2018年04月05日

≪おすすめ本≫小川幸造・藤井 匡・前田 朗 編『語られる佐藤忠良 彫刻・デザイン・美術教育』─JCJ賞大賞のブロンズ像、その制作者の足跡をたどる=奥田史郎

 生涯職人≠自認した彫刻家=佐藤忠良さんの多彩な業績を各方面から探ろうと、企画実施された講座の記録である。

 第1部では、佐藤忠良の生涯をたどり、彼の彫刻の作品群を日本近代彫刻や西洋美術の造形史にどう位置づけるか試みられる。政策の姿勢は変わらぬと自称する忠良さんの作品も、時期により三つに分けられる。が、ロダンや朝倉文夫から連なる近代日本の新しいリアリズム潮流の中枢としての評価が提起される。
 日本ジャーナリスト会議(JCJ )が主宰するJCJ 賞の発足以来、大賞受賞者には、忠良さん制作のブロンズ像<柏>が贈られてきた。
 忠良さんは、また実に多くの絵本、表紙画、新聞小説の挿画美術の教科書などを残した。古くは戦中(1942年)に詩人の吉田一穂が編集者で、農村や港や船をテーマとした絵本を数冊描いている。戦後も「全農文化」「全蚕文化」など、働く人の雑誌の表紙絵を描き、船山馨の小説にはよく付き合っている。船山は札幌二中の後輩で、同じ絵画クラブのメンバーだった。
 70〜80年代にも、児童文学や絵本・装幀などの仕事は多い。そのうち最も有名なのが、『おおきなかぶ』で、50年以上も読まれているロングセラーだ。構図とデッサン力がしっかりしているからだろう。

 第2部は、忠良さんの弟子や東京造形大学で学んだ彫刻家たちによる、忠良さんの教え方・忠良語録がまとめられている。「普通の生活を大切にする」「自然をよく観察する」「制作活動は自分の歩速で休まず歩き続ける」など、一見、造形や美術と無関係に見えるが、教え子や後輩たちは「それを守ってきたから、今日の私がある」と述懐する。何より忠良さん自身が実践者だから、教育者として効果を発揮したのだ。
(桑沢学園3000円)

「語られる佐藤忠良」.jpg
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2018年04月02日

カジノ誘致 横浜市「白紙」に転換 ドン≠ェ反対の急先鋒 市民団体共同代表に聞く=橋詰雅博

 2016年12月に成立のカジノ解禁推進法に続き安倍晋三内閣は、カジノ実施法案を4月にも国会に提出する構え。日本人と国内在住外国人を対象とした入場料は2000円とか入場回数を1週間のうち3回まで、設置を5カ所に拡大などの案が提示されている。
 しかし、ギャンブル依存症への対策が心もとないなど批判の声は相変わらず強い。各種世論調査でもカジノ反対が圧倒的に多い。それでも安倍内閣はカジノ実現への強行突破を狙う。菅義偉官房長官(神奈川2区選出)のおひざ元の横浜市も誘致に名乗りを上げている。4年前に結成のカジノ誘致反対横浜連絡会共同代表の後藤仁敏さん(鶴見大学名誉教授・歯学博士=71)にいまの状況などを聞いた。

――林文子横浜市長(71)は2014年初頭にカジノ誘致推進を表明したが、方針は変わっていないのか。
 林市長のあの表明にはビックリ仰天しました。だが、3選を目指した昨年7月の市長選では、2人の対抗馬がカジノ誘致反対を訴えたので、彼女は「白紙」に転換。今まで通りカジノ誘致推進を主張したら当選が危ういと思い方針を変えた。なにしろ横浜市民の多くはカジノ反対ですからね。林市長は当選後も「白紙」の姿勢を変えていません。菅官房長官の圧力もあるだろうから、カジノ誘致推進に戻る可能性はありますよ。

――カジノの有力候補地はどこですか。
 市が再開発を目指す山下ふ頭が最有力地。しかし、港湾運送業者でつくる横浜港運協会の藤木幸夫会長(87)は「山下ふ頭にカジノはつくらせない」と宣言した。「横浜市に土地を売るな」と港湾業者にハッパをかけている。赤旗インタビュー(今年1月25日付)でも「山下ふ頭はばくち場ではありません」とキッパリ答えています。14日には同協会主催で「ギャンブル依存症を考える」をテーマにした公開勉強会も開いた。藤木会長は横浜エフエム放送社長や横浜スタジアム会長も務めるいわば横浜のドン=Bそのような人が相当な覚悟でカジノに反対しているので、山下ふ頭へのカジノ誘致は困難な状況です。横浜みなとみらい21(MM21)地区も候補地ですが、藤木会長は真面目に働いた人が報われる社会をつくるという考え方。従って根っからカジノに反対だと思います。

――政府の実施法案をどう見ますか
 入場者がギャンブル依存症やすってんてんになるのを防ぐため賭ける金額に制限を設けるのが一番重要だが、実施法案にはありません。そもそも併設されるホテルや国際会議場、イベント会場などの運営費の80%は、カジノの収益で賄われる。当然、収益アップが必要ですから、入場料はモデルとしたシンガポールより6000円も安く設定し、金額の制限はせず、ATMが設置され金融機関の出先もあってお金が容易に引き出せる。カジノ不要を唱える静岡大の鳥畑与一教授は「毒性の強いカジノ」と指摘しています。私もそう思います。

――反対運動をどう展開しますか。
 連絡会結成以降、不定期ながら市役所前でカジノ誘致に反対するスタンディング宣伝≠行っている。20日にも実施。累計約3万人の誘致反対署名を市役所に提出しています。スタンディング宣伝や署名活動は今後も続けます。林市長がカジノ誘致撤回を表明するまで粘り強く活動します。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年3月25日号
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2018年04月01日

【今週の風考計】4.1─放送局がネットに乗っ取られる危機の元凶

急に安倍首相が「放送事業の大胆な見直しが必要」と強調しだした。その背景に何があるか。「森友文書改ざん、加計学園問題」を巡る批判報道に、ご本人の積もり積もった不満がある。さらには改憲への道筋を拓く「政権に都合の良いテレビ局を増やしたい」との思惑も透けて見える。
この6月に答申する<放送制度の規制改革>は、放送法4条の「番組編集準則」を撤廃し、インターネットと放送を一本化する内容だ。情報流通の中心にインターネットを置いて、放送の社会的影響力を削ぐ狙いもある。

現に4条で詠う「番組の公序良俗」「政治的公平」「多角的報道」などの倫理規定すら放棄するのだから深刻だ。規制がないネット世界ではフェイクニュースが広がり、過激な性的映像や暴力シーンが横行する。放送番組の質が低下するだけでなく、極端に政治的に偏ったテレビ局が出現する可能性は大きい。米国での実態がはっきり示している。
放送を所管する野田聖子総務相すら、「公序良俗を害する番組や事実に基づかない報道が増加する可能性が考えられる」と批判的だ。政治的な公平性や公益を守る規制がなくなれば、当然ながら放送は市場原理・利益優先に拍車がかかり、提供番組もセンセーショナリズムに走るのは目に見えている。

参入競争も激化する。雨後のタケノコのように、ネットテレビ事業へ進出しようとする企業に対し、安倍政権は電波の利用権を競争入札にかけ、高値で売買する「電波オークション制」の導入すら構想している。家電メーカーも4Kや8Kテレビの販路拡大に虎視眈々である。
まさに国民共有の電波を、権力の統制願望と私企業の儲けを充たすために法律まで改悪してしまう。エイプリルフールではない。(2018/4/1)

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2018年03月29日

≪リレー時評≫ 「日韓反核平和連帯」の貴重な活動=白垣詔男

 一昨年10月に「日韓(韓日)反核平和連帯」という団体が生まれた。4年以上前に日韓両国の人たちが起こした「原発メーカー訴訟」の原告が中心となってできた組織だ。
 それまで、「原発訴訟」は「3・11東日本大震災」後、日本を中心に多く起こされたが、原発メーカーは賠償請求訴訟の被告にはなっておらず、被告は国と電力会社が中心だった。

 そこで、賠償を逃れている原発メーカーにも責任があるとして、日韓両国の人々が東芝、三菱重工、日立を相手に「原発メーカー賠償請求訴訟」を起こした。その原告らがつくったのが「日韓(韓日)反核平和連帯」で、日本側代表は福岡県在住の牧師・木村公一さん、韓国側は司祭の柳時京(ユシギョン)さん、事務局長は神奈川県在住の在日韓国人の崔勝久(チェスング)さん。
 日本側代表・木村公一さんはイラク戦争時に「人間の盾」としてブッシュ米政権のイラク攻撃に体を張って反対を表明したほか、過去にはキリスト教布教のためインドネシアに17年間滞在、インドネシアの従軍慰安婦問題にも積極的に取り組んだ。
 現在も「慰安婦問題」(日本軍≪性奴隷制≫)の歴史と被害者たちの声をユネスコ世界記憶遺産の登録申請のために国連連帯委員会インドネシア副代表としても活動している。

 「日韓(韓日)反核平和連帯」は、結成間もない一昨年10月27日、木村日本側代表、柳時京韓国側代表らが佐賀県唐津市を訪れ、使用済み核燃料貯蔵施設などを唐津市と玄海町(九州電力玄海原発立地町)への誘致しないように、また、玄海原発の再稼働に反対することを求める緊急要請書を唐津市長と同市議会議長あてに提出した。
 今年2月25日には、会員の金信明さんが昨年夏、韓国での会合後の食事中に病に倒れ、いまだに意識が戻らないことに対して同組織が主催して金信明さんを激励する集会が福岡市のプロテスタント教会であった。
その席には、金信明さんの親友、歌手・趙博さん(通称パギヤン)が駈け付け、会員や支援者ら50人以上が集まった。パギヤンは「アベ・イズ・オーヴァー」を歌った「浪花の歌う巨人」として知られる。

 その席で崔勝久事務局長は「会として、米国の日本原爆投下の賠償責任を問う裁判を米国で起こす準備をしている」と表明して注目された。原告には原爆被害者で現在韓国在住者の数人が名乗りを上げているが日本人はまだ誰も原告になっていいという人がいないので、今後、この運動を広めたいとも述べた。
 日本への原爆投下を裁判で問うことになれば世界的に注目されるとともに、米国民の多くからは強い反発もあると想像できる。「日韓(韓日)反核平和連帯」の今後の活動に親近感を寄せながら見守りたい。

posted by JCJ at 09:31 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月27日

《編集長EYE》 電通が憲法改正国民投票を支配する=橋詰雅博

 2017年に新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットなどで費やした日本の総広告費は約6兆3900億円で、6年連続プラス。業界最大手の電通は国内売上高が1兆5600億円、海外も含む連結ベースの総売上高は約5兆2000億円だ。電通の総売上高は日本の総広告費の8割ほどに当たる。まさに巨大企業で、単体では世界一の広告代理店。

 だが一方では新入女性社員を過労自殺に追い込んだことで社会から糾弾され、16年末にブラック企業大賞≠ニして名指しされた。社員を酷使することで、ナンバーワンの地位を維持してきたゆがんだ構図が露呈した。

 そんな電通がここにきて注目されている。年内にも実施という憲法改正国民投票を巡り、電通が長年、広報戦略を担う自民党の改憲広告≠仕切るからだ。業界第二位の博報堂で18年間営業をしてきた著述家・本間龍さんは「電通が国民投票を支配する」と断言している。

 2月末に都内で講演した本間さんはこう指摘した。

 「国民投票運動ではテレビCMの影響力が大きい。インターネットとは違い、テレビCMは『ながら視聴』されるので、繰り返し行われると、視聴者への『刷りこみ効果』は絶大です。特に視聴率が高い夕方から夜11時台に流れるスポットCM(局が定めた時間帯に15秒間流れる)が勝負のカギになる。この時間帯にいかに大量にCMを流すかだ。これを実現するには巨額なお金が必要。また、このCMワクを事前に抑えなければならない。 

 改憲勢力の中心である自民党の資金力は護憲勢力のそれを圧倒している。政権党の自民を支える電通は、テレビCMでのシェアは35%とダントツ。加えて戦略立案もCM制作もCMワク購入も1社だけですべてやれる。従って自民党などの改憲勢力が国民投票で勝つ可能性は高い」  

 国民投票では有料テレビCMは投票日前2週間だけ禁止。規制を強化しないと自民党・電通の思うつぼだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年3月25日号


 
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2018年03月25日

【今週の風考計】3.25─東京都・迷惑防止条例の極まりない危険性

「こちらは麹町警察署です。国会周辺をうろつき、コールを挙げる皆さん! 迷惑防止条例に違反しています。もし指示に従わなければ懲役1年以下、または100万円以下の罰金が課されます」─これが7月以降、現実になる。

警視庁が東京都に提案した迷惑防止条例案が、今月末にも成立するからだ。その内容の恐ろしさは極まりない。既存のストーカー規制法の厳罰化を盾に、「みだりにうろつくこと」「監視していると告げること」「名誉を害する事項を告げ、その知り得る状態に置くこと」「電子メール(SNS含む)を送信すること」などなどが、迷惑の範囲とされ処罰の対象となる。
解釈も含め恣意的な運用の危険は大きい。上記のように国会前に三々五々あつまり、「アベ政治を許さない」の声を挙げ、チラシをまくなどの行為が、「名誉を害する」行為として処罰の対象となりうるのだ。

メールで「昭恵夫人は証人喚問に応じよ!」と、官邸や官公庁に要請する内容の電文を、何度も送信すれば引っかかりかねない。しかも名誉棄損であるとの本人告訴がなくとも、警察や司法の判断で逮捕・起訴、そして処罰ができるのだ。

私たちジャーナリストの活動も、「その行動を監視し…、又はその知り得る状態に置く」行為とみなされ、かつ取材も「住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと」と解釈されれば、刑事罰の対象となる。
国会での「森友文書改ざん」、佐川証人喚問の関心事に紛れて、「排除」の言辞を弄した小池都知事の下、言論・報道・表現の自由、知る権利など、憲法上の権利が侵される、危険な迷惑防止条例案が独り歩きする。(2018/3/25)
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2018年03月18日

【今週の風考計】3.18─佐川証人喚問から文書改ざんの根源へ

◆「森友文書」改ざんが安倍政権を直撃し、支持率は39.3%、2月より9.4ポイント急落した。土壇場になっても、官邸は国交省から提出された改ざん前の文書を6日間も放置し、“虚偽答弁”を繰り返す。
◆官邸ぐるみで<改ざん隠蔽工作>を続ける安倍首相への嫌悪感は、いまや燎原の火のように広がる。1年以上、ウソと虚偽の答弁を繰り返してきたツケが、安倍政権を侵す毒のように、全身に回ってきている。

◆文書改ざんは200項目を超える。削除された箇所を見れば、昭恵・首相夫人の称揚や政治家の陳情などを受け、国民の財産を8億円の値引き・10年分割払いにした、前代未聞の特例扱いに至る経緯が如実に辿れる。
◆しかも、この事案が“安倍案件”であるにも関わらず、安倍首相が「私や妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」と言い切った国会答弁がある以上、なんとしても経緯を削除し、「つじつま合わせ」をしなければならない。

◆財務省が組織として意思決定した証拠の決裁文書ですら、改ざんする罪を犯すのだから問題の根は深い。それを理財局の一部の職員や佐川宣寿・元理財局長に責任転嫁してゴマかすなど、許されることではない。国会での佐川証人喚問はもとより、財務省から独立した機関を設けて調査しなければ、問題究明などできるはずがない。司直の手が伸びる前に国政調査権を行使し、与野党問わず政府の責任を徹底追及すべきだ。

◆7年前に制定された公文書管理法は、中央省庁の意思決定に至る「過程」を合理的に跡づけ、検証できるよう文書作成を義務づけ、いつでも政府が説明責任を果たせるようにするのが前提になっている。
◆かつ公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であり、「主権者である国民が主体的に利用し得るものである」とし、かつ「将来の国民にも責任を持つ」法律であると位置づけている。アベさん、熟読玩味せよ!(2018/3/18)
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2018年03月16日

≪お知らせ≫ 出版部会4月例会:出版危機の深層を抉る─「アマゾン膨張」と出版界

出版危機の深層を抉る
─「アマゾン膨張」と出版界─

いま出版界は未曽有の危機に直面しています。
売り上げは13年連続して減少・最大の落ち込み。
<町の本屋さん>はつぶれ、出版流通が深刻な事態です。
「アマゾン商法」が出版界を席捲し、版元との直取引が横行!
出版文化が危うい事態を、どう打開するか。


講演:星野 渉氏 (「文化通信」編集長)
日時:4月7日(土)14:30〜
場所:JCJ事務所 地下鉄「神保町」駅下車 A5出口 千石屋ビル4F
参加費:500円 (JCJ会員・学生300円)

日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
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2018年03月14日

≪月間マスコミ評・新聞≫核軍拡を支持する読売社説に驚き=山田明

 通常国会が始まり、安倍首相の自己中心的な政治姿勢に批判が集まる。安倍首相は「もりかけ疑惑」で追及されると、質問に関係なく、朝日新聞の報道が「ウソ」だと批判ばかりする。
 遅まきながら、森友学園の資料が財務省から次々と公表される。佐川宣寿財務省理財局長、現国税庁長官の「速やかに廃棄した」との国会答弁は明らかに虚偽だ。2月16日から確定申告が始まる中で、納税者の怒りが高まる。
 安倍首相はこんな佐川人事を「適材適所」と自賛する。関与を疑わせる音声データまで公開された安倍昭恵氏、佐川氏の国会証人喚問は欠かせない。
 改憲の動きが加速。 朝日1月23日社説は「際立つ首相の前のめり」と、安倍首相の自己都合の改憲姿勢を批判する。国民の多くは拙速な改憲を望まず、議論も深まっていない。憲法9条改悪は、国民に分断をもたらしかねない。
 沖縄県名護市の市長選で、辺野古移設阻止を訴えた現職が破れた。安倍政権と公明党が全面支援した新人が当選したが、これで辺野古移設が容認されたわけでない。アメとムチにより強引に新基地建設が推進され、米軍の事故が相次いでいる。沖縄県民の怒りは高まるばかりだ。
 米軍機事故では、松本文明内閣府副大臣が議場から「それで何人死んだ」と、ヤジを飛ばす始末。ネット上では、佐賀県の自衛隊機事故の被害者に心ない非難が寄せられている(毎日2月11日)。基地のそばで不安を抱く人たちの気持ちを考えると、心が痛む。「政府や司法 住民より基地重視」という声も(中日8日特報)。
産経は交通事故をめぐり、沖縄2紙が米兵の「救出」を報道しなかったことを非難した。8日に事実確認できなかったと謝罪したが、産経報道のあり方を厳しく問いたい。
安倍政権は沖縄の現実から目をそらす。米トランプ政権に追従する姿勢は、核戦略でも同じだ。核廃絶でなく、核軍拡を進める「核戦略の見直し」を高く評価するとは。唯一の戦争被爆国として、断じて許されない。
 この問題の読売新聞6日社説にも驚いた。「安全保障環境の悪化を踏まえ、米国が核抑止力の強化に乗り出したのはやむを得ない」と。トランプ政権の核戦略、それを評価する安倍政権を支持するものだ。
 揺れ動く政治とメディアの関係が問われている。   
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2018年03月11日

【今週の風考計】3.11─「森友文書」改ざんの陰で妄動する9条改憲

朝日新聞の「森友文書」書き換えスクープ報道から、10日間あがいてみたものの、ついに財務省は改ざんを認めた。決裁文書にあった「契約の特殊性」「特例的な内容」「価格提示を行う」などの記述が削除されていた。
国会を欺き、国民にウソをつく悪質な犯罪行為に他ならない。麻生財務相の進退は極まった。「朝日のフェイク報道」と叩いていた安倍首相の責任も重大だ。麻生派の領袖が政権から離れれば、総裁3選の戦略は危うくなる。そのため9日に辞任した佐川宣寿・国税庁長官に、全責任をおっかぶせる魂胆だというから始末に負えない。

そもそも財務省による改ざんの動機や目的は何だったのか。「不都合な事実」を隠すため、言い逃れ、詭弁、虚偽答弁、さらには文書改ざん、あげくに担当職員が重要な遺書を残しての自殺、そして佐川宣寿・国税庁長官の辞任。このウソの上塗りと痛ましい死へとつながった負の連鎖はどこから来たのか。
その発端となった「森友疑惑」は、安倍首相や昭恵夫人の意向を忖度し、特例的な扱いをしたところから生じた。改ざんは、まさに安倍首相への忖度を、政官癒着して重ねた行為の行き着いた結果だ。南スーダンPKO部隊の日報隠し、厚労省の裁量労働制データねつ造など、「安倍政権の隠蔽・改ざん体質」は底なし。

そのうえ「自衛隊」を明記する9条改憲に加え、「教育の充実」「合区解消」「緊急事態への対処」の3項目で甘いオブラートに包み、9条つぶしの狙いを隠す。かつ4項目を一括して、年末にも国民投票にかけるハラだという。
14日には自民党憲法改正推進本部が、9条改憲案を決める。その日の夕には、「日本会議」のフロント組織「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が、東京・憲政記念館で<憲法改正賛同1000万人達成!中央大会>を開く。(2018/3/11)
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2018年03月09日

≪おすすめ本≫二宮厚美『終活期の安倍政権 ポスト・アベ政治へのプレリュード 』 ─アベノミクスの異常性を解明し、どん詰まり政策へ終止符を打つ道=栩木誠

 とっくに賞味期限切れとなりながら、シールを次々と付け替え、国民を幻惑し続ける「アベノミクスの3本の矢(金融緩和、財政出動、成長戦略)」。その破たんは、多くの経済学者やエコノミストが厳しく指摘している。
 「安倍政権」がすでに「終活期」に入っている実態を理論的に証したのが本書である。2016年秋の総選挙後に第2ラウンドに突入した「終活期の安倍政権」の性格と構造を鋭く抉り、国民的攻防戦の構図を巧みな比喩を駆使して解き明かしている。

 著者は、安倍政権の異常(アブノーマル)を「アベノーマル」と喝破する。安倍政権の、まさにアブノーマル=異常性に迫ると共に、アベノミクスがどのような対策を講じてきたか、また今後いかなる対応策で逃げ切ろうとしているかを解明する。
 浜矩子・同志社大学教授が名づけた「どアホノミクス」など、アベノミクスの形容詞は数多い。著者もまた、安倍政権の政策は、不況の原因とデフレという結果の因果関係を取り違える「アベコべミクス」だと指摘する。

 初めから賞味期限切れであったアベノミクスを、いくらお色直し、再化粧したとしても、出口のない絶望の迷路と悪循環から脱することはできないのははっきりしている。
 本書は、再任が必至とされる黒田東彦総裁率いる日本銀行やアベノミクスの意味不明な「業界用語」の誇大包装を紐解き、金融政策と経済問題の本質、終活期の「アベ政治」の矛盾を明解に分析している。ポスト・アベ政治への「プレリュード(前奏曲)」を奏でる1冊。
(新日本出版社2300円)
「終活期の安倍政権」.jpg
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2018年03月07日

《ワールドウォッチ》危険な核戦略に乗り出すトランプ政権=伊藤力司

 トランプ米政権は2月2日、アメリカの「核態勢の見直し」(NPR Nuclear Posture Review)を発表した。爆発力を抑えた小型核弾頭の開発や非核兵器に対する反撃にも核兵器の使用を排除しないなど、核兵器への依存拡大を鮮明にした。「核なき世界」を目指したオバマ前政権が8年前にまとめたNPRからの大きな方針転換である。
 今回のNPRは、ロシアや中国の核戦力増強や北朝鮮やイランの核開発など「アメリカは過去のいかなる時期より多様で高度な核の脅威に直面している」として、予測不能の脅威に対抗するために米国の保有する核兵器の近代化や新たな核戦力の開発を宣言している。
 例えば、ロシアが局地戦に用いる戦術核に対抗して、爆発力が低くて「使いやすい小型の核兵器」を開発するという。米国がこれを使用した場合、敵国はそれが小型核か破滅的な被害を及ぼす戦略核か判断に迷い、反撃すれば全面的な核戦争に拡大するだろう。
 さらに新NPRは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に用いる小型核や海洋発射型の核巡航ミサイル(SLCM)を開発する方針を表明。爆発力を抑えた小型核は「一般市民を巻き添えにする恐れが減る」と、核兵器使用のハードルを下げる危険を伴う。
 この新方針は、昨年国連加盟国の圧倒的多数で採択された「核兵器の使用と威嚇」を否定した核兵器禁止条約に真っ向から挑戦するものであり、米国が加盟している核兵器不拡散条約(NPT)の核軍縮についての誠実な交渉の誓約にも明らかに違反している。
 ところが河野太郎外相は、直ちにNPRを「高く評価する」との談話を発表した。これは広島と長崎の被爆以来、日本国民が被爆者を先頭に一貫して追求してきた核兵器廃絶を目指す努力を否定するだけでなく、毎年8月に開かれてきた広島、長崎における平和祈念式典や一昨年6月のオバマ前大統領の広島訪問時における安倍晋三首相自身の発言をも矛盾する発言である。われわれ唯一の戦争被爆国の国民として、トランプ政権の新核戦略とこれに恥ずかしげもなく追随する安倍内閣と河野外相に、強く抗議し続けなければならない。
posted by JCJ at 11:24 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

【今週の風考計】3.4─反骨の「荒凡夫」俳人・金子兜太さんを悼む

★俳人・金子兜太さんの葬儀・告別式があった2日、あらためて心から哀悼の意を捧げた。「アベ政治を許さない」の紙ボードを掲げ、国会前で抗議の声が響きあう、あの熱気が甦る。いつも金子さんがそばにいた。

★40年以上も前のことだが、金子さんが日本銀行を退職される前年、「種田山頭火」について、その生涯をたどる書き下ろしをお願いしたときの緊張も忘れられない。
★「書きたいと思っていたところだ」と快諾され、退職4カ月後の1974年8月末に『種田山頭火─漂泊の俳人』(講談社現代新書)として刊行することができた。
★この中にも「存在者の生粋の有り態を曝していた山頭火は、<弱者の眼>といおうか、体の奥に潜む眼光は鋭かった」と、泥酔や無頼、放浪と行乞の一生を送った者であれ、その根底にある眼光を、正確に掬いあげている。戦争体験、日銀時代の組合活動や定年近くになれば金庫番、窓際族ならぬ「窓奥族」の日々が下敷きになっているのは間違いない。

★その後、二冊目として「小林一茶」の執筆をお願いした。これも快諾され、東京・新宿住友ビルでの朝日カルチャーセンター主催の俳句講座の先生として、秩父から出てくるたびに1章分ずつ原稿を渡してくださった。兜太名入りの原稿用紙に、あのしっかりした文字がマス目いっぱいに書かれていた。1980年9月中旬、『小林一茶─〈漂鳥〉の俳人』(講談社現代新書)刊行。
★本書で「<荒凡夫>の生命を俳句にぶつけてきた一茶のなかには、<弱きもの>への感応の世界が人一倍色濃く宿っている」と書いた金子さんも、反骨の「荒凡夫」として、98歳の生涯を閉じた。(2018/3/4)
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2018年03月03日

「私は断固、闘い続ける」 17年働き突然雇い止め 派遣労働者・渡辺照子さんに聞く=橋詰雅博

派遣・契約社員やパート、アルバイトなどといった非正規労働者にとって今年は大きな転換点になる。2013年4月1日施行された改正労働契約法により同じ職場で仕事して通算5年を超えると、有期雇用から無期雇用に切り替えることができるのだ。この5年ルール≠ノ該当する無期雇用の人が4月1日以降、出現する。対象者は約400万人とみられ、雇用の安定が守られる。一方、簡単にクビを切れなくなるので、5年ルールを前に雇い止めに走る企業が多い。16年8カ月同じ職場で事務の仕事をしてきた派遣労働者の渡辺照子さん(58)も昨年10月に雇い止め通告され、昨年末失職した。渡辺さんに改正労働契約法の問題点などを聞いた。      ☆ ☆

――今の心境と、どういう風に生活していますか。

ダメージは大きい

 約17年間、同じ職場で働いてきました。仕事がなくなってしまったので、心身のバランスが崩れてしまった。同居する88歳の母親の面倒を見ていて、介護疲れもあってうつ状態。茫然自失ですね。失職は人生にとってダメージが大きいと言われていますが、まさにその通りです。

 無職ですが、雇い止めの当事者として体験を話してほしいなどの講演依頼が労働組合から、雇用問題をテーマにした原稿依頼もあります。でも講演料も原稿料も食べていける額ではありません。蓄えを取り崩して生活しています。ただ、住んでいる新宿の家は両親の持ち家ですので、家賃がないのが助かります。家賃があったらとても生活できません。

――派遣元(「パーソナルテンプスタッフ」)と派遣先(「地球科学総合研究所」)に対しどういう行動をとっていますか。

22日に社前抗議

 昨年11月に労組「派遣ユニオン」に個人加盟しました。専従で労働争議の経験が豊富な関根(秀一郎)書記長のアドバイスを受け、派遣元と団体交渉を2回行い、派遣先にも団体交渉を2回申し入れた。派遣先が団体交渉を拒否したので、事前に通告した通り22日に社前で関根書記長らと抗議行動をしました。法的手段に踏み出すかどうは企業側の対応しだいです。派遣ユニオンをバックアップする女性弁護士と相談はしています。

――改正労働契約法をどう見ていますか。

 私の場合、3カ月ごとに雇用契約を更新していました。雇い止めにならないか内心、ビクビクしながら働いていた。13年4月の施行後、5年間クビがつながれば、晴れて無期雇用に転換でき、雇用の不安からやっと逃れられると思った。そうしたらこういうひどい目にあわされた。

 そもそも無期雇用とっても、直ちに正社員になれるわけではない。待遇も同じになるとは限らない。改正法は正社員と非正規労働者の待遇格差を埋めるものではない。しかも無期雇用に転換するには労組を通じて実現可能です。私のような派遣労働者が派遣ユニオンに入ったことが企業側に知れたら雇い止めは必至。だから知っていてもユニオンに入れなかった。私は無期雇用後にユニオンに入り、団体交渉で待遇改善を要求して行こうと計画していた。計画倒れになってしまった。

罰則規定を設ける

改正法ではあの手この手で無期雇用に転換させない企業への罰則規定を設けるべきです。また、契約のない期間が6カ月以上ある場合、それより前は通算期間に含まれない(クーリング期間)とする抜け穴があります。無期逃れを許さないよう法律でしばりをかけてほしい。

――企業側の仕打ちをどう思いますか。

 仕事の過程でハラスメントを受け、サービス残業を強要され、ハードワークのため過労で職場に倒れるなど不当な目にあってきた。「次の契約更新はしない」という一言で派遣先から切られ、「ハイ、そうですか」と受け入れることはとうていできない。企業側は、派遣労働者は使い捨てでいい、まるでモノ扱いしている。絶対に許せない。私は闘い続けます。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年2月25日号
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2018年03月01日

〈沖縄リポート〉権力むき出しの市長選=浦島悦子

 あまりにも異様な選挙だった。それは、期日前投票数(21.622)が当日投票数(15.522)を6000票以上も上回った前代未聞の事態にも如実に表れている。「国策」である辺野古新基地建設を阻む稲嶺進市長を何としても潰すという国家権力の意思と、その恐ろしさをひしひしと感じさせられた選挙だった。
 安倍自公政権のやり方は巧妙を極めた。選挙前に、市民・県民の大多数が反対する新基地建設に向けた工事を加速することによって「あきらめ感」を誘い、外堀を埋めた。「どうせ造られるのだから、もう苦しむのはやめて楽になろうよ」と甘くささやいた。
 自公推薦の渡具知武豊候補は新基地建設問題に一切触れない「争点隠し」を徹底。公開討論会などの要請もすべて断り、政策論争を避ける一方、稲嶺市政の8年間の実績を打ち消すように 「失われた8年」「停滞」「閉塞感」などのネガティブキャンペーンを繰り広げた。
 自民党幹部や現職大臣が次々と応援のため名護入りしたが、彼らは表には出ず企業回りに徹し、ふんだんなカネを使って水面下でさまざまな工作を行った。菅官房長官は「うちのような小さな会社にまで?」と経営者が驚くほど徹底的に市内各企業に電話を入れた。公明党は広い名護市域の隅々にまで全国動員した運動員を送り込み、甘言、強要、誘導などあらゆる手段を駆使して、人々を期日前投票所へ運んだ。唯一、表の役割を担った小泉進次郎氏は告示以降2回も名護入りし、街頭演説会に集まった若者たちをそのまま期日前投票所へ誘導した。
 警察は、稲嶺陣営を公職選挙法の厳格な適用によって締め付ける一方、渡具知陣営の違反は野放しにした。
その結果、約3500票差で渡具知氏が当選したが、20年以上「国策」に翻弄され、苦しみ続けた名護市民は、今回の選挙でさらに分断され、傷つけられた。渡具知新市長は「勝者」ではなく、翻弄された一人にすぎない。これは選挙に名を借りた国家犯罪だ。味を占めた安倍政権は、11月の沖縄県知事選でも同じ手口を使ってくるだろう。
 今後の各種選挙や国民投票も見据えて、名護市長選とは何だったのか徹底検証が必要だ。その教訓を踏まえ、本来の選挙のあり方を取り戻さなければ、民主主義の明日はない。
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2018年02月28日

〈月間マスコミ評・出版〉格差拡大を放置し今や階級社会に=荒屋敷 宏

 英国在住の保育士・ライター・コラムニストのブレイディみかこ氏の「ブロークン・ブリテンに聞け」という新連載が文芸誌「群像」3月号(講談社)で始まった。ブレイディ氏は「子どもたちの階級闘争」(みすず書房)、「労働者階級の反乱」(光文社新書)などでも脚光を浴びつつある。
 「群像」編集部が作成した目次いわく「階級が分断され、貧困が蔓延(はびこ)る『壊れた英国』で人々はどう生きるのか。『一億総中流社会』が崩壊した日本の未来/現実はここにある――。」
 ブレイディ氏は、生理中に使用するタンポンやナプキンが買えない貧困層の女性たちを意味する「生理貧困」(ピリオド・ポヴァティ)という聞きなれない言葉を切り口に、18歳の女性たちが「スティグマ」(恥の意識)を乗り越えて立ち上がる英国の姿を紹介している。
 「日本でもこの問題はけっして他人事ではないはずである。/生活保護の生活扶助費引き下げという、まるで英国のような緊縮政策が数カ月前に発表されたばかりではなかったか」とブレイディ氏は締めくくる。
 まさしく、他人事ではない。「賃金と社会保障」1月号(旬報社)の特集「さらなる生活保護引下げ」が便利である。同誌編集部によると、「厚労省の今回の(生活扶助費)引下げ案の考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準と比較し、生活扶助基準が上回っているので引き下げるというもの」という。「一般低所得世帯」の消費支出にあわせて生活扶助基準を変更するという、恐るべき安倍政権の政策である。
 柏木ハルコ氏の漫画「健康で文化的な最低限度の生活」(「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中)が新人ケースワーカーの視点から生活保護を描いて注目されているが、衆院予算委員会でも日本共産党の志位和夫氏が、生活保護は憲法25条(生存権)にもとづく国民の権利であるとして、削減計画の撤回を求め、生活保護法の名称を改めて「生活保障法」とするなどの提案をおこなった。
 橋本健二氏は「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)で、1980年前後から始まった「格差拡大」は40年近くも放置され、「一億総中流」はもはや遠い昔と指摘した上で「現代の日本社会は、もはや『格差社会』などという生ぬるい言葉で形容すべきものではない。それは明らかに、『階級社会』なのである」と書いている。大注目の論点であろう。 
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≪おすすめ本≫ DAYS JAPAN 1月増刊号「日本列島の全原発が危ない! 広瀬隆 白熱授業 」─いつ原発を襲う大地震が起きても不思議でない日本沿岸のプレート=藍原寛子(ジャーナリスト)

 次なる原発事故、核災害の予言の書。福島県沖から九州と日本列島を縦断する1千キロの巨大活断層「中央構造線」が地震激動期に入った。加えて津波、活火山、そしてテロの危険が迫る。原発や核燃料再処理工場の大惨事が日本のどこで起きても不思議でない時代。

 著者は10年前に岩手・宮城内陸地震が「日本に原発を建設・運転できる適地はないことを知らしめ」たと指摘。国の原発政策、事業者の問題を挙げ、破局を避けるには原発を再稼働せず停止・廃炉にした上、応急処置として高レベル廃棄物を含んだ使用済み核燃料の乾式貯蔵をと説く。
 何もしなければ、最悪のシナリオ―施設爆発で高レベル廃液が全量放出され、「日本とアジア全土が世界地図から消える」と、センセーショナルな宣告をする。

 これまで予測が当たってきた理由を尋ねると「内心の恐怖と、地球規模で問題を見ているからだ」と著者はいう。九州の群発地震、台湾大地震が続いた。昨年9月に中南米で連続した地震と海底マグマの噴出は、日本の地震に影響を与える地球内部のマントルの動きであり、日本沿岸のプレートは、いつ大地震が起きてもおかしくない状態だとみなしている。
 福島第一原発事故から7年。高度な科学技術が容易に凶器になり得る現代、人間は生き残りをかけて、どんな直感と叡智で行動するのか。福島原発事故の避難者の存在が無視され、次の核災害まで避難の妥当性を認めないとしたら遅すぎる。あとがきの「重罪弾劾」は圧巻。「広瀬節」は絶好調。
(デイズジャパン2150円)
「日本列島の全原発が危ない」.jpg
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2018年02月25日

《編集長EYE》 ICAN、金融機関にアプローチ=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に貢献したことで、昨年、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)。その事務局長のベアトリス・フィンさん(スウェーデン出身)は1月来日し、広島、長崎、東京で講演した。 

 フィン事務局長は「格兵器を持つことが力の象徴ではなく、恥の象徴だと認識させて、核兵器を持つ国に悪の烙印を押すことができれば、核保有国ももっと理にかなった考え方をするようになる」と訴えた。

 核保有国は「恥だ」という認識を世界に定着させるためICANは、さまざまな活動を展開する。1月初旬に本紙のインタビューを受けた(1月25日号に既報)ICAN国際運営委員の川崎哲さんは、その活動を4つに分ける。第一は核禁止条約の署名・批准を世界的に促進するため広島と長崎の被爆者による証言活動とメッセージ発信だ。第二が核武装国の「核の傘」の下にある日本のような協力国の核政策見直しを求める積極的なロビー活動。第三は将来の核武装国の核禁止条約参加を視野に入れて、核武装廃棄や検証措置をさらに精緻する議論を行う。第四が民間の金融機関などへの働きかけだ。核禁止条約が発効されれば、核兵器は国際法上、非人道兵器として認定される。そのような兵器の製造に関わる企業に融資することは社会的な責任を欠いたものと見なされる。対人地雷もクラスター爆弾も禁止条約発効(地雷は99年3月、爆弾は2010年8月)で、企業への融資が引き上げられて兵器の生産や貿易が大幅に縮小した。

 川崎さんはこう語った。

 「三菱UFJファイナンシャルグループは、『非人道兵器』のクラスター爆弾を製造する企業に対して今後、その資金使途にかかわらず、融資しない方針を昨年12月に発表した。例えば三菱UFJに核兵器の製造では、どう考えているのか≠ニいったアプローチは重要です」

 企業が相手ならば方針の転換は期待できそうだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年2月25日号
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【今週の風考計】2.25─あらためて<築地でええじゃないか!>

「築地は守る、築地の後は築地」と言明してきた小池百合子都知事が、「築地に市場をつくる考えはない」と仰天発言。
これまで都知事は、築地には<セリ>などの市場機能を残し、豊洲には流通センターの役割を担ってもらう─両市場“併存”構想を声高に語ってきた。その約束を反故にする、まさにチャブダイ返しの暴言である。

豊洲移転に反対する<築地女将さん会>の一員である鈴木理英子さんをガイドに、このほどJCJ会員メンバーは「築地」を実地見学した。建物の6階屋上から一望すると、隅田川へ扇子を広げたように昭和モダンの棟屋が伸びる。その湾曲したカーブは鉄道の引き込み線に対応し、トラック輸送にも便利だったという。

地上に降りると、セリも終わり仲卸の人たちが買荷保管所へ荷物を運ぶターレが勢いよく行きかう。仲卸は約500社、目利きの技を支えに、現物を見てもらい値段を決める建値市場の魅力。健全な価格が形成され、漁師や農業生産者への利益還元と品質向上に結びつくという。ちなみに鹿児島県産のアカヤガラがキロ1700円、千葉県産キンメがキロ3600円。
さらに場内・場外を回わる首都圏からの買出人は、毎日1万人を超える。加えて海外からの観光客が場内の市場メシや場外の御鮨に長蛇の列をなす。築地ブランドここにあり。<築地でええじゃないか!>。わざわざ10月11日、なぜ豊洲へ移転させるの? 

いま豊洲では、ベンゼン・シアン・水銀などの有害物質がしみこむ地下水のコントロールに躍起だ。海抜より1.8メートルまでの水位に抑えないと、汚染物質の漏出も大地震による液状化現象も防げない。現実は地下水の水位は、最高で海抜より4.6メートル。地下水を抜き取るポンプの稼働費用は巨額になるのは必定だ。
40ヘクタールもの広大で、かつ複雑に入り組んだ土地の地下水を、1.8メートル以下に管理すること自体が至難の業。“安全宣言”が出せなければ移転はとん挫。危ない橋を渡るより、築地を守るほうがずっといい。(2018/2/25)
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≪リレー時評≫再び「住民投票」にひた走る維新の会=清水正文

 2015年5月、維新の会は「大阪都」構想の是非を問う住民投票を32億円もの市税を投じ、5億円ともいわれる宣伝費をかけて行ったが、大阪市民から「ノー」の意思が示され、法的にも明瞭な決着をみた。
 ところが、松井大阪府知事、吉村大阪市長は「副首都構想」と装いを変え、「総合区」も議論するからと公明党を抱き込んで、昨年大阪府・市に「特別区設置協議会=法定協議会」を設置し、今年の秋に再び「住民投票」を行おうとしている。

 しかし、新たな「特別区」案なるものは、否決された「5区案」を「4区または6区案」にするというだけで、本質的には何の違いも打ち出せていない。前回の「二重行政の解消」や「財政効果額」の大義や道理は消え、万博誘致を利用した「IR」(カジノ)などを進める以外に「都構想」のメリットを示すことができず、矛盾が広がっている。
 「法定協議会」では、「現行法では都区調整財源に地方交付税は使えない」「財政シミュレーションを出さないのは、メリットがないからではないのか」などの異論や疑問が維新以外の政党から出されている。

 昨年9月の堺市長選挙では、4年前に続き「大阪都構想」反対を掲げる竹山市長が「堺は一つ、堺のことは堺で決める」と主張し、「堺市つぶし」を狙う維新の候補に勝利した。世論調査でも、大阪市民の「都構想」反対は1年間で5ポイント増えて47%に、賛成は10ポイント減って37%(「読売」)となっている。
 「総合区」とは大阪市を存続させたうえで、行政区の権限を強化するために、単独あるいはいくつかの区を合わせて設置しようとするもので、地方自治法に基づき市議会で決定すれば「住民投票」など不要であり、変更・解消も市議会の権限になっている。

posted by JCJ at 15:26 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月18日

【今週の風考計】2.18─幕山ハイクと羽生の金メダルと3・11

友達6人と湯河原梅林を見ながら、幕山ハイクを楽しんだ。快晴の空に浮かぶ梅4千本。「紅千鳥」や「白加賀」などの梅が、香りを漂わせながら、もう一杯に赤や白の花弁を広げて咲きほこる。

梅の散策路を過ぎ登山道に入ると、きつい傾斜の木の階段が続く。つづら折りに伸びる山道に、ハーハー息が出る。五郎神社とある標識を超え、しばらく行くと大きな岩に出会う。その平らな面に、「追悼 2011年3月11日 東日本大地震 落石」と記されている。7年目の3・11が近いと思いながら、岩のわきを抜ける。
パッと展望が開ける。眼下に湯河原の街、春霞にけぶる相模灘、初島、ぼんやり大島まで見える。さらに登る。やっと標高625mの頂上。真鶴半島が真下に突き出ている。おにぎりの旨いこと。

帰りは一瀉千里、転ばぬようバランスを保つのが精いっぱい。湯河原駅近くの湯場で汗を流す。その湯上りロビーにあるテレビが、羽生結弦選手の快挙を映している。ソチ五輪に続き、平昌五輪でも金メダル獲得、66年ぶりの連覇だ。数々の試練を乗り越え、今や伝説のスケーターになった。
2011年3月11日、彼は東北高校1年・16歳の時、東日本大震災に遭遇した。被災した自分の家族の苦労と合わせ、「ガスや、電気、水道も止まって大変でした。それ以上に、苦しんだ人たちがたくさんいて、特に津波、原発事故の被害にあった地に行って思った」と、多くの被災者への思いも口にしている。ジーンと胸が熱くなった。(2018/2/18)
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2018年02月17日

【マスコミ評・放送】DHC、確信犯として沖縄を揶揄=岩崎貞明

 昨年12月、NHKと民放が設置する放送の自主規制機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が、昨年1月に東京都のローカル局、東京メトロポリタンテレビジョン(MX)が放送した番組『ニュース女子』の沖縄特集が「重大な放送倫理違反」だったとの意見を公表した。

 番組は、沖縄の「基地反対派」は「過激派で危険」「日当をもらっている」などという根拠のないデマ情報をレポートし、米軍基地建設反対を訴えて工事現場付近で座り込みの抗議行動を続けている地元の人々を笑い者にするものだった。化粧品製造・販売のディーエイチシーの関連会社が番組を制作し、スポンサー料も付けて放送させるという「持ち込み番組」のスタイルだった。

 BPO放送倫理検証委は、この番組が放送局において適正な考査が行われたかどうかを検証したが、それは沖縄の現地に赴いて関係者に聴き取り調査を行うなど精緻な検証作業を試みたものだった。
 その結果として同委員会は、MXに対して「抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった」「『救急車を止めた』との放送内容の裏付けを確認しなかった」「『日当』という表現の裏付けを確認しなかった」「『基地の外の』とのスーパーを放置した」「侮蔑的表現のチェックを怠った」「完パケでの考査を行わなかった」という六つの点を指摘し「本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があった」と断じている。

 問題は、直接番組制作に携わったディーエイチシー側が、反省どころか開き直りの態度を改めないことだ。基地反対派の取材をしていないことについては「言い分を聞く必要はないと考えます」などと一方的な主張に終始して、まさに確信犯として沖縄の人々を揶揄している。ネット上に蔓延する「沖縄ヘイトスピーチ」は深刻な問題だ。

 この番組をめぐってはもう一件、BPOの放送人権委員会にも人権侵害救済の申し立てが行われている。人権問題であるからには、こちらのほうこそ早急な対応が待たれているはずだ。いずれにせよ、決定を受けたMXの態度が懸念される。
posted by JCJ at 01:14 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月11日

【今週の風考計】2.11─籠池夫妻を6カ月も拘留する不可解な理由

■「マンデラ・ルール」とは? 監獄に収容された人たちへの拷問や非人道的な取り扱いを禁じ、定期的に家族や友人との連絡を保障する国際基準である。不条理で苛酷な27年もの長期投獄に屈せず、南アフリカ大統領となった故ネルソン・マンデラさんを讃えて名づけられたという。

■参議院議員の山本太郎さんが、このルールを国会質問で取りあげ、安倍首相に迫る内容が喝采を浴び、広く知られるようになった。「籠池氏と奥様は半年以上にもわたり独房で長期間拘束。総理ご自身が口封じのために長期拘留を指示したなんてありませんよね?」という質問だ。
■これまで安倍首相が「この籠池さん、真っ赤な嘘、嘘八百ではありませんか」と誹謗し、「詐欺を働く人物」とこき下ろす、あの森友学園の前理事長・籠池泰典さんと妻の諄子さんの事態が深刻なのだ。夫妻の勾留が、なんと6カ月に及んでいる。

■検察は証拠品を押収し関係者の聴取を終えたが、完全黙秘を続けている以上、さらに証拠隠滅の恐れがあるという理由で、起訴後も拘留を続けている。いま大阪拘置所に収監されている籠池泰典さんは、窓のない新館の独居房に入れられ、諄子さんは窓はあってもエアコンがない旧館に収容されている。家族との接見もできない。まさに「マンデラ・ルール」に違反しているではないか。
■ひるがえって、森友への国有地売却の橋渡し役を務めたとされる昭恵夫人は平然と海外を経めぐる。しかも音声データがあるにもかかわらず、「私こそ真実を知りたい」と言いつくろい、偽証罪に問われかねない証人喚問に応じない。

■財務省は破棄したはずの資料を、1年近くたってポロりポロりと出してくる。佐川宣寿・前理財局長の国会出席に踏み切り、累を昭恵夫人に及ばさないための戦術との声も挙がる。国民を馬鹿にするな。(2018/2/11)
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2018年02月08日

リニア事件 JR東海は共犯者 「三位一体」で国民だます 関島保雄弁護士に聞く=橋詰雅博

 リニア中央新幹線の沿線住民738人が16年5月に品川―名古屋間の工事認可取り消しを国に求めた行政訴訟は、東京地裁で8回の口頭弁論が行われている。原告弁護団共同代表の関島保雄弁護士(70)に、リニア談合事件をどう見ているのかなどを聞いた。

――談合事件への感想は。
 大手ゼネコン4社が工事受注前に談合を当然やっていると思っていました。リニア新幹線はJR東海が全額自己資金で建設すると07年に表明。だから国も国会も国民も民間事業だから口を挟めないという流れできました。

「民間事業」口実に
――しかし、リニア新幹線は公益事業を対象とした全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づいて建設されています。
 全幹法の場合、用地買収や建設残土の処分などで自治体を協力させることができて、環境アセスメント前に提出する工事計画などはアバウトです。環境アセスはおおざっぱなものにならざるを得ません。全幹法の適用はJR東海にとってメリットは大きいのです。それでいて民間事業を口実にJR東海はいろいろな問題から逃げています。背後に政治的な動きがあったとしか思えません。

――そのうえ安倍晋三首相は16年6月に財政投融資による支援を打ち出しました。
 総事業費約9兆円のうち3兆円を財投で賄っています。しかも超低金利で、30年間返済据え置きです。
これを実現するため安倍政権は独立行政法人「鉄道・運輸施設整備支援機構」の法改正を行い、財投資金よってリニア新幹線の工事を発注できるようにしました。全幹法を適用、さらに財投という名の税金が投入されたリニア新幹線は、今や国家的プロジェクト。国が様変わりさせておきながら民間事業のイメージを維持し、国民をだましています。

9兆円の利権隠す
 9兆円という大きな利権を隠すため国、JR東海、大手ゼネコンが三位一体となってリニア新幹線建設を進めてきています。談合によって工事費がはね上がったのだから発注元のJR東海は本来ならば被害者だが、共犯者と言っても過言ではありません。JR東海の葛西敬之・取締役名誉会長は安倍首相の財界応援団の有力メンバー。ここでも首相に近い民間人が有利になるよう政策がねじ曲げられていると思います。

――裁判への影響はありますか。
 ストレートに影響するとは言えないでしょう。しかし、この事件は、談合のような違法行為がさまざまな場面で起きているにもかかわらず強引に建設が進められている実態を裏付けるいい材料になります。原告側の主張に説得力の厚みが増します。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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ICANのノーベル賞受賞と被爆者運動への目─第五福竜丸展示館を訪ねて=木下壽國(ライター)

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が昨年、ノーベル平和賞を受賞した。メディアはこぞって、このニュースを大きく取り上げた。
 メディアが受賞に沸き立つ中、私は何十年ぶりかで東京都江東区の夢の島にある第五福竜丸展示館を訪れた。核兵器問題についてささやかながらも自分自身でなにかを感じてみたいと思ったからだ。訪ねたのは平日で、閉館時間に近かったこともあり、展示を見ている人は少なかった。

 館内では特別展<この船を描こう>というイベントをやっていて、小中学生の描いた第五福竜丸の絵がたくさん展示されていた。それを見た私はちょっとした感動を覚えた。船の姿をそのまま描いているのだろうと半ば見下していたのだが、なかなかどうして。想像力が豊かなのだ。
 中学2年生による「朝日を告げる福竜丸」などは、海をドーッ、ドーッと流れる川のように表現し、ちょっとした迫力を与える。そのほかの作品もそれぞれの想像力の中に船を自由に遊ばせていた。
 第五福竜丸の船体に沿って左回りに歩みを進めていくと、水爆ブラボー実験で汚染された太平洋の海域を赤丸などで表示するパネルがあった。一瞥して、改めて汚染地域の広さとひどさに驚いた。
(→続きを読む)
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2018年02月07日

≪おすすめ本≫ 太田昌克『偽装の被爆国 核を捨てられない日本』─「核の傘」という「幻想」にすがり、<唯一の被爆国>がかぶる仮面=倉澤治雄(科学ジャーナリスト)

 「『唯一の被爆国』をアピールして被害者面するな」
 そんな声がいずれ世界から沸き起こるだろうと、本書を読んで確信した。日本はまさに「偽装の被爆国」である。「唯一の被爆国」という仮面の下で、安倍政権が核不拡散に逆行する行動を取っている実態を、綿密な取材をもとに論証する。

 米国の「核先制不使用」に対する反対表明、核兵器禁止条約交渉への不参加、安易な原発の再稼働、47トンというプルトニウムの蓄積量、インドとの原子力協定、これらは一体何を意味するのか。世界が日本の核武装を警戒するのも当然である。
 すべては「核の傘」や「核抑止」という日本政府が固執する幻想から始まる。「核を持てば強くなる」「核を持てば侵略の意図を抑止できる」という幻想である。
 「核戦略」は、「相手も自分と同じように考える」─その前提をもとに成立する。「相互確証破壊」が良い例だ。しかし「同じように考えない」主体が核を持てば成立しなくなる。失うものがない勢力に「核の傘」や「核抑止」は通用しない。「核の傘」は「破れ傘」という「幻想」となる。

 私の父は広島で原爆投下の惨状を、高射砲部隊の一員として目の当たりにした。しかし自分の見たことを一言も語らず、6年前に他界した。「非人道的」な核の惨状に、言葉を失ったからであろう。
 「核戦力を背景にした恫喝と威嚇を続けるトランプに同調し、下手をすると、その強硬路線に加勢しているように映る」
 著書の懸念に、私は完全に同調する。核の緊張が高まる今こそ、日本は仮面を脱ぎ捨てる時が来た。
(岩波書店1700円)
「偽装の被爆国」.png
posted by JCJ at 10:19 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月04日

【今週の風考計】2.4─「使える核」を高く評価する日本政府の感覚

「炎と怒り」に駆られたトランプ大統領は、<脱オバマ>なら何でもあり、ついには「核なき世界」を目指すオバマ宣言まで廃棄した。
「柔軟な核オプションを拡大する」ために、敵国の重要施設を、ピンポイント攻撃できる態勢づくりに向け、使いやすい核の開発に全力を挙げるというのだ。

長崎に投下した原爆の爆発力を、ほぼ4分の1に抑えた小型核弾頭を開発し、水上艦・潜水艦を問わず、搭載した弾道ミサイルに装着する企てだ。核兵器を使う基準についても「国民やインフラ、核施設などへの通常兵器による重大かつ戦略的な攻撃も含まれる」と記し、核が使える機会を拡大させた。
この約20年で世界が保有の核弾頭7万発を、1.5万発まで削減してきた。にもかかわらず「核弾頭を格納庫から運び出し、改良を加え最新モデルにして使う」とは。ICANがノーベル平和賞を受賞するほど、核兵器廃絶の流れは世界に広がる。それに逆らう蛮行そのもの。

驚くのは世界で唯一の戦争核による被爆国・日本政府の態度だ。事前に米国から説明を受けるや、世界のトップを切って「高く評価する」とは、なにごとだ。被爆者・平和団体は「悪魔に魂を売り渡した」と、怒りの声を挙げている。「トランプ大統領は核被害に無知・無関心だ。広島・長崎に来て被爆者の話を聞き、核の恐ろしさを実感すべきだ」と話す。

先月末、人類が滅亡する「地球最後の日」へ残り2分、30秒早める宣告が出された。午前0時と定めた「終末時計」の残り時間は、どんどん短くなり、過去最短となっている。さらにトランプと日本が早めたのは間違いない。(2018/2/4)

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2018年02月02日

核禁止条約反対「ムダな抵抗」 ノーベル平和賞のICAN国際運営委・川崎哲さんへのインタビュー=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」へのノーベル平和賞は昨年、世界に深い感銘を与えた。しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は条約を黙殺=B日本の多くの国民はもとより世界の人々も安倍晋三首相の冷たい態度に落胆、失望した。安倍首相はICANに対してそっぽを向くが、どこまでも「核兵器なき世界」を追求するICAN国際運営委員でNGOピースボート共同代表の川崎哲さん(49)が本紙のインタビューに応じた。条約発効の見通し、将来日本の参加はあり得るのかなどに答えた。

 ☆     ☆

――核兵器禁止条約に署名した国は56カ国で、批准は3カ国(ガイアナ、バチカン、タイ)ですが、どう思いますか。

 まず核兵器禁止条約は反核運動として理想に近いもので、核兵器廃絶への道筋ができた。

メキシコ批准済み

 条約の批准に関してメキシコは昨年12月に議会で批准している。ただ、国連への文書提出が遅れている。正確に言えば批准国は4カ国。しかし、条約発効に必要な50カ国には遠く及ばす、国連で122カ国が条約に賛成したにもかかわらず署名は56カ国にとどまっている。

――署名・批准が進まない理由は何ですか。

 2つ挙げられる。一つはどこの国も政治課題を抱えていて、そちらを優先しているので署名・批准には時間がかかる。単純な理由です。もう一つは米国など核武装国(9)が「役に立たない条約だ」とネガティブキャンペーンを打って、「署名・批准するな」と言っているからだ。2つの理由でいまのような状態になっている。私は前者の理由が大きいと思う。

 昨年末、早期に禁止条約の署名・批准を求める国連決議に120カ国以上が賛成している。署名・批准へ各国の世論が盛り上がれば、批准国は増えるはず。決して核武装国の圧力に屈服してはいません。条約の署名・批准案を国会で審議する順位をより高めるため世論喚起が必要です。

――それにはどうすればいいですか。

 ICANの今年の課題だが、ピースボートの場合、いままでやってきた広島・長崎の被ばく者の方を海外にお連れして核兵器廃絶を訴えてもらう取り組みを継続させて発展させることです。生き残った被ばく者の話は、地元メディアが大きく報じるし、高いレベルの政治家にも被ばく者は会える。気運を高めれば、必ず批准は実現できる。

協力国を揺さぶる

――格武装国と、米国の核の傘に依存する日本のような核武装協力国(約30)をどう攻略≠キるのか。

 核兵器武装国の条約への参加は当面、望み薄。条約を速く発効させれば、武装国も無視できなくなる。これに力点を置く。このため格武装協力国を揺さぶる。私が見るところ、これらの国は一枚岩ではない。核兵器を受け入れる積極派とお付き合い程度の消極派に分かれる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発に向きあう日本と韓国、ロシアの核兵器に脅威を抱くバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やドイツ、オランダ、ベルギー、トルコ、ポーランドなどの積極派を落すにはやはり時間を要する。このため消極派にターゲットを絞る。NATO(北大西洋条約機構、29カ国で構成)に加盟するノルウェーは議会で政府に条約加盟への可能性を検討するよう求める決議が可決される。同じくNATO加盟のアイスランドは自国の軍隊がなく、NATO駐留軍もいない。格兵器を受け入れる気持ちはさらさらない。米国の核兵器を配備して積極派と見られるイタリアでも、議会は、禁止条約に参加できるかどうか政府に求める動議を可決している。

 また、欧州では自治州の力が強い。条約賛成の自治州が中央政府にプレッシャーをかけると効果は大きい。消極派の国々や自治州などを落すのがICANの次の戦略だ。

条約は防衛に貢献

――日本が条約に署名・批准する可能性は。

 どんな総理大臣でも毎年8月に被爆地で核兵器廃絶を求める演説を行う。それなのに核兵器禁止条約に参加していない。先だって民放で核問題の特集番組を放送していたが、その実態を知らされた若いタレントは「えー」と驚いていた。多くの国民もこのタレントと同じで、それをよく知りません。日本は被爆国でありながら禁止条約に参加しないという二重性≠フ側面を持っている。このことを常識化させて、国民的な議論を巻き起こす。「条約にコミットしないのは被爆国として理解しがたい、おかしい」という声が大きくなると、日本政府の政策が転換する可能性がある。

 122カ国の賛成を得た禁止条約はいずれ発効する。格武装国と格武装協力国はムダな抵抗を止めるべきだ。条約は、核武装廃棄や国際的査察を義務付けるなども盛り込んでいる。自国防衛のためにも条約を役立てることをめざして知恵を絞ることが日本には重要です。

聞き手 橋詰雅博


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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2018年02月01日

≪リレー時評≫ 沖縄の私たちは、この国の姿を問い続ける=金城正洋(「JCJ沖縄」代表世話人)

 昨年2月の「JCJ沖縄」立ち上げから、やがて1年。年末に「リレー時評」の依頼があった。さっそく正月3日に、この稿を起こす。沖縄では年の初めに手掛けることを初興し(ハチウクシ)と言う。縁起ものですのでどうかよろしく。
 と書いたところで新年早々縁起でもないことが起きた。6日、伊計島の民家の数十メートル先に米軍ヘリが緊急不時着。8日には読谷村のリゾートホテル近くに別の米軍ヘリが緊急不時着した。

 米軍機の事故は枚挙にいとまがない。一昨年暮れ名護市の東海岸にオスプレイが墜落大破。オーストラリア沖で墜落した普天間基地所属のオスプレイは、その後も岩国基地や大分、奄美、石垣などの民間空港に緊急着陸。衆議院選公示翌日には高江の民間地で大型ヘリが墜落炎上している。
 去年暮れには普天間基地周辺の保育園にヘリの部品が落下。さらに近くの小学校校庭で体育の授業をしていた児童たちの十数メートル先に重さ約8キロの米軍ヘリの窓が落下し、衝撃で飛んだ小石で児童が軽傷を負った。

 それだけではない。米軍関係者による殺人事件や飲酒運転死亡事故も起きた。米軍も日本政府も沖縄を戦争の訓練場としか見ていない。1945年から憲法の蚊帳の外に放置され、時計の針が止まったままだと言っても過言ではあるまい。
 昨年1月、東京地方放送局の番組「ニュース女子」に端を発する「沖縄ヘイト」が表面化。BPOが問題視して審議入り。「重大な放送倫理違反があった」と異例の決定を下した。
 だが沖縄ヘイトは止まらない。「部品落下は作り話」と誹謗中傷が後を絶たない。米軍が非を認め謝罪したにもだ。正体を隠し暗闇から弓を放つこの国の人々。沖縄だからどんなに叩いても許されると言うのか。無知無理解無関心なのか、憎悪に満ちた確信犯なのか、「嫌沖縄」の底が抜けてしまったようだ。
 辺野古の海と陸では基地建設に抗議する人々に対して国家権力が暴力的に排除し、逮捕行為にまで及んでいる。

 沖縄は11月の知事選を頂点とした統一地方選の年。2月4日は辺野古新基地建設を争点とした名護市長選だ。基地建設に反対する現職対自公維新が推す基地容認派の新人の争い。自民は党と政府挙げてなだれ込む。「辺野古反対は堅持する」という公明は基地容認候補を担ぐ矛盾を露呈。実質基地押し付け役に回る。
 昨年2月のJCJ機関紙に米大統領と対峙する「ロイター」編集主幹の言葉があった。「われわれは最善を尽くして記者たちを擁護し、ニュース活動を続ける」「報道の現状を悲観してはならない」。その通りだ。

 私たちは悲観しない。沖縄の歴史に立てば、権力に踏みつけられた者の視点で民衆の声をすくい上げる努力を怠りはしない。沖縄の現実を発信し、沖縄から見えるこの国の姿を問い続けていく。

posted by JCJ at 10:51 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月28日

リニア談合事件 税金3兆投入の仕掛け人は?JR東海への破格優遇に捜査のメスを=樫田秀樹

リニア巨額談合事件について、2015年度JCJ賞を受賞した「悪夢の超特急<潟jア中央新幹線」(旬報社)の著者でジャーナリストの樫田秀樹さんに寄稿してもらった。

          ☆     ☆

 昨年末からリニア中央新幹線の建設を巡る談合事件が報道されている。

東京地検特捜部はスーパーゼネコン4社(大林組、大成建設、清水建設、鹿島)の談合解明に努めているが、私が注視するのは、地検が果たして「リニア計画への3兆円の財政投融資(以下、財投)」の絵を誰が描いたかまで究明するかだ。

 15年11月、私は某準ゼネコンのベテラン社員から「弊社はリニア計画に参画しない」との話を聞いた。理由は単純明快。リニア工事ではペイしないからだ。

 07年、JR東海は「リニアの建設費9兆円を自己負担する」と公表し関係者を驚かせた。このうち、第一期工事となる品川―名古屋間で5兆5000億円だ。

銀行から融資無理

 ここで私は2つの疑問を抱いた。


@5・5兆円のうち東海道新幹線の収益を当てても、3兆円足りない。どう工面するのか。

A5・5兆円を工面できても、果たしてそれで竣工できるのか。

以下、拙著「リニア新幹線が不可能な7つの理由」(岩波書店)にも書いたが、若干の加筆をして説明したい。

JR東海の15年度末の純資産額は2兆円強だった。つまり3兆円を借りる担保がないため、銀行融資は難しいと予測されていた。

 仮に5・5兆円を工面できても、準ゼネコン社員が「参画しない」と表明したのは、「近年の新幹線は、当初予算の倍以上もかけて竣工している」からだ。従来の新幹線は、国と自治体とが建設費を出し合い、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、機構)」が建設し、竣工後にJR各社が機構に毎年「線路使用料」を払い運用されている。だが、リニア計画での当初の資金源はJR東海の自己資金だけ。だから、準ゼネコン社員は、「難工事で工費がかさんでも、JR東海は当初の契約金額以上は払わない」と予測した。 

国の金を引っ張る

そして言葉を続けた。

「だからゼネコンはうまいこと国から金を引っ張ろうとしているはず」

 その動きがあったのかは判らない。だがその7か月後の16年6月、安倍首相は突如「リニア計画に財投を3兆円投入」と発表した。

財投は、国債発行で集めた資金を財務省が35ある政府系特殊法人(財投機関と呼ぶ)に融資することで大規模事業を実現する制度だ。

 今回の財投投入で不可思議なのは、財投機関ではあるが、金融機関ではない機構に、16年11月、法改正までしてJR東海に融資できる機能をもたせたことだ。財投機関には「日本政策投資銀行」というれっきとした金融機関がある。

なぜここからの融資ではなかったのか。同銀行OBは「当行は民間銀行との協調融資と要担保が原則。担保のないJR東海への融資は無理」と語った。

債務不履行もある

実際、法改正直後から、機構は5回に分け3兆円をJR東海に融資したが、「無担保」に加え「30年据置き」という破格の条件だった。誰がこの絵を描いたのか。

 財投投入の方針は安倍首相の表明の何カ月も前から政府内部で話し合われていたはずで、16年から、リニアの工事契約が一気に増えたのは偶然なのだろうか。

 そして、私は懸念する。工期が伸びれば工費もかさむが、そのときにまた兆単位の財投を発動するのか。旧国鉄の28兆円の借金のうち約16兆円は財投での借金だ(その反省から現在の建設方式になった)。これを今国税で償還しているのは周知のとおりだが、もしJR東海が債務不履行に陥った場合、国税で償還するのだろうか。

 注視しなければならない。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
posted by JCJ at 14:24 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする