2024年06月18日

【出版界の動き】「本の魅力」を伝え書店振興へ地道な模索が進む=出版部会

◆KADOKAWAは、6/8に起きたシステム障害について、その経緯と調査の進捗、今後の対応などの報告を15日発表した。「ニコニコを中心としたサービス群を標的として、当社グループデータセンター内のサーバーがランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃を受けたものと確認された」としている。
 サーバーのシャットダウンという緊急措置を講じたため、ウェブサイトだけでなく、基幹システムの一部にも機能停止が発生し、書籍の流通に影響が出ている。完全な回復は6月末となる。

◆経産省が進める「書店振興プロジェクト」の方針に、書店の減少を食い止めるため、書店と図書館との連携による文字・活字文化の振興、および書店活性化が盛り込まれる見通し。12日に開催の第2回「車座会議」で外務相や文科相、また書店や作家からも発言があり、いかにして本の魅力を伝え、書店の活性化を図るか、活発な議論が展開された。
 齋藤・経産相も注目すべき事例として、東京都狛江市で昨年閉店した啓文堂書店が、市民有志グループが起こした「エキナカ本展」などに呼応するため、6月27日に再度出店することになった事例を紹介した。

◆政府のクールジャパン戦略が5年ぶりに改訂され、これまで5兆円の予算を2033年までに20兆円に引き上げるという。その骨子のうち知的財産については、海外向けの作品流通と海賊版対策を2本建てにして展開、それにともなうクリエイター支援の実施が揚げられている。
 特にマンガ(出版)については、スマートフォンの普及により日本マンガの人気は高まっている。海外での電子コミック売上げは約 3,200 億円(2022 年)と大きく増加、今後も拡大傾向が見込まれる。ただし現地版の発刊にタイムラグが生じるため、海賊版が横行する原因になっている。それへの対策が急がれる。

◆文化通信が6月17日から「こどものための100冊」キャンペーンを始める。子育て中の著名人や書店員、図書館員が選んだ<子どもの本100冊>を収載した冊子を、書店や図書館、保育園、子ども商品の通販などを通して15万部配布する。キャンペーンは今回で4回目。父兄や書店から好評で、子どもに本を与えるための参考になり、かつ書店の売上につながる好循環が歓迎されている。

◆「文学フリマ」って、知っていますか。文学好きが自分たちで作った作品を展示即売するイベントである。毎年、主要都市で開催されている。その来場者の多さと熱気はビックリするほどだという。文化通信の星野渉さんが、次のような一文を寄せている。
<老若男女が集まり、手作り感満載の冊子を販売。人気の書き手には行列もできる。今年12月に開く「東京39」は、出展応募の増加に対応して、これまでの東京流通センターから東京ビッグサイトに会場を移す。
 「文学」でこれだけ人が集まるのかと思わされる。出版社社長は、本を読む人は一定数いるのに届いていないのではないか、と感想を漏らした。いろいろなチャンネルで本の情報を届ける大切さを感じる>

◆有名人を登場させ、勧誘や取引を促す詐欺的なSNSやWEBが社会問題になっている。出版においても悪質な出版 Web サイトが見つかっている。出版のあっせんや販売の方法などを紹介する詐欺から身を守ることが肝心となっている。
 著者と出版者の保護に取り組んでいるAmazonは、詐欺的手法について警鐘を鳴らし、アドバイスをしている。まずKindle ダイレクト・パブリッシングと、詐欺的なりすましサイトの違いを特定し、詐欺から身を守るために、KDP Community にアクセスしてくださいとのこと。

◆講談社 本田靖春ノンフィクション賞 最終候補作品
 大森淳郎『ラジオと戦争─放送人たちの「報国」』 NHK出版
 春日太一『鬼の筆─戦後最大の脚本家・橋本忍之栄光と挫折』文藝春秋
 木寺一孝『正義の行方』 講談社
 宋恵媛+望月優大+田川基成(写真)『密航のち洗濯 ときどき作家』 柏書房
 乗京真知『中村哲さん 殺害事件実行犯の「遺言」』 朝日新聞出版
 森合正範『怪物に出会った日─井上尚弥と闘うということ』 講談社
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2024年05月28日

【出版】注目される新刊・近刊の短い紹介=萩山拓(ライター)

◆原田和明『ベトナム戦争 枯葉剤の謎』 飛鳥出版 5/15刊 2000円
ドキュメンタリー映画『ドクちゃん ─フジとサクラにつなぐ愛』が日本全国で順次公開中。日本製「枯葉剤」がベトナム戦争の際に使われていた。しかも残った枯葉剤が日本全国の国有林46カ所に不法投棄されていた! 占領下の沖縄に持ち込まれた毒ガス“サリン”。日米軍事同盟が隠した“化学兵器”の正体を暴く。改めて「枯葉剤の謎」を追った貴重な一冊。

◆犬飼 淳『インボイスは廃止一択─消費税の噓がよくわかる本』 皓星社 5/20刊 2000円
「政治の世界では裏金がまかり通る中、「STOP!インボイス」を叫ぶ市民は、「脱税」「ネコババ」と叩かれた。大手メディアが黙殺する中、消費税とインボイス問題にくらいつき、政府と対峙した著者と「インボイス制度を考えるフリーランスの会」の闘いを追い、インボイス制度の欠陥を分かりやすく説く。

◆ 黒井千次『老いの深み』中公新書 5/22刊 840円
90代の大台へと足を踏み入れた作家が綴る老いの日々。少しずつ縮む散歩の距離、少量の水にむせる苦しさ、朝ぼんやりと過ごす時間の感覚など、自身に起きる変化を見つめる。一方、年長者が背筋を伸ばしてスピーチを聞く姿に爽快感を覚え、電車の乗客の「スマホ率」など新たな発見も。「ファックス止り」の自分をなぐさめ、暗証番号を忘れて途方に暮れて……。老いと向き合い見えたこと考えたこと。(版元の紹介から)

◆小島俊一 『2028年 街から書店が消える日─本屋再生! 識者30人からのメッセージ』 プレジデント社 5/24刊 1700円
日本から街の本屋が消える! この事態に出版界のプロフェッショナル30人が、熱く本音を語る。出版界の現状を俯瞰しながら、いかに打開するか、再生への道筋を探る。本書を通して本屋が消え続ける理由をつかみ、さらに本屋の明るい未来への希望も感じ取ってほしい。

◆森まゆみ+山ア範子+仰木ひろみ『谷根千の編集後記』月兎舎 6/1刊 1600円
保育園のママ友だった著者3人、ともに1950年代生まれ。子を産み育てながら取材に編集に営業に奔走する。それぞれ主要に活躍する場は違うが、雑誌作りに当たっては一緒になって笑い、泣き、励まし合って歩んだ25年、編んだ地域雑誌「谷中・根津・千駄木やねせん」通巻94号分の編集後記を一冊に。

◆安田浩一『地震と虐殺─1923-2024』中央公論新社 6/19刊 1800円
関東大震災の発生直後、各地で飛び交ったデマによって多くの朝鮮人が命を奪われた。100年余りが経過した現在、歴史的事実を葬ろうとする者たち、人災を天災の中に閉じ込めようとする政治家、差別行為にお墨付きを与える行政……。差別やヘイトクライムの問題を長年追ってきたジャーナリストが、虐殺事件が及ぼし続ける様々な事実を浮き彫りにする。
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2024年05月24日

【出版トピックス】出版ネッツが「フリーランス法」の施行にあたって「意見」を提出=出版部会

 フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が、今年11月に施行される。このほど政省令や指針に関するパブリックコメントが募集され、出版ネッツが「意見」を送った。
 内容については多岐にわたり、大部なページになっているので、出版ネッツがホームページに掲載(5月17日)した概要を紹介したい。

■フリーランスの定義を広げたことは歓迎するが、「業務委託契約」を結んで働く人の中には、実態が労働者に該当する人たちが少なくない。実態が労働者である人には、労働関連法令が適用されることを周知徹底すること。

■発注者が著作権を譲渡・許諾させる場合は、契約書の「給付の内容」に著作権譲渡・許諾の範囲を記載すること、「報酬の額」に著作権譲渡・許諾に係る対価を加えることなどが記載されたことは歓迎する。
 あらかじめ著作権譲渡(対価なし)と著作者人格権不行使の条項の入った契約書を提示されるというトラブル(フリーランスは断りづらい)が多発しているので、注意喚起をするとともに、トラブル防止対策を講じること。

■法第5条(発注者の遵守事項)の適用対象となるのは「1か月以上」取引のある者とされているが、本来はすべての取引を対象とすべき。少なくとも「2日、あるいは3日以上」とすること。

■「妊娠、出産、育児、介護と仕事の両立」がフリーランス法に入ったことは評価するが、「配慮」にとどまっており、「権利保障」という形になっていないことは不十分である。

なお全文は、出版ネッツのホームページにPDF版(https://union-nets.org/archives/9232)として掲載されている。
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2024年05月22日

【出版界の動き】生成AIが創作者の権利と意欲を損なう危機=出版部会

◆「AIと著作権」を巡って
 高い機能を持つ生成AI が多種多様な分野に進出し、創作者の著作権が侵害されるケースが頻出し、社会的な混乱が生じている。あらためて創作者や権利者から、現在の著作権法に謳われる法規制について、その見直しが叫ばれている。政府も各種対応に追われている。
 この緊急テーマになっている 「AIと著作権」を巡り、どこまでコンセンサスが得られ、どこから先に議論の余地があるのか、上野達弘・奥邨弘司 編著『AIと著作権』(勁草書房 2月刊)が注目されている。世界各国の最新動向と日本における議論状況を踏まえ、今後の法規制の在り方を考える珠玉の論攷と座談会が収められている。
 本書では、著作権法30条の4を始めとするAIに関係する著作権法上の条文につき、細かな文言の使い方や他の条文との関係、改正の経緯(旧条文との関係)、主張立証責任の分配などの観点から、様々な解釈論が展開され、必読の書といってよい。
 さらに「山陽新聞」(5/12付)の社説が、<AIと著作権 創作意欲奪う>と題して、国の文化審議会がまとめた「考え方」を簡潔に要約し、クリエーターの創作意欲にかかわる問題を指摘している。読んでほしい。

◆KADOKAWA 3月期連結決算、増収減益
 2024年3月期(2023.4.1〜24.3.31)の連結決算では、売上高2581億円(前年比1.0%増)、営業利益184.5億円(同28.8%減)、経常利益202億円(同24.1%減)、当期純利益113.8億円(同10.2%減)の増収減益の決算となった。「出版・IP創出」は売上高1420億円(同1.4%増)、営業利益103.6億円(同21.3%減)。

◆八重洲ブックセンター、6月14日オープン
 東京駅構内のグランスタ八重洲(東京・千代田区)の地下1階にグランスタ八重洲店をオープンする。昨年3月に営業を終了した八重洲本店の「レガシーを継ぐ」新店舗。売場面積72坪。営業時間は午前10時から午後9時まで。

◆講談社「じぶん書店」がサービス終了
 電子書籍ストア「じぶん書店」は“自分の電子書店を簡単に開設できるサービス”として2017年にスタート。会員登録を行ったあと、講談社の電子書籍から自分が推奨するタイトルを選んで自分だけの電子書籍ストアを作るというユニークなスタイルで、作家が自らストアを立ち上げるケースも多かった。
 5月30日でサービス自体を終了するので、自分で購入した書籍の閲覧ができなくなる。代替として、2024年4月30日時点で購入済みの書籍については、QUOカードによる返金対応が5月12日まで行われた。

◆日販グループの23年度決算概要
 12億円の経常赤字を計上。なかでも取次事業は36億円の赤字。それ以外の海外事業、エンタメ事業は増収増益で26億円の利益を計上する見通し。2期連続赤字の取次事業の立て直しが最優先課題となっている。

◆「期間限定 謝恩価格本フェア」開催
 インターネットを通して5月14日〜7月16日正午まで開催。書店の棚にない本、全集、稀少本など出版社121社の約5300アイテムを、定価・価格の45%引きで販売。販売サイトは楽天ブックス: 謝恩価格本フェア https://books.rakuten.co.jp/event/book/bargain/shaon/ からアクセスを。
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2024年05月15日

【出版トピックス】海外に目を向け進出する日本の出版界=出版部会

 ◆ペンクラブが声明「国会の空洞化に抗議」
 日本ペンクラブ(桐野夏生会長)は9日、「国会の空洞化に抗議します」と題する声明を発表した。その内容はペンクラブ内にある4つの委員会が、政府が進める法案や緊急テーマについて、危惧される課題や審議の不足などを指摘し警鐘を鳴らしている。

 政策言論表現委員会は、「経済安保秘密保護法の廃案を求める」意見書をまとめ、秘密の範囲があいまいで、民間人の人権を侵害し、報道の自由に制約をかける恐れがあると指摘した。

 獄中作家・人権委員会は、6月10日に全面施行される「改定入管難民法」の問題点を詳細に指摘し、外国人排斥・外国人嫌悪があることを深く憂慮すると表明した。

 女性作家委員会は、「共同親権法」について、DV被害者を追い詰め、子どもの意思や権利が損なわれる法案であるとし、廃案を含め慎重かつ十分な国会審議を求める意見書をまとめた。

 環境委員会は、原発の廃炉のめどさえ立っていないのに、再稼働を急ぐ政府や、気候変動、食糧自給、地域経済の疲弊、森林や海の異変など、重要な政治課題について、国民の合意を得るような議論が進んでいない。国会をはじめ、政治の活性化を訴えると表明した。

 桐野会長は会見で、国境なき記者団が3日に発表した「報道の自由度ランキング」で、日本は70位だったことを挙げ、「日本の言論表現の自由が危機的な状況にある中で…いちばん議論しなくてはいけない国会の場で、最も言葉が軽くなり中身のある議論がされていないのではと危惧している」と訴えた。

◆日本の漫画5万点をAI翻訳で輸出へ
 AI(人工知能)翻訳を使って日本の漫画輸出を5年間で3倍以上に増やす、官民共同の取り組みが始まる。小学館や経産省が所管する産業革新投資機構(JIC)系など10社は、AIで漫画を翻訳する新興企業に29.2億円を出資。翻訳速度を最大10倍に高めて漫画の輸出作品数を増やし、日本のコンテンツ産業の成長を促す。
 AI翻訳を担う新興企業のオレンジ(東京・港区)が、7日に小学館などからの出資の詳細や漫画の輸出計画の概要を発表した(日経新聞5/6)。
 漫画の吹き出しに特化して翻訳するAI翻訳には、これまで東京大学発ベンチャーで大日本印刷も絡んでいる「Mantra」が、1.5億円の資金を調達して発足している。主に集英社の漫画作品を多言語サイマル配信している。
 今回の新興企業のオレンジが調達する資金額は「Mantra」の20倍。翻訳だけでなく、自ら海外向け電子書店の運営をするという(HON.jp News Blog 鷹野)。

◆「ツタヤブックストア」カンボジアに進出
 日本の出版社・書店が海外進出を加速させている。CCCと双日の合弁会社「ツタヤブックス マレーシア」は、2034年までにカンボジアで「ツタヤブックストア」を6店舗出店する。その第一歩として、2025年にカンボジアの首都プノンペンで1号店をオープンする。
 カンボジアは安定した経済成長を続け、今後も人口増加が予測されている。しかも通貨に日本国旗が印刷されるほど、親日国家であることを踏まえ、契約締結と「ツタヤブックストア」の進出が決定した。
 これまでにCCCは台湾に計11店舗、中国本土に計12店舗、マレーシアに計2店舗出店している。今後はアジア太平洋地域におけるビジネスの強化を図る計画という。

◆「無書店」の自治体が全国で28%
 この3月の調査によると日本全体で書店が一つもない「無書店」の自治体は、全国で27.7%(482自治体)を占める。1書店以下の自治体は47.4%(825自治体)に上る。書店や取次、出版業者らで作る出版文化産業振興財団(JPIC)の調査で判明した。
 また日本書店商業組合連合会(日書連)の加盟書店数は2536店(4月1日現在)、前年比129店減、12店の新規加入があったが141店が脱退。加盟書店数は1986年の1万2935店をピークに37年連続で減少。組織の規模はピーク時の2割弱まで縮小している。

◆紙の出荷量ピーク時の半分 に
 ペーパーレス化が進み、紙の需要は減少が続く。昨年度の国内出荷量は948万トン。初めて1000万トンを下回り、2007年度のピークからおよそ半分に落ち込んだ。
 背景にあるのは、ペーパーレス化やデジタル化の拡大で、製紙業界やオフィス向けの複合機業界では、原材料の調達や生産面での技術協力などで提携する動きが進む。事業再編や業界再編の動きが加速するのは避けられない。
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2024年05月03日

【出版トピックス】書店ゼロ27%に増える ネット販売規制は短絡的、「読書マインド」の育成が先決=橋詰雅博

 全国1741市町村のうち、書店ゼロの自治体が今年3月時点で482市町村に増え全体の27・7%に達した―出版文化産業振興財団の調査でわかった。それによると沖縄、長野、奈良の3県で書店がない市町村が過半数を占めた。2022年9月の初調査と比べて全体で1・5%増えている。また書店が1店舗あるだけの市町村は343に上り、この無書店予備軍≠ニ書店ゼロを合わせた比率は47・4%に。


 人口減少とインターネットによる書籍販売の急拡大が主因だ。日販ストアソリューション課「出版物販売額の実態 2023」によると、ネット販売は22年度2872億円で、10年前の12年度の1446億円の2倍に増えた。一方、書店の販売額は8157億円で、12年度の1兆3607億円の6割にまでダウン。

 減り続ける街の本屋さんを助けるべく経済産業省は今春、書店振興プロジェクトチームを立ち上げた。4月17日の書店経営者との対話集会に出席した斎藤健経産相は「ウェブと図書館と本屋が持ち味を生かしながら共存があるべき姿だが、3つの中で本屋は割を食っている」と語った。
 自民党の国会議員が結成した「町の本屋さんを元気にして日本の文化を守る議員連盟」は書店支援のための提言書を作成し、政府に昨春提出。提言書では送料無料化や過剰なポイント付与という実質値引きのネット販売に対して書店は不公平な競争環境に置かれていると現状を分析した。注目すべきはネット書籍販売の送料無料を禁じたフランスの「反アマゾン法」。法施行後、フランスでは無料に近い送金を設定した業者が規制逃れしたため23年に法改正し送料の最低額を定めさらに強化した。

 提言を受けた公正取引委員会は、ネット送料無料について書店や出版業界に聞き取りを始めた。
 ただ短絡的に規制すると、消費者のデメリットにもなる。JCJ出版部会は「ネット・図書館・書店、それぞれに良さがある。(中略)まずは衰えている読書環境を充実させ、読書意欲を育てる方策を、どう作るかが先ではないか」(3月11日Daily JCJ『出版トピックス』)と述べている。
 規制にすくに走るのではなく、「読書マインド」を盛り立てるのが先決だろう。
 
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2024年04月29日

【月刊マスコミ評・出版】本当は怖い健康食品をあおった週刊誌=荒屋敷 宏

 「名医はこんな『健康食品』『サプリ』を使っている」(『週刊現代』2018年7月7日号)と健康食品ブームをあおってきた週刊誌が「『紅麹』だけじゃない 本当は怖い『サプリ・健康食品』」(同誌2024年4月6日・13日合併号)と、手のひらを返すように、小林製薬が製造・販売した「機能性表示食品」の危険を緊急特集している。「はて?」である。

 命に関わる問題を取り上げるのは当然としても、無責任に健康食品の広告を掲載し、副作用に注意を喚起してこなかった過去に沈黙するのは、いかがなものか。週刊誌が電力会社の原発推進広告を掲載してきたことへの反省がないのと似ている。
 「小林製薬の紅麹健康被害 6つの疑問」の特集を組んだ『サンデー毎日』4月21日号によると、健康被害の報告があったのは1月15日で、小林製薬が自主回収を発表したのが3月22日。2カ月余りも放置していたとは、あきれる。
 「機能性表示食品」とは、事業者の責任により、論文などをもとにして科学的根拠を示し、開発して、効用性や機能性を表示できる食品だという。2013年、安倍元首相は「アベノミクス」成長戦略第3弾で「機能性表示食品」の解禁を宣言した。機能性表示導入の裏にアメリカや財界の圧力を指摘した週刊紙「しんぶん赤旗」日曜版4月14日号の記事は注目に値する。

 『週刊ポスト』4月26日号は、「健康食品の『副作用』50品目リスト」と、厚労省がホームページから削除した情報を復元している。老化予防サプリ≠ニして宣伝されているコエンザイムQ10は、吐き気、嘔吐、下痢などの副作用が報告され、関節痛を和らげるで大宣伝されているグルコサミンも膨満感、吐き気、下痢、便秘の副作用がある。その他、アロエで急性肝炎、マテ茶にがんリスク、ビタミンDで腎不全などの危険があるという。

 「ブルーレット」「ナイシトール」「熱さまシート」などのCMで知られる小林製薬の企業体質について『週刊文春』4月11日号や『週刊新潮』4月18日号が、小林一族が株、不動産、馬など資産1600億円を有し、「治験データ改ざん」に手を染め、売れればいい≠ニいう姿勢が強いとの識者の証言を紹介している。社名に「製薬」と銘打っているものの、医療用医薬品は取り扱っていないとは、恐るべき企業である。
 週刊誌は、国民の命を大切にする報道姿勢に徹するべきだ。過ちを繰り返してはならない。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
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2024年04月20日

【出版界の動き】読書バリアフリーに関する声明そして「本屋大賞」を考える=出版部会

 ◆日本ペンクラブなど3団体共同で
 芥川賞を受賞した市川沙央『ハンチバック』に、痛烈な出版界への批判が書かれている。
<出版界が障害者に今までしてきたことと言えば、1975年に文芸作家の集まりが図書館の視覚障害者向けサービスに難癖を付けて潰した、「愛のテープは違法」事件ね、ああいうのばかりじゃないですか>
 この「文芸作家の集まり」が日本文藝家協会。「愛のテープは違法」事件が解決するのは、35年後の2010年。この年に改正著作権法が施行され、公共図書館でも録音図書を製作する障害者サービスが著作権者の許諾なしにできるようになった。
 さて市川沙央さんの問題提起を真剣に受け止めた日本ペンクラブ会長・桐野夏生さんらは、2023年11月20日、市川沙央さんとオンライン対論<読書バリアフリーとは何か――読書を取り巻く「壁」を壊すために>を行った。
 これを機に他の2団体にも呼び掛け、4月9日、日本ペンクラブ、日本文藝家協会、日本推理作家協会の3団体が、読書バリアフリーに関する共同声明を発表した。 
 「障害者にとって『読書』をする手段は100年以上も前からあったにもかかわらず、未だに読みたい本を読むために長く待つことを強要されたり、読む手段を奪われたりすることさえあります」と問題提起。
 表現に携わる者として、読書バリアフリー法(19年6月施行)、改正障害者差別解消法(24年4月施行)、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法(22年5月施行)に賛同の意を表するとし、「私たちは出版界、図書館界とも歩調をあわせ読書環境整備施策の推進に協力を惜しみません」と宣言している。
 声明の意義は、極めて大きい。文字や表現に携わる者が読書バリアフリーに目を向け努力する契機となり、歴史的意味を持つものと言える。

◆本屋大賞の意義が進化遂げる
 2024年の本屋大賞に宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が受賞。25万部を増刷し、発行部数41万5000部となる。続編『成瀬は信じた道をいく』も増刷し、2冊の累計発行部数は55万部を超える。
 中学2年生の主人公・成瀬あかりが、破天荒な言動を続けて周囲を驚かせる。自分を偽らないで突き進む成瀬の言動が、読者の共感を呼んでいる。そこには「女による女のためのR-18文学賞」が果たしている役割も見逃せない。
 女性による作品が、続々とノミネートされ、書店員の思いを込めた作品が本屋大賞を受賞している。これまで文学賞といえば、出版社が強烈にプッシュした作品が受賞し、人気作家に権威を与える賞になっていた。それに対抗するかのように発足した「本屋大賞」が、いまや書店員も読者も作者も誰もが幸せな気持ちになる賞へと進化している。

◆貧弱な学校図書館の公的援助
 2023年度の学校1校あたりの年間図書費は小学校46万円・中学校61万円。あまりにも貧弱ではないか。学校図書館用の新聞購読費については「予算化している」が44.5%。学校司書の配置については予算化しているが69.3%。残り30%は学校司書を配置していない現状が浮かび上がった。
 また学校図書館が「電子書籍」や「電子新聞(有料デジタル版)」の購入費を予算化しているかについては、いずれも「今年度予算化の予定はない」が94%を占めた。

◆電子コミック驚異的な伸長!
 3月の電子書籍の総流通額は前年同月比14.2%増となった。ジャンル別では「縦スクロールコミック」の伸びが驚異的で同214.8%増となった。2022年4月期から配信を始めてから大きな成長率が続いている。
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2024年04月05日

【出版トピック】書店・図書館関係者が読書普及に協力へ=出版部会

 出版市場の停滞や書店の減少、図書館の図書購入費の削減が続き、これらが複合しながら本離れが進む。この現状を打開し、いかに読書人口を増やすか、昨年10月に書店・図書館などの関係者および有識者が集まり、話し合いの場が設置された。4月1日に「対話の場」のまとめが公表された。その概要は以下の通りである。
 詳細は https://www.jpic.or.jp/topics/docs/f182a3155191ee900d0eb3171532639290b1f576.pdf を。

ベストセラー本の問題で
 書店や出版関係者の間では、公共図書館がベストセラーを大量に貸す「複本問題」への不満に加え、地元書店からの優先仕入れの推奨、図書館と書店が共存できるルールづくりの検討が求められていた。
 今回のまとめでは、図書館の新刊購入が書籍市場全体への売り上げに与える影響は小さいが、ベストセラー本の過度な複本購入は少なからず影響があるとした。
 地元書店からの図書購入については、ほとんどの図書館が地元で購入している。その一方、図書貸し出し用に本を装備するコストの負担、また値引きを求める自治体がある。その結果、書店側が十分な利益が得られないケースもあり、改善の必要があるとの意見が出された。

「図書館本大賞」創設も
 一方、図書館機能の評価として、入館者数や貸出冊数が重視されるあまり、ベストセラーの複本購入を促しているのであれば、多様な評価指標を取り入れるなどの対応も検討する必要がある。
 そのうえで、図書館や書店の連携モデルとして、本の注文ができる端末を図書館に設置することや図書館で予約した本を書店で受け取れる仕組みを作るなど、本へのアクセス向上を図る工夫が求められる。
 書店がない地域では、図書館が本を販売することも考えられる。さらに発注や在庫管理の簡便化を進め、未経験の若い人でも空き店舗に本屋を出せるような環境づくり、観光ホテルにライブラリーを設けるなど、書店以外でも気軽に本が閲覧・購入できるようにする案も出されている。
 司書らの投票によりお薦めの本を表彰する「図書館本大賞」を創設するアイデアも出されている。読書文化の普及に向けて検討できる事例が数多く挙げられ、各地の優れた取り組みを共有する重要性も指摘され、今後の活発な討議が期待されている。
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2024年03月26日

【出版トピックス】意欲的なシェア型書店と「本の町づくり」=出版部会

今村翔吾さん都内にシェア型書店を
 直木賞作家の今村翔吾さんが、2021年7月に設立し代表取締役を務める書店経営会社の「京国」(大津市)は、4月27日、東京・千代田区神田神保町にシェア型書店「ほんまる」を出店する。
 同店では個人のみならず法人も本棚をシェアし、独自に選書した本をディスプレイして販売できる。さらに書店開業を目指す人々に向けセミナーや講演を行い、融資などの資金面も含めてサポートする。将来的には全国展開も目指す。
 この「シェア型書店」とは、「貸し本棚屋」「棚貸し書店」とも呼ばれている。30センチ四方ほどの本棚を個別に貸し出し、その賃貸料で主な収益を得る。借り受けた側は、独自の仕入れや選書でユニークな書店空間を作り、本を売る新しい書店の仕組みとして注目され、各地での出店が続いている。

自治体が支援「本の町づくり」
 いま青森県の八戸市が「本の町」として脚光を浴びている。その拠点となるのが、市が運営する「八戸ブックセンター」=写真=である。今から7年前、2016年12月4日、市民が気楽に出かけていって、素敵な本や好奇心をそそる本が買え、かつ何か知的刺激が得られる場所として誕生した。
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 この「八戸ブックセンター」では、本の販売やイベントの開催はもちろん、提案したテーマに沿う本を陳列、また閲覧スペースも提供する。さらに八戸市内の民間書店や図書館、市民活動などと連携しながら、「本のまち八戸ブックフェス」を年に1回開催している。

 自治体が運営する本屋の先例は、北海道・礼文島の「BOOK愛ランドれぶん」がある。ここは本屋と図書館が一体になった、礼文町の町営施設である。稚内からフェリーで1時間40分もかかる離島では、町営本屋をつくる必然性があり納得がいく(「好書好日」3/16より)。
 だが八戸は新幹線も通り、本が入手しづらい地域とは言えない。自治体が図書館に関わるのは理解できても、本屋を運営するのは異色だ。
 そこには2021年まで4期16年、市長を務めた小林眞さんの「本のまち八戸」推進構想があった。八戸市全ての本屋と共同し、大人から子どもまで、それぞれに魅力のある本を並べ、知的好奇心を刺激し遊べる文化空間にしていく、青写真が描かれていた。
 「利益追求」がさきに立つのではなく、ここにきて本の楽しさ、本がもたらす出会いの魅力を共有する。そして10年、20年先を見据えた「本のまち八戸」づくりの壮大なビジョンへと発展させる、その構想にエールを送りたい。

「MUJIN書店」24時間営業へ
 トーハンは東京・板橋区のメディアライン大山店で、有人営業と無人営業を組み合わせた24時間営業を開始する。トーハン系列の書店に、Nebraskaが開発した「MUJIN書店」の導入を促進し新業態の開発に向け、同社との協業を強めている。昨年3月には山下書店世田谷店(東京・世田谷区)、同11月にはメディアライン曙橋店(東京・新宿区)に導入している。
 各店ともキャッシュレス・セルフレジによる無人化と24時間営業化により夜間と早朝の売上げが増加、収益の改善効果が顕著になっている。

書店の倒産10年間で764社
 東京商工リサーチが、この3月10日に発表したリポートによると、書店は、2014年から2023年までの10年間で764社が倒産もしくは廃業で消えている。負債1000万円以上の書店倒産は10年間で140社に及ぶ。
 コロナ禍では資金繰り支援や巣ごもり需要もあって、倒産は減少に転じたが、今や支援が縮小したうえ、「コロナ特需」が一巡した2023年は、一気に13社が倒産・廃業しその数は約3倍に急増した。
「電子書籍が浸透し、書店の存在が揺らいでいる。店舗で目当ての本を探す楽しみや、知らない本との出会いも、書店の減少で失われつつある。書店の復活には『待ちの営業』から客足を向かせる創意工夫への転換と同時に、国や出版社の継続的な支援が必要だ」と指摘されている。
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2024年03月12日

【出版トピックス】海外へ進出する書店・本屋さん振興策の行方=出版部会

◆漫画『ドラゴンボール』の作者・鳥山明さんが、急性硬膜下血腫により3月1日逝去(享年68)。心からお悔やみ申し上げます。鳥山さんは1978年に『ワンダーアイランド』でデビュー。その後、『Dr.スランプ』、『ドラゴンボール』などの人気作品を世に送り出し、アニメ化され世界的な人気漫画家となり、今もなお愛され続けている。

◆24年1月の出版物販売金額731億円(前年比5.8%減)、書籍457億円(同3.5%減)、雑誌273億円(同9.5%減)。月刊誌219億円(同10.0%減)、週刊誌54億円(同4.7%減)。返品率は書籍33.8%、雑誌47.8%、月刊誌48.4%、週刊誌45.2%。相変わらず雑誌の落ち込みが続く。今年は月刊誌だけでなく週刊誌の休刊もありうる気配が濃厚だ。

◆日本の書籍市場が縮むなか、紀伊国屋書店は海外市場への進出を加速させ、漫画と雑貨で売り上げ増進を図る。テキサス州の紀伊国屋オースティン店では、コミック『ONE PIECE』などが並び、売上高の半分をキャラクターグッズなどが占める。
 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)も東南アジアの市場をターゲットにし、日本の雑貨を扱う店舗を増やす。

◆経済産業省は「書店振興プロジェクトチーム」を発足させた。その背景には自民党の「街の本屋さんを元気にして日本の文化を守る議員連盟(幹事長は齋藤経産大臣)」の要望がある。書店議連の提言には「ネット書店の送料無料配送に向けた実態調査・必要な対応」「図書館での過剰な蔵書の禁止 地元書店からの優先仕入れ」などが含まれている。
 しかしネット・図書館・書店、それぞれに良さがあるので、短絡的に規制するなら、本の購入にも閲覧にも弊害が生まれる危険も考慮すべきだ。まずは衰えている読書環境を充実させ、読書意欲を育てる方策を、どう作るかが先ではないか。

◆SHIBUYA TSUTAYAが、4月25日から営業再開。運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、これまでにない新しい「カルチュア・インフラ」を作る。<財産的価値のある情報>を創出するという。
 地下2階から地上1階までは期間限定のストア、イベントを展開。2階から4階はカフェとラウンジ。5階から7階は書店、カフェ、ラウンジ。全館で利用できる座席は約500に及ぶ。8階はスタジオ、屋上は野外イベントスペースになる。

◆上野千鶴子さんの本が中国で大ヒット。弱者が弱者のままで尊重されるよう訴える思想が、とりわけ20〜30代の高学歴女性に共感を呼んでいる。中国では上野さんの著書が20冊以上も中国語に翻訳・出版され、総販売部数は数十万部に上る。鈴木涼美さんとの共著『往復書簡 限界から始まる』が「今年一押しの本」に。北京大で開いたオンラインの講演には全国から聴講希望者が殺到した。
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2024年02月29日

【出版トピックス】著作者の権利を守るエージェントの重要性=出版部会

■メディアミックス時代への備え
 昨年10月期放送の日本テレビドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さん(享年50)が、1月29日に急死した。生前に『セクシー田中さん』の実写ドラマ制作をめぐりトラブルが起きていたという事態に、漫画などの映像化の現状を踏まえ、漫画家の権利を擁護するエージェントの必要性が言われている。
 というのは現在、著作権者の意向を置き去りにして出版社と映像制作を担当する企業のあいだで、映像化企画がひとり歩きしているという事実があるからだ。そこで小説家、漫画家、イラストレーターなどの著作権者と契約し、その意向や利害を代弁する立場で、出版社や映像制作会社などと交渉し、出版契約や映像化権契約の契約実務を代行するエージェント(代理人)の重要性が指摘されている。
 欧米の出版界では一般的になっているが、日本では普及していない仕事だが、日本の出版界でも早川書房出身の編集者が1999年に創業したボイルドエッグズ(東京・東久留米市)や講談社出身の編集者が2012年に起こしたコルク(東京・渋谷区)など、この業務を行なうエージェントも出てきている。
 このようなエージェントが出版社や編集プロダクションと異なるのは、出版や映像化の対象となるコンテンツに対して100%作家の利害を代弁する立場で交渉を行なう点だ。
 メディアミックス時代には、利害が複雑に絡むことは必至だけに、著作者の権利を十分に守るエージェントの重要性は、ますます高まっている。

■<団塊ジュニア世代>を狙う本
 ここにきて「50歳からの」と詠う本が続々と刊行されている。読書案内や精神論、旅案内も含め、人生の節目に挑戦するガイド本や生き方案内など、内容は様々だ。
 挙げれば中央公論新社編『50歳からの読書案内』、枡野俊明『50歳からは、好きに生きられる』(PHP文庫)、山脇りこ『50歳からのごきげんひとり旅』(だいわ文庫)、村瀬幸浩ほか『50歳からの性教育』(河出新書)、斎藤孝『50歳からの孤独入門』(朝日新書)まである。
 これまで出版界は、50代をターゲットにした本には傾注してこなかった。ここにきて50歳前後を迎える<団塊ジュニア世代>が注目され、そこに対応したテーマの本が刊行・売れ始めている。

■コンビニ内のセレクト書店
 奈良県天理市のコンビニ「セブン―イレブン天理成願寺町店」には、絵本や専門書を並べた書籍コーナーが設けられ話題になっている。ここには海外の絵本、短歌集、パレスチナ問題の新書など、独自の選書が好評で多くの人々が立ち寄っている。
 店長はコンビニの枠を超え地域密着型の挑戦を続けてきた。「日常の中に異空間」を設けたいと、スタッフとアイデアを出し合い本のコーナーを作ることにした。扱う本をより多様にすれば、日常に小さな刺激を生み出せると考え、大和郡山市にある書店「とほん」に協力を依頼。そして知的好奇心を刺激する選書本コーナーが、コンビニ内に設置できることとなった。

■急伸止まる!「アマゾン日本」
 「アマゾン日本」の2023年度売上高は、3兆6662億8200万円(前期比6.6%増)、1ケタ増収にとどまり急伸がストップ、アマゾンの全売上高に占める日本事業の割合は4.5%、2022年比で0.2ポイントダウン。他国での売上高は、以下の通り。
 アメリカ :3956億3700万ドル(前期比11.1%増)、ドイツ :375億8800万ドル(同11.9%増)、イギリス:335億9100万ドル(同11.7%増)、その他 :819億6700万ドル(同17.4%増)

■インボイス制度への不満爆発
 昨年10月に導入された消費税のインボイス制度による、初めての所得税の確定申告が16日から始まった。消費税の申告(4月1日まで)も本格化する。インボイス登録して、新たに支払いが課せられる小規模事業者は、改めて「書類を作る複雑さ」に困惑し、生産性のない過重な事務負担で現場は疲弊などの声が挙がっている。
 いっぽう未登録の業者は、この制度によって「仕事が減った」と不満を募らせ、差別・バッシング、免税業者に対する一方的な値下げや取引排除が横行している現状を嘆いている。
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2024年02月20日

【出版界の動き】政治家が購入した<ヨイショ本>の使いみち=出版部会

◆「政治とカネ」をめぐる問題に関連し、「裏金」の使途が問われている。自民党の二階俊博元幹事長の資金管理団体「新政経研究会」は、2020〜23年の政治資金収支報告書を1月に訂正した。その報告書によると、17種類の書籍を27,700冊・総額3,470万円の支出が追加されていた。
 とりわけ大量に購入した本は、大仲吉一『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』(ブックマン社・2020年12/8刊)である。これを2021年に5,000冊・1,045万円も購入している。ほかに購入した6冊も、二階氏が主役≠フ<ヨイショ本>である。
 総選挙があった2021年には、15,800冊・総計2,264万円も書籍代として支出している。二階氏の資金管理団体・支出総額の54%を占める。日本の公共図書館が1年間に購入する図書費は、1館あたり平均836万円、それの約3倍近い金額を二階氏は使っていることになる。何の目的のために購入したのか。誰しも疑問に思うだけでなく、自分の当選に向けて使ったと判断するのは、しごく当然ではないか。
 著者も出版社も、買い切りを前提に返品のリスクもなし、印税も売り上げも確実、儲かればよいで済むのだろうか。もし「裏金」などが充てられているとしたら、<汚いカネのマネー・ロンダリング>に手を貸したことにならないか、疑問は尽きない。

◆今年に入って書店の閉店・廃業の深刻な状況は驚くばかり。書店数の減少はここ20年近く続き、年間で500〜600店が閉店に陥っている。その流れは2023年も食い止められず、2023年の閉店または廃業した書店は669店にのぼる。今年2024年には売場をもつ書店の数が7000店台に突入するのは確実な状況となっている。
 紙媒体の市場規模が急速に縮小し、とくに雑誌と紙コミックの売上げ低下が、大きな影響を及ぼしている。書店数の減少は、配送効率の低下を引き起こし、出版物流の根幹を揺るがす深刻な状況になっている。

◆23年12月の出版物販売金額887億円(前年比8.94%減)、書籍483億円(同7.5%減)、雑誌404億円(同10.0%減)。月刊誌354億円(同8.8%減)、週刊誌50億円(同17.9%減)。返品率は書籍29.1%、雑誌40.3%、月刊誌38.5%、週刊誌50.4%。相変わらず週刊誌の落ち込みが続く。週刊誌の売り上げは前年比マイナス20%に加え、返品率が最悪な状況になっている。
 おそらく今年は月刊誌だけでなく週刊誌の休刊も続出する気配が濃厚だ。

◆紙の雑誌・書籍の売上げは1996年2兆6,564億円をピークに減り続け、全国の書店も2000年の2万1654店舗から2020年には1万1024店舗へと20年で半減した。さらに今年は物流の2024年問題にも直面する日本の出版業界である。
 ところが世界の書籍出版業界は、2019年に約859億ドルと評価され、2020〜2027年には2%以上の成長率が見込まれる成長市場だという。なのに日本では、なぜそうならないか。そこには業界平均で約40%という「返本率の高さ」があると指摘されている。
 こうした出版業界の課題に立ち向かうために、ブックセラーズ&カンパニーが組織された。大手書店の紀伊國屋書店、TSUTAYAや蔦屋書店などを運営するCCC、取次の日販が共同出資して設立された。
 現在、同社の事業に約1000書店が参加し、出版社との直接取引をまとめ、流通の効率化を支援する。このほど出版社4社と直取引で合意し、3月から順次スタートする。

◆トップカルチャーの連結決算が発表され、当期純損失13億7600万円、減収損失の決算となった。メインである「蔦屋書店事業」は売上高179億6500万円(前年比12.2%減)、その他の部門でも全てがマイナス。日販からトーハンへの帳合変更によりトーハンの筆頭株主となり、26年までに売上高181億円を目ざす。そのためには「TSUTAYA」を減らさざるを得ない状況が続く。
 トップカルチャーは1987年からCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)とフランチャイズ契約を締結し、CCCは1都9県に書店「TSUTAYA」74店舗を展開している。 その閉鎖が止まらない。1月には30年の歴史を持つ東京・世田谷の象徴的な店舗も閉鎖。この10年で半数近くが消えた。書店ビジネスの再生や東京・渋谷のスクランブル交差点に面した新型「TSUTAYA」の開発など、再構築を進めるが、果たして成功するかどうか問われている。
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2024年01月26日

【出版トピックス】能登半島地震が招いた2つの出来事、そして本屋「書楽」再開=出版部会

■「インプ稼ぎ」
 能登半島地震が発生した直後から、12年前の東日本大地震で起きた大津波の動画を、自分の動画に貼り付け、あたかも能登地震に関係するかのように装い、Xに投稿するユーザーが急増した。
 これはフェイク動画を付けて「アッと驚かせ」、アクセス回数を増やし、広告収入を見込む金儲けを目的にした「インプレッション(表示回数)稼ぎ」が指摘されている。
 2023年夏にX社のイーロン・マスクが導入し展開している「広告収益分配プログラム」が悪用され、フェイク拡散を助長させている。
 この「広告収益分配プログラム」とは、有料サービスの「Xプレミアム」に登録したアカウントを使い、特定の条件を満たしたユーザーの投稿に「返信」の形で広告が掲載されると、広告収益の一部がユーザーに分配されるプログラムだ。こうしたフェイクを助長しかねない「インプ稼ぎ」には、何らかの規制が必要ではないか。

■本送らないで
 能登半島地震の被災地へ送られる「迷惑な支援物資」が問題となっている。賞味期限が切れている食品類、すでに使ったと思われる衣類や消耗品の残り、たとえ善意からの支援だとしても、現地では扱いに困っているのが実情だ。
 そんな中、「日本図書館協会」は、被災地以外に住む一般の人々に向け「被災地や避難所に直接、本は送らないでください」と呼びかけている。阪神・淡路大震災や東日本大震災の経験から、「被災地に本を送っても、読書ニーズよりも被災の片づけ作業にてんてこ舞いの上、置き場所がなく廃棄せざるをえないケースが出た」という。
 それでは、どう支援すべきか。日本図書館協会は、被災地の県立図書館と連絡を取り合い、設備を復旧した後に本を補充する援助に傾注したいとする。本を直接送るのではなく資金援助により、各図書館が現地のニーズや要望に合わせた本を選書し揃えていく手助けだ。「図書館災害対策のための指定寄付金」も募集している。

■営業を継続
 東京のJR中央線阿佐ヶ谷駅前南口のロータリーにある書店「書楽」は、ビル1階の110坪を擁し43年間営業してきたが、今年1月に閉店を表明していた。その後、閉店を惜しむ声が大きくなり、八重洲ブックセンターが店舗を引き継ぎ、2月中旬には再オープンすることになった。
 この営業継続に多くの人々が慶び、応援しているという。とりわけ東京都内でも区市町村62自治体のうち7自治体が書店ゼロ、書店1軒の自治体と合わせれば2割に近い。書店が減ることへの危機感が広がり、「町の本屋さん」存続への取り組みが、業界内外で共有されるようになってきた成果である。
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2024年01月18日

【出版界の動き】読者・クリエイター・地域と協働する新たな挑戦=出版部会

◆能登半島地震による書店被害状況は、1月5日午前10時時点で被災書店309店。そのうち「再開未定」が24店、「状況確認中」が5店。280店が「すでに営業再開および一部のみで営業再開」している。
 北陸地方に店舗展開する勝木書店では、ほぼ全店で商品落下などの被害。石川県内の6店舗が大きな被害。天井やガラス什器が破損。同地域が断水のため臨時休業中。復旧のめどがたっていない。

◆23年11月の出版物販売金額865億円(前年比5.4%減)、書籍493億円(同2.9%減)、雑誌372億円(同8.5%減)。月刊誌313億円(同9.2%減)、週刊誌58億円(同4.2%減)。返品率は書籍34.0%、雑誌42.2%、月刊誌41.0%、週刊誌47.8%。相変わらず週刊誌の落ち込みが続く。
 23年の年間販売金額は1兆638億円前後。かろうじて1兆円は維持したが、それも定価値上げに負うところが大きい。

◆出版物のルート別販売金額を見ると、マイナス幅が大きいのはコンビニルート。23年度の売り上げは1000億円を下回り、22年1172億円から20.4%減となった。1996年はコンビニでの出版物販売額が5571億円でピークとなったが、その後、漸減し続け今や6分の1となった。
 日販のコンビニ配送からの撤退、紀伊國屋書店・CCC・日販の新会社ブックセラーズ&カンパニーが設立されたことも、影響しているのは間違いない。しかし、書店1万店の輸送網は6万店のコンビニルートによって成立している以上、コンビニ流通を守ることは書店配達を維持することと直結する。出版配送網インフラを拡充するうえで、コンビニ配送の位置づけを再確認すべきではないか。

◆メディアドゥは、昨年12月期の電子書籍・流通額(ジャンル別)の成長率を発表した。「コミック」が前年比2.5%増、「縦スクロールコミック」が同88.6%増、「写真集」が同3.3%減、「書籍」が同3.8%増、「雑誌」が同0.6%減。総合では前年同月比2.7%増だった。
 ここで特筆すべきなのは「縦スクロールコミック」の急成長である。本においてはジャンルを問わず、いかに「縦読み」が読み手の自然な習慣になっているか、その証明でもある。

◆日販が運営する入場料のある本屋「文喫」が、名古屋にある中日新聞社の「中日ビル」に4月23日にオープンする。これまでの2店舗(六本木、福岡天神)と比べて圧倒的な広さを誇る、約370坪の大規模な店舗。
 162席の座席を有する大喫茶ホールに、一点一点選書した約3万冊の書籍を取り揃える。さらに、おかわり自由の珈琲、紅茶サービスも用意する。

◆インターネット上の 誹謗 中傷への対策を強化するため、政府はプロバイダー責任制限法の改正案を、1月26日の通常国会に提出する。X(旧ツイッター)やメタ、グーグルなどを念頭に、SNSを運営する大手企業に対し、不適切な投稿を削除するよう申請があった場合、迅速な対応や削除基準の公表などを義務付ける。
 SNSの運営企業の大半は海外勢で、削除の手続きや窓口のわかりにくさなどが指摘され、申請後も対応結果が確認できないケースもあった。今回の法改正は、誹謗中傷など権利を侵害する違法な投稿を対象としている。同様に対応が急務になっている偽情報や誤情報への対策は引き続き検討する。

◆創設50年になる仮説社という小さな出版社がある。東京・巣鴨にあるビルの3階の社内は3分の1が、本やグッズを販売する書店になっている。自社の本はもちろんだが、古本や個人出版の本(「ガリ本」と呼ぶ)から、実験器具やおもちゃ、手品からミジンコ、ガチャなども並べている。
 この売り場の一隅に机と椅子をおき、夏休み自由研究講座や煮干しの解剖講座、近所の子どもたちを集めて仮説実験授業などを教える科学教室まで始めている。ちなみに同社発行の『うに―とげとげいきもの きたむらさきうにの ひみつ』が、こども家庭庁の2023年度児童福祉文化財の推薦作品となっている。

◆映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」がブームとなるなか、水木しげるさんの故郷・鳥取県境港市でスタートした、「とっとりクリエイターズ・ビレッジ」と名付けるプロジェクトが大反響を呼んでいる。
 講談社「クリエイターズラボ」が、鳥取県と連携し地方創生とデジタルクリエイター支援を併せ持つプロジェクトを開始。あらゆるデジタルツールを駆使して創作活動している県外のクリエイターを境港市に呼び、生活の心配をせずに創作に打ち込んでもらう取り組みだ。
 4月1日から2年間は境港市に居住して活動すること、その後も鳥取県に住み続ける意志があることなどを条件に、毎月約20万円(税別)が支給されるという。さらに担当編集がついて活動を支援し、創作講座が受けられるなどの特典が付く。このプロジェクトに参加できるクリエイターは5人。応募締め切りは2024年1月15日。

◆末尾ながら、今年2024年は世界的な選挙イヤーになる。台湾総統選挙(2024年1月)→インドネシア大統領選挙(2024年2月)→ロシア大統領選挙(2024年3月)→韓国総選挙(2024年4月)→インド総選挙(2024年4月〜5月)→欧州議会議員選挙(2024年6月)→メキシコ大統領選挙(2024年6月)→東京都知事選挙(2024年7月までに)→自由民主党総裁選挙(2024年9月までに)→アメリカ大統領選挙(2024年11月5日)→参議院議員選挙(2025年)
 なかでも影響が大きいのは、アメリカ大統領選挙。ドナルド・トランプ再選でもなれば、“同盟国にとっての「悪夢」”が再来、動向が注目される。
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2023年12月23日

【出版トピックス】北海道や香川での地道な出版活動にエール!=出版部会

「北海道デジタル出版推進協会」は、北海道で出版された本で、道外の人が入手困難な作品を電子化して全国に売る事業を始めている。現在販売している電子化した会員出版社の書籍・雑誌は約1050点。電子書店で一般向けに販売する。
 史上最悪の被害とされた苫前町の三毛別ヒグマ事件を記録した木村盛武『慟哭の谷』(共同文化社)が良く売れているという。do.jpg

2023年下半期の直木賞にノミネートされた作品には河ア秋子『ともぐい』(新潮社)がある。内容は「明治後期の北海道の山で、犬を相棒にひとり狩猟をして生きていた熊爪は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていた。人と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬の果てに待つ運命がすべてを狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!」と紹介されている。
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小豆島などがある四国の香川県で建築家の安藤忠雄さんが提案する、本を積んだ船「図書館船」を2025年春に運航開始することになった。県内の島などを行き来して、本の閲覧などを促進する「図書館船」は、子どもの郷土愛を育み、地域活性化や離島との交流拡大に役立つ。
 この5月に安藤さんから「3000冊程度の図書を搭載できる小型の船舶を取得して改造し、来年末までに県に寄贈するので、子どもたちのために有効活用してほしい」という意向が示されていた。

香川県・高松市に“ひとり出版社”を立ち上げた作家の佐々木良さんが、万葉集を現代の言葉で読み解いた本を刊行。これまでの発行部数、計20万部・1億円を売り上げというヒット作となった。高松市内の小さなオフィス(家賃は月4千円)を拠点に、執筆から販売までひとりで手掛けて出版した。
 また8月に、ユニークなシステムの“ひとり書店”が丸亀市にオープンした。地元出身の藤田一輝さんが立ち上げた。店内には四方30センチほどの本棚スペースが60、このスペースを一般に貸し出している。本棚ひとつひとつが “個人経営の書店”として、思い思いに自分でセレクトした本を置き販売できる。

黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)が1981年3月6日に刊行されて42年。ついに全世界で2500万部を突破し、「世界一売れている自叙伝」として、この12月14日、ギネス世界記録に認定された。
 国内では現在まで108 刷と増刷を重ね、単行本だけで 585 万部、文庫版などの形態を含めると、800 万部以上を売り上げている。世界では20 以上の言語で翻訳され、特に中国では小学校の教科書にも収録され、1600 万部を記録している。
 なお『続 窓ぎわのトットちゃん』も発売2カ月で 50 万部を突破、初の映像化となるアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』も好評だ。

10月から始まった「インボイス制度」について、フリーランス協会が調査した結果、フリーランスの41.5%が登録し、34.9%が登録せず免税事業者を継続している。報酬については「変わらず」が55.9%、「一方的な通知で契約解除や値下げ」になったのが17.2%だった。
 報酬が値下げされた場合、発注業者との取引について継続を見直すというフリーランスは51.3%にのぼる。

LINEヤフーが主催する、2023年「LINEジャーナリズム賞」の大賞に、毎日新聞デジタルの連載「『私はなにを』…1年後も続く罪悪感 新型出生前診断(NIPT)は命の選別か、それとも希望か」を選んだ。出生前診断に悩む妊婦と先天的な障害を持って生まれた子の家族を追った。
 同賞は「LINE NEWS」に配信された各媒体の記事から社会課題を工夫して伝えたものを表彰しようと19年に創設された。
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2023年12月12日

【出版とメディアの動き】日本の電子出版とEUの「AI規制」=出版部会

◆2023年10月の出版物の販売金額848億円(前年比0.4%増)。書籍498億円(同2.8%増)、雑誌350億円(同2.9%減)。月刊誌295億円(同0.2%減)、週刊誌54億円(同15.6%減)。返品率は書籍33.8%、雑誌44.9%、月刊誌43.7%、週刊誌50.4%。週刊誌の月次の50%超えは初めて。
 なお書籍の売り上げは9月に続いて2ヵ月連続のプラス。これは初版30万部の『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社)の刊行や既刊の平均価格アップに依るところが大きい。

◆日販による「出版物販売額の実態」最新版(2023年版)によると、2022年度の出版物総売り上げは1兆4020億円(前年比3.1%減)。販売ルート別にみると書店経由8157億円(全体比58.2%)、インターネット経由2872億円(同20.5%)。インターネット経由の出版物販売額は著しい成長率を見せ、出版物の総売り上げに占めるシェアを拡大しつつある。
 とりわけ電子出版物の市場は、2022年度 6670億円(前年比7.5%増)という伸長ぶりからして、ますますインターネット経由での購入が増えるのは確実だ。
 これまで出版物は本屋さんでの購入が唯一のルートだったが、今やコンビニやインターネット経由での購入が強まり、電子出版の購入に至ってはインターネット経由が激増している。

◆今年の出版業界は、電子出版の市場拡大に負うところが大きい1年となった。2023年度の出版物推定販売金額は約1兆1千億円(前年比3.7%減)と低迷が見込まれる中で、電子出版市場だけは約5千億円(同 7.1%増)を超える見通しで、その勢いは止まらない。
 紙の出版物が大幅な販売減に陥いり、それを補うのが電子出版市場の成長だと言える。この成長の背景には、米Amazon社が販売する「Kindle電子書籍リーダー」など、読書端末の技術開拓と高度化がある上に、各出版社が多様なコンテンツを提供するようになり、販売面でもオンライン販売やプラットフォームの拡大を進め、ユーザーの利便性とアクセス可能性を向上させているからだ。この流れを無視しての出版事業は、もう成り立たないのではないか。

◆イーロン・マスクCEOのX(旧ツイッター) に見切りをつける大手広告主の動きが加速している。その引きがねの一つとなったのが、彼の反ユダヤ主義的な発言を含むコメントにある。IBM、Apple、CNN、ディズニーなどの大手広告主がXへの広告出稿を停止している。
 一方、マスク氏は、広告ボイコットを一種の陰謀と見なし、広告主を糾弾しているため、さらなる打撃をこうむる可能性がある。これまでXの経営陣は、他のプラットフォームと比較して、広告主との関係を第一優先にせず、広告主との溝を深めているという背景も指摘されている。

◆欧州連合(EU)が世界で初となる人口知能(AI)を包括的に規制する法案を発表した。EU域内人口4億5千万人に適用する「AI法案」は、今後、「世界標準」になる可能性がある。EUは細部を詰めたうえで2026年には施行を目指すという。
 この法案は、基本的人権の尊重を前提にして、AIの利用を@容認できないA高いB限定的C最小限の4段階に分け、段階ごとに義務を課す。まず最も危険な分類@「許容できないリスク」では、行政が経歴などを使って個人を点数化してAIに信用評価をさせたりすることや政府が個人の遠隔生体認証に使うことが禁止される。
 2番目に危険とされる分類A「高リスク」には、プロファイリングによる犯罪予測や入試・採用試験での評価などが入り、企業はどのようにAIを使ったか追跡や監査ができるよう記録を残す義務が課される。さらに生成AIの「チャットGTP」や「汎用AI」にも、厳しいルールを課す。
 対応を怠った企業には、最も重い違反の場合「3500万ユーロ(約54億円)」か「年間世界売上高の7%」を上限に制裁金を科す。
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2023年12月04日

【出版トピックス】注目! 2つの老舗雑誌が挑戦、新しい試み=出版部会

雑誌「世界」25年ぶりリニューアル
 敗戦後すぐに発売された(1945年12月)クオリティ雑誌「世界」(岩波書店 月刊)が、25年ぶりに2024年1月号(12/8発売)からリニューアルする。女性や若い世代をはじめ、幅広い読者と豊かなコミュニケーションの場がつくれるよう、身近で血の通った雑誌を目指し、アカデミア・社会運動・ジャーナリズムを繋ぐ雑誌を目指すという。
 リニューアルのポイントは、新デザイナーに須田杏菜さんを迎え、題字の書体を始め表紙や誌面のデザインを一新し、ジェンダーやAIなど、これまで大きく扱ってこなかったテーマにも積極的に挑戦、新しい書き手の登場、新時代の作家によるリレー・エッセイ、電子版の配信開始などに取り組む。
 編集長は堀由貴子さん:大阪府生まれ。2009年に岩波書店に入社し、2017年末まで「世界」編集部に所属。その後単行本編集部で坂上香『プリズン・サークル』、伊藤詩織『裸で泳ぐ』、榎本空『それで君の声はどこにあるんだ?』など担当。2022年10月より「世界」編集長に就任。

「小説現代」漫画245ページ収載
 「小説現代」(講談社刊)は、10月号で加藤シゲアキさんの小説「なれのはて」を大特集し、創刊60年になる同誌の史上3度目の完売を果たした。それに続いて同誌12月号(11/22発売)に、樺ユキ「画家とAI」の漫画作品を収録した。芸術・AI・戦争を描いた全編245ページの大作である。
 作品の概要は、「戦争の影が忍び寄る小さな国に生きる若き画家・モーリスが新種の生物ノームと出会い、そのノームの能力に感激するが、次第に自分たちの仕事がノームに奪われていく物語」である。
 もともとは漫画配信サイト「モーニング・ツー・WEB」で連載されていた。ここでの発表後、紙で読みたいという要望もあり、「小説現代」に掲載となった。同編集部では、「画家とAI」はウクライナやパレスチナでの戦争や生成AIが惹起している課題などを彷彿とさせる作品で、活字読者も読んでほしいと意気込んでいる。
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2023年11月14日

【出版界の動き】本離れ打開で創意あふれる意欲的な取り組み=出版部会

◆今や日本全国の自治体の4分の1以上が本屋のない「無書店自治体」と言われる。身近に本が買える環境を、どう作り維持するか模索が進んでいる。そのユニークな取り組みの一つを紹介する。
 岩手県西和賀町は、過疎化が進む人口約5千人の町、そこを通るJR北上線「ほっとゆだ」駅から近い「湯本屋内温泉プール」のロビーに、「本屋」が20年ぶりに復活した。約3千冊の小説や絵本、漫画が売られている。
 いわゆる新刊書店とは異なり、町と「ブックオフ」が協定を結び、住民側が運営する「ふるさとブックオフ」の1号店としてスタート。本はブックオフ側が選び、施設の指定管理者である西和賀町水泳協会に委託し1冊100〜300円で販売する。1冊売れるごとに販売価格の10%が同協会に支払われる。
 いま紅葉の名所として観光客も訪れる「ほっとゆだ」駅、「湯本屋内温泉プール」に浸かった後、ロビーで本に出合い楽しめる粋な取り組みとして注目されている。

◆直木賞作家の今村翔吾さんが、JR佐賀駅に新しい「佐賀之書店」を12月3日にオープンする。7年前に今村さんが「九州さが大衆文学賞」を受賞したのを縁に、佐賀市在住の「カリスマ書店員」本間悠さんを店長にして、「様々な形で出版の光を絶やさないよう模索していく」と意気込んでいる。今村さんにとっては、21年11月に大阪府箕面市で書店を事業継承した「きのしたブックセンター」に次ぐ書店経営になる。

◆日販が運営する「ほんたす ためいけ」溜池山王メトロピア店(店舗面積15坪)も注目されている。完全なる無人書店。ここに入るにはLINEミニアプリを活用し、決済はキャッシュレス決済のみ。
 これからの無人書店の活用を想定すれば、大学周辺では学術書・専門書を並べ学生・研究者をサポート。各種スタジアム近くでは球技やスポーツ、音楽やアーティストらの関連書。山深い地方のサービスエリアではアウトドア関連書、大病院内には健康増進書・入院患者の心休まる書物など、場所や施設の特徴を視野に、その場所にあった顧客のニーズに応える本を揃える、無人書店の設置が考えられるという。巨額な設備投資や書店員を確保しなくとも、一定の収益が得られるのは出版界にとっても大きい。

◆黒柳徹子『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社、10/3発売)の発行部数が、発売1週間で30万部を突破。国内で800万部、世界では2500万部超のベストセラーとなった『窓ぎわのトットちゃん』の42年ぶりの続編ということもあり、書店からの注文が殺到している。
 12月8日に公開のアニメ映画「窓ぎわのトットちゃん」(監督・脚本:八鍬新之助、配給:東宝)に合わせて、『映画 窓ぎわのトットちゃん ストーリーブック』(本体1500円)を11月に刊行する。

◆「秋の読書推進月間」が10月27日から始まったのを機に、「第31回神保町ブックフェスティバル」が28日〜29日に開催された。初日の売上げ4200万円、2日目3300万円、計7500万円(前年比18%増)。来場者は2日間で推定13万人、前回の10万人から3割増えた。出店した出版社は156社(前回14社)。決して本が見放されているわけではない。ニーズに合わせた企画の大切さが鍵となっている。

◆23年9月の出版物販売金額1078億円(前年比2.6%増)、書籍668億円(同5.3%増)、雑誌409億円(同1.6%減)。月刊誌353億円(同0.1%増)、週刊誌55億円(同11.1%減)。返品率は書籍29.3%、雑誌39.4%、月刊誌37.8%、週刊誌48.0%。
 書籍・雑誌を合計した販売金額が前年比プラスは21年11月以来、書籍の前年比プラスは22年1月以来となる。
 23年度の推定販売金額は、1兆570億円前後と試算されている。ピーク時の1996年には2兆6564億円の販売金額があったのだから、なんと27年間で半分以下の40%にまで落ち込んでしまったことになる。
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2023年10月20日

【出版トピックス】21歳の読書率─1カ月に読んだ本「0冊」が62.3%=萩山 拓(ライター)

10年で激減の読書量
 文科省が2022年に行った「21世紀出生児縦断調査」の結果内容を公開した。これは少子化対策を企画立案するため、2001年度から始めた調査だ。すなわち2001年に生まれた特定の子供に対し、毎年多岐にわたる質問をして、その後の変化を調べている。今回は21歳になる約2万2千人分の回答を分析した。
 その質問の一つとして、「この1カ月に読んだ紙の書籍(本)の数」を尋ねたところ、なんと「0冊」が62.3%、「1冊」は19.7%、「2〜3冊」が12.3%、「4冊以上」は5.8%だった。電子書籍(本)の数を尋ねても「0冊」が78.1%を占めた。
 同じ特定の子供が10歳の時には「1カ月に0冊」は10.3%(保護者からの回答を集計)だった実態と比べて、10年の間に読書量が大きく落ち込んでいるのが顕著になっている。本を読まないだけでなく新聞を読みテレビをみる若者もかなり減っているという。

「読書離れ」深く考える
 背景には何があるのだろう。交流サイト(SNS)や動画投稿サイトの普及が一因と指摘されている。その一方で若者たちの社会参画の機会が増え、読書以外に目が向くようになったというポジティブな要因も考慮すべきだろう。
 21歳という時点に限っての結果だけで、若者の「読書離れ」を論ずる危惧も指摘されている。10歳から21歳、さらには30歳へと成長していく過程で、人生にも変化が起き、図書館の充実・文化施設の拡充などの社会環境の変化と合わせ、一人ひとりに訪れる転機や機会を得て「読書」に戻ることもある。
 こうした視野を踏まえての議論が必要になっているのではと思う。この6月に刊行された飯田一史『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)は、この20年間でV字回復した小中学生の読書力を考察し、21歳以降の若者たちへ示唆に富む提言をしている。読書を通じZ世代のカルチャーにも迫る。参考になる一冊だ。               
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