2024年02月21日

【映画の鏡】『福田村事件』などを上映「第13回江古田映画祭」「3・11福島を忘れない」テーマに=鈴木 賀津彦

                       
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         「福田村事件」プロジェクト2023
 
 東京・練馬区の江古田の街で2013年から「3・11福島を忘れない」をテーマに始まった『江古田映画祭』が、今年も2月24日から3月11日までの2週間余、武蔵大学と近くのギャラリー古藤(ふるとう)を会場に開かれる。

 第13回の今年は、武蔵大学1号館で2月24日に『福田村事件』の上映と製作者によるトークイベント、3月2日には土井敏邦監督の『パレスチナからフクシマへ』と『ガザ〜オスロ合意から30年の歩み』(初上映)の上映と監督トークがある。
 ギャラリー古藤では2月25日に『飯館村 べこやの母ちゃん―それぞれの選択』(古居みずえ監督)の上映から始まり、『「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たち』(寺田和弘監督)やアニメ『ふながたの海』(いくまさ鉄平監督)、米アリゾナ州での核実験後の地元民の被ばくを追った『サイレントフォールアウト』(伊東英朗監督)、相馬高校放送局制作の『福島の高校生が処理水問題を考える』など、地域の市民を中心に集まった実行委員会が準備した作品が次々に上映される。

 東電福島第一原発の事故や津波の被害から13年、「福島を忘れない」から始まった映画祭は、市民による文化拠点づくりとして広がってきた。    
 商業映画館では上映機会の少ない社会的テーマの映画を、江古田地区で連続的に上映することで地域の活性化につなげているのが特徴だ。石川県・能登で地震被害が起きた今、この映画祭を続けてきた意義を確認し、能登復興支援の取り組みにも繋げる意味でもぜひ多くの人に参加を呼び掛けたい。
 詳しい上映予定や参加費などは映画祭ホームページで。       
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
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2024年01月15日

【映画の鏡】選挙とは何か、当事者からの発信『映画○月○日、区長になる女。』政治を変える市民の実像=鈴木賀津彦

              
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           c映画○月○日、区長になる女。
 いま政治や選挙に関わっている人は全員がこの映画を観るといい。本来、政治や選挙に関わるのは市民すべてなので、広く見てほしいのだが、まずは与党も野党も関係なく「政治関係者」は必見だと強調しておきたい。
 わずか187票差で3期12年の現職を破って無党派の女性候補が当選した2022年6月の杉並区長選は、市民選挙が政治を変えたことに注目が集まった。その後も今春の統一地方選で市民派の首長や議員が各地で多く誕生するなど、深刻な政治不信を変える新しい潮流が広がっている。今、有権者の意識がどう変化しどんな選挙をすればいいのか、この映画を観れば分かるからだ。そして政治を変える展望を提示、希望を示してくれている。

 杉並区の住民たちが岸本聡子を候補者として擁立。カメラは岸本に密着し、選挙活動の会議の様子や岸本と応援者が議論する姿など、裏側を遠慮なく捉えていく。撮影するのは監督のペヤンヌマキ。杉並区在住の劇作家・演出家の彼女は、長年住むアパートが道路拡張計画により立ち退きの危機にあることを知り、止める方法を自身で調べ動き始めたのがきっかけで選挙に関わった。

 そして投票率を上げるため、YouTubeで選挙期間中に密着した映像を発信して、岸本の魅力や活動を伝えたのだ。その映像を編集して本作はできたのだが、なんともその密着ぶりが「当事者メディア」の視点なので素直に受け止められる。監督が「自分ごと」としていて好感できた。今も岸本区長の密着撮影を続けているそうで、「区長になった女」の次回作も期待したくなった。ポレポレ東中野で1月2日から公開。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年12月25日号
   
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2023年12月11日

【映画の鏡】全ての候補者を平等に取材『NO 選挙・NO LIFE』フリーランスライターの真骨頂=鈴木賀津彦

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             (C)ネツゲン

 「テレビ、新聞では決してやらない候補者全員取材の流儀―」。選挙取材歴25年のフリーランスライター、畠山理仁さん(50)の取材ぶりを追い、なぜ彼が寝る時間も削ってまで全員取材にこだわった選挙報道に人生をかけるのかを解き明かそうと密着取材している。

 「選挙ほど面白いものはない」と全候補者の取材に駆け回る畠山さんの仕事(と言っても採算を度外視した取り組みなのだ)に、どんな意味があるのかを今こそ知ってほしい、前田亜記監督のそんな思いが映画の展開からビンビン伝わってきて共感した。
 もう4年前になるが、2019年12月の「JCJジャーナリスト講座」で、畠山さんに講師をお願いした。テーマは「フリーランスの『オモテとウラ』――醍醐味と難しさ」。

 案内はこうだ。<国政や首長選挙などでは、政党や大きな団体が支援する有力候補以外にも候補者が出る。いわゆる『泡沫候補』で、この候補の政策・主張などは、メディアは無視する。有力候補と同じ額の供託金を支払っているのに不平等な扱いを受けている。フリーランスライター畠山理仁さんは泡沫を無頼系独立候補≠ニして約20年間取材。それをまとめた『黙殺 報じられない無頼系独立候補≠スちの戦い」(集英社)は2017年第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した。フリーランスは、これと思ったテーマをふかぼり取材≠ナきる半面、生活の安定を望めない。「オモテとウラ」を畠山さんが話す> 

 この時は、まだモヤモヤしていたのだが、この映画を観てすっきりと「これからの選挙報道はこうあるべきだ」と確信できた。公開中。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年11月25日号
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2023年11月09日

【映画の鏡】真のジャーナリズムを示す『燃えあがる女性記者たち』未来の可能性開く報道の原点=鈴木 賀津彦

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            Black Ticket Films

 ジャニーズ問題などで日本のマスメディアの在り方が問われている今、メディアに関わる全ての人々にとって「必見」のドキュメンタリー映画だ。報道は「何のために」「誰のために」あるべきなのか、リアルに示してくれる。

 主人公はインド北部のウッタル・プラデーシュ州にある小さな新聞社「カバル・ラハリア」(ニュースの波という意味)の記者たち。
 同社は2002年にダリト(カースト最下層の「不可触民」と呼ばれてきた人々)の女性たちによって週刊の新聞として創刊。その後2016年にはSNSやYouTubeで発信をするデジタルメディアとして新しい挑戦を始める。社員全員が女性、彼女たちはスマートフォンを片手に貧困やカースト、ジェンダーの差別や偏見と闘いながら、地域の生活に密着した草の根の取材を続けている。
 スマホを武器に社会を変えられる。ダリトの女性たちが、底辺の声を伝えるのにテクノロジーとインターネットを使いこなしてデジタルメディアを拡充していく姿は、インドだけの話ではなく、私たち日本の課題として共感の輪を広げている。

 映画の公開に合わせて、広島では11月4日に「燃えあがる女性記者と本音トークin広島〜わたしたちが欲しいメデ私たちでたちでたしたちでつくる〜」と題して、前新聞労連委員長の吉永磨美さんや中国新聞の金崎由美さんら女性ジャーナリストのトークイベント(主催=ジェンダーを考える広島県有志×ハチドリ舎)も開催される。オンライン視聴もできるので遠方からの参加も可能だ。こんな形で議論の輪が広がりそうだ。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年10月25日号 
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2023年09月30日

【映画の鏡】これが日本の現実だ『国葬の日』リベラルに欠けた視点を提示=鈴木賀津彦

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              「国葬の日」制作委員会

 これが日本の現実だと分かりやすく提示していることに、とても共感した。賛否が分かれ「世論が二分」された中で国葬が執り行われたと伝えるマスメディアの評価に、現実との乖離を感じていた私にとって、大島新(あらた)監督が捉えた全国各地の人々の本音は、とてもリアルに受け止めることができた。
 2022年9月27日、安倍晋三元首相の国葬が行われた日の日本の姿を、全国10都市でカメラをまわし、人々のリアルな思いを取材している。ドキュメンタリーというと何か制作者の主張が声高に盛り込まれているイメージを抱く向きもあるが、この作品は国葬という日の現実を誇張なく記録した映画なので、観た人の多くがモヤモヤ感を持つかもしれない。

 それが制作の狙いなのだろう。大島監督は「初めて完成版を見た時、私は本当に困惑した」と語り、そして「この困惑を、映画を観た人と分かち合いたい」と、様々な受け止め方、意見のぶつかり合いに期待を込める。
 大島監督には、国葬に反対する「リベラル勢力」の現状認識に欠けている視点への危機感があるのだろう。よく議論される例に置き換えると、「投票率が上がれば」「もっと若者が投票に行けば」変革が起きると期待がよく述べられる。しかし現状のままでは、投票率が上がれば上がるほど、若者が投票へ行けば行くほど、現政権与党がますます大勝するのが現実かもしれない。あるべき論にしがみつかずに、現実をリアルに捉えること、その重要性を浮かび上がらせてくれた作品だ。
 この現実から、絶望するのか、希望を見出すのかも、観た人に任される。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年9月25日号
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2023年09月10日

【映画の鏡】次世代の文化として捉え直す『絶唱浪曲ストーリー』密着映像からほとばしる現代的魅力=鈴木賀津彦

                 
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          Passo Passo+Atiqa Kawakami

 浪曲を聴いたことのない若い世代も、この映画で初めて浪曲に出会うと、新鮮な「現代的魅力」を感じて、とりこになるのではないだろうか。映画を起爆剤に新たな浪曲ファンが増え、新しいブームが巻き起こってほしいと期待し、妄想が膨らんでくる。
 私が観に行った8月5日の横浜シネマリンでの上映初日、川上アチカ監督の舞台挨拶もあり、客席は満席に近い入りだが、観客は浪曲をよく知る年配者が多かった。さて、大勢の若者にもっと見てもらうにはどうすればいいだろう、そんなことを考えてしまった。

 次世代に見てほしいと思った理由は、浪曲の「現代的な魅力」が分かりやすく盛り込まれているからだ。もちろん迫力のある口演のシーンも魅力的なのだが、浪曲界の日常の人と人との関係、日常の生活が見事にとらえられているのだ。

 「伝説の芸豪・港家小柳に惚れ込み弟子入りした港家小そめが、晴れて名披露目興業の日を迎えるまでの物語」を追ったドキュメンタリーだが、小柳師匠に弟子入りした思いを小そめが語る場面で、こんな言葉をつぶやく。
「今ちょっと住みにくくて、今現在が。綺麗すぎるっていうか。きちんとし過ぎてるっていうか。息苦しいっていうか。だから余計、そういう昔ながらの人を見ると良いなって思うのかもしれない」。そう、今の社会が失ってしまったものが、浪曲に生きる人たちの日常には脈々と生きている。
  川上監督が同様に小柳の魅力に引き込まれたのも、同じ思い。日常生活に密着した映像からほとばしるメッセージを、次の世代に受け止めてもらいたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年8月25日号
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2023年08月17日

【映画の鏡】50歳の誕生日に全4作品の上映会 『奈緒ちゃん』シリーズ 第5弾を製作中 来春公開へ=鈴木賀津彦

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  7月14日、横浜市泉区に住む西村奈緒さんが50歳の誕生日を元気に迎えた。奈緒さんは重度のてんかんと知的障害があり、幼児期には医師から「長くは生きられない」と言われ、育ってきた。

 叔父の伊勢真一監督(74)は、奈緒さんの成長と家族との日常生活を記録に残したいと、8歳の時から撮り続け、成人式までの映像をドキュメンタリー映画にした『奈緒ちゃん』(1995公開)など4作を製作してきた。
 2002年には奈緒さんの母、西村信子さん(80)が中心になって設立した地域作業所にスポットを当てた2作目の『ぴぐれっと』を、06年には『ありがとう―「奈緒ちゃん」自立への25年―』を公開。相模原市内の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で多数の入所者が殺害された事件の翌年の17年には、伊勢監督が事件に対峙するメッセージとして、4作目となる『やさしくなあに〜奈緒ちゃんと家族の35年〜』を公開した。

 「ヒューマンドキュメンタリー」と呼ばれる分野で多くの作品を手掛けてきた伊勢監督にとっても「映画生活50年」の節目でもある。新たに『奈緒ちゃん』シリーズ第5弾として『大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』を来年の春の公開に向けて製作中だ。「50年間に及ぶ『いのち』の記憶をまとめようと思った」という。

 奈緒さんの地元の泉区民文化センターで、誕生日に合わせ全4作品の特集上映会が開かれた。上映の幕間には監督らの舞台トークも行われ、夕方のトークには奈緒さんも登壇、会場が一体になって祝福した。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年7月25日号
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2023年07月04日

【映画の鏡】ウクライナ戦争の源流『世界が引き裂かれる時』観客の想像力に委ねた戦闘描写=伊東良平

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ウクライナの戦場の映画であるが、今行われているウクライナ戦争ではない。2014年にドネツクとルハンシクの東部2州で親ロシア派が離脱宣言を行い、ウクライナ政府と内戦状態になる。

クリミア併合とともに今回のロシア侵攻に繋がった源流だ。14年そのドネツク州のロシアとの国境近い村がこの物語の舞台である。妊娠中の妻と夫が暮らす家が親ロシア勢力の誤爆によって大きな穴が開いてしまう。分離派の優勢な地区で反ロシア派との対立は激しさを増していき、新しい命の誕生を待つ夫婦の生活はその中で巻き込まれて破局へと向かう。

 この映画は内容から映画会社からの協力を断られ、スタッフなどがお金を出し合って撮影を開始、撮影は2020年からドネツクと地形が似ている南部のオデッサ地方で行われた。メディア特にテレビではウクライナ報道が盛んに行われているがそのほとんどは作戦や戦略であったり、どこを制圧してどう攻勢をかけるかなどが中心で、そこで戦っている人間がどういう状態か、どれだけ犠牲になっているかはあまり伝えられない。そこにいるのはまぎれもない生身の人間であり、そうした人たちがいて戦いがあるのだ。

 戦争がどれだけ多くの普通の市民に大きな影響を与えて犠牲を強いるか。この映画はそのことを教えてくれる。ウクライナの女性監督エル・ゴルバチはあえて戦闘シーンを描かずに、起こっている暴力的な行為を観客の想像力に委ねた。そのことが戦闘に翻弄される人間の姿をクローズアップさせている。

 侵攻直前の22年1月に第38回サンダンス映画祭の監督賞を受賞。シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開 。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年6月25日号
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2023年06月15日

【映画の鏡】真の「保守」とは何か『ハマのドン』「主役は横浜市民、俺は脇役」=鈴木賀津彦

  都内と横浜で5月5日から公開され連日満員の好スタートだが、映画館に足を運んで気になったのは、これを「反政府」の映画だと受け止めている人が予想以上に多いことだ。
 政府が推進するカジノを含むIRという国策に19万人超の署名を集め住民投票を求めた横浜市民や、カジノ反対の市長が誕生した2021年夏の横浜市長選挙を追っている。映画のパンフにも「主権は官邸にあらず、主権在民。」と打ち出し、政府の問題点を鋭く追及しているから、そう受け止められるのかもしれない。

 しかし、「ハマのドン」と呼ばれる藤木幸夫にしても、「解説役」のように登場する元参院議員の斎藤文夫や元横浜市議会議長の藤代耕一ら自民党の重鎮たちも、保守の本流を歩んできた人たち。良き時代の「ミスター自民党」の面々が、今の自民党政権の間違いを正そうと発言する姿に拍手を送りたくなる。カジノ誘致で税収増になると考えている政権与党なんて、どう考えても許せないのだ。

 藤木が「主役は市民、俺は脇役」と強調する姿から、松原文枝監督は「藤木さんの覚悟が人を動かし、人と人がつながっていく。人を大切にし、地域を大事にし、時代をつなげていく。それが本来の保守ではないだろうか。安倍政権時代から、意見が違えば、異論を唱えれば『敵だ、見方だ』と分断する風潮が広がった。だが、保守とは意見の違いがあっても受け入れていく包容力があったはずだ」と述べている。

 自民党はこの映画を「党員必見」と指定し、「真の保守とは何か」を学ぶ最適な教材にしてみてはどうだろう―。保守を自認する人たちにこそ見てほしい作品なのだ。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
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2023年05月28日

【映画の鏡】各地で広がる自主上映会『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』=鈴木賀津彦

                          
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      Kプロジェクト2022
劇場公開は2月に終わったが、直後から各地で自主上映会が開催され、さらに脱原発団体だけでなく多様な団体からの上映申し込みが相次いでおり、本作品に注目が集まる。

 原子力発電所の推進に舵を切った岸田政権は、60年を超える運転延長を可能にする法案など5つの法改正案を束ねた「グリーントランスフォーメーション(GX)脱炭素電源法案」を2月28日に閣議決定したが、原子力規制委員会では反対意見を多数で押し切るなどスケジュールありきで、国民の疑問に何も答えないままで進めているのだ。

映画に登場する樋口英明・元福井地裁裁判長は、こんな政府のデタラメぶりを誰もが分かるように説明してくれる。2014年、関西電力大飯原発の運転停止命令を下した判決で、原発が頻発する地震に耐えられない構造であることを指摘、また「環境問題を原発の運転継続の根拠とすることは甚だしい勘違いである」と明快に述べている。映像は樋口氏が定年退官後に、日本の原発に共通する危険性を説いて回っている姿を追う。

一方、被災地の福島では、若い農業者が畑の上で太陽光発電するソーラーシェアリングに挑戦し、農業復活にかける力強い思いをカメラが捉える。新たな農業の形を伝え、「希望」がどこにあるのかを示してくれる。日本の未来は原発ではなく、ここにある!と。
 政府の進める「GX」とやらに少しでも疑問を持ったら、まずはこの「希望」の映画を観てほしい。身近な所で自主上映会を気軽に企画し実現してはいかがだろう。上映申込は専用サイトから=https://saibancho-movie.com/wp/
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年04月08日

【映画の鏡】安倍政治を本気で検証『妖怪の孫』メディア戦略奏効、マスコミ自粛=鈴木賀津彦

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2023 「妖怪の孫」製作委員会


 「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介の孫の安倍晋三が、こんなにもデタラメな政治をやっているのに、自民党が選挙で圧勝するのは何故なのか。安倍政治を支えている構造に切り込んだこのドキュメンタリーを、内山雄人監督ら制作陣は「政治ミステリー劇場」と位置付ける。
 菅前首相を追った前作『パンケーキを毒見する』を「政治バラエティ」として分かりやすく示した手法と同様、長期政権を支える仕組みをミス   テリーの謎解きのように提示し、観る人が「自分ごと」として受け止められる工夫をしていて面白い。

 特に誰もが発信者になれるインターネット時代の自民党のメディア戦略を深掘りし、テレビなどマスメディアが政権批判をしないよう「自粛」させ、機能不全になっている現実がなぜ起きているのかを分析しているのだ。

 それならJCJのオンライン講演会で内山監督にこの映画に込めた想いなどを語ってもらえばと、3月17日の映画公開直前の12日に「政府のメディア戦略の現状とマスメディアの機能不全」をテーマに企画した。そこに飛び出してきたのが、放送法をめぐる問題。
 政治的公平性を求める安倍政権でのやり取りを記録した総務省の行政文書が公表され、当時何があったのか、明らかになってきた。まさに、映画で描かれたテレビの報道の「自粛」の現状が何故起きているのかをさらに掘り下げなければならないと、オンライン講演会では内山監督の話を伺い、参加者と議論を深めた(詳細は次号記事で掲載予定)。
 新宿ピカデリーなど全国で公開中、まずは見てほしい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
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2023年03月24日

【映画の鏡】多様な視点から対話『不思議なクニの憲法』"新しい戦前"の今こそ原点に=鈴木賀津彦

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      寂聴さんにインタビューする松井監督

  昨年末の「徹子の部屋」に出演したタモリが、2023年がどんな年かを問われ、「新しい戦前になるんじゃないですかね」と発言して話題になった。岸田内閣が安全保障政策の大転換を進める今だからこそ、改めてこのドキュメンタリー 映画を観て、多様な視点から憲法対話を広げる必要を感じている。
 様々な角度からのインタビュー取材を重ね2016年に公開した。松井久子監督は「映画を広めていくうちに『9条の文言と現実の矛盾』という、私自身が避けて通れない問題につきあたっていた」と、2018年に「私たちが抱えている矛盾について、本質的な議論が広がることを願って、9条にまつわる様々な意見を並列的に提示した」とリニューアル版を発表。

 この追加取材で韓国のソウル大学・日本研究所の南基生教授のインタビューが盛り込まれた。「平和憲法と日米安保の奇妙な同居が、戦後の日本人の心を不安定にしてきたのではないか?」と話す南教授は、「安倍改憲が、東アジアの平和に積極的に取り組む方向でなく、アメリカの基地国家としての機能を深化させる方向での過程を踏めば、その試みは必ず失敗するだろう」と強調した。なるほど今、米国の基地国家へと突き進んでいるではないか。この2018年版を翌年にDVDで販売した際には、特典映像として立憲的改憲論の2人の主張も加え、さらに議論を深める工夫をしている。

 松井監督自身の考え方が「現実との矛盾」に揺れ動く様子も映像から伝わって、憲法の原点を一緒に確認したくなる。対話を促進するために活用したい。DVDは税込み2500円。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号
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2023年02月13日

【映画の鏡】真実を求める遺族の姿を記録『生きる』〜大川小学校 津波裁判を闘った人たち=鈴木 賀津彦

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2022 PAO NETWORK INC.
誰もが撮影して映像で記録を残せる市民メディアの時代に、当事者の手による映像が如何に重要な意味を持つのかを、このドキュメンタリーは明確に示してくれた。
 
 2011年の東日本大震災で、大川小学校(宮城県石巻市)の74人の児童(うち4人は未だ行方不明)と10人の教職員が津波にのまれ亡くなった。全校児童の7割に当たる多数の犠牲者を、なぜ出したのか。親たちの「何があったのか」を知りたいという無念の思いに対し、行政の対応は納得できないことばかり。
 二転三転する市教育委員会の説明、メールのやり取りを破棄してしまうなど、自己保身のための嘘や隠蔽が見え、怒りが収まらない遺族たちだが、一方で冷静に、出席した説明会や記者会見などの様子を映像で記録していた。監督の寺田和弘は、その映像を何度も繰り返し見続けて、「説明会を開催するたびに遺族と行政側の溝が広がり、深まっていくように感じた」といい、映画を観てくれる人にも追体験してもらいたいと考えたという。

「裁判なんてしたくなかった」という遺族が提訴したのは2014年3月。18年4月に「平時からの組織的過失」を認めた仙台高裁の判決を勝ち取り、19年10月に最高裁で確定するまでの10年に及ぶ記録である。
 この映像を見ながら、ドキュメンタリーの鬼才と評される原一男監督が製作した3部構成・計6時間12分の水俣病を描いた大作「水俣曼荼羅」との共通性を感じた。闘いの当事者たちが発信者となり、「生きる」姿を示した「当事者性」が強く伝わってくるのだ。
 2月18日から順次公開。124分。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号
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2023年01月09日

【映画の鏡】閉鎖社会を乗り越える豊かさ『若者は山里をめざす』途絶えていた祭りも復活=鈴木賀津彦

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  2022年「若者は里山をめざす」制作委員会

都心からわずか60qだが、埼玉県1番の消滅可能性都市と言われた東秩父村に、都会暮らしを捨て移住する若者たちが増え始めた。UターンやIターン、彼らは何に魅力を感じ、自らの生き方をどう切り開いていこうとしているのか。その答えと展望を、2019年から3年間撮影取材を続けた原村政樹監督が本作で示してくれている。

村出身の西紗耶香さん(31)は25歳の時、東京での会社勤めを辞め戻ってきた。10代のころはコンビニもない村から出たいと都会の大学に行ったが、「消滅させず輝きを取り戻したい」と、ふるさとの魅力を伝える活動を始めた。付き合いのなかった老人たちの元へ通うと、山の自然を活かし豊かに暮らす老人たちの力強さに気付き、昔の生活の中に閉塞する現代社会を乗り越えるヒントがあると確信した。

東京出身の元銀行員(25)は地域おこし協力隊として村の野菜・ノゴンボウで特産品を開発しようと取り組み、移住を決意。また和紙職人を目指して来た京都の芸大卒の女性(23)など、若者の暮らしぶりを淡々と追う。そんな中、途絶えていた祭りを復活させようと、西さんらは集落の人たちと3年間話し合い、6年ぶりに実現。地域の人たちのほか村を離れた家族らも大勢集まり、山里は輝いたのだ。
こう書くと、「都会からの逃避」「これで地域活性化など無理だ」と批判的な見方も当然出るだろう。しかし「武蔵野」「お百姓さんになりたい」「食の安全を守る人々」など農業をテーマに作品を次々発表してきただけに、原村監督ならではの展望を示している。14日から新宿など順次公開。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号
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2022年12月05日

【映画の鏡】対立を対話に変えた住民参加 『下北沢で生きる』 SHIMOKITA 2013to2017 改訂版 これからの街づくり示す記録=鈴木賀津彦

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     NOBUYOSHI ARAKI ライカで下北沢

  シモキタが今、これからの街づくりの成功モデルとして注目を集めている。今年5月、2013年に地下化された小田急線下北沢駅(東京都世田谷区)周辺の線路跡地1・7`で進められた「下北線路街」の整備が完成。都心の再開発と言えば、どこも同じようなビルが建ち個性が失われがちだが、劇場やライブハウス、古着屋などの個性的な店舗が路地にひしめく「シモキタらしさ」を生かした形で魅力を発信し、コロナ禍にもかかわらず、にぎわいを一段と増し、高く評価されている。

 そんな「らしさ」を打ち出した街づくりが何故できたのか、本作品を見れば、それを解説してくれる。2003年に東京都が小田急線の地下化を決めた際、終戦直後に決めた「補助54号線」という道路計画が復活し、商店街を貫く道路整備など大規模再開発を行政側が決定した。これに反対する市民運動が巻き起こる。開発阻止を訴えるデモや集会には、国内外から作家や演劇人、音楽家らが集まり、見直しの提案や行政訴訟なども起こしていく。

 それを追ったドキュメンタリーの前半は、賛否の対立の構図なのだが、世田谷区長に保坂展人氏が当選した2011年からは、「北沢デザイン会議」などが設けられ、区が住民から意見を聞く「対話」へと変わっていく様子が描かれていく。後半は「住民参加の街づくり」とはどういうものかを示してくれている。

 2017年に住民らが製作した映画が今年、街への関心の高まりから掘り起こされ、各地で小さな上映会が広がり始めている。案内のチラシには「下北沢の民主主義を知っていますか?」とある。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号
 

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2022年12月02日

【映画の鏡】転んでも立ち上がる復元力 『百姓の百の声』 お百姓さんが素晴らしいことがわかります=伊東良平

                           
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百姓という言葉は放送禁止用語だそうだ。このことについて、映画の柴田昌平監督は「農業に対して近代の日本人が抱いてきた、ぬぐいがたい差別意識のようなものが横たわっていると感じる」と語っている。
2007年に映画「ひめゆり」でJCJ特別賞を受賞した柴田監督が4年をかけて全国の農家を訪ねて作り上げたのがこの作品である。私たちは毎日農家が作った食物を食べているのに、あまりその背景を考えないでいるのではないか。全国のお百姓さんが知恵と工夫を活かしていまの農業に取り組んでいる姿を単刀直入なインタビューでまとめた。

この映画にメインで登場する13組の農家だが、それぞれがいろいろな課題を抱えながらも前を向いていて力強い。それは品種や栽培方法であったり、有機野菜の生産と販売や地域内の循環など、ひとつ一つのテーマを克服していく様子を見ていると、これからの農業に希望が持てる。それがお百姓さんの底力であり素晴らしいところだと画面が訴えかけてくる。ただ、登場人物の多くが高齢であることが気になった。映画を若い人が見て、農業の面白さを知るきっかけになってほし。

 2時間10分という長尺だが、美しい映像も伴って時間を感じさせない迫力があった。
11月5日から東京・ポレポレ東中野で上映されるが、柴田監督は映画を観て終わりではなく農家と消費者が交流する場を作りたいと、その交費などを得るためのクラウド・ファンディングも行っている。また映画を通して対話を生み出そうと農村での移動上映会を開く希望も温めている。 
  伊東良平
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号

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2022年10月04日

【映画の鏡】保守王国にみる日本の縮図 『裸のムラ』 変化に対応しない構造に迫る=鈴木賀津彦

                            
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     石川テレビ放送  

なぜ日本がこんなにも「後進国」になってしまったのか、その理由を保守王国、石川県の現実を直視することで解き明かしてくれる。
7期28年の谷本正憲知事(75)に代わり今春の選挙で当選したのは、谷本の選対本部長を務めていた元文科相の馳浩。新知事に花束を渡すのが女性の役割? そんな場面を強調して男社会の「ムラ」の滑稽さを捉える。当選直後に谷本は県公立大学法人の理事長に就任するという筋書き通りの結末も淡々と追っていく。馳知事のスローガン「新時代」にも「?」を付け、馳が衆院選に初当選した22年前に掲げたのも同じ言葉だったと伝える。

激変する現代社会、多様性が求められるのに、何も変わっていないムラの現状。長期の権力集中に忖度する県庁職員の仕事ぶりをカメラが追う中で、象徴的なのが県議会の知事席のお茶を入れたガラス瓶の水滴を丁寧に拭く女性の姿。谷本時代と変わらず、馳になっても同じシーンが繰り返される。
 一方で市井の生活にもカメラが向けられる。「ムスリムの一家」と「バンライファ―の2家族」の暮らしぶりの映像が、「男ムラ」の政治の場面と行ったり来たりして描かれる。この関連性が分かりにくく、観客をイライラさせるのだが、3つの物語の「つながり」が理解できた時、ムラをどう変えればいいのか、展望が見えてくる不思議なドキュメンタリーだ。
監督の五百旗頭幸男は、富山市議会の不正を暴いた「はりぼて」の監督。石川テレビに転職し制作した2つの番組「裸のムラ」「日本国男村」が元になった。10月8日からポレポレ東中野(東京)などで公開。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年9月25日号
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2022年09月20日

【映画の鏡】経済成長で変わる農村の姿『出稼ぎの時代から』地方の在り方 根本から問う=鈴木賀津彦

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             「飯場で暮らす。枕元には長靴。」 

 山形県白鷹町教育委員会の倉庫から見つかった50年余り前のスライド作品「出稼ぎ」。スライドと台本、オープンリールの録音テープ。高度成長期の1966年冬から翌年春に出稼ぎに行った二十歳の青年が、働いた川崎市北部の団地造成現場や飯場の暮らしをカメラに収め、撮りためた写真で構成した作品を置賜地区視聴覚作品コンクールに出品したものだ。
 1960年代に年間約2000人が出稼ぎしていたという白鷹町。作品発見をきっかけに、出稼ぎの時代とは何だったのかを再認識しようと、町民の中から映画製作の話が持ち上がり、その後の暮らしや関係者のインタビューなどの取材を町民有志で進めた。完成した79分の映画の上映が7月から地元で始まった。
 当時は高価だったカメラを出稼ぎで貯めて購入した青年が、時代をどう捉えて、何を考えていたのか。その後大きく変わった農村の現状とこれからを見つめなおす原点が、この青年の感性にあると気付かされる。
 白鷹町ってどんな地域だろうと検索すると、19世紀の女性旅行家イザベラ・バードがこの山形県南部、置賜地方を「東洋のアルカディア(理想郷)」と讃えたと解説する観光サイトを見つけた。この理想郷からの出稼ぎが都心の「繁栄」を支えてきたのだ。地方創生を叫ばれる今、目先の地域活性化にとどまらず、改めて戦後の経済成長の在り方を問い直して未来を見つめていかねばならないと、インタビューに淡々と語る住民の映像から感じた。
 住民による地域メディアづくりや映像アーカイブの視点からも、この映画の上映活動を広げてほしい。
 鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年8月25日号
 
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2022年08月18日

【映画の鏡】沖縄戦の苦悩 伝え続ける『島守の塔』復帰50年に描く戦争の愚かさ=鈴木賀津彦

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c2022 映画「島守の塔」製作委員会

 20万人以上が犠牲となった太平洋戦争末期の沖縄戦で、住人たちがどんな思いでいたのかを、沖縄県知事の島田叡(あきら=写真=左)、県警察部長荒井退造(同=右)ら主人公の苦悩を掘り下げながら丁寧に描いている。
 完成披露試写会が6月30日に都内で開かれ、五十嵐匠監督、島田を演じた萩原聖人、荒井役の村上淳、知事付になった軍国少女の比嘉凜役の吉岡里穂、生き残った凛の晩年を演じた香川京子が挨拶。4人とも、コロナ禍で撮影が1年8カ月も中断されたのを乗り越え、遂に完成できたのは「作品へ込めたみんなの思いが奇跡を起こした」と振り返った。
  この作品を本欄で取り上げたのは一昨年の8月号、その時は<製作の決意は揺るがず、新聞社が連携「命の尊さと平和」発信>という見出しで、撮影の中断にもかかわらず「サポーター」を募集して、製作委員会が「大きな平和事業に発展させていきます」と強い決意で動きだしていることを伝えた。そんな製作過程を見てきたこともあり、軍拡の動きなど現在の危機的な平和の状況を跳ね飛ばせる力強さを、本作から感じることができた。
 五十嵐監督はメッセージで「ウクライナの戦争で製鉄所の地下に逃れた人々が、ガマの中で息をひそめる沖縄の方々とダブってしまう。かつて私達が経験した戦争の時代を知る人々がいなくなりつつある今、この映画は永遠に生き続けることを祈念する」と述べている。
 ロードショーが終わっても本作を見続けてもらえる仕組みとして、沖縄へ修学旅行に行く学校で上映し続けてはどうだろう。伝え続けるために特に若い人たちに見てほしい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
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2022年07月19日

【映画の鏡】その先の家族や友人との絆『沖縄カミングアウト物語』かつきママのハグ×2珍道中=鈴木賀津彦

 6月は「プライド月間(Pride Month)」だ。世界各国でLGBTQ+(性的少数者)の権利を啓発するイベントやキャンペーンなどが繰り広げられている。
 米ニューヨークで1969年6月27日、LGBTが集まっていたゲイバー「ストーンウォール・イン」に不当な踏み込み捜査を行なった警察に客が抵抗し衝突した「ストーンウォール事件」は、歴史上初めてLGBTによる公権力への明確な抵抗で、社会運動の始まりとされる。1年後行われたパレードなどの記念行動以来、6月が月間として位置付けられているのだ。
 そこで今月は、本欄でも性的少数者の思いを正面から描いたドキュメンタリー作品を紹介する。新宿二丁目のゲイバー「九州男」の店主、かつきママのカミングアウト・ストーリーである。
 製作の狙いを松岡弘明監督はこう語る。「私自身がゲイであることをカミングアウトできずに母親を癌で亡くしたことがキッカケでした」「年月が経ち、『九州男』でかつきママのカミングアウト・ストーリーで聞いたとき、これが私の知りたかったカミングアウトの理想的なエンディングだと思いました。こんな可能性もあるんだということを、ぜひとも映像で伝えたい。そんな想いを胸に、かつきママと一緒に彼の故郷・沖縄県那覇市を訪れました」
 家族や友人とカミングアウトしたときを振り返る様子から、この先の人のつながりが示されていく。7月8日〜21日開催される「第30回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」の上映作品に選ばれ、17日に東京・青山のスパイラルホールで上映される。
 鈴木賀津彦
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年6月25日号
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