●23年1月の出版物販売金額797億円(前年比6.5%減)、書籍474億円(同7.0%減)、雑誌323億円(同5.8%減)。月刊誌266億円(同3.3%減)、週刊誌56億円(同16.0%減)。返品率は書籍32.8%、雑誌41.8%、月刊誌41.3%、週刊誌44.3%。
●22年1年間のコミック販売金額は、紙+電子を合わせ6770億円(前年比0.2%増)、5年連続の成長で過去最大を更新した。
紙のコミックス(単行本)1754億円(同16.0%減)、コミック誌537億円(同3.8%減)、合計2291億円(同13.4%減)。コロナ禍による巣ごもり需要が終息、メガヒット作品も少なかったが、コロナ禍前の2019年比ではプラス。
電子コミックは4479億円(同8.9%増)、コミック市場全体に占める率は66.2%。電子コミックの市場推計は定額読み放題を含む「読者が支払った金額の推計」で、広告収入や電子図書館向けは含まれない。
●図書館流通センター(TRC)の電子図書館サービスが318の自治体で導入。利用可能人口6千万人を超えた。3月までに日本の総人口の過半数が利用できる。3月には神奈川・川崎市、茨木県・つくば市や土浦市でも導入。
●講談社、減収減益の決算─22年度の売上高1695億(前年比0.8%減)。当期純利益は150億(同3.8%減)。デジタル・版権関連の事業収入102億(同10.0%増)、広告収入74億(同5.0%増)が好調に推移し、前年比減を抑えられた。
●『オール讀物』3・4月合併号が創刊92年の歴史で初の電子雑誌版配信の試み。直木賞発表の小川哲さん『地図と拳』と千早茜さん『しろがねの葉』を収載。
●朝日新聞出版の月刊誌「Journalism」が3月で休刊。2008年の創刊で、メディアに関連するテーマやジャーナリズムに関する論考を掲載し、新聞販売店を経由して販売していた。
あわせて、みすず書房の月刊誌「みすず」が8月号で休刊。出版社のPR雑誌も休刊する危機が迫っているのではないか。
日販の広報誌「日販通信」も3月号(3/3発売)で休刊。1950年の創刊以来、73年で終止符。WEBサイト「ほんのひきだし」に移行する
2023年03月10日
2023年02月11日
【出版界の動き】電子出版の伸長が鈍化、本屋から複合文化施設へ転換=出版部会
●2022年12月の出版物販売金額972億円(前年比5.7%減)、書籍522億円(同3.5%減)、雑誌449億円(同8.2%減)。月刊誌388億円(同9.1%減)、週刊誌61億円(同1.8%減)。返品率は書籍29.0%、雑誌37.8%、月刊誌36.4%、週刊誌45.3%。
●22年1年間の紙・電子合わせて出版物販売金額は1兆6305億円(前年比2.6%減)。紙製では書籍6497億円(同4.5%減)、雑誌4795億円(同9.1%減)。月刊誌4017億円(同9.7%減)、週刊誌778億円(同5.7%減)。
電子では販売金額5013億円(同7.5%増)。コミック4479億円(同8.9%増)、書籍446億円(同0.7%減)、雑誌88億円(同11.1%減)。
●これまで2ケタ増を続けてきた電子出版市場は、2014年1144億円と比較すれば、この8年で約4.4倍の市場に成長した。だが電子版の書籍・雑誌はマイナス成長の急ブレーキがかかり、なかでも電子コミックの大幅な売り上げ増が見込めなくなり、さらにコロナ禍による巣ごもり需要も終わり、物価高による買い控えが出版市場を冷え込ませている。
●KADOKAWA、取締役の過半数を社外取締役にして、取締役会に対する監督機能を強化する。東京五輪を巡る汚職事件に関与した前会長・角川歴彦被告への「過度の忖度とそれを醸成した企業風土があった」として、再発防止に向けた対策。
●21年の書店の売り場面積300坪以上の新規出店を見ると、24店のうちツタヤ関連が12店と半分を占め、続いて駿河屋3店、未来屋、三洋堂が各2店となっている。
●CCCが軽井沢町に敷地面積3500坪・建物9棟などの複合施設を作り、そこに平安堂軽井沢店の跡地に出した軽井沢書店の支店を設けるほか、インターナショナルスクール、カフェなどを備え、一大文化拠点をつくる。
●「LAWSONマチの本屋さん」の出店が神奈川・神戸・青森にも。神奈川のローソン向ヶ丘遊園南店125坪のうち25坪を書店とし6000点の出版物を扱う。神戸のジェームス山店では88坪の売場のうち15坪を書店とし3000点の出版物を扱う。青森の田子町店は93坪の売場の23坪を書店とし6000点を扱う。これで総計7店舗。これまでの出版物の売上高は導入前に比べて20倍、女性や家族・シニアの来店が増えているという。
●1922年に創刊の「週刊朝日」が6月9日号で休刊、101年の歴史を閉じる。2022年の平均発行部数7万部。朝日の雑誌休刊をたどってみると、1992年に「朝日ジャーナル」、「月刊Asahi」「科学朝日」「アサヒカメラ」「週刊アサヒグラフ」「論座」と続く。各誌とも一定の読者を持ち役割を果たしてきただけに惜しまれる。いまや残っているのは「AERA」「月刊Journalism」2誌のみ。
●22年1年間の紙・電子合わせて出版物販売金額は1兆6305億円(前年比2.6%減)。紙製では書籍6497億円(同4.5%減)、雑誌4795億円(同9.1%減)。月刊誌4017億円(同9.7%減)、週刊誌778億円(同5.7%減)。
電子では販売金額5013億円(同7.5%増)。コミック4479億円(同8.9%増)、書籍446億円(同0.7%減)、雑誌88億円(同11.1%減)。
●これまで2ケタ増を続けてきた電子出版市場は、2014年1144億円と比較すれば、この8年で約4.4倍の市場に成長した。だが電子版の書籍・雑誌はマイナス成長の急ブレーキがかかり、なかでも電子コミックの大幅な売り上げ増が見込めなくなり、さらにコロナ禍による巣ごもり需要も終わり、物価高による買い控えが出版市場を冷え込ませている。
●KADOKAWA、取締役の過半数を社外取締役にして、取締役会に対する監督機能を強化する。東京五輪を巡る汚職事件に関与した前会長・角川歴彦被告への「過度の忖度とそれを醸成した企業風土があった」として、再発防止に向けた対策。
●21年の書店の売り場面積300坪以上の新規出店を見ると、24店のうちツタヤ関連が12店と半分を占め、続いて駿河屋3店、未来屋、三洋堂が各2店となっている。
●CCCが軽井沢町に敷地面積3500坪・建物9棟などの複合施設を作り、そこに平安堂軽井沢店の跡地に出した軽井沢書店の支店を設けるほか、インターナショナルスクール、カフェなどを備え、一大文化拠点をつくる。
●「LAWSONマチの本屋さん」の出店が神奈川・神戸・青森にも。神奈川のローソン向ヶ丘遊園南店125坪のうち25坪を書店とし6000点の出版物を扱う。神戸のジェームス山店では88坪の売場のうち15坪を書店とし3000点の出版物を扱う。青森の田子町店は93坪の売場の23坪を書店とし6000点を扱う。これで総計7店舗。これまでの出版物の売上高は導入前に比べて20倍、女性や家族・シニアの来店が増えているという。
●1922年に創刊の「週刊朝日」が6月9日号で休刊、101年の歴史を閉じる。2022年の平均発行部数7万部。朝日の雑誌休刊をたどってみると、1992年に「朝日ジャーナル」、「月刊Asahi」「科学朝日」「アサヒカメラ」「週刊アサヒグラフ」「論座」と続く。各誌とも一定の読者を持ち役割を果たしてきただけに惜しまれる。いまや残っているのは「AERA」「月刊Journalism」2誌のみ。
2023年01月13日
【出版界の動き】電子ツールを活用した出版文化への期待が広がる=出版部会
●22年11月の出版物販売金額915億円(前年比4.2%減)、書籍508億円(同6.3%減)、雑誌406億円(同1.5%減)。月刊誌345億円(同0.3%増)、週刊誌61億円(同10.5%減)。返品率は書籍34.7%、雑誌40.4%、月刊誌39.3%、週刊誌46.1%。
●22年1年間の出版物(紙製)販売金額は1兆1,300億円(前年比6%減)となる見込み。書籍は落ち込みが大きく、雑誌は前年比10%減。コロナ特需は完全に終息。電子出版はコミック4533億円、書籍447億円、雑誌86億円で総計5066億円。
●出版科学研究所が発行する「出版月報」が来春に季刊化。月次データについてはPDF版で「出版指標マンスリーレポート」として、定期購読者には配信する。従来の第三種郵便による配送より情報鮮度は高まる。
●出版社直営のサイトで書籍の読み放題サービスを有料会員に提供。「有斐閣Online」、佼成出版社「ちえうみ」やGakkenやオーム社などの事例がある。講談社「メフィスト」は定期刊行の電子版を止め、定額会員制の読書クラブを展開、紙版が年4回届く試みを開始。新潮社「yom yom」も定期刊行の電子版を止め、全作品無料のウェブマガジンへ移行。
●出版DX基盤「MDAM」の共同利用─集英社・小学館・講談社による「雑誌コンテンツを使った新サービス創出」を目指す戦略的業務提携が、大日本印刷の支援を受けて進む。集英社が開発した出版DX基盤「MDAM」を版元の壁を越え、広く採用されたのが理由。
●「週刊文春」の掲載記事を、発売前日の12時に前倒しして電子版へ配信。双方の価値を相乗的に高める施策が効果を上げている。とりわけ政治スキャンダルに関する記事は、永田町の関心を呼び政界への激震にもつながる。
●埋もれていた名著の再発見と復刻の進展─国立国会図書館が「個人向けデジタル化資料送信サービス」を開始し、絶版本や埋もれた名著へのアクセスが容易になった。そのため昨年半年で約3万3000人、約35万回の閲覧、利用は飛躍的に高まっている。
なお年末には「国立国会図書館デジタルコレクション」がリニューアル、全文検索可能なデジタル化資料が大幅に増加、閲覧画面の改善、保護期間満了資料を対象とした画像検索機能の追加、シングルサインオン対応、検索画面のモバイル対応など、大幅な機能改善がなされている。年明け1月18日には印刷機能も追加される。
●小林昌樹『調べる技術─国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』(皓星社)が好評。著者は国立国会図書館の元職員、レファレンス業務などに従事。12月23日に3刷、1月10日に4刷。
●滋賀県長浜市に120年の歴史がある小さな私立図書館がある。「江北(こほく)図書館」が、野間出版文化賞特別賞を受賞。受賞理由は「個人が設立して100年以上ものあいだ地域住民が運営を続けてきた、他に類を見ない私立図書館」。館内閲覧は無料、館外貸し出し、近隣の小学校への「巡回図書」も開始。
●22年1年間の出版物(紙製)販売金額は1兆1,300億円(前年比6%減)となる見込み。書籍は落ち込みが大きく、雑誌は前年比10%減。コロナ特需は完全に終息。電子出版はコミック4533億円、書籍447億円、雑誌86億円で総計5066億円。
●出版科学研究所が発行する「出版月報」が来春に季刊化。月次データについてはPDF版で「出版指標マンスリーレポート」として、定期購読者には配信する。従来の第三種郵便による配送より情報鮮度は高まる。
●出版社直営のサイトで書籍の読み放題サービスを有料会員に提供。「有斐閣Online」、佼成出版社「ちえうみ」やGakkenやオーム社などの事例がある。講談社「メフィスト」は定期刊行の電子版を止め、定額会員制の読書クラブを展開、紙版が年4回届く試みを開始。新潮社「yom yom」も定期刊行の電子版を止め、全作品無料のウェブマガジンへ移行。
●出版DX基盤「MDAM」の共同利用─集英社・小学館・講談社による「雑誌コンテンツを使った新サービス創出」を目指す戦略的業務提携が、大日本印刷の支援を受けて進む。集英社が開発した出版DX基盤「MDAM」を版元の壁を越え、広く採用されたのが理由。
●「週刊文春」の掲載記事を、発売前日の12時に前倒しして電子版へ配信。双方の価値を相乗的に高める施策が効果を上げている。とりわけ政治スキャンダルに関する記事は、永田町の関心を呼び政界への激震にもつながる。
●埋もれていた名著の再発見と復刻の進展─国立国会図書館が「個人向けデジタル化資料送信サービス」を開始し、絶版本や埋もれた名著へのアクセスが容易になった。そのため昨年半年で約3万3000人、約35万回の閲覧、利用は飛躍的に高まっている。
なお年末には「国立国会図書館デジタルコレクション」がリニューアル、全文検索可能なデジタル化資料が大幅に増加、閲覧画面の改善、保護期間満了資料を対象とした画像検索機能の追加、シングルサインオン対応、検索画面のモバイル対応など、大幅な機能改善がなされている。年明け1月18日には印刷機能も追加される。
●小林昌樹『調べる技術─国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』(皓星社)が好評。著者は国立国会図書館の元職員、レファレンス業務などに従事。12月23日に3刷、1月10日に4刷。
●滋賀県長浜市に120年の歴史がある小さな私立図書館がある。「江北(こほく)図書館」が、野間出版文化賞特別賞を受賞。受賞理由は「個人が設立して100年以上ものあいだ地域住民が運営を続けてきた、他に類を見ない私立図書館」。館内閲覧は無料、館外貸し出し、近隣の小学校への「巡回図書」も開始。
2022年12月17日
【出版界の動き】出版社29社で総販売額の半分・7千億円という寡占化=出版部会
◆22年10月の出版物販売金額845億円(前年比7.5%減)、書籍484億円(同5.9%減)、雑誌360億円(同9.7%減)。月刊誌296億円(同10.8%減)、週刊誌64億円(同4.3%減)。返品率は書籍34.1%、雑誌43.8%、月刊誌43.4%、週刊誌45.5%。
◆昨年の出版物販売額は1兆4473億円(前年比1.0%減)。そのうち電子媒体の販売金額は4,662億円(前年比18.9%増)、紙媒体と比べて大幅な増加。海賊版サイトの閉鎖措置で、電子コミックの収益が回復。さらに出版各社がネットや映像との融合、デジタルメディアの強化、電子書籍の展開など、新たなビジネスモデルの構築に傾注。
講談社では、企業や団体が販売促進や広告宣伝に役立つサイト『C-station』を展開。またソフトバンクと協業して講談社が運営する「ミクサライブ東京」で、LIVEエンターテインメントコンテンツを展開する。集英社はDeNAと共同会社を設立し、エンターテインメント事業の開拓に乗り出している。
◆日販の「出版物販売額の実態」最新版(2022年版)によると、21年度の出版社数は2907社、売上高100億円以上の出版社は全体の1.0%(29社)、総売上高の52.5%を占める。売上高10億円以上(全体の7.4%)と広げれば総売上高の84.6%となる。売上高1億円未満の出版社が全体の70.3%、それらの売上をすべて合わせても、出版物総売上高の2.7%に過ぎない。出版界の寡占化は激しい。
一方、書店の状況はどうか。21年度の書店は 8642店舗。2010年度をピークに店舗数および坪総数が減少しはじめている。ここでも「書店の大型化」が進み大型店舗のみが生き残る事態になっている。町の本屋さんが消失している。
◆紀伊國屋書店は15年連続で黒字決算。今年度期の連結売上高1209億円(前年比4.6%増)、当期純利益20億3200万円(同34.8%増)と大幅に伸長。
◆出版文化産業振興財団の調査で、書店のない市町村が全国で26.2%に上ることが分かった。全国1741市区町村のうち456市町村が書店の空白域となっている。人口減少による経営難や活字離れ、スマートフォンの普及による娯楽の多様化が背景にあり、全国の書店数はこの10年で約3割も減少。地方では文化発信の場が失われる危機が迫る。
全自治体に占める書店ゼロの割合は、トップの沖縄県56.1%、順に長野県51.9%、奈良県51.3%。書店ゼロか1店舗しかない自治体の割合は長野県71.4%(55自治体)、北海道70.9%(127)が高かった。
◆日販とトーハンが2022年の年間ベストセラーを発表。総合1位は、和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎)で発行部数57万5000部。
◆2022年上期の新聞(朝刊)発行部数は、読売新聞686万部、朝日新聞429万部、毎日新聞193万部、中日新聞192万部、日本経済新聞175万部、産経新聞102万部。北海道新聞85万部、東京新聞39万部。
出版部会
◆昨年の出版物販売額は1兆4473億円(前年比1.0%減)。そのうち電子媒体の販売金額は4,662億円(前年比18.9%増)、紙媒体と比べて大幅な増加。海賊版サイトの閉鎖措置で、電子コミックの収益が回復。さらに出版各社がネットや映像との融合、デジタルメディアの強化、電子書籍の展開など、新たなビジネスモデルの構築に傾注。
講談社では、企業や団体が販売促進や広告宣伝に役立つサイト『C-station』を展開。またソフトバンクと協業して講談社が運営する「ミクサライブ東京」で、LIVEエンターテインメントコンテンツを展開する。集英社はDeNAと共同会社を設立し、エンターテインメント事業の開拓に乗り出している。
◆日販の「出版物販売額の実態」最新版(2022年版)によると、21年度の出版社数は2907社、売上高100億円以上の出版社は全体の1.0%(29社)、総売上高の52.5%を占める。売上高10億円以上(全体の7.4%)と広げれば総売上高の84.6%となる。売上高1億円未満の出版社が全体の70.3%、それらの売上をすべて合わせても、出版物総売上高の2.7%に過ぎない。出版界の寡占化は激しい。
一方、書店の状況はどうか。21年度の書店は 8642店舗。2010年度をピークに店舗数および坪総数が減少しはじめている。ここでも「書店の大型化」が進み大型店舗のみが生き残る事態になっている。町の本屋さんが消失している。
◆紀伊國屋書店は15年連続で黒字決算。今年度期の連結売上高1209億円(前年比4.6%増)、当期純利益20億3200万円(同34.8%増)と大幅に伸長。
◆出版文化産業振興財団の調査で、書店のない市町村が全国で26.2%に上ることが分かった。全国1741市区町村のうち456市町村が書店の空白域となっている。人口減少による経営難や活字離れ、スマートフォンの普及による娯楽の多様化が背景にあり、全国の書店数はこの10年で約3割も減少。地方では文化発信の場が失われる危機が迫る。
全自治体に占める書店ゼロの割合は、トップの沖縄県56.1%、順に長野県51.9%、奈良県51.3%。書店ゼロか1店舗しかない自治体の割合は長野県71.4%(55自治体)、北海道70.9%(127)が高かった。
◆日販とトーハンが2022年の年間ベストセラーを発表。総合1位は、和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎)で発行部数57万5000部。
◆2022年上期の新聞(朝刊)発行部数は、読売新聞686万部、朝日新聞429万部、毎日新聞193万部、中日新聞192万部、日本経済新聞175万部、産経新聞102万部。北海道新聞85万部、東京新聞39万部。
出版部会
2022年11月14日
【出版界の動き】この秋、予断を許さない多様な事態が…=出版部会
●22年9月の出版物販売金額1051億円(前年比4.6%減)、書籍635億円(同3.7%減)、雑誌416億円(同6.0%減)。月刊誌353億円(同5.2%減)、週刊誌62億円(同10.5%減)。返品率は書籍30.9%、雑誌39.4%、月刊誌38.4%、週刊誌44.7%。
●KADOKAWA元会長・角川歴彦被告が取締役を11/5に辞任。「当社の社会的信用に影響を与えた責任は重い」との社長コメントがあるが、五輪汚職の影響は大きく、イベント運営事業などのキャンセルを含め数億円の逸失が出る見通しだ。
しかし全体の業績は好調で、中間期の売上高1226億円(前年比17%増)、純利益105億円(同48%増)。ゲーム事業の売上高171億円(同350%増)。
●日販グループの文教堂および精文館書店の利益が激減。文教堂は営業利益5200万円(前年比85.7%減)。精文館書店の営業利益5200万円(前年比12.6%減)、当期純利益8100万円(同80.2%減)。来年度も回復の見込みは立たず。
●ハロウインで賑わった渋谷の顔「ジュンク堂書店」が、12年がたつ2023年1月末に閉店する。 インターネットの隆盛と比例するように、“紙媒体”の雑誌・書籍の売れ行きが減少し、2020年の出版物販売額1兆2,237億円、最盛期での26年前(1996年)の半分に落ち込んでいる。書店数も2000年の2万1495店が、2020年には1万1024店舗に減少。全国1718市区町村のうち、22.8%にあたる392の市町村に書店がない。
●10/29〜30に3年ぶり開催の「神保町ブックフェスティバル」に10万人が来場。出版社など約130台のワゴンが出展し、バーゲンブックの売行きが好調。神保町三井ビルの公開空地での「こどもの本広場」も盛況だった。2日間の総売り上げは6340万円。
●書店議連が来年5月までに、街の書店を維持・継続するための提言書をとりまとめる。また議連の名称を「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」に変更。この議連には現在、145人の議員が所属している。ICタグを活用した「国の補助によるDXモデル事業の創設」や諸外国に倣った「書店産業への助成」などの検討を求めている。
●書名に「9割」の文字を付けた本が、通称「9割本」が書店を席巻している。昨年には『人は話し方が9割』がベストセラーとなり、今年の1月には累計発行部数100万冊を突破。今やあらゆるジャンルから「9割本」が出版されている。
2000年代前半までは年に1〜3冊程度が、後半には年30冊。2014年には90冊、その後も年間60〜70冊前後で推移している。人の心理や思い込みをついて、「9割だから正しい」とする押し付けが怖い。いまや2冊並べて「18割」ジョークも出る始末だ。
●講談社と共同通信のコラボで、清武英利氏が執筆する初の歴史大河小説『青鞜の男』を、「デーリー東北新聞」に11/1から約1年連載。各地方紙にも順次掲載する。書籍化は2024年以降の予定。
出版部会
●KADOKAWA元会長・角川歴彦被告が取締役を11/5に辞任。「当社の社会的信用に影響を与えた責任は重い」との社長コメントがあるが、五輪汚職の影響は大きく、イベント運営事業などのキャンセルを含め数億円の逸失が出る見通しだ。
しかし全体の業績は好調で、中間期の売上高1226億円(前年比17%増)、純利益105億円(同48%増)。ゲーム事業の売上高171億円(同350%増)。
●日販グループの文教堂および精文館書店の利益が激減。文教堂は営業利益5200万円(前年比85.7%減)。精文館書店の営業利益5200万円(前年比12.6%減)、当期純利益8100万円(同80.2%減)。来年度も回復の見込みは立たず。
●ハロウインで賑わった渋谷の顔「ジュンク堂書店」が、12年がたつ2023年1月末に閉店する。 インターネットの隆盛と比例するように、“紙媒体”の雑誌・書籍の売れ行きが減少し、2020年の出版物販売額1兆2,237億円、最盛期での26年前(1996年)の半分に落ち込んでいる。書店数も2000年の2万1495店が、2020年には1万1024店舗に減少。全国1718市区町村のうち、22.8%にあたる392の市町村に書店がない。
●10/29〜30に3年ぶり開催の「神保町ブックフェスティバル」に10万人が来場。出版社など約130台のワゴンが出展し、バーゲンブックの売行きが好調。神保町三井ビルの公開空地での「こどもの本広場」も盛況だった。2日間の総売り上げは6340万円。
●書店議連が来年5月までに、街の書店を維持・継続するための提言書をとりまとめる。また議連の名称を「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」に変更。この議連には現在、145人の議員が所属している。ICタグを活用した「国の補助によるDXモデル事業の創設」や諸外国に倣った「書店産業への助成」などの検討を求めている。
●書名に「9割」の文字を付けた本が、通称「9割本」が書店を席巻している。昨年には『人は話し方が9割』がベストセラーとなり、今年の1月には累計発行部数100万冊を突破。今やあらゆるジャンルから「9割本」が出版されている。
2000年代前半までは年に1〜3冊程度が、後半には年30冊。2014年には90冊、その後も年間60〜70冊前後で推移している。人の心理や思い込みをついて、「9割だから正しい」とする押し付けが怖い。いまや2冊並べて「18割」ジョークも出る始末だ。
●講談社と共同通信のコラボで、清武英利氏が執筆する初の歴史大河小説『青鞜の男』を、「デーリー東北新聞」に11/1から約1年連載。各地方紙にも順次掲載する。書籍化は2024年以降の予定。
出版部会
2022年10月14日
【出版界の動き】拉致問題を巡り「図書館の自由」を侵す文科省要請=出版部会
●22年8月の出版物販売金額801億円(前年比1.1%減)、書籍423億円(同2.3%減)、雑誌378億円(同0.2%増)。月刊誌315億円(同0.3%減)、週刊誌62億円(同2.4%減)。返品率は書籍37.9%、雑誌41.8%、月刊誌41.5%、週刊誌43.3%。
雑誌の売り上げがわずかにせよ前年増となったのは21年5月以来。『ONE PIECE』(集英社)第103巻が300万部を超えて発売されたことなどによる。
●日本出版者協議会(出版協)が文科省の「拉致問題に関する図書の充実に係る協力要請」に、9/29付で抗議声明を発表した。
文科省が8月30日に各都道府県の教育委員会宛てに出した事務連絡「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」は、内閣官房拉致問題対策本部事務局より協力依頼があったためとして、公立図書館・学校図書館等で拉致問題に関する本の充実を図ること、さらに拉致問題に関するテーマ展示等で児童生徒や住民がそうした図書等を手に取りやすくする環境を整備すること、を求めている。
出版協は「図書館が社会的問題や人権問題に関する資料を充実させることについて異論はない。ただし、それはあくまで図書館が自主的に判断する問題であり、権力が介入するべきではない」として「図書館の自由」を侵す要請に強く抗議し、事務連絡の取消しを求めている。また図書館問題研究会も10/9付で、同趣旨の声明を発表している。
●昨21年、公共図書館から個人が借り出した出版物の総数は5.4億冊(20年は6.5億冊)、21年の図書館数は20年より6館増えているのに、なぜ1億冊以上も減少しているのか。コロナ禍や電子書籍図書館化が原因とも思われず、この減少は注視しなければならない。
●新プロジェクト「#木曜日は本曜日」をスタート─東京都内にある中小書店が中心となって10月6日から、多くの人々に本屋へ足を運んでもらうための取り組み。一週間に一度、毎週木曜日に本屋と本を愛する人にインタビューする動画を公開。また本好きが選書した本を都内約180店舗で販売する。
●出版業界で働く女性有志が運営する「出版女性人の会」が、11月16日開催の上野千鶴子氏オンライン講演会の参加者を募集。講演テーマは「ホモソーシャルな出版業界 ―その悪しき体質、変えられますか?」。定員200人、会費500円。申込み締切日11月6日。申し込みはhttps://shuppan-josei221116.peatix.com へ。問い合わせはメールにて小学館PS・中島氏(n-aika@sho-ps.co.jp)、ワニブックス・出原氏(idehara@wani.co.jp)まで。
出版部会
雑誌の売り上げがわずかにせよ前年増となったのは21年5月以来。『ONE PIECE』(集英社)第103巻が300万部を超えて発売されたことなどによる。
●日本出版者協議会(出版協)が文科省の「拉致問題に関する図書の充実に係る協力要請」に、9/29付で抗議声明を発表した。
文科省が8月30日に各都道府県の教育委員会宛てに出した事務連絡「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」は、内閣官房拉致問題対策本部事務局より協力依頼があったためとして、公立図書館・学校図書館等で拉致問題に関する本の充実を図ること、さらに拉致問題に関するテーマ展示等で児童生徒や住民がそうした図書等を手に取りやすくする環境を整備すること、を求めている。
出版協は「図書館が社会的問題や人権問題に関する資料を充実させることについて異論はない。ただし、それはあくまで図書館が自主的に判断する問題であり、権力が介入するべきではない」として「図書館の自由」を侵す要請に強く抗議し、事務連絡の取消しを求めている。また図書館問題研究会も10/9付で、同趣旨の声明を発表している。
●昨21年、公共図書館から個人が借り出した出版物の総数は5.4億冊(20年は6.5億冊)、21年の図書館数は20年より6館増えているのに、なぜ1億冊以上も減少しているのか。コロナ禍や電子書籍図書館化が原因とも思われず、この減少は注視しなければならない。
●新プロジェクト「#木曜日は本曜日」をスタート─東京都内にある中小書店が中心となって10月6日から、多くの人々に本屋へ足を運んでもらうための取り組み。一週間に一度、毎週木曜日に本屋と本を愛する人にインタビューする動画を公開。また本好きが選書した本を都内約180店舗で販売する。
●出版業界で働く女性有志が運営する「出版女性人の会」が、11月16日開催の上野千鶴子氏オンライン講演会の参加者を募集。講演テーマは「ホモソーシャルな出版業界 ―その悪しき体質、変えられますか?」。定員200人、会費500円。申込み締切日11月6日。申し込みはhttps://shuppan-josei221116.peatix.com へ。問い合わせはメールにて小学館PS・中島氏(n-aika@sho-ps.co.jp)、ワニブックス・出原氏(idehara@wani.co.jp)まで。
出版部会
2022年09月17日
【出版界の動き】五輪汚職と統一教会そして出版社=出版部会
●22年7月の出版物販売金額745億円(前年比9.1%減)、書籍397億円(同6.9%減)、雑誌348億円(同11.5%減)。月刊誌284億円(同13.4%減)、週刊誌63億円(同2.4%減)。返品率は書籍41.8%、雑誌43.8%、月刊誌44.1%、週刊誌は42.7%。
●CCCの売上高1819億円(前年2982億円)、経常利益81億円(前年42億円)。連結決算による経常利益とはいえ、この驚異的な収益率は、どこからきているのか。紀伊國屋書店が売上高978億円に対し、経常利益10億円である事実と比較しても不思議だ。
●八重洲ブックセンター本店が、地域の再開発計画に伴い、来年3月に一時閉店。28年度に建設予定の超高層大規模複合ビルに改めて出店する。1978年9月に超巨大書店として開業、44年を経ての閉店に際し、9月17日から同30日まで全9店舗で「創業祭」を開催する。
●KADOKAWAの元専務・室長が、東京五輪スポンサーを巡り組織委員会の元理事・高橋治之容疑者に、約7600万円を贈賄した容疑で逮捕。KADOKAWAは2019年4月に約2億円でスポンサー契約を締結している。さらに東京地検特捜部は、14日、角川歴彦・会長を、同容疑で逮捕する事態となった。
●集英社、減収減益の決算。売上高1952億(前年比2.9%減)、当期純利益268.5億円(同41.3%減)。売上高の内訳は、雑誌506.5億円(同38.0%減)、書籍120億円(同32.6%減)、広告86億円(同9.2%増)、事業収入1261.5億円(同34.7%増)。
●集英社のウェブメディア「よみタイ」で連載されていた菊池真理子氏のコミック『「神様」のいる家で育ちました宗教2世な私たち』が、今年の1/26付で連載中止、ウェブメディアからも削除されていた。この内容は「宗教2世」の苦悩について、取材を基に描いたもの。
この作品が文藝春秋から単行本として10月6日に刊行される。単行本では連載された原稿に加え、未発表作と書き下ろし計45ページが収録され、総ページ144ページ。著者のコメントには、「宗教団体からの抗議をきっかけに休止となり、消えかけた作品です」という文章がある。
●「下請法」改正でフリーランス保護が加速されるか。下請法に違反した場合、公正取引委員会から勧告・指導がなされる。悪質な場合は最高50万円の罰金が科される。しかし「資本金1000万円以下の法人」には適用されない。そのため今秋の臨時国会に、この条件を撤廃し業務を発注する際には8項目に及ぶ内容が記載された3条書面を発行する義務を課す法案を提出することになった。
出版部会
●CCCの売上高1819億円(前年2982億円)、経常利益81億円(前年42億円)。連結決算による経常利益とはいえ、この驚異的な収益率は、どこからきているのか。紀伊國屋書店が売上高978億円に対し、経常利益10億円である事実と比較しても不思議だ。
●八重洲ブックセンター本店が、地域の再開発計画に伴い、来年3月に一時閉店。28年度に建設予定の超高層大規模複合ビルに改めて出店する。1978年9月に超巨大書店として開業、44年を経ての閉店に際し、9月17日から同30日まで全9店舗で「創業祭」を開催する。
●KADOKAWAの元専務・室長が、東京五輪スポンサーを巡り組織委員会の元理事・高橋治之容疑者に、約7600万円を贈賄した容疑で逮捕。KADOKAWAは2019年4月に約2億円でスポンサー契約を締結している。さらに東京地検特捜部は、14日、角川歴彦・会長を、同容疑で逮捕する事態となった。
●集英社、減収減益の決算。売上高1952億(前年比2.9%減)、当期純利益268.5億円(同41.3%減)。売上高の内訳は、雑誌506.5億円(同38.0%減)、書籍120億円(同32.6%減)、広告86億円(同9.2%増)、事業収入1261.5億円(同34.7%増)。
●集英社のウェブメディア「よみタイ」で連載されていた菊池真理子氏のコミック『「神様」のいる家で育ちました宗教2世な私たち』が、今年の1/26付で連載中止、ウェブメディアからも削除されていた。この内容は「宗教2世」の苦悩について、取材を基に描いたもの。
この作品が文藝春秋から単行本として10月6日に刊行される。単行本では連載された原稿に加え、未発表作と書き下ろし計45ページが収録され、総ページ144ページ。著者のコメントには、「宗教団体からの抗議をきっかけに休止となり、消えかけた作品です」という文章がある。
●「下請法」改正でフリーランス保護が加速されるか。下請法に違反した場合、公正取引委員会から勧告・指導がなされる。悪質な場合は最高50万円の罰金が科される。しかし「資本金1000万円以下の法人」には適用されない。そのため今秋の臨時国会に、この条件を撤廃し業務を発注する際には8項目に及ぶ内容が記載された3条書面を発行する義務を課す法案を提出することになった。
出版部会
2022年07月15日
【出版界の動き】本の用紙代が高騰し、悲鳴をあげる出版社=出版部会
●5月の出版物販売金額734億円(前年比5.3%減)。書籍407億円(同3.1%減)、雑誌327億円(同7.9%減)。月刊誌268億円(同7.4%減)、週刊誌58億円(同10.2%減)。返品率は書籍38.8%、雑誌は45.4%、月刊誌45.8%、週刊誌43.2%。
●物価高騰のあおりで本の用紙代も値上がり。原価上昇分をどの程度価格に反映させるのか、悩みは尽きない。それでも新刊は販価に反映させて解決できるが、悩ましいのは既刊書の増刷の際、値上げしたくても値上げできない事情がある。
まず定価を上げればカバーにある定価表示を変えねばらない。新しくカバーを印刷しなければならぬ。その印刷費がばかにならない。こういうジレンマに陥るのだ。
一方、電子書籍は用紙代がない分、価格への影響はない。まず増刷は電子書籍からということになる。また市場で本が品切れ状態だと国会図書館に判定されれば、3カ月以内に品切れを解消しなくてはならない。この対策にも頭が痛い。
●中国発の漫画作品が日本のコミック市場に本格参入。2003年5月に日本で初めて立ち上げた漫画配信アプリ「ブックライブ fun」は、中国の漫画プラットフォーム「快看(クワイカン)」と独占契約し、縦スクロールの“縦読み”でフルカラーの作品を、日本語に翻訳し、キャラクターや設定を日本向けに調整。きわめて好調だという。
特にいまの若いユーザーは、作品自体の面白さで判断しているので、どこの国の作品でも受け入れる。
●学研プラスが提供する小中学校向けサービス「学研スクールライブラリー」にある1,300タイトル以上の電子書籍を、アイドックの「bookend(ブックエンド)」読み放題サービスを使い、こども向け電子図書館サービスの提供を開始する。
●4年後に140周年を迎える河出書房新社が新雑誌創刊・書店マージン30%企画を発表した。9月27日に全16号の季刊誌「スピン/spin」を創刊。表紙には毎号異なる紙を使い紙にまつわる連載も行う。小説やコラムなどを掲載し、出版の未来を考える媒体として発行する。
またマージン30%への挑戦企画として、復刊する『世界探検全集』(全16巻)と、『怪異の民俗学 新装復刻版』(全8巻)のいずれかで全巻予約をとった書店に、セット本体価格の8%を支払う「復刊チャレンジ88」を実施する。
●受験勉強のために、思春期に本(コミックを除く)を読まない日本の中高生。「青少年の体験活動等に関する意識調査」に、1カ月に読む本の数について、学年別の数値が出ている。「ほとんど読まない」の割合が、小4では18.5%に対し中2では29.5%、高2では58.8%に跳ね上がる。中学生の3割、高校生の6割が本を読んでいない。<夏の名作読書>企画を進める出版社も嘆くばかり。
出版部会
●物価高騰のあおりで本の用紙代も値上がり。原価上昇分をどの程度価格に反映させるのか、悩みは尽きない。それでも新刊は販価に反映させて解決できるが、悩ましいのは既刊書の増刷の際、値上げしたくても値上げできない事情がある。
まず定価を上げればカバーにある定価表示を変えねばらない。新しくカバーを印刷しなければならぬ。その印刷費がばかにならない。こういうジレンマに陥るのだ。
一方、電子書籍は用紙代がない分、価格への影響はない。まず増刷は電子書籍からということになる。また市場で本が品切れ状態だと国会図書館に判定されれば、3カ月以内に品切れを解消しなくてはならない。この対策にも頭が痛い。
●中国発の漫画作品が日本のコミック市場に本格参入。2003年5月に日本で初めて立ち上げた漫画配信アプリ「ブックライブ fun」は、中国の漫画プラットフォーム「快看(クワイカン)」と独占契約し、縦スクロールの“縦読み”でフルカラーの作品を、日本語に翻訳し、キャラクターや設定を日本向けに調整。きわめて好調だという。
特にいまの若いユーザーは、作品自体の面白さで判断しているので、どこの国の作品でも受け入れる。
●学研プラスが提供する小中学校向けサービス「学研スクールライブラリー」にある1,300タイトル以上の電子書籍を、アイドックの「bookend(ブックエンド)」読み放題サービスを使い、こども向け電子図書館サービスの提供を開始する。
●4年後に140周年を迎える河出書房新社が新雑誌創刊・書店マージン30%企画を発表した。9月27日に全16号の季刊誌「スピン/spin」を創刊。表紙には毎号異なる紙を使い紙にまつわる連載も行う。小説やコラムなどを掲載し、出版の未来を考える媒体として発行する。
またマージン30%への挑戦企画として、復刊する『世界探検全集』(全16巻)と、『怪異の民俗学 新装復刻版』(全8巻)のいずれかで全巻予約をとった書店に、セット本体価格の8%を支払う「復刊チャレンジ88」を実施する。
●受験勉強のために、思春期に本(コミックを除く)を読まない日本の中高生。「青少年の体験活動等に関する意識調査」に、1カ月に読む本の数について、学年別の数値が出ている。「ほとんど読まない」の割合が、小4では18.5%に対し中2では29.5%、高2では58.8%に跳ね上がる。中学生の3割、高校生の6割が本を読んでいない。<夏の名作読書>企画を進める出版社も嘆くばかり。
出版部会
2022年06月17日
【出版界の動き】返品問題の解決に向けて、大手3社と丸紅の連携=出版部会
●22年4月の出版物販売金額992億円(前年比7.5%減)、書籍547億円(同5.9%減)、雑誌445億円(同12.2%減)。月刊誌382億円(同9.0%減)、週刊誌63億円(同12.2%減)。雑誌の売り上げマイナスは11ヵ月連続、返品率に至っては45.2%の状態が続く。
●講談社・集英社・小学館と丸紅が連携して、出版物の返品による無駄な経費2千億円を削減するため、新刊4億冊分の配本や販売データなどを独自に分析し、書店ごとの需要を精緻に予測する流通モデルを作る。苦しくなる一方の書店経営に対して、出版社が主導して発行部数や配本・販売の構造にメスを入れ、効率化を図って出版業界の成長を目指す。
●小学館の売上高1057億円(前年比12.1%増)、7年ぶりに売上高1000億円台に。経常利益89億円(同23.4%増)、当期利益60億円(同5.7%増)の4期連続の黒字決算。
●楽天ブックネットワークの売上高477億円、純利益2億円。赤字から黒字へ転換。主に丸善ジュンク堂との取引終了、楽天ブックスへの移行、日販との仕入業務の提携、リーディングスタイルの解散などによる。
●日販GHDの売上高5050億円(前年比3.1%減)、純利益14億円(同43.0%減)。取次・小売事業が苦戦し減収・減益。日販単体の売上高4074億円(同3.0%減)、純利益4.8億円(同22.5%増)。105書店が閉店し取引書店2556店。全体の返品率34.5%。
●日書連の加盟書店数、前年度比84店減の2803店。26店の新規加入があるものの110店が脱退。プラスとなったのは宮城県(前年度比2店増)、岐阜県(同1店増)のみ。東京都(同14店減)など31都道府県で減少。
●和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)が3月末の発売から2週間で増刷を重ね総合ランキング第1位。メディアで紹介されて人気急上昇、特にリアル書店での売上が好調、男性にうけている。
出版部会
●講談社・集英社・小学館と丸紅が連携して、出版物の返品による無駄な経費2千億円を削減するため、新刊4億冊分の配本や販売データなどを独自に分析し、書店ごとの需要を精緻に予測する流通モデルを作る。苦しくなる一方の書店経営に対して、出版社が主導して発行部数や配本・販売の構造にメスを入れ、効率化を図って出版業界の成長を目指す。
●小学館の売上高1057億円(前年比12.1%増)、7年ぶりに売上高1000億円台に。経常利益89億円(同23.4%増)、当期利益60億円(同5.7%増)の4期連続の黒字決算。
●楽天ブックネットワークの売上高477億円、純利益2億円。赤字から黒字へ転換。主に丸善ジュンク堂との取引終了、楽天ブックスへの移行、日販との仕入業務の提携、リーディングスタイルの解散などによる。
●日販GHDの売上高5050億円(前年比3.1%減)、純利益14億円(同43.0%減)。取次・小売事業が苦戦し減収・減益。日販単体の売上高4074億円(同3.0%減)、純利益4.8億円(同22.5%増)。105書店が閉店し取引書店2556店。全体の返品率34.5%。
●日書連の加盟書店数、前年度比84店減の2803店。26店の新規加入があるものの110店が脱退。プラスとなったのは宮城県(前年度比2店増)、岐阜県(同1店増)のみ。東京都(同14店減)など31都道府県で減少。
●和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)が3月末の発売から2週間で増刷を重ね総合ランキング第1位。メディアで紹介されて人気急上昇、特にリアル書店での売上が好調、男性にうけている。
出版部会
2022年05月16日
【出版界の動き】続発する出版ジャーナリズムの根幹に関わる事態=出版部会
3月の出版物販売金額は1438億円(前年比6.0%減)、書籍944億円(同2.7%減)、雑誌494億円(同11.7%減)。月刊誌419億円(同12.4%減)、週刊誌75億円(同7.5%減)。雑誌の売り上げマイナスは10ヵ月連続、返品率に至っては40%を超える状態が続く。
出版ネッツが「原稿料10%の引き上げを」業界団体に初めて要望─「報酬が30年間上がっていない」事態がある。フリーランスの立場は非常に弱く、報酬引き上げの交渉はしづらかった。
出版社やネットメディアの社員編集者の給与は上がる以上、フリーランスだから10年前の水準でいいとはならない。また未払いトラブルも続出。口約束の発注が横行し、仕事に関する事前契約のズサンさが一因になっている。
出版協が「侮辱罪の厳罰化に反対する声明」─今回の侮辱罪改正法案は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」と規定しているだけで「侮辱」の判断基準が曖昧で、表現の自由が制限される恐れがある。
さらに近年、企業や個人が表現者に対して、「スラップ訴訟」といわれる「名誉棄損」を理由とした巨額の損害賠償請求訴訟や名誉毀損罪による刑事告訴・告発の事例が増えている。侮辱罪の厳罰化によって、名誉毀損罪と同様、本来尊重されるべき言論に対して刑事告訴・告発などが濫用され、捜査対象になる危険が拡大する。
個人に対するインターネット上の誹謗中傷をなくすためには、「発信者情報」の開示手続の簡素化などプロバイダ責任制限法の強化や、SNSなどのサービスを提供している運営者・管理者に対して、発信者情報の保存義務化・侮辱にあたる書き込みの削除要求に対する迅速な対応など、侮辱罪の厳罰化とは別の実効性のある対策を求めるべきである。
ロシア外務省、日本の雑誌編集長2人を入国禁止─「選択」編集人の湯浅次郎氏と「週刊文春」編集長・加藤晃彦氏を、入国を無期限で禁止すると発表。これまでに発表したロシアへの入国禁止対象者である岸田文雄首相ら日本の閣僚のほか、メディア関係者、ジャーナリスト、学者など計63人に追加。
アマゾンへの社会的批判が高まる─コロナ感染拡大により大幅な収益をあげたアマゾンのジェフ・ベゾスCEOは世界一の富豪となって、引退を発表したが、アマゾンに対する風当たりは厳しくなっている。
全米書店協会(ABA)は3月、アマゾンが独占企業として、「排他的・反競合的」なダンピング値付けの違反行為に手を染め、出版業の発展に有害な行動に出ていると厳しく告発した報告書を提出した。
アマゾンだけでなく、グーグルやフェイスブックといったIT企業も独禁法違反で裁かれ、解体か改善を迫られることになる。
出版業の巨大化を阻む動きも世界中で起きている。ビッグ5の一つであるサイモン&シュスターを最大手ペンギン・ランダムハウスが買収する話は、米国のみならず英国でも反対の声が挙がっている(大原ケイ「アメリカ出版業界」より)。
第3者がゲラ検閲する暴挙─「週刊ダイヤモンド」に掲載する安倍元首相へのインタビュー記事につき、朝日新聞の峯村健司編集委員が安倍氏の意向を受けて、発売前にゲラを見せるようダイヤモンド編集部に要求した。編集部は「編集権の侵害に相当する」と抗議し、それを受けた朝日新聞社は調査の上、峰村編集委員を停職1カ月の懲戒処分にした(4/7付け)。
インタビューを受けた本人が直接、掲載内容につき当該編集部に問い合わせるのならまだしも、第三者が発売前のゲラを閲読させるよう迫るなど、ジャーナリストとしての取材倫理に違反する行為は許されない。
出版部会
出版ネッツが「原稿料10%の引き上げを」業界団体に初めて要望─「報酬が30年間上がっていない」事態がある。フリーランスの立場は非常に弱く、報酬引き上げの交渉はしづらかった。
出版社やネットメディアの社員編集者の給与は上がる以上、フリーランスだから10年前の水準でいいとはならない。また未払いトラブルも続出。口約束の発注が横行し、仕事に関する事前契約のズサンさが一因になっている。
出版協が「侮辱罪の厳罰化に反対する声明」─今回の侮辱罪改正法案は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」と規定しているだけで「侮辱」の判断基準が曖昧で、表現の自由が制限される恐れがある。
さらに近年、企業や個人が表現者に対して、「スラップ訴訟」といわれる「名誉棄損」を理由とした巨額の損害賠償請求訴訟や名誉毀損罪による刑事告訴・告発の事例が増えている。侮辱罪の厳罰化によって、名誉毀損罪と同様、本来尊重されるべき言論に対して刑事告訴・告発などが濫用され、捜査対象になる危険が拡大する。
個人に対するインターネット上の誹謗中傷をなくすためには、「発信者情報」の開示手続の簡素化などプロバイダ責任制限法の強化や、SNSなどのサービスを提供している運営者・管理者に対して、発信者情報の保存義務化・侮辱にあたる書き込みの削除要求に対する迅速な対応など、侮辱罪の厳罰化とは別の実効性のある対策を求めるべきである。
ロシア外務省、日本の雑誌編集長2人を入国禁止─「選択」編集人の湯浅次郎氏と「週刊文春」編集長・加藤晃彦氏を、入国を無期限で禁止すると発表。これまでに発表したロシアへの入国禁止対象者である岸田文雄首相ら日本の閣僚のほか、メディア関係者、ジャーナリスト、学者など計63人に追加。
アマゾンへの社会的批判が高まる─コロナ感染拡大により大幅な収益をあげたアマゾンのジェフ・ベゾスCEOは世界一の富豪となって、引退を発表したが、アマゾンに対する風当たりは厳しくなっている。
全米書店協会(ABA)は3月、アマゾンが独占企業として、「排他的・反競合的」なダンピング値付けの違反行為に手を染め、出版業の発展に有害な行動に出ていると厳しく告発した報告書を提出した。
アマゾンだけでなく、グーグルやフェイスブックといったIT企業も独禁法違反で裁かれ、解体か改善を迫られることになる。
出版業の巨大化を阻む動きも世界中で起きている。ビッグ5の一つであるサイモン&シュスターを最大手ペンギン・ランダムハウスが買収する話は、米国のみならず英国でも反対の声が挙がっている(大原ケイ「アメリカ出版業界」より)。
第3者がゲラ検閲する暴挙─「週刊ダイヤモンド」に掲載する安倍元首相へのインタビュー記事につき、朝日新聞の峯村健司編集委員が安倍氏の意向を受けて、発売前にゲラを見せるようダイヤモンド編集部に要求した。編集部は「編集権の侵害に相当する」と抗議し、それを受けた朝日新聞社は調査の上、峰村編集委員を停職1カ月の懲戒処分にした(4/7付け)。
インタビューを受けた本人が直接、掲載内容につき当該編集部に問い合わせるのならまだしも、第三者が発売前のゲラを閲読させるよう迫るなど、ジャーナリストとしての取材倫理に違反する行為は許されない。
出版部会
2022年04月08日
【出版界の動き】ウクライナの都市名変更に対応が迫られる出版社=出版部会
★22年2月の出版物販売金額1079億円(前年比10.3%減)。書籍677億円(同5.7%減)、雑誌402億円(同17.0%減)。月刊誌335億円(同18.8%減)、週刊誌67億円(同6.4%減)。雑誌は6ヵ月連続2桁のマイナス。
★21年のコミック全体の販売金額6759億円(前年比10.3%増)の4年連続プラス、その内訳は紙のコミックス2645億円(同2.3%減)、電子コミックス4114億円(同20.3%増)。21年の出版物販売金額1兆2079億円の半分を超える。
★講談社の決算─売上高1707億7千万円(前年比17.8%増)、営業利益217億円(同35.6%増)、当期純利益155億6千万円(同43.0%増)の過去最高。
★出版協は4/1に、「サイバー警察局」を創設する警察法の改正に強い懸念を表明する声明を発表。サイバー領域での市民の個人情報保護の強化を求め、捜査情報の収集・管理・抹消に関する法律と、徹底した個人情報保護の法律を作る必要があり、早急な法律の整備を強く要求する。
★政府がウクライナの都市の呼称を、ウクライナ語読みの「キーウ」「チョルノービリ」に変更したため、地図や教科書の出版社が対応に追われている。その中で平凡社地図出版(東京)が製作する複数の地図では、すでに2019年ごろからウクライナ語読みに続けて括弧内にロシア語を併記するよう順次修正している。
★マンガの聖地・トキワ荘のある東京都豊島区南長崎に、マンガ×学びの拠点「マンガピット」が3/31にオープン。場所は低層の商業施設「味楽百貨店」内。原画を展示する「E Gallery」や書店「マンガナイトBOOKS」が併設されている。
★文庫本は低価格とサイズの小ささから、「ワンコイン」で購入というイメージが出来上がっていたが、この20年で平均価格は25%値上がり。一冊800円を突破。
出版科学研究所の調査によると、文庫本の税抜きの新刊平均価格は2021年に732円、2001年の587円から約25%上がった。税込みでは805円となり、今や1000円を超える文庫も海外ミステリ分野では当たり前になっている。
出版部会
★21年のコミック全体の販売金額6759億円(前年比10.3%増)の4年連続プラス、その内訳は紙のコミックス2645億円(同2.3%減)、電子コミックス4114億円(同20.3%増)。21年の出版物販売金額1兆2079億円の半分を超える。
★講談社の決算─売上高1707億7千万円(前年比17.8%増)、営業利益217億円(同35.6%増)、当期純利益155億6千万円(同43.0%増)の過去最高。
★出版協は4/1に、「サイバー警察局」を創設する警察法の改正に強い懸念を表明する声明を発表。サイバー領域での市民の個人情報保護の強化を求め、捜査情報の収集・管理・抹消に関する法律と、徹底した個人情報保護の法律を作る必要があり、早急な法律の整備を強く要求する。
★政府がウクライナの都市の呼称を、ウクライナ語読みの「キーウ」「チョルノービリ」に変更したため、地図や教科書の出版社が対応に追われている。その中で平凡社地図出版(東京)が製作する複数の地図では、すでに2019年ごろからウクライナ語読みに続けて括弧内にロシア語を併記するよう順次修正している。
★マンガの聖地・トキワ荘のある東京都豊島区南長崎に、マンガ×学びの拠点「マンガピット」が3/31にオープン。場所は低層の商業施設「味楽百貨店」内。原画を展示する「E Gallery」や書店「マンガナイトBOOKS」が併設されている。
★文庫本は低価格とサイズの小ささから、「ワンコイン」で購入というイメージが出来上がっていたが、この20年で平均価格は25%値上がり。一冊800円を突破。
出版科学研究所の調査によると、文庫本の税抜きの新刊平均価格は2021年に732円、2001年の587円から約25%上がった。税込みでは805円となり、今や1000円を超える文庫も海外ミステリ分野では当たり前になっている。
出版部会
2022年02月10日
【出版界の動き】電子出版物:売り上げ前年比18.6%増と電子図書館の利用増=出版部会
■2021年の年間出版物販売金額は、紙・電子合わせ1兆6742億円。紙出版物の販売金額1兆2080億円(同1.3%減)。内訳は書籍6804億円(前年比2.1%増)、雑誌5276億円(同5.4%減)。
電子出版物の販売金額4662億円(同18.6%増)。内訳はコミック4114億円(同20.3%増)、書籍449億円(同12.0%増)、雑誌99億円(同10.1%減)。電子コミックの急伸が止まらない。
■講談社、小学館、集英社、KADOKAWA4社は、海賊版サイトにコンテンツを送信・複製していたとし、米国のCDN事業者に4億6000万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴。
■<全国書店員と出版社コミック担当者が選んだおすすめコミック2022>の第1位─龍幸伸『ダンダダン』(集英社)。幽霊肯定派の女子校生と、同級生の怪奇現象オタクが繰り広げるドラマ。その疾走感、圧倒的画力で叩き込まれる戦闘シーンは圧巻!そこにラブコメとギャグまでぶち込む特盛のボリューム。
■昨年12月の出版物販売金額1030億円(前年比10.2%減)、書籍541億円(同2.0%減)、雑誌489億円(同17.8%減)。月刊誌427億円(同18.4%減)、週刊誌62億円(同14.0%減)。週刊誌の返品率46.2%。
■昭文社、希望退職者を募集─41歳以上の正社員に3月末をもっての退職者募集。コロナ禍の長期化で売上げが急減し、賞与の不支給・減給、休業に伴う雇用調整助成金の申請など手を打ったが、人員体制の適正化が不可欠と判断。19年2月に続く2度目の募集。前回80人の募集に96人が応募。昭文社HDの22年3月期連結予想は売上高53億円、純損失8億6000万円。
■電子図書館の利用者が急増─昭島、国立など9市導入。人気のある電子書籍は長期の予約待ちが常態化。多摩地域で最初に電子図書館を開設した八王子市では、オーディオブックの貸し出しも実施。プロの声優やナレーターの朗読で読書を楽しめる。ビジネス書や子育て・健康に関する本・文学など約6千点
出版部会
電子出版物の販売金額4662億円(同18.6%増)。内訳はコミック4114億円(同20.3%増)、書籍449億円(同12.0%増)、雑誌99億円(同10.1%減)。電子コミックの急伸が止まらない。
■講談社、小学館、集英社、KADOKAWA4社は、海賊版サイトにコンテンツを送信・複製していたとし、米国のCDN事業者に4億6000万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴。
■<全国書店員と出版社コミック担当者が選んだおすすめコミック2022>の第1位─龍幸伸『ダンダダン』(集英社)。幽霊肯定派の女子校生と、同級生の怪奇現象オタクが繰り広げるドラマ。その疾走感、圧倒的画力で叩き込まれる戦闘シーンは圧巻!そこにラブコメとギャグまでぶち込む特盛のボリューム。
■昨年12月の出版物販売金額1030億円(前年比10.2%減)、書籍541億円(同2.0%減)、雑誌489億円(同17.8%減)。月刊誌427億円(同18.4%減)、週刊誌62億円(同14.0%減)。週刊誌の返品率46.2%。
■昭文社、希望退職者を募集─41歳以上の正社員に3月末をもっての退職者募集。コロナ禍の長期化で売上げが急減し、賞与の不支給・減給、休業に伴う雇用調整助成金の申請など手を打ったが、人員体制の適正化が不可欠と判断。19年2月に続く2度目の募集。前回80人の募集に96人が応募。昭文社HDの22年3月期連結予想は売上高53億円、純損失8億6000万円。
■電子図書館の利用者が急増─昭島、国立など9市導入。人気のある電子書籍は長期の予約待ちが常態化。多摩地域で最初に電子図書館を開設した八王子市では、オーディオブックの貸し出しも実施。プロの声優やナレーターの朗読で読書を楽しめる。ビジネス書や子育て・健康に関する本・文学など約6千点
出版部会
2022年01月14日
【出版界の動き】年末年始の販売状況からトレンドを読む=出版部会
★21年11月の出版物販売金額955億円(前年比0.6%増)、書籍542億円(同11.0%増)、雑誌412億円(同10.4%減)、月刊誌344億円(同10.8%減)、週刊誌68億円(同8.1%減)。書籍の2ケタ増は、10年ぶりの改訂『総合百科事典ポプラティア第三版』(ポプラ社、全18巻セット)12万円で刊行による。21年11月までの出版物販売金額1兆1104億円(前年比0.4%減)。
★2021年の電子出版市場4889億円、22年も成長が持続。電子メディアが紙メディアと違うのは、「商品展示スペース」が不要なため、ユーザーが書店に行って探す必要はなく、容易にアクセスし購入できる。ラインアップは増える一方。しかも再販適用商品ではないので、値下げ販売ができる。
★2022年度の出版トレンドは、@埋もれていた名著の再発見と復刻が進む Aメディアミックス展開が拡大する B電子図書館の普及でコンテンツ供給が急増する C映像を活用したマーケティング活動が広がる─こうした流れが強まる。
★日販とトーハンの単体売上─日版単体は売上高2010億6500万円(前年比3.5%増)、営業利益4億3700万円、純利益3億4800万円と黒字転換。トーハン単体は売上高1994億9800万円(同10.1%増)、営業利益5億200万円、純利益2億7100万円(同70.6 %減)。両社とも取次事業が黒字化して入るが、グループ書店が苦戦しているのは明白。
★紀伊國屋書店の単体売上高978億9000万円(前年比0.3%減)、営業利益7億7300万円(同3.8%増)、純利益6億8800万円(同15.9%増)の14年連続黒字決算。
★有隣堂の売上高668億6600万円(前年比29.8%増)、営業利益8億4500万円(同228.1%増)、純利益3億7400万円と増収増益で、書籍や雑誌などの13部門中、11部門で前年実績を上回り、過去最高の売上高。
★CCCは2020年度の出版物販売金額1427億円の過去最高。店舗数1060店。だがCCCのフランチャイズのトップカルチャーは売上高264億700万円(前年比12.3%減)、純損失19億3900万円(前期は3億7100万円の純利益)。蔦屋書店の事業売上高257億2700万円(同12.7%減)。
出版部会
★2021年の電子出版市場4889億円、22年も成長が持続。電子メディアが紙メディアと違うのは、「商品展示スペース」が不要なため、ユーザーが書店に行って探す必要はなく、容易にアクセスし購入できる。ラインアップは増える一方。しかも再販適用商品ではないので、値下げ販売ができる。
★2022年度の出版トレンドは、@埋もれていた名著の再発見と復刻が進む Aメディアミックス展開が拡大する B電子図書館の普及でコンテンツ供給が急増する C映像を活用したマーケティング活動が広がる─こうした流れが強まる。
★日販とトーハンの単体売上─日版単体は売上高2010億6500万円(前年比3.5%増)、営業利益4億3700万円、純利益3億4800万円と黒字転換。トーハン単体は売上高1994億9800万円(同10.1%増)、営業利益5億200万円、純利益2億7100万円(同70.6 %減)。両社とも取次事業が黒字化して入るが、グループ書店が苦戦しているのは明白。
★紀伊國屋書店の単体売上高978億9000万円(前年比0.3%減)、営業利益7億7300万円(同3.8%増)、純利益6億8800万円(同15.9%増)の14年連続黒字決算。
★有隣堂の売上高668億6600万円(前年比29.8%増)、営業利益8億4500万円(同228.1%増)、純利益3億7400万円と増収増益で、書籍や雑誌などの13部門中、11部門で前年実績を上回り、過去最高の売上高。
★CCCは2020年度の出版物販売金額1427億円の過去最高。店舗数1060店。だがCCCのフランチャイズのトップカルチャーは売上高264億700万円(前年比12.3%減)、純損失19億3900万円(前期は3億7100万円の純利益)。蔦屋書店の事業売上高257億2700万円(同12.7%減)。
出版部会
2021年12月13日
【出版界の動き】女性著者の新鮮な作品が、若い読者の心をひきつける!
◆10月の出版物販売金額914億円(前年比8.7%減)。書籍514億円(同4.1%減)、雑誌399億円(同14.0%減)、月刊誌332億円(同13.1%減)、週刊誌67億円(同18.2%減)。雑誌のマイナスが大きい。コロナ巣ごもり需要はなくなり、21年の推定販売金額も前年マイナスが確実。
◆CCC蔦屋書店は子会社の蔦屋投資(上海)有限公司を通して、「上海前灘太古里 蔦屋書店」(約870坪)をオープン。同店は中国4号店目の「蔦屋書店」で、上海では2店目。
◆2021年度ヤフー主催の「ノンフィクション本大賞」は、上間陽子『海をあげる』(筑摩書房)。著者は琉球大学教授。今年の沖縄書店大賞の沖縄部門でも大賞を受賞。現在5万500部(8刷)。内容は、脅かされる沖縄での美しく優しい生活。幼い娘を抱えながら、理不尽な暴力に直面してなお、その目の光を失わない。ベストセラー『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』から3年、言葉に表せない苦しみを聞きとるようにして書かれた記録。
◆日販とトーハン、2021年ベストセラー発表─日販の総合1位:永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)は、学生から年配まで幅広い層に支持され、発行部数85万部(27刷)に。両社の総合2位:アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮社)、総合3位:宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)。
◆2021新語・流行語大賞(自由国民社が刊行の『現代用語の基礎知識』が選定)に、「リアル二刀流/ショータイム」が年間大賞に選ばれた。今季のアメリカン・リーグの最優秀選手となった大谷翔平選手にまつわる用語。大賞以外のトップ10には、「うっせぇわ」「親ガチャ」「ゴン攻め/ビッタビタ」「ジェンダー平等」「人流」「スギムライジング」「Z世代」「ぼったくり男爵」「黙食」に決定。
◆CCC蔦屋書店は子会社の蔦屋投資(上海)有限公司を通して、「上海前灘太古里 蔦屋書店」(約870坪)をオープン。同店は中国4号店目の「蔦屋書店」で、上海では2店目。
◆2021年度ヤフー主催の「ノンフィクション本大賞」は、上間陽子『海をあげる』(筑摩書房)。著者は琉球大学教授。今年の沖縄書店大賞の沖縄部門でも大賞を受賞。現在5万500部(8刷)。内容は、脅かされる沖縄での美しく優しい生活。幼い娘を抱えながら、理不尽な暴力に直面してなお、その目の光を失わない。ベストセラー『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』から3年、言葉に表せない苦しみを聞きとるようにして書かれた記録。
◆日販とトーハン、2021年ベストセラー発表─日販の総合1位:永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)は、学生から年配まで幅広い層に支持され、発行部数85万部(27刷)に。両社の総合2位:アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮社)、総合3位:宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)。
◆2021新語・流行語大賞(自由国民社が刊行の『現代用語の基礎知識』が選定)に、「リアル二刀流/ショータイム」が年間大賞に選ばれた。今季のアメリカン・リーグの最優秀選手となった大谷翔平選手にまつわる用語。大賞以外のトップ10には、「うっせぇわ」「親ガチャ」「ゴン攻め/ビッタビタ」「ジェンダー平等」「人流」「スギムライジング」「Z世代」「ぼったくり男爵」「黙食」に決定。
2021年11月12日
【出版界の動き】コロナ禍の巣ごもり需要が終わりマイナス成長に逆戻り
●出版界の状況は、コロナ禍による巣ごもり需要やコミック『鬼滅の刃』の神風的なベストセラーの余波が止み、6月から再び前年比減が続いている。
9月の出版物販売金額1102億円(前年比6.9%減)、書籍659億円(同3.8%減)・雑誌442億円(同11.1%減)。月刊誌372億円(同12.1%減)、週刊誌70億円(同5.6%減)。
●KADOKAWA、増収増益の中間連結決算─2022年の中間決算では、売上高1048億円(前年同期比7.4%増)、営業利益99億円(同26.6%増)、経常利益106億円(同30.3%増)、純利益71億円(同36.7%増)の増収増益。併せて中国テンセントグループと資本業務提携を結んだことを発表。
●各出版社イチオシの年末年始に向けた本や商材を、オンラインで一挙に説明する会を、11月17日〜18日の両日、13時〜17時に開催。期間中は常時Zoomミーティングが開かれ、入退はいつでも自由。
●累計200万部突破の大人気絵本シリーズの第9弾、工藤ノリコ『ノラネコぐんだん ラーメンやさん』(定価1320円・白泉社)が11月5日発売。またまた販売部数が伸びそう。
●「2021ユーキャン新語・流行語大賞」に30のノミネート語が決まる。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)が選ぶ同賞のノミネート語が、7人の選考委員により選出された。
今年の傾向は「長引くコロナ禍で、コミュニケーションが希薄になり、軽い言葉やあたたかみのない言葉が生まれてきている」という。ノミネート語トップ10は次の通り。
皆さんは、どれだけ理解できますか。
@「イカゲーム」 A「うっせぇわ」 B「ウマ娘」 C「SDGs」 D「NFT」 E「エペジーーン」 F「推し活」 G「親ガチャ」 H「カエル愛」 I「ゴン攻め/ビッタビタ」
9月の出版物販売金額1102億円(前年比6.9%減)、書籍659億円(同3.8%減)・雑誌442億円(同11.1%減)。月刊誌372億円(同12.1%減)、週刊誌70億円(同5.6%減)。
●KADOKAWA、増収増益の中間連結決算─2022年の中間決算では、売上高1048億円(前年同期比7.4%増)、営業利益99億円(同26.6%増)、経常利益106億円(同30.3%増)、純利益71億円(同36.7%増)の増収増益。併せて中国テンセントグループと資本業務提携を結んだことを発表。
●各出版社イチオシの年末年始に向けた本や商材を、オンラインで一挙に説明する会を、11月17日〜18日の両日、13時〜17時に開催。期間中は常時Zoomミーティングが開かれ、入退はいつでも自由。
●累計200万部突破の大人気絵本シリーズの第9弾、工藤ノリコ『ノラネコぐんだん ラーメンやさん』(定価1320円・白泉社)が11月5日発売。またまた販売部数が伸びそう。
●「2021ユーキャン新語・流行語大賞」に30のノミネート語が決まる。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)が選ぶ同賞のノミネート語が、7人の選考委員により選出された。
今年の傾向は「長引くコロナ禍で、コミュニケーションが希薄になり、軽い言葉やあたたかみのない言葉が生まれてきている」という。ノミネート語トップ10は次の通り。
皆さんは、どれだけ理解できますか。
@「イカゲーム」 A「うっせぇわ」 B「ウマ娘」 C「SDGs」 D「NFT」 E「エペジーーン」 F「推し活」 G「親ガチャ」 H「カエル愛」 I「ゴン攻め/ビッタビタ」
2021年10月08日
【出版界の動き】コロナ禍のなか、出版社・取次・アマゾンの攻防が激化
◆2021年上半期(1月から6月累計)の出版市場は8632億円(前年同期比+8.6%)、電子2187億円(同+24.1%)─紙の出版物販売金額6445億円(同+4.2%)と、2期連続で増加。この出版物販売額は取次ルートのみで、直販は含まれない。
書籍3686億円(同+4.8%)、雑誌2759億円(同+3.5%)、月刊誌(コミックス・ムック含む)2331億円(同+5.7%)、週刊誌428億円(同-7.2%)。
電子出版市場は、電子コミック1903億円(同+25.9%)、電子書籍231億円(同+20.9%)、電子雑誌53億円(同-11.7%)。
◆講談社とアマゾンの間での直接取引が始まる。当面の対象は「現代新書」「ブルーバックス」「学術文庫」の既刊本。すでにKADOKAWAを初め、直接取引の出版社は3600社に及び、アマゾンが取次を経ないで出版物を販売するシェアは急伸長する。
昨年(2020)の国内通販市場は10兆6300億円(前年比+20.7%)、そのうちアマゾンの売上高2兆1848億円(同+25.2%)と5分の1を占める。この伸びが出版界にも及ぶのは間違いない。
◆集英社の決算─売上高2010億円(前年比+31.5%)、過去最高額を記録。コミックス617億円、(同+43.1%)、デジタル・版権などの事業収入936.4億円(同+35.6%)、書籍178億円(同+72.4%)、雑誌200億円(同-3.8%)。
とりわけ電子コミックと映画関連の活況により、デジタル449億円(同+42.5%)、版権367億円(同+25.6%)の伸びが著しい。
◆文藝春秋のニュースサイト「文春オンライン」8月の純PV(ページビュー)が月間6億3094万PVに達し、17年のサイト開設以来、最高となった。
◆角川春樹事務所が、10/15に発売の稲田幸久『駆ける 少年騎馬遊撃隊』(第13回「角川春樹小説大賞」の受賞作)に対し、「書店マージン35%」を実施する。
来年4月発売のシリーズ「にほんの詩集」(全12巻)でも、「書店マージン35%」の販売施策を検討している。
◆三省堂書店・神保町本店のビル、及び隣接する第2、3アネックスビルが建て替え。総敷地面積530坪、延べ売り場面積1050坪の神保町本店は2022年3月下旬に営業を停止、4月から解体工事が始まる。
新ビル竣工は2026年頃。新ビルの規模・内容は未定。なお、この期間、仮店舗で営業を継続する。
書籍3686億円(同+4.8%)、雑誌2759億円(同+3.5%)、月刊誌(コミックス・ムック含む)2331億円(同+5.7%)、週刊誌428億円(同-7.2%)。
電子出版市場は、電子コミック1903億円(同+25.9%)、電子書籍231億円(同+20.9%)、電子雑誌53億円(同-11.7%)。
◆講談社とアマゾンの間での直接取引が始まる。当面の対象は「現代新書」「ブルーバックス」「学術文庫」の既刊本。すでにKADOKAWAを初め、直接取引の出版社は3600社に及び、アマゾンが取次を経ないで出版物を販売するシェアは急伸長する。
昨年(2020)の国内通販市場は10兆6300億円(前年比+20.7%)、そのうちアマゾンの売上高2兆1848億円(同+25.2%)と5分の1を占める。この伸びが出版界にも及ぶのは間違いない。
◆集英社の決算─売上高2010億円(前年比+31.5%)、過去最高額を記録。コミックス617億円、(同+43.1%)、デジタル・版権などの事業収入936.4億円(同+35.6%)、書籍178億円(同+72.4%)、雑誌200億円(同-3.8%)。
とりわけ電子コミックと映画関連の活況により、デジタル449億円(同+42.5%)、版権367億円(同+25.6%)の伸びが著しい。
◆文藝春秋のニュースサイト「文春オンライン」8月の純PV(ページビュー)が月間6億3094万PVに達し、17年のサイト開設以来、最高となった。
◆角川春樹事務所が、10/15に発売の稲田幸久『駆ける 少年騎馬遊撃隊』(第13回「角川春樹小説大賞」の受賞作)に対し、「書店マージン35%」を実施する。
来年4月発売のシリーズ「にほんの詩集」(全12巻)でも、「書店マージン35%」の販売施策を検討している。
◆三省堂書店・神保町本店のビル、及び隣接する第2、3アネックスビルが建て替え。総敷地面積530坪、延べ売り場面積1050坪の神保町本店は2022年3月下旬に営業を停止、4月から解体工事が始まる。
新ビル竣工は2026年頃。新ビルの規模・内容は未定。なお、この期間、仮店舗で営業を継続する。
2021年07月30日
【出版界の動き】コロナ禍と東京五輪のなかでの主な出来事=出版部会
■7/24発売のKADOKAWA「東京2020オリンピック開会式公式プログラム」を販売中止。全書店に即廃棄を要請。東京五輪のディレクター・小林賢太郎氏のインタビュー記事を掲載していた。差別発言で辞職したため。
■東京五輪のJOC参与であるKADOKAWA社長が、「くそなピアノの発表会」発言─夏野剛社長は21日、インターネットテレビ局「Abema TV」の番組内で、別の出演者から「子供の運動会や発表会が無観客である以上、東京五輪の無観客開催は頷ける」という見解に対し、「くそなピアノの発表会なんてどうでもいい、それを一緒にするあほな国民感情に、今年選挙があるから政府は乗らざるを得ない」などと語っていた。
批判を浴びた夏野社長は謝罪の上、8月から3か月間、役員報酬の20%を自主返上する。
■KADOKAWAは、『東京2020オリンピック公式記録集』を、10月下旬に発売する。その予約受付を書店などで始めた。同書は申込み期間に注文した人しか購入できない。本体9000円。申込み期限8月31日まで。
■「漫画村」運営者に懲役3年の有罪判決。だが2019年秋ごろより海賊版サイトが再び増加してきた。今でも海賊版サイトは750もあり、上位10サイトだけで、月刊アクセス数は2万4千回を超え、「漫画村」をはるかに上回っている。
海賊版サイトの多くはベトナムに拠点を置き、日本でコミックやアニメをいち早く入手し、翻訳するグループが存在しているようだ。
■3月刊の佐高信『佐藤優というタブー』(旬報社)の内容が、名誉毀損にあたるという理由で、佐藤優氏が佐高信氏と旬報社の木内洋育社長を相手取り、1064万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
佐藤優氏は「第一審判決が出るまで本件について、私のほうからマスメディアで発言することは差し控え」るとの「回答」をし、インタビューなどを拒否している。
■さいとう・たかを「ゴルゴ13」が、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」として、ギネス世界記録に認定。7月5日に単行本201巻が発売。秋本治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(集英社)の巻数を越えた。「ゴルゴ13」はいまも「ビッグコミック」(小学館)にて連載され、累積発行部数は3億部を超える
出版部会
■東京五輪のJOC参与であるKADOKAWA社長が、「くそなピアノの発表会」発言─夏野剛社長は21日、インターネットテレビ局「Abema TV」の番組内で、別の出演者から「子供の運動会や発表会が無観客である以上、東京五輪の無観客開催は頷ける」という見解に対し、「くそなピアノの発表会なんてどうでもいい、それを一緒にするあほな国民感情に、今年選挙があるから政府は乗らざるを得ない」などと語っていた。
批判を浴びた夏野社長は謝罪の上、8月から3か月間、役員報酬の20%を自主返上する。
■KADOKAWAは、『東京2020オリンピック公式記録集』を、10月下旬に発売する。その予約受付を書店などで始めた。同書は申込み期間に注文した人しか購入できない。本体9000円。申込み期限8月31日まで。
■「漫画村」運営者に懲役3年の有罪判決。だが2019年秋ごろより海賊版サイトが再び増加してきた。今でも海賊版サイトは750もあり、上位10サイトだけで、月刊アクセス数は2万4千回を超え、「漫画村」をはるかに上回っている。
海賊版サイトの多くはベトナムに拠点を置き、日本でコミックやアニメをいち早く入手し、翻訳するグループが存在しているようだ。
■3月刊の佐高信『佐藤優というタブー』(旬報社)の内容が、名誉毀損にあたるという理由で、佐藤優氏が佐高信氏と旬報社の木内洋育社長を相手取り、1064万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
佐藤優氏は「第一審判決が出るまで本件について、私のほうからマスメディアで発言することは差し控え」るとの「回答」をし、インタビューなどを拒否している。
■さいとう・たかを「ゴルゴ13」が、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」として、ギネス世界記録に認定。7月5日に単行本201巻が発売。秋本治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(集英社)の巻数を越えた。「ゴルゴ13」はいまも「ビッグコミック」(小学館)にて連載され、累積発行部数は3億部を超える
出版部会
2021年05月29日
【出版】「赤狩り」を総括 毎日新聞記者OBらが記録集=明珍美紀
毎日新聞のOBらが企画した記録集「検証 良心の自由 レッド・パージ70年」が刊行され、記念の集いがこの春、東京・水道橋のキッチン付きレンタルスペース「余白」で行われた。
副題は「新聞の罪と居直り―毎日新聞を手始めに―」。昨年は、マッカーサーの反共声明(1950年)に端を発するレッド・パージから70年。それを機に元毎日新聞労組委員長の大住広人さん(83)=元社会部記者=が中心となって執筆し、毎日の関係者と朝日、共同のOBらが寄稿した。
前半の「追放された人間像」の章では、元政治部の嶌信正さん(元毎日記者で経済ジャーナリスト、嶌信彦さんの父)、速記者から社会部を経て政治部に移った小林登美枝さん(その後は女性史研究家として活動)ら4人(いずれも故人)に焦点を当てる。小林さんの夫も元記者で解雇を通告された一人だ。
当時、新聞、通信、放送の49社、約700人がパージの対象になった。解雇撤回闘争が始まり、横断的な組織として「言論弾圧反対同盟」が結成された。有楽町駅をはさんで北口に毎日、南口に朝日の社屋があり、さかんにビラまきが行われたという。けれども会社側は「GHQや日本政府を意識しての点数稼ぎに懸命だったと言わざるを得ない」と大住さん。記録集には新聞労働者への弾圧の過程が記される。
レッド・パージに関しては60年代から一部関係者による発掘、調査が進められている。だが、「人権・報道に敏感であるべき新聞がきちんと総括をしてこなかった」と記録集の発案者で元毎日労組書記長の福島清さん(82)は言う。
私は生前の小林登美枝さんから話を聞き、朝日新聞の「朝日RP(レッドパージ)の会」(すでに解散)の年一回の会合にも参加していた。福島さんの言葉は、まさに現役記者に向けられたものだと受け止めている。
記録集は、福島さんが事務局を務める「北大生・宮澤弘幸『スパイ冤罪事件』の真相を広める会」が刊行。一冊2000円。問い合わせは千代田区労協(03・3264・2905)。
明珍美紀(元新聞労連委員長・毎日新聞記者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年4月25日号
2021年03月26日
【出版界の動き】「巣ごもり」で高まる出版需要とアマゾン膨張
コロナ禍でも出版界の売り上げが好調─2020年の紙と電子を合わせた出版市場は1兆6168億円(前年比4.8%増)。紙は1兆2237億円(同1.0%減)、そのうち書籍6661億円(同0.9%減)、雑誌5576億円(同1.1%減)だが、電子出版3931億円(同28.0%増)の効果で、2年連続のプラス成長となった。
コロナ禍の「巣ごもり」需要を反映し、書籍は学参・児童書の大幅な伸長に加え、文芸書、ビジネス書などの躍進が目立つ。コミックは『鬼滅の刃』(集英社)が爆発的なヒット、全23巻で累計1億5千万部、この1年間だけで1億1千万部・500億円の売り上げだ。
また電子コミックが急伸長(同32%増)し、コミック市場は紙と電子を合わせ6126億円となった。
大手出版社の増収増益─講談社は売上高1450億円(前年比6.7%増)、純利益109億円(同50.4%増)の大幅増益。集英社は売上高1529億円 (同14.7%増)、当期純利益209億円(同112%増)。『鬼滅の刃』の大ヒットで、コロナ禍を吹き飛ばす好決算の原動力となった。
出版流通の危機─日販とトーハンによる「物流協業」の一つとして、雑誌の返品業務を埼玉・蓮田市の共同センターで実施する。併せて出版社に物流コスト負担を要請。またオンライン書店「楽天ブックス」が、千葉・市川市にある物流センターで稼働。午前中に注文すると翌日に届く「あす楽」サービスの対象商品も拡大させる。
出版社や取次・書店の間でSkypeやZoomを使ったオンライン商談が進む。
アマゾン膨張─アマゾンが日本国内で売上げた2019年度の販売額は1兆7443億円。アマゾンの出版物販売額は3000億円近くとなる。いまやアマゾンは書籍流通で約2割のシェアを占め、KADOKAWAを始めとして、直接取引出版社は3631社(前年比689社増)、取次機能も果たすようになった。
さらにアマゾンは、書店から注文のあった出版物の卸し事業にまで参入する。そのため物流拠点を府中、上尾、久喜、坂戸の4か所10万坪を開設し計21拠点に増やす。
この影響を最も受けたのが出版業界で、とりわけ書店は経営が厳しく閉店・休店が続き、2020年に9762店(前年比422店の減少)、ついに1万店を切った。
出版物と外税表示─4月1日から消費税額を含めた「総額表示制度」が義務化されることに対し、出版協は消費税の「外税表示」の恒久化を要望。「再販商品である出版物については、消費税率改訂のたびに事業者に新たな諸費用・負担がかかり、在庫書籍の絶版化を再び招きかねず、読者・消費者にとって最大の文化的不利益となる」との理由から、総額表示に反対の意思を表明していた。
コロナ禍の「巣ごもり」需要を反映し、書籍は学参・児童書の大幅な伸長に加え、文芸書、ビジネス書などの躍進が目立つ。コミックは『鬼滅の刃』(集英社)が爆発的なヒット、全23巻で累計1億5千万部、この1年間だけで1億1千万部・500億円の売り上げだ。
また電子コミックが急伸長(同32%増)し、コミック市場は紙と電子を合わせ6126億円となった。
大手出版社の増収増益─講談社は売上高1450億円(前年比6.7%増)、純利益109億円(同50.4%増)の大幅増益。集英社は売上高1529億円 (同14.7%増)、当期純利益209億円(同112%増)。『鬼滅の刃』の大ヒットで、コロナ禍を吹き飛ばす好決算の原動力となった。
出版流通の危機─日販とトーハンによる「物流協業」の一つとして、雑誌の返品業務を埼玉・蓮田市の共同センターで実施する。併せて出版社に物流コスト負担を要請。またオンライン書店「楽天ブックス」が、千葉・市川市にある物流センターで稼働。午前中に注文すると翌日に届く「あす楽」サービスの対象商品も拡大させる。
出版社や取次・書店の間でSkypeやZoomを使ったオンライン商談が進む。
アマゾン膨張─アマゾンが日本国内で売上げた2019年度の販売額は1兆7443億円。アマゾンの出版物販売額は3000億円近くとなる。いまやアマゾンは書籍流通で約2割のシェアを占め、KADOKAWAを始めとして、直接取引出版社は3631社(前年比689社増)、取次機能も果たすようになった。
さらにアマゾンは、書店から注文のあった出版物の卸し事業にまで参入する。そのため物流拠点を府中、上尾、久喜、坂戸の4か所10万坪を開設し計21拠点に増やす。
この影響を最も受けたのが出版業界で、とりわけ書店は経営が厳しく閉店・休店が続き、2020年に9762店(前年比422店の減少)、ついに1万店を切った。
出版物と外税表示─4月1日から消費税額を含めた「総額表示制度」が義務化されることに対し、出版協は消費税の「外税表示」の恒久化を要望。「再販商品である出版物については、消費税率改訂のたびに事業者に新たな諸費用・負担がかかり、在庫書籍の絶版化を再び招きかねず、読者・消費者にとって最大の文化的不利益となる」との理由から、総額表示に反対の意思を表明していた。
2021年01月20日
書籍 4月から総額表示へ 切り替え費用 出版社負担 絶版本増え出版文化は衰退=橋詰雅博

出版界が大きな問題にブチ当たっている。紙の書籍などの出版物の価格は消費税額入り総額表示の義務づけが来年4月から復活し実施されようとしているからだ。
総額表示が初めて義務化された2004年(それ以前は本体+税の外税表示が多かった)以降、多くの出版社は書籍に挟み込まれるスリップの上部に総額を表示することで対応した。
しかし出版社を中心とした広範な運動もあって外税表示が13年10月から認められたものの、政府は適用期限を21年3月末までとした。
となると外税表示の本のカバーや帯などを総額表示に切り替えなければならず、その費用は出版社の負担に。さらに波紋は広がる。費用削減のため絶版になる書籍が増える。負担に耐えられない出版社はつぶれる。出版社の9割は中小零細企業だ。倒産の影響で書き手は仕事を失う。費用増は新刊本の価格アップにはね返る。
出版界はこぞって外税表示の継続を政府に求めている。大手出版社などが加盟する日本書籍出版協会らは11月中旬に財務省を訪れ「総額表示の義務免除措置を、四月一日以降も継続してほしい」と要望書を提出した。
事の発端は30年前の1989年の消費税率3%の導入だ。出版物も総額表示を受け入れた。このとき約2万冊が絶版となった。
この経緯などについて、約70の中小出版社でつくる日本出版者(注:『社』ではありません)協議会(出版協)会長の水野久さんが説明する。
「当時、総額表示は義務ではなかった。ただし公正取引委員会が総額表示を強力に指導したので、各業界はそれに従った。出版協(当時は流対協)は強制した公取委を訴える行政訴訟を提起した。最高裁で敗訴確定したが、判決で『公取委の指導は法律に基づかず、原告側は勝手に総額表示をした』と述べた。8年に及ぶこの民事裁判を糧として、97年の消費税率5%アップの際、ほとんどの出版社は外税表示を取り入れた。罰則がないので、今日まで出版協加盟社の出版物は外税表示を貫いている。違法と分かっていますが……」
総額表示が義務づけられる4月以降はどうするのか。
「消費税率がこの先上がる可能性があり、外税表示の上にシールを貼るなど費用もかかるので総額表示はしません。外税表示の書籍を差別せずに扱ってほしいと取次企業と書店に要請します」(水野さん)
一方ではなんらかの手を打つ出版社も出てきそうだ。
政府は消費者が求めていると説明するが、これまで外税表示で混乱はなかった。出版文化を衰退に追いやる総額表示はやめるべきである。とはいえ政府は外税表示の継続を認めないようだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号