2024年12月09日

【沖縄リポート】フェイクニュースを覆す勇気を=浦島悦子

            
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 10月27日の衆議院選挙は、自公が過半数割れの結果となったが、戦後3番目に低い53.75%という投票率は、自民党だけでなく政治そのものへの不信を反映しているのかもしれない。

 沖縄県内の投票率は全国よりさらに低く、50%を割り込む49.96%。4つの小選挙区の結果は、これまでと同様、オール沖縄系2対自民系2となり、自民党への支持の根強さ、あるいは辺野古新基地建設を巡る県民の「疲れ」を感じさせた。

 3区で小選挙区落選となった立憲の屋良朝博氏は比例復活当選、4区では、れいわの山川仁氏が比例復活当選した。4区の候補者選定を巡り折り合えなかった山本太郎・れいわ代表の「オール沖縄は終わった」という発言が批判を浴びているが、オール沖縄支持かられいわ支持に移った県民が一定数いることは無視できない。宮古・八重山を中心に爆発的に増強されていく自衛隊基地、ミサイル配備などに取り組めないオール沖縄への批判も耳にした。

 名護市小選挙区では、屋良氏が自民・島尻あい子氏に2300以上の票差で敗北。沖縄市・うるま市では屋良票が上回ったにもかかわらず、名護の票差が大きかった。自民党逆風の中で島尻氏が勝利したのは、建設業者がSNSで流布した「あい子が敗ければ、ジャングリアをはじめ、すべての事業がストップする」というフェイクニュースが大きく影響したのではないかとも言われている。
 今回の名護の結果は、1年余り(2026年1月)に迫った名護市長選に直接響いてくる。政権直轄とも言える現市政陣営は、同様のフェイクニュースで市民を洗脳してくるだろう。2300票の票差を覆すためには、フェイクニュースを覆す発信力と、新たな票(とりわけ若い層)を掘り起こし、投票率を上げることが何よりも必要となる。

 総選挙後、初めて行われた辺野古ゲート前県民大行動(11月2日、約750人参加)では、今回当選した国会議員たちも挨拶に立ち、「今後も現場のたたかいと連携した国会活動を行っていく」と決意を語った=写真=。

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2024年11月06日

【沖縄リポート】悪夢よみがえらせる新首相 決して忘れない=浦島 悦子

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 10月1日に就任した石破茂新首相は、沖縄にとって、また我が名護市にとっても悪夢を蘇らせる人物だ。
 自民党幹事長時代の2013年、辺野古新基地建設に反対していた自民党県連及び県選出・出身国会議員らを屈服・承認させた。石破氏の後ろで、彼らが首をうなだれて連座する姿を見せつけられた屈辱を県民は「平成の琉球処分」と呼び、決して忘れない。

 また、翌2014年の名護市長選挙では、一貫して新基地建設に反対してきた稲嶺進市長(当時)に対し、基地を容認する候補が勝てば500億円の名護振興基金を出すと口約束。「名護を500億円で買おうとした」人物として悪名高い。(この発言は市民を愚弄したと反感を呼び、稲嶺市長は2期目の当選を果たした。)
 10月5日、辺野古ゲート前で開催された毎月恒例の県民大行動(約650人参加)で冒頭挨拶した稲嶺進・オール沖縄会議共同代表(元名護市長)は石破氏の所業に言及し、軍備強化を国政の最重要課題とする危険性に警鐘を鳴らした。
間近に迫った総選挙への立候補を予定しているオール沖縄候補4人も勢揃いし、「戦争前夜」を作り出している政治を変えるために全員の当選を!と訴えた。

 石破首相は10日、ラオスで韓国のユン・ソンニョル大統領と首脳会談し、緊密な連携を約束したが、日米韓の軍事協力強化が平和への道を開くとは思えない。
 一方、韓国の市民レベルの平和に向けた積極的な動きは希望を感じさせる。9月下旬、「朝鮮国連軍」の廃止を訴える韓国の市民団体が神奈川(国連軍司令部)・沖縄(同後方支援基地=嘉手納・普天間・ホワイトビーチ)・石垣を視察する遠征ツアーを行った。

 1950年の朝鮮戦争時に米国主導で発足した朝鮮国連軍が今も存在することは、沖縄でもほとんど知られていない。ツアーは、国連軍を廃止し、東アジアから米軍を追い出して平和への道を切り開くこと、沖縄民衆との連帯を強めることを目的に行われ、辺野古テント村も訪問した=写真=。
              JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号

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2024年10月12日

【シンポジウム】日米関係の諸問題集約 米兵事件めぐり、JCJ沖縄と沖縄大学共催 情報コントロールは警察庁と官邸=米倉外昭

                       
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           シンポに参加した青木理さん(左)と金城正洋さん  

 JCJ沖縄は7日、那覇市の沖縄大学で、同大と共催で公開シンポジウム「米兵事件はなぜ隠されたのか―見えない壁の正体」を開催した。昨年12月に発生し、今年6月まで隠ぺいされていた米兵による16歳未満の少女への性暴力事件を巡って、なぜ半年間も隠ぺいされたのかに迫った。オンラインと合わせて約300人が参加した。

 シンポはJCJ沖縄世話人の黒島美奈子さんの進行で、事件を最初に報じた琉球朝日放送の、当日のデスクだった金城正洋さんが、報道に至る経緯を報告した。
 6月23日の沖縄戦慰霊の日の翌日24日、担当記者が地裁の期日簿のチェックをして事件を知り、25日に起訴状の開示を受け、昼ニュースで報じた。すぐに各社が速報に動き、半年間の隠ぺいへの怒りが広がっていった。
 金城さんは、県民の知る権利のために働くメディアとして、ルーティンをしっかりこなし、問題意識を研ぎ澄ましていることの重要性を指摘した。

 県警や政府が隠ぺいの理由にした被害者のプライバシーについて「報道する側は常に最大限の配慮をしている。被害者はケアされ、加害者は罰せられないといけない」と隠ぺいの問題点を指摘し、人権に最大限に配慮しながら知る権利を行使する重要性を強調した。
 続いてジャーナリストの青木理さんが近年の警察と政治の関係について話した。3人の内閣官房副長官の官僚から起用される1人が、安倍政権では公安警察出身の人物が長年権勢を振るい、岸田政権になっても構図は変わっていないと指摘した。

「警察はあらゆる情報を持っているので、政治にとって便利だ。警察は政治と一体化し、この間、特定秘密保護法などの治安法を次々と手に入れた」と説明した。そして、推測だとしたうえで「米兵事件の情報は警察庁、官邸でコントロールされているのではないか」と指摘した。

 黒島さんは、この30年の沖縄の米兵の性犯罪を巡る報道を調べた結果を紹介した。辺野古新基地問題を巡って沖縄県政と政府の関係が険しくなった2017年ごろから米兵事件が広報されなくなり、広報されても発生から時間がたっているケースがあった。
 青木さんは「この事件には日米関係のいろんな問題が凝縮している」と述べた上で、地位協定が改定できない背景として日本の人質司法などの問題も考えるべきだとした。

        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号
   
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2024年09月23日

【支部リポート】北九州 岐路に立つエイズ対策 国際AIDS会議を取材=久田ゆかり、杉山正隆

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 「人を第一に考えよう」(Put people first!)をテーマに、第25回「国際エイズ会議」(AIDS2024)が7月22日から26日まで南ドイツ最大都市、ミュンヘンで開かれ世界100か国以上から約2万人が参加した=写真=。北九州支部は感染症対策にも力を入れており現地で取材。国連首脳がエイズ対策は「岐路に立っている」と対策強化を呼びかけ、開催国ドイツのショルツ首相も「2030年までにエイズの流行を終わらせるという目標に向けて協力しよう」と国際社会にさらなる取り組みを訴えた。

 市民が自由に参加し感染者らと交流する「グローバル・ビレッジ」では子どもたち・学生らの姿も。問題解決のための「鍵」と位置付けられる性的少数者LGBTIQ+らへの支援の輪が広がったほか、特許により高騰している薬剤問題などでデモや抗議活動が繰り広げられた。
 子どもたちへの支援が不十分で今後も危機的状況が続くとの発表が相次いだ。国連エイズ計画(UNAIDs)のビヤニマ事務局長兼国連事務次長は、エイズ終結を確実なものにするため十分な予算を確保するとともに、差別や偏見に満ちた有害な法律を改廃し「正義のために立ち上がる」よう、指導者たちに呼びかけた。

 UNAIDs(国連エイズ計画)は年次報告書「Global AIDS UPDATE 2024」を発表。タイトルは「The Urgency of Now: AIDS at a Crossroads(今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ)」。各国が国連の場などで正式に約束した「2030年までにエイズを終結に導く」ことは可能だとしたうえで、「HIV対策に必要な資金を確保し、全ての人の人権が守られることを保障できた場合に限られる」と釘を刺した。
 会議はA基礎科学、B臨床科学、C疫学と予防科学、D社会科学と行動科学、E実装科学・経済・システムと相乗効果、F政治科学・法律・倫理・政策と人権が柱。演題数は2500を超えた。

 ジャーナリストも数百人が取材し、7例目となったエイズの完治症例や6カ月に1度服薬すれば予防ができる画期的な薬剤について等、大きく報道された。日本人記者の姿は見られず、日本での報道はごく一部に限られた。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
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2024年09月10日

【シンポジウム】沖縄本島にも基地・施設 自衛隊の地対艦ミサイル連帯配備 「攻撃の的になる」危機感=古川英一

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 「日米共同作戦の拠点化許すな!」をテーマに沖縄・琉球弧の声を届ける会が7月の20日から2日間開いたシンポジウムとフィールドワーク=写真=に参加した。
 
 那覇市から車で約1時間半、うるま市の小高い丘にある陸上自衛隊勝連分屯地。ここに地元を始め多くの県民が反対する中、今年3月、第7地対艦ミサイル連隊が配備され、90人の隊員は、3倍超の290人に増員された。配備された12式地対艦ミサイルの射程は200キロ。台湾有事をにらんでだが、万が一の場合、むしろ標的になり住民が巻き込まれる恐れがある。
 何しろ地区の学校まで150メートル、集落まで490メートしか離れていないのだ。反対運動を続けている照屋寛之さんは「2025年には射程が1500キロもある能力向上型ミサイルが配備される予定だ。住民のことを考えれば、沖縄では憲法が無視されている」と憤る。ゲートの柵の向こう側では若い自衛隊員がカービン銃を手に持ち、無表情でこちらを監視していた。
 
 同じうるま市でゴルフ場の跡地に陸上自衛隊が、訓練場を新設する計画が去年12月に明きらかになり、今年4月に住民の反対で撤回された。その予定地周辺にも足を運んだ。隣には年間5万人が利用する県立石川青年の家があり、少し下った「旭区」には2500人近くが住む。 
 反対運動はまず地元「旭区」の自治会から始まり、市や県内の他の自治体にまで広がって断念に追い込んだ。反対運動の会の伊波洋正さんは「防衛省の計画はあまりにもずさんで、住民の視線がまったくない。今回は島ぐるみの闘いで、保守・革新を超えた住民運動の爆発が勝因です」と話していた。
 
 一方シンポジウムでは、沖縄市の陸自補給拠点計画についての報告があった。計画は一昨年12月の安保改定3文書に基づき沖縄市池原に防衛者が陸自の弾薬庫などを設置する。この問題で地元の市長は防衛は国の専権事項、意見を言う立場にないとコメント、市議会答弁では弾薬庫建設を容認した。
 これに反対をする市民の会の諸見里宏美さんは「市長の責務は市民の命と財産を守ることで、『容認しない』権利がある。秋田県や山口県は首長がイージスアショア配備に反対し撤回させたではないか」とその姿勢を批判した。「弾薬庫ができれば日米が共同で使用し、この一帯は攻撃の的になる。沖縄を日米軍事一体化の拠点とすることを許さない」と訴えた。

 米軍基地に加えて先島諸島から沖縄本島へと自衛隊が増強される。沖縄の人たちが直面する危機感が、夏の強い日差しのようにヒリヒリさせられた。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号
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2024年09月01日

【沖縄リポート】ダンプ事故隠す警察、マスコミも?=浦島悦子

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 前号で触れた安和桟橋(辺野古への埋立土砂の搬出港)でのダンプによる死傷事故(6月28日)からひと月半。重傷を負った市民女性が奇跡的な回復を見せつつあるのが救いだが、時を経るにつれ、この事故を巡る状況の異様さが露わになってきた。

 まずは警察の動きが見えないこと。死傷事故を起こしたダンプの運転手は逮捕されず、事故現場にいた人の誰も(怪我をした本人も含め)事情聴取を受けていない。現場検証についても、市民団体が辺野古弁護団の弁護士とともに現場検証したという報道の翌日、ようやく警察が動いた。しかし、未だにこの事故についての警察発表はないままだ。
 一方で、SNS等では、抗議市民がダンプの前に飛び出し、それを制止しようとした警備員が犠牲になったという当初の警察発表や、抗議市民を「人殺し」呼ばわりする言説が流布され、沖縄県議会では、先の県議選で多数となった野党・自公勢力が、事故はデニー知事のせいだと吊し上げた。

 このようなフェイクニュースに対し事故の真相を伝えようと、オール沖縄会議は7月18日に記者会見を行い、現場検証と目撃者・関係者への聞き取りをもとに作成した現場の図面を添えて見解を発表したが、県内メディアもその内容をほとんど報道していない。真相は国にとって不利なので、警察もマスコミも含めて隠蔽しようとしているのではないかと勘繰りたくなる。

 私は、この事故及びそれを巡る状況は、当初から違法・脱法を繰り返し、いわば「治外法権」下で行われてきた辺野古新基地建設事業を象徴する事件だと感じている。つまり、ここでは(国家権力の庇護のもとで)何をやっても許されるということだ。
 土砂搬出は現時点ではまだ止まっている。市民らは断続的に安和桟橋前で集会を開き、工事の中止を求めている=写真=。集会では、国が「安全対策」を名目に、機動隊を大動員して市民を現場から排除し、正当な抗議や意思表示を封じ込めようとする可能性についての危惧も表明された。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号

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2024年08月24日

【鹿児島県警不祥事事件】 報道の自由脅かす異様な事態 小メディア見せしめ 無視された公益通報者保護法=横田 宗太郎(JCJ会員)

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 鹿児島県警による福岡市の調査報道ニュースサイト「ハンター」への家宅捜査が大きな波紋を広げている。それは「内部通報者保護制度」や「取材源秘匿」というジャーナリストの倫理にかかわる問題だからだ。日本ペンクラブ、新聞労連に続きJCJ福岡支部も抗議声明を発した。この問題についてネットメディアで活動する会員の横田 宗一郎さんが報告する。
                     ◆   
 正義のための内部告発者を逮捕し、内部告発を受けた報道機関を不当捜索して報道の自由を脅かす。鹿児島県警が女性盗撮事件という警察官の不祥事隠蔽を図り、報道機関の家宅捜査で判明した情報から公益通報者に該当する同県警前生活安全部長の本田尚志さんを逮捕。この異様な事態に発展したことについてネットニュースメディア「SlowNews」が6月24日、事件の問題点を議論するイベントを急遽開催した。

事件の「発端」
巡査部長の盗撮
 一連の事件の「発端」は、県警が枕崎警察署地域課巡査部長の鳥越勇貴被告が行った盗撮行為を隠蔽したことだ。2023年12月、盗撮の事実を掴んだ本田さんから報告を受けた野川明輝本部長は「(鳥越容疑者)泳がせよう」と、事件の隠蔽を図った。
 盗撮事件隠蔽が、あってはならない行為であることは言うまでもない。本田さんは、2024年3月28日に、札幌市在住のジャーナリスト小笠原淳さん宛てに告発文を投函。「公益通報」の告発文は4月3日、小笠原さんのもとに届いた。

 告発文を読んだ小笠原さんは「空想では書けない詳細な告発内容で本物だと確信。何度も記事を執筆した福岡市を拠点とする調査報道メディア『ハンター』の運営代表の中願寺隆さんに相談し、告発文を共有した。これが事件の前段だ。
 だが、県警が隠蔽した事件はほかにも存在した。2021年の8月から9月にかけ、新型コロナの宿泊療養施設で起きた県医師会の男性職員(当時。現在は退職)の女性看護士への強制性交事件である。県警は、男性職員の父親が鹿児島中央署の警察官であることから、事件を隠蔽しようとしたが、藤井光樹巡査長が告発。『ハンター』はこれを報じて県警と医師会の事件への不適切な対応を暴いた。
 県警の『ハンター』の家宅捜索の名目は、強制性交事件に関する資料を探し出すことで、本田さんの告発内容の捜索ではなかった。県警は捜索する中で押収した中願寺さんのパソコンから本田さんの告発文を発見。これが本田さん逮捕につながったのである。

送られた告発文
「闇をあばいて」

 「SlowNews」のイベントにはこうした経緯を踏まえ、家宅捜索を受けた『ハンター』の中願寺さんに加え、調査報道メディア『フロントライン』を運営するジャーナリストの高田益幸さん、朝日新聞出身のジャーナリスト奥山俊宏さんが登壇。本田さんの告発文を中願寺さんに提供したが家宅捜索を免れたジャーナリスト小笠原さんも札幌からオンライン参加し、フリージャーナリスト長野智子さんの司会で、鹿児島県警の『ハンター』への家宅捜索の異様さや、「公益通報者」本田さんの逮捕がはらむ問題点などについて多様な議論が展開された。

 小笠原さんは、「闇をあばいてください」と書かれた本田さんの告発文を札幌からのオンライン画面越しに示す一方、入手や中願寺さんとの共有の経過を説明。中願寺さんは事務所の家宅捜索状況を語り、「捜査に訪れた10人は、『上がるな』と言っても勝手に部屋に上がってきた」「令状を見せるよう要求したが、掲げられただけで中身を確認できなかった。だが、罪状に「地方公務員法違反」とあるのは見えた」と証言。弁護士に連絡しようとしたら携帯電話を取り上げられ、捜索中は常に監視下に置かれていたことなどを明かした。さらに、「家宅捜索は警察庁の指示ではないか」「大手の新聞、テレビと違い『ハンター』が比較的規模の小さいネットメディアなので狙われたのでは」。「他の報道機関が内部告発報道できなくする『見せしめに最適だ』と思われたのでは」とも述べた。

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報道機関捜索は
警察庁許可事項 

 また奥山さんは今回の事件についてさまざまなメディアでも解説。法解釈や過去の類似事件との比較から、「捜査機関による内部通報者本田さん逮捕は甚大な悪影響を及ぼし、内部告発が行われなくなる可能性がある。報道の自由を脅かしている」と警鐘を鳴らした。
 今回の県警の『ハンター』への捜索は「きわめて異例」。「悪事を働いたわけでもないのに、秘密情報が含まれる告発文の届いた関係先として報道機関が捜索されることはあってはならない」と指摘した。
 報道関係者が公益通報で逮捕された事件は1971年に発生した西山事件のみ。「報道関係社の家宅捜索は警察庁の許可がないと実行できない」と解説。今回の家宅捜索は警察権力が本田さんを「違法な」内部通報者として見せしめにし、「タレコミのありそうな報道機関は取り締まれます」としているということだと批判した。
 また『ハンター』への捜索は、、藤井巡査長が逮捕され事実関係を自白して告発に関連する物証が押収されたことを踏まえると、本来必要がない。
 本田さんの内部通報に関しては、警察不祥事の報道に実績のある小笠原さんに情報を提供すれば県警の不祥事も明るみに出してくれると判断し、機密性を遵守した上での情報提供であり公益通報者保護法に該当すると解説した。実際、今回の通報で巡査部長が逮捕され、盗撮事件が闇に葬られることは免れた。本田さんは真っ当な公益通報者で、公益通報者保護法が適用されてしかるべきだと語った。

大手メディア
操作される側

 高田さんは現在の報道機関の体制を批判し、本来のあるべき姿勢について述べた。自身が北海道新聞在籍時、北海道警裏金事件の調査報道を指揮して、徹底的に取材・調査を行い、裏金の存在を認めさせた。「地元最大の報道機関が『おかしい』と思い執念を持って報道を続けた」からこそ裏金の実態を暴くことに成功した。反対に、鹿児島県の報道機関は「警察からすれば『コントロールできる』報道機関である」と、その姿勢に疑問を投げかけた。
 全国紙や大手報道機関が警察の不祥事を追及しないことについて、「大手の記者は警察と仲間だから」と述べ、報道機関は一次情報を提供される側で、警察が「操作する側」になり、警察の下僕になり下がっていると指摘。本来は大手メディアだから重要な役割を果たせるのであり、権力に問い詰めることができる場所にいるからこそ「警察庁長官に何度でも問いかけるべきだ」と訴えた。
          JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年7月25日号
       
 


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2024年08月23日

【沖縄大学土曜教養講座】「米兵事件はなぜ隠されたのか―見えない壁の正体―」青木 理氏らが報告 9月7日(土)2時30分から4時30分 ハイブリット講座=JCJ沖縄共催

 昨年12月に発生した米兵による少女の誘拐暴行事件は、県や自治体に通報されていなかった。米兵による事件事故はそれまで、地域社会への影響を鑑みて外務省や防衛省からの通報体制が敷かれてきた。なぜ、どんな理由で通報されなくなったのか。その結果、地域社会で起きていることとは。背景を探る。

9/4(水)までに要事前申込
申込先 【Googleフォーム QRコード】https://forms.gle/9rbrgLbPLZkC8YPK9 氏名・連絡先・所属等を入力の上送信してください。講座日の2日前までに、お申し込み確認メールをお送りします。メールが届かない場合は前日14時までに地域研究所までお問い合わせください。

日時:2024 年9月7日 (土)14:30〜16:30(開場・受付14:00〜)
参加費:無料
会場:沖縄大学3号館1階 3-101教室 ※オンライン配信あり

●第一報告者/金城正洋氏
日本ジャーナリスト会議(JCJ)沖縄世話人。八重山毎日新聞を
経てQAB琉球朝日放送入社。報道部デスクなどを歴任し7月退社。
翁長雄志知事死去後の候補者選考委員会で玉城デニ―氏擁立をスクープ。

●第二報告者/青木理氏
ジャーナリスト。ノンフィクション作家。共同通信入社し、東京社会部、
外信部などを経て、2006年からフリー。著書に「日本の公安警察」
「国策捜査」など。

進行/黒島美奈子氏日本ジャーナリスト会議(JCJ)沖縄世話人、沖縄タイ
ムス論説副委員長。

プログラム
◆ 開会挨拶: 島袋隆志(沖縄大学経法商学部教授)
◆ 進 行 役 : 黒島美奈子 氏
◆ 14:40〜 報告1 「沖縄の取材現場から」 金城正洋 氏
◆ 15:15〜 報告2 「警察組織の変遷」 青木理 氏
◆ 15:45〜 クロストーク
◆ 16:15〜 質疑応答

問い合わせ先:沖縄大学 地域研究所(沖縄県那覇市国場405) 窓口:平日 8:30〜17:15(12:00〜13:00 閉室) Tel:098-832-5599
Mail:chiken-staff@okinawa-u.ac.jp
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2024年08月05日

【沖縄リポート】人間の鎖、性暴力とくい打ちに抗議=浦島悦子

 
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 7月6日、辺野古ゲート前座り込み開始(2014年7月7日)10周年を前に、米軍キャンプ・シュワブを囲む「人間の鎖」と県民集会が開かれ、猛暑の中、1200人が参加した=写真=。辺野古への埋立土砂が搬出される安和桟橋のダンプ事故で亡くなった警備員に全員で黙とうを行い、相次ぐ米兵による性暴力事件、大浦湾へのくい打ち強行に怒りと抗議の声を上げた。

 6月25日、昨年12月に起こった米空軍兵による16歳未満の少女への誘拐・暴行事件が、発生から半年、容疑者の起訴から3か月も沖縄県に伝えられず、外務省・県警が隠蔽していたことが発覚。その間、5月にも米海兵隊員が成人女性への性暴力(暴行致傷)で逮捕され、1月から5月までに計5件の米兵性犯罪が起こっていたことがわかり、県民の間に衝撃と怒りが渦巻いた。

 12月の事件が報道されていたら5月の事件は防げたかもしれず、また、沖縄県議選(6月16日投開票)の結果(デニー知事の与党が議席を減らし、野党・自公勢力が48議席中28議席となった)が変わっていた可能性もあり、政治的意図による隠蔽ではないかとの疑念もぬぐえない。
県民集会の冒頭で挨拶した稲嶺進・オール沖縄会議共同代表は「日米両政府の植民地支配の表れだ」と厳しく糾弾した。

 6月28日に起こった安和の事故では、ゲートから国道に出ようとしたダンプに巻き込まれて警備員が亡くなり、市民女性が重傷を負った。安和からの土砂搬出が始まって5年。現場の参加者によると、「これまで、牛歩で抗議する市民とダンプ運転手、警備員の間には、お互いの安全に関する暗黙のルールができており、事故を防いでいた。しかし最近、沖縄防衛局が闇雲に工事を急がせようとする姿勢が目立ち危険を感じていた。起こるべくして起こった事故だ」という。

 防衛局はその責任を取るとともに、最低でも事故の全容が明らかになるまでは工事を中止すべきである。
 県との協議を拒否して強行した大浦湾くい打ちによるサンゴの損傷も発覚し、猛暑はますます酷くなるばかりだ。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年7月25日号
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2024年07月14日

【JCJ沖縄声明】南城市長の取材対応に抗議する

 古謝景春南城市長が琉球新報の記者を突き飛ばしたと報道された。事実であれば、取材を暴力と威嚇で妨害しようとするものであり、公人としての資質を欠くと言わざるを得ない。市長は琉球新報社の抗議を真摯に受け止めるべきだ。

 報道によると、6月18日の南城市議会終了後、市長は、歩きながら記者からセクハラ疑惑について質問され、記者の背中を突き飛ばした。記者は「暴行を振るったということでいいのか」と市長に問いただしたが、市長は無言で市長室に入った。

 記者は、市長の発言を録音するためレコーダーを差し出しながら横向きの姿勢で質問していたところ、市長に背中を突き飛ばされ、「あやうく倒れそうになるのを、足を踏ん張りどうにかこらえた」と述べている。

 翌19日、琉球新報社は島洋子統合編集局長名で「今事案は暴力によって記者の安全を脅かし、取材活動を妨害したものだと考える」と市長と南城市宛てに抗議文書を送付し、謝罪と経緯の説明を申し入れた。これに対し市は25日に文書で回答し「突き飛ばし行為の事実はない」と否定。逆に「行き過ぎた取材活動があった」と記者を批判した。琉球新報社は「(記者の)録音データでは記者は丁重に質問をしており、職員の指示にも従っている」と反論する再抗議文を同日送付した。

 市長のセクハラ疑惑を巡っては、訴訟になっている元市長車運転手の女性のほか、市議会特別委員会が実施した職員アンケートでも複数の被害が訴えられている。しかし、市長は十分な説明をしておらず、記者が市長に説明を求めるのは当然のことだ。追及を避けるため突き飛ばしたとしたら言語道断である。

 突き飛ばし行為は、それによりけがを負うことがあれば傷害罪も成立し得る暴力だ。今後、市を取材する他の記者への対応にも影響しかねず看過できない。

 記者・ジャーナリストの取材活動は、知る権利を守り、社会正義の実現を目指すものだ。市長は市民の知る権利にきちんと向き合うべきであり、暴力行為があったとしたら断じて許されない。市長の不誠実な対応に抗議する。

                                        

 

 2024年7月10日
                日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ 沖縄)
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2024年06月30日

【沖縄リポート】「訴えの資格あり」まで5年、だが国は‥‥=浦島悦子

           
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 「原判決を取り消す」。
一瞬、何のことだかわからなかった。続いて「本件を那覇地方裁判所に差し戻す」。満員の傍聴席から「おお〜〜!」という声と拍手が起こった。
 5月15日、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は、辺野古新基地建設工事を巡り、沖縄県による埋立承認撤回を取り消した国土交通大臣の裁決は違法だとして、辺野古周辺住民4人が裁決の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、原告適格を否定した一審判決を取り消し、原告適格を認める判断を下したのだ。
 提訴は2019年。基地ができれば被害を受けるのは明らかな地元住民に「訴える資格あり」という、極めて当たり前の判断にたどり着くのに5年かかった。しかし、沖縄県と国との訴訟も含め新基地建設を巡る訴訟がことごとく「門前払い」されてきた中で、画期的な判決だった。裁判所前で行われた報告集会は「おめでとう!」の声と笑顔があふれ、手弁当で奮闘してきた弁護団を讃えた。

 しかし、一貫して「門前払い」を主張し、実質審理を避けようとしてきた国がこれをすんなり受け入れるだろうか…?
 最高裁への上告期限2週間(29日まで)を前に、新基地建設反対運動の一環として住民の訴訟を支えてきたヘリ基地反対協議会と原告団・弁護団は、「国に上告しないよう求める要請」への賛同を県内外の団体に呼びかけた。そして実質3日間で188団体の賛同を得たのだ。
 原告団事務局として取りまとめに当たった私は、北は北海道から南は与那国まで、全国を網羅する大組織から小さな市民グループまで、その幅広さ、多様さに感動し、このような人々に支えられているのだという大きな勇気を頂いた。全賛同団体が連名した要請書は27日、東京の団体と沖縄選出国会議員が国土交通省に手交した。

 ところが国はこれを一顧だにせず、翌28日、最高裁に上告受理申し立てを行った。ヘリ基地反対協と原告団は30日、あくまでも実質審理から逃げようとする国を糾弾し、最高裁に対して上告を受理しないよう求める抗議声明を発表した。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
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2024年06月29日

【JCJ沖縄声明】米兵少女誘拐暴行事件とその隠ぺいに対する抗議声明 〜ジャーナリズムの役割を果たすために〜

 また在沖米軍兵士による凶悪犯罪が起きた。犯罪自体を許せないことはもとより、続発 する米軍関係者の犯罪を防止できない日米両政府も猛省すべきである。今回の事件が発覚 するまでの半年間の経緯をみれば、日米政府は捜査・司法当局も含めて、県民に対して事 件を隠ぺいしたと言わざるを得ない。沖縄県民の安全や尊厳をないがしろにする姿勢が暴 露されたのである。人々の知る権利を支えるジャーナリズムにとっても、その役割を果た しえなかった痛恨の事態である。当局の隠ぺいに抗議する。

 昨年12月24日、沖縄本島中部の公園で16歳未満の少女が米兵に誘拐され、性的暴 行を受けた。少女の帰宅後に、110番通報により沖縄県警が米兵を在宅のまま捜査し、 今年3月11日、わいせつ誘拐・不同意性交容疑で書類送検された。同27日に同罪で起 訴され、日本側が勾留した。その後、保釈金が支払われて保釈が認められ、米兵は米軍の 管理下に置かれている。米軍関係者以外ではこのような対応はあり得ず、米軍特権が際立 っている。 起訴の時点で外務省はエマニュエル駐日米大使に抗議した。しかし、沖縄県には連絡し なかった。県警も県と情報共有をしなかった。

 今回のような事案があれば、学校も地域社 会も、警戒を呼びかけ対策を講じなければならない。結果として、行政も、メディアも、 果たすべき役割を果たし得なかった。 この間も米兵の犯罪は、コンビニ強盗、住居侵入など日常茶飯事のように起きていた。 県民の安全を守り信頼を得る立場にあるはずの沖縄県警は、メディアへの広報も県への報 告もしなかった。県公安委員会と共に、県民への背信の意味を重く顧みるべきである。

 外務省が米大使に抗議した後、日米首脳会談、エマニュエル駐日大使の石垣・与那国訪 問があり、沖縄県議会議員選挙があり、首相や米軍関係者も参列する沖縄戦慰霊の日の追 悼式があった。これらに影響を与えないようにするという意図を当局は否定するが、信じ ることができない。被害者のプライバシー保護のためとするが、他事例と比較すれば説得 力はない。 米軍の特権を支えるために県民を犠牲にする日本政府や当局に断固抗議する。
                                                   2024年6月27日
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2024年06月22日

【オンラインシンポ】理不尽強い続けた国 沖縄ジャンプナイト「民意のゆくえ」シンポ=川田豊実

 JCJ沖縄ジャンプ ナイトは4月27日、岩波 新書『ドキュメント 〈ア メリカ世〉の沖縄』の著 者、宮城修さん(元琉球新 報論説委員長)をゲスト に迎え、「民意のゆくえ」 をテーマにオンラインシ ンポジウムを開催した。

 沖縄は日本独立の取 引材料とされ、講和条約 で日本から切り離された。

 県民は米軍の土地接 収に抗う「島ぐるみ闘争」 で「土地は渡さない」と 決議した。15万人の集会 による最初の統一した意 思表明だった。

 また「祖国復帰協議 会」が、宮森小学校への 米軍機墜落を機に発足。 民意の受け皿となった。 一方、琉球立法院は19 62年、「日本領土内で住 民の意思に反して不当な 支配がなされている」と 決議。国連の植民地独立 付与宣言を引用して加盟 104ヵ国に送付し、国 際社会を動かした。

 1968年、琉球政府 初の主席公選では革新の 屋良朝苗が当選。屋良新 主席は「私の当選に示さ れている県民の願い、要 求、民意を率直に確認し て政治や外交に十分反映 させていただきたい」と 佐藤首相を訪問する日の テレビ会見で語った。

 1971年、屋良主席 は施政権返還を前に「建 議書」をまとめ、急遽上 京した。建議書には「基 地のない平和な島」「戦争 につながるもの一切の否 定」など県民の要望がま とめられ、「沖縄は余りに も国家権力や基地権力の 犠牲となり手段となって 利用され過ぎた。このよ うな地位からも沖縄は脱 却していかなければなら ない」と「自己決定権」 が宣言されていた。

 だが、自民党は主席の 到着直前に衆院特別委員 会で協定承認案を強行採 決。沖縄の頭越しに作ら れた返還協定の問題点を 指摘した建議書は無視さ れた。

 1995年、少女暴行 事件をうけて大田昌秀知 事が要求した不平等な日 米地位協定の改定を国は 拒否した。

 知事は、軍用地地主へ の強制使用手続きの代理 署名を拒否。「沖縄は本土 のマジョリティ―の幸せ の手段になることを拒否 する」と声明した。

 2015年、菅官房長 官に辺野古新基地建設中 止を訴えた翁長雄志知事 は、「沖縄の自治は神話だ と言ったキャラウエイ高 等弁務官の姿と重なる」 と、「粛々と進める」と繰 り返す菅長官に抗議。

 辺野古埋め立て承認 を取り消し「全てが国の 意向で決められるように なれば地方自治は死ぬ」 と危機感を表明した。

 宮城さんの話は、改め て沖縄が国に強いられ続 けた理不尽な状況を浮き 彫りにした。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
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2024年06月08日

【支部リポート】福岡 日常に近づく自衛隊 憲法集会 今年も協賛=白垣詔男

 福岡支部は、「NHKを考える福岡の会」の団体会員であるとともに、「九条の会福岡県連絡会」主催の「5・3憲法集会」「11・3憲法フェスタin福岡」の両集会に協賛をしている。
 4月6日(土)にあった「NHKを考える福岡の会」総会では、同会会長で弁護士の井下顕(いのした・あきら)さんが「軍靴が聞こえる今〜メディアに求められていること〜」と題して記念講演。井下弁護士は、「自衛隊関係の裁判」を8件担当しており、自衛隊が私たちの日常に近づいていて、「戦争ができる国づくり」に大きな役割を果たしていながら、隊内では、陰湿ないじめや私的制裁が横行している現状を紹介。今国会で審議している「自衛隊法案」が、実は米軍と一体となって訓練などを行うための自衛隊組織の指揮権を確立するものであることを解説した。
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 さらに、井下さんは、放送メディアに対して、政府寄りの姿勢になびかないよう強く要望した。
 5月3日(金・祝)の「憲法集会」には450人超が参加。例年のように九州交響楽団OBらで構成している弦楽四重奏団による「平和のためのコンサート」で「懐かしの昭和メロディー」と題して「津軽海峡冬景色」「花嫁(はしだのりひこ作曲)」などを演奏、アンコールにモーツァルトの「アイネクライネ ナハトムジーク第一楽章」を披露、大きな拍手を浴びた=写真=。

 その後の講演は、出水薫九州大学大学院教授が「憲法平和主義の再生のために―私たちは、どのように近隣国際関係を理解すべきか―」の演題で、憲法前文にある「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」を引用して、日本では近隣諸国からの「恐怖」と貧しい国民が多く「欠乏」も克服できず、憲法9条を実現できていないことから国民は努力しなければならないと、力説した。

 支部では7月13日(土)に定期総会を開く。記念講演は「九条の会福岡県連絡会」事務局長の村井正昭弁護士に「日米同盟の危険性」と題して講演してもらう。総会の記念講演は例年、「九州民放OB会」の勉強会と共催で開いている。
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2024年06月03日

【沖縄リポート】あまりにも愚かしい工事止めねば=浦島悦子

                  
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 国が代執行(昨年末、県に替わって辺野古設計変更を承認)に基づく大浦湾側工事に強行着工して3か月後の4月14日、作業船が並ぶ大浦湾に面した瀬嵩の浜で、「民意・自治・尊厳を守り抜く沖縄県民大集会」(主催:辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)が開催された=写真=。
 当初4月6日の予定が荒天のため順延。この日は、年に一度、一族郎党が先祖の墓前に集まる清明祭(シーミー)の時期にかち合ってしまい、朝からあいにくの雨にも見舞われたが、全県から集まった1800人の熱気が雨を吹き飛ばし、「晴れ男」を自称する玉城デニー知事が挨拶に立つ頃には雨も上がった。

 デニー知事は「新基地を造らせないこと、沖縄を戦場にさせないことが、未来の子どもたちへの最大の責任だ」と訴えた。行政法学者の徳田博人琉球大学教授は、問題を解決できない司法を批判し「県民を守らない法の不備は県の条例で補填すべき」と提起した。
 浜での集会に呼応して海上アピールを展開したヘリ基地反対協海上チームも集会に合流。代表して発言した小学校教師Mさんは、息子も一緒に参加していること、集会には来れなくても日常の場で行動・発信していくことの大切さを語った。

 代執行後も、それに屈しない現場行動が、変わらず、たゆみなく、辺野古ゲート前で、土砂搬出元の安和・塩川港で、大浦湾海上で続けられている。海上チームは連日、カヌーや船を出し、海上作業ヤードや護岸工事の監視・阻止行動。辺野古陸上では、作業車両搬出入ゲートが米軍の要請で突然、集会テントから遠いゲートに変更され、行動参加者は負担を強いられつつも、地道な座り込みを続けている。

 今後、軟弱地盤改良工事に必要な膨大な量の砂をどこから持ってくるのか、既存の作業船も技術もない工事をどうやるのか…先が見えないまま、大規模な自然破壊と血税の膨大な無駄遣いが続く。国の試算でもあと最低12年、実際には半世紀以上かかるだろうと言われる、あまりにも無謀で愚かしい工事を1日も早く止めるために、国民的議論を!   
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年5月25日号
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2024年05月02日

【沖縄リポート】うるま市民団結 自衛隊訓練場「断念」=浦島悦子

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 保革を超えた反対のうねりが、ついに防衛省を断念に追い込んだ! 
 昨年12月、新聞報道された、うるま市石川地区への自衛隊訓練場計画(24年度予算に計上)。衝撃を受けた地元の旭区自治会が真っ先に反対の声を上げ、近隣自治会もそれに続いた。予定地のゴルフ場跡地周辺は閑静な住宅地で、年間4万人が利用する県立石川青少年の家に隣接している。

 石川地区自治会長連絡協議会の要請を受けて玉城デニー知事は2月17日、来沖した木原稔防衛大臣に計画の白紙撤回を要請。保革を超えた反対運動は急速にうるま市全体に広がり、自民党沖縄県連、そして保守系の中村正人うるま市長も白紙撤回を表明。3月7日には沖縄県議会が白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決するに至った。

 それでも「白紙撤回はしない」との姿勢を変えない防衛省に対し10日、石川地区を中心とする17団体が「自衛隊訓練場計画の断念を求める会」を結成。20日、「住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会」の開催に漕ぎつけた。
 会場の石川会館の収容人員は約千人。入りきれなかった200人余はロビーのモニターで集会を見守った。充満する老若男女の熱気は、30年近く前(1997年)の「辺野古新基地建設の是非を問う名護市民投票」当時の名護を彷彿させ、感慨深かった。
 地元旭区で活動する若者グループ「ONE PIECE」が元気なブレイクダンスでオープニングを飾った後、会の共同代表・伊波常洋氏が開会挨拶=写真=。20年以上にわたり自民党の市議・県議を務めてきた同氏は、保革を超え辺野古新基地建設に反対して闘った故翁長雄志知事の言葉を引用し「うちなーんちゅ、うしぇーらってーならんどー(侮られてはならないよ)」と訴えた。

 高校生代表として挨拶した旭区の高校1年生H・Kさんは、日本国憲法の条文を引きながら、憲法違反の現実をまっすぐに問い、「自由と権利を守るために頑張りたい」と決意を語り、万雷の拍手を浴びた。
 代表らは27日、上京して決議文を手交。4月11日、木原防衛大臣は断念を表明した。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
 
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2024年04月17日

【シンポジウム】メディアの姿勢問うシンポ 沖縄の声 全国に届けよ=古川英一 

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 2月の沖縄はもう上着がいらないような温かさ、辺野古・大浦湾の海は薄曇りながら穏やかできらきらと輝いていた。しかしその海の一角に埋めたてのための平たい作業船が視界に入る。去年の12月に福岡高裁が国の代執行を認める判決を出し、これを受けて今年から大浦湾での工事が始まった。1年ほど前に訪れた時、こうした光景だけは見たくないと強く思ったのだか・・
  ◇
 昨年夏、地元の環境グループや米軍基地に反対する市民らが立ち上げた「沖縄・琉球弧の声を届ける会」。活動の柱は、基地問題を始め沖縄の抱える問題を、メディアにもっと全国に発信するよう求めていくことだ。だから会のスローガンも「メディアは全ての人権のため隠された真実を暴け」といまのメディアの姿勢を厳しく問うている。JCJもその呼びかけに応じ、賛同団体に加わっている。
 今回の沖縄訪問は、同会が2月18日に開催した「辺野古新基地問題を考えるシンポジウム」参加が目的。その前日企画のバスツアーで辺野古を巡った。

 辺野古新基地 
 建設巡り討議

 沖縄大学でのシンポジウムでは各分野の4人が、辺野古新基地を多角的に論じ合った。その要旨を紹介する。
●真喜志好一さん(沖縄平和市民連絡会共同代表)政府は普天間飛行場の危険性を除去するために、辺野古への新基地移転が唯一の解決策だと主張している。しかし米軍の文書を調べると米軍が1966年当時、米軍には辺野古に基地を作る構想があった。一方、普天間飛行場は、「滑走路のそばのクリアゾーンに住宅などがあってはならない」とする米軍の安全基準にも合わない。2006年、当時の伊波・宜野湾市長はこれを指摘し、「安全不適格宣言」を発した。
 私たちは日米両政府から騙されてはならない。普天間の危険性の除去は普天間の運用を停止しかない。そのための交渉を米政府と行うことが、私たち沖縄の主張だ。
●吉川秀樹さん(ジュゴン保護キャンペーンセンター)米国政府は辺野古をどう見てきたかの視点から考えたい。辺野古・大浦湾海域は、米国のNGOがホープスポットに認定したほどのジュゴンやアオサンゴなど約260種類の絶滅危惧種を含む約5300種が生息する生物多様性の宝庫。7万1千本の杭を軟弱地盤に打ち込む工事が環境に影響がないわけがない。また、米軍自体が「いつできるかわからない基地は戦略的なものにはならない」と懸念を示していることが情報公開でわかった。
 代執行が行われても「ポスト代執行」の取り組みが展開できる。日本政府や米の連邦議会、国際社会に辺野古・大浦湾の生物多様性を守る重要性を訴えていきたい。
●浦島悦子さん(ヘリ基地いらない二見以北十区の会共同代表)闘いは辺野古・大浦湾から始まった。30年近く地を這うような声を出し続けてきた。当初反対運動の先頭にいたおばぁたちの多くは旅立ってしまった。「海は命の恩人。基地に売ったら罰が当たる」「子や孫たちに戦争の哀れは二度とさせたくない」という言葉を引き継いでいかなければならない。自然は未来世代の生きる基盤である。
●徳田博人さん(琉球大学人文社会学部教授)辺野古訴訟では、日本は本当に民主的法治国家なのかと疑問がわく。日本国憲法は統治者が人々を支配する道具としての法を否定し、法の支配の原則を取り入れている。しかし代執行の取り消しを求めた沖縄県への去年12月の福岡高裁の判決は、政府の辺野古新基地建設強行への追随で司法の機能不全を示している。そして国自身が法の支配の原則を破壊している。
 最高裁での上告審では、憲法問題として審理を促し、玉城知事に意見陳述の機会を与えてほしい(*その後3月1日までに最高裁は沖縄県の上告を退け、沖縄県の敗訴が確定した)。辺野古新基地阻止の闘いは、政府や裁判所の問題点を暴露し、沖縄から日本、東アジアの平和をも実現するもので、追い込まれているのは日本政府なのだ。

 メディアへの
 憤りと期待と

 当日会場に集まった110人あまりの市民は(オンラインでの参加は約70人)、パネラーの話に熱心に聞き入っていた。 
 最後に、「届ける会」共同代表の桜井国俊さんが挨拶に立った。「いま沖縄は新たな戦前に直面している。米軍基地だけでなく、自衛隊の基地や施設も作られていく。有事の際は、日本が沖縄を捨て石にしようとしている。沖縄戦の再来は許されない。こうしたことの原因の一つに日本のメディアの状況があるのではないか。政府へのメディアの忖度、沖縄の厳しい現状に本土の人たちはまるで知らんふりだ。状況を変えていかなくてはならない。メディアをターゲットにした活動を続けていきたい」

 桜井さんの言葉からは全国メディアの不甲斐なさへの憤りと、痛いほどメディアへの期待が伝わってきた。本土でメディア・ジャーナリズムの一端に携わる者として、何をしていくべきなのか、ずしりと重い宿題が課せられている。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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2024年03月31日

【沖縄リポート】薩摩以来の植民地″ナ高裁を糾弾=浦島悦子

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 3月1日の地元紙は、辺野古新基地建設の設計変更を巡る代執行訴訟において、最高裁が沖縄県の上告を受理しない決定をした(2月29日付)ことを1面トップで報じた。地方自治法に基づく史上初の代執行にもかかわらず最高裁は審理をすることなく、昨年12月20日の高裁判決(県敗訴)が確定した。
 翌2日、辺野古ゲート前で開催された県民大行動(毎月第1土曜日)には、通常より多い千人以上が参加し、怒りの声を上げた。主催者を代表して挨拶したオール沖縄会議の稲嶺進共同代表は「訴えを受け付けさえしない」最高裁を糾弾し、新基地建設を認めない結束を改めて呼びかけた。
 デニー知事を支える与党県議団もこぞって参加し、代表して挨拶した上里善清議員は、「1609年の薩摩侵攻から始まった沖縄への植民地支配が今日まで続いている」と指摘した。

 国勝訴を見込んでいた防衛省は、既に大浦湾側工事を着工している。県民があきらめるのを待っているのだろうが、軟弱地盤が広範囲に広がる大浦湾の工事がスムーズに進むとは思われない。

 私たち地元住民は2月22日、原告30人で「代執行の取り消しを求める住民の訴訟」を那覇地裁に提起した=写真=。この訴訟の被告は国と県双方だ。代執行の性格上、「設計変更承認という行為は県に所属する」として国が逃げるのを避けるために、不本意ながら県も被告とした(沖縄県には事前に了解を得た)が、原告・弁護団内部では「県のかたき討ち」訴訟と呼んでいる。これまでに取り組んできた埋立承認撤回及び、設計変更不承認を巡る住民の抗告訴訟の集大成と言うべき訴訟になるだろう。

 2日の県民大行動では、うるま市石川地区に急浮上した陸上自衛隊訓練場計画の撤回を求める地元住民の反対運動の報告も行われた。保革を超えた反対が高まり、ついに県議会で自民党県連が「白紙撤回」を表明し、保守系の中村正人市長も国に「白紙撤回」を要請。うるま市議会も全会一致で断念を要求する見通し。市民総ぐるみの動きは県民を大きく勇気づけている。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号    
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2024年03月03日

【沖縄リポート】土地利用規制法 基地反対標的の不安=浦島悦子

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 多くの懸念と反対を押し切って2021年6月に成立し、2022年9月に全面施行された重要土地利用規制法。政府は、2024年中としていた区域指定を大幅に前倒しして2023年度内に終え、春からの本格運用をめざす。  

 昨年12月26日、第4弾の区域指定候補が公表され、全国47都道府県全部にまたがる候補地は583カ所に及んだ。
沖縄では今回、これまでの離島市町村39か所に加え、沖縄島の米軍基地・自衛隊施設を含む31カ所が選ばれた。狭い県土に全国の70%以上の米軍基地が置かれ、さらに近年、自衛隊基地・施設の建設が急ピッチで進む。迷惑施設があることを理由に二重・三重の迷惑を被る県民は、まさに「踏んだり蹴ったり」だ。
 沖縄県は1月31日、国の意見聴取に対して、軍事施設が生活に及ぼすさまざまな被害、土地利用や経済の阻害に「さらなる負担を強いるもの」と指摘、注視区域・特別注視区域の指定を必要最小限にするよう求めた。

 米軍基地が集中する沖縄島中部では北谷町・嘉手納町の民間地すべてが「特別注視区域」に含まれ、宜野湾市も大部分が含まれる可能性がある。
 私の住む名護市では、米軍キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫、名護海上保安署などが候補地となった。キャンプ・シュワブや辺野古弾薬庫から「(法が指定する)半径1km以内」の陸上・海上で行っている辺野古新基地建設反対運動が「機能阻害行為」として標的にされるのではないか、という不安が広がっている。基地ゲート前の座り込み=写真=が妨害されないか。運動の拠点になっているテントが撤去されるのではないか。参加者の個人情報や思想信条が調べられるのではないか…。

 ヘリ基地反対協議会は1月25日、名護市の担当部局と面談、市民の不安を取り除き市の自治権を守るために、区域指定の理由を国に明らかにさせ、市に求められる情報提供の内容などについて説明会を行うよう要請した。
 人権侵害を防ぎ、「戦争する国づくり」に引きずり込まれないために全国連携が不可欠だ。

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2024年02月12日

【沖縄リポート】新たな訴訟、初日の出の日に「不屈」を誓う=浦島悦子

                         
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  なぜ、これほどまでに国は前のめりになるのだろう…?
 昨年12月20日、辺野古代執行訴訟の高裁判決(沖縄県敗訴)。御用納めの28日、判決に従わない県に代わって国が代執行(設計変更承認)。荒れた年末に続く年明け、国は、予定していた1月12日の大浦湾側着工を、強風・波浪注意報の出る悪天候の中、2日も前倒しして10日正午過ぎ強行。「抗議行動を避ける狙いか」と地元紙は報じた。

 台船に載せた石材(砕石)を海へ投入し「着工」を宣言した「儀式」には既視感があった。2017年4月、建設予定地の波打ち際に数個の土嚢を置いて「辺野古埋め立て着工」を大々的に宣伝した。翌18年12月の土砂投入開始時には、見る見るうちに濁っていく海、埋め殺されるサンゴの映像が繰り返し流された。
 県との協議にさえ応じず強行着工したことに対し、玉城デニー知事は「(国の言う)『丁寧な説明』とは真逆の、極めて乱暴で粗雑な対応」「あきらめを醸し出そうという考え」と怒りを込めて批判、「沖縄の苦難の歴史にさらに苦難を加える」新基地建設の中止と対話による解決を強く求めた。

 これでもか、これでもか、と言わんばかりの鞭を沖縄に打ち据えながら「沖縄の負担軽減」、国の試算でも今後最低12年かかるという工事を「1日も早い普天間基地の返還」と平然と語る岸田首相の言葉の白々しさ…。
「前のめり」が県民をあきらめさせるためなら、それは逆効果だ。2024年元旦、ヘリ基地反対協はコロナ禍で中止していた辺野古の浜の初興し(ハチウクシ)を4年ぶりに開催。250人が、東の海を染めて昇る初日に「不屈」を誓った=写真=。
 私たち地元住民は、不当極まりない高裁判決と代執行に対し、新たな訴訟を起こすことを決意、近く記者会見する。現在、埋め立て承認撤回及び設計変更不承認という県の判断を支持する2つの訴訟も係争中。
 沖縄県は代執行訴訟の敗訴を不服として最高裁に上告したが、新基地建設を巡る新たな訴訟は起こせない。一方、住民は提起できる。最後まで「あきらめない」姿勢を示すことで県と県知事を支えていきたい。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年1月25日号
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