2021年12月25日

【総選挙報道・放送】総裁選より軽く扱う 政権総括も政策検討も不十分=今井潤

 今回の総選挙についてテレビは、公職選挙法の縛りを必要以上に意識した報道に終始した。
朝日は10月29日「衆院選控えめなテレビ、総裁選より放送短く」と伝えた。その中で、自民党総裁選と衆院選の放送時間を比較した。NHKと在京5社の総裁選告示と衆院選公示の日とその前後二日ずつを比べると、総裁選は29時間55分だったのに対し、衆院選は25時間52分だった。衆院選の方が4時間短かった。テーマを自由に取り上げ易い情報番組などでは総裁選が14時間31分に対し衆院選が8時間25分と差が広がった。「放送を語る会」が行った衆院選のテレビ報道モニターにも選挙報道が不十分だったという報告が届いている。放送時間が足りない

 放送時間足りず
 10月14日衆議院解散当日のNHK「ニュースウオッチ9」は、解散を21分間放送したが、安倍・菅政権の総括をする選挙だという位置づけをせず、野党の政策も説明不足だった。街頭インタビューでは「政治家のための日本でなく、国民全体の日本にしてほしい」と政権に批判的な声を放送したのが目立つ位だった。
 TBS「NEWS23」は10月26日、「同性婚」の問題を取り上げ、星コメンテーターが「選挙で争点になるのは初めて」と指摘。「自分らしく生きていける社会を望む」と街の声を伝えた。同番組は27日も、野党共闘の象徴区である東京5区を取り上げたが、候補者の政策や有権者の
声をもっと時間をかけて報道すべきだ、野党共闘の意義を分析すべきだとの批判が寄せられた。核心衝く学生の感覚

 核心を衝く感覚
 テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」は10月26日、スタジオに憲法学者の木村草太氏と慶応大学の女子学生を招き、「衆院選争点第5弾」と銘打って、憲法をテーマに掘り下げた。北朝鮮のミサイル発射に対し、敵基地攻撃能力保有は9条との関連で自衛のために許されるのか
を巡って、パネルを使い議論した。羽鳥キャスターが9条の条文を読み上げて、主権国家としては自衛権は認められていると指摘。木村氏は「日本への攻撃の意図がない国を攻撃することは違憲だ」と述べた。慶応大学の学生が「そもそも相手の国と仲良くしよういうゴールをめざして論じることが基本だ」と発言。これを受けてコメンテーターの玉川徹氏は「どうしたら仲良くなれるかというのがゴール。それが平和を願う9条だ」とコメントした。若い人の感覚は極めてシンプルな物言いだが、核心を衝く発言だった。衆院選の争点報道に努力するスタッフの意気込みが伝わってくる番組内容になっている。

 ネット積極報道
  テレビ基幹ニュースの選挙報道が低調な中で、放送法の縛りを受けないネット番組の情報発信が目を惹いた。望月衣塑子・東京新聞記者らが出演する「デモクラシータイムス」、作家の本間龍氏らが出演する「一月万冊」など、多数のユーチューブ番組が情報を連日提供した。
 「毛ば部とる子」という番組はドイツに住む日本の女性ライターが日本政治についてリポートする番組で、維新の躍進について2日、以下のように伝えた。
  議席を4倍化した維新の集票力はどこにあるのか。「維新は大阪市議会、府議会に多数の議員がおり、その議員に一日600本の支持拡大の電話をかけるノルマを課している」とリポート。「維新という政党は風頼みと言うのは間違いで、実態は公明や共産より組織的な活動をする政党だ」と警戒するよう呼びかけた。
 ネット報道への注目度は、来夏の参院選に向けさらに高まりそうだ。
今井潤(放送を語る会)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
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2021年12月24日

【映画の鏡】真の復興問う浪江の現実 『ひとと原発〜失われたふるさと』町民の切なる想い伝える=鈴木賀津彦

原発事故から10年、復興五輪が開かれた今年、福島県浪江町から避難した町民の本音を伝え、真の復興を問う作品として、自主的上映活動が少しずつだが広がっている。
浪江町に通い避難者たちの生活を追い続けた映画監督の板倉真琴さんが、企画から撮影・編集まで一人で取り組んだドキュメンタリーだ。
「悔しい…、原発事故でふるさとを失った浪江町民の多くの方が口にする言葉です。震災から10年が過ぎた今も約95%の住民はふるさとへ戻っていません。帰りたいけど帰れない…、浪江の方たちのお話に耳を傾けるとマスコミ等が伝える復興の姿とはほど遠い現実が見えてきます。ひとにとって、真の復興とは…。この映画は14名の浪江町民の切なる想いがつくった作品」と説明する板倉さん。
津波被害で動けない人たちを救助しようとした朝、原発事故での避難命令は救助に向かう消防団にも。助けられたはずの請戸地区の大勢の命が失われた「請戸の悲劇」のほか、一人ひとりに起きたことを振り返りながら、避難者たちが今の生活の中から語った想いをつないでいく。
板倉さんといえば、富司純子、寺島しのぶが共演して話題になった映画「待合室」の監督。東北の小さな駅の待合室に人知れず置かれた「命のノート」に励ましの返事を書き続ける女性の実話を描いたエンターメント作品だが、作品の位置づけは違っても、監督の視線に不思議な共通性を感じた。
DVDを2000円(送料別)で販売、非営利なら購入したDVDで上映会を実施して、より多くの人に見てもえるよう工夫している。問い合わせは板倉さん=電090(1261)0426。
鈴木賀津彦
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JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
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2021年12月23日

揺らぐ日銀の中立性 徐々に資源配分への介入進める=志田義寧

 日銀は年内に気候変動対応を支援するための資金供給オペを始める。地球温暖化への対応はもはや一刻の猶予も許されず、世界が足並みを揃えて対策を強化することに異論はない。しかし、だ。それは中央銀行がすべきことなのか。
 筆者は昨年までロイター通信で記者をしており、日本語ニュースの経済政策報道を統括する立場だった。日銀キャップを務めた経験もある。その取材経験からすれば、新制度は違和感しかない。
 引っ掛かるのはやはり中立性の問題だ。日銀の金融政策を決定する政策委員は選挙で選ばれたわけではない。したがって、資源配分に手を突っ込むような政策は極力避ける必要がある。黒田東彦総裁は7月に日本記者クラブで行った講演で「市場中立性に配慮し、ミクロの資源配分への具体的な関与を避けながら、金融政策面で気候変動への対応を支援する新たなアプローチだ」と強調したが、直接的な関与は避けても、関与することに変わりはない。
 各紙の扱いは
 これは日銀が業界や企業の生殺与奪権を握りかねない重要な問題である。各紙はこの問題をどのように扱ったのか。
 反対姿勢を明確にしたのは朝日新聞と毎日新聞だ。朝日は新制度の骨子を決めた7月会合の結果を伝える記事で、日銀内にも慎重論があることを紹介。翌18日には天声人語で「議論の分かれるような個別政策は、有権者の選んだ政府が担うのがスジである」と新制度に疑問を呈した。24日の社説でも「本来は、国会での議論を経る財政や政策金融に委ねるべき任務のはずだ」と慎重な見方を繰り返している。
 毎日新聞も9月22日の社説で「脱炭素に向けて産業構造の転換を促すのは本来、中央銀行ではなく政府系金融機関の役割だ」と主張した。
 両紙は新制度だけでなく、黒田氏が総裁になって以降の金融政策に対しても、基本、批判的なスタンスを貫いている。
 これに対して、読売新聞と日本経済新聞は比較的前向きに受け止めているようだ。読売は7月20日の社説で「特定分野に肩入れすると、中央銀行の中立性を損ない、民間の経済活動をゆがめる恐れがあることに留意せねばならない」と警鐘を鳴らしつつも「日銀は、政策の趣旨について丁寧に説明を尽くしてほしい」と要請するにとどめた。一方、日経は7月17日の社説で「中銀としての中立性に配慮しつつ、脱炭素に貢献する折衷案といえる」と一定の理解を示している。
このように新制度に対する評価は割れたが、各紙とも日銀が資源配分に介入することに懸念を示している点では一致している。当然だ。
 国民の知らぬ間に
 日本は何を気候変動対策に貢献する事業とみなすのか、タクソノミー(分類)に関する議論も遅れている。そうした中での導入はやはり時期尚早と言わざるを得ない。
日銀のアンケート調査によると、日銀が2%の物価目標を掲げ、金融緩和を行なっていることを知っている人は2割しかいない。残りは「見聞きしたことはあるが、よく知らない」か「見聞きしたことがない」だ。黒田氏が総裁に就任して以降、国民が知らない間にそろりと新領域に踏み出すことが多くなっており、気がかりでならない。
志田義寧
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号

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2021年12月20日

北海道寿都町 核のごみ最終処分場選定調査が争点 町長選は調査継続派 町議補選で撤回派勝つ=山田寿彦

 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた全国初の文献調査が進む北海道寿都(すっつ)町で10月26日、任期満了に伴う町長選挙が投開票された。文献調査の是非が最大の争点となり、調査継続を訴えた現職の片岡春雄氏(72)が、調査撤回を掲げた元町議の越前谷由樹氏(70)を破り、6選を果たした。得票は片岡氏1135票、越前谷氏900票。投票率は84・07%だった。
 同日行われた町議補欠選挙(改選数1)は両陣営が擁立した新人同士の一騎打ちとなり、越前谷陣営の支援を受けた候補が勝利した。町長選とは逆の結果となり、民意の複雑なねじれを示した。
 文献調査への応募は片岡町長が議会の議決を得ずに独断で決定した。越前谷氏は片岡氏の強引な町政運営により、町民の間に大きな分断が生まれたと批判。片岡氏は文献調査の次の段階となる概要調査に進む前に賛否を問う住民投票を実施すると約束し、町民の意思を尊重して結論を出す姿勢を強調した。
 北海道新聞が報道した出口調査結果によると、町長選に投票した有権者のうち44%が「調査撤回」を支持。「調査継続」に理解を示したのは33%で、撤回派が上回った。
 文献調査は原子力発電環境整備機構(NUMO)により同町など2町村で昨年11月から行われている。調査を受け入れた自治体に国が支給する交付金は周辺自治体分を含め2年間で20億円。同町は今年度、9億2500万円を受け取る。配分を拒否する自治体もあり、自治体間にも分断が生まれている。
山田寿彦(北海道支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
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2021年12月19日

【今週の風考計】12.19─「森友公文書改ざん」裁判に対する卑劣な仕打ち

森友公文書改ざん問題で自死に追い込まれた赤木俊夫さんの国家賠償請求訴訟で、国は急に「認諾」へと舵を切り、1億700万円の賠償金を支払うことで真相究明にフタをした。
 この訴訟裁判は、公文書改ざんの真相を解明するためで、賠償金を目的にしたものではない。1億円以上という高額請求にしたのも、国が裁判での審議を避け「認諾」へ逃げようとするのを防ぐためだった。
妻の赤木雅子さんは、「ふざけるなと思いました。夫は国に殺されて、また何度となく殺されてきましたけど、きょうもまた打ちのめされてしまいました」
 「お金を払えば済む問題じゃないです。私は夫がなぜ死んだのか、何で死ななければならないのか知りたい。そのための裁判でしたので、ふざけんなって思います」と、怒りの声を挙げている。

はっきり言って岸田政権は、安倍晋三・元首相と妻が絡んだ森友問題の「不都合な事実」が暴露されるのを恐れ、「真相」を闇に葬り、安倍夫妻を守ったことに他ならない。こんな卑劣なやり方が、許されていいのか。
 しかも賠償金というが、安倍元首相のみならず、関係した閣僚や官僚は一銭も払わず、1億を超える金額は国民の税金で支払うのだから、開いた口がふさがらない。
 「赤木ファイル」の開示や第三者による再調査は拒否され、いまだに安倍元首相は、改ざんへ至った責任についてはシラを切り、赤木俊夫さん・雅子さんの人権を冒涜し続けてきている。 
だが諦めてはならない。国賠訴訟は終わっても、まだ佐川元理財局長との裁判が残っている。国会も真相解明に力を尽くせ。ましてや野党は、安倍政権時代の「公文書改ざん」を徹底追及し、「第三者による再調査」の実現にむけて全力を挙げるべきだ。

さらに国土交通省が、国の基幹統計の一つである「建設工事受注動態統計」のデータを書き換え、二重計上していた不正問題も、GDPの数値につながる重要統計だけに極めて深刻だ。
 第2次安倍政権下の2013年以降、国交省の官僚自らがデータを改ざん、さらに数値を二重計上までするという、トンデモナイ不正を今年3月まで8年間も続けていたというから驚きだ。
 これも「アベノミクス」の成果を誇るため、GDPを大幅にかさ上げさせる改ざん、すなわち“アベノミクス偽装”ではないかと言われている。

約8年の安倍政権下で繰り広げられた政治の「闇」は深い。<桜を見る会>参加者名簿の廃棄、自衛隊イラク派遣の日程改ざん、2018年末の厚労省「勤労統計」データ偽装など、続発した。
 ここへきて国交省の「建設工事受注統計」データの改ざんまで加わった。さらに国会での<桜を見る会>虚偽答弁は118回にも及び、野党の要求にも関わらず国会を開かす、予算委員会を開けばヤジで応酬するなど、政治の私物化は極まった。
その背景には、<なんでも官邸団>と揶揄されるほど、「一強政治」「官邸支配」がはびこり、安倍元首相への忖度あるいは「アベノミクス」への迎合・配慮が、各省官庁内に陰に陽に働いていたからではないか。
 再度言いたい。野党は「提案型」などと言っている場合ではない。国会で厳しく「真相」を追究し、「迎合・忖度政治」を廃絶しなければダメだ。(2021/12/19)
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2021年12月18日

【スポーツ】揺らぐ競技者の主体性=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の拡大で、2年間に及ぶ異常事態が続いた日本スポーツで、競技者の社会性が揺らいでいる。
 国民の多くが感染爆発を恐れて開催に反対したのに、無観客で隔離された東京五輪の異常開催に意思表明せずに無批判に参加し、総括しないまま、来年の北京冬季五輪出場を目指す日本オリンピック委員会(JOC)と五輪代表は、国民とかけ離れてしまった。
 しかも政府は、北京冬季五輪に関する国連休戦決議に参加せず、米国主導の外交的ボイコットに同調の構えのようだ。五輪を通じて平和を希求するはずのJOCだが、北京冬季五輪で、主体的に、中国を含めた世界の競技者と連帯できるのか。
 競技者が、人種や性の差別に反対する行動で意識変化を起こしながら、競技専念の生活では、国民の支持に不安を感じて不思議はない。しかし、社会活動が制限されて、主体的に動けない。
  政府の規制が長引き、競技者の主体性すら薄れたのではないかと危惧する。主体性の喪失は、社会性の放棄に通じ、国民とともに生きる競技者の存立基盤を失わせる。

  一方で、プロ野球ではヤクルトが20年ぶりに日本一となり、大相撲は記録ずくめの横綱・白鵬が引退し、照ノ富士の一人横綱となった。 日本を代表するプロ競技で、大きな時代変化が起こっている。
 米大リーグで大谷翔平投手が大活躍し、東京五輪ではメダルラッシュだった。その都度、マスメディアは大騒ぎした。しかし、大きな社会的反響は、見出せなかった。
 それだけ、スポーツが「見て面白い」娯楽に閉じ込められて、生活には身近に感じられなくなったからではないか。
 国民の運動不足以上に、豊かな生活に不可欠とされるスポーツに親しむ意識の減退にこそ、コロナ禍の深刻な問題がある。 競技者と国民の溝、スポーツ離れの克服が、スポーツ庁やJOCなどスポーツ関係者とマスメディアに突きつけられた重い課題だ。
 大野晃
   
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2021年12月17日

総選挙SNS発信が力「ヤシノミ作戦」など大きな反響=鈴木賀津彦

                           
ヤシノミ.png

ネット上では今回、ユーチューブの番組などで各党の公約の比較や政策を問う市民団体などの動きが活発になり、当事者からの訴えが急速に広がった。候補の選挙戦にも映像がSNSなどで飛び交い変化が見られたが、市民発の発信が各党を動かすほどの力を持ち始めた選挙になったと言えそうだ。有権者側が動画を使って共感を呼び、コミュニケーションを広げたことで、一部とはいえ成果を上げていることに注目したい。
 コロナ禍でのリモートワークなどでオンライン会議が当たり前になり、ネットの動画が日常になる中での選挙戦。芸能人がSNSで投票を呼び掛ける活動なども話題になったが、選択的夫婦別姓問題では当事者たちからの「落選運動」が起こるなど盛り上がりを見せた。
 共感を呼んだのが「ヤシノミ作戦」と名付けた落選運動で、呼び掛けたのはサイボウズ社長の青野慶久さんら。当事者として訴訟を起こしている青野さんは「選択的夫婦別姓や同性婚など社会の多様性を進めようとしない政治家をヤシの実のように落とそう」とネットで呼び掛けた。与野党の248人をリストアップ、「当選させてはいけない候補者以外に投票しよう」と訴えた。
選挙戦の終盤では、「ヤシノミTV」という討論番組もネット配信し話題に。この取り組みはマスメディアでも取り上げられ、政策を問う他の市民団体のネット番組などからも青野さんへの出演要請が相次ぐなど連携も広がり、選挙結果に一定の影響を与えたようだ。
結果は、同作戦のサイトで「落としたヤシノミ(落選)は84個。落ちたのに復活した(比例復活)のは42個、まったく落ちなかった(当選)のは122個です」と報告している。

 この作戦が、選挙の当落にどれほど影響を与えたのかは見えにくいが、分かりやすいのが最高裁判所裁判官の「国民審査」だ。11人全員が新任されたものの、不信任率が高かったのは、6月の判決で夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定を「合憲」と判断した4人。他の7人が6%台なのに、最も高かった深山卓也は7・9%、次いで林道晴7・7%、岡村和美と長嶺安政が7・3%だった。ヤシノミ作戦のほかネット上では、この4人に「×」を付けるよう呼びかける運動が広がっていた。ツイッターなどでも、4人の名前から「長岡村の林は深い」と覚えて×をつけようと運動化した結果が、7%超となったわけだ。(一方で、選択的夫婦別姓に反対する人たちからは「『違憲』の裁判官に×を」というネットのキャンペーンもあった)
 これを不信任率が1ポイントほど高くなっただけだと過小評価はできないだろう。形骸化が言われてきた国民審査で大きな変化を起こしたのだ。7月の東京都議選でも、選択的夫婦別姓や同性婚に反対する候補が何人も落選したが、今回の衆院選では「多様性」の流れに対応しない議員に対するインパクトのある働きかけとなった。ヤシノミ作戦のウェブサイトには、これまでの番組などが残され、落ちなかった議員たちも無視することができない存在になっており、今後の国会論戦を変えていく起爆剤となったと受け止めている。
 この問題だけでなく、障害者団体などが当事者視点で公開質問状を各党に出して見解を聞き、生活保護や人権問題など個別の政策を問うウェブサイトをつくって、発信していく取り組みなども増えた。
 テレビなどの既存マスメディアが選挙期間中になると、各候補を「公平」に扱うために踏み込んだ政策議論をさけている現状の中で、小さな市民団体や個人であっても、自らの関心ごとを各党・各候補者に問い、ネットで発信していく動きはさらに加速していきそうだ。
 鈴木賀津彦
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
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2021年12月15日

大手メディアは情報ブロックやめよ 政治報道の浮沈にかかわる  神保哲也氏のオンライン講演会=河野慎二

 JCJのオンライン講演会が総選挙投票前日の10月30日に開かれ、ビデオジャーナリストの神保哲生氏と砂川浩慶立教大学教授が「メディアの地殻変動―政治・選挙報道変わるときー」をテーマに論じ合った。
 冒頭、神保氏は、投票率がOECD加盟諸国の中でも異常に低いことについて「主権者が主権行使に資する情報を正確に提供するというメディア最大の責務を、メディア自身が果たしていないからだ」と批判した。
 実際、今回の投票率は小選挙区選で55・93%と戦後3番目の低水準に終わり、テレビの報道も質量ともに低調で、神保氏の指摘が的中した。
 神保氏は「公職選挙法の縛りがあって、公示後は報道が制約される。自由な選挙報道ができるよう公選法改正をすべきだ」と問題提起した。
 脱炭素社会の問題について神保氏は「デンマークは80%が再エネ、ノルウエーでは来年からガソリン車が無くなるなど、ヨーロッパでは再エネが進んでいる。日本はトヨタが強く『EV車にはならない』と平気でメディアに流す」と指摘し、追及が弱いメディアを批判。
 政治とメディアの関係については「日本では政治、経済、行政などの情報については、既存メディアが99・99%のシェア握っている。
 報道の原材料と言うべき大元の情報を手にするのは既存メディアで、私はドアの外で待っている。情報は記者クラブに独占され、大元で栓が閉められ、フィルターがかけられる。そのヤバさを認識してほしい」と強調した。
 メディアは、政府から多くの特権的な地位を得ている。神保氏は「官邸官僚は、メディアの特権享受をテコに、さじ加減をしながら、操作できる。内閣記者会の記者に出させている質問書のテニオハにまで介入する」と、メディアの劣化を厳しく指摘した。
 砂川教授に「メディアの地殻変動」について問われた神保氏は、メディア間の相互批判能力を高めるため、新聞と民放のクロスオーナーシップ(資本提携)の見直しを提唱。さらに「(ネットメディアなど)新しいメディアが登場しているのだから、情報をブロックすることを早くやめてほしい。情報が本当に行き渡るかどうか。ここに、日本の政治報道の浮沈がかかっている。ぜひ、声を大にして言いたい」と訴えた。
河野慎二
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号

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2021年12月14日

【フォトアングル】憲法公布75周年の日 9条守ろうと国会前でスタンディング=酒井憲太郎

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総選挙3日後、憲法公布75周年の日は秋晴れだ。国会正門前では午後1時から、澤地久枝さん呼びかけのスタンディングには「アベスガキシダ政治を許さない」「憲法9条をまもろう」などのプラカードを国会に向けて掲げて140名が参加。続いて、2時から「平和といのちと人権を!!!憲法大行動 憲法公布75年 ともに時代を切り拓こう!」が総がかり行動の主催で開かれ、1200名(オンライン参加を含めると2千名)が参加し、改憲策動を許さない決意を新たにした。=3日、東京・国会正門前、酒井憲太郎撮影
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2021年12月13日

【出版界の動き】女性著者の新鮮な作品が、若い読者の心をひきつける!

10月の出版物販売金額914億円(前年比8.7%減)。書籍514億円(同4.1%減)、雑誌399億円(同14.0%減)、月刊誌332億円(同13.1%減)、週刊誌67億円(同18.2%減)。雑誌のマイナスが大きい。コロナ巣ごもり需要はなくなり、21年の推定販売金額も前年マイナスが確実。
CCC蔦屋書店は子会社の蔦屋投資(上海)有限公司を通して、「上海前灘太古里 蔦屋書店」(約870坪)をオープン。同店は中国4号店目の「蔦屋書店」で、上海では2店目。
2021年度ヤフー主催の「ノンフィクション本大賞」は、上間陽子『海をあげる』(筑摩書房)。著者は琉球大学教授。今年の沖縄書店大賞の沖縄部門でも大賞を受賞。現在5万500部(8刷)。内容は、脅かされる沖縄での美しく優しい生活。幼い娘を抱えながら、理不尽な暴力に直面してなお、その目の光を失わない。ベストセラー『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』から3年、言葉に表せない苦しみを聞きとるようにして書かれた記録。
日販とトーハン、2021年ベストセラー発表─日販の総合1位:永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)は、学生から年配まで幅広い層に支持され、発行部数85万部(27刷)に。両社の総合2位:アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮社)、総合3位:宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)。
2021新語・流行語大賞(自由国民社が刊行の『現代用語の基礎知識』が選定)に、「リアル二刀流/ショータイム」が年間大賞に選ばれた。今季のアメリカン・リーグの最優秀選手となった大谷翔平選手にまつわる用語。大賞以外のトップ10には、「うっせぇわ」「親ガチャ」「ゴン攻め/ビッタビタ」「ジェンダー平等」「人流」「スギムライジング」「Z世代」「ぼったくり男爵」「黙食」に決定。

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2021年12月12日

【今週の風考計】12.12─ノーベル平和賞の2人と「民主主義サミット」と岸田首相

★2021年のノーベル平和賞は2人のジャーナリストに与えられた。一人はフィリッピンのマリア・レッサ女史。彼女はネットメディア「ラップラー」の代表を兼ね、強権的なドゥテルテ政権と闘いながら、取材活動を継続してきた。
★ドゥテルテ大統領が進める過激な「麻薬の取り締まり」は、2016年からの3年間だけで1万2千人から3万人を殺害したと指摘され、<人道に対する罪>への国民的な抗議に発展している。
 さらに民間放送への介入・免許停止などに対し、報道の自由を求めるデモが起きている。こうした状況を綿密に報道している彼女への、弾圧も激しくなっている。

★もう一人は、ロシアのドミトリー・ムラトフ氏。彼は独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長で、プーチン政権と対峙し、政府高官の汚職、国家権力による弾圧や人権侵害を告発し闘ってきた。
 いまプーチン大統領は、約90の独立系メディアと記者を、スパイ認定扱いにする「外国の代理人」に指定し、当局の監視を強めている。そのためスポンサーが離れ、経営難に陥り、閉鎖に追いやられる事態が相次いでいる。

★10日、オスロで開催の授賞式で、二人は「言論の自由」「報道の自由」が脅かされる現状を訴え、決意を表明した。
 レッサ女史は、「いつ自分も拘束されるかわからない脅威にさらされているものの、ジャーナリスト活動はリスクを負うだけの価値ある仕事だ。とりわけSNSメディアでは、事実よりも怒りや憎しみが込められたウソが早く広がりやすい。事実なしには真理に迫れないし、真理なしには信頼は得られない。信頼がなければ民主主義もない」と、訴えた。

★一方、ムラトフ氏は「ロシアではジャーナリズムが暗黒の時代を迎えている。メディアや人権団体などが人民の敵と位置づけられ、ジャーナリストが命を奪われたりしている。我々の使命は事実とウソを区別することだ」と述べ、権力の不正を追及して命を落としたジャーナリストたちに黙とうを捧げた。

★図らずも9日から10日にかけて、「民主主義サミット」が開催されていた。米国バイデン大統領の呼びかけで、110の国や地域の首脳が集まり、中国やロシアなどの専制主義国家から民主主義を守る意義を強調した。
 だが米国はどうか、トランプ前大統領の言動や郵便投票の制限など、「民主主義が後退している国」に挙がっている。中国も、にわかに「民主」を叫ぶが、テニス女子選手への対応や新疆ウイグル族への弾圧など、誇れる状況ではない。
★岸田首相も「民主主義サミット」で演説し、「自由が抑圧され人権がじゅうりんされる状況が今もなお続いている」と、「有志国が一致してワンボイスで臨んでいかなければならない」と述べた。
 ちょっと待てよ、わが国内はどうか。森友問題で自死した赤木さんの人権は守られたのか、日本の入管で起きたウイシュマさんの死はどうか、さらには学術会議の任命拒否された6人の人権はどうか、まずもって自らが率いる国の現状を変えることから始めよ。(2021/12/12)
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2021年12月11日

【沖縄リポート】3区で敗北 名護市政取り戻せ=浦島悦子

                             
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今衆議院選は沖縄でも厳しい結果となった。辺野古新基地建設の現場である名護市を含む沖縄3区では、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が支援した立憲民主党の現職・屋良朝博氏が自民党の島尻安伊子氏に約7200票差で敗れ、わが名護市でも約1500票の差を付けられた。
 年明け1月23日に市長選を控える私たちにとって、この差は大きい。国政選挙と地方自治体の選挙は違うとはいえ、この四半世紀、名護市長選は一貫して国対名護市民の闘いだった。
 1997年の市民投票で示された「新基地NO」の民意を押さえつけて基地建設を強行する国の攻撃・圧力をはねのけ、2010年から2期8年、稲嶺進市政は「新基地を造らせない」公約を貫いたが、2018年の市長選で国は総力を挙げて3選を阻み、渡具知武豊現市政を誕生させた。
 今衆議院選の勢いを借りて、国は、今度こそ基地反対の民意の息の根を止めようとしていることが窺える。衆議院選から一夜明けた11月1日、島尻選対名護事務所は早速、渡具知事務所に看板を付け替えた。
 今回の島尻氏の勝利は、比例区・公明党とのセット戦術が功を奏したと言われている。前回市長選でも、公明党・創価学会の組織的動きはすさまじかった。来る市長選ではさらにそれが強まるだろう。名護市民の手に市政を取り戻すために、組織力のない私たち市民がそれにどう立ち向かえるのかが最大の課題だ。
 11月6日、辺野古の浜でオール沖縄会議による第2回ブルーアクション(写真)が行われた。沖縄選出国会議員や県議会議員など少人数の集会をライブ配信し、同時並行で県内各市町村島ぐるみ会議がそれぞれの地で集会やスタンディングを行い、「新基地NO」の意思を広く示そうというもの。大雨のためメイン会場を浜から浜テントに移し、海上チームも参加(写真)。第1回の10月2日(辺野古ゲート前)に続き、県内20数か所(県外でも呼応)で、変わらない民意が示された。
浦島悦子
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
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2021年12月10日

【リアル北朝鮮】中国との鉄道貿易再開?国境封鎖で物資が枯渇=文聖姫

  中国と北朝鮮が鉄道貿易の再開を準備中だという。韓国統一部当局者が11月4日、そのように語ったと「聯合ニュース」4日付が報じた。ただし、具体的な再開の時点は予想できないという。
 ここへ来て、中朝の鉄道貿易が再開の兆しを見せ始めた背景には何があるのか。新型コロナ禍で長引く国境封鎖によって、北朝鮮で物資が枯渇していることは想像にかたくない。
 最近開かれた国会にあたる最高人民会議などでは、資源や原材料の再利用が再三強調されている。それだけ、原材料が不足していることの証だろう。物資の不足を何とか解消するためには、少しずつでも海外から物資を輸入する必要が生じているのではないか。それには貿易の90%を占めると言われる中国との貿易を本格的に再開することが一番の解決策だ。
 もちろん、これまでも中朝貿易が完全に遮断されていたわけではないだろう。少し前には船を使って海上で物資を搬入しているという報道もあった。個人的な貿易がストップしているかどうかは確認のしようがない。今年3月から少しずつ貿易が再開されていたとも報じられてもいる。ただし、新型コロナ禍前の水準に回復しているとは到底言えないだろう。
 ところで、鉄道を使った貿易というが、北朝鮮では列車がよく止まったり、遅延したりする。私も何度か列車で平壌から地方に行ったことがあるが、時間どおりに目的地に着けたためしがない。途中の駅で夜を明かすこともあるほどだ。
 だが、そのおかげで北朝鮮の人々のたくましさを垣間見ることができた。線路上に、列車の客を目当てにした市が立つのだ。お弁当や酒、果物などを売る商売人たち。なかには洗面用の水を売る子供もいた。
 ネットフリックスで配信中の「愛の不時着」でも、列車が止まると商売人たちが駆けつけて物を売るシーンが登場するが、北朝鮮での体験を思い出して、懐かしかった。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号 
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