2019年10月03日

【リレー時評】消えゆくAMラジオ、見過ごしていいのか=隅井孝雄(JCJ代表委員)

 総務省有識者会議は8月30日、民放ラジオ局がAM放送を打ち切ってFM放送へと転換する新たな制度改正を承認した。これにより多くの民放ラジオ局が早いところで2023年以降AM放送を打ち切り、FM放送に転換すると思われる。(NHKはAMラジオを継続する)。
 東日本大震災の際、ラジオ電波がテレビより、ネットより災害に強いことが実証された。そのため難聴地域対策、災害の補完対策として、2014年からAMラジオが同じ番組をFMで同時放送する「ワイドFM」(FM補完放送)が始まった。今年中には民放ラジオ全局がワイドFMを実施する。

 民放ラジオ局の多くはアンテナの更新時期が来ている。AMアンテナには広い敷地、50m~150mの高層アンテナなど多額の設備費が必要だ。それに比べFMアンテナは4〜5メートルの簡便な設備で足りるが山間部、遠隔地に届きにくい。しかしリスナーのラジオ離れや広告収入減から、経営悪化が進んで民放各局にはアンテナ更新や、AM,FM2波を送り出す2重の負担は難しい。簡便アンテナで、番組送出にも費用が少なくて済むFMに一本化することを望む局が多いのだという。
 北海道は例外としてAMが残るといわれている。広大な地域をカバーしているため、到達エリアの狭いFMでカバーするのは逆に困難だからだ。(AM波の到達範囲は7〜800km、夜間は海外にも届く。FM波は数10kmから最大100km)

 問題はラジオ文化にもある。AM局の主力は「ニュースとトークラジオ」だ。そもそも民放AMラジオは1951年、戦時中のNHK大本営発表の反省から、生まれ、民放第一号は新日本放送(現毎日放送)と名乗った。初期にはニュース報道で他のメディアを圧倒、トランジスタラジオという技術革新の助けもあり、テレビとも互角に勝負した。「子供電話相談室」、「オールナイトニッポン」、「パックインミュージック」で子供や若者に支持され、また45年の長期にわたった「秋山ちえ子の談話室」、「誰かとどこかで」(永六輔)などが中高年齢層とのつながりを広げた。
 ワイドFM受像機が普及していないという問題もある。アナログ放送が終了した後の一部の周波数(90.1MHz~94.9MHz)を転用している。そのためAM/FM兼用の古いラジオ(76MHz~90MHz)ではワイドFMの周波数が入らない。買い替えが必要だ。

 70年に近い歴史を持つAMラジオ文化を消してしまっていいのか、私は疑問を持つ。
年配層では枕元にラジオをおいている人が多い。AMラジオというコミュニケーション手段、文化の伝達手段を奪いさっていいのか。防災情報から断ち切られてよいのか。強い疑問を持つ。民放連と政府の再考を促したい。
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2019年10月02日

「不自由展」中止に思う 河村市長発言が火をつける 嫌韓に抗議の日本女性に共鳴=加藤剛

あいちトリエンナーレは3年に一回開かれる国際芸術祭で2010年から始まっている。街角でポスターを見る程度の私は、これまで会場に足を運んだことはなかった。

 ところが8月1日のトリエンナーレ開会早々、企画の一つ「言論の不自由展・その後」への脅迫や政治家の介入発言で3日目に中止になった。ツイッターやメールでは「愛トレ」などの愛称が飛び交うほどで、私も初めて見に行った。

 主催する愛知県のホームページ(HP)などで動画や写真入りでこの企画が紹介されており、関心のある人たちは開会前からいろいろ反応していたようだ。企画を快く思わない人たちも情報を拡散した形跡が読み取れる。

 時あたかも日韓の政府同士の対立がけたたましい折の開幕で、反韓・嫌韓の潮流が水面下に淀んでいた。そんなこともあって「平和の少女像」が目の敵にされたのだろう。主催者に対し電話やメール、ファクスで抗議の声が大量に寄せられた。「少女像の展示をやめろ、さもなくばガソリン持参で」というファクスもあり、その上に河村たかし名古屋市長の「少女像展示は日本国民を踏みにじる行為」の発言も重なり、主催者は不自由展の中止を決めた。

 代表の大村秀章愛知県知事は理由について「会場の安全が保てないから」としているが、警備陣はガソリン男にしてやられるようなヤワではない。派遣された沖縄で暴言を吐きながら座り込みを排除し、その違法性を名古屋地裁に訴えられているほどだ。

トリエンナーレの主催者の会長代行でもある河村市長発言は「身内から飛んだ矢」の役割を果たしたと思う。

 エスカレートする嫌韓ムードへの抗議か、ある集会でこんな日本人女性を目にした。平和の少女像の展示に似た一組の椅子が壇上に置かれ、左側に像ではなく、その女性が韓国の民族衣装をまとって座っていた。集会の開始から終了までじっと座っていたが、大きな決断が読み取れた。私はその写真を自分のフェイスブックに載せた(事後に彼女の了承を得た)。彼女に対する攻撃があったら私は断固戦うつもりだ。 

加藤 剛(東海支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年10月01日

【内政】 横浜カジノ反対 住民投票に向け行動 林市長リコールも視野 市民団体共同代表・後藤さん寄稿

林文子横浜市長は、8月下旬に2017年の市長選で掲げた「カジノは白紙」を撤回し、突然、カジノを横浜市の山下ふ頭に誘致することを表明しました。

市長は17年の市長選でIR(統合型リゾート)導入検討の項で、「市民と市議会の皆様の意見を踏まえたうえで方向性を決定」と書いていました。また、市議会でも「市民の皆様からの御意見を伺う」と答えています。

市民の意見は明白です。昨年5月に発表されたIRについて「国の動向を見据えて検討する」とした中期4カ年計画原案へのパブリックコメントでは、94%もの人が反対でした。今年6月に実施された4カ所の市民説明会でも、すべてカジノ誘致に反対でした。従って市長のカジノ誘致表明は許されないことです。横浜市は9月市議会で2.6億円の補正予算案を成立させました。賛成したのは自民・公明両党などです。

私たちは、14年1月、林市長が年頭記者会見でカジノ誘致を表明したことに驚き、横浜にカジノ誘致を許してはならないと、「カジノ誘致反対横浜連絡会」を結成しました。市長への約3万筆の反対署名の提出、カジノ誘致を進める京浜急行本社や横浜商工会議所への反対要請、市庁舎前・高島屋前での街宣など約6年間活動してきました。

この間に安倍晋三政権は16年末の臨時国会でカジノ解禁法を強行採決しました。

安倍政権が日本にカジノ誘致を決めた大きな理由は、カジノの解禁によってトランプ米大統領に多額の資金提供しているカジノ王・ラスベガスサンズのアデルソン会長をもうけさせるためと言われています。ラスベガスサンズは大阪への応募をやめて、横浜に応募します。トランプ大統領から安倍首相に、首相あるいは菅義偉官房長官から林市長に直接介入があったではないでしょうか。

怒った市民は様々な活動をしています。横浜連絡会は、8月22日と9月3日には関内の市庁舎前で、9月12日には横浜駅西口高島屋前で各1時間、宣伝活動をしました。市長あての署名も、22日には144筆、3日には115筆、12日にはなんと445筆も集まりました。また、立憲国民フォーラム市議団も共産党市議団長もカジノ誘致撤回を求める声を上げました。横浜港運協会の藤木幸夫会長も反対の記者会見をしました。

14日には横浜連絡会と市民連合横浜は各政党に共同で反対運動を進めるよう要請しました。10月3日は、関内ホールで住民投票を求める市民集会も予定されています。と同時に林市長リコールに向けて署名を集める受任者を募る運動もスタートしました。

横浜市は21年7月の市長選前までにIR事業者を決定し、区域整備計画認定申請を市議会で議決しようとしています。かりにカジノ反対の市長が当選しても、カジノを撤回すると事業者が莫大な違約金を請求できるからです。

私たちは、10月3日からカジノ誘致の賛否を問う住民投票のための受任者を集め、来年1月から2月までの2カ月間で10万以上の直接請求署名を集める方針です。この署名は、賛否を市民に問えという民主主義実現の署名で、賛成派も参加できる運動です。住民投票が市議会で否決された場合、民主主義を否定した張本人の林市長許さないためリコールの50万署名運動も視野に入れています。皆さまのご協力を切にお願いします。

後藤仁敏(カジノ誘致反対横浜連絡会共同代表)



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
posted by JCJ at 08:56 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月30日

【リアル北朝鮮】 無策の幹部らを叱責 金委員長 台風緊急対策会議で

9月6日、北朝鮮で朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議が緊急招集された。軍事委員会拡大会議が緊急に招集されたと聞いて、最初は少し驚いた。米国との関係が進まないから、満を持して「核開発の再開」でも発表するのではないかと。

 だが、会議の議題は台風13号。金正恩・朝鮮労働党委員長も参加して対策を討議した。朝鮮半島を北上中だった台風13号の強さや特徴、被害が予想される地域や規模の分析を聞いた後、金委員長は激怒したと、6日発の朝鮮中央通信が報じた。金委員長が激怒した理由は、強い台風が近づいているのにその深刻さが分からず、何の対策も立てずに旧態依然とした対応しかしていないからだった。そのため、金委員長自ら対策会議を招集し、幹部らにきちんとした対策を講じることを命じたわけだ。

 1996年に朝鮮新報平壌特派員をしていた際、大規模な水害が起きた。台風によるものではなかったが、95年に続くもので、北朝鮮の南側地域を中心に甚大な被害が出ていた。特派員として、被災地を訪れ取材した。水浸しになった工場、壊れた橋、倒壊した建物などを目撃し、被害の大きさに呆然とした。当然死者も出ていた。なかでも農作物の被害が大きかったことを覚えている。もうすぐ収穫を迎える時期で、農民たちの落胆も大きかった。黄海南道の延安郡では、急激な豪雨で大量の水が一気に流れ、短時間で田畑が浸水した。「稲穂が芽吹き始めた時に4日間も浸水したので減収は否めません」と、郡関係者は私の取材に語っていた。

 23年後の今回も、金委員長が最も心配したのは農村だった。1年間一所懸命に作った農作物の被害を最小限に抑えるよう強調した。

 北朝鮮で台風に向けた緊急対策会議を報じるのは珍しい。最高指導者が直接この類の会議を指導するのも稀だろう。金正恩時代になって、統治スタイルが変化していることの証左でもある。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
posted by JCJ at 10:47 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月29日

【今週の風考計】9.29─頻発する「How dare you!」の日本

「How dare you!」(よくもまあ、そんなことができますね)の衝撃は全世界に広がった。ニューヨークで開かれた気候行動サミットで、各国が温暖化対策に真摯に取り組まず、お金のことや経済成長というお伽話ばかりしていて、結果として若い世代を裏切っている事態に対し、スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16歳)が、厳しい口調で発言したイディオムだ。

何も気候変動ばかりではない。関西電力の20名の経営陣と社員に、福井県高浜町の元助役から、3億2千万円もの巨額の金品が渡されていたことが明らかになった。まさに「How dare you!」である。
2006年から高浜原発が再稼働される2018年まで続いていたという。この間、この事実をひた隠しにしてきた。いまだに経営陣が詳細を明かさない。その無責任さは極まりない。しかも原発工事の受注会社から、元助役に原発マネーが還流し、それが関西電力の経営陣らに渡っている税務調査の結果も出ている。真相が解明されるまで、原発の運転は即刻停止すべきだ。

さらにひどい「How dare you!」は、萩生田光一文科相の<あいちトリエンナーレ>への補助金取りやめ決定である。「表現の不自由展」が中止に至った最大の原因は、電凸や“ガソリン携行缶を持ってお邪魔する“というテロ予告FAXを寄せた人々や煽った集団にある。そこには触れず、警備上の混乱が予想されることを把握しながら、事前に説明がなかったとして、すでに決定している補助金7800万円の全額交付を取りやめる暴挙に出た。
「再開もけしからん、内容が気に食わないから交付を取りやめる」というのが、ホンネではないか。
前川喜平さんが〈本音のコラム〉(東京新聞9/29付け)で、不交付の「真の理由は、萩生田氏自身のゆがんだ歴史観や嫌韓感情、憲法が保障する表現の自由への無理解にある。彼は、「表現の不自由展」を中止に追い込んだ勢力と同じ思想・感情を持っているのだ」と喝破している。
海外からも「How dare you!」の声が、大きくなっている。こんな日本が恥ずかしい!(2019/9/29)
posted by JCJ at 10:34 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「児童虐待」取材の現場から

「児童虐待」取材の現場から

 東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(5歳)、千葉県野田市では栗原心愛さん(10歳)。痛ましい児童虐待事件が相次いでいます。子どもの書き残した「もうおねがい ゆるしてください」の声は痛切です。
児童相談所が対応する児童虐待件数は、28年連続で増加しています。
 JCJ神奈川支部では、児童虐待問題に早くから取り組み、少年サンデー連載「ちいさいひと」「新・ちいさいひと」の取材・企画協力もしてきたフリージャーナリストの小宮純一さんに、日々の取材で接する現状や、48時間以内に安全確認を行うルールの背景などを話してもらいます。

集会名 「児童虐待」取材の現場から

日時  10月4日(金) 午後6時30分〜8時30分

会場  横浜市健康福祉総合センター8階8F会議室 
横浜市中区桜木町1−1 TEL045−201−2060

講師  小宮 純一氏 (フリージャーナリスト)
    ジャーナリスト、NPO法人埼玉子どもを虐待から守る会理事。1958年、新潟県生まれ。 1980年埼玉新聞編集局入社。83年から県庁記者クラブ(教育局担当)、文化部(教育問題担当)、地域報道部デスク、地域報道部長、編集局ニュースセンター次長などを経て、2009年末に退社。2010年1月からフリーランス。

参加費  500円

主催   日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部

連絡先  080−8024−2417  (保坂)
posted by JCJ at 00:20 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月28日

【沖縄リポート】 本保港で労組が米軍車両を追い返す=浦島悦子

第4次安倍再改造内閣が発足した9月11日、沖縄では、第3次嘉手納爆音差し止め訴訟の控訴審判決が福岡高裁那覇支部で言い渡された。夜間・早朝の米軍機の飛行差し止めという原告の切実な訴えは、一審同様認められず、騒音による健康被害については一審より後退、賠償額も減額された。第1次提訴から37年が経ち、高齢化した原告らの疲れが目立つ。

 翌12日、辺野古新基地建設阻止の座り込みが続くゲート前行動には、嘉手納爆音訴訟原告団や裁判の応援に駆け付けた全国爆音訴訟団のメンバーらが多数参加し、今回の判決の不当性や、各地の状況を訴えた。嘉手納の原告は「基地がいったん造られたら、住民の権利を守ることはできない。

辺野古を嘉手納と同じような状況にしないために、新基地は絶対に造らせない!」と拳をあげた。

 辺野古新基地建設をめぐっては現在、沖縄県が国を提訴した2つの訴訟(関与取り消し訴訟と抗告訴訟)と、私も含む辺野古・大浦湾沿岸住民16人が提訴した抗告訴訟が並行して進行中だ。いずれも、沖縄県が行った「埋め立て承認撤回」(昨年8月31日)を、行政不服審査法を使って取り消した国土交通大臣の裁決は違法だと訴えている。

 住民の訴訟を支える辺野古弁護団は、これまでの判例等から、基地が造られてしまえば「第三者行為論(米軍基地の管理・運営権は米国が持っており、日本政府は関与できない)」で、住民がいくら被害を訴えても救済されないので、基地ができる前に止める緊急の必要性を主張している。

 一方、沖縄島北部の本部港では17日、沖縄県や本部町の不使用要請を押し切って米軍が強行しようとした民間港使用を、港湾労働者と市民らが阻止した。伊江島での海兵隊パラシュート降下訓練の救助艇として使われる小型船を牽引する米軍トレーラーを、全港湾沖縄地方本部の組合員50人が港の入口でピケを張り、港内に入るのを阻止。駆けつけた本部町民、市民らも含め約200人が早朝から夕刻まで、炎天下10時間に及ぶ行動で米軍車両を追い返した。参加したある市民は「自分たちの職場を軍事利用させないという港湾労働者のたたかいに感動し、辺野古のたたかいに勇気をもらった」と語った。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月27日

【内政】 埼玉知事選 野党共闘だけが勝因ではない 護憲・反戦のみでは与党に負ける

埼玉県知事選挙は8月26日に投開票が行われ、野党4党(立民、国民、社民県連支持、共産県委支援)が推す前参院議員(国民民主党)の大野元裕氏(55)が、自民、公明推薦でスポーツライターの青島健太氏(61)ら4人を破り初当選した。投票率は前回より約5%上昇し32・31%。立候補者は5人だが、大野氏と青島氏の事実上の一騎打ちで、得票は大野氏約92万票で青島氏約86万票。  

大野氏は参院議員だが知名度では、元プロ野球選手でメディアへの露出が多い青島氏が勝っていた。当初は青島氏優勢との見方だった。これに対して野党4党が「足並み」を揃え大野氏を推し、「自民・公明VS野党」の与野党対決という有権者にとって分かりやすい構図に持ち込むことができた。投票率も上がった。これが大野氏勝利の土台となった。  

しかし7月の参院選挙の結果でも分かるように与党堅調の流れの中で野党4党共闘だけでは勝てなかった。キーマンとなったのは、自民党と対峙してきた現職の上田清司氏(71)。大野氏を全面的に支援、知名度向上を図かり終盤での逆転をもたらした。  

知事選に限らず、選挙はそれぞれ特有の事情を抱えている。外から見ていては、分からぬ「内の事情」がある。上田氏の全面的支援、大野氏の地元で大票田の川口市での保守分裂、女性参院議員の知事選出馬断念などの環境が重なり、それらを、大野氏側は、上手く自分の「環境」とした。埼玉県の場合は、1972年に社会党の衆院議員だった畑和(やわら)氏が当選し革新県政が誕生した。当時は、東京都、神奈川県も革新都政、県政で革新が強い支持を得た。他の革新知事が退場するなかで、畑県政は5期20年続いた。保守県政を経て、民主党衆院議員だった上田氏が知事に当選し4期務めた。埼玉の都市部は、高度成長以来人口が増え、有権者は無党派層が多くなった。党派色は嫌うが、変化は求める。保守系が強い一方で変化を受け入れる選挙風土になった。大野氏自身も保守を地盤とし保守票を取り込んだ。そのような環境の中で大野氏は勝利した。要因が4野党共闘だけではない。  

今回の知事選では、国政レベルの争点はなかった。さまざまな事情や環境が絡んだ上での大野氏勝利であり野党共闘だけでは苦杯をなめたであろう。ここは冷静にみる必要がある。  

在京メディアは、知事選の結果をすぐに、国政への影響と結びつけようとする「くせ」がある。東京が地方を見るワンパターンの思考だ。だから、この原稿も「野党共闘」勝利とは書かない。JCJ機関紙だからこそ、あえて書かせていただいた。  

衆院選では野党共闘を築くとともに、選挙区ごとの特殊事情を踏まえ、あるいは乗り越えて、有利な環境作り出すことが勝利につながっていくであろう。「憲法守れ」「戦争反対」の訴えは大事だが、それだけでは、与党候補には勝てない。野党共闘を土台に、選挙区ごとの事情、「天・地・人」をいかに味方につけるか、それを、今回の埼玉知事選は、示唆しているのではなかいか。ちなみに参院補選は上田前知事が出馬を表明し「鉄板」なので勝利は揺るがない。

佐藤達哉(JCJ会員・さいたま市)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月26日

【JCJ賞贈賞式記念講演】 安倍官邸とメディア 前川喜平さん講演 権力が使う「中立」「公平」はウソ

 JCJ賞贈賞式前に元文部科学省事務次官・前川喜平さんは「私が見た『安倍官邸とメディア』」をテーマに記念講演をした。要旨は次の通り。

  ☆

文科省では広報担当が各社の記事をチェックしている。まだ発表になっていない事が記事になることもある。第二次安倍政権になってから、A紙やM紙やT紙が書くと「誰がリークしたのだ」と犯人探しが始まるようになった。

「新聞記者」という映画の劇中座談会に出演した。この映画はフィクションだが、きわめてリアリティがある。メインのストーリ―は国家戦略特区で総理のお友達が運営する大学が新設されるというどっかで聞いたことのあるような話だ。観客動員数は好調だが、テレビでは全く紹介されない。これが今のメディアの実情なのだと思う

2年前に加計学園の問題で、総理のご意向と書かれた文書が出てきた。私はその文書を見たことがあるので見たことがあると答えた。

 この文書を菅義偉官房長官は「怪文書のようなもの」と言った。文科省では確認作業をして文書の存在を認めた。おそらく官邸は文書の存在を否定して欲しかったのだろう。

NHK放送せず

2017年、NHK社会部記者の取材を受けた。NHKはすでに加計問題について多くの情報を持っていた。ゴールデンウィークの前、カメラを回して取材を受けたが、そのインタビューは一度も放送されていない。

5月17日の朝に朝日新聞が、「官邸の最高レベルの意向」と書かれた文書の存在を報じた。

前の年の秋に、杉田官和博房副長官に呼ばれて新宿のバーへ行っていることについて注意を受けていた。店ではいろいろな話が聞けて無駄ではなかった。それがスキャンダル化された。

読売新聞が5月22日に私が出会い系バーに行っていると報じた。その前日、後輩の初等中等教育局長が「和泉洋人首相補佐官と会うか」と聞いてきた。その局長は安倍官邸に受けのいい人物で、今度、事務次官になった。(第二次以降)安倍内閣は6年半も続いている。その間に事務次官が3交代、4交代している。だんだんどの役所も上の方は官邸べったりになっている。

和泉氏の打診は加計問題で発言しなければ、記事を抑えてやるという取引だったのではないか。

 その頃、自宅がメディアの取材陣に包囲されていた。私は都内に潜伏していたが、取材陣の中にいた東京新聞の望月衣塑子記者から、記者会見をするなら包囲を解くよう取材陣を説得したと連絡があった。そこで5月25日に記者会見をした。

菅官房長官には、私の辞任に関しても事実と異なることを言われた。天下りあっせん問題を収拾するために、辞任すべきだと思い、17年1月5日に当時の松野博一文科大臣に辞任を申し出た。その後、杉田官房副長官のところへ出向いて、辞任を了承してもらった。

支配力を強める

しかし菅官房長官は、「任期の延長を求め地位に恋々とした」と記者会見などで繰り返した。

 安倍政権はこれまでのどの政権よりもメディアをコントロールしている。

7月の参議院選挙でも、ほとんど報道しないことで政権に加担した。

 本来、国家権力から独立して自由でなければならない分野にメディアと教育がある。主権者は政府が何をしているか知る権利がある。

教育も主権者を育てる。

権力者にとって知る権利、学ぶ権利は都合が悪い。それを妨げようと権力が使う言葉は「中立性」や「公平」だ。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月25日

【メディア気象台】 8月から9月

◇公取委、個人情報不当収集規制〜巨大ITに指針案

公正取引委員会は29日、「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業を独占禁止法で規制するための指針案を公表した。市場で強い支配力を持つ企業が顧客の個人情報を不当に収集して利用する行為が、独禁法違反(優越的地位の乱用)に該当することを初めて明記し、違反する例を示した。9月末での意見公募を経て正式に決定し、年内に運用を始める見通し。(「毎日」8月30日付ほか)

◇読売会長、スイス大使に起用〜報道機関トップ異例

安倍内閣は30日の閣議で、読売新聞グループ本社の白石興二郎会長(72)をスイス大使に充てる人事を決めた。報道機関の現職トップの大使起用は異例。外務省によるとメディア出身者の起用は5人目で、朝日新聞出身で東大教授だった石弘之氏以来17年ぶりだ。9月2日付。読売新聞によると30日付で会長を退任した。白石氏は2013年4月から今年6月まで日本新聞協会長を務めていた。(「朝日」8月31日付ほか)

◇公文書管理専門職、公的資格を創設へ

現在、民間資格しかない公文書など資料管理を専門的に扱う職業「アーキビスト」について、国立公文書館が中心となり公的な資格制度を創設する方向で検討に入った。資格は知識や経験によって3等級に分ける。早ければ2020年度に制度の運用を始める。森友学園を巡る財務省決裁文書改ざん問題などずさんな文書管理が明るみに出たことが背景にある。官僚による不正を防ぐため、資格を得た専門家を各省庁に派遣することも検討する。政府関係者が明らかにした。(「東京」9月1日付ほか)

◇首都直下不明者氏名、市区町村の56%公表に積極姿勢

災害時に連絡が取れない安否不明者の氏名を公表するかどうかを巡り、首都直下地震が想定される東京、埼玉、千葉、神奈川一都三県の全212市区町村のうち、6自治体が「公表する」、113自治体が「公表する」と答え、合わせて56.1%が積極的な姿勢であることが分かった。9月1日の「防災の日」を前に、共同通信がアンケートを実施した。(「東京」9月1日付ほか)

◇週刊ポスト特集に批判、小学館が陳謝

小学館は2日、同日発売の週刊誌「週刊ポスト」の特集「韓国なんて要らない」について、多くの批判があったとして、「配慮に欠けていた」と陳謝する見解を公表した。「週刊ポスト」のウェブサイトに編集部名義で掲載した。ツイッターなどSNS上で作家らから「差別的だ」「憎悪をあおる」との批判が広がっていた。(「毎日」9月4日付ほか)

◇是枝監督に「アジア映画人賞」

10月3日から開催される韓国の釜山国際映画祭で、是枝裕和監督(57)が「今年のアジア映画人賞」を受賞することが4日、決まった。この賞はアジアの映画産業と文化発展に優れた業績を残した関係者及び団体に与えられる。(「朝日」9月5日付ほか)

◇新聞協会賞に秋田魁、毎日新聞など

新聞協会は4日、2019年度の新聞協会賞を発表した。編集部門では、秋田魁新報社の「イージス・アショア配備問題を巡る『適地調査、データずさん』」のスクープなど一連の報道」、毎日新聞大阪本社の「台風21号 関空大打撃」(写真)、日本経済新聞社の「連載企画『データの世紀』とネット社会に関する一連の調査報道」が選ばれた。(「朝日」9月5日付ほか)

◇早回しで投球映像加工〜TBS系「消えた天才」休止

TBSは5日、バラエティー番組「消えた天才」(日曜午後8時)の8月11日放送分で、映像を見なおしすることで、少年野球の投手の投球を実際より速く見えるよう加工していたと発表した。同様の映像の加工がほかにも3件判明したため、すべての調査を終えるまで放送を休止するという。(「毎日」9月6日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
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2019年09月22日

【今週の風考計】9.22─気候変動と災害に備える安全への視点

「グローバル気候マーチ」が、20日、日本や世界各地で一斉に取り組まれた。日本では23都道府県で5000人、世界では163か国400万人が参加した。「気候正義が、今ほしい!」と、気候対策を求める活動が世界中に広がっている。

翌日、小泉進次郎環境相が、23日からニューヨークで開催される国連気候行動サミットへ初外遊した。「環境分野において、日本の存在感を発揮していければと思います」と、表情も変えずに意気込みをアピールする。
ちょっと待って、小泉環境相の地元である横須賀では、8月1日から石炭火力発電所の建設工事が始まっている。この事態はどうするの?
 サミットを主催するグテーレス国連事務総長も、重要なテーマが石炭火力発電所の削減であり、世界各国に新設中止を要請している。だが日本は国のエネルギー政策の「ベースロード電源の一つ」と位置づけ、100基の石炭火力発電所が稼働し、加えて22基が計画および建設中だ。
菅官房長官の口説きにからめとられ、安倍首相の軍門に下った以上、どこまで二酸化炭素の削減に向け具体的な提案ができるのか。

小泉環境相の後を追うように、千葉県全域に甚大な被害をもたらした台風15号に続き、台風17号「ターファー」が、沖縄から対馬海峡を経て日本海に進み、日本列島全体を襲ってくる。これも気候変動がもたらした台風の進路だ。
集中して襲ってくる台風への対策はどうなっているのか。内閣改造やラグビー観戦もいいが、その前にやることがあるだろう。大規模停電の長期化など被害が拡大している。非常用発電機の拡充など、この現実を解決する手立てを急ぎ講じるべきだ。

26日は、史上最悪の伊勢湾台風が襲来して60年になる。台風は紀伊半島を縦断、伊勢湾に大きな高潮を発生させ、堤防を決壊させた。死者行方不明5098人の被害をもたらした。
地震や台風などの自然災害への対応は、福島原発事故に対する「東電旧経営陣無罪判決」を目の当たりにするにつけ、石橋をたたいても「絶対的安全の確保」を大前提にし、経済的な事情は二の次にして、人命を優先する対策をとるべきだ。この教訓を忘れてはならない。(2019/9/22)
posted by JCJ at 11:47 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月19日

【おすすめ本】南 彰『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』─メディアの分断・選別に抗う記者の連帯を熱く訴える!=新崎盛吾(共同通信社)

 首相官邸が特定の記者排除を意図して、官邸記者クラブに文書で申し入れをした質問制限問題が広く報道されるきっかけとなったのは、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が2月に発表した抗議声明だった。

 本書は、朝日新聞政治部から昨年9月、30代の若さで新聞労連委員長に就任した著者が、問題の経緯を明らかにし、全国の記者に連帯を呼び掛けたメッセージである。
 問題の発端は2017年6月、主に政治部記者が参加する官房長官の定例会見に、東京新聞社会部の望月衣塑子記者が登場したことだった。
望月記者は官邸側の制止を振り切って23回の質問を繰り返し、結果的に加計学園の獣医学部新設について「総理のご意向」と書かれた文書の存在を認めさせる原動力になった。記者会見という公の場での質問よりも、オフレコ取材を重視してきた政治部の慣習を揺るがす出来事でもあった。

 官邸側はその後、「質問が長い」「事実誤認が多い」などと望月記者にレッテルを貼って孤立を図り、メディアの分断を試みる。08年から官邸取材に関わってきた著者は、政権の長期化とともに強まる閉塞状況やメディア選別の動きに危機感を抱き、会社の枠を越えた連帯が必要だと訴える。
書名には太平洋戦争に至る契機となった満州事変に例えて、今が「知る権利」を守る重要局面だとの思いを込めたという。
 新聞労連の委員長は、朝日、毎日、北海道新聞、共同通信などの労組が交代で選出。会社を2年間休職し、専従で任に当たる。私も14年から16年まで務めた。労働組合の存在感が薄れる中、今も記者の連帯を目指す活動が続いていることに、安堵と希望を感じている。
(朝日新書790円)
「報道事変」.jpg
posted by JCJ at 14:53 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月15日

【今週の風考計】9.15─「嫌韓」をけしかけているのは誰だ!

★この2カ月、ほぼすべてのワイドショーが「嫌韓報道」に狂奔し、韓国ヘイトをあおってきた。武田邦彦・中部大学教授などは、「日本男子も韓国女性を暴行しなけりゃ」(ゴゴスマCBCテレビ)とまで言い募る。元駐韓大使の武藤正敏氏を含め、他のコメンテーターにしても、隣国を罵るヘイト発言を頻発している。
★韓国の「玉ねぎ男」=゙国(チョ・グク)氏をめぐる蓄財疑惑や娘の不正入学スキャンダルを、朝・昼のべつ幕なし、一週間以上も取り上げている。陰に陽に「嫌韓」をあおっているのは間違いない。もういい加減にしたらどうか。

★放送だけに限らない。出版でも<嫌韓炎上商法>が大手を振っている。「週刊ポスト」(9/13号)は「怒りを抑えられない韓国人という病理」、「週刊文春」(9/12号)も「文在寅の自爆が始まった」、「週刊新潮」(同)も「韓国大統領の『玉ねぎ男』大臣任命強行で検察が法曹を逮捕する日」という特集をやっている。

★こうしたメディア状況や社会の風潮を憂慮し、新聞労連が6日付で<「嫌韓」あおり報道はやめよう>との声明を発表した。大切な視点と提起が込められている。要点を挙げておこう。
<他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
 国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。(中略)
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない>

★メディアは、視聴率稼ぎや販売部数増を狙って、韓国ヘイトに血道をあげ、「玉ねぎ男」スキャンダルの追っかけに走る前に、わが国の足元にある消費税10%増税、年金問題、さらには内密にされている日米経済交渉の中身を追跡したらどうか。
 外交面でも、安倍首相はトランプ米大統領にこびへつらい、ロシアのプーチンには騙され続け、中国の習近平からは三等国扱いされている。この体たらくを、もっと追究したらどうか。
★もう8年近く安倍政権が続く。一向に景気は良くならず、生活の苦しさだけがつのる。国民の不満は高まるばかり。それをそらすには、安倍首相お気に入りの学者・作家・タレントらを動員し、韓国バッシングに走るのが得策と踏んでいるのだ。この策謀にメディアが手を貸す愚はない。(2019/9/15)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月11日

学生向け・テレビ記者講座、10月15日と29日に開催

JCJジャーナリスト講座
学生向け・テレビ記者講座  協力/令和メディア研究所

■10月15日(火)午後6時半〜9時 
 「テレビ記者疑似体験! その厳しさ、面白さ」 参加費1000円(定員20人)

講師:元TBSキャスター・下村健一さん(令和メディア研究所主宰/白鴎大学特任教授/インターネットメディア協会理事/元内閣広報室審議官)  
会場:東京都千代田区の日比谷図書文化館・4階セミナールームB
              (最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅)  
■10月29日(火)午後6時半〜9時
「テレビ局エントリー動画で学ぶ、映像リポート実習」
参加費1000円(定員40人)
講師:元TBSキャスター・下村健一さん 
会場:東京都千代田区の日比谷図書文化館・4階スタジオプラス
              (最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅)

これまでの講座の様子がわかります。下記を開いて見てください。
令和メディア研究所の服部さんのリポートです。
https://reiwa.media/219
https://reiwa.media/298

≪受講希望の方々へ≫
要予約です。氏名、参加希望日、大学名、電話番号、メールアドレスを明記して sukabura7@gmail.com にメールで申し込んでください。確認メールを返信いたします。

★10月29日のエントリー動画の講座を受ける方へ★
自由課題=10月22日(火)までに30〜90秒の自己紹介映像をつくり、無料の大容量データ転送サービス(ギガファイル便など)で上記アドレスまで提出してください。(義務ではありません。希望者のみです)映像は、スマホの横撮りで結構です。当日、下村講師が批評・助言します。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 電話03・3291・6475
           東京都千代田区神田神保町1-18-1千石屋ビル402号
posted by JCJ at 15:39 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月10日

【内政】 国民民主1本釣り? N国を抱き込みか 新戦略で改憲ねらう安倍「独裁政権」=丸山重威

7月21日投開票された第25回参院選は、自民・公明の与党は過半数を獲得したが、与党と維新などの憲法改定勢力は総議員の「3分の2」164議席に必要な85議席を割り込み、81議席だった。だが安倍晋三首相は翌日の記者会見で「国民は政治の安定を求めた」「改憲についても議論すべきだという国民の審判が下った」と強弁した。

メディアはこの発言を大きく取り上げたが、世論調査では、最優先課題を一つだけ聞いた朝日、読売では「年金・社会保障」が、朝日38%、読売41%でトップ、「改憲」はともに3%。2項目を聞いた共同でも「年金・医療・介護」が48・5%、「改憲」は6・9%。民意とは全くかけ離れていた。

 しかし安倍首相の意欲は旺盛。国民民主党の一本釣りや、NHKから国民を守る党(N国)の抱き込みなどで「改憲勢力3分の2」を達成、発議に持ち込む構えだ。

魚心あれば水心…

 この中で、野党共闘の一員、国民民主党の玉木雄一郎代表は25日のインターネット放送で、「私、玉木雄一郎は生まれ変わった。令和のの国会は議論の場にしたい。安倍総理と憲法改正の議論を進めたい。首相の4項目には必ずしも賛成ではないが進めたい」と発言。党内外から批判を浴び、翌日「国会の党首討論で議論する」と弁解した。

 選挙戦の中では例えば、定員2人の静岡選挙区では、立憲民主の徳川家広氏と争った国民民主党の榛葉賀津也氏を、自民支持のはずの地元財界の大物が応援した。また、国民民主党・企業団体委員長の桜井充参院議員は「榛葉氏が厳しいから、自民党の元大臣に、票を回してとお願いした」と語り、「改憲にらみの布石」との見方もあった(静岡新聞7月13日)。

 国民民主党は、8月15日には、立憲民主党と統一会派作りの協議を始めたが、安倍戦略は、国民民主の「切り崩し」を狙っている。

 さらに併せて狙われているのは、97万票、1・97%を獲得して政党要件に達した「N国」だ。立花孝志代表は、23日のインターネット放送で「とりあえず憲法改正に反対するが賛成と引き換えに首相にスクランブル放送を実現してもらう」と述べ、憲法改正の国会発議に条件付きで賛同する意向を示した。29日には「戦争発言」の丸山穂高議員を入党させ、30日には無所属の渡辺喜美議員と新会派「みんなの党」を結成。1日の初登院では安倍首相と議場で握手、感激の面持ちだった。

議長交替まで狙う

多数派工作の一方で、いかにも独裁政権丸出しの動きも出てきた。

 首相の側近、萩生田光一自民党幹事長代行は26日夜のインターネット放送で、憲法改正論議が停滞するなら大島理森衆院議長の交替が必要だとの認識を表明。「今のメンバーでなかなか動かないとすれば、有力な方を議長にすることも考えなければならない」と述べた。衆院議長はいやしくも「三権の長」だ。与党の幹部が進退を云々するなど非常識きわまりない。

 1日、参院議長に就任した山東昭子氏は「憲法改正が国会できちんと議論されていないのは正常ではない」と述べ、「できるだけ憲法審査会などが活発に動くことを期待する」と述べた。さすがに、同席した小川敏夫副議長は、「数の力で結論に持っていく議論の在り方であってはならない」とクギを刺した。

 核兵器禁止条約への対応を求められながら、6日、9日の原爆忌にも無視する政府の姿勢が目立つ中で、7日には小泉進次郎氏と滝川クリステルさんが、何と首相官邸で結婚を発表した。小泉氏は「文藝春秋」9月号で菅義偉官房長官と対談、「憲法改正」にも言及。いよいよ「安倍改憲の広告塔」としての登場だ、との見方も出る。

お盆に帰郷した安倍首相は13日には、岸信介元首相、安倍晋太郎元外相などの墓参りをした。墓参後、「憲法改正は自民党立党以来最大の課題だ。国会においていよいよ本格的に議論を進めていくべき時を迎えている」と発言し、「改憲ムード」盛り上げを狙った。

 政権は、とにかく国会の憲法審査会を動かすことを狙っている。併せて、今年中にも予想される総選挙で多数を取り、改憲発議を一歩進めること目論む。安倍改憲阻止には事態を見据えた、機敏な対応が求められている。

丸山重威

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 15:14 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月09日

JCJ東海支部声明 「表現の不自由展・その後」再開を求める=古木民夫

愛知県の「表現の不自由展・その後」が中止されたことを受けて、JCJ東海は5日、抗議と再開を強く求める声明を出しました。要旨は次の通り。

愛知トリエンナーレ2019企画のうち「表現の不自由展・その後」は、その良心的な開催意義がメディア報道やSNSで知られ始めた矢先の8月3日、突如中止になりました。まだ見ていない人、見るのを楽しみにしていた人が多いと思われるだけに大変残念なことでした。中止の理由として主催者(愛知県)は「平和の少女像」など展示作品に対する抗議が多く、中には「ガソリン持参でお邪魔 する」などの脅迫もあったこと、河村名古屋市長からも抗議があり、首相官邸からの「注意」があったことなどを挙げています。

作品を見た上での意見表明ならともかく、展示そのものに反対し、「ガソリン持参でお邪魔」などの脅迫言辞を弄することは犯罪行為であり、その脅しに屈する形で中止となったのは残念でなりません。再発防止のためにも、早急かつ徹底的な究明が必要です。今回最も重視されるのは、展示の内容を批判する河村名古屋市長、菅官房長官ら政治家の介入です。これは政治権力が展示内容に口出しをする事実上の検閲であり、日本国憲法の固く禁ずる不法行為であります。

私たち日本ジャーナリスト会議(JCJ)東海は、言論表現の自由を守る立場から、今回の展示中止に抗議し、言論表現の自由をないがしろにする河村市長と菅官房長官に対して発言の撤回を、警察当局に対しては脅迫行為の取り締まりを要求します。その上で、主催者に対し「表現の不自由展・その後」の再開を強く求めます。           2019年8月5日 

古木民夫

(東海代表)



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 13:23 | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月08日

【今週の風考計】9.8─重陽の節句から「憲法99条」への想い

重陽の節句には、菊を浮かべた<菊湯>に入り、<菊酒>を酌む習慣がある。山形では食用菊「もってのほか」のおひたしが食卓を飾る。このシャキシャキ感がいい。
もう一つ加えれば、9日は<「チョロQ」の日>。タカラトミーが“チョロチョロ走るキュートな車”をキャッチコピーに1980年に発売。子供にも大人にも広がる大ブームを起こした。わが本棚にも飾ってある。

お隣の朝鮮半島に目を向ければ、9日は朝鮮民主主義人民共和国の建国記念日。朝鮮半島の支配権をめぐる米ソの対立から、38度線以南の地域を単独で収める大韓民国が、1948年8月15日に李承晩を首班として樹立される。朝鮮半島の分断が決定的となった。
これに対抗して38度線以北でも独立運動が加速し、同年9月9日に金日成首相の下で朝鮮民主主義人民共和国が樹立された。しかし、70年以上が経過しても統一の悲願は遠のくばかり。

こうして9と9をたどってくると、日本の憲法9条、さらには99条に目を向けざるを得ない。安倍政権の動きを見るにつけ、今ほど99条が大事な条項に浮上している秋はない。
 日本国憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記している。
この条文の主語は「公務員」とあるのが重要だ。「公務員」とは国家権力の行使を担う人たちである。だからこそ「国家権力の横暴を戒め、監視と抑制を行う最高の法律である」憲法の99条に、「憲法尊重擁護義務」を明記したのだ。
 この規定は、単に憲法を尊重するだけでなく、違反行為を防ぎ、憲法を守るために積極的に努力することを含んでいる。

ところが行政府の長である内閣総理大臣という「公務員」が、国会の施政演説や自衛隊観閲式の場で、改憲を勧める所信を表明し訓示を垂れるなど、99条に背く憲法違反を平気で行う事態だ。
 もともと内閣は憲法改正の提案や意見表明はできない。憲法の定める三権分立を侵しても、立法府に干渉するという異常さは極まる。さらには参議院本会議で「愚か者、恥を知れ!」と野党を罵る、自民党・女性議員まで入閣するとの噂が立つ第5次安倍改造内閣、さらなる改憲策動を許してはならない。(2019/9/8)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月07日

【支部リポート】 北九州 抗議行動やまぬ香港 暴力警察の蛮行を目撃=杉山正隆

 「逃亡犯条例」の改正案を契機に起きた香港政府に対する市民による抗議活動は、6月9日の大規模デモから2カ月が経った。8月10日、現地に取材に入った。目抜き通りネイザンロードでは、10日夜9時過ぎ、黒服を着た市民らに、デート帰りと思われるカップル、高齢の男女らと警察隊がにらみ合いを続けていた。突然、20歳代の女性ら数人を警察官が警棒で数十回、激しく殴りつけ押さえつけて手錠を掛けた。

 数千人の市民らは「釈放しろ、警察は恥を知れ」と大合唱。もみ合いの後、警察車両数台と加勢の警察官100人ほどが人波を押しのけて到着。激しいヤジを浴びながら「容疑者」が警察車両に乗せられ尖沙咀警察署に連行された。その後、抗議の声が止まず、警察官らは催涙ガスを発射。市民らは逃げ惑い、脱げた靴や買い物袋などが現場に散乱した。

 翌11日の午後6時半。世界的に有名な雑居ビルの「重慶大廈」(チョンキン・マンション)前のネイザンロードに黒服の男女らがゴミ箱数個を置いた。これをきっかけに、通行が妨げられ、大混乱に陥った。集まった市民は数千人に上り「自由な香港」を訴えたのに対し、警察官らは警告したものの催涙ガスを発射。20歳前後と思われる男女4人が後ろ手に縛られ道路に数十分間座らされ、警察署に連行された。通すよう抗議する日本人に「黙れ、香港から出て行け」と警棒を突き出し怒鳴る警察官も。引き上げる警察官に「こんなに手荒なことをされた。ひどいじゃないか」と腕の傷跡を見せながら詰め寄るお年寄りの姿も見られた。

市民の間で警察への怒りの声が広がっている。催涙ガス弾やゴム弾を市民に発射し、警棒で歯が折れても若者を殴る、地下鉄構内など閉ざされた空間での催涙ガスの発射など行き過ぎた対応に「暴力警察」のイメージが浸透している。

 香港国際空港には9日以降、1万人近い市民が集まり、到着旅客らに「迷惑を掛けてごめんなさい。でも、香港の現状を知って下さい。支援して下さい」などと訴えた。裁判所は中止を命令、中国政府は「テロ」と断じた。

 香港がこれからどうなるのか。これからも注目したいと考えている。

杉山正隆

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 14:54 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月06日

【メディアウオッチ】「韓国は『敵』なのか」に8千人署名 訴える元NHK国際部幹部の理由 自立失ったメディア、高圧的な政治態度…=大貫康雄

 安倍晋三政権が突然のように打ち出した、韓国に対する半導体関連素材3品目の輸出規制措置の後、日韓関係は急速に悪化している。
 特に日本国内の世論がメディアに煽られて、韓国を「敵視」する風潮が強まっている。
 今回の声明、「韓国は『敵』なのか」は、輸出規制措置が日本にとって如何に危険であるか、それこそ「国益」を損なうものであるかを、冷静、客観的に考えてもらうために出されたものだ。
 声明文は、東京大学名誉教授の和田春樹氏や元「世界」編集長の岡本厚氏らが世話人となって日本国民に向けてまとめ、私も呼びかけ人の一人として参加した。

植民地支配の歴史
 声明の概要は、第一に日本が韓国を侵略し、植民地化した過去・歴史を鑑みて対応することの必要性を求めている。日韓両国が報復に報復を招く事態は絶対に避けるべきだ。特に来年は東京オリンピック・パラリンピックの年だ。主催国日本が周辺国と摩擦を引き起こして得るものは何もない。

「敵国扱い」同然
 ところが安倍首相は年初の施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善については見解を表明し、北朝鮮に対してさえ、交渉したいと述べる一方で、日韓関係については一言も触れなかった。5月末の大阪でのG20会議の際には、安倍首相は各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかった。その上での今回の措置である。自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄を共に築いていくべき隣人を、まるで敵国扱いするようなものだ。
 第2点は、日韓両国は未来志向のパートナーであることを強調している。1998年10月、金大中大統領(当時)が来日し、国会演説の中で、戦後日本が民主主義の下、経済成長を遂げアジアへの援助国となり、平和主義を守ってきたと、日本を高く評価した。 その上で、日本国民が過去を直視する勇気を持ち、韓国国民は戦後大きく変わった日本を評価し、共に未来に向かって歩もうと呼びかけた。日本の国会議員も大きな拍手を送りこれに答えた。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領との「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となった。

「解決済み」ではない
 第3点は、日韓基本条約と、それに基づく「日韓請求権協定」の解釈については日韓両国で隔たりがあるままだが、元徴用工問題は安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」ではない。元徴用工の訴訟は民事訴訟であり、まずは企業が判決にどう対応するかが問われるべきだ。実際、日本政府は過去にも、個人の戦争被害に対する補償の権利を否定せず、サハリン残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、工夫しながら実質的な補償をしている。こうした過去を踏まえるならば、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だ。
 声明はこのように指摘し、日本政府が韓国への輸出規制を直ちに撤回し、韓国との間で、冷静な対話と議論を開始することを求めている。今回の声明が出された後、賛同者は3週間で8千人を超えた。インターネットでのアクセスは20万人に上っている。

 歴史を否定する姿勢
日韓関係の急激な悪化について私は、報道の自由・自立を失った日本のマスコミの責任とともに、安倍晋三という、現在総理の座にある一人の人物とその集団による被害者を考慮しない冷たい対応、気に入らない歴史を否定し、強い者には卑屈に出る一方で弱い立場の人には高圧的に出る感情的な政治姿勢が両国関係悪化の背景にあると見る。かつて、西ドイツの故シュミット首相が、日本が真の友人を持っていない危険性を指摘していたのが思い出されてならない。

大貫康雄(元NHKヨーロッパ総局長)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月05日

【月刊マスコミ評・放送】 英独も模索する「公共性」の回復=諸川麻衣

「NHKをぶっ壊す!」をスローガンにNHKのスクランブル放送化を訴える「NHKから国民を守る党」(N国党)が、参院比例で一議席を獲得、選挙区の得票率で政党要件を満たした。あの丸山穂高代議士を入党させたかと思うと、渡辺喜美議員と「みんなの党」会派を作り、さらにスクランブル化と引き換えに安倍改憲に賛成を打ち出すなど、立花党首の打算的な言動は相変らずである。それを批判するのはたやすいが、問題は相当数の有権者がN国党の主張に共感し、わざわざ投票したという事実である。選挙直後のTOKYOMX『モーニングCROSS』の集計でも、スクランブル放送化に賛成二〇六四、反対七〇八という衝撃的な結果が出た。

今の受信料制度やNHKのあり方へのこうした批判の要因と思われるものを列挙してみる。まず、受信料制度を合憲とした二〇一七年の最高裁判決を錦の御旗に、NHKの集金活動が高圧的になったこと。政権寄りの政治報道のせいで国営放送同然に見られていること(反面「番組が反日的だ」との批判もある)。携帯やカーナビも受信機器とみなして契約を強いる論理が、生活実感になじまないこと。庶民にほぼ無縁な4K8K放送に莫大な予算がつぎ込まれていること。そして、ネット社会の進展によって、NHK・民放を問わずもはやテレビが重要な情報源ではなくなってしまっていること。災害であれ選挙であれ、人々はネットで一次情報を取得できるだけでなく、自らも発信者になりうる。放送制度が前提としてきた、情報発信の専門性・寡占性が大きく変化し、「電波の希少性」がかつてほどの意味を持たなくなってきたのかもしれない。

こうした趨勢の中、イギリスではBBCが、オンライン専門の若者向けチャンネルで犯罪、ドラッグ、セックス、LGBTQなど青少年にとって重要なトピックを扱った番組を配信、注目されている。また放送番組のコンテンツも動画共有サイトに積極的に配信しているという。ドイツは二〇一三年に、従来の受信料を、ネット端末を含む「放送負担金」に変え、費用の徴収の根拠を「受信機の所有」ではなく、「公共放送によるサービスを享受する権利」に変更した。さらに今年四月には値下げにも踏み切った。

「公共メディア」を自称するNHKが受信料制度を維持したいのであれば、疑問符を突き付けられた「公共性」を、日々の放送とネット発信を通じて回復してゆくしかないだろう。  諸川麻衣

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月04日

【内政】大分と宮城 東西参院選最激戦区からのリポート 安倍政権に大打撃=柳瀬陽之助・多々良哲

お上嫌いの風潮 脈々
 東京の知人が今回の参議院選挙を評して「大分はおそろしい」と感想を漏らした。新顔の革新系候補が、首相側近の有力保守候補を破ったからだ。
 九州各県の1人区のうち、革新が勝ったのは大分だけ。予想しない結果だった。大分弁で「おそろしい」を「おじい」という。
 3人が立った。事実上、保革の一騎討ち。激戦を制したのは安達澄(きよし)氏。無所属で、野党連合4党の推薦・支援を受けた。別府市出身、49歳。22年間のサラリーマンを辞め4年前、別府市長選に出たものの、苦杯をなめた。5人候補のうち最下位に近かった。
 シンボルカラーは出身の青山高校名から「青(ブルー)」を選んだ。白シャツに青ズボン、運動靴で県内を駆け巡った。若さと新鮮さをアピール。国政論争より「現場主義」「政治に地方重視」を強調した。
 相手は3期目を目指す自民・公明推薦の礒崎陽輔氏。自民党所属で61歳。総理補佐官として「2期12年の実績」を誇示した。安倍晋三総理や菅義偉官房長官、小泉進次郎氏らが応援に駆け付けた。

 開票の結果、新顔の安達氏が1万6655票差で初当選した。安達氏の勝因は野党連合3党と共産党の支援による「大分方式」が功を奏したほか、あえて政党色を出さず、無党派層を取り込んだ。
 これに対して礒崎氏の保守陣営は3期目のおごりと組織の劣化が災いしたようだ。むしろ自民党の「敵失」という見方もある。参議院大分選挙区は革新のDNAが脈々と流れる。革新候補が2004年以来3回、自民党候補を破った。
 昔から社会党の牙城でもある。比例代表で社民党前党首の吉田忠智氏(大分県出身)も返り咲いた。「トンちゃん」こと元総理の村山富市氏も95歳で健在である。

 今回の投票率は50・54%で過去最低だが、もともと大分人は選挙好き。昔から選挙後の訴訟の多いこと、「東の千葉、西の大分」とやゆされる。
 自民党副総裁や衆議院議長の大物代議士が総選挙で落選する怖いところ。反権力やお上嫌いの風潮もある。
 「九州は一つ」と言われるが、そんなことはない。瀬戸内海を隔てて関西とつながる大分県。他県とは違った異質なおじい風≠ェ吹いている。

柳瀬陽之助(別府市在住ジャーナリスト)


60日の新人VS60年世襲
 今回の参議院選挙宮城選挙区では、5月に名乗りを上げた新人「市民と野党の統一候補」石垣のりこ氏が、4期目を目指す自民党現職「名門政治家一家の3代目」愛知治郎氏に勝利した。その闘いは「60日の新人が60年間の世襲に勝った」と称された。
 その勝因の第一は、宮城における「市民と野党の共闘」の蓄積である。2016年の参院選勝利、17年の仙台市長選勝利、そして18年の女川原発県民投票を求める署名運動と、市民と野党が共同で物事を成し遂げる経験を積み重ねてきており、その中でお互いの信頼関係が醸成されていた。
 それを下支えしたのは、選挙以外の日常の様々な市民運動、すなわち憲法、原発、沖縄等々の諸課題を巡る地域の共同の取り組みであった。それらの活動が多くの有権者からの信頼を得ており、これが今回の勝利の土台となったことは間違いない。

 第二には、なんといっても候補者がよかったということである。石垣氏は親しみやすい庶民派であり、有権者の声を丁寧に聞く草の根選挙を展開しながら、その主張は鋭角であり、忖度もしがらみもなくハッキリと物をいう態度が有権者の共感を呼んだ。
 同時にそれは石垣選対のイメージ戦略でもあった。若い女性候補でありながら「笑わない」ポスター、「上げるべきは賃金であって消費税ではない」という断定調のキャッチフレーズが浸透し、SNSや動画配信を駆使したネット戦略によって若い世代にも届いていった。
 いわば石垣氏のパーソナリティ、政策、活動スタイル、そして言葉の力があいまって、政治をあきらめるなというメッセージとなって、無党派層の人々に一定届いたのではないか。7月17日仙台駅前に三千人が詰めかけた「れいわ新選組」街頭演説会で、石垣氏が山本太郎氏と並んで登壇した姿が、それを象徴していた。

 終わってみれば、宮城選挙区は全国最少の得票率差の激戦区であった。私たちは、権力が力任せに共闘つぶしに襲いかかる「官邸直轄選挙」の恐ろしさをひしひしと感じた。来るべき衆院選に勝利するためには、私たちの共闘のウイングを、政治を諦めていた無党派層の人々へも広げる言葉を、私たちは持たなければならない。

多々良哲(市民連合みやぎ事務局長)


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月03日

【リレー時評】図書館の民間委託 弊害多し 新政策を=守屋龍一

 今夏の猛暑続きは世界規模。中国ではエアコンの効いた場所へ、避暑めあてに移動する「納涼族」が急増したという。書店内もイス持参の子ども連れがいっぱい。書棚の本を持ち出し読みふける映像に衝撃を受けた。
 日本だって地域の図書館は、「納涼族」格好の場所だ。お盆のさなか、住まいの近くにある図書館を訪れると、26℃に調整してある館内は高齢者ばかり。中には居眠りしている老人もいる。
 図書館の利用がこれでいいのか。5月末、岩波ホールで観た映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を想起しながら、考えさせられた。

 6月24日、活字文化議員連盟・公共図書館プロジェクトが、〈公共図書館の将来─「新しい公共」の実現をめざす〉(答申)を発表した。子細に読むと頷ける点が多く、5つの提言についても示唆に富む内容が豊富である。
 まず小泉内閣が進めた規制緩和や民間委託、郵政民営化につながる政策の是非が問われ、公共図書館の運営についても、民間委託の指定管理者制度そのものにメスを入れる、これが緊急テーマに浮上したと指摘する。

 民間委託した図書館の貸出点数の推移を調査したところ、ほぼ2〜3年で貸出率が下がり、5年以上では20〜30%以上も減少し、住民の図書館離れが始まるという。
 さらに民間業者の目先の利益が優先し、長期に図書館の発展を目指す姿勢がない。地域に密着した図書館サービスの提供に向けて、必要不可欠な専門知識のある人材が育成・蓄積されない。
 まずやるべきは図書館職員の劣悪な労働条件の改善だと提言。司書の6割が非正規で働き、賃金は経験を積んだ30代後半でも月13万円。専門職としての能力に応じた十分な賃金を支払い、雇い止め≠見直し、司書が継続して安心して働ける労働環境づくりが必要だと説く。

 いま日本全国にある公共図書館は3300館。そのうち民間業者に指定管理者委託をしているのは640館を超える。なかでも図書館流通センター(TRC)の占有は激しく、333館(全体の65・5%)になる。
 昨年11月、神奈川県海老名市の公共図書館の管理運営を、市は図書館流通センターと「TSUTAYA図書館」(CCC)による合弁事業とし、今後5年間、毎年3・2億円の委託契約を更新。年間の税金投入は市が直営時の2倍となり、市民から批判の声が挙がる。
 公共図書館に納める図書も、いまや図書館流通センターが独占し、〈町の本屋さん〉は、公共図書館という安定した書籍の販売先を失ってしまった。
 図書納入にあたっては地域書店からの直接購入を優先し、装備作業は無償サービスではなく、福祉施設に業務委託して効用促進を図るなど、新たな地域循環型の経済効果を生み出す図書館政策の確立が必要である、と提言する。即実行を願う。

守屋龍一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月02日

【内政】市民連合「継続は力なり」実証 参院選報道 紋切型で争点伝えず メディアの知的劣化が著しい 上智大・中野教授に聞く=河野慎二

 先の参議院選挙で、市民連合と野党共闘は自公など改憲勢力を、3分の2割れに追い込んだ。安倍政権は「改憲ノー」の民意に深刻な打撃を受けている。画期的な成果を上げた要因と今後の展望、メディアの報道などについて、市民連合呼びかけ人の中野晃一上智大学教授に聞いた。

―参院選の最大の成果は、改憲勢力の3分の2を阻止したことですが、どう振り返りますか。
 まず何を措いても触れなければならないのは、投票率が低かったこと。5割を割って48.8%に終わったことは、市民連合としても重く受け止めています。低投票率についてはメディアの責任も重く、深刻です。その中で極めて重要なことは、自公などの改憲勢力が3分の2を割ったことです。
 特に、1人区で10勝したことは、率直に言って想定を超えるいい結果だと考えています。と言いますのは、統一地方選で候補者の一本化が遅れ、長野以外は新人候補ばかりで、それがこれだけ多くの自民党現職を打ち破ったのは凄いことです。

候補一本化に道筋
―今回も市民連合が大きな役割を果たしました。
 市民連合としては、13項目の政策合意で野党候補一本化の道筋を作れたことは大変良かった。前回、惜敗率が一番高かった愛媛で勝利したように、蓄積が極めて重要です。市民と野党の協力の継続が無ければ、これだけ短期間でこれだけの新人候補が勝てるはずはありません。まさに「継続は力なり」です。

―市民連合と立憲野党の13項目の政策合意は今後、どう内実化させて行くのですか。
 参院選直後、立憲民主党の枝野幸男代表が国民民主党の玉木雄一郎代表に、13項目の政策合意を基調にして院内統一会結成を呼びかけました。野党共闘を強化して行く過程で、13項目の枠組みが効いています。政策合意に完成版はありません。核禁条約盛り込みなど、常に先を目指して充実を図ります。

―衆議院の年内解散説も燻りますが。
 常識的には、年内の解散総選挙はないと見ますが、解散権を乱用する安倍専横政権ですから、先手々々を取って共闘体制を準備することが極めて重要です。もたもたすることは許されません。枝野代表の統一会派申し入れは、想像以上に早かった。よりリベラル色の強い立憲民主が仕掛けて、旧民進党系の再結集が始まりました。市民連合としても後押ししたい。

印象操作に「加担」
―メディアの参院選報道はどう見ますか。
 まず、自民党単独過半数割れについての報道が不十分です。自民党は公明党無しに法律一本も作れない政党です。その党首が改憲などを仕掛けられる訳がない。その辺をきちんと捉えないと、メディアが政権の印象操作に事実上加担しているとの批判を免れません。安倍戦略に乗って、煽って来た衆参同日選が無くなるや、テレビの報道量は激減し、新聞も一面トップで伝えなくなりました。
 重要な国政選挙の争点を伝えないメディアは、自由と民主主義を下支えする言論機関としての自覚が余りにもなさ過ぎます。参院選についてメディアは「議論がかみ合わない」「争点がない」と紋切り型に繰り返しました。しかし、安倍首相は「改憲」に踏み込んだ街頭演説を行い、野党は暮らしや年金など「生活争点」を訴え、争点は明確に存在していました。
 憲法には憲法を対置させないと争点にはならないという思い込みがあるようですが、メディアの知的劣化ではないのか。

 もう一点、メディアがもの凄く劣化したと思うのは、政権の業績評価をしなくなったことです。安倍政権は6年半、国民の税金を使って何をやってきたか。アベノミクスや3本の矢≠ヘどうなったのですか。何もやってないじゃないか。メディアは参院選の時に評価せずに、いつ評価するのでしょうか。

SNSの力と限界
―今回、SNSの影響力が注目されました。ジャーナリストへのメッセージもお聞かせください。
 SNSがメインストリームのテレビや新聞に対抗できる動きを作り得ることはあります。「れいわ新選組」の躍進はSNSと切り離せません。しかし、SNSは同じ意見が共鳴し合う情報のタコツボ化≠ニいう限界があります。新聞やテレビは、広く共通の土台を作るというプラットフォームですから、そこで広範な世論を形成するプロセスが出来ないと、国民を分断された言論状況の中に放置することになります。
 SNSでシェアされる情報は、発信元になるプロのジャーナリストが職業倫理に基づき、自分の良心に基づいて取材し、記事にしたものであるべきです。それが、SNSの拡散する中で、無くなってしまうのは非常にまずい。ぜひ、頑張ってほしい。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年09月01日

【メディア気象台】 7月から8月=編集部

公文書保存ルール、大臣もなし
大臣が在職中に保有する公文書について、退任時に保存するルールがないことが、大臣のいる全14官庁への毎日新聞の取材で判明した。複数の大臣経験者らによると、退任時に文書を持ち出したり、自ら処分したりするなど対応はバラバラで、廃棄や散逸の恐れがあるという。一方、経済産業省では、大臣に示した文書を半年後にサーバーから自動削除するなど廃棄につながる動きがあることも判明。読者は「大臣の政策判断の検証が困難になる。保存のルールが必要だ」と指摘している。(「毎日」7月18日付)

首相へのヤジ排除、道警が見解変える
札幌市で安倍晋三首相の街頭演説中にヤジを飛ばした市民を警官が取り押さえて排除した行為について、北海道警は17日、聴衆同士のトラブルを防ぐための通常の警察活動だったと説明した。当初は、ヤジが公職選挙法違反(報道の自由妨害)にあたる「おそれがある」としていたが、「事実確認中」と見解を変えた。(「朝日」7月18日付ほか)

ジャニーズ事務所の「圧力」、各局番組は有無触れず
アイドルグループ「SMAP」の元メンバー3人のテレビ出演をめぐり、公正取引委員会がジャニーズ事務所(東京都)に注意について、NHKや在京民放キー局は17日夜〜18日昼、ニュース番組や情報番組で伝えたが、公取委に情報が寄せられた「事務所から局への圧力」の有無について、番組内で局からの詳しい説明はなかった。(「朝日」7月19日付ほか)

ベネチア映画祭に是枝作品
世界最大映画祭の一つ、第76回ベネチア国際映画祭で、メインのコンペティション部門に是枝裕和監督の日仏合作映画「真実(原題、ラ・ヴェリテ)」が選ばれた。日本人監督の作品で初めてオープニング上映されることになった。同作は、フランスの俳優カトリーヌ・ドヌープとジュリエット・ビノシェが母娘を演じている。映画祭は8月28日から9月7日までイタリアのベネチアで開かれる。(「毎日」7月19日付ほか)

NHK「N国党主張に誤りなら放置せず」
NHKの木田幸紀総局長は24日の定例記者会見で、参院選で議席を獲得した「NHKから国民を守る党」が主張する、NHKに受信料を払った人だけが番組を視聴できるスクランブル放送について、否定的な考えを示した。その上で「受信料制度について誤った理解を広げる行為や言動は放置せずに対応したい。明らかな違法行為があれば厳しく対処する」とも述べた。(「毎日」7月25日付ほか)

参院選、真偽不明情報まん延
今回の参院選期間中にインターネットで出回った真偽不明の関連情報は、ファクトチェック(事実確認)の推進団体「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ、東京都)の調べで50件を超えていたことが分かった。連携する新聞社などが確認し、真偽を判定できたのは9件にとどまった。検証作業の担い手不足が課題になっている。参院選公示後にツイッターに載った政治家、候補者の発言や、参院選関連の各種メディア報道、ネット情報などに対し、誤りやミスリードを指摘する投稿を自動的に収集。ファクトチェックが必要と判断した情報が50件を超えた。主要争点となった消費税増税関連が多かったという。(「東京」7月28日付)

市民が再開要望、県知事あて提出
国際芸術祭「あいちトリエナーレ2019」で、元従軍慰安婦を題材とする「平和の少女像」などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」が中止された問題で、中止に抗議する市民団体が7日、大村秀章・愛知県知事宛てに再開の要望書を提出した。市民団体は、中止翌日の4日の抗議行動に集まった市民を中心につくられた「再開を求める愛知県民の会」。(「毎日」8月8日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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【今週の風考計】9.1─よみがえれ! 蒸気機関車「東村山D51」

蒸気機関車を見ると童心に帰る。お盆休みには<煙を吐いてシュッポ、シュッポ…>田舎へ帰る列車の窓から流れ込む煙の臭いが懐かしい。
 旅をしては秩父鉄道や大井川鐵道の蒸気機関車に胸躍らす。町を歩いては展示されている新橋駅前や中野紅葉山公園のC11型、川崎・生田緑地公園のD51型機関車に見とれる。まさに日本の文化遺産だ。

ところが筆者の住む東京・東村山市の運動公園に展示されている蒸気機関車「D51684」が、市民には何も知らされないうちに、解体・撤去されることになった。この3日から撤去工事が始まる。
市当局は5月末に目視による劣化度調査を行い、鉄錆が広がり枕木も腐食し、地震で脱輪・横転する危険性が高いとの報告を受け、6月7日の定例市議会で、修繕・維持費も高額になる以上、解体・撤去するとの方針を打ち出した。
 しかも議会最終日の7月2日には、解体工事費2030万円を盛り込んだ補正予算を提案し、審議も説明も不十分なまま自民・公明などの賛成で可決・成立させてしまった。展示されて43年間、市民の見学に供してきたのだが、ペンキの塗り直しは僅か4回。風雨にさらし放置してきた責任は免れない。

さっそく市民有志や全国のSLファンらが連絡を取り、「東村山D51684保存会」を立ち上げた。市民の力で<よみがえれ! 運動公園の機関車>を合言葉に、専門家や研究者の知恵を集め、また解体・撤去を取りやめた自治体の経験を活かしたいと張り切っている。
ちなみに市当局が挙げる修繕費1億2300万円は、「全国で実施されてきたSLの生態保存と比べて、ケタ違いの数字であり、必要のない作業を含め、意図的に膨らませていたとしか考えられません」と、SL修繕専門家は言う。
錆びた表面の薄い鉄板を張り替え、ペンキを塗りなおすなどの工事費は、100万円ほどで対応できるし、ボランティアによる協力やクラウドファンディングにも取り組めば、保存は実現可能だと強調している。解体・撤去の契約が成立しても、解体を取りやめた自治体は数多くある。諦めないで「東村山D51」を復活させよう!(2019/9/1)
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2019年08月31日

【内政】SNS発信力で無党派まき込む れいわ新選組「着火剤」に活用 N国 炎上動画平気でアップ=畠山理仁

 インターネットの発信力が、テレビや新聞による「諸派の黙殺」を凌駕した。これが今回の参院選最大の特徴である。
 本来、すべての候補者は同じ条件で立候補している。しかし、既存メディアは政党要件を満たさない政治団体を「諸派」と位置づけ、ほとんど報道してこなかった。

 そんな中、今回は諸派の扱いを受けた「れいわ新選組」と「NHKから国民を守る党(N国)」がインターネットを活用して議席を獲得した。両党ともに政党要件(得票率2%以上)をクリア。これは参院選に非拘束名簿式が導入されて以降、初めての快挙である。
 参院選の期間中、れいわ新選組の山本太郎代表は街頭で何度も叫んだ。
「経団連に都合の悪いことを言う我々は『放送禁止物体』。テレビには映らない。だから、あなたの力で広げて下さい!」
 街頭演説終了後には、聴衆と写真撮影の時間を取った。それをSNSで拡散してもらうことで、選挙に出ている事実を世間に広げた。既存メディアに頼らない情報拡散の輪が広がっていた。

 インターネットを使った選挙運動が解禁されたのは、2013年4月の公職選挙法改正だ。それから6年が経ち、業界では「投票行動に与える影響は大きくない」というのが通説となっていた。
 この常識を大きく変えたのは、山本代表のプロデューサーとしての力だ。れいわ新選組はSNSでの発信を、支持拡大のための着火剤として活用していた。

寄付3万3千人超
 4月に山本代表が一人で立ち上げたれいわ新選組は、参院選の選挙資金を寄付で賄うことをインターネットで発表した。
 公示前日までに集まった寄付額は2億3133万円。選挙が始まると、SNSで街頭演説の告知を見た人たちが続々と街頭演説に駆けつけた。聴衆が1000人を超えることもあった。演説動画はネット上にアーカイブされ、ボランティアによる演説の文字起こしも迅速に掲載された。投票日前日には、寄付金額が4億円を超えた。
 しかし、それでもテレビや新聞は報じない。自主規制に縛られ、世の中の事象を速報する役割をほとんど放棄していた。

 山本代表の戦略が成功した理由は、ネットでの盛り上がりを過信しなかったことだ。ネットはあくまでも有権者を街に引き出す手段。実際の勝負は地道な草の根活動だ。そのため、有権者を巻き込むことに心を砕いた。
 まずは4月の結党会見で「候補者を何人擁立するかは、皆様の寄付額で決めます」と全国に呼びかけた。ゲームの行方を有権者に委ねるやり方は「AKB総選挙」にも似ている。誰もが当事者として参加でき、結果に関与できる仕組みだ。
 街頭演説会場には、ボランティアの登録窓口と寄付窓口を設置した。政治への不満は持ちつつも、政治と関わる入り口を見つけられなかった有権者たちが列をなした。
 寄付の最低金額は数十円。高額の寄付者は多くない。しかし、少額寄付を中心に、寄付者の数は3万3千人を超えた。

 候補者には、生きづらい日本の象徴である「当事者」を擁立した。しかも、ほぼ無名の新人だった。各候補者のドラマに感情移入した有権者は、ますます「政治は自分たちのものだ」という当事者意識を刺激された。
 比例で優先的に当選する特定枠に、2人の重度身体障害者を据えたことも大きい。山本代表が捨て身で臨むことで、支援者たちはさらに燃えた。
 こうした戦略には、つねにブレーンの存在が囁かれる。しかし、山本代表は笑って否定した。
「そんな人がいたら紹介してほしい。候補者は全部自分で口説いています。次の総選挙では、最大で100人立てたい」

反NHK票見込む
 N国の立花孝志代表はユーチューバーだ。13年の結党時から「19年の参院選で1議席取る」と豪語してきた。
 そこから6年間、地方議会選挙への挑戦を続け、仲間を増やし、勝ち方を研究してきた。候補者の携帯番号を公開し、有権者との距離も縮めた。
「地方議員はオイシイ仕事。当選するのは簡単」と立花代表は言う。
 実際、4月の統一地方選挙では、N国から26人の当選者が出た。その歳費の一部がN国の運営を支えている。

 躍進の背景には、国民のNHKに対する根強い反感がある。そのため、党の存在が認知されれば一定の得票が見込める。だからN国は炎上する動画も隠さずアップする。
 視聴者が増えれば広告収入が増える。敵が増えても党の存在は広まる。どちらに転んでも、N国は損をしない仕組みだ。

 当選後、N国は丸山穂高衆院議員を入党させ、渡辺喜美参院議員と新会派を結成した。タレントが批判的な発言をすれば、テレビ局に出向いて抗議もした。炎上上等な姿勢は以前と変わらない。
 政党要件をクリアした今、メディアは無視できない。両党が本格的に暴れるのは、これからだ。

畠山理仁(フリーランスライター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 14:52 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月30日

ジャーナリスト講座「韓国・朝鮮を取材する視点」

《19年秋のJCJジャーナリスト講座》
「韓国・朝鮮を取材する視点」
★10月6日(日)午後1時半から4時半★
講師:毎日新聞・鈴木琢磨記者
会場:東京都千代田区の日比谷図書文化館・4階小ホール
(日比谷公園内=最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅)
日朝関係は意思疎通が全く進まず、一方で日韓関係も悪化の一途をたどる。その中で記者はどのような視点で問題を掘り下げ、取材すべきか、長い体験を踏まえて、お話ししていただく。
鈴木琢磨記者は毎日新聞夕刊(8月8日付)で、戦後プロレスのヒーローだった力道山(1924〜63年)を取り上げ、日本と韓国、北朝鮮との懸け橋になろうとした彼の生涯をたどっている。前回の東京五輪に向けて、朝鮮半島出身の力道山は「政治の道具」として引っ張りだこになった。南北統一チームの夢は実現しないまま、暴力団に刺され、五輪を前に亡くなる。人々の喜びや悲しみの現実。報道を考えるヒントにしていきたい。鈴木記者は今年8月半ばにもソウルを取材した。現地の生の空気を伝えていただく。内容はメディア志望の学生向けですが、一般の方の参加も歓迎します。

【鈴木琢磨氏・略歴】
1959年、滋賀県大津市生まれ。大阪外国語大朝鮮語学科を卒業し、1982年に毎日新聞に入社。サンデー毎日時代から北朝鮮問題を取材。著書に「テポドンを抱いた金正日」「今夜も赤ちょうちん」「日本国憲法の初心」などがある。

 定員:50人(要予約)  参加費:1000円
参加ご希望の方は氏名、大学名(一般の方は職業など)、連絡先電話番号、メールアドレスを明記して、sukabura7@gmail.comにメールで申し込んでください。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)  電話03・3291・6475    
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2019年08月29日

【リアル北朝鮮】 9月以降の動きに注目 文大統領の呼びかけ拒否=文 聖姫

 日本が「終戦記念日」と称する8月15日は朝鮮半島で祖国解放記念日にあたる。韓国では光を取り戻した日として「光復節」と呼ぶ。

74年目のこの日を私は韓国の済州島で迎えた。街中に太極旗(韓国国旗)が掲げられている以外、イベント開催などの動きは済州島では見られなかった。知り合いに聞いても道庁主催の公式行事以外は特に企画されていないという。

だが、日本による半導体材料の輸出規制、ホワイト国からの韓国除外といった措置が取られたことに対し、韓国内では日本製品不買の動きなどが徐々に広がっていた。知り合いによると、商店で売っていた日本のビールが姿を消した。夏休みに家族で沖縄を旅行する予定だったが、取り消したそうだ。韓国・仁川と地方都市を結ぶ格安航空会社(LCC)便の運休も相次いでいる。

文在寅大統領は15日の光復節慶祝辞で、「日本が対話と協力の道に進むなら手をつなぐ」と、日本政府に呼びかけた。日本ではこのことばかりが強調されるが、むしろこの演説は北朝鮮への「ラブコール」といった側面が大きいのではないかと感じた。核を放棄しさえすれば、繁栄する経済強国を共に作れるのだというメッセージだ。文大統領は演説の最後でこう述べている。「我々の力で分断に勝ち、平和と統一に進むことが責任ある経済強国への近道だ。我々が日本を飛び越える道であり、日本を東アジア協力の秩序へと導く道だ」。南北が力を合わせれば日本に勝てるのだと北朝鮮に呼び掛けている風にも聞こえる。

しかし、北朝鮮は16日、祖国平和統一委員会報道官談話で文大統領の演説を強い調子で非難した。「いまこの時刻にも南朝鮮で我々(注:北朝鮮)に反対する合同軍事演習が行われている時に対話の雰囲気や平和経済や平和体制などとどの面下げていえるのか」。これがいまの北朝鮮の思いだ。軍事演習が終わる8月末までは動きはないだろう。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月28日

【沖縄リポート】 ストップ 海中不発弾の爆破処理=浦島悦子

 ジュゴンの死体漂着から4カ月を経た7月17日、解剖が実施され、同29日、実施主体である環境省(沖縄事務所)・沖縄県・今帰仁村の三者は解剖結果を報道発表した。

それによると、沖縄近海に生息するオグロオトメエイの尾棘刺入に起因する死亡の可能性が最も高いという。多数の鋸歯状の突起を有する長さ約23センチの尾棘が腸管を突き破って腸内を移動し、腸の内容物が腹部全体に充満していたというから、その痛み・苦しみは想像を絶する。死体漂着4日前に水中録音されたジュゴンの頻繁な鳴音は、断末魔の叫びだったのだろう。

沖縄美ら島財団、鳥羽水族館、国立科学博物館の獣医師6名が携わったという解剖結果におそらく間違いはないと思われるが、しかし、これで「幕引き」させてはならない。

亡くなったジュゴンの生息域は辺野古への土砂運搬船の航路と重なっており、直接の接触がなかったとしても運搬船の頻繁な航行が海生生物の生態を攪乱し、通常ありえない事故が起こった可能性は充分ある。今回の事故を遠因も含め究明すること、基地建設の進行に伴って行方不明になった2頭のジュゴンを含め、それ以外にも少なくないジュゴンの目撃情報をもとに琉球諸島全域調査を行うことを環境省や沖縄県に強く求めたい。

そしてもう一つ、ジュゴンの脅威となっているのが、不発弾の海中爆破処理だ。この8月1日にも中城村沖で実施されたが、沖縄戦の悪しき「置き土産」である不発弾は陸上だけでなく沿岸海域にも未だ多数残留しており、海で見つかったものは海上自衛隊が爆破処理するのが通例となっている。しかし、これによって沿岸域に住むジュゴンに直接影響するだけでなく、餌場である海草藻場を含め、沖縄の観光資源であるサンゴ礁生態系そのものを破壊してしまう。

水中にある不発弾はダイナマイトを仕掛けて誘爆しない限り爆発しないため、放置または海溝のような深い場所に移動して「水畜」するのが国際的な常識だという。この常識を行政や市民に広く知らせ、海中爆破処理をなくしていきたい。

ジュゴンの生存の脅威となる要素を一つひとつ取り除いていくことが、彼らを絶滅の危機に追い込んだ私たちの責任だと痛感している。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月27日

【編集長EYE】 米国への忖度で「ひろしま」幻の映画に=橋詰雅博

 幻の映画「ひろしま」を10日午後、都内で見た。奇しくも、その日の夜11時、NHKがETV特集「忘れられたひろしま=`8万8千人が演じたあの日=`」(映画はETVで17日深夜放映)を放送した。上映を主催した憲法を考える会が配布した資料と特集番組から「ひろしま」が製作された経緯はこうだ。

 映画の原作は「原爆の子〜ヒロシマの少年少女のうったえ」だ。自らも被ばくした教育学者・長田新が原爆の惨状を残したいと、子供たち105人の被ばく手記を編纂し、本は1951年に出版された。累計27万部売れ、原爆の恐怖と悲惨さを多くの国民に知らせるきっかけになった。手記を寄せた少年が映画化を発案し、日本教職員組合が製作に乗り出す。カンパを募り、総額4千万(現在の貨幣価値で2億5千万)の製作資金を集めた。監督は「きけ、わだつみの声」などの作品を手がけた関川秀雄、助監督に熊井啓、音楽が伊福部昭で、一年後にあの「ゴジラ」のテーマ曲をつくった。当時の人気女優・月丘夢路が主演し、8万8千の市民が出演。これは日本映画史上空前絶後のスケールだ。原爆が投下された直後の広島市を再現した映画は53年に完成した。

 ところが国内上映直前にアクシデントに見舞われる。試写を見た大手映画会社が反米的と配給を拒否。どこがそうなのか、例えば「日本人が新兵器の『モルモット実験にされた』」というセリフを挙げた。

 筆者はこうも感じた。上映時間104分のうち惨状シーンは30分も続き、強烈な印象を受け、見ているうちに原爆を投下した米国に怒りがこみあげてきた。

 映画は自主上映で公開され、55年ベルリン国際映画祭長編映画賞に輝いたが話題にならず、いつの間にか忘れ去られた。現在、原爆のむごさを後世に伝えるため映画関係者が上映会を各地で開いている。しかし、外交、経済、防衛などあらゆる面で日本は、米国への忖度を続けている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 15:30 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする