2020年11月20日

【出版会の動き】 出版物には消費税「外税表示」の恒久化を=出版部会

■出版協は「外税表示」の恒久化を要望し、中小出版社が多い千代田区議会に陳情。来年4月1日から消費税額を含めた「総額表示制度」が義務化されることに対し、「再販商品である出版物については、消費税率改訂のたびに事業者に新たな諸費用・負担がかかり、在庫書籍の絶版化を再び招きかねず、読者・消費者にとって最大の文化的不利益となる」との理由から、総額表示に反対の意思を表明している。

■9月の書籍・雑誌販売金額1183億円(前年比0.5%増)、書籍685億円(同0.3%増)・雑誌498億円(同0.8%増)。月刊誌423億円(同3.6%増)、週刊誌74億円(同12.7%減)。返品率は書籍31.7%、雑誌37.5%、月刊誌36.5%、週刊誌42.4%。
池井戸潤『半沢直樹 アルルカンと道化師』(講談社)初版30万部、馳星周『少年と犬』(文藝春秋)がヒット。

■アマゾンジャパンが仕入れた書籍を版元へ返品するに際し、その返品量の多さに加え本の汚損が激しく、苦情が殺到している。このほど出版協は商品の破損につながる返品の仕方に抗議し、丁寧に本を扱い返品するよう要望書を提出した。

■オンライン書店「楽天ブックス」が、千葉・市川市にある物流センターで稼働。業務自動化の新システムを導入し、人員による作業工程を約30%削減した倉庫運営に着手。来年夏までに、同市内の既存2施設を新施設へ集約する。在庫保管量は約1.5倍、1時間あたりの出荷件数は約1.3倍に増強。午前中に注文すると翌日に届く「あす楽」サービスの対象商品も拡大させる。

■「ギフトブック・キャンペーン」が、11月1日〜12月末まで2カ月間、全国の書店で開催される。著名人34人が選んだ「贈りたい本」「読んでもらいたい本」102冊を掲載した<ギフトブック・カタログ2020―2021>20万部を販売する。キャンペーンに書店など約1500店が参加する
 出版部会
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2020年10月12日

【出版】 コロナ禍で激変する業界の動きに注目 

◆8月の書籍・雑誌販売額840億円(前年比1.1%減)。書籍433億円(同4.6%増)、雑誌406億円(同6.5%減)。月刊誌335億円(同6.8%減)、週刊誌71億円(同5.1%減)。返品率は書籍37.2%、雑誌40.1%、月刊誌39.9%、週刊誌40. 8%。
◆8月の書店閉店49店、7月14店に比べ増加─TSUTAYA(蔦屋書店)2店、未来屋3店、文教堂2店、くまざわ書店2店、書店とらのあな4店。
◆アマゾンジャパンが物流拠点を新たに府中9400坪、上尾2万2600坪、久喜4万5800坪、坂戸2万3500坪を開設し、合わせて21拠点となる。
◆集英社決算─売上高1529億400万円(前年比14.7%増)、当期純利益209億4000万円(同112.0%増)。雑誌638億9700万円(同24.4%増)、書籍103億2300万円(同16.4%減)。『鬼滅の刃』の大ヒット20巻で5000万部を発行、コミックスの売り上げ431億1400万円(同52.3%増)、コロナ禍を吹き飛ばす好決算の原動力となった。
◆光文社決算─総売上高184億7700万円(前年比9.0%減)、雑誌60億7900万円(同8.1%減)、書籍27億7800万円(同9.3減)、当期純損失24億200万円。2年ぶりの損失となった。とりわけ雑誌5月号が発売できず、合併号に加えて書店休業も相乗し、出広も減少が大きい。
◆出版協は「外税表示」の恒久化を要望。来年4月1日から消費税額を含めた「総額表示制度」が義務化されることに対し、「再販商品である出版物については、消費税率改訂のたびに事業者に新たな諸費用・負担がかかり、在庫書籍の絶版化を再び招きかねず、読者・消費者にとって最大の文化的不利益となる」との理由から、総額表示に反対の意思を表明している。
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2020年04月06日

【月刊マスコミ評・出版】 政治のウソを見逃さないを貫く=荒屋敷 宏

 「雑誌ジャーナリズムの復権宣言!」の帯を「サンデー毎日」が目次に掲げたのは、2019年1月6日・13日合併号だった。高村薫さんの時評連載が始動したのも同号で、初回の見出しは「政治の嘘 見逃すまい」だった。同誌「編集長後記」によると、「決意の言葉を抱きしめる思いで、巻頭特集として掲載」したという。
 同年1月20日号で「『報道・評論・読物』の復権!」となったものの、同年1月27日号から目次に「雑誌ジャーナリズムの復権!」の帯が躍り始めた。同誌が1年3カ月以上もキャンペーンを続けていることに驚く。
 手元にある「サンデー毎日」2020年3月29日号を見ると、鈴木哲夫さんの「安倍政権の大ウソを見破れ」をはじめ、内田樹さんの「民主主義を目指さない社会 なぜ日本の統治機構が崩れ始めているか」など、初心を忘れていないことがわかる。
 大阪日日新聞記者の相澤冬樹さんのスクープには驚かされた。発表された媒体は、「週刊文春」3月26日号だったが、森友事件の公文書改ざんを強要されて2年前に自ら命を絶った近畿財務局職員・赤木俊夫さんの遺書の全文公開である。このスクープのおかげで発行部数53万部の「週刊文春」は約2年半ぶりに完売したという。「週刊文春」が「隠蔽の安倍政権」追及を加速させるきっかけになるだろうか。
 心を動かされるのは、赤木俊夫さんの「手記」を入手できた経過である。相澤さんによると、取材を避けていたはずの赤木さんの妻は、相澤さんに会うなり、カバンから数枚の紙を取り出したという。妻は、夫が残した「手記」を相澤さんに託して、そのまま夫の後を追うつもりだったというから衝撃的である。
 相澤さんが赤木さんの遺書でもある「手記」の入手に当初、失敗した経過が生々しい。赤木さんの妻は「興奮する私の様子を見て『手記』を託すのをやめ、同時に命を絶つのもやめた。つまり私は重要文書入手という記者の仕事をしくじった」という。が、妻の自死を思いとどまらせることができて、「けがの功名≠あげていたことになる。人生何が幸いするかわからない」との述懐は、人の命を左右するスクープの裏事情を伝えている。
 政治のウソを見逃すまいとの思いは、NHK司法キャップ当時から森友事件を追及していた相澤さんにもあるはずだ。彼の著書『安倍官邸 vs NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)に詳しい。初心忘るべからず。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年04月03日

反権力はいけない? 記者は国民の代表じゃない? 「反ジャーナリズム本」出版相次ぐ これでは社会的責任の放棄=編集部

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 メディアが政府を批判する力を失い、国民の声を伝えなくなったら、何が起きるのか? いまメディアのあり方が問われている中で、正面からジャーナリズムのあり方を批判する本が相次いで出版されている。
 代表的なのは、2月1日出版の「『新聞記者』という欺瞞―『国民の代表』発言の意味を改めて問う」(安積明子著、ワニブックス)、1月20日出版の「『反権力』は正義ですか―ラジオニュースの現場から」(飯田浩司著、新潮新書)。
 2冊に共通するのは、これまでのジャーナリズムが「当然」と考え、それが社会的責任だと考えられてきた「反権力」と「国民の代表」に異論を提示していることだ。
望月記者攻撃
  特に、安積本では、官邸の記者会見で話題になった望月衣塑子記者(写真)と東京新聞の主張に疑問を投げかけ、攻撃していることが目立つ。
 「果たして新聞記者は『国民の代表』なのか」「新聞記者は何をもって『国民の代表』といえるのだろうか。国民からどんな付託を得たのだろうか」「新聞記者を国民の代表とするのなら、新聞社は容易に配置転換できなくなる」「このように考えると『記者は国民の代表だ』とする東京新聞が、いかに自分たちだけが特権的立場でいるという前提に立ち、珍妙な論理を展開しているかがよくわかる」
 「本質を見落として、ひたすら政権を批判するだけのマスコミこそが、日本の終焉の原因とは言えまいか」「さらに怖いのは『反権力』という点だけでもって同調する人々だ。彼らは彼らが主張する『権力の被害者』であることにとどまらず、国民の知る権利を阻害する『加害者』化していく危険性を孕んでいる」
自己陶酔の物語
 飯田本は、安積本とは少し違って、「反権力」という形で提起されている問題へのいくつかの疑問を書いている。
 この本の帯では「『マスコミの使命は権力と闘うことだ』という言葉は本来、民主主義を守るために必要な倫理観によって調査報道を行うジャーナリズムの精神を体現したものと私は理解しています。
 ところが、それがいつのまにか『権力と闘う自分たちの物語』にすり替わっているように見えてなりません」と書き、「私は、この「権力と戦う」という言葉が本来の精神を失ってそれ自体が目的化し、マスコミ報道から“是々非々”という姿勢を奪い、自らを闘士に据えた陶酔の物語に引きずり込んでいるようにも見えてしまうのです」と述べている。
 望月記者に関しては、著書、「新聞記者」が原案の映画「新聞記者」(藤井道人監督)が「第43回日本アカデミー賞」の最優秀作品賞を受賞、併せて、女性記者役のシム・ウンギョン(25)が最優秀主演女優賞、エリート官僚役の松坂桃李(31)が最優秀主演男優賞を獲得。また、関連して、森達也監督が「i新聞記者ドキュメント」を発表、昨年の第32回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門で作品賞を受賞したりしている。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年03月28日

ヘイト本 氾濫の舞台裏 加害の自覚ない出版社・取次・書店 最新著で問題点指摘の永江さんが語る=土居秀夫

 
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 嫌韓反中など、差別・蔑視をあおる本が書店に数多く並ぶようになって久しい。出版部会ではその背景を探ろうと、昨年12月に刊行された『私は本屋が好きでした』でヘイト本の舞台裏を描き出したライターの永江朗さんを招き、「なぜヘイト本が作られ売れるのか」と題した例会を2月21日、都内で開催した。
 冒頭、永江さんは、ヘイト本という言葉は使うべきではない。本人が変えられない属性への差別を扇動する憎悪表現というべきだろう、と前置きをして講演に入った。
 『私は本屋が・・』が企画されたのは5年前。その時点でヘイト本のブームは去っていた感があったが、ケント・ギルバートや百田尚樹という新たな書き手が登場。彼らによって差別・扇動本の受け止め方が変わったと、永江さんはいう。安倍晋三政権下で韓国との関係が悪化し、ワイドショーとヘイト本がそれを補強する形になったのだ。
本を選べない
 永江さんの取材は、ヘイト本が消費される場=書店から始められた。その現場はパートやアルバイトが多いうえに、取次が配本した本を売るだけで、書店員は本を選択する意識は薄く責任感はない。取次店は本の内容には触れないのが不文律で、これも責任を取らない。
 一方、作り手の編集者は世の中の見方の一つを本にしているという感覚で、それによって傷つく人の存在がわからず、自らの加害者性を問わない。「出版界はアイヒマンだらけ」すなわち自分がしていることの先に何が起きるのか理解しない。それは想像力の欠如だと永江さんは語気を強めた。
 当事者意識の希薄化の根底には労働疎外がある。IT化と派遣など非正規雇用の増大と下請化によって、編集現場は様変わりした。その中でリスクを減らそうと「柳の下のドジョウ」を狙った本や確実な読者層(中高年男性)のいるヘイト本が生まれたのではないか、と永江さんは指摘する。
 1960年代以降、市場は縮小したのに、70年頃の書籍新刊点数約2万点が2000年代前半には約8万点に。その結果、自転車操業と現場の疲弊が進行、作家も本が売れないことでブックオフや図書館を目の敵にするが、問題は出版業界にある。
 それは著書の中心的テーマである、書店が本を選べない流通システムだ。店頭に並ぶ本は、取次がパターンやランクに基づいて送りつけたものなのだが、そのことを知る人は少ない。
閉塞感背景に
 ヘイト本の社会的背景について永江さんは、90年代のバブル崩壊後の不況、少子化、高齢化などによって閉塞感が増したのではという。韓国の発展、中国の台頭への嫉視があり、不安定化でナショナリズムに頼るところに、第一次大戦後のドイツのナチ化と同じマインドがあると指摘した。
 そして、啓蒙ではヘイト本の状況を変えることはできない。業界の下部構造を変えないといけない、と強調し、小さな書店や出版社が増えていることに未来への希望を見出したいと語った。
 最後に、『私は本屋が・・』を書いた後も、法的規制の必要性については揺れ動いていると心中を述べ、講演を終えた。
 講演後の質疑では、読者層、ヘイト本への批判の必要性、出版再販制の是非、出版人の倫理観など多様な視点から議論が交わされた
 土居秀夫
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年02月05日

【月刊マスコミ評・出版】 ルポ「コンビニ絶望経営」に注目=荒屋敷 宏

 第2次以降安倍内閣は、わずか7年間に消費税率5%から8%に、さらに10%への2度にわたる増税で合計13兆円もの大増税を強行した。2020年の日本経済は、「令和不況」の足音が早くも聞こえてきている。
 ジャーナリストの斎藤貴男氏が「世界」(岩波書店)1月号と2月号に発表したルポ「コンビニ絶望経営」(上・下)に注目した。「セブン−イレブン」東日本橋一丁目店のオーナー店長の死の謎を追うところから始まる。店長は、「9年間、365日24時間営業の店を年中無休で切り盛りし、多額の借金を背負った挙げ句、最愛の息子を失い、ついには縁もゆかりもない土地で、非業の死を遂げた」という。
 コンビニ経営の実情は、悲惨である。コンビニオーナーの死亡率が他の業種に比べて異常に高いという。妻が朝7時から夜10時、夫が夕方6時から翌朝8時、長男や次男も駆り出す家族経営となり、「家族全員が販売期限の切れた廃棄弁当を食べ、仕事の合間を縫っては、バックヤードに敷いた段ボールで仮眠をとった」との実情は、すさまじい。
 コンビニの本部社員が商品発注の締め切り時間ギリギリにやってきて、恵方巻などを「無断発注」し、大量仕入れを強要する等々。今年も予想される恵方巻の大量廃棄を生み出しているのは、コンビニ本部なのだ。加盟店の向かいに加盟店を出店させて、「共食い」を生み出すのもコンビニ本部。斎藤氏は、コンビニ店主が消費税の納税額分を回転資金に流用してしまいがちであることを指摘している。
 フランチャイズ契約とは、斎藤氏の言葉を借りれば、「本部による加盟店の一方的な搾取」「奴隷契約」だ。斎藤氏は、「日本にはフランチャイズ契約をきちんと規制する法整備がなされていない現実をご存じか」と提起している。本部に反乱を起こしたオーナーや普通の小売業と異なる「コンビニ会計」の話は、「世界」2月号に登場する。
 ほかに、読み応えがあったのは、「週刊朝日」1月17日号、元文部科学事務次官の前川喜平氏と作家の桐野夏生氏の対談「若者荒廃に危機感 現代の深層に何が?」だった。なぜ荒廃しているのか。桐野氏が「一つの大きなほころびの中で、若い女性も男性もあがいているような感じがするんですよ」と言えば、前川氏は「私が非常に危機感を抱いているのが、国全体として人を大切にしない政治がずっと続いていることです」と語る。現実をいかにリアルに見るか。課題は、そこにあると思う。
 荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2017年09月16日

≪おすすめ本≫チューリップテレビ取材班『富山市議はなぜ14人も辞めたのか─政務活動費の闇を追う』地域メディア各社が連帯して取材し、調査報道の重要性を説く実践報告=鈴木賀津彦(東京新聞)

 本書を教科書にして調査報道の講座を開いたら実り多い議論ができるなあと、イメージを膨らませている。取材し報道する意味について、誰もが素直に理解し共感できる実践報告≠セからだ。
「富山市議会における政務活動費の不正を明らかにした調査報道」で今年のJCJ賞を受賞したチューリップテレビ(富山県)の取材班が、どのように取材したのか、素直に自らの手の内を明かし、緊迫した取材時の緊張や不安なども含めて詳述している。

 本書で気付かされるのは、富山の地域メディア各社が情報公開制度を使ってそれぞれ独自の調査・取材を重ね特ダネを抜いたり抜かれたり、しのぎを削りながらも、議員の不正を浮き彫りにし追及する点では連帯して取材している姿である。
 ジャーナリズムの理念などが特に書いてある訳ではないが、若い記者たちの取材への意気込みなどから、ローカルメディアが今、地域にとっていかに重要な役割を担っているのかが実感できる。
 冒頭に「調査報道の教科書」と述べたが、実は一方で、本書を全国の自治体職員や議会関係者にも熟読してほしいと強く期待している。各地で議会改革が叫ばれ、相次いで議会基本条例が制定されたが、形だけに終わっている現状があるだけに、二元代表制である地方議会の在り方、行政との関係などを変えていく起爆剤としても、本書をぜひPRしてほしい。

 さて、この本を読めば実際のニュースや番組が見たくなる。次に、映像DVD付き書籍にして販売できないだろうか。
(岩波書店1800円)
「富山市議はなぜ…」.jpg


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2017年08月25日

《出版界の動き》ちっぽけな出版の世界にも露骨に現われてきた「一強支配」は、この国の「文化の危機」でもある=田悟恒雄

 「書店ゼロの自治体、2割強に」という、24日付の朝日新聞記事には、商売柄、さすがに驚きを隠せません。
 「書店ゼロ自治体」は4年前より1割増え、北海道58、長野41、福島28… いやいや、もう結構。なかでも、従来から読書人口が多いと見られてきた信州の「41自治体」は、ショッキングでした。
 書店調査会社アルメディアの調べでは、この5月現在、全国の書店数は1万2526軒で、2000年の2万1654軒から「4割強も」減っているとのこと。
 お題目のように唱えられてきた「活字離れ」はもとより、「読書人口」どころか、そもそもの「人口」が減っている。そして何より、雑誌はインターネットに食われ、書籍も、アマゾンなどネット書店の鼻息の荒さを前に為す術を失ってしまった。

 そして、最盛期(1986年)の半分ほどに落ち込んでしまったパイをめぐり、大手書店チェーンによる「仁義なき出店競争」が展開され、「街の書店」は次々弾き出されるばかり。
 その結末が、「書店ゼロ自治体」となるわけです。
 そんなこともあり、最近になってようやく、わが出版界のあちこちから、アマゾンの芳しからぬ風評が頻繁に聞こえてくるようになりました。
 つい最近の出来事でも、公取に目を付けられて「見直し」を余儀なくされた「電子書籍契約の最安値条項」や、「日販への突然のバックオーダー発注終了通告」(Cf.「前門のアマゾン、後門の取次」)など、「一強の横暴」は枚挙にいとまがありません。

 「一強支配の弊害」は、べつに政治の世界の専売特許ではありません。このちっぽけな出版の世界にも、同じ弊害(独占)が露骨に現われてきた、ということなのでしょう。
 では、この国の「文化の危機」ともいえる状況を前に、読者は何をなしうるのでしょう?
 まずは、「リアル書店」で本の実物を確かめる習慣を取り戻したいこと。そして「ネット通販」を利用するにせよ、他の「ネット書店」にも広く目配りするなど、アマゾンへの一極集中を避ける試みも考慮されるべきかもしれません。

(「零細出版人の遠吠え」08/24より http://www.liberta-s.com/
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2017年08月08日

≪緑陰図書─私のおすすめ≫ 岩真 千『「旅する蝶」のように ある原発離散家族の物語』原発の恐ろしさと沖縄の悲しみ─ふたつを背負って苦闘する家族の重い記録=鈴木耕(編集者)

 ウェブサイト「マガジン9」に連載のコラムを、書籍化した一冊。こうしてまとまり精読するにつれ、そのインパクトの強さに圧倒される。
 サブタイトルに「ある原発離散家族の物語」とあるように、福島原発事故の放射能汚染を避けようと、勤務地の宇都宮を離れ、沖縄に逃れた家族の物語だ。とにかく子どもを放射能から守りたいという一念。だが、著者は大学教員の仕事を継続するため妻子を残して勤務地へ戻り、一家は離散家族となる。
 そこからが切ない。沖縄には著者の母と義理の父(米人)が暮らしている。ともあれ、一家はそこへ身を寄せる。しかし、妻はなかなか沖縄の地になじめない。そこから生じる夫婦間の軋轢。読むのが辛くなる部分だ。

 私は、原発にこだわり本も書いた。沖縄を何度も訪ね沖縄本も上梓した。だから、原発の恐ろしさも沖縄の悲しみも、自分なりに受け止めているつもりだ。だがそれは、あくまで自分の選択。
 ところが著者は、原発事故により、そのふたつの切なさを、自己の責任とは関係なく背負わされることになってしまった。過酷な運命というしかない。

 宇都宮で、いつしか壊れていった人間関係。それを補えるほどの他人との関わりを、残念ながら沖縄では持つことができない。住まいというより、他者との関わりを失っていくことの疎外感。
 そこから必然的に生まれる夫婦関係の崩壊。間で苦しむ子どもへの愛惜。沖縄という米軍が居座る島の現実に怯む。ひとりの人間が背負うには重すぎる現実を、著者は必死に切り抜けようと、ひたすら記録する。
 本書は記録文学の輝かしい到達点だと思う。

(リベルタ出版1700円)
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2017年04月06日

日本における米軍基地という存在=荒屋敷 宏

 安倍政権を揺るがす学校法人「森友学園」問題に火がついたのは、「フライデー」昨年12月23日号の「安倍昭恵首相夫人が名誉校長になる『愛国主義』小学校の理 念」のスクープが発端だった。その後首相夫人は「名誉校長」を辞任、当の小学校も認可申請を取り下げた。週刊誌の大手柄だ。
 もう一つ、気になる問題は、北朝鮮が3月7日、「在日米軍基地」を標的にしている軍部隊の存在を公然と明らかにしたこと。その後、関連は不明だが、安倍政権が 10日、南スーダンに派兵していた自衛隊の撤退を決定し、米国防総省が13日、米軍横田基地への特殊作戦型CV22オスプレイの配備延期を発表した。いずれも日米 両政府から十分な説明は何一つされていない。

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2016年11月04日

“国防知らずの稲田朋美”を防衛相に抜擢した安倍首相の理由――出版部会例会 『日本会議の全貌』の著者・俵氏が講演=守屋龍一

 9月16日に開催された例会は、「日本会議の闇」をテーマに関心が集まり、参加者100人を超え、床に座って聴く人も出るほどだった。俵義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)氏は、詳細なレジュメと資料を配布し、熱のこもった話をされた。その要旨は次の通り。

◆会員4万、支部250

 「日本会議」は1997年5月30日に発足。現在、会員約3万8千人、全国に249の支部がある。その中核は60年代後半〜70年代の右翼・民族派学生運動および新宗教「生長の家」の出身者が占め、いま事務局を担うのは椛島有三氏に率いられた日青協メンバー。

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2016年08月02日

不況直撃、小さな出版社の生き残り戦術=守屋龍一

 小さな出版社「本の泉社」を訪ねた。創業50年、社員5人。月刊誌「日本の科学者」をはじめ、八つの定期誌と書籍を刊行する。代表を務める喜寿の比留川洋さんと面談した。
 彼は、開口一番、「本を作り売る環境が破壊されています。電車内はスマホでゲームに夢中な人ばかり、9割がそうだ。しかも取次の倒産が相次ぐなか、取次大手は6カ月末シメの売上金のうち、30%分については、さらに6カ月後の支払いに繰り延べ。青息吐息の出版社に過酷な仕打ち。出版文化の重大な危機だ」と語る。
 2年前に文化庁が行った調査によれば、月に1冊も読書しない人が47・5%、1日の読書時間は全体平均で13分。出版の売り上げが、前年比マイナス845億円と、最大の落ち込みになるのも当然だ。

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2016年03月30日

厳しさ増す出版流通/取次会社の太洋社倒産/売上高落ち 取引書店廃業 新「大阪屋栗田」の役割は=清田義昭

 取次会社太洋社が3月15日に東京地方裁判所に破産申請をし破産開始が決定した。負債総額43億円とみられる。太洋社の経営が厳しいと言われてから数年になる。しかし経営の立て直しが進んでいたと思っていたが、2月5日に突然、自主廃業の文書がファックスで取引関係者に送付された。
 その内容は「書籍雑誌の供給継続のお願い」で、「今後の弊社事業の行く末を見据えると、いずれ自主廃業を想定せざるを得ないことから、万一にも取引書店に対する書籍雑誌の供給に不測の事態が生じないようにするため、取引書店が、これまでの取引を他の出版販売会社に帳合変更していただくことが最善である」と考えたうえでの措置として、出版社に商品の供給を要請していた。

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2015年05月29日

蔦屋家電と丸山書房─本を扱う姿勢=守屋龍一

 5月3日、東京・世田谷区の二子玉川に、家電と本を同じ空間で販売する「蔦屋家電」がオープンした。売場面積1階860坪、2階1312坪の大型店舗。さっそく見学に行ってきた。
 1階のブックストリートを歩くが、照明が暗く、何か洞窟に入っていくような気分になる。在庫冊数は約12万冊、林立する棚に並ぶ本はあっても、タイトルは読めず、何がどこにあるのか、さっぱりわからない。
 しかも、スターバックスが売場面積を、いやに大きく占める。パソコンやiPhoneのブースがあるかと思えば、自転車を売るコアもある。

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2014年09月05日

■10・10 JCJ出版部会例会<慰安婦問題と「朝日」バッシング>

 日中韓の外交にとって、「従軍慰安婦問題」への対処は、緊急な課題となっている。朝日新聞が、慰安婦の強制性を明かす吉田証言の誤りを認め、経緯を紙上で公表して以降、新聞・週刊誌を含め、メディアの「朝日」バッシングはとどまるところを知らない。<性奴隷としての慰安婦>は虚偽だったとの発言まで飛びだす。なぜ、何がそうさせているのか。
※講師に予定していた藤田博司さんが5日、急性心臓死のため亡くなられました。氏の生前のご活躍を偲んでご冥福をお祈りします。
 代わって青木理(ジャーナリスト)さんが、講師を務めます。誘い合わせご参加ください。

日時:10月10日(金)午後6時開場 6時半開会
会場:岩波セミナールーム3F(地下鉄半蔵門線、都営新宿線・三田線、神保町下車)
講師:青木理(ジャーナリスト)+篠田博之(「創」編集長)
会費:500円(JCJ会員・学生300円)
主催:日本ジャーナリスト会議 出版部会
案内チラシ(地図付)
*印刷用ファイルのため、開くまで時間がかかる場合があります。
問い合わせ先:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
電話03−3291−6475

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2014年03月24日

本とアマゾンと消費税の問題を考える=守屋龍一

 原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」という短編がある(『本をめぐる物語』角川文庫所収)。戦地の惨状や広島での原爆体験を語ってくれた父が認知症になった。ある日、家からいなくなり、捜しまわる娘が、やっと公園の砂場に佇む後姿を発見する。それは命よりも大切な一冊の本を掘りだすためだった。読めば、胸にズーンとくる。
 だが私たちの周りでは、公共図書館に所蔵されている『アンネの日記』やナチスのホロコーストに関する大切な本が、何者かの手によってビリビリに破られ、被害は39館・計306冊に上る事件が起きている。

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2013年09月07日

『本当の戦争の話をしよう』を読んで=守屋龍一

 高知新聞の高田昌幸さんが、7月号の〈’13緑陰図書─私のおすすめ〉で挙げた、ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』(村上春樹訳・文春文庫)を、さっそく読んだ。
 著者が1969年2月から14カ月、ベトナム戦争にアルファ中隊の歩兵として従軍した体験をもとに綴る22の物語で構成されている。

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2009年08月08日

活字の海を漂って(25)「新聞の広告欄を眺めながら」=鈴木 耕

  新聞はわりと熱心に読みます。
  記事だけではありません。日によっては、興味を惹かれる記事がとても少ないことあります。そんなとき、むしろおもしろいのは、広告です。私の場合、特に書籍や雑誌の広告には熱心に目を通します。
  「ほう、こんな本が出た。買いに行かなくちゃ」とか、「この週刊誌の特集は、どっかの書店で立ち読みしよう」とか、「これ欲しいけど、ちょっと高いな。文庫になるまで待つか」などなど、ブツブツ言いながら広告を眺めています。3冊ほど欲しい本がインプットされたころに、書店へ出かけます。

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2009年05月02日

活字の海を漂って(22)船戸与一の圧倒的力技=鈴木 耕

 あまり読者数が多いとはいえない当コラムだが、それでも時折、このコラムを読んでくれているらしい古い友人から、先日、 メールがあった。
 「いつも小難しいことばかり書いているけど、エンターテインメント系の本については触れないの? 本来、 そっちのほうが好きだったはずじゃないか、鈴木は…。理屈ばかりでは、読むほうも疲れるよ」
 うーん、実はそうなんだ。仕事柄、身に添わない本もたくさん読んできたけれど、 ほんとうは寝っ転がってミステリとか時代小説などを気楽に読んでいるほうが性にあっている。
 ま、JCJ出版部会のHPということで、少しはカッコつけなくちゃ、と思っていたことも事実なのだが。
 というわけで、今回は私の好きな小説について書く。
 作家は、船戸与一。

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2009年02月25日

活字の海を漂って(19)辞書事典の危ない魅力=鈴木 耕

  私の机の上には、ブックエンドに挟まれて、たくさん(現在は13冊) の辞書類が並んでいます。机上のかなりの面積を、辞書類が占領しているのです。
 これらの分厚い辞書類とパソコン、プリンターで、机上はほぼ満員御礼状態です。(満員御礼といえば、朝青龍に感謝しなさいよ、 日本相撲協会と内館牧子さん! 関係ないけど)。
 机の横の本棚にも、辞書や事典、図鑑などの本のコーナーが1段以上あります。原稿を書くときに、 ひょいと手を伸ばして届く範囲ということです。

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