2022年06月28日

【神奈川支部】国民無視の実質憲法改変進む 武蔵野美大・志田陽子教授が講演=保坂義久

 市民グループや労働組合などが集まって年に2回の集会を開催している「かながわ憲法フォーラム」が5月1日、横浜のかながわ労働プラザで開かれた。志田陽子武蔵野美術大学教授が「憲法改正の理路と脱輪、主権者スルー改憲を考える」と題して講演した。
 志田氏は、コロナ対策を根拠として緊急事態条項新設を主張する改憲論を批判し、今の憲法は、「公共の福祉」として国にコロナ対策を要求している、とした。
 志田氏はこれまでの高等教育無償化や同性婚などを理由として改憲を求める議論を批判した。
 改憲の必要のない事柄についての改憲論が出てくる一方、現実の政治では、国民の意思を問わずに憲法の実質的な改変が進んでいる。その例として志田氏は、2015年の安保関連法案や野党が憲法53条に基づいて臨時国会召集を要求した際に、政府・与党側が応じなかったケースをあげた。
 また志田氏は憲法95条には、地方公共団体に関する特別法の制定には、その地方で住民投票をしなければならない規定があるにもかかわらず、この条文に基づく住民投票は1950年代以降行われていないと指摘した。
 さらに志田氏は、日本では憲法として基本原則を定めた部分と、国会法や公職選挙法などの憲法付属法に分けているが、外国の憲法には詳細を憲法の条文に直接書いてあることが多く、欧米の国では何度も憲法改正しているという議論はその点を混同しているとした。
 保坂義久
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年5月25日号
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2021年10月18日

【支部リポート】神奈川 「カジノはいらない」横浜市長選に市民の思い=伊東良平

 神奈川支部では横浜におけるカジノを含むIRを反対する立場から、横浜カジノの是非を自ら決めようという「市民の会」などの活動を追跡取材して支部通信に掲載してきたが、その審判となったのが、8月22日に投開票が行われた横浜市長選挙であった。
 大きく報道されたように、カジノの「断固反対、即時撤回」を訴えた立憲民主党推薦の元横浜市立大学教授・山中竹春氏が現職閣僚を辞めて立候補した自民党の小此木八郎氏をはじめ過去3回当選の現職市長、元県知事の2人らを抑えて当選を決めた。菅首相のお膝元で全面的に支援した小此木氏の敗北はその後の菅首相の総裁選不出馬=事実上の退陣につながったのはご存じのとおりである。
 山中氏は医学部教授の立場でコロナについてテレビのワイドショーにゲスト出演していたとはいえほとんど無名の新人である。その知名度アップのために「市民の会」などの諸団体や労組、市民ボランティアが一体となって草の根的な宣伝活動を行った。多くの駅前でのビラ配布や政策チラシのポスティングなど、押し上げに力を発揮した。
 自民・公明が事実上応援した小此木氏が「IR誘致取りやめ」を表明したために、自民党の一部市議がIR推進の林前市長を支持して保守分裂に助けられた面もあるが、IRを反対する候補者も田中康夫氏など知名度のある人が立って票が割れたことを考えると、山中氏の善戦は際立っている。
 コロナ対策が後手となった菅政権の中で、横浜市はさらにワクチン接種が遅れるなどの状況であり、専門の立場で「データと科学的知見に基づくコロナ対策」を政策に掲げて、カジノだけでなく、コロナで得票を伸ばしたのが大きかったと言える。
 山中新市長は9月10日市議会で、IR誘致の撤回を正式に表明した。ここに2014年以来8年間続いてきたカジノ反対運動にピリオドが打たれた。結果が出た後で敗戦の辞を述べた林前市長は「IR誘致表明以来、反対の嵐のなかを生きてきた」と述べたが、反対の嵐を呼び寄せたのは、カジノはいらないという一人ひとりの市民の熱い思いが作った大きな台風の眼であった。
伊東良平
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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2021年03月05日

今夏の横浜市長選で反カジノ候補者を擁立=伊東良平

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 横浜市のカジノ反対で「カジノの是非を決める横浜市民の会」が誘致の賛否を問う住民投票を求めて、法定数の3倍を超える約19万筆を集めて直接請求したが、横浜市議会は1月8日の本会議で自民党と公明党の反対多数で否決した。審議はわずか3日で終了して住民投票は行われないことになった。
 「市民の会」は昨年の9月から署名活動を始めて2カ月間で署名を集めて直接請求を実現させたが、大きな民意は生かされない残念な結果となった。
 市議会閉会後の集会では約200名が集まり、署名集めに関わった市民や条例賛成の市議らが署名を意義がないとした林文子市長を強く批判して抗議した。
 また、同じ時刻に「市民の会」小林節共同代表や立憲民主党の阿部知子衆議院議員、共産党畑野君枝衆議院議員らが出席して記者会見も行われ(写真)、会期中の3日間に市民に意見陳述を認めただけで質疑もされずに、与党議員からは住民投票制自体を否定する意見が相次いだことも報告され、「市民の多数の意思に基いて運営されるあたりまえの横浜姿勢を取り戻す。カジノ撤回を明確にする候補を擁立して勝利をめざす」との声明を発表した。
 条例案否決から日がたたない1月21日、横浜市はカジノを含むIRの事業者の公募を始めた。今夏にも事業者を選び協定を締結するという。なお「市民の会」はいったん解散したうえで、今後は夏に実施される市長選に向けて、カジノ誘致を止める市長を擁立するために、広範な市民の結集を図って新たな組織を作って活動していくことにしている。
伊東良平
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2020年11月25日

【神奈川支部】 菅首相 人事で強権支配 値下げにこだわる政治家 朝日政治部・南記者が講演=保坂義久

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JCJ神奈川支部は10月24日、横浜市健康福祉総合センターで例会を開いた。朝日新聞政治部の南彰記者(写真)が菅義偉内閣の特質をテーマに講演した。
 南記者は、政治部と兼務して2013年から大阪社会部に赴任。15年の大阪都構想をめぐる住民投票が僅差で否決された後に東京へ戻った。18年から新聞労連委員長となり、今年9月に政治部に復帰し、現在は国会取材班のキャップをしている。
22日に派閥会長を辞任した石破茂氏が、来年の自民党総裁選への出馬を質問されて『総裁選に出るとか出ないとか語るのは適当ではない』と答えたことを引き合いに出して、南記者は、「ものを言うことが自らへの支持を広げるにはマイナスとなるという今の永田町の空気感を示している」という。
 霞が関の官僚を取材しても、官邸の言うことには逆らえない雰囲気がある。同じように官邸が力を持っていた小泉純一郎内閣と比較して、南記者は「小泉内閣は『郵政改革』という政策での支配だが、菅政権は人事を使った支配」と指摘した。
 横浜市会議員の時代にも、幹部人事の情報を事前に入手した菅氏は、昇格予定の幹部に激励の電話をしたという。電話をもらった幹部は昇格が菅氏の影響力のためと思ってしまう。
 総務大臣の時にも、ふるさと納税拡大の問題点を直言した税務局長を左遷し、著書の中でも自分は人事を使って意思を示すと公言している。
 10月1日には日本学術会議の新規会員名簿から、安保法制などに反対した学者を外したことが明らかになった。官僚の人事以上に高度な自治が保障されるべき学術分野に介入が行われた。
安倍政権では森友・加計問題などで公文書がないがしろにされてきた。ところが菅氏は、民主党政権時代に出版した自身の著作の中で、公文書管理の重要性を力説していた。南記者は官房長官時代の記者会見で著作の内容を引き、「この発言している政治家をご存知ですか」と質問した。菅氏は自著にも関わらず「知らない」と答えたという。その著作「政治家の覚悟」は最近、文庫化されたがその部分は省かれていた。
南記者は菅氏の政治手法は大阪維新の会に通じるところがあるという。大坂維新の会も県市の行政組織や労働組合とは対決したが、コストカットした財源を子育て世代に回すなどして支持を集めた。
「菅氏は値下げの菅≠ニいわれる。携帯電話料金の引き下げの他に、Gotoキャンペーンも値下げの一種。不妊治療の保険適用も、制度改正の前に予算措置を先にするのではないか。国土交通省の政務官の時に東京アクアライン利用料を引き下げるなど、値下げにこだわる政治家」(南記者)。就任会見では自助を強調したが、リベラル側の政策も取り込んで自分の手柄にするのではとの見通しを語った。
 また南記者は、10月3日に原宿のパンケーキ屋で行われた官邸記者クラブ所属各社の首相番との懇談を、朝日、東京、京都新聞の3社が断ったことについて経緯を語り、総理の宣伝じみた懇談ではなく、本来は記者クラブ側から取材を申し込んで応じさせるべきだと強調した。
保坂義久

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2020年11月23日

住民投票で横浜カジノ不要が多数なら撤回=伊東良平

 11月4日、カジノ誘致に関する住民投票実施のための署名活動が法定の2か月間を経て終了した。集まった署名は20万5800筆にのぼり、住民投票条例の申請に必要な6万2千500人分の3倍以上となった。署名は事前登録した受任者が集めなければならず、住民投票の実現を推進する「カジノの是非を決める横浜市民の会」は署名開始にあたり、実に4万3千人もの協力者を得て臨んだ。広域圏自治体における住民直接請求の成立はただでさえ難しいところに、コロナにより各種の集会が制限され活動は困難を極めた。
 しかし、市民の反応は好意的で街頭署名には行列も出来るほどであった。集められた署名は居住区ごとに仕分けられ、11月13日に市内18区の選挙管理委員会に審査のため提出された。選管が有効な署名と判断すれば、林市長が市議会に条例案を提出し、可決されれば来春にも住民投票が行われる。
 署名活動は横浜市議会全野党の賛同を得て進められたが、政治的な枠組みを超え保守層からの支持も拡大している。山下ふ頭の地権者である横浜港運協会前会長はカジノに反対し退去はしないと公言。また、神奈川県議会議長や自民党県連代表を長年歴任された保守の重鎮もカジノ不要を表明している。9月の市議会では市長に対し自民党市議からもIRカジノについて「事業効果を再確認する必要があり、事業の推進は冷静に進めるべき」との意見が出された。市長は記者会見で本年度のカジノ関連予算の減額と来年度の事業費見直しを示唆した。
 さらに、市民による署名活動の高まりを受け市長は会見で「住民投票が実施された場合にはその投票結果を尊重し、反対多数の場合は横浜誘致を撤回する」と述べている。住民運動が市に方針転換をもたらせた意義は大きい。政府は自治体からの地域整備計画の受付を9か月延期した。すでにラスベガス・サンズ等の米国系参入予定企業は撤退し、国内で参入予定のセガサミーも人員整理を始めた。現状では世界のカジノ事業者はコロナ禍で財務内容が悪化して新たに投資するような余裕はなくなっている。住民投票の結果を待つまでもなく、1日も早くカジノ撤退の決断をすべき時である。 
伊東良平 
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2020年10月05日

横浜カジノ反対署名活動スタート 林市長「むちゃぶりできず」と方針転換=伊東良平

                                                      
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 横浜カジノの予定地とされる山下ふ頭に隣接する山下公園で8月22日に行われたカジノ反対市民集会に引き続いて、いよいよ9月4日から住民投票実施のための署名活動がスタートした(写真)。今のところ滑り出しは順調だが、期間が2カ月間と決まっていて、この間に最低6万2万筆を集めなければならない。直接請求の署名活動は詳細が法律で決まっていて、ただ署名を集めればいいというわけではなく、まず署名を集める受任者というものを登録しなければならず、この受任者が集めた署名簿でなければならない。
 署名活動を進める「横浜カジノの是非を決める横浜市民の会」では今回の署名スタートまでに受任者を実に4万3千名集めて背水の陣で臨んだ。つまり、受任者1人が自分を含めて2名署名すればゆうに6万筆を超えるが、会では、市長リコールが出来る数の50万をめざそうと勢いを上げている。
 ここにきて、林文子市政を支える保守層からもカジノ誘致反対の声が上がりはじめている。港湾運送事業の発展を推進していて、山下ふ頭の地権者である横浜港運協会はカジノに反対し退去はしないと明言している。また神奈川県議会議長や自民党県連代表を長年歴任した保守の重鎮もカジノ不要を表明している。
 さらに9月の横浜市議会では自民党市議からも市長に対しIRカジノについて事業効果を再確認する必要があり、事業の推進は冷静に進めるべきとの意見が出された。その後、誘致撤回を求めている野党側の要望書に対して市長は「国家プロジェクトだが、むちゃぶりできない」と回答、会見で本年度の関連予算の減額と来年度の事業費見直しを示唆した。
 かつてIRカジノはトランプ米大統領による開放圧力と噂されたが、すでにラスベガス・サンズ等の米国系事業者は撤退している。世界のカジノ事業者はコロナ禍で財務内容が悪化しており新たに投資するような余裕はなくなっている。秋元司衆議院議員の再逮捕でカジノ整備法の基本方針はさらに厳格さが求められることになる。すでにIRカジノ構想は破綻している。
 日本に興味を持って観光で訪れるアジアの人々をギャンブルに誘い込み、持ち金を巻き上げて市の財源にすることに全く道理はないし、また行政が博打を市民に奨励することなどあってはならない。
 伊東良平
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2020年09月29日

【支部リポート】 神奈川 コロナ禍 様々な体験談 優生思想への危惧も議論に=保坂義久

 神奈川支部では1年に4回を目安に例会を開いてきた。今年は2月1日に川崎市のヘイトスピーチ禁止条例をテーマに例会を開いたが、その後にコロナウィルス感染が拡大し、4月に予定していた例会は中止。講演予定者には、相模原の障がい者施設大量殺傷事件裁判について、支部の機関紙に執筆してもらった。
 その後、休館となっていた公共施設が6月以降に再開、手頃な会場が予約できたので、7月11日に支部総会を開いた。今年は支部総会の後に行う外部から講師を招く集会ではなく、会員同士が自由に語り合うフリートークの会を行った。
 部屋は定員57人の半分までの利用とされ、消毒剤も用意されていた。参加者は9人で十分に社会的距離がとれた。
 総会では、地域マスメディアの記者との交流とともに、「例会などを通して、メディアの現状をありのままに市民に伝え、市民と共にジャーナリズムを鍛える」とするJCJの役割の明示を含む運動方針を採択した。
 続いてフリートーク。2時間ほど話し合ったが、中にはコロナ禍での身近な出来事などの発言もあった。社会福祉の現場で働く会員からは「ソーシャルディスタンスと言われても、それでは介助できない」という。集団で福島を訪問した会員は、ある村営食堂で昼食をとろうとしたおりに「東京に近い横浜から来た人はご遠慮ください」と断られた経験を語った。
 当支部と協力関係にある機関紙協会神奈川県本部で活動する会員は、参加団体からの情報として医療生協で病院収入の減少、自粛による市井の建築業への影響を報告。コロナの広がりを感じさせられた。
 神奈川の大きな問題であるヘイトデモや、運動シーンにおける女性の活躍、ツイッターデモなどにみられる政治への関心の高まりなど様々な事柄が話題になった。
 テレビ局出身の会員が今のテレビの現状を批判、東京高検検事長と新聞記者の賭けマージャン問題については、元検察担当の記者が解説した。
 相模原の事件に関連し新たな「優生思想」への危惧や、被害者の匿名報道の是非などが語られた。コロナウィルスの流行は社会にどういう影響を与えるか、など様々な話にも及んで、とても豊かな議論の機会となった。
保坂義久
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号

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2020年08月28日

横浜カジノ反対集会に800人参集 住民投票の署名活動は9月4日から=伊東良平

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 2019年8月22日、横浜市の林文子市長はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を表明したが、その1年後となる8月22日(土)に市民団体がカジノ立地を予定している山下埠頭の隣の山下公園で反対集会(写真)を開いた。
 「カジノもコロナも終息へ」と銘打った集会は、住民投票の実施をめざす市民団体「カジノの是非を決める横浜市民の会」が主催したもので、800人が参加した。会の共同代表を務める小林節慶応大学名誉教授の挨拶のあと地元選出の立憲民主党・阿部知子衆議院議員や共産党・畑野君枝衆議院議員など政党関係者が力強い連帯のアピールを行った。
 さらにはアイドルグループ「モーニング娘」の元メンバー市井紗耶香さんも応援に駆けつけた。市井さんは子育てプロジェクトチームのコーディネーターを務めており、親として賭博施設は認められないとマイクを握った。
 横浜市は首都圏で最初にカジノ誘致に手を上げ、6月に実施方針を明らかにして年度内に事業者を選定するスケジュールだった。しかし、IRをめぐる汚職問題や新型コロナウイルスによる感染拡大で、有力候補で日本のカジノ開放を狙っていたアメリカの「ラスベガス・サンズ」が撤退を表明し、推進側には厳しい状況になっている。
 コロナ禍によって世界のカジノ施設は事実上停止状態になっていて、横浜市はIRの実施方針公表を延期するなど当初構想は崩れている。
 この集会を主催した市民団体は9月4日から誘致の是非を問う住民投票に向けた署名活動をスタートさせる。当初は4月から行う予定であったが、コロナの影響で延期していた。期間は2カ月間で、街頭などのほか市内に約100カ所の署名スポットを設けて市民と対面しながら署名の促進を図るという。
 集会の最後は横浜の18の選挙区にある市民連合の代表らがのぼりともに壇上にあがり、「カジノは断念」などのシュプレヒコールをあげた。参加者も「林市長は勝手に決めないで」と書かれたプラカードを掲げて応じ、会場は真っ赤なプラカードで埋め尽くされた。
伊東良平


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2020年03月10日

カジノ隠しに躍起 エンタメ性ではぐらかす 横浜IR産業展 経済効果業者の言い分PR=保坂義久

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 1月29日、30日の両日、横浜市みなとみらい地区にある展示場パシフィコ横浜で「統合型リゾート産業展」が開かれた。29日の開会前には、会場へ向かう連絡通路で、横浜市の統合型リゾート(IR)誘致に反対する「カジノ誘致反対横浜連絡会」のメンバーが、産業展入場者に向かいカジノ反対をアピールした。
 「カジノの収益の源泉は客の負債。横浜市は市の財政への寄与を期待しているが、ギャンブルで自己破産し生活保護受給者が増えれば、財政にも悪影響」「IRは施設内に客を囲い込むから、周辺の観光地にカネが落ちるわけではない」「安倍首相はカジノが成長産業だと言っているが、世界的にはカジノ産業は伸びていない」などと訴えた。
 この抗議活動をスマホで撮影する入場者と思われる人もいた。テレビ局も数社、反対派のインタビューを取材していた。

海外事業者目立つ
 会場でひときわ目立ったのは、ラスベガスサンズ、メルコリゾーツなど海外のIR事業者のブースだ。サンズなどのブースにはステージで派手なショーが行われていた。
 エンターテインメント性を売り込んでいる一方でスロットマシンなどギャンブルに関する展示は全くない。IR担当副大臣だった秋元司衆議院議員が収賄罪で逮捕・起訴されてカジノは大きくイメージダウン。このためカジノ隠し≠ノ躍起と感じた。
 大手ゼネコンはIRとは直接関係ない直近の事業事例をパネルで紹介していたが、IR施設建設が狙い。
大手家電メーカーの担当者にIRと展示の関わりを質問すると、パネルの半分を示して「向こう側の展示は、直接関係はないですよ」と笑う。最新技術を示してなんとかビジネスチャンスを得ようというわけだ。
 会場には昨年12月発行の横浜市の広報紙の特別号が積まれていた。IRについて「子どもから大人まで誰もが訪れ、楽しむことのできる施設と、これを収益面で支えるカジノ施設を一体的につくり、(民間業者が)運営するもの」とPR。

韓国は地域が荒廃
 経済波及効果や市の増収効果などについて具体的な数値を挙げているが、よく見るとその横に「効果(数値)については事業者から提供された情報です」とただし書きがつく。業者の言い分をそのまま載せている。市が十分な調査・研究をした上でカジノを誘致したのではないことが明らかだ。
 カジノ誘致反対横浜連絡協議会の後藤仁敏共同代表はこう市の姿勢を批判する。
 「私も展示会を見ましたが、賭けごとにかこつけて商売しようとしていることに腹が立ちました。大阪で明らかにされた事業者の募集要項によると、カジノ運営企業に利益が出なかった場合、自治体が補償すると決められている。横浜市に文書開示を請求したところ、文書は黒塗りだった。
 韓国の江原にあるカジノは唯一自国民が入場できるが、ギャンブル依存症が増加し、地域が荒廃してしまった。観光地として魅力ある横浜が、カジノに手を出すべきではない」
 保坂義久
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号
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2020年02月29日

川崎市ヘイト禁止条例 7月施行 勧告・命令・告発の3アウト方式℃i法判断で公平性担保=編集部

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 神奈川支部は2月1日、横浜市中区の横浜市開港記念会館で例会を開いた。日本で初めてヘイト行為を刑事罰によって規制する「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(7月施行)の意義について、神奈川新聞川崎支局長の石橋学さん(写真)が解説した。
 また石橋さんは自身が訴えられた裁判にも言及し、多くの支援者に支えられていると語った。
石橋さんの講演要旨は以下の通り。

命の危険感じる
 昨年12月、川崎市議会は差別根絶条例を全会一致で可決した。自民党から共産党まで全会派が賛成した意味は大きい。その背景には立法事実や差別デモ、ヘイト行為の実態がある。ヘイトデモは聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせ、その対象者は生命の危険を感じるほどだ。今回の条例成立は、行政や議会がその現実を共通認識として持てたことによる。
 川崎市の桜本地区には朝鮮半島出身者が多く住んでいる。ヘイトデモは2013年5月から始まり、11回目からは桜本地区を目標にデモが行われた。地区の住民は川崎市にデモの出発点として市が管理する公園使用の不許可を要請した。市の答えは「根拠法がないからできない」「何がヘイトスピーチにあたるか判断が難しい」というものだった。
 運動団体の「ヘイトスピーチを許さない川崎市民ネットワーク」は条例制定を市議会に求めた。市議会には日本会議に所属する右派系の有力議員もいる。条例推進派は、議場の日の丸掲揚を推進した有力議員にも働きかけた。「自民党議員に呼びかけても無駄だろう」などと言っている場合ではなかったからだ。その議員は条例が可決された後、推進派の人に「5年間かかってしまってごめん」と言って固く握手した。

足りない点ある
 条例成立の契機は16年成立のヘイトスピーチ解消法。しかし同法は理念法で、ヘイトを罰則で規制するものではない。罰則付きの法律ができないのは「表現の自由」に抵触するという議論があるからだ。
 在日コリアンの人権も表現の自由も共に守るため、川崎市の条例はいろいろな工夫をしている。 
 条例ではヘイト行為に対し勧告、命令、警察・検察への告発という3アウト方式≠とっている。市の警告に従わない確信的な行為に処罰を限定するためだ。これなら普通の人の言論が萎縮することはないと考えられる。
 市の裁量で科せる行政罰の選択肢もあったが、刑事罰を選び司法の判断を加えることで、公平性・透明性を担保している。
 条例では街頭デモを想定し、拡声器やプラカードなどの手段も示し差別的言動を禁止している。
さらに具体的にヘイト行為の類型を示し、在日コリアンに対する「出ていけ」とか「殺せ」とか「ゴキブリ」とか言った言葉を禁止した。
 足りないのは誹謗中傷して憎悪を煽る行為を類型にあげて禁止しなかった点で、今後の課題だ。ヘイト側は「朝鮮人は罪を犯しても処罰されない」などのデマを拡散し偏見を煽っている。関東大震災時のデマは、朝鮮人・中国人に対する偏見を増幅し、その後の戦争につながった。
 現在、やまゆり学園事件が起きた相模原市でも罰則付きの人権条例を検討中だ。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号
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2015年07月29日

戦争政策ぶり返す安倍政権 「民衆談話の会」が記者会見=須貝道雄

 埼玉県の市民グループ「民衆談話の会」は7月7日、東京の日本プレスセンターで「戦後70年・私たちの談話」(略称・民衆談話)に関する記者会見を開いた。
 冒頭、今年100歳になったジャーナリスト、むのたけじ氏(元朝日新聞記者)が自宅と会見場を結んだ電話インタビューに応じ「安倍政権がしているのは戦争政策のぶり返しだ」と厳しく批判した。
 太平洋戦争について、むの氏は「本当なら70年前の8月15日、戦争が終わると分かった時に、隣近所や職場で、あの戦争は何だったのか、考えることをすぐ始めるべきだった」と指摘し、「自分たちの物差し、ハートで反省する」ことの重要性を強調した。

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2013年09月07日

むのたけじさんが講演 「今こそジャーナリズム本来の役割を」(埼玉新聞サポーターズクラブの呼びかけで)=菊地正志

 98歳の現役ジャーナリスト、むのたけじ(本名・武野武治)さんが、埼玉県さいたま市中央区で「今、真のジャーナリズムとは〜希望は絶望のど真ん中に〜」をテーマに講演した。
 むのさんは「人々の権利と考えを社会にぶつけるのが本来のジャーナリズムだ」と強調。埼玉新聞などの地方紙に対して「人々の歴史と土地の特性を掘り起こし、新しい文化の風を起こしてほしい」とエールを送った。

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