ。一橋大学大学院修了。共同通信外信部記者。24年7月までエルサレム支局長。
◆窪島誠一郎『イーゼルの丘から━終戦80年「無言館」の明日』白水社 9/12刊 2400円
「イーゼルの丘から」.jpg 無言館に並ぶ戦没画学生の作品を後世に残したいと、存続に向け立命館大学の支援を受け、共同館主として内田也哉子(樹木希林長女)を迎えた。今どうしてもなし遂げたいのは、沖縄に新たな美術館の建設だったが、いったんは諦めたものの、土地を購入し不思議な広場を造成した。名付けて「イーゼルの丘」。本書は間もなく完成する広場から、戦没画学生の心情と共に、若き人々へ未来への呼びかけを試みる。この気迫溢れる取り組みも、局所癌と闘う著者最後のミッションとして感極まるものがある。
著者は1941年東京生まれ。1979年、長野県上田市に夭折画家の素描を展示する「信濃デッサン館」開設。1997年、隣接地に戦没画学生慰霊美術館「無言館」開設。
◆太田匡彦『子ブタたちはどう生きたのか━ぶぅふぅうぅ農園の7か月』岩崎書店 9/16刊 1500円
「子ブタたちは…」.jpg 豚肉となり人間に食べられるブタにも豚の生きた歩みがある。完全放牧養豚を実践する「ぶぅふぅうぅ農園」(山梨県韮崎市)で、12頭の子ブタとそのお母さんブタの豚生と、子ブタたちが生まれてから豚肉に加工されるまでの7か月を追ったノンフィクション。生き生きとしたブタたちの<豚生>を通して、アニマルウェルフェア(動物福祉)を考える貴重な1冊。
著者は新聞記者として、動物記事を書き取材を続ける中で、畜産動物のアニマルウェルフェアという考え方に理解を深める一冊。
◆畑中章宏『小泉八雲━「見えない日本」を見た人』光文社新書 9/18刊 900円
「小泉八雲」.jpg 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、新聞記者として世界各地を旅し、今から130年前に日本にたどり着いた。冷静な観察者だった八雲は、日本各地を歩き文化・風物を堪能し、永住の地に定め、日本と日本人について数多くの紀行・随筆・評論を著した。八雲の観察眼、考察力を掘り下げる。今秋、放映されるNHK朝ドラ『ばけばけ』の主人公で注目。
著者は1962年大阪府生まれ。近畿大学法学部卒業。民俗学者。著書に『今を生きる思想 宮本常一』(講談社現代新書)、『柳田国男と今和次郎』(平凡社新書)など。
◆加藤喜之『福音派━終末論に引き裂かれるアメリカ社会』中公新書 9/19刊 950円
{幅音派」.jpg アメリカにおける福音派の巨大な存在感。どのように影響力を拡大し、トランプ大統領の誕生や再選、あるいは政治的・文化的闘争に関係していったのか。本書は、第二次世界大戦後のアメリカの軌跡を、福音派とその背景にある終末論に着目して描き出す。そこからは大統領の政治姿勢はもとより、中絶や同性婚、人種差別、イスラエルとの関わりなど多くの論点が見えてくる。
著者は1979年愛知県生まれ、立教大学教授。専門は思想史、宗教学。共著『記憶と忘却のドイツ宗教改革』(ミネルヴァ書房)など。
◆阿刀田高『90歳、男のひとり暮らし』 新潮選書 9/25 1700円
90歳 男のひとり暮らし ].jpg 単身生活を機嫌よく過ごすための工夫満載! 脳と体の衰えを知恵とユーモアで迎え撃つ。突然始まった単身生活。モットーは「“まあまあ”でいいじゃないか」。簡素に食事を調え、落語は読んで鑑賞、旧知の場所を訪ね、亡き人の思い出に親しみ、眠れぬ夜は百人一首を数える―迫りくる老いを受け止めながら日々を軽やかに過ごすコツを伝授し、人生の豊かさを再認識させてくれる滋味絶佳の老境エッセイ。
著者は1935年、東京生まれ。早稲田大学卒業。1979年『ナポレオン狂』で直木賞、1995年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。短編小説の名手として知られ、900編以上を発表する。
◆平野雄吾『パレスチナ占領』ちくま新書 9/11刊 950円
「パレスチナ占領」.jpg パレスチナ自治区ガザの戦闘は、イスラエル軍によるガザの死者は6万人を超える未曽有の大惨事に至った。これは長い間のイスラエルによるパレスチナ占領が招いた悲劇である。2024年までエルサレム特派員を務めた著者は、パレスチナの人々が抱き続ける故郷喪失と抵抗の記憶を聞きとり、イスラエル国内で被害者意識が強化される構造を読みとく。その歴史から現在まで、パレスチナ問題を一望する必読の書。
著者は1981年東京都生まれ。一橋大学大学院修了。共同通信外信部記者。24年7月までエルサレム支局長。
◆窪島誠一郎『イーゼルの丘から━終戦80年「無言館」の明日』白水社 9/12刊 2400円
「イーゼルの丘から」.jpg 無言館に並ぶ戦没画学生の作品を後世に残したいと、存続に向け立命館大学の支援を受け、共同館主として内田也哉子(樹木希林長女)を迎えた。今どうしてもなし遂げたいのは、沖縄に新たな美術館の建設だったが、いったんは諦めたものの、土地を購入し不思議な広場を造成した。名付けて「イーゼルの丘」。本書は間もなく完成する広場から、戦没画学生の心情と共に、若き人々へ未来への呼びかけを試みる。この気迫溢れる取り組みも、局所癌と闘う著者最後のミッションとして感極まるものがある。
著者は1941年東京生まれ。1979年、長野県上田市に夭折画家の素描を展示する「信濃デッサン館」開設。1997年、隣接地に戦没画学生慰霊美術館「無言館」開設。
◆太田匡彦『子ブタたちはどう生きたのか━ぶぅふぅうぅ農園の7か月』岩崎書店 9/16刊 1500円
「子ブタたちは…」.jpg 豚肉となり人間に食べられるブタにも豚の生きた歩みがある。完全放牧養豚を実践する「ぶぅふぅうぅ農園」(山梨県韮崎市)で、12頭の子ブタとそのお母さんブタの豚生と、子ブタたちが生まれてから豚肉に加工されるまでの7か月を追ったノンフィクション。生き生きとしたブタたちの<豚生>を通して、アニマルウェルフェア(動物福祉)を考える貴重な1冊。
著者は新聞記者として、動物記事を書き取材を続ける中で、畜産動物のアニマルウェルフェアという考え方に理解を深める一冊。
◆畑中章宏『小泉八雲━「見えない日本」を見た人』光文社新書 9/18刊 900円
「小泉八雲」.jpg 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、新聞記者として世界各地を旅し、今から130年前に日本にたどり着いた。冷静な観察者だった八雲は、日本各地を歩き文化・風物を堪能し、永住の地に定め、日本と日本人について数多くの紀行・随筆・評論を著した。八雲の観察眼、考察力を掘り下げる。今秋、放映されるNHK朝ドラ『ばけばけ』の主人公で注目。
著者は1962年大阪府生まれ。近畿大学法学部卒業。民俗学者。著書に『今を生きる思想 宮本常一』(講談社現代新書)、『柳田国男と今和次郎』(平凡社新書)など。
◆加藤喜之『福音派━終末論に引き裂かれるアメリカ社会』中公新書 9/19刊 950円
{幅音派」.jpg アメリカにおける福音派の巨大な存在感。どのように影響力を拡大し、トランプ大統領の誕生や再選、あるいは政治的・文化的闘争に関係していったのか。本書は、第二次世界大戦後のアメリカの軌跡を、福音派とその背景にある終末論に着目して描き出す。そこからは大統領の政治姿勢はもとより、中絶や同性婚、人種差別、イスラエルとの関わりなど多くの論点が見えてくる。
著者は1979年愛知県生まれ、立教大学教授。専門は思想史、宗教学。共著『記憶と忘却のドイツ宗教改革』(ミネルヴァ書房)など。
◆阿刀田高『90歳、男のひとり暮らし』 新潮選書 9/25 1700円
90歳 男のひとり暮らし ].jpg 単身生活を機嫌よく過ごすための工夫満載! 脳と体の衰えを知恵とユーモアで迎え撃つ。突然始まった単身生活。モットーは「“まあまあ”でいいじゃないか」。簡素に食事を調え、落語は読んで鑑賞、旧知の場所を訪ね、亡き人の思い出に親しみ、眠れぬ夜は百人一首を数える―迫りくる老いを受け止めながら日々を軽やかに過ごすコツを伝授し、人生の豊かさを再認識させてくれる滋味絶佳の老境エッセイ。
著者は1935年、東京生まれ。早稲田大学卒業。1979年『ナポレオン狂』で直木賞、1995年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞を受賞。短編小説の名手として知られ、900編以上を発表する。
2025年09月20日
【出版界の動き】25年8〜9月=出版部会
◆上半期7737億円(2.1%減)
出版科学研究所は、25年上半期(1〜6月期)の紙と電子を合わせた推定販売金額が7737億円(前年同期比2.1%減)になると発表。内訳は、紙の出版物が4926億円(同5.4%減)だが、出版科学研究所による紙の推定販売金額には、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。
紙の出版物の内訳は、書籍が3132億円(同1.5%減)、雑誌が1795億円(同11.4%減)。雑誌は月刊誌(週刊誌以外のすべて、ムック・コミックス含む)が1546億円(同9.5%減)、週刊誌が248億円(同21.7%減)。月刊誌の内訳は定期誌が約9%減、ムックが約8%減、コミックスが約11%減。
週刊誌が大幅下落しているのは、コンビニ帳合変更時の雑誌販売に伴う返品急増や、「週刊ダイヤモンド」の店頭販売終了や「週刊現代」の隔週刊化など、有力誌の刊行形態変更が相次いだことによるものと分析されている。
電子出版物は2811億円(同4.2%増)。その内訳は、電子コミックが2530億円(同4.6%増)、電子書籍が238億円(同1.7%増)、電子雑誌が43億円(同2.3%減)。
電子コミックの伸び率が鈍化。電子書籍はアニメ原作のライトノベルなどが底堅く、写真集は絶好調とのこと。電子雑誌はサブスク会員の緩やかな減少で再びマイナスに転じた。
◆図書館内ショップ実証実験
日販は、図書館流通センター(TRC)と協業し、各地の公共図書館内で本や文具雑貨、地域商材などを販売する図書館内ショップ「TOSHOP(トショップ)」の実証実験を進め、2026年度以降には本格的な全国展開を目指している。公共図書館に行って本を借りるだけでなく、書棚に陳列された本や雑貨や文具も買える仕組みである。
ちなみに愛知県の日進市立図書館では、この「TOSHOP」の実証実験が進んでいる。日本全国で書店がなくなっていく状況の中、読書人口や来館者の増加を狙う新しい取り組みでもある。昨春の出版文化産業振興財団の調べでは、書店が1店舗もない「書店ゼロ」の自治体は約27%に上った。図書館に「モノを買える場所」という付加価値を付け、来館者を増やし読書離れを食い止める狙いがある。
◆小学館文芸部門が好調
4月に発表された「本屋大賞」の上位10作品のうち、3作が小学館の作品が占めた。すなわち2位に早見和真『アルプス席の母』、7位に一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』、8位に朝井リョウ『生殖記』と、3作同時に入るのは初めてだ。
昨秋創刊した文芸誌「GOAT」が大好評で、6月には第2号を発売。誌名の「GOAT」は、英語の「Greatest of All Time」の頭文字で「史上最高」の意味である。表紙には「小説を、心の栄養に」とうたい、定価は文芸誌では破格の510円。創刊号は次々と版を重ね、6刷5万6千部に達した。第2号も発売から1カ月あまりで4刷5万5千部と勢いがある。
さらに7月24日には、姉妹誌「GOAT meets」も創刊し、「GOAT」第2号に収まりきらなかった企画を掲載している。第一特集は、金原ひとみ氏、朝吹真理子氏による「韓国文学を旅する」―芥川賞作家が、イ・ラン氏ら韓国人クリエイター、チェ・ヘジン氏やペク・スリン氏ら韓国人作家と邂逅し、その取材体験を書き下ろし小説として発表する前代未聞の試み。
出版科学研究所は、25年上半期(1〜6月期)の紙と電子を合わせた推定販売金額が7737億円(前年同期比2.1%減)になると発表。内訳は、紙の出版物が4926億円(同5.4%減)だが、出版科学研究所による紙の推定販売金額には、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。
紙の出版物の内訳は、書籍が3132億円(同1.5%減)、雑誌が1795億円(同11.4%減)。雑誌は月刊誌(週刊誌以外のすべて、ムック・コミックス含む)が1546億円(同9.5%減)、週刊誌が248億円(同21.7%減)。月刊誌の内訳は定期誌が約9%減、ムックが約8%減、コミックスが約11%減。
週刊誌が大幅下落しているのは、コンビニ帳合変更時の雑誌販売に伴う返品急増や、「週刊ダイヤモンド」の店頭販売終了や「週刊現代」の隔週刊化など、有力誌の刊行形態変更が相次いだことによるものと分析されている。
電子出版物は2811億円(同4.2%増)。その内訳は、電子コミックが2530億円(同4.6%増)、電子書籍が238億円(同1.7%増)、電子雑誌が43億円(同2.3%減)。
電子コミックの伸び率が鈍化。電子書籍はアニメ原作のライトノベルなどが底堅く、写真集は絶好調とのこと。電子雑誌はサブスク会員の緩やかな減少で再びマイナスに転じた。
◆図書館内ショップ実証実験
日販は、図書館流通センター(TRC)と協業し、各地の公共図書館内で本や文具雑貨、地域商材などを販売する図書館内ショップ「TOSHOP(トショップ)」の実証実験を進め、2026年度以降には本格的な全国展開を目指している。公共図書館に行って本を借りるだけでなく、書棚に陳列された本や雑貨や文具も買える仕組みである。
ちなみに愛知県の日進市立図書館では、この「TOSHOP」の実証実験が進んでいる。日本全国で書店がなくなっていく状況の中、読書人口や来館者の増加を狙う新しい取り組みでもある。昨春の出版文化産業振興財団の調べでは、書店が1店舗もない「書店ゼロ」の自治体は約27%に上った。図書館に「モノを買える場所」という付加価値を付け、来館者を増やし読書離れを食い止める狙いがある。
◆小学館文芸部門が好調
4月に発表された「本屋大賞」の上位10作品のうち、3作が小学館の作品が占めた。すなわち2位に早見和真『アルプス席の母』、7位に一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』、8位に朝井リョウ『生殖記』と、3作同時に入るのは初めてだ。
昨秋創刊した文芸誌「GOAT」が大好評で、6月には第2号を発売。誌名の「GOAT」は、英語の「Greatest of All Time」の頭文字で「史上最高」の意味である。表紙には「小説を、心の栄養に」とうたい、定価は文芸誌では破格の510円。創刊号は次々と版を重ね、6刷5万6千部に達した。第2号も発売から1カ月あまりで4刷5万5千部と勢いがある。
さらに7月24日には、姉妹誌「GOAT meets」も創刊し、「GOAT」第2号に収まりきらなかった企画を掲載している。第一特集は、金原ひとみ氏、朝吹真理子氏による「韓国文学を旅する」―芥川賞作家が、イ・ラン氏ら韓国人クリエイター、チェ・ヘジン氏やペク・スリン氏ら韓国人作家と邂逅し、その取材体験を書き下ろし小説として発表する前代未聞の試み。
2025年09月16日
【人権侵害】週刊新潮 差別コラムに抗議 作家ら会見 連帯次々=桜井 泉(元朝日新聞記者)
弁護士らと会見する深沢潮さん(左から2人目)=東京都千代田区、桜井 泉撮影
参議院選挙で「日本人ファースト」を主張する参政党が躍進するなど、世の中に排外主義的風潮が広がる中、『週刊新潮』に長年、連載されているコラムが、「外国人差別を扇動し、分断をあおっている」として批判を浴びている。作家や研究者、弁護士らから、老舗出版社に対して抗議が相次いでいる。
問題のコラムは、元産経新聞記者、高山正之氏の『変見自在』。「創氏改名2・0」という7月31日号のコラムで、高山氏は、在日韓国人作家の深沢潮さんを「日本人の差別意識を批判」していると名指しし、「日本名で日本人をあたかも内部告発するような言い方は素直には聞けない。はっきり外人名で語るべきではないか」と書いた。コラムでは、やはり外国にルーツがある俳優や大学教授の名も挙げており、「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と、深沢さんらを批判した。
深沢さんは8月4日、東京都内で記者会見を開き、「外国ルーツの人への偏見をあおり、差別を扇動している」として新潮社に文書での謝罪や反論の掲載を求めた。
深沢さんの両親は在日韓国人で、自らは30歳で日本国籍を取得した。在日コリアンのお見合いをテーマにした小説『金江のおばさん』で新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受けてデビューした。沖縄の朝鮮人慰安婦を描いた『翡翠(ひすい)色の海へうたう』(角川書店)や朝鮮王朝最後の皇太子、李垠(イ・ウン)と結婚した、梨本宮家出身の方子(まさこ)らを主人公にした『李の花は散っても』(朝日新聞出版)などがある。
佃克彦弁護士らとともに記者会見した深沢さんは、「これまで愛読してきた文学は、新潮社から刊行されたものが多かった。自分も新潮社から数冊の本を出せたことは、とても幸せだった」としながらも、「今回の件で、私の心は打ち砕かれた。屋上でいい景色を見せてくれたと思ったら背後から突き落とされた、そんな感覚だ」と涙をこらえながら訴えた。そして、このコラムによって、「通称名を使ったり、日本国籍をとったりした在日コリアンをはじめとした外国ルーツの人々が、どれほど怖い思いを抱いているでしょうか」と語りかけ、自分にとっては、「ペンネームも、かつて使っていた通称名や民族名も、本名も、すべてが私であり大事なもの。他人にこういう名前を使えと強要されてはならない」と述べた。
深沢さんの抗議に対して、作家や研究者らから連帯のメッセージが次々と寄せられている。
「出自を引き合いに出して日本名を使うなというのは、言葉による悪質な暴力行使であり、ヘイトスピーチ解消法に明確に違反している」(小説家の星野智幸さん)
「あれほどの差別と中傷に満ちみちたコラムの掲載を、どうして事前に止められなかったのか不思議でならない。これまで同誌編集部への信頼をもとに原稿を寄せてきた者として、深い失望と憂慮を覚える」(週刊新潮に小説を連載している村山由佳さん)
「コラムによる名指しのヘイトは、女性差別も感じられる悪意だ。作家個人として、強い批難の思いを表明する」(小説家で日本ペンクラブ会長の桐野夏生さん)
新潮社は、「深沢潮様の心を傷つけ、多大な精神的苦痛を負わせてしまったことをたいへん申し訳なく思っております。深くお詫び申し上げます」とするコメントを4日付けでホームページに掲載した。しかし、コラムのタイトルや筆者についての具体的な言及はなく、これだけ読んでも何が問題になったのか、まったくわからない。さらに6日付けで、「人権デューデリジェンスの強化方針」として「新潮社は人種、国籍、差別などに基づくあらゆる差別に反対いたします」とする文章を掲載した。人権担当役員の選任、担当部署の新設を明らかにし、社員教育の徹底、チェック体制の見直しなどを表明した。高山氏のコラムは続いており、8月7日号には「日本人と言うな」というタイトルで、参政党を評価し、在日コリアンに対する偏見と差別に満ちた文章が載っている。
新潮社は2018年、杉田水脈衆院議員(当時)らによるLGBT(性的少数者)への差別的な寄稿を載せた月刊『新潮45』が批判を浴びて廃刊にしたことがある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年8月25日号
参議院選挙で「日本人ファースト」を主張する参政党が躍進するなど、世の中に排外主義的風潮が広がる中、『週刊新潮』に長年、連載されているコラムが、「外国人差別を扇動し、分断をあおっている」として批判を浴びている。作家や研究者、弁護士らから、老舗出版社に対して抗議が相次いでいる。
問題のコラムは、元産経新聞記者、高山正之氏の『変見自在』。「創氏改名2・0」という7月31日号のコラムで、高山氏は、在日韓国人作家の深沢潮さんを「日本人の差別意識を批判」していると名指しし、「日本名で日本人をあたかも内部告発するような言い方は素直には聞けない。はっきり外人名で語るべきではないか」と書いた。コラムでは、やはり外国にルーツがある俳優や大学教授の名も挙げており、「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と、深沢さんらを批判した。
深沢さんは8月4日、東京都内で記者会見を開き、「外国ルーツの人への偏見をあおり、差別を扇動している」として新潮社に文書での謝罪や反論の掲載を求めた。
深沢さんの両親は在日韓国人で、自らは30歳で日本国籍を取得した。在日コリアンのお見合いをテーマにした小説『金江のおばさん』で新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受けてデビューした。沖縄の朝鮮人慰安婦を描いた『翡翠(ひすい)色の海へうたう』(角川書店)や朝鮮王朝最後の皇太子、李垠(イ・ウン)と結婚した、梨本宮家出身の方子(まさこ)らを主人公にした『李の花は散っても』(朝日新聞出版)などがある。
佃克彦弁護士らとともに記者会見した深沢さんは、「これまで愛読してきた文学は、新潮社から刊行されたものが多かった。自分も新潮社から数冊の本を出せたことは、とても幸せだった」としながらも、「今回の件で、私の心は打ち砕かれた。屋上でいい景色を見せてくれたと思ったら背後から突き落とされた、そんな感覚だ」と涙をこらえながら訴えた。そして、このコラムによって、「通称名を使ったり、日本国籍をとったりした在日コリアンをはじめとした外国ルーツの人々が、どれほど怖い思いを抱いているでしょうか」と語りかけ、自分にとっては、「ペンネームも、かつて使っていた通称名や民族名も、本名も、すべてが私であり大事なもの。他人にこういう名前を使えと強要されてはならない」と述べた。
深沢さんの抗議に対して、作家や研究者らから連帯のメッセージが次々と寄せられている。
「出自を引き合いに出して日本名を使うなというのは、言葉による悪質な暴力行使であり、ヘイトスピーチ解消法に明確に違反している」(小説家の星野智幸さん)
「あれほどの差別と中傷に満ちみちたコラムの掲載を、どうして事前に止められなかったのか不思議でならない。これまで同誌編集部への信頼をもとに原稿を寄せてきた者として、深い失望と憂慮を覚える」(週刊新潮に小説を連載している村山由佳さん)
「コラムによる名指しのヘイトは、女性差別も感じられる悪意だ。作家個人として、強い批難の思いを表明する」(小説家で日本ペンクラブ会長の桐野夏生さん)
新潮社は、「深沢潮様の心を傷つけ、多大な精神的苦痛を負わせてしまったことをたいへん申し訳なく思っております。深くお詫び申し上げます」とするコメントを4日付けでホームページに掲載した。しかし、コラムのタイトルや筆者についての具体的な言及はなく、これだけ読んでも何が問題になったのか、まったくわからない。さらに6日付けで、「人権デューデリジェンスの強化方針」として「新潮社は人種、国籍、差別などに基づくあらゆる差別に反対いたします」とする文章を掲載した。人権担当役員の選任、担当部署の新設を明らかにし、社員教育の徹底、チェック体制の見直しなどを表明した。高山氏のコラムは続いており、8月7日号には「日本人と言うな」というタイトルで、参政党を評価し、在日コリアンに対する偏見と差別に満ちた文章が載っている。
新潮社は2018年、杉田水脈衆院議員(当時)らによるLGBT(性的少数者)への差別的な寄稿を載せた月刊『新潮45』が批判を浴びて廃刊にしたことがある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年8月25日号
2025年08月28日
【出版トピック】“差別的な内容”と抗議を受け、「週刊新潮」コラム<変見自在>終了
「週刊新潮」7月31日号で、元産経新聞記者・高山正之氏が連載執筆のコラム<変見自在>において、人権侵害や外国人への差別的な一文を掲載した。「創氏改名2.0」と大見出しを付け、外国にルーツがある作家などの名前をあげ、「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」などと書いた。
その中で名前をあげられた一人、作家の深沢潮さんは差別的な内容だとして、新潮社に文書での謝罪を求めていた。新潮社は8月4日、公式サイトで「厳しいご批判を受ける事態になった」とのお詫びを発表した。
だが、そのお詫びは、誰が何に対してどんな謝罪をしているか、まったく曖昧だ。深沢さんのほか、外国にルーツを持つ研究者やジャーナリストなども名前を挙げ、差別意識むき出しのヘイトを加えているのだ。彼らに対してはなんの謝罪もないのか。これで深沢さんたちが納得するはずがない。
公共の言論を支える出版社が、差別と排外主義に加担した責任は極めて重い。経緯の検証も説明もなく、体面を取り繕うような姿勢に徹して、うやむやに済ましてはならない。
とりわけ新潮社は、過去にも同種の問題を引き起こしている。2018年には、同社の「新潮45」誌に、杉田水脈衆院議員(当時)の「性的少数者のカップルは生産性がない」などという、トンデモ文章を載せて大批判を浴び、ついに「新潮45」は事実上の廃刊に追い込まれている。
この「週刊新潮コラム問題」に孕む深刻な内容につき、朝日新聞を始め、毎日新聞や信濃毎日新聞では社説にも取り上げ、改めて人権侵害や排外主義について、広く問う論陣を張っている。その参考に信濃毎日新聞の社説(8/21付け)を紹介したい。
<挙げ句、唐突な連載の打ち切りである。20年以上続いていた高山氏のコラムは、昨日発売された8月28日号が最終回となった。欄外に「高山氏と編集部で協議の結果」とだけ記され、コラム本文にもそれ以上の説明はない。
これで幕引きを図ろうとするなら、あまりに誠実さを欠く。終わりにすれば文句はなかろう、と踏んだかのようだ。筆者である高山氏の責任はもとより、掲載した週刊新潮と新潮社の責任も、何も明確になっていない。(中略)
少数者への差別は根深く社会にはびこる。先月の参院選では「日本人ファースト」「違法外国人ゼロ」といった表看板を掲げて、各党が排外主義を競い合うような状況さえ生まれている。
報道や出版を担うメディアのあり方が一層厳しく問われる。新潮社はその責任に向き合い、自ら姿勢を正さなくてはならない>
週刊新潮のコラムへの抗議のため新潮社の書籍撤去を知らせる案内=8月19日午後 東京都日野市の書店「本屋とキッチン よりまし堂」(沖縄タイムスより)
その中で名前をあげられた一人、作家の深沢潮さんは差別的な内容だとして、新潮社に文書での謝罪を求めていた。新潮社は8月4日、公式サイトで「厳しいご批判を受ける事態になった」とのお詫びを発表した。
だが、そのお詫びは、誰が何に対してどんな謝罪をしているか、まったく曖昧だ。深沢さんのほか、外国にルーツを持つ研究者やジャーナリストなども名前を挙げ、差別意識むき出しのヘイトを加えているのだ。彼らに対してはなんの謝罪もないのか。これで深沢さんたちが納得するはずがない。
公共の言論を支える出版社が、差別と排外主義に加担した責任は極めて重い。経緯の検証も説明もなく、体面を取り繕うような姿勢に徹して、うやむやに済ましてはならない。
とりわけ新潮社は、過去にも同種の問題を引き起こしている。2018年には、同社の「新潮45」誌に、杉田水脈衆院議員(当時)の「性的少数者のカップルは生産性がない」などという、トンデモ文章を載せて大批判を浴び、ついに「新潮45」は事実上の廃刊に追い込まれている。
この「週刊新潮コラム問題」に孕む深刻な内容につき、朝日新聞を始め、毎日新聞や信濃毎日新聞では社説にも取り上げ、改めて人権侵害や排外主義について、広く問う論陣を張っている。その参考に信濃毎日新聞の社説(8/21付け)を紹介したい。
<挙げ句、唐突な連載の打ち切りである。20年以上続いていた高山氏のコラムは、昨日発売された8月28日号が最終回となった。欄外に「高山氏と編集部で協議の結果」とだけ記され、コラム本文にもそれ以上の説明はない。
これで幕引きを図ろうとするなら、あまりに誠実さを欠く。終わりにすれば文句はなかろう、と踏んだかのようだ。筆者である高山氏の責任はもとより、掲載した週刊新潮と新潮社の責任も、何も明確になっていない。(中略)
少数者への差別は根深く社会にはびこる。先月の参院選では「日本人ファースト」「違法外国人ゼロ」といった表看板を掲げて、各党が排外主義を競い合うような状況さえ生まれている。
報道や出版を担うメディアのあり方が一層厳しく問われる。新潮社はその責任に向き合い、自ら姿勢を正さなくてはならない>
週刊新潮のコラムへの抗議のため新潮社の書籍撤去を知らせる案内=8月19日午後 東京都日野市の書店「本屋とキッチン よりまし堂」(沖縄タイムスより)
2025年08月16日
【Bookガイド】8月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)
ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆伊藤俊治『昭和百年への鎮魂─江成常夫のレンズがとらえた戦争』集英社新書 8/8刊 1800円
“戦争の昭和”を正確に撮影してきた写真家・江成常夫。彼はアジア・太平洋戦争の実相にカメラを向け続けてきた。沖縄戦の犠牲者が逃げ込んだ洞窟の痕跡、戦争花嫁、満洲に取り残された日本人戦争孤児、ヒロシマ・ナガサキの被爆者、戦火の傷跡を刻んだ遺骨や遺品……。数多くの写真を通して彼の仕事の本質を解明し、もう一つの戦後日本を浮き彫りに。
著者は1953年秋田県生まれ。美術史家、美術評論家。東京藝大教授を経て、現在、京都芸大教授。
◆佐原徹哉『極右インターナショナリズムの時代─世界右傾化の正体』有志舎 8/11刊 3400円
なぜこの時代に「右傾化」が世界中で進行しているのか。欧米で広がる極右政党の台頭と反イスラムの風潮、中東を中心としたムスリム諸国での宗教右派の台頭、一見するとバラバラに映る現象の背後には、実は共通する力が作用している。本書は極右思想のネットワーク化とその思想の広がりを、特定の国家・民族に限ることなく、地域横断的に分析することを通して、世界的な「右傾化」メカニズムの解明に挑む。
著者は1963年東京都生まれ。明治大学教授。専門はバルカン近現代史、東欧史、紛争の比較研究。著書に『バルカン史』など。
◆保阪正康+白井聡『「戦後」の終焉─戦後80年の国家論』朝日新書 8/12刊 900円
日本は敗戦後、国の主体「国体」は天皇から米国に変わったのだろうか。80年間、戦争はなかったものの米国への従属性は深まった。誰が「悪者」なのか? 吉田か中曽根か、小泉か安倍か、それとも……今、日本の危機とは何か。昭和史研究の第一人者・保阪と気鋭の政治学者・白井が白熱討論を繰り広げる。
◆畑中丁奎『黒の戦史─特攻の命令者は誰か』芙蓉書房 8/12刊 3800円
特攻作戦を「志願」による英雄的行為として語る従来の歴史観に鋭く切り込み、その実態を徹底的に検証する。若者たちはなぜ命を絶たねばならなかったのか―それは「志願」ではなく、「命令」だったのではないか。数多くの証言や記録をもとに、特攻作戦の不合理さ、杜撰な兵器開発、そしてその結果としての無数の犠牲を明らかにする。さらに、生還した元特攻隊員の沈黙の苦悩、責任を回避した軍幹部の姿勢をも追い、歴史に対する問いを投げかける。
著者は1980年兵庫県生まれ。日本大学政治学専攻。著書に『戦争の罪と罰 特攻の真相』『人はなぜ戦場へ赴くのか 一億総特攻の歴史』など。
◆内海愛子『スガモプリズン─占領下の「異空間」』岩波新書 8/22刊 940円
敗戦直後、GHQ占領下に開所したスガモプリズン。外の世界が大きく移り変わるなか、戦犯たちは獄中で何を思い、何を見つめていたのか。戦争裁判の実態、刑務所管理の構造、戦犯の自治や言論活動、そして朝鮮人・台湾人戦犯の問題。十数年に及ぶスガモ運営の全体像を描き、塀の向こうに置きざりにされた戦争責任を問い直す。
著者は1941年東京に生まれ。早稲田大学博士課程修了、専攻は歴史社会学。恵泉女学園大学名誉教授。著書に『日本軍の捕虜政策』『朝鮮人BC級戦犯の記録』など。
◆山本勉『運慶講義』新潮社 8/27刊 2500円
稀代の大仏師・運慶の偉業の全容を明らかにする。平安時代から鎌倉時代への70余年の生涯を辿り、鎌倉方や後鳥羽院など時代の中枢と深くかかわりつつ、仏像の可能性を極めた運慶の姿がくっきりと浮かびあがる。時代背景がひと目で分かる「運慶年表」付き。
著者は1953年、横浜市生まれ。東京芸大博士課程中退。東京国立博物館名誉館員、清泉女子大学名誉教授。著書に『運慶―リアルを超えた天才仏師―』『運慶・快慶と中世寺院』『運慶大全』など。
◆清武英利『記者は天国に行けない─反骨のジャーナリズム戦記』文藝春秋 8/27刊 2500円
「記者は天国に行けない」.jpg 裏切ってでも、書け!巨大メディアを牛耳る「独裁者」に立ち向かった男が、恥辱に満ちた抵抗の半生と、特ダネに情熱を注ぐ反骨記者たちの生き様を描く。「もともとがドブ板を踏んで歩く社会部記者なのである。新聞人やテレビ、雑誌記者に限らない、肩書はなんでもいい、ネット記者でもフリーでも、とにかく組織や権力のくびきに無縁で、矜持を忘れない記録者の顔を書こうと思った」
著者は1950年宮崎県生まれ。立命館大学卒業、読売新聞社会部長、巨人軍取締役球団代表などを経て、ノンフィクション作家となる。著書に『しんがり』『どんがら』など。
◆伊藤俊治『昭和百年への鎮魂─江成常夫のレンズがとらえた戦争』集英社新書 8/8刊 1800円
“戦争の昭和”を正確に撮影してきた写真家・江成常夫。彼はアジア・太平洋戦争の実相にカメラを向け続けてきた。沖縄戦の犠牲者が逃げ込んだ洞窟の痕跡、戦争花嫁、満洲に取り残された日本人戦争孤児、ヒロシマ・ナガサキの被爆者、戦火の傷跡を刻んだ遺骨や遺品……。数多くの写真を通して彼の仕事の本質を解明し、もう一つの戦後日本を浮き彫りに。
著者は1953年秋田県生まれ。美術史家、美術評論家。東京藝大教授を経て、現在、京都芸大教授。
◆佐原徹哉『極右インターナショナリズムの時代─世界右傾化の正体』有志舎 8/11刊 3400円
なぜこの時代に「右傾化」が世界中で進行しているのか。欧米で広がる極右政党の台頭と反イスラムの風潮、中東を中心としたムスリム諸国での宗教右派の台頭、一見するとバラバラに映る現象の背後には、実は共通する力が作用している。本書は極右思想のネットワーク化とその思想の広がりを、特定の国家・民族に限ることなく、地域横断的に分析することを通して、世界的な「右傾化」メカニズムの解明に挑む。
著者は1963年東京都生まれ。明治大学教授。専門はバルカン近現代史、東欧史、紛争の比較研究。著書に『バルカン史』など。
◆保阪正康+白井聡『「戦後」の終焉─戦後80年の国家論』朝日新書 8/12刊 900円
日本は敗戦後、国の主体「国体」は天皇から米国に変わったのだろうか。80年間、戦争はなかったものの米国への従属性は深まった。誰が「悪者」なのか? 吉田か中曽根か、小泉か安倍か、それとも……今、日本の危機とは何か。昭和史研究の第一人者・保阪と気鋭の政治学者・白井が白熱討論を繰り広げる。
◆畑中丁奎『黒の戦史─特攻の命令者は誰か』芙蓉書房 8/12刊 3800円
特攻作戦を「志願」による英雄的行為として語る従来の歴史観に鋭く切り込み、その実態を徹底的に検証する。若者たちはなぜ命を絶たねばならなかったのか―それは「志願」ではなく、「命令」だったのではないか。数多くの証言や記録をもとに、特攻作戦の不合理さ、杜撰な兵器開発、そしてその結果としての無数の犠牲を明らかにする。さらに、生還した元特攻隊員の沈黙の苦悩、責任を回避した軍幹部の姿勢をも追い、歴史に対する問いを投げかける。
著者は1980年兵庫県生まれ。日本大学政治学専攻。著書に『戦争の罪と罰 特攻の真相』『人はなぜ戦場へ赴くのか 一億総特攻の歴史』など。
◆内海愛子『スガモプリズン─占領下の「異空間」』岩波新書 8/22刊 940円
敗戦直後、GHQ占領下に開所したスガモプリズン。外の世界が大きく移り変わるなか、戦犯たちは獄中で何を思い、何を見つめていたのか。戦争裁判の実態、刑務所管理の構造、戦犯の自治や言論活動、そして朝鮮人・台湾人戦犯の問題。十数年に及ぶスガモ運営の全体像を描き、塀の向こうに置きざりにされた戦争責任を問い直す。
著者は1941年東京に生まれ。早稲田大学博士課程修了、専攻は歴史社会学。恵泉女学園大学名誉教授。著書に『日本軍の捕虜政策』『朝鮮人BC級戦犯の記録』など。
◆山本勉『運慶講義』新潮社 8/27刊 2500円
稀代の大仏師・運慶の偉業の全容を明らかにする。平安時代から鎌倉時代への70余年の生涯を辿り、鎌倉方や後鳥羽院など時代の中枢と深くかかわりつつ、仏像の可能性を極めた運慶の姿がくっきりと浮かびあがる。時代背景がひと目で分かる「運慶年表」付き。
著者は1953年、横浜市生まれ。東京芸大博士課程中退。東京国立博物館名誉館員、清泉女子大学名誉教授。著書に『運慶―リアルを超えた天才仏師―』『運慶・快慶と中世寺院』『運慶大全』など。
◆清武英利『記者は天国に行けない─反骨のジャーナリズム戦記』文藝春秋 8/27刊 2500円
「記者は天国に行けない」.jpg 裏切ってでも、書け!巨大メディアを牛耳る「独裁者」に立ち向かった男が、恥辱に満ちた抵抗の半生と、特ダネに情熱を注ぐ反骨記者たちの生き様を描く。「もともとがドブ板を踏んで歩く社会部記者なのである。新聞人やテレビ、雑誌記者に限らない、肩書はなんでもいい、ネット記者でもフリーでも、とにかく組織や権力のくびきに無縁で、矜持を忘れない記録者の顔を書こうと思った」
著者は1950年宮崎県生まれ。立命館大学卒業、読売新聞社会部長、巨人軍取締役球団代表などを経て、ノンフィクション作家となる。著書に『しんがり』『どんがら』など。
2025年08月13日
【出版トピックス】注目される「TOSHOP」や「GOAT meets」の挑戦=出版部会
◆上半期の出版市場7737億円(2.1%減)に
出版科学研究所は、25年上半期(1〜6月期)の紙と電子を合わせた推定販売金額が7737億円(前年同期比2.1%減)になると発表。内訳は、紙の出版物が4926億円(同5.4%減)だが、出版科学研究所による紙の推定販売金額には、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。
紙の出版物の内訳は、書籍が3132億円(同1.5%減)、雑誌が1795億(同11.4%減)。雑誌は月刊誌(週刊誌以外のすべて、ムック・コミックス含む)が1546億(同9.5%減)、週刊誌が248億(同21.7%減)。月刊誌の内訳は定期誌が約9%減、ムックが約8%減、コミックスが約11%減。
週刊誌が大幅下落しているのは、コンビニ帳合変更時の雑誌販売に伴う返品急増や、「週刊ダイヤモンド」の店頭販売終了や「週刊現代」の隔週刊化など、有力誌の刊行形態変更が相次いだことによるものと分析されている。
電子出版物は2811億(同4.2%増)。その内訳は、電子コミックが2530億(同4.6%増)、電子書籍が238億(同1.7%増)、電子雑誌が43億(同2.3%減)。
電子コミックの伸び率が鈍化。電子書籍はアニメ原作のライトノベルなどが底堅く、写真集は絶好調とのこと。電子雑誌はサブスク会員の緩やかな減少で再びマイナスに転じた。
◆図書館内ショップ「TOSHOP」の実証実験
日販は、図書館流通センター(TRC)と協業し、各地の公共図書館内で本や文具雑貨、地域商材などを販売する図書館内ショップ「TOSHOP(トショップ)」の実証実験を進め、2026年度以降には本格的な全国展開を目指している。公共図書館に行って本を借りるだけでなく、書棚に陳列された本や雑貨や文具も買える仕組みである。
ちなみに愛知県の日進市立図書館では、この「TOSHOP」の実証実験が進んでいる。日本全国で書店がなくなっていく状況の中、読書人口や来館者の増加を狙う新しい取り組みでもある。昨春の出版文化産業振興財団の調べでは、書店が1店舗もない「書店ゼロ」の自治体は約27%に上った。図書館に「モノを買える場所」という付加価値を付け、来館者を増やし読書離れを食い止める狙いがある。
◆小学館「GOAT meets」も創刊
この4月に発表された「本屋大賞」の上位10作品のうち、3作が小学館の作品が占めた。すなわち2位に早見和真『アルプス席の母』、7位に一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』、8位に朝井リョウ『生殖記』、3作同時に入るのは初めてだ。
昨秋創刊した文芸誌「GOAT」が大好評、6月には第2号を発売。誌名の「GOAT」は、英語の「Greatest of All Time」のイニシャルからとったもので、「史上最高」を意味する。「小説を、心の栄養に」と表紙に刷り込み、定価は文芸誌では破格の510円。創刊号は雑誌としては稀有の増刷が6刷までいき、5万6千部に達したという。第2号も発売から1カ月あまりで4刷5万5千部と好調だ。
さらに7月24日には、姉妹誌「GOAT meets」も創刊。「GOAT」第2号に収まりきらなかった企画を掲載している。第一特集は、金原ひとみ氏、朝吹真理子氏による「韓国文学を旅する」―芥川賞作家が、イ・ラン氏ら韓国人クリエイター、チェ・ヘジン氏やペク・スリン氏ら韓国人作家と邂逅し、その取材体験を書き下ろし小説として発表する前代未聞の試み。
出版科学研究所は、25年上半期(1〜6月期)の紙と電子を合わせた推定販売金額が7737億円(前年同期比2.1%減)になると発表。内訳は、紙の出版物が4926億円(同5.4%減)だが、出版科学研究所による紙の推定販売金額には、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。
紙の出版物の内訳は、書籍が3132億円(同1.5%減)、雑誌が1795億(同11.4%減)。雑誌は月刊誌(週刊誌以外のすべて、ムック・コミックス含む)が1546億(同9.5%減)、週刊誌が248億(同21.7%減)。月刊誌の内訳は定期誌が約9%減、ムックが約8%減、コミックスが約11%減。
週刊誌が大幅下落しているのは、コンビニ帳合変更時の雑誌販売に伴う返品急増や、「週刊ダイヤモンド」の店頭販売終了や「週刊現代」の隔週刊化など、有力誌の刊行形態変更が相次いだことによるものと分析されている。
電子出版物は2811億(同4.2%増)。その内訳は、電子コミックが2530億(同4.6%増)、電子書籍が238億(同1.7%増)、電子雑誌が43億(同2.3%減)。
電子コミックの伸び率が鈍化。電子書籍はアニメ原作のライトノベルなどが底堅く、写真集は絶好調とのこと。電子雑誌はサブスク会員の緩やかな減少で再びマイナスに転じた。
◆図書館内ショップ「TOSHOP」の実証実験
日販は、図書館流通センター(TRC)と協業し、各地の公共図書館内で本や文具雑貨、地域商材などを販売する図書館内ショップ「TOSHOP(トショップ)」の実証実験を進め、2026年度以降には本格的な全国展開を目指している。公共図書館に行って本を借りるだけでなく、書棚に陳列された本や雑貨や文具も買える仕組みである。
ちなみに愛知県の日進市立図書館では、この「TOSHOP」の実証実験が進んでいる。日本全国で書店がなくなっていく状況の中、読書人口や来館者の増加を狙う新しい取り組みでもある。昨春の出版文化産業振興財団の調べでは、書店が1店舗もない「書店ゼロ」の自治体は約27%に上った。図書館に「モノを買える場所」という付加価値を付け、来館者を増やし読書離れを食い止める狙いがある。
◆小学館「GOAT meets」も創刊
この4月に発表された「本屋大賞」の上位10作品のうち、3作が小学館の作品が占めた。すなわち2位に早見和真『アルプス席の母』、7位に一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』、8位に朝井リョウ『生殖記』、3作同時に入るのは初めてだ。
昨秋創刊した文芸誌「GOAT」が大好評、6月には第2号を発売。誌名の「GOAT」は、英語の「Greatest of All Time」のイニシャルからとったもので、「史上最高」を意味する。「小説を、心の栄養に」と表紙に刷り込み、定価は文芸誌では破格の510円。創刊号は雑誌としては稀有の増刷が6刷までいき、5万6千部に達したという。第2号も発売から1カ月あまりで4刷5万5千部と好調だ。
さらに7月24日には、姉妹誌「GOAT meets」も創刊。「GOAT」第2号に収まりきらなかった企画を掲載している。第一特集は、金原ひとみ氏、朝吹真理子氏による「韓国文学を旅する」―芥川賞作家が、イ・ラン氏ら韓国人クリエイター、チェ・ヘジン氏やペク・スリン氏ら韓国人作家と邂逅し、その取材体験を書き下ろし小説として発表する前代未聞の試み。
2025年07月29日
【お知らせ】『世田谷区史編纂問題─著作者人格権をめぐる闘いの記録』が完成!=出版部会
出版ネッツは、2年にわたって闘われてきた世田谷区史編纂争議の経過と成果を、記録に残すため報告集『世田谷区史編纂問題 著作者人格権をめぐる闘いの記録』を作成しました。
本書は、本編と資料編で構成しています。本編では、この闘いに心を寄せてくださった方々からのメッセージを載せています。メッセージをお寄せくださった方々に、心より御礼申し上げます。
「PART2 闘いの意義と軌跡」では、出版ネッツがどのような戦略を立て、いかに闘ってきたかについて述べています。
「PART4 集会の記録」では、2024年7月に開かれたシンポジウム「歴史研究と著作権法」のパネラーの発言要旨を掲載しています。
この報告書を広くご紹介いただけますようお願いいたします。
内容については、下記のURLからご覧ください(PDF形式)
https://union-nets.org/wp-content/uploads/2025/07/1abdea99cd7bfdcb236ea09d594220d6.pdf
出版ネッツ関東支部
〒113-0033 東京都文京区本郷4-37-18 いろは本郷ビル2F 出版労連内
出版ネッツ - Creator's Union TEL:03-3816-2911 FAX :03-6369-4182
2025年07月22日
【出版トピックス】7月─猛暑を吹き飛ばす出版界の大ヒット・好企画=出版部会
◆『8番出口』初版10万部で発売・即重版
水鈴社は7月9日、川村元気『8番出口』(文庫サイズ・本体888円)を初版10万部で発売。強い反響を受け、同日には早くも2刷1万5000部の発売日重版を決めた。
同書は、8月29日公開の映画「8番出口」(配給=東宝)の監督と脚本を務めた川村氏が、自ら書き下ろした小説版。原作の無限ループゲームは2023年にリリースされ、全世界で社会現象になるほどの人気を集め、累計180万のダウンロードを記録している。
発行元の水鈴社(東京都渋谷区)は、設立2020年7月7日、主な刊行本は、瀬尾まいこ『夜明けのすべて』『ありか』、YOASOBIと直木賞作家のコラボ小説『はじめての』、夏川草介『スピノザの診察室』など。
◆「夏の100分de名著フェア」受注額過去最高
毎年恒例の同フェアに968書店から申込みがあり、その受注金額が過去最高の約1億658万円となった。「100分de名著ブックシリーズセット」(書籍)は30点と10点、「別冊100分de名著シリーズセット」(ムック)は20点と10点と計4種のセットがある。いずれも各5冊。書店には7月中旬以降に着荷するという。参加書店にはパネル、しおり、POPの拡材を、1500円以上の購入した読者には抽選で図書カードを進呈する。
このシリーズはNHKで放映し、人気を博している。めったに手にして読まない難解な書物を取り上げ、懇切丁寧な解説を施し、読んでみたくなるか、理解が進む内容が好評だ。
例えばサン=テグジュペリ『人間の大地』を講師・野崎歓氏が解説(8月放映)。このテキストは7月26日発売。フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』は、講師・西 研氏が解説(7月放映)。このテキストは6月25日に発売されている。放映の約1か月前に書籍が刊行される。
◆『ババヤガの夜』文庫版21万部を重版
英国版の同書が翻訳部門で受賞したことを受け、河出書房新社は、書店からの問合せが殺到したため、文庫版21万部、単行本4000部の重版を決めた。重版分は7月10日以降順次、書店へ出荷する。国内の同書の累計発行部数は電子版を含め、26万部を超える。
英国ではFaber & Faber社が版権を取得。サム・ベット氏による翻訳で昨年9月に刊行した。「ダガー賞」の日本人受賞は史上初めて。受賞作は文芸誌「文藝」2020年秋季号で全文発表し、同年10月に河出書房新社で単行本化、2023年5月に同社で文庫化された。
◆永井豪氏ら日本漫画協会が石川県に寄付
石川県輪島市出身の漫画家・永井豪さんらが7月11日、石川県庁を訪れ、チャリティーオークションの収益金、1億2300万円余りを石川県に寄付した。「マジンガーZ」で知られる永井豪さん、「はじめの一歩」で知られる漫画家の森川ジョージさんらの呼びかけで、能登半島地震の被災者を支援しようと、4月から205人の漫画家が描き下ろした278枚の色紙をオークションに出品。
色紙には被災地へのメッセージがつづられているものや、能登の景色が描かれたものもあった。最も高い落札額は諫山創さんの色紙620万円。他にも30枚以上の色紙が100万円以上で落札されたという。
◆秀和システムの出版事業 他社が承継
破産手続きに入った秀和システムの出版事業は、出版社トゥーヴァージンズが承継し、株式会社秀和システム新社として再出発することに決まった。トゥーヴァージンズ(東京都千代田区九段)は、2015年4月創業、資本金2000万円、パソコン関係の本は出していない。
その上で、承継して発足の秀和システム新社は、負債・未払金(従業員の給与、著者への原稿料や印税、編集費やデザイン料、印刷製本、倉庫、運搬費など)は、承継しないという。
こうした内容で、秀和システム新社が出版事業を継続できるのか、さらに取次との「委託販売」契約がどうなるのか、数多くの疑問が残る。委託販売といっても基本は「返品条件付き売買契約」である以上、所有権は取次や書店に移転しているのではないか。取次や書店にある出版物は債権回収の対象になるのか、「返品条件付き」をどう解釈するかで動きが変わるだろう。
◆雑誌オンライン書店、サイバー攻撃で混乱
富士山マガジンサービス(東京都渋谷区)は、雑誌のオンライン書店「Fujisan.co.jp」を運営し、雑誌の定期購読に特化。2002年に設立、資本金2億6千万、売上高36億円。
6月中旬にサイバー攻撃に会い、システム障害に陥った。最大で顧客250万人超の住所情報が閲覧された可能性がある。7月4日にサイトを公開停止にし、同8日に再開したものの、カスタマーサポートへの問合わせが殺到し、「状況がひっ迫している」という。7月11日、まずはメールでの対応に集中するため、電話対応を一時的に停止する可能性があると発信した。取引する出版関係者の不安感が高まっている。
ただし不正アクセスの遮断システムを修正する措置を実施した。漏洩した可能性のある個人情報には、クレジットカードや銀行口座等の決済に関する情報は含まれていないという。
水鈴社は7月9日、川村元気『8番出口』(文庫サイズ・本体888円)を初版10万部で発売。強い反響を受け、同日には早くも2刷1万5000部の発売日重版を決めた。
同書は、8月29日公開の映画「8番出口」(配給=東宝)の監督と脚本を務めた川村氏が、自ら書き下ろした小説版。原作の無限ループゲームは2023年にリリースされ、全世界で社会現象になるほどの人気を集め、累計180万のダウンロードを記録している。
発行元の水鈴社(東京都渋谷区)は、設立2020年7月7日、主な刊行本は、瀬尾まいこ『夜明けのすべて』『ありか』、YOASOBIと直木賞作家のコラボ小説『はじめての』、夏川草介『スピノザの診察室』など。
◆「夏の100分de名著フェア」受注額過去最高
毎年恒例の同フェアに968書店から申込みがあり、その受注金額が過去最高の約1億658万円となった。「100分de名著ブックシリーズセット」(書籍)は30点と10点、「別冊100分de名著シリーズセット」(ムック)は20点と10点と計4種のセットがある。いずれも各5冊。書店には7月中旬以降に着荷するという。参加書店にはパネル、しおり、POPの拡材を、1500円以上の購入した読者には抽選で図書カードを進呈する。
このシリーズはNHKで放映し、人気を博している。めったに手にして読まない難解な書物を取り上げ、懇切丁寧な解説を施し、読んでみたくなるか、理解が進む内容が好評だ。
例えばサン=テグジュペリ『人間の大地』を講師・野崎歓氏が解説(8月放映)。このテキストは7月26日発売。フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』は、講師・西 研氏が解説(7月放映)。このテキストは6月25日に発売されている。放映の約1か月前に書籍が刊行される。
◆『ババヤガの夜』文庫版21万部を重版
英国版の同書が翻訳部門で受賞したことを受け、河出書房新社は、書店からの問合せが殺到したため、文庫版21万部、単行本4000部の重版を決めた。重版分は7月10日以降順次、書店へ出荷する。国内の同書の累計発行部数は電子版を含め、26万部を超える。
英国ではFaber & Faber社が版権を取得。サム・ベット氏による翻訳で昨年9月に刊行した。「ダガー賞」の日本人受賞は史上初めて。受賞作は文芸誌「文藝」2020年秋季号で全文発表し、同年10月に河出書房新社で単行本化、2023年5月に同社で文庫化された。
◆永井豪氏ら日本漫画協会が石川県に寄付
石川県輪島市出身の漫画家・永井豪さんらが7月11日、石川県庁を訪れ、チャリティーオークションの収益金、1億2300万円余りを石川県に寄付した。「マジンガーZ」で知られる永井豪さん、「はじめの一歩」で知られる漫画家の森川ジョージさんらの呼びかけで、能登半島地震の被災者を支援しようと、4月から205人の漫画家が描き下ろした278枚の色紙をオークションに出品。
色紙には被災地へのメッセージがつづられているものや、能登の景色が描かれたものもあった。最も高い落札額は諫山創さんの色紙620万円。他にも30枚以上の色紙が100万円以上で落札されたという。
◆秀和システムの出版事業 他社が承継
破産手続きに入った秀和システムの出版事業は、出版社トゥーヴァージンズが承継し、株式会社秀和システム新社として再出発することに決まった。トゥーヴァージンズ(東京都千代田区九段)は、2015年4月創業、資本金2000万円、パソコン関係の本は出していない。
その上で、承継して発足の秀和システム新社は、負債・未払金(従業員の給与、著者への原稿料や印税、編集費やデザイン料、印刷製本、倉庫、運搬費など)は、承継しないという。
こうした内容で、秀和システム新社が出版事業を継続できるのか、さらに取次との「委託販売」契約がどうなるのか、数多くの疑問が残る。委託販売といっても基本は「返品条件付き売買契約」である以上、所有権は取次や書店に移転しているのではないか。取次や書店にある出版物は債権回収の対象になるのか、「返品条件付き」をどう解釈するかで動きが変わるだろう。
◆雑誌オンライン書店、サイバー攻撃で混乱
富士山マガジンサービス(東京都渋谷区)は、雑誌のオンライン書店「Fujisan.co.jp」を運営し、雑誌の定期購読に特化。2002年に設立、資本金2億6千万、売上高36億円。
6月中旬にサイバー攻撃に会い、システム障害に陥った。最大で顧客250万人超の住所情報が閲覧された可能性がある。7月4日にサイトを公開停止にし、同8日に再開したものの、カスタマーサポートへの問合わせが殺到し、「状況がひっ迫している」という。7月11日、まずはメールでの対応に集中するため、電話対応を一時的に停止する可能性があると発信した。取引する出版関係者の不安感が高まっている。
ただし不正アクセスの遮断システムを修正する措置を実施した。漏洩した可能性のある個人情報には、クレジットカードや銀行口座等の決済に関する情報は含まれていないという。
2025年07月19日
【お知らせ】出版流通を振り返り・未来を議論するセッションの開催=出版部会
2022年、日本出版学会出版産業研究部会では『平成の出版が歩んだ道――激変する「出版業界の夢と冒険」30年史』をテーマに、平成の出版産業を振り返った。それから3年の短い間に、出版産業をめぐる動きは大きく変わり、特に出版流通は大規模な変化に直面しようとしている。
そのような状況において、このたび能勢 仁・八木壯一・樽見博『出版流通が歩んだ道――近代出版流通誕生150年の軌跡』が刊行された。
著者の一人・能勢仁さんから本書の2・3章の内容を下敷きに、「第4章 出版業界の生き残り策」を軸として、過去を踏まえて未来を見据えた議論を行う場を設ける。
日時:2025年7月25日(金) 17:30〜19:00
会場:八木書店本社ビル6F(東京都千代田区神田小川町3-8)
https://company.books-yagi.co.jp/access
交通:JR御茶ノ水駅 徒歩10分、都営地下鉄新宿線・三田線、東京メトロ半蔵門線 神保町駅 徒歩5分
参加費:500円 日本出版学会員および学部生は無料
定員:30名
申し込み方法:Googleフォームにて受け付け。https://forms.gle/hgsi2fYyJeSXDxM86 をクリックし、登録してください。
そのような状況において、このたび能勢 仁・八木壯一・樽見博『出版流通が歩んだ道――近代出版流通誕生150年の軌跡』が刊行された。
著者の一人・能勢仁さんから本書の2・3章の内容を下敷きに、「第4章 出版業界の生き残り策」を軸として、過去を踏まえて未来を見据えた議論を行う場を設ける。
日時:2025年7月25日(金) 17:30〜19:00
会場:八木書店本社ビル6F(東京都千代田区神田小川町3-8)
https://company.books-yagi.co.jp/access
交通:JR御茶ノ水駅 徒歩10分、都営地下鉄新宿線・三田線、東京メトロ半蔵門線 神保町駅 徒歩5分
参加費:500円 日本出版学会員および学部生は無料
定員:30名
申し込み方法:Googleフォームにて受け付け。https://forms.gle/hgsi2fYyJeSXDxM86 をクリックし、登録してください。
主催:日本出版学会 出版産業研究部会
2025年07月12日
【出版トピック】IT関連書籍の出版社・秀和システムが法的整理へ=出版部会
IT・ビジネス関連書籍を手がける出版社・秀和システム(東京都江東区)が、7月1日付で法的整理および出版事業を他社に譲渡する手続きに入った。
1974年に秀和システムトレーディングとして設立後、1981年からパソコン周辺機器の開発を手がけた。82年にはパソコン周辺機器の解説本などで出版事業に参入。88年からパソコン入門書「はじめての」シリーズを展開し、多くの読者を獲得。95年に秀和システムに商号変更した。
2021年には子会社を通じて船井電機を買収したが、その後、船井電機を通じて買収した脱毛サロンを手がけるグループ会社で、取引先との未払いトラブルが発生。連帯保証を行っていたことから船井電機の株式が仮差押えを受けるなどの事態に発展していた。
秀和システムの24年3月期の総資産合計は29億1,300万円、純資産合計は10億2,000万円で表面上は悪くない。ただ、船井電機の経営危機が表面化し、秀和システムとの関係性がメディアなどで指摘され始めると、「出版物の返本が相次ぎ、資金繰りが逆回転し始めた」といわれる。
こうした事態の余波を受け、出版事業も都内新興出版社に事業譲渡を打診していた模様だ。すでに複数社から事業継承の申出があるようで、なんとか存続はできそうだという。
1974年に秀和システムトレーディングとして設立後、1981年からパソコン周辺機器の開発を手がけた。82年にはパソコン周辺機器の解説本などで出版事業に参入。88年からパソコン入門書「はじめての」シリーズを展開し、多くの読者を獲得。95年に秀和システムに商号変更した。
2021年には子会社を通じて船井電機を買収したが、その後、船井電機を通じて買収した脱毛サロンを手がけるグループ会社で、取引先との未払いトラブルが発生。連帯保証を行っていたことから船井電機の株式が仮差押えを受けるなどの事態に発展していた。
秀和システムの24年3月期の総資産合計は29億1,300万円、純資産合計は10億2,000万円で表面上は悪くない。ただ、船井電機の経営危機が表面化し、秀和システムとの関係性がメディアなどで指摘され始めると、「出版物の返本が相次ぎ、資金繰りが逆回転し始めた」といわれる。
こうした事態の余波を受け、出版事業も都内新興出版社に事業譲渡を打診していた模様だ。すでに複数社から事業継承の申出があるようで、なんとか存続はできそうだという。
2025年06月24日
【出版トピックス】6月─フリーランス新法を順守すべきだ=出版部会
◆小学館と光文社に公取委勧告
公正取引委員会は、6月17日、両社が業務を委託していたフリーランスのライターなどに報酬額や支払期日などの取り引き条件を明示しなかったとして、再発防止を求める勧告を行った。去年11月にフリーランス新法が施行後、勧告が出されるのは初めて。
フリーランスで働く人が安心して働ける環境を作るための新法は、業務を委託した事業者に対して書面などで報酬額や支払い期日といった取り引き条件を直ちに明示することが義務づけられたほか、業務委託の期間が1カ月以上の場合は通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」などの行為が禁止された。
小学館は、12月の1か月間、フリーランスのライターやカメラマンなど191の事業者に、また光文社も今年2月までの4カ月間、フリーランスの31の事業者に、報酬額を明示せず期日までに報酬を支払っていなかった。小学館はおよそ2000人、光文社はおよそ4000人のフリーランスと取り引きがあり、詳しい取引条件を明示しないまま口頭で発注することが常態化していた。
小学館、光文社は共に社告でお詫びしたうえで、「全社一丸となって法令順守を徹底する」と発表した。今回の勧告は、新法を会社に守らせるのはもちろんだが、フリーランスの人が気持ちよく働き、取り引きができる環境を作っていく、大切な第一歩である。
◆経産省の“本屋復興”戦略
6月10日、経産省など関係7府省庁が連携し、書店を「地域の文化拠点」と捉え、『書店活性化プラン』を発表した。さらに『書店経営者向け支援施策活用ガイド』も公開され、街の書店が直面する課題への包括的な施策が示された。
かつて日本全国に15,000店以上あった書店は、現在では約10,000店へと減少。特に中小規模の街の書店の閉店が続き、無書店自治体が493に上るという深刻な状況。背景には雑誌販売額の長期的低下やオンライン書店の台頭、さらには後継者不足といった複合的な要因が絡んでいる。
小規模書店に向けた補助金制度の導入─これは、古書販売への参入やイベント開催による来店促進など、収益性の高い取り組みに対して最大50万円(創業型では200万円)を補助する。また「IT導入補助金」では、POSレジや受発注システムの導入により業務効率化を促進。
図書館・自治体との連携─書店と図書館が共同で読書イベントを開催し、地域の学校とのネットワークを構築する。図書購入や新刊貸出における書店との取引実態の可視化も進める。こうした協働によって「本を売る場所」から「読書文化を支える場」へと役割を広げることで、地域の未来の読者層を育てる好循環の構築が期待される。
慣行改革と省力化投資─出版業界に特有の「再販制度」や「委託配本制度」について、マージン比率の見直しや値引き販売(時限再販)の運用を促す。高返品率の改善に適正配本をめざす。POSレジの導入支援により、棚卸の効率化や万引き対策、省人化投資も推進する。
新規出店と事業承継─日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の創業保証の活用により、若者世代の書店開業への挑戦を後押し。また後継者への「事業承継・M&A補助金」の適用も拡大する。
これらの提言を受け、出版各社はどう対応するのか、緊急に討議し具体的な取り組みを明らかにすることが求められている。
◆トーハン、日販とも減収増益
2024年度トーハンの連結決算は売上高3947億2200万円(前年比1.1%減)、営業利益9億6700万円(同16.8%減)、経常利益15億3200万円(同18.6%減)、当期純利益18億7100万円(同28.9%増)。「取次事業」は15億0500万円の経常赤字。
日販GHDの売上高3827億4600万円(前年比4.8%減)、営業利益2億9600万円(前年は16億6100万円の損失)、経常利益7億9100万円(前年は11億8000万円の損失)、当期純利益4億1600万円(前年は49億3400万円の損失)。3期ぶりに黒字に転換。取次事業は赤字も利益を大幅に改善。
◆大垣書店と電子書籍ストア協業
京都の大垣書店は、自ら発行するタウン誌『KYOTOZINE』の電子書籍化を実施。同書店での店頭販売はもとより、大日本印刷などが運営する「honto」でも扱い全国の読者ニーズに応える。
今後、「honto」と大垣書店は、この協業から得たマーケティング・データを分析し、全国の潜在読者に関心の高いと思われる情報を大垣書店店頭で提案し、関連イベントの開催をおこなう。リアルとデジタル市場を往来できるような試みを行い、紙・電子両方の読者を増やしていくことを目指す。
◆小学館は増収増益に
24年度決算では総売上高1096億1600万円(前年比0.8%増)、経常利益48億8200万円(同0.3%増)、当期利益36億4200万円(同70.0%増)。「出版売上」は同8.4%減、「広告収入」は同0.6%減と前年実績を下回ったが、「デジタル収入」が同2.2%増、コミックの映像ヒットで「版権収入等」が同26.8%増で好調だった。書籍は児童書が好調だった
公正取引委員会は、6月17日、両社が業務を委託していたフリーランスのライターなどに報酬額や支払期日などの取り引き条件を明示しなかったとして、再発防止を求める勧告を行った。去年11月にフリーランス新法が施行後、勧告が出されるのは初めて。
フリーランスで働く人が安心して働ける環境を作るための新法は、業務を委託した事業者に対して書面などで報酬額や支払い期日といった取り引き条件を直ちに明示することが義務づけられたほか、業務委託の期間が1カ月以上の場合は通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」などの行為が禁止された。
小学館は、12月の1か月間、フリーランスのライターやカメラマンなど191の事業者に、また光文社も今年2月までの4カ月間、フリーランスの31の事業者に、報酬額を明示せず期日までに報酬を支払っていなかった。小学館はおよそ2000人、光文社はおよそ4000人のフリーランスと取り引きがあり、詳しい取引条件を明示しないまま口頭で発注することが常態化していた。
小学館、光文社は共に社告でお詫びしたうえで、「全社一丸となって法令順守を徹底する」と発表した。今回の勧告は、新法を会社に守らせるのはもちろんだが、フリーランスの人が気持ちよく働き、取り引きができる環境を作っていく、大切な第一歩である。
◆経産省の“本屋復興”戦略
6月10日、経産省など関係7府省庁が連携し、書店を「地域の文化拠点」と捉え、『書店活性化プラン』を発表した。さらに『書店経営者向け支援施策活用ガイド』も公開され、街の書店が直面する課題への包括的な施策が示された。
かつて日本全国に15,000店以上あった書店は、現在では約10,000店へと減少。特に中小規模の街の書店の閉店が続き、無書店自治体が493に上るという深刻な状況。背景には雑誌販売額の長期的低下やオンライン書店の台頭、さらには後継者不足といった複合的な要因が絡んでいる。
小規模書店に向けた補助金制度の導入─これは、古書販売への参入やイベント開催による来店促進など、収益性の高い取り組みに対して最大50万円(創業型では200万円)を補助する。また「IT導入補助金」では、POSレジや受発注システムの導入により業務効率化を促進。
図書館・自治体との連携─書店と図書館が共同で読書イベントを開催し、地域の学校とのネットワークを構築する。図書購入や新刊貸出における書店との取引実態の可視化も進める。こうした協働によって「本を売る場所」から「読書文化を支える場」へと役割を広げることで、地域の未来の読者層を育てる好循環の構築が期待される。
慣行改革と省力化投資─出版業界に特有の「再販制度」や「委託配本制度」について、マージン比率の見直しや値引き販売(時限再販)の運用を促す。高返品率の改善に適正配本をめざす。POSレジの導入支援により、棚卸の効率化や万引き対策、省人化投資も推進する。
新規出店と事業承継─日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の創業保証の活用により、若者世代の書店開業への挑戦を後押し。また後継者への「事業承継・M&A補助金」の適用も拡大する。
これらの提言を受け、出版各社はどう対応するのか、緊急に討議し具体的な取り組みを明らかにすることが求められている。
◆トーハン、日販とも減収増益
2024年度トーハンの連結決算は売上高3947億2200万円(前年比1.1%減)、営業利益9億6700万円(同16.8%減)、経常利益15億3200万円(同18.6%減)、当期純利益18億7100万円(同28.9%増)。「取次事業」は15億0500万円の経常赤字。
日販GHDの売上高3827億4600万円(前年比4.8%減)、営業利益2億9600万円(前年は16億6100万円の損失)、経常利益7億9100万円(前年は11億8000万円の損失)、当期純利益4億1600万円(前年は49億3400万円の損失)。3期ぶりに黒字に転換。取次事業は赤字も利益を大幅に改善。
◆大垣書店と電子書籍ストア協業
京都の大垣書店は、自ら発行するタウン誌『KYOTOZINE』の電子書籍化を実施。同書店での店頭販売はもとより、大日本印刷などが運営する「honto」でも扱い全国の読者ニーズに応える。
今後、「honto」と大垣書店は、この協業から得たマーケティング・データを分析し、全国の潜在読者に関心の高いと思われる情報を大垣書店店頭で提案し、関連イベントの開催をおこなう。リアルとデジタル市場を往来できるような試みを行い、紙・電子両方の読者を増やしていくことを目指す。
◆小学館は増収増益に
24年度決算では総売上高1096億1600万円(前年比0.8%増)、経常利益48億8200万円(同0.3%増)、当期利益36億4200万円(同70.0%増)。「出版売上」は同8.4%減、「広告収入」は同0.6%減と前年実績を下回ったが、「デジタル収入」が同2.2%増、コミックの映像ヒットで「版権収入等」が同26.8%増で好調だった。書籍は児童書が好調だった
2025年06月17日
【Bookガイド】6月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)
ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆小倉紀蔵『日本群島文明史』ちくま新書 6/11刊 1400円
日本は、大陸文明的な実体系思考よりも、海に囲まれた群島文明的な非実体系思考が優勢である。そうした世界観から、日本文明が創り出されてきた。生命は偶発的なものという感覚や共同主観の構造、革新性をもたらす美意識などが展開され、そうした日本の歴史的動態を描きつつ、日本の群島文明を形成する東アジアの哲学を「通底哲学」として世界哲学の中に置き直す。日本の知の歴史を総合的に理解する、ユニークな著者独自の日本思想大全。
著者は1959年生まれ。京都大学名誉教授。専門は東アジア哲学、比較文明学。編著に『比較文明学の50人』など。
◆石井頼子『素顔の棟方志功─仕事と暮らし』淡交社 6/13刊 2200円
棟方志功・歿後50年。志功の孫であり精力的に研究を続ける著者が、志功の名作誕生の背景や「素顔」「本質」を照らし出す。志功が昭和20年の疎開から約6年間も在住し、戦後の活躍の基礎となる精神的充実を得た富山県南砺市福光での日々の様子を活写する。これまで知られなかった棟方志功の人柄や世界観が浮き彫りにされる。
著者は1956年東京都生まれ。棟方と生活を共にし、その制作風景に接しながら育つ。慶應大学を卒業後、棟方板画美術館に学芸員として勤務。2018年より南砺市立福光美術館特別専門員として棟方志功関連事業の後見と資料のアーカイブ化を担当。
◆塩出浩之『琉球処分─「沖縄問題」の原点』中公新書 6/20刊 1000円
琉球処分とは、日中の両属国家だった琉球王国を、日本が強制併合した政治過程をいう。1872年の琉球藩設置から「処分官」派遣、79年の警察・軍隊を動員した沖縄県設置、80年に強く抗議する清国との八重山分島交渉までを指す。国王は東京に送られ、島内では組織的抵抗が日清戦争まで行われる。本書は、併合の過程とその後を精緻に追い、清国や西洋諸国を巻き込み東アジアの新秩序をも形成した琉球処分の全貌を描く。沖縄の日本復帰から50年、「沖縄問題」を深く理解するうえで欠かせない一冊。
著者は1974年広島県生まれ。東京大学卒、2016年琉球大学教授、2021年京都大学教授。
◆今野晴貴『会社は社員を二度殺す─過労死問題の闇に迫る』文春新書 6/20刊 1050円
2014年に過労死防止法が制定されたにも関わらず、減らない日本の過労死。実は「働き方改革」が労働強化と自己責任化を迫り、AI/テクノロジーの伸展が過労うつや自死を加速させている。労災の賠償金が企業内でコスト化され、その減額を争う訴訟では「命の値段」の差別化が進む。まさにディストピア的風潮がはびこっている。
かつ会社のために働き命を落とした故人に対し、豹変した会社が遺族に加える故人への徹底的な侮辱と攻撃。過労死遺族からしばしば「私の夫は二度殺されました」という言葉の意味する非情な実態を暴き、多くの過労死事例とその後の訴訟経過を、長年にわたり追究してきた著者の渾身ルポ。
◆大井朋幸『ボクは日本一かっこいいトイレ清掃員』岩波ジュニア新書 6/20刊 940円
人生終わった! 思いがけずトイレ清掃の仕事を言い渡され、ウンコにまみれてウェウェする日々…。あることをきっかけに一念発起、「日本一かっこいいトイレ清掃員」を目指す。便器を手で磨き、床を這って雑巾がけ…。町中のトイレを綺麗に保つために奮闘する最高にピカピカなトイレ清掃員の感動の物語。年齢問わず必読!
著者は1974年生まれ。小学校5年から高校卒業まで奥多摩町で暮らす。高校卒業後、料理人として働いた後、2017年、奥多摩総合開発に入社し公衆トイレ清掃の責任者に。清掃チームをOPT(オピト)と名付け、日本一きれいなトイレを目指して励む。2025年に株式会社オピトを立ち上げる。
◆赤根智子『戦争犯罪と闘う─国際刑事裁判所は屈しない』文春新書 6/20刊 900円
ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナへの非人道的な攻撃─プーチンとネタニヤフに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)。日本人として初めてトップに就任した著者は、プーチンから逆指名手配を受け、トランプ大統領からは日本への経済制裁の脅しをかけられる。世界規模の戦争犯罪に向き合ってきた国際刑事裁判所は、いま存続の危機にある。
国際刑事裁判所とはいかなる機関か。その歴史を辿りつつ、「力による支配」がむき出しになっている今こそ、「法の支配」による安全保障・国際刑事裁判所の重要さを訴える。
◆井上弘喜『アメリカの新右翼─トランプを生み出した思想家たち』新潮選書 6/26刊 1550円
アメリカを乗っ取った「危険な思想」の正体を明かす!トランプ政権による国家改造の成否に関わらず、リベラル・デモクラシーへの不信感は決定的なものとなっている。左右両極の間で起きた思想戦争の内幕を追いながら、テック右派から宗教保守、ネオナチなどの思想家たちが、なぜリベラルな価値観を批判し、社会をどのように作り変えようとしているのか。それぞれの思考・行動を分析し、米国民の底流水脈を読み解く。
著者は1973年生まれ。神戸大学教授。専門はアメリカ政治思想史。著書『アメリカ保守主義の思想史』(青土社)
◆小倉紀蔵『日本群島文明史』ちくま新書 6/11刊 1400円
日本は、大陸文明的な実体系思考よりも、海に囲まれた群島文明的な非実体系思考が優勢である。そうした世界観から、日本文明が創り出されてきた。生命は偶発的なものという感覚や共同主観の構造、革新性をもたらす美意識などが展開され、そうした日本の歴史的動態を描きつつ、日本の群島文明を形成する東アジアの哲学を「通底哲学」として世界哲学の中に置き直す。日本の知の歴史を総合的に理解する、ユニークな著者独自の日本思想大全。
著者は1959年生まれ。京都大学名誉教授。専門は東アジア哲学、比較文明学。編著に『比較文明学の50人』など。
◆石井頼子『素顔の棟方志功─仕事と暮らし』淡交社 6/13刊 2200円
棟方志功・歿後50年。志功の孫であり精力的に研究を続ける著者が、志功の名作誕生の背景や「素顔」「本質」を照らし出す。志功が昭和20年の疎開から約6年間も在住し、戦後の活躍の基礎となる精神的充実を得た富山県南砺市福光での日々の様子を活写する。これまで知られなかった棟方志功の人柄や世界観が浮き彫りにされる。
著者は1956年東京都生まれ。棟方と生活を共にし、その制作風景に接しながら育つ。慶應大学を卒業後、棟方板画美術館に学芸員として勤務。2018年より南砺市立福光美術館特別専門員として棟方志功関連事業の後見と資料のアーカイブ化を担当。
◆塩出浩之『琉球処分─「沖縄問題」の原点』中公新書 6/20刊 1000円
琉球処分とは、日中の両属国家だった琉球王国を、日本が強制併合した政治過程をいう。1872年の琉球藩設置から「処分官」派遣、79年の警察・軍隊を動員した沖縄県設置、80年に強く抗議する清国との八重山分島交渉までを指す。国王は東京に送られ、島内では組織的抵抗が日清戦争まで行われる。本書は、併合の過程とその後を精緻に追い、清国や西洋諸国を巻き込み東アジアの新秩序をも形成した琉球処分の全貌を描く。沖縄の日本復帰から50年、「沖縄問題」を深く理解するうえで欠かせない一冊。
著者は1974年広島県生まれ。東京大学卒、2016年琉球大学教授、2021年京都大学教授。
◆今野晴貴『会社は社員を二度殺す─過労死問題の闇に迫る』文春新書 6/20刊 1050円
2014年に過労死防止法が制定されたにも関わらず、減らない日本の過労死。実は「働き方改革」が労働強化と自己責任化を迫り、AI/テクノロジーの伸展が過労うつや自死を加速させている。労災の賠償金が企業内でコスト化され、その減額を争う訴訟では「命の値段」の差別化が進む。まさにディストピア的風潮がはびこっている。
かつ会社のために働き命を落とした故人に対し、豹変した会社が遺族に加える故人への徹底的な侮辱と攻撃。過労死遺族からしばしば「私の夫は二度殺されました」という言葉の意味する非情な実態を暴き、多くの過労死事例とその後の訴訟経過を、長年にわたり追究してきた著者の渾身ルポ。
◆大井朋幸『ボクは日本一かっこいいトイレ清掃員』岩波ジュニア新書 6/20刊 940円
人生終わった! 思いがけずトイレ清掃の仕事を言い渡され、ウンコにまみれてウェウェする日々…。あることをきっかけに一念発起、「日本一かっこいいトイレ清掃員」を目指す。便器を手で磨き、床を這って雑巾がけ…。町中のトイレを綺麗に保つために奮闘する最高にピカピカなトイレ清掃員の感動の物語。年齢問わず必読!
著者は1974年生まれ。小学校5年から高校卒業まで奥多摩町で暮らす。高校卒業後、料理人として働いた後、2017年、奥多摩総合開発に入社し公衆トイレ清掃の責任者に。清掃チームをOPT(オピト)と名付け、日本一きれいなトイレを目指して励む。2025年に株式会社オピトを立ち上げる。
◆赤根智子『戦争犯罪と闘う─国際刑事裁判所は屈しない』文春新書 6/20刊 900円
ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナへの非人道的な攻撃─プーチンとネタニヤフに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)。日本人として初めてトップに就任した著者は、プーチンから逆指名手配を受け、トランプ大統領からは日本への経済制裁の脅しをかけられる。世界規模の戦争犯罪に向き合ってきた国際刑事裁判所は、いま存続の危機にある。
国際刑事裁判所とはいかなる機関か。その歴史を辿りつつ、「力による支配」がむき出しになっている今こそ、「法の支配」による安全保障・国際刑事裁判所の重要さを訴える。
◆井上弘喜『アメリカの新右翼─トランプを生み出した思想家たち』新潮選書 6/26刊 1550円
アメリカを乗っ取った「危険な思想」の正体を明かす!トランプ政権による国家改造の成否に関わらず、リベラル・デモクラシーへの不信感は決定的なものとなっている。左右両極の間で起きた思想戦争の内幕を追いながら、テック右派から宗教保守、ネオナチなどの思想家たちが、なぜリベラルな価値観を批判し、社会をどのように作り変えようとしているのか。それぞれの思考・行動を分析し、米国民の底流水脈を読み解く。
著者は1973年生まれ。神戸大学教授。専門はアメリカ政治思想史。著書『アメリカ保守主義の思想史』(青土社)

