2022年11月22日

【22年度JCJ賞受賞者スピーチ】『ルポ・収容所列島』人権無視の実態に衝撃 東洋経済新報社 風間直樹さん

                              
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        写真左から風間直樹、井艸恵美、辻麻梨子の3氏 
 週刊東洋経済は経済メディの中で、社会性のある幅広いテーマを取り上げてきました。医療に関する問題では2000年代初頭に、全国各地の大学当局から若い医師が離れていく医療崩壊を報じました。同時に経済にとらわれない週刊誌の問題意識と、多いときは月間3億ページビュー(PV)を記録したウェブメディア『東洋経済オンライン』の拡散力を一体的に制作する狙いで19年1月に調査報道部が立ち上がりました。この報道部が取材した薬漬けが広がる児童養護施設や生活保護者が住む劣悪な無料定額宿泊施設の実態、『ルポ・収容所列島』もオンラインで記事を連載しました。
 精神医療取材のきっかけは、編集局に届いた精神科病院に入院中の女性からの手紙でした。その内容は主治医の指示で親、兄弟、子どもと面会禁止、電話もできません。手紙のやり取りだけが許されていました。そんな閉鎖された状態に衝撃を受けました。主治医が変わり退院に向けた動きがある中で彼女に接触しました。閉鎖病棟の面会で2、3時間話しても、意思の疎通ができる普通の人が4年近くも強制入院させられていたことがショックでした。
 彼女が入院させられた肝は精神科特有の「医療保護入院」制度が背景にあります。家族一人の同意と、精神科医の診断というゆるい要件で身体拘束が可能なことに驚きました。
「精神科移送業」の存在も書きました。民間会社の見知らぬ男たちが突然、自宅に乗り込んできて、強制的に人を精神科病院に連れて行くのです。診察の際、強引に連れてこられ正常とは言えない精神状態ですので本人が反発すると攻撃性や多弁、多動があるとして統合失調症の疑いと診断される事例が多々ありました。財産や子どもの親権目当てに悪用するケースが多かった。
 こうした問題に対して、行政機関のフォローがあるものだろうと思っていたのですが、全くないのです。つまり家族、病院、行政のトライアングル状態の中に当事者が閉じ込められています。本来、患者側に立つべき行政機関が逆に、地域社会で問題を抱えている方を厄介払いしてくれる大変便利な施設として、精神科病院を利用している状況が見えてきました。
 朝日新聞の大熊一夫記者が潜入取材して書いた『ルポ・精神病棟』は1970年の新聞連載でした。その後、50年間、時は止まっています。精神医療がまったく変わらない実態を提起したいと思います。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号

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2022年11月21日

【23年度JCJ賞記念講演】法政大・上西充子教授 信頼される報道とは 政治は「津波」とは違う 事態は行動で変えられる 時機をとらえ問題提起を 言葉づかいにも疑問=須貝道雄

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 報道は「事実」を伝えるのだとメディアの人は言います。でも伝える事実を選択しています。たとえば2015年、安保法制が国会で議論されていた時、SEALDs(シールズ)の学生デモを初めのうちはあまり注目せず、大きく盛り上がってから報じていました。
 伝える際の言葉遣いも疑問です。ニュースの見出しに「与党、菅首相答弁減らし成果 野党追及は決定打欠く」(2020年12月4日)とありました。「成果」って誰の評価ですか。「決定打欠く」は、野党はくだらないという印象を強める言葉です。

野党も権力監視を

 また報道は「権力監視のため」といいますが、権力監視の役割を担うのは報道だけではありません。野党も権力監視をしている。その内容を伝えていますか。党首に詳しく話を聞いてオピニオン欄に載せてもいいはずです。権力監視のために発信している市民の活動もあまり報じていません。
 国会の質疑でわざと論点をそらす答弁が、私のツイート(18年5月6日)がきっかけで「ご飯論法」として話題になりました。「朝ごはんは食べなかったんですか?」という質問に「ご飯は食べませんでした」と答え、パンを食べたことは黙って隠す答弁の仕方です。
 こうしたやり取りをどう報じたらよいか。首相は「ご飯は食べなかった」と述べるにとどめた、と書くとする。とどめるって、そのほかに何があるのか不明です。首相は「ご飯は食べなかった」と答弁し、パンについては言及を避けた、ならわかりやすくなります。

勝手に既成事実化

 決まっていないことをメディアが既成事実にしてしまう例が、東京五輪組織委員会の会長人事でありました。森喜朗会長が女性蔑視発言で辞任(21年2月)した際、各紙は「後任に川淵氏」「川淵氏を後任指名」などと報じました。森氏の指名により、川淵三郎氏が次期会長に決まったかのような報道で、ジャーナリストの江川紹子さんはツイッターで疑問を示しました。
 森氏が指名しても、理事会で決めなければ人事は確定しないと記事では説明しますが、末尾で「後を託す形となった」「禅譲劇もまた『密室』で幕を閉じた」と結び、記者が幕を閉じてしまっています。でも川淵さんは会長になりませんでした。
 ここで言いたいのは、政治は津波とは違うということです。津波は押しとどめられませんが、政治の津波は報じ方次第で、世の中の人々の行動によって、止められます。そこで大事になるのがタイミングをとらえた問題提起です。

 2020年5月、「#検察庁法改正案に抗議します」という笛美さんの声がツイッター上で広がり、500万回以上ツイートされました。「文春砲」の報道とも重なり、法案は見送られました。
事態の進行中に、読者・視聴者が問題を理解し、関与できる報道のあり方をもっと工夫してほしい。適切な見出し、一目でわかるインフォグラフィックス(情報の視覚的表現)など考えていただきたい。国会の本会議で法案が通る直前に問題点を報道してもタイミングが遅く、事態を変えることはできません。
 「野党は反発」という書き方も矮小化した表現です。誰がなぜ批判しているのか、その様子をきちっと伝えれば、世の中も反応します。「国会は茶番」と語られ、国会質疑は無意味だと人々が見るようになれば、喜ぶのは政府でしょう。人々の判断力を信頼し、それに資する報道を期待したいです。  
須貝道雄
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
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2022年11月20日

【今週の風考計】11.20─いま目が離せない永田町とドーハで起きていること

補正予算29兆円に膨張
今週から12月初めにかけて、永田町とドーハに釘付けになる。一つは日本の国会の動きだ。二つはカタールでのサッカーW杯である。
 まず日本では、10月の消費者物価が3.6%上昇、40年半ぶりの歴史的な上昇幅となった。国民の悲鳴は日増しに高まるばかり。東南アジア歴訪を終えた岸田首相は、支持率30%台が続くなか、寺田稔総務相の「政治とカネ」疑惑が深まり更迭の決断が迫られる。
さらに国会では21日から第2次補正予算案の審議に入る。その歳出総額29兆円。その財源は約8割を新規発行の国債22兆8520億円で賄う。今年度の新規国債発行は62兆4789億円に膨らみ、22年度末には発行残高1042兆4千億円となる。
とりわけ今度の補正予算で組まれた防衛費は、鹿児島県の馬毛島基地整備・地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の維持費など4464億円が新たに計上された。補正は突発的な災害や不況対策で組まれるもので、その財政規律を無視して防衛費を積み増し。防衛費は当初予算と合わせ5兆8469億円に膨張した。
 しかもその財源を、さらなる増税、すなわち復興特別税の援用や消費税・法人税などのアップで賄うというのだから、国民が怒るのも無理はない。国会での討論から目を離せない。

カタールW杯の陰で
もう一つは、4年に1度のサッカーW杯である。カタールの5都市8競技場で開幕した。国土は秋田県ほどしかない小国に120万人が訪れ、世界で50億人がTVで視聴する。
 筆者も日本チームの活躍を願い、29年前の<ドーハの悲劇>を払拭する勝利に向け、ワクワク・ハラハラだ。だがW杯カタール大会には深刻な問題が潜在しているのを、これまた忘れてはならない。
人口約250万人のカタールは急速な経済成長を遂げてきた。それは豊富な天然ガスと人口の9割を占める南アジアやアフリカからの移民労働者の低賃金によるものだ。
実際、40度Cを超える熱暑のカタールがW杯開催地と決まった2010年12月以降、砂漠地に44兆円もの巨額な経費を投入し、空港や地下鉄、スポーツ施設を急ぎ造るため移民労働者が動員された。
 炎天下、低賃金で働かされているW杯スタジアムの工事現場は「地獄のような環境」で、まさに奴隷労働に等しいと告発されている。
 これまで移民労働者を監視するため、転職や出国の管理規制制度まで設けていたが、国際的な批判を受けて2年前から転職の自由を認め、最低賃金制度を導入した。

共通する「生活と人権」に思いを
しかし英紙ガーディアンが、「W杯の開催決定後、6751人の移民労働者が死亡」と報道し、W杯参加国からボイコットの動きすら出るに及び、カタール側は「W杯関連で亡くなった労働者は会場建設に携わった3人」と反論、さらに<スポーツと政治>の分離を持ち出し、沈静化を図っている。
 それにしても隠し切れない過酷な実態に、欧州サッカーチームの主将らが彼らへの未払い賃金の支給やLGBTQ支援に向けての行動計画など、非難や抗議活動を加速させている。
 14日には数千人の移民労働者がドーハで集会を開催した。19日には英国にあるカタール大使館付近で、人権団体による大規模なデモも行われるという。
こうしてみると、永田町もカタールも国民生活や人権にかかわる重要なテーマが、同時に俎上に載っているのを痛感する。ボールにばかり目がいけば、チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱られそうだ。(2022/11/20)
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2022年11月19日

【おすすめ本】永田豊隆「妻はサバイバー」―「底つき体験」は死を招く 精神科医療の無力告発=松本俊彦(精神科医師)

 これを書く前にAmazonの書評に目を通したら気になるコメントが目に入った。曰く、「著者は振り回されている。イネイブリング(尻拭い行動)をやめて離婚し、奥さんに底つき体験をさせるべきだった……云々」。
 アホか、と思った。本書でも、「精神科に最も偏見が強いのは精神科以外の医療者」とあったが、このコメントもその類いだ。ハンパな知識に知ったかぶりは有害だ。
 確かに一昔前まで、「底つき体験」は依存症支援のキーワードだった。本人を突き放して痛い目に遭わせるのが断酒の第一歩――もちろん、それでうまくいく人もいるが、突き放したら死んでしまう人もいるのだ。生きるための断酒なのに、死んでしまうなんて、まさに本末転倒ではないか。
 なかでもトラウマを抱えている人は難しい。幼少時の虐待や性暴力被害は、人に無力感と、底が抜けたような自己無価値感を植えつける。そのような人にとって、大酒や過食・嘔吐は、短期的には延命効果がある。一時的に苦痛から意識を逸らし、「鎮痛」し、正気を取り戻させてくれる。だから、誰もその行動の良し悪しを裁けない。
 依存症治療に携わる者で、本書を読んで胸が痛まない人などいないはずだ。強制入院は本人には外傷的な体験となるが、さりとて苦悩する家族を見過ごすこともできない。本人の納得と家族の安寧――どちらのための医療なのか。そもそも、「心の医療」を謳う精神科医療には、患者のトラウマの傷を癒やせるだけの術があるのか。
 本書は、単なる夫婦愛の物語ではない。精神科医療の無力を告発し、叱咤激励する書なのだ。(朝日新聞出版1400円)

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2022年11月18日

【寄稿】無理に無理を重ねた国葬 広がる反対 はりぼて°V式 メディアは検証続けて=永田浩三さん 

 どの世論調査でも6割以上の人々が「反対」だったにもかかわらず、儀式は強行された。だが6000人の招待者の4割は欠席した。
 9月27日の同じ時刻、国会議事堂前に抗議のために結集した市民は15000人に上った。
 反対の声が顕著になったのは、8月16日の新宿西口での集会の頃からだろうか。鎌田慧さん、落合恵子さん、前川喜平さん、わたしもいた。新宿の街をデモする私たちを見つめる表情は共感にあふれていた。それから1か月半、人々の怒りは各地で膨れ上がった。

 安倍氏が殺害されたのは7月8日。長年被害に苦しんできた統一教会信者二世の銃弾に倒れた。以来、安倍氏を頂点とした自民党政治家と統一教会との深い関係が、次々に明らかになっていく。民放のワイドショーだけでなく、いつもは高齢者の健康や金の記事であふれる週刊誌も競うように問題を取り上げた。読売テレビ『ミヤネ屋』は、統一教会の被害について長年取り組んできたジャーナリストや弁護士を連日スタジオに呼び、ことの重大さを知らしめた。

 国葬とは、天皇が臣下の軍人や政治家の功労を称える、統治のための装置。平等や思想信条の自由を謳う日本国憲法の精神にそぐわず、法的な根拠すらない。
モリカケ桜だけでなく、統一教会というさらなる闇。それを知った国民の半分以上が国葬に反対する中、大手メディアが何事もないかのように参列してよいのか。

 9月18日、マスコミ人の有志たちは、在京新聞とNHKとキー局に対して、国葬参加の有無とその理由の説明を求めるネット署名を始めた。呼びかけ人にはわたしも参加した。
 初日の署名はわずか500。だが3日目は一気に29000に増え、5日目の締め切り時点で40745筆に達した。それを各社に送り返事を求めた。回答したのは毎日新聞のみ。「毎日新聞社は社長以下の役員や編集幹部の参列を見合わせます。ただし不幸な事件で殺害された安倍元首相への弔意を否定するものではなく、社長室次長と東京本社代表室長が参列します。また、本社会長は日本新聞協会会長を務めていることから参列する予定」とあった。

 他社はどうだったのか。欠席したのは朝日新聞と中日・東京新聞。テレビ局はNHKを含めて在京キー局は出席した。視聴者に向き合う誠実な態度と言えるのだろうか。
 27日の当日、わたしは大学のゼミがびっしり詰まっており、国会前にたどり着いたのは17時前。議事堂の前には集会の余韻が残っていた。
 この日、テレビはどのように伝えたのか、録画しておいたものを深夜に点検した。
 JCJが編集した『マスコミ黒書』によれば、1967年の「吉田国葬」では、フジテレビが13時間1分、NHK総合は5時間35分。各社故人を顕彰する特集番組を多く並べた。
 だが今回はそこまで追悼一色とはならなかった。視聴者からの批判を気にしたからだろうか。NHKは13時45分から放送を始めたが、反対集会をしっかり紹介し、世論調査の結果やモリカケ桜・統一教会問題についても伝えた。
 肝心の国葬中継はどうだったのか。わたしはスタジオ番組を多く経験したが、看板や祭壇は、安手でペラペラな感じが漂う。武道館で流された「故人を偲ぶビデオ」。安倍氏本人が弾くピアノに合わせて、震災復興に尽力し外交で成果をあげたことが称えられていた。NHKは丸ごと紹介したが、映像は政府がつくったものでNHKは関係ないことを明言するクレジットが表示されていた。

 岸田首相の言葉は何一つ響かなかった。おっと思ったのは、友人代表・菅義偉前首相の弔辞だった。安倍氏の机に一冊の本が置かれており、開いたページには伊藤博文を失った山縣有朋が、故人を詠んだ短歌があったとして、二度その歌を読み上げた。いつもの菅氏に似つかわしくないウエットな言葉。
 国葬から4日後、「リテラ」が、このくだりは当の安倍氏がJR東海・葛西敬之会長を送った弔辞の一節だったことを明らかにし、「日刊ゲンダイ」も大きく取り上げた。
 菅氏やスピーチライターは安倍氏の弔辞があることを知りながら、何事もないように流用したのか。批判が集まり世間が注視する中での堂々たるコピペ。安倍・菅・岸田3代にわたる政権がいかにはりぼてかを物語る。
 無理に無理を重ねた「国葬儀」。メディアは顕彰ではなく検証を続けてほしい。
  永田浩三
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
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2022年11月17日

【沖縄リポート】座り込み3千日で「日中友好」発信=浦島悦子

 9月29日、新基地建設反対の座り込みが続く辺野古ゲート前(1週間前の9月22日で座り込み3000日を迎えた)から「日中友好・不再戦」が発信された。
  この日は、1972年、当時の田中角栄首相と中国の周恩来総理の「日中共同声明」による国交正常化から50周年の節目の日。弁護士として中国人強制連行補償裁判に取り組んだ経験を持ち、東京から定期的に辺野古座り込みに参加している内田雅敏氏がゲート前テントでミニ講演を行い、日中共同声明以降の50年間に両国の間で交わされてきた4つの基本文書などについて説明し、これら積み上げられてきた「平和資源」を外交に活かすべきだと述べた。
  その後、参加者たちは新基地建設の資機材が搬入されるゲートに座り込み、「日中友好・不再戦、辺野古新基地建設反対」の横断幕を掲げ、中国とも、どこの国とも戦争しないという意思を改めて示し、声を上げた。「中国の脅威」や「台湾有事」が声高に叫ばれ、南西諸島の軍事化・ミサイル基地化が進んでいるのは政治・外交の不在に他ならない。不戦を願う市民の声が中国に、米国に届くことを祈った。

 その2日後の10月1日、コロナ禍により中断されていたゲート前県民集会(毎月第1土曜日)が4か月ぶりに行われ750人が参加したが、ここでも前記横断幕が掲げられた。
  県民集会には、9月11日の県知事選で再選を果たした玉城デニー知事が参加し、知事選で示された県民の辺野古反対の意思を受け、絶対に基地は造らせない決意を語った。前日9月30日に県が起こした「(県の設計変更不承認を取り消した国交省の裁決に対する)抗告訴訟」について、不承認は間違っておらず国の裁決は無効だと訴えると、参加者たちは一斉に「不承認支持」のプラカードを掲げて知事を激励した。
  私も発言者の1人として、同様の内容で地域住民の立場からも訴訟を提起したこと、県と一体となって取り組む決意を述べた。   
 浦島悦子
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
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2022年11月15日

【お知らせ】夏のジャーナリスト講座終わる テーマを持ち続けて 問題解決できた事例も=須貝道雄

 JCJ夏のジャーナリスト講座は9月10日、朝日新聞福島総局の滝口信之記者を講師に迎え、「福島を取材する」の題でオンライン開催した。
 滝口記者は福島県出身で2014年に朝日新聞に入社。故郷で起きた原発事故に関する取材が将来の目標だった。大津、千葉、東京本社社会部と異動し、その間は警察取材に全力をあげた。「いつかは福島で取材したい。そのためには目の前の事件取材で力をつけ、認めてもらうことが第一」と考えた。
 一方で、関心あるテーマの「福島」「沖縄」について、警察を回りながら、機会を見つけて取材した。「原発事故からの避難者は各地どこにでもいる。その集まりなどに出かけ、記事にした」。千葉時代には沖縄のメディアで働く千葉県出身記者を訪ね歩いた。松戸市で育ち、琉球朝日放送で活躍したフリージャーナリスト、三上智恵さんにインタビューもした。「やりたいテーマにこだわりを持ち続けることが大事」と語った。
 
最終講座は対談
豊富な経験語る

 講座最終回の9月17日はフリージャーナリストの幸田泉さん(大阪)と宮崎園子さん(広島)の対談。二人とも元全国紙記者で、経験を積んだ立場から「報道の意味・役割」を考察してもらった。
幸田さんは広島支局時代の話をした。取材後に、帰る車を運転しながら大粒の涙を流したという。被爆資料として知られる「滋君の弁当箱」のことだ。
 1993年に米国スミソニアン博物館から弁当箱の貸与依頼が来ていた。広島の原爆資料館は反対があるからと貸与を拒否した。「なんで?」と思った幸田さんはだれが拒否しているのか、資料館に尋ねた。それは86歳になる滋君の母親だった。車で母親宅に向かった。
 爆心地近く、弁当箱は白骨化した滋君のおなかに抱え込まれていた。中身は黒焦げ。「最後に弁当も食べられんと殺された」と話す母親。「見世物にするのはやめて」と言った。こうした複雑な思いを持ちつつ、遺族は遺品を原爆資料館に寄せている。記事にすると、学校の教材に使いたい、俳句を詠んだなど大きな反響があった。
 「記者は問題提起はできても、問題解決はできないのでは?」という問いが受講生からあった。宮崎園子さんは朝日新聞記者時代に大阪で書いた記事を「小さな問題解決の例」として紹介した。
 2011年にテレビの地デジ化が実施された時だ。大阪・あいりん地区の公園にあった街頭テレビが見れなくなると心配された。ビール片手に阪神戦を見るのを楽しみにしている「おっちゃんたち」はどうなるのか。
 宮崎さんはテレビを管理する西成警察署などを取材し、困っていることを記事にした。すると警察署に現金6万円が届いた。他にも寄付が20件以上集まり、地デジ対応テレビを置くことができた。「問題提起が出発点となり、困りごとの解決につながる」と宮崎さんは話した。
  須貝道雄
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
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2022年11月14日

【出版界の動き】この秋、予断を許さない多様な事態が…=出版部会

●22年9月の出版物販売金額1051億円(前年比4.6%減)、書籍635億円(同3.7%減)、雑誌416億円(同6.0%減)。月刊誌353億円(同5.2%減)、週刊誌62億円(同10.5%減)。返品率は書籍30.9%、雑誌39.4%、月刊誌38.4%、週刊誌44.7%。

●KADOKAWA元会長・角川歴彦被告が取締役を11/5に辞任。「当社の社会的信用に影響を与えた責任は重い」との社長コメントがあるが、五輪汚職の影響は大きく、イベント運営事業などのキャンセルを含め数億円の逸失が出る見通しだ。
しかし全体の業績は好調で、中間期の売上高1226億円(前年比17%増)、純利益105億円(同48%増)。ゲーム事業の売上高171億円(同350%増)。

●日販グループの文教堂および精文館書店の利益が激減。文教堂は営業利益5200万円(前年比85.7%減)。精文館書店の営業利益5200万円(前年比12.6%減)、当期純利益8100万円(同80.2%減)。来年度も回復の見込みは立たず。

●ハロウインで賑わった渋谷の顔「ジュンク堂書店」が、12年がたつ2023年1月末に閉店する。 インターネットの隆盛と比例するように、“紙媒体”の雑誌・書籍の売れ行きが減少し、2020年の出版物販売額1兆2,237億円、最盛期での26年前(1996年)の半分に落ち込んでいる。書店数も2000年の2万1495店が、2020年には1万1024店舗に減少。全国1718市区町村のうち、22.8%にあたる392の市町村に書店がない。

●10/29〜30に3年ぶり開催の「神保町ブックフェスティバル」に10万人が来場。出版社など約130台のワゴンが出展し、バーゲンブックの売行きが好調。神保町三井ビルの公開空地での「こどもの本広場」も盛況だった。2日間の総売り上げは6340万円。

●書店議連が来年5月までに、街の書店を維持・継続するための提言書をとりまとめる。また議連の名称を「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」に変更。この議連には現在、145人の議員が所属している。ICタグを活用した「国の補助によるDXモデル事業の創設」や諸外国に倣った「書店産業への助成」などの検討を求めている。

●書名に「9割」の文字を付けた本が、通称「9割本」が書店を席巻している。昨年には『人は話し方が9割』がベストセラーとなり、今年の1月には累計発行部数100万冊を突破。今やあらゆるジャンルから「9割本」が出版されている。
2000年代前半までは年に1〜3冊程度が、後半には年30冊。2014年には90冊、その後も年間60〜70冊前後で推移している。人の心理や思い込みをついて、「9割だから正しい」とする押し付けが怖い。いまや2冊並べて「18割」ジョークも出る始末だ。

●講談社と共同通信のコラボで、清武英利氏が執筆する初の歴史大河小説『青鞜の男』を、「デーリー東北新聞」に11/1から約1年連載。各地方紙にも順次掲載する。書籍化は2024年以降の予定。
出版部会
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2022年11月13日

【今週の風考計】11.13─奄美から与那国を覆う日米共同・軍事演習10日間の怖さ

「キーン・ソード23」
★最大規模の日米共同・統合実動演習「キーン・ソード23」が始まった。日本の陸・海・空3自衛隊と米軍が、中国からの「武力攻撃事態」を想定し、沖縄南西諸島を舞台にして、10日から19日まで10日間、実弾射撃演習や補給などの後方支援を含む共同演習が展開されている。弾道ミサイル発射への対処や宇宙、サイバー、電磁波領域での作戦も訓練する。
★この演習には、自衛隊から2万6千人・艦艇20隻・航空機250機が参加。米軍も1万人・艦艇10隻・航空機120機、さらに米軍宇宙軍も加わる。またオーストラリア軍から艦艇1隻とP-8A哨戒機1機、カナダ軍から艦艇2隻とCP-140哨戒機1機が参加する。
★沖縄では、県内にある自衛隊駐屯地・米軍基地に配備された軍備一式のみならず、本土の各地にある自衛隊や米軍の陸・海・空の軍備品が数多く沖縄島しょに運び込まれている。まさに奄美諸島から与那国島まで、南西諸島全体が戦争体制に組み込まれたような事態が広がる。
 「本土決戦」に備えるための捨て石にされた、77年前の「沖縄戦」を思い起こさずにはいられない。

本土の軍備一式が沖縄へ
★鹿児島県・奄美大島では自衛隊の地対艦誘導弾と米軍の高機動ロケット砲システムを組み合わせた訓練を行い、徳之島では南西諸島で初めて日米のオスプレイ連携の実習に入る。
 また防衛省はチャーターした民間船「はくおう」を使い、鹿児島港で自衛隊員や車両73台を登載し、奄美大島の名瀬港を経て沖縄・中城湾港の西埠頭に運び込んだ。沖縄に運ばれた車両は、国道58号など一般道を使い、陸自の那覇駐屯地などへ輸送される様子が確認されている。地対空誘導弾パトリオット(PAC3)に関連した車両も運搬されたという。
★米軍も負けずにアラスカ空軍基地所属のF22Aラプターステルス戦闘機6機を、米空軍嘉手納基地に着陸させ、巡回配備を計14機に増強して軍事演習「キーン・ソード23」に備える。在沖米海兵隊も陸上自衛隊の水陸機動団と共同で訓練する。
 那覇軍港に船で陸揚げされた米海兵隊のMV22オスプレイ3機は、米軍普天間飛行場に移動し準備を整える。米空軍輸送機C17で自衛隊の中距離地対空ミサイルを発射地点に運搬する訓練も、嘉手納基地や東京の横田基地で行う。

「沖縄戦」の悲劇を繰り返すな
★「キーン・ソード23」の最終盤には、陸上自衛隊の16式機動戦闘車(MCV)を、C2輸送機で福岡・築城基地から那覇空港を経て、台湾に近い与那国駐屯地まで運び込むという。しかも与那国町の一般道路を使っての走行訓練も行う。このMCVは105ミリ砲を登載した最新鋭の装輪装甲車である。
 与那国島での戦闘を想定しているかのような日米軍事演習を活発化させれば、米中対立の火種となる台湾情勢を刺激するのは間違いない。
★改めて言おう。あの「沖縄戦」を繰り返してはならない。一度、ネットを開いて「キーン・ソード23」と入れて検索し、そこにある<「キーン・ソード23」の画像をすべて見る>をクリックすれば、ずらっと並ぶ画像に背筋が寒くなる。自衛隊・米軍が運び込んだ「敵基地攻撃能力」を持つ、陸・海・空3軍の実態が掴め、その怖さが一気に迫ってくる。(2022/11/13)
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2022年11月12日

【焦点】新法 今国会で成立見通し フリーランスは本当に保護されるのか 実効性の確保が問題 公取委など官庁連携も必要=橋詰雅博

  出版、IT、メディア、スポーツ、広報、運送、芸能などさまざまな分野で仕事するフリーランスが安定して働けるという新法律「フリーランス保護法案」が臨時国会の会期末12月10日までに成立する見通しだ。

多い泣き寝入り

 日本でも462万人と急増するフリーランスが、報酬の支払い遅延、突然の契約解除、一方的な仕事の内容の変更などで泣き寝入りするケースが増えている。トラブル防止をめざす法案には、これまで資本金1千万円を超える企業に適用されていた下請法(代金の支払い遅延や代金の買いたたきなどの禁止、申告された違反者への指導・勧告など)を、フリーランスと取引が多い資本金1千万円以下の企業にも適用に加えて新たにハラスメント対策などが盛り込まれた。

下請法と保護法案が発注者に義務付けた取引の適正化に関する主な中身は次の通り。
▼業務委託する際、仕事の内容、納期、報酬額、報酬の支払い時期
など8項目を記した書面の交付あるいはメールをする。
▼中途解約または契約期間更新しない場合、30日前に予告。
▼報酬は仕事が完了した日から60日以内に支払う。
▼報酬減額、返品、不当に低い報酬、指定する物の購入強制、報酬内容の変更などの禁止。
 この取引の適正化に関し下請法の対象外の企業も、法制化により違反すれば指導、勧告、公表などが行われる。フリーランスも国に違反申告ができ、それを理由に契約解除はされない。

 新たに加わる発注者が取り組むべき就業環境の整備の内容は@ハラスメント行為について、適切に対応するため体制の整備、その他の必要な措置を講じる、
Aフリーランスの申し出に応じ、出産・育児・介護と仕事の両立との観点から必要な配慮をする。
ようやく着手されたこの新法案で不安定な立場のフリーランスは本当に保護されるだろうか。

守る姿勢と問題点

  厚生労働省などに新法案について要望を提示してきた日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)フリーランス連絡会の北健一氏は「下請法の全企業への適用と、就業環境整備からなる法案は十分な内容ではないが、フリーランスを守る姿勢が示された」と評価した。
 一方では問題もある。
 「保護法が成立しても守らない企業が出てきます。それを防ぐには実効性の確保が重要なポイントです。法案にはどの官庁が違反した発注者の指導、勧告、公表を行うのかは明示されていません。下請法の監督官庁は公正取引委員会ですが、地方に7カ所の拠点しかなく、マンパワーも不足しています。全国に拠点がある労働基準法違反を調べる労働基準監督署と比べると規模が小さい。保護法も公取委が担当となると、労基署のように広範な指導、勧告などができる体制になっていません。これでは違反する企業を防止できませんので、公取委の増員を内閣官房(首相の補佐・支援が役目)にMICは要望しています」(北氏)
  保護法の実効性を高めるため北氏はこんな提案をする。
 「厚労省が所管し、東京第二弁護士会が運営する常設の『フリーランス110番』(20年11月に開設)との連携は有効だと思います。フリーランスから電話やメールで毎月300から500件相談を受け、弁護士が和解あっせんにも取り組んでいます。公取委と厚労省の連携でこのような110番システムを地方に展開すれば、保護法の実効性がアップするのではないでしょうか」
 雇用契約を結んでいないので労働基準法の適用外のフリーランスは労働者に該当しない。しかし個人事業主とはいえ生身の労働者であることに変わらない。北氏は「今回のような取引ルールに加えてけがや病気のときなどカバーしてもらえる労働法的な保護の拡張も検討してほしい」と政府に要望する。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
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2022年11月11日

【月刊マスコミ評・新聞】岸田政権 原発回帰を鮮明に= 山田明

 憲法違反の安倍元首相「国葬」が国民の批判が渦巻くなかで強行された。自衛隊が目立ち、「アベ政治」を賛美する弔辞が国葬を象徴する。国葬後も「評価せず」が59%。岸田内閣の支持率低下が続き、不支持が初めて半数に達した(朝日10月3日)。
  これは国葬強行だけでなく、旧統一教会と自民党との関係が影響している。とりわけ安倍元首相と安倍派の議員らは、教会による選挙支援を含め深刻なものがある。岸田首相の対応にも批判が集まる。政治の信頼を取り戻すためにも、国会での真相究明が待たれる。
 円安が続き、物価高に拍車がかかる。実質賃金が低下する中での値上げラッシュで、低所得層ほど生活が苦しくなる。止まらない円安は、アベノミクス離れができないためだ。岸田首相の経済政策に期待できないが7割にのぼる。一方で、政府は防衛費の相当の増額を検討する。北朝鮮による弾道ミサイル日本上空通過が防衛強化の「追い風」との声も漏れてくる。
  岸田首相は8月下旬、原発の新増設や建て替えについて検討を進める考えを示した。運転期間の延長も検討する方針だ。原発回帰は岸田政権の既定路線だが(毎日9月6日)、ウクライナ戦争で露わになった原発リスクをどう考えているのか。
 日経は9月26日、エネルギー・環境緊急提言を公表し「原発、国主導で再構築を」と述べる。緊急提言は気候危機・再エネだけでなく、政府の原発回帰に呼応した動きでないか。8月18日社説「原発新増設へ明確な方針打ち出せ」で、岸田発言につながる主張をしている。経団連も原発再稼働を評価している。福島原発事故から11年半経つが、原発をめぐる動きから目が離せない。
  地域からも問題に迫りたい。IRカジノ計画案が大阪と長崎から申請され、国交省で審査されている。大阪ではIRカジノの是非を問う住民投票を求める直接請求署名が20万筆近く集まったが、大阪府議会で維新などにより否決された。その後も、国が計画を認可しないことを求める大行動が東京で行われた。国会での追及も期待したい。
  大阪では、「夢洲IRカジノ誘致差止め訴訟」にも注目が集まる。国ととともに、地方自治体の行政のあり方が鋭く問われている。   
  山田明
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
 




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2022年11月09日

【月刊マスコミ評・出版】右派メディアのアベ礼賛祭り=荒屋敷 宏

  統一教会をめぐる『週刊東洋経済』10月8日号と月刊『マスコミ市民』10月号の勇気ある編集に敬意を表したい。「宗教 カネと政治」で37ページにわたり特集を組んだ『週刊東洋経済』の読みどころは、統一教会と関係の深い企業一覧だろう。鮮魚・飲料・置き薬・自動車学校・病院・学習塾…と超多角化経営だ。
 外国語教室を営む統一教会関連企業は伊藤忠商事、三菱商事、日本生命保険、電通、三菱UFJ銀行、JR東日本の研修実績があると宣伝している。文化庁が宗教法人と交わした「裏約束」、「LGBTたたき」で一致する統一教会と神社本庁などスクープ満載である。
 特集「統一教会と自民党」で事の真相に迫る『マスコミ市民』の島薗進、有田芳生、前川喜平、山口広の各氏へのインタビューは、読み応えがある。島薗氏は、日本からカネを収奪する統一教会を右派メディアが批判できない弱点を突き、月刊『Hanada』や月刊『WiLL』などの雑誌について「困惑していると思います」と指摘している。
 右派雑誌の代表ともいえる『Hanada』『WiLL』『正論』は事件後、故安倍晋三元首相を礼賛する特集を掲載し続けている。『Hanada』11月号には「国葬」で開き直る岸田文雄首相と小川榮太郎氏の対談をはじめ、「国葬」反対派は“極左暴力集団”との虚偽を意図的に流した有本香氏、反安倍の国民を「アベガー教」のカルトだと攻撃する藤原かずえ氏、『WiLL』11月号にはアベガーの俗論を徹底粉砕としつつ「旧統一教会の実態は、私は専門家ではないし、わかりません」と腰の引けた阿比留瑠比氏など、確かに、統一教会への困惑を隠せない様子だ。
 なかでも『正論』11月号では、岩田清文元陸上幕僚長と島田和久元総理秘書官・前防衛事務次官が対談し、かつて最高指揮官だった安倍氏を追悼している。防衛省・自衛隊にとっての安倍氏の役割を絶賛し、自衛隊を憲法に書き込む「憲法改正」が心残りだったのではないかと偲んでいる。一方で、かつて吉田茂元首相が自衛隊を「日陰者」と呼んだことへの不満を表明している。そのうえで、安倍氏は、吉田氏の「軽武装経済重視」を改めようとしたのだと結論づけている。戦後、「国葬」となった2人の元首相に対する元防衛省関係者の、この態度の違いは何か。「国葬」賛成雑誌の軍国主義礼賛の本音も透けて見えてくるのである。 
 荒屋敷 宏
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号

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2022年11月08日

【リレー時評】ミサイル攻撃 地下鉄に逃げよ!=中村梧郎(JCJ代表委員)

  9月3日、北朝鮮が弾道弾を発射した。グアムの米軍基地も射程内とのシグナルだ。日本は上空通過時にJアラートを発令し新幹線を止めた。遅く無意味な警報だった。
  岸田首相は国家安保戦略の改定と、防衛費の倍増を何度も言ってきた。その主たる標的は北朝鮮でなく中国である。
 北が発射する半月も前、朝日新聞は「ミサイル攻撃に備えて日本の地下鉄駅を避難壕に改造(9月⒛日付)」との記事を載せていた。対中シフトである。その概略はこうだ。「…学校などが有事の避難先とされたが地下鉄は対象外だった。ウクライナにならい住民の避難場所を確保する。東京都は5月、新たに105の地下駅、大阪は108か所を指定した…」
 ミサイルには本来、核弾頭がつく。退避壕は地下深くなければならない。敵基地攻撃能力や核兵器共有論が叫ばれる今、日本もついに臨戦態勢か、と気付かせる不気味な記事である。なんと首都も標的になることが前提となっている。同じ日、事態の重さを見なかったのか他紙は報じていない。
  ニューヨークを歩くと、建物の壁に三枚葉の放射線標識が時々見つかる。核シェルタ―の表示だ。
  冷戦時代、核戦争が起きてもシェルターに逃げれば安全とされた代物である。その地下壕に入ってみた。かび臭い密閉空間。放射能塵は入らないが換気扇がある。水と食料はひと月分。連絡は電話、との話であった。

 これで核から身を守れるのか。電源喪失で冷蔵庫も換気扇も使えない。酸欠はどうする。運よく一週間で出られても地表は放射能に満ちている。インフラが全壊し、飲食もできない空間でヒトはどう生きるのか。眉に唾を付けつつシェルターを眺めたものだった。
 ロシアもウクライナも地下鉄は核戦争を前提に造った。100m以上の深度で爆発には耐える。だがニューヨーク同様、当初は生きられても後の保証がない。放射線を侮ったか、または無知なのか。
 台湾有事が身近な話となった。米国は挑発を続け、中国は怒る。問題は昨年、安倍元首相が「台湾有事は日本有事」と言ったことだ。勃発なら兵を送り、敵基地にミサイルを撃ちこむのだろうか。南西諸島へのミサイル配備が進んでいる。反撃されれば日本列島は廃墟と化す。
 安倍氏が遺した負の遺産は、カルトとの癒着を筆頭に、軍事でも経済でも数え切れないほどだ。やはり知らぬ間に臨戦態勢が整えられてきたとみるしかない。
 日本の地下駅はどこも浅い地層にある。日本一深い大江戸線六本木駅でさえ42mでウクライナの半分以下。有事となればみな瓦礫に埋まる。
 国民はその覚悟を背に地下鉄に逃げよ、ということなのかもしれない。根本的対策は地下への避難ではなく、武力行使をさせない平和外交であるはずなのに。
 中村梧郎
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号


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