2023年02月14日

【支部リポート】東海 戦後70年、新たな学び 在日歌人の告発・糾弾うけ=加藤 剛

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 JCJ東海支部は年末の12月8日愛知県平和委など十一団体と共催で「十二・八不戦のつどい」を開き名古屋大名誉教授・安川寿之輔さんの講演を聞いた=写真=。会場は愛知民主会館、オンラインを合わせて60人が参加、安川さんは「在日歌人・朴貞花(パッ・チョンファ)が告発・糾弾する日本近現代史」と題して講演した。

 東海支部の主催する大きな集会は当初夏の8・15集会一つだったが、8・15場合はどちらかと言えば原爆、空襲、戦死、食糧難など戦争による被害の側面が話題の中心となりがちで、侵略、人権侵害など加害の側面は影が薄かった。そこで2018年新たに「アジア・太平洋戦争を忘れない実行委」が発足、以後同じ一つの実行委員会で8・15集会と12・8不戦のつどいの両集会を開いている。東海支部はその実行委の重要な部門を引き受け今年も集会成功のため力を注いだ。

 安川さんは12・8不戦のつどいの講演でこの7月歌人朴貞花(パッ・チョンファ)さんと共著で歌集「無窮花(ムグンファの園)」を発行したこと、朴さんの短歌の数々がそのまま日本近現代史への告発、糾弾となっていることを紹介した。

 アジア蔑視、女性蔑視の「福沢」の 高額紙幣に国の翳(かげ)みゆ
 この歌を知って安川さんは大変驚いたという。福沢諭吉は「天は人の上に・・・」の言で知られる「偉人」とされており1万円札の顔であるが安川さんの調査・研究の結果その実像は正反対の差別男でありアジア侵略の主唱者であった。そして何と、朴さんの短歌の数々は安川さんの研究と相通じるものがあり、これが二人の出会いにつながった。

 陸軍省任命の男たちは 朝鮮に侵入し盗測を始めた「韓国強制併合」の三十八年前だ
 兵士が民間人に変装して極秘に測量する「潜入盗測」、のちにこの測量が役立って日清・日露戦争の勝利、韓国併合につながったという(この潜入盗測を知る人は少ない)。
 以上は序の口、歴史告発の歌は山ほどあり、集会参加者は勉強にったようだ。本も売れた。JCJ会員の一人はフェイスブックで朴さんと友達になった。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号
 

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2022年06月18日

【支部リポート】東海支部と東海の会 多面的に情報提供を ウクライナ情勢めぐり学習会=山本邦晴

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  JCJ東海支部の会員が協力する「NHKとメディアを考える東海の会」は4月30日、「ウクライナ情勢とメディアの役割〜その実情と課題を読み解く〜」と題して学習会を開催、池住義憲代表がウクライナ戦争をめぐるマスメディアなどの情報発信や信ぴょう性などについて解説=写真=(撮影・巽明)した。
 参加者からは「マスメディアは多面的に情報を提供すべきだ」といった意見が出た。高野春廣運営委員が司会を担当、学習会にはJCJ会員4人を含め、市民ら約30人が参加した。
 池住代表は1970年代からベトナム、イラクなどの戦争に反対する活動を続けてきた立場から「戦車やミサイルなどを使って国が国に対して軍事侵攻する戦争は、21世紀に起こらないだろうと思っていた」と振り返り、ロシアのウクライナ侵攻は国連憲章や国際法で禁止されていると説明した。世界中のメディアは今、戦況や両国の歴史的経緯など周辺の情報を流すことで戦争を相対化し分析してしまい、侵略や破壊行為を見えにくくしていると疑問を呈し、侵略行為は駄目と言い続けてストップさせることがメディアの原点だと呼び掛けた。
 池住代表は、ウクライナの軍事情勢や市民の被害など悲惨な現状を説明した上で、ウクライナの地理や宗教、近年のロシアとの外交や政治状況を詳細にわたって解説し、日本は憲法9条を持つ国として戦争を止めるために非軍事の対応があるのではないかと問題提起した。
 参加者からは「日本のメディアはウクライナが善でロシアが悪という見方で伝えがちだが、私たちが考えるうえで参考となるさまざまな情報を伝えるべきだ」といった意見や、「NHKBSでウクライナ・ドンバス地方のロシアとの抗争をテーマにしたアーカイブドキュメントを放送していた。NHKは今のことだけでなく、アーカイブを活用して過去のいきさつも積極的に放送してほしい」と望む声があった。
山本邦晴(共同通信OB・JCJ会員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年5月25日号
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2022年01月25日

高校生の原発劇 放映中止 福井ケーブルTV「差別」口実に=伊藤洋子

 毎年秋開かれている福井県高校演劇祭では上演された全作品を地元の福井ケーブルテレビが放送してきた。今年の演劇祭はコロナ下のため無観客で開催され、唯一見てもらえる機会は同テレビ局の放送だったが、「差別用語の使用」を理由に県立福井農林高校の劇だけが放送されない事態になった。
 農林高の劇は、1948年の福井地震から原発が集中する福井の歴史をたどり未来へと、女子生徒2人の掛け合いで将来への不安と闘うというもの。題名は「明日のハナコ」。
 上演した翌日(9月20日)に、同テレビから同校の劇は「差別用語の使用、原発という繊細な問題の扱い方」に対し、県高校文化連盟(高文連)に意見を求める連絡があったという。高文連からはテレビ局の「意向を尊重する」とし、局が放送しないと決定したらそれに従うとした。理由は「放送後に生徒への非難が寄せられることを憂慮する」というもの。
 問題とされた表現は、83年福井県敦賀市の当時の市長が、原発誘致を主張する講演会での話言葉をそのまま紹介する中に身体障害者への差別用語を使っており、市長名とその言葉が個人を特定し、差別表現になるというものだ。
 脚本を書いた同校演劇部元顧問の玉村徹さん(60)は11月、放送見送りの撤回を求める要望書を高文連あてに提出。台本をネット上に公開するとともに、表現の自由を奪わないでと題するネット上での署名活動をはじめ、上演実行委員会代表として、12月12、19日には県内で再上演と人権及び原発学習会の開催を決めた。動きは広がり、1月には大阪、愛媛でも上演・学習討論会が決定している。
 12日同県内で開かれた上演と学習会には約50人が来場。劇は玉村さんと劇作家の鈴江俊郎さんが演じ、学習会は弁護士の小出薫氏を囲んで活発な議論が交わされた。席上、玉村氏は「(テレビ局に)音声を消してもいいと言ったが、それでもダメとなった」。上映不可となったとき「くやしい、つらい」と涙を流す生徒もいたが、問題が表面化してくる中で「テレビの放映は望んではいない」「注目を浴びたので怖い」といった意見が出てきたという。会場からは「原発立地県では原発問題の演劇はできないことになってしまうのでは」と危惧する声も出た。
 伊藤洋子
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2021年08月11日

【事件】愛知リコール不思議 「不自由展その後」余聞=加藤剛

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 2019年の国際芸術祭・愛知トリエンナーレは主催者に愛知県と名古屋市が中核団体として加わり、代表が大村知事、代表代行が河村市長と言う体制でスタートした。

知事、市長なぜ対立
 ところが芸術祭の一部「表現の不自由展・その後」の展示作品(平和の少女像など)にネットで非難が出始め代表代行の河村氏が2日目に展示を見てその場で突如反対を叫び紛糾した。
 主催者の代表代行が展示を見て驚き代表に抗議するということは普通にはあり得ないことだ。前日に大阪市の松井市長から河村市長に展示のことで電話があったと言うから、その電話が重要な役割を果たしたのではないだろうか。

言いだしっぺは誰?
 大村愛知県知事へのリコール運動はクリニック院長の高須克哉氏が代表格で会長、河村市長が有力な応援団員という2人3脚の形で始まった。
ところが署名の不正・偽造が云々されるようになると、高須会長は「リコールをしようと思うが手伝ってくれるかという話が河村市長からあり、それが始まりだ」と言うようになった。一方河村氏は「高須さんからリコールの話があり、私は応援隊だ」と真っ向対立、怒った高須氏はメディア上で「もう河村氏とは絶交だ」と宣言、「この指とまれ」と言い出したのは誰か、今も謎となっている。

 目の敵にも順位?
 一昨年の「言論の不自由展・その後」では、展示作品への抗議は「平和の少女像」に集中、河村市長も少女像を目の敵にしていた。当時の「嫌韓ブーム」に背中を押されたかもしれない。
 一方、半年後の大村知事リコール運動では「天皇陛下の写真を燃やす作品に分担金を出せという大村知事はやめてチョウ」というのが謳い文句となった。その方が署名を取りやすいという判断があったのだろう。
 
 大宣伝、署名伸びず
リコール運動には百田直樹氏やデビ夫人ら著名人が応援に加わりメディアへの露出は派手だった。実際の活動はコツコツと署名を集める受任者たちに依存するが、その受任者の数が十分確保されなかったようで、私の周辺では署名したという話は皆無に近かった。街頭署名も実際に動くのは河村系地域政党「減税日本」や「維新」、「日本第一党」などの関係者が中心だった。
 昨年秋の締め切り直前に提出された署名は43万2千余人で必要数86万6千に程遠くリコールは不成立となった
 
 偽造決断、真相は?
普通ならそれで幕となるのだが選管の調査で集まった署名のうち36万人分(83%)が不正・無効と分かりアルバイトによる名簿の書き写し、一人で何人分もの拇印押しも判明、運動を取り仕切った田中孝博事務局長(元維新県議)らが地方自治法違反で逮捕、送検された。
田中事務局長は自白を拒んでおり法廷で真相がどこまで判明するか注目される。

 崩壊した「完全犯罪」
 この間のツイッターなどSNSをまとめた人のリポートによるとリコール運動に共鳴し署名集めに協力した人たちの中には集まった署名に「おかしいぞ」と疑念を抱く人が何人もおり中には「スパイの仕業ではないか」と疑い不正署名の束を抜き取って隠し、高須会長から窃盗の罪で告発された人もいたという。このため「不成立」なら団体にそのまま返還されるはずの署名が選管の管理下に置かれ選管の告発で警察の出番となった。団体の内部では、「不成立でも43万人以上がリコールを求めた」となれば知事を辞任に追い込むことができる」と言う話もささやかれていたという。そういう目論見も偽造の露見で雲散霧消した。
 7不思議の7番目は今年の「不自由展その後」への爆竹脅迫と会場閉鎖に関連するが捜査中でもあり割愛する。
加藤 剛
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
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2021年07月20日

【支部リポート】東海 何故咲いた?署名偽造のあだ花=加藤 剛

 コロナ禍を横目に愛知県では2020年夏から秋にかけて大村知事に対するリコール運動が展開され、大量の署名が不正・偽造と判明、逮捕者が出るなど今年に入ってからもごたごたが続いている。
 メディアはリコール運動の是非についてはあまり報道しなかったが、組織的な不正・偽造の判明で警察、検察が動くにつれて報道の見出しが大きくなり読者、視聴者の関心も先頭に立ったクリニック院長高須克哉氏や河村名古屋市長の関与の仕方、金の出どころ、週刊文春誌上での論戦(大村×河村)などに集まる傾向だ。
 しかし、メディアも市民県民も、大切なことを忘れていないだろうか。そもそも、このリコール運動はいったい何だったのか、偽造署名というあだ花は何故咲いたのか−−?

 「その後」のその後
 そもそもは、東京など各地の展示会で平和の少女像や天皇の肖像にかかわる作品、9条の俳句などの展示が外部からの抗議で取りやめになったため、その事例を実際に見て考えてもらおうという展示【表現の不自由展・その後】が一昨年愛知トリエンナーレ国際芸術祭の一部として企画・実行されたのが発端だ。
 事前にネットで紹介されたこともあって展示前から「平和の少女像」などの展示に反対する電話やファクスが目立ち、主催団体の幹部の一人(代表代行)である河村名古屋市長までが展示に反対を表明、反対者の一人から「ガソリンを持って会場へお邪魔する」という強迫のファクスが届くに及んで主催団体(代表=大村愛知県知事)は展示開始の二日後「表現の不自由展・その後」の中止に踏み切った。
 これに対し多くの市民団体が表現の自由を守る立場から中止に抗議し展示の再開を求める運動を展開、裁判和解による再開を実現した。

 もう一つ「そ・の・後」
 ところがこれで一件落着とはならなかった。主催団体の代表代行まで出している名古屋市が決められた分担金の支払いに応じないため代表の大村知事が河村名古屋市長を相手に支払い請求の裁判を起こした
 河村氏はこれに反発、コロナで市政多忙の時期にもかかわらず、ネトウヨを自任する高須克哉氏ともに大村知事リコールの運動を展開、街頭にも立ち「陛下の写真を燃やす絵の展示に金を払えという大村知事はやめてチョウ」と署名を呼び掛けた。
 河村氏は当初「慰安婦・少女像」の展示を非難の中心に据えていたがリコール運動では「陛下の写真を燃やす絵」を目の敵にした。
 リコール運動の本質は「表現の自由」抑圧であり、百田直樹氏ら著名人の協力を得ても少数の支持しか集まらなかったために不正のあだ花は咲いたのである。
 加藤 剛
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2020年03月06日

【支部リポート】東海 名古屋城整備訴訟の原告に 強権ふるう河村市長が被告=加藤剛

 名古屋城の整備をめぐる問題で市民を原告、市長を被告とする裁判が二つ進行中だが、マスメディアの扱いがまだ大きくないので市民には余り知られていない。
 そのうちの一つの裁判に東海支部の会員である私が原告として名を連ねていることもあって支部の機関誌や会報には名古屋城の「木造復元」にからむ話が時々掲載される。
 その裁判は「名古屋城天守の有形文化財登録をめざす会」の会員有志が名古屋市の河村たかし市長に対し「名古屋城天守の『木造復元』計画に絡む基本設計費八億円余の支出は違法だから返せ」と求める住民訴訟だ。
 背景には名古屋城が戦争末期に米軍の名古屋大空襲で焼失したこと、戦後本山革新市政の時に市民の寄付などで燃えない耐火建築の天守閣を再建したこと、河村市長が「それを壊して『木造で復元』すれば観光客が増える」と言って天守の解体と「木造復元」を急いでいることなどの経緯がある。 
 まだ文化庁の許可も下りていないのに億単位の大金が次々に支出されるのを阻むためである。 
 もう一つはこの名古屋城「木造復元」問題に絡む重要な情報(基本設計の詳細や図面、市長や市職員が文化庁を訪問した時の文化庁担当者の発言)が市民に公開されず、公開請求をしても黒塗りの多い文書しか出て来ないという情報隠しが目立つことだ。
 このため「名古屋市民オンブズマン」の新海聰弁護士らが河村市長に対して「情報公開請求」の民事訴訟を提起した。
 「木造復元」計画が本決まりにならず完成予定が何度も延期されて、「漂流」とか「座礁」「頓挫」「落城」などとささやかれる河村市長にとって二つの裁判はまさに前門の虎、後門の狼である。
 両方とも裁判長は同じであり、市側の代理人(弁護士)も同じ人物である。余談だが市側の代理人は女性ジャーナリストへの人権侵害で訴えられた被告男性の代理人と同じ人物である。
 そんなこともあって私はこのところ月一回くらいのペースで二つの裁判を傍聴している。
 加藤 剛
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

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2016年08月29日

元NHKディレクター、市民運動拡大を呼びかける/8・15名古屋集会=加藤 剛

 JCJ東海の会員は20人余、年齢構成は60歳代がほぼ15%、70歳代が50%、そして80歳代が35%。
 大半が新聞やテレビ、出版関係のOBや文化人で現役のジャーナリストは2、3人にとどまっている。
 月に1回は月例会を開くことになっているが、これがなかなか難しく、年1回の忘年会がやっとという年もあった。そんな中、今回は苦肉の策で、幹事会と月例会を合わせた形の拡大幹事会を7月末に開催し、参議院選挙の後の情勢や8・15集会の準備などを話し合った。

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