2020年11月08日

【今週の風考計】11.8─羽田増便でオスプレイとの衝突・落下事故の危険!

米国から海兵隊型オスプレイ17機も爆買い″し、陸上自衛隊に配備される同機の試験飛行が始まった。
 千葉県・木更津の駐屯地に暫定配備されている2機のうち1機が、駐屯地上空でホバリングを行い、10日からは駐屯地の外に出て東京湾や相模湾の上空で飛行モードへの転換、さらに来年1月からは関東一円での本格的な操縦訓練が展開される。
 かつ木更津駐屯地にオスプレイ17機がそろった場合、離着陸回数は1日に15回、年4500回となる見通しだという。騒音だけでなく、増便となる羽田発着の飛行機とのニアミスや落下事故の危険性は、いやがうえにも増す。

もともと陸上自衛隊のオスプレイ17機は、長崎県・佐世保にある相浦駐屯地に設けた「水陸機動団」すなわち自衛隊版海兵隊と連携し、「南西諸島」への出撃に一体となって活用する計画に組み込まれ、佐賀空港への配備が前提だった。
 しかし地元との協議が整わず、まず2機を木更津駐屯地に5年という期限付きで暫定配備した。
 佐賀空港は自衛隊とは共用しないことが明記され、かつノリ養殖にかかわる有明海に面し環境汚染・海への墜落など、事故への不安は尽きない。佐賀空港へのオスプレイ配備もかなわず、木更津に恒久配備となる危険性は高い。現に整備能力を3倍、格納庫も倍贈、10機は配備できる体制を整えている。

そもそもオスプレイは陸上自衛隊に必要不可欠な装備なのか。木更津から2000キロも離れた「南西諸島」へ出撃するには、厄介な空中給油が必要になる。災害地への救援にというが、プロペラの風害などで、吊り下げ救助はできないといわれる。
 しかもオスプレイをめぐる重大事故は数知れず、原因も解明されていない。米国では「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造器)の汚名が付けられている。だからこそ米国以外の世界の国々は、オスプレイの購入には踏み出さないのだ。
 なんと日本だけが前トランプ大統領に媚びてオスプレイ17機を爆買い″した。購入費は部品なども含め計約30億ドル(約3600億円)、世界の笑いものになっている。

自衛隊のオスプレイだけが問題なのか。いや日本の空を支配している米軍のオスプレイこそ重大だ。米軍は空軍・海軍・海兵隊用の各種オスプレイを、沖縄・普天間飛行場に海兵隊型24機、東京・福生にある横田基地に空軍型5機、さらに5機を追加して配備する。海軍型オスプレイも神奈川県・厚木基地に配備するという。
 先月下旬には、横田基地から米軍オスプレイに自衛隊幹部が塔乗し、四国沖の海上自衛隊の護衛艦「かが」に着艦し、日米共同統合演習「キーン・ソード」に参加している。
 事故も多発している。普天間基地を飛び立ったオスプレイが、空中給油訓練中にプロペラが破損して海岸に不時着・大破した。伊計島の海岸にオスプレイが落とした重さ13キロもある部品が漂着。
 横田基地でもオスプレイからの降下訓練でパラシュートが住宅地域の施設に落下、潜水用の足ヒレが福生市の牛浜駅の駐輪場近くに落ちている事故が続く。さらに横田基地から三沢基地へ飛来するオスプレイの数は、19年夏までの1年間で計40回、しかも米軍からの通告は一切ない。

東京23区を含む首都圏上空に、米軍優先の「横田空域」がある。そこをわが物顔に安全性に疑問があるオスプレイが飛び交う。日本の航空機は、米軍の許可なしには飛べないため、東京上空は超過密状態だ。
 そこへ羽田空港の増便により、ますます騒音は増え、落下事故や空中衝突の危険が高まる。日本にはオスプレイはいらない。(2020/11/8)
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2020年11月07日

【お知らせ】 玉城デニー沖縄県知事と「基地なき未来のため」―語ろう 11月22日(日)午後2時〜4時    Zoomによるオンライン開催

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【対話する方々】
◆沖縄県知事・玉城デニーさん
◆毎日新聞専門記者・大治朋子さん
◆国際情報誌『フォーサイト』元編集長・堤伸輔さん
◆フリー編集者・鈴木耕さん

 軍事基地なき平和な未来――これは沖縄を含む日本の大きな夢であろう。核兵器禁止条約が発効し、核廃棄の運動はさらに広がろうとしている。この流れの中で、沖縄に背を向けたまま、菅義偉内閣が誕生した。米国ではトランプ氏かバイデン氏が大統領の座に就く。日米ともに新体制がスタートする。その節目のときに改めて在日米軍専用施設が集中する沖縄にスポットを当てる。玉城デニー知事との対話を通して、これからの沖縄と日本の平和について考える。
 沖縄に基地を押し付けている現状をどう変えていくか。軟弱地盤が問題となっている辺野古新基地建設は果たして「唯一の解決策」なのか。沖縄の人たちと本土の人々は何をすべきか。コロナ問題を克服し、観光と農漁業で栄える島が実現すれば、本土にも大きな希望をもたらすのではないか。率直な対話で理解を深めたい。
         
参加費500
◆参加ご希望の方はPeatixを通じて参加費をお支払いください
(1)http://ptix.at/YE6kulクリックする
(2)チケットを申し込むをクリック。参加券の枚数を選ぶ=金額の確定
(3)支払いに進む。初めてPeatixを利用する人はここでアカウントを作成。名前、メルアド、自分独自のパスワードを入力し、ログインする
(4)次に移ると、カードかコンビニかなど、支払い手段の選択。支払いを終える
(5)Zoomの配信URLは前日11月21日にメールでご連絡
(6)22日当日、パソコンでURLをクリックして参加する。
なお、当日都合が悪く参加できなくても、事前にPeatixを通して申し込み、参加費を支払っていれば、事後に録画が送られ、視聴できます。

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)東京都千代田区神田三崎町3−10−15 富士ビル501号
  電話03・6272・9781(月水金の午後1時から5時まで) 
メール:office@jcj.sakura.ne.jp ブログ:http://jcj-daily.seesaa.net/ 

【登壇者のご紹介】
●沖縄県知事・玉城デニーさん
 1959年生まれ。沖縄県うるま市(旧与那城村)出身。1981年に上智社会福祉専門学校卒業。1991年頃にラジオパーソナリティ、タレント。2002年・沖縄市議会議員選初当選(1期)、09年・衆議院議員選初当選(4期)、18年9月に沖縄県知事初当選、現在に至る。趣味は映画鑑賞、バンド、ドライブ、読書、他。座右の銘は「夢は必ず叶う」「天は正論に信念と勇気を与える」(沖縄県ホームページから)

●毎日新聞専門記者・大治朋子さん
1989年入社。東京社会部、ワシントン、エルサレム特派員。英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。テルアビブ大学大学院など修了。2002〜03年の防衛庁(当時)による個人情報不正使用に関する報道でJCJ大賞と新聞協会賞(2年連続)受賞。10年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。最新刊に「歪んだ正義『普通の人』がなぜ過激化するのか」

●国際情報誌『フォーサイト』元編集長・堤伸輔さん
1980年、東京大学文学部を卒業し、新潮社に入社。 松本清張を担当し、国内・海外の取材に数多く同行する。 塩野七生『ローマ人の物語』の編集を経て、 2004年から2009年まで国際情報誌『フォーサイト』編集長。 その後、『ドナルド・キーン著作集』を担当。 2018年10月よりBS-TBS「報道1930」で解説を務める。

●フリー編集者・鈴木耕さん
 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。99年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)など。
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2020年11月06日

【月刊マスコミ評・新聞】 学術会議めぐる報道のスタンス=徳山喜雄

 日本学術会議が新会員として推薦した候補者105人のうち、6人を菅義偉首相が任命しなかった問題で、波紋が広がりつづけている。
 学術会議人事への政治介入は、学問の自由を保障する憲法に違反する行為との声があがる。しかし、在京各紙はこの問題について複数回の社説を書いているものの、足並みがそろっているわけではない。社説に各紙のスタンスが鮮明だ。
 朝日は「法の趣旨をねじ曲げ、人事権を恣意的に行使することによって、独立・中立性が求められる組織を自由に操ろうとする」(10月3日)、毎日は「過去の発言に基づいて意に沿わない学者を人事で排除する意図があったとすれば、憲法23条が保障する『学問の自由』を侵害しかねない。首相は今回の措置を撤回すべきだ」(同)とし、両紙ともに厳しく批判した。
  一方、産経は「学問の自由の侵害には当たらない。……任命権は菅義偉首相にあるのだから当然だ」としたうえで、「学術会議は、活動内容などを抜本的に改革すべきである」(同)と、任命拒否を擁護した。
 読売は即座に反応せずに3日遅れで社説を掲載。「政府が十分に説明していないのは問題だ」としつつも、「6人は自由な学問や研究の機会を奪われたわけではなく、野党の指摘は的外れだろう。……会員の専攻過程や、会議の運営が不透明だという指摘は多い」(10月6日)とし、学術会議の改善を求めた。
 菅政権になったが、リベラル系と保守系メディアの二極化した論調は相変わらずのようだ。安倍晋三政権時代のメディアの構図がそのまま引き継がれるということか。
 菅首相は「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」といいつつも、学術会議から提出された105人の推薦者名簿を「見ていない」とする。目にしたのは99人のリストだけというなら、「総合的、俯瞰的」という言葉と矛盾しないか。
 除外されたのは、特定秘密保護法や安全保障関連法など安倍政権の政策に異を唱えた学者である。問題の核心はなぜ6人の任命拒否をしたのか、だれが、いつ、どんな理由で決めたのかということだ。首相には国民への丁寧な説明責任がある。
 どのような立場であろうが、ここはすべての報道機関が追及すべきところだ。    
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号


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2020年11月05日

【おすすめ本】 早川真『ドキュメント武漢 新型コロナウイルス封鎖都市で何が起きていたか』―封鎖直前の武漢に入り、コロナ猛威の実像を追う=杉山正隆(歯科医師・ジャーナリスト) 

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。最初に流行が確認された中国・武漢市に、都市封鎖がなされる直前、著者は共同通信の記者として取材に入った。
 情報が錯綜するなか、住民の心の変化やパニックにつながっていく動きが描かれ、コロナ禍の市場や町を行き交う人たちの、悲痛な叫び声までが聞えてくる。現地にいたからこその日常の光景を交えた内容は、まさに迫真のドキュメントだ。
 当初はすぐに収束するだろうと軽視されていたが、病院に大行列ができ大勢の命が治療も受けられず亡くなる事態は、あっという間だった。初期の隠蔽がウイルスの猛威を生むことになった。
私も著者同様、年末から年始にかけ、民主化運動を取材するため、香港そして台湾を訪れていた。正月明けには「武漢で感染爆発が起きているらしい」「香港も危ないかも」との声を耳にした。感染症に30年近く携わってきた私の経験から「もしかしたら」と、非常態勢を採ったものだ。
 本書では中国での初動の遅れ、混乱ぶりが明らかにされているが、日本政府の動きもまた、あまりにも鈍かったことを示唆している。
 著者は7月に再度、武漢を訪問している。ほぼ平時に戻ったとされてはいるが、「陰性証明」をめぐって振り回される人々の姿は、コロナ禍も以前とは異なり、「ニューノーマル」の時代に入ったのだと思い知らされる。
 武漢の初動の遅れを、反省を含めて学び、感染対策や情報開示など、我々が冷静に考え向き合う上でも糧となる本だ。
(平凡社新書820円)
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2020年11月04日

【リアル北朝鮮】 国威発揚と米国向け 新型ICBMの公開=文聖姫

 真夜中の軍事パレードには度肝を抜いた。朝鮮労働党創建75周年を迎え、10日に平壌の金日成広場で行われたパレードは、同日午前0時前に始まった。世界を驚嘆させる北朝鮮特有の演出だったのか。
 そのパレードでは、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)と見られる兵器も登場した。米本土を射程に収めるとされる「火星15」は9軸18輪だったが、今回登場した兵器は11月22輪で、「火星15」より長い。新型の潜水艦弾道ミサイル(SLBM)と見られる兵器も登場した。金正恩党委員長は演説で、「自衛的正当防衛手段」としての戦争抑止力を強化すると述べ、今後も核・ミサイル開発を進めることを示唆した。一方で、こうした戦争抑止力を「先制的に使うことはない」と強調した。
 新型コロナ禍で北朝鮮は年初から国境を完全封鎖している。中朝貿易額も大幅に減少するなど、経済への影響は少なくない。さらに追い打ちをかけたのが3つの大型台風だ。水害復旧作業に追われ、経済停滞を余儀なくされている。党創建に際して平壌にオープンするはずだった総合病院が完工したというニュースは、現時点では入ってきていない。そのような状況下でも、あえて軍事パレードを挙行し、新型兵器を披露した意図はどこにあるのか。
 一つは、国威発揚という側面があるだろう。苦しい生活が続く国民に新型兵器を披露することで、その苦労が報われていることをアピールしたいのかもしれない。
 ただ、やはり米国に向けたメッセージだと見るのが自然だろう。昨年2月のハノイでの米朝首脳会談が決裂して以降、米朝関係に目立った進展はない。北朝鮮はおそらく、11月の米大統領選挙の結果を受けて、次の対米政策を詰めていくだろう。その前に米国をけん制する意味もあると思う。大統領が誰になろうと、北朝鮮と交渉せざるを得ない「交渉材料」を示したのかもしれない。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号

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2020年11月03日

【時事マンガ】500億円ポンと学術会議介入の2本=画・八方美人

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2020年11月02日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 菅首相 NHK受信料義務化を画策か 総務省「有識者会議」諮問 当惑広がる

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 総務省は10月16日に開かれた「有識者会議」で、NHKの受信料の支払い義務を放送法で明確することの是非について検討を求めた。「有識者会議」とは総務省が設置する懇談会で、これまでもNHKのありかたについての検討を重ねてきた。しかし受信料は「届け出制」として続いてきており、今回突然提起された「義務化」の検討については、メディア関係者の間で困惑が広がっている。
 当事者すら戸惑い
 受信料の義務化の是非についてはこれまで長年にわたって議論されてきたが、2017年の最高裁大法廷の判断により、議論はすでに解決したと見られていた。そこにその趣旨とは全く異なる、義務化の検討を総務省が有識者会議に付託したことは、当事者であるNHKすら戸惑わせている。
 NHKの正籬(まさがき)聡・放送総局長(兼副会長)は、「NHKから要望したものではない。受信料は、視聴者の納得や理解のもとで支払われるべきだと考える」(10/21)と述べ、義務化に慎重姿勢を示した。正籬放送総局長は同じ記者会見で「視聴者との契約というやり取りの中で、NHKが自らの役割や受信制度の意味を丁寧に説明し、関係を構築するプロセスが重要だ」と語っている(毎日新聞10/21夕刊)。まともな主張だ。
 NHKすら初耳の諮問義務化推進は、菅政権独自の判断によってなされたものと言えよう。
 菅首相は総務相だった2006年、受信料義務化を受信料2割り引き下げとセットで提案したことがあるが、実現しなかった。今回その持論の実現を図ったものとみられる。「ケータイの次はNHKをやれ」と菅首相が側近に極秘命令したというニュースも流れている(週刊文春10/29)。
未契約者把握を
 NHKは不払い家庭訪問のための営業経費が昨年度759億円にも達した。経費削減を総務省や「有識者会議」から再三迫られている。そこで未契約家庭がテレビ設置しているか、事実未設置なのかを知る必要があると、「有識者会議」に求めている。
 その方法としてNHKが提案しているの、ガス会社や電力会社などの公益事業者に紹介できることを求めている。NHKが恐れているのは、将来的なテレビ世帯の減少、イコール受信料収入減だ。そのために、未設置者にも届け出を義務づける必要があるとNHKが考えていることがうかがえる。しかし設置者、未設置者の両面を把握する届け出は、受信料の支払い義務に等しい。
届け出制維持
 最高裁が3年前にどのような判断を示したのが、改めて見直してみよう。
 「(受信料を定めた)放送法64条は憲法の保障する国民の知る権利を、実質的に充足するべく採用され、その目的にかない合憲である」。
 「NHKが特定の個人、団体または国家機関から財政面での支配や影響が及ばないようにするため、広く公平に負担を求めたものだ」。
 「NHKからの一方的な申し込みなみによって受信料支払いの義務が生じるものではなく、双方の意志表示が必要である」。
 「(双方に争いが生じたときは)NHKが未契約者を相手に訴訟を起こし、勝訴が確定した時点で契約が成立する」(2016年12月6日、最高裁大法 廷、寺田逸郎長官)。
 この判決により、テレビ受像機を設置した場合の届け出が必要となりNHKの受診料未払者の減少がみられた。支払い率は76.6%(2015年度)から81.8%(2020年度)に向上した。しかし受信料の支払い義務は放送法に盛り込まれることはなかった。
 イギリス、フランス、ドイツなど世界各国の多くで公共放送の受信料支払いは国税と同様に義務化されているが、日本のように届け出制で支払い率が8割を超えているのは驚異だと諸外国から見られている。制度として定着していることから、最高裁も現行制度の維持を求めたといえよう。
 NHKの受信料収入は2018年に7122億円、7115億円となっているが、2020年度以降は6000億円台にとどめるとしている。
受信料制度の発端
 NHKの受信料はNHKの前身東京放送局の発足当初1925年(大正14年)に生まれた。当時の技術革新の最先端であったラジオの開設に、時の政府(逓信省)が民間企業に渡すことを嫌い、事実上の国営とした。そして財源として聴取者からラジオ一台当たり月1円の許可証を課したのが始まりである。最初の聴取者は東京放送局管内で3,500人と記録されている。報道と娯楽を一元化したラジオは、市民に歓迎され、東京、名古屋、大阪3局をつないで「日本放送協会」となった後、ラジオ聴取者の数は年々30万台、40万台、50万台うなぎのぼり、遂に1931年(昭和6年)には100万台を突破するに至った。しかしこの頃から、日本軍の満州進出が始まり、ラジオ報道は内閣情報局の統制下に組み込まれた。
 「受信料の徴収」が現在の形で制度化されたのは、戦後1950に制定された「放送法」によってであった。
受信料拒否1
 受信料が大きな社会問題として意識されたきっかけは、1973年に発刊された本多勝一氏(朝日新聞記者)による著書「受信料拒否の論理」(未来社刊)であった。当時NHKは新鋭機器をそろえた放送センターを渋谷に新築し日比谷の放送会館より移転し、田中角栄政権下の高度成長の波にのって破竹の勢いであった。しかし本多氏は「NHKが真実を伝える努力を怠り、権力に迎合している」と批判し、受信料拒否を訴えた。
 NHKの報道姿勢を痛烈に批判したが、それとともに当時のNHKテレビが毎日の放送終了時に日の丸の映像と君が代を流していたことも、不当な歴史感に基づくものだと批判した。本多氏は2007年にも「受信料拒否して40年」という著書を出している。
受信料拒否2
 2004年、NHKの番組制作に関連して巨額の不正流用があり、視聴者の間に不信感が広まった。批判は1か月で11万3000件を越える受信料拒否となった。当時のNHK会長であった海老沢勝二会長は従前からの強引な経営姿勢と相まって、集中的な批判の的となり、2005年1月辞職した。会長の任期中辞職はこの時まで類を見ない事態であった。
受信料拒否3
 会長辞職後も受信料不払いの勢いはしばらく止まらず、NHKの経営姿勢、番組批判が続く中、2005年1月、新たに朝日新聞が、NHK幹部が政府の圧力の下、番組を改ざんした事実を明らかにした。現役プロデューサーの実名告発で、中川経済産業相と安倍官房副長官が介入、「問われる戦時性暴力」(2001年1月放送)が再編集で切り刻まれ、続編が放送されなかったという事件だ。
 NHKの幹部らは介入を認めず、従軍慰安婦の問題も絡み、長期にわたってNHKと朝日新聞は対立を深めた。視聴者の間ではNHKの体質に問題があるとして、受信料不払いが長く続く一因となった。
市民の集団訴訟
 最高裁の受信料合憲判断以降、NHKは受信料不払い者を提訴することが続いている。
ところが、奈良地裁では「NHKは放送法を守る義務がある」と県民126人が訴え出た集団訴訟の裁判が行われている。裁判は2016年以来4年にわたって続いてきたが、今年6月に最終弁論が行われ、11月12日に判決がでる。
 申し立てた市民の代理人である、白井啓太郎弁護士は「放送法第4条1項の政治的公平などの最低基準を満たさないNHKのニュース報道は、受信契約者の知る権利を侵害するものだ」と意見陳述した。奈良地裁の判断が注目される。
隅井孝雄(ジャーナリスト)


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2020年11月01日

【今週の風考計】11.1─核廃絶に向けて75年─実る人類史の成果に乾杯!

3月3日の「スーパーチューズデー」から、ちょうど8カ月、トランプ対バイデンの決戦は、この3日に決着がつく。米国のコロナ感染者908万人・死者23万人、世界最悪の状況でも、トランプ大統領は手立てをとらず、バイデン候補へ罵詈・雑言の攻撃を浴びせ続けてきた。
あげくに落選しても結果を認めず、裁判に持ち込む事態まで予測されている。急きょ強引に連邦最高裁判事にバレット氏を送り込んだ結果、最高裁は保守派が3分の2を占める。
 最後のあがきに翻弄され、ホワイトハウスは大混乱に陥るのは間違いない。民主主義の根幹が崩れた米国などあてにせず、世界は平和に向けて大きなうねりを作りだしている。そこに目を向けよう。

核兵器禁止条約の批准が50カ国・地域に達し、史上初めて核兵器を禁止する国際条約が、来年1月22日に発効する。
 広島・長崎への原爆投下から75年を経て、「非人道性」や「核なき世界」を訴え続けてきた被爆者の願いが、条約誕生への原動力となった。さっそく政府に対し条約への署名・批准を求める署名活動が全国各地で展開される。

第2次大戦直後に設立された国連は、1946年1月10日、初の総会で採択した第1号決議が「核兵器など全ての大量破壊兵器を各国の軍備から廃絶すること」を求める内容であった。
 決議を提案したのは米国、ソ連、英国、フランス、中国、カナダの6カ国。当時、唯一の核保有国だった米国でさえ、広島・長崎の非人道的な被害を目の当たりにして、核廃絶を求めたのだ。
その後、米ソ冷戦など東西の緊張から、核兵器の開発が加速し、2020年1月現在、核兵器保有数は米国6185、ロシア6500、英国200、フランス300、中国290、世界全体で1万3400にまで膨れあがった。

核廃絶という目標はどうなったのか。1970年3月に核不拡散条約(NPT)が発効したものの、すでに核を保有していた米国、ソ連(ロシア)、英国、フランス、中国の5カ国は除外し、以外の国には「原子力の平和利用」を除いて、核保有を禁止にした。
この核をめぐる不平等がネックとなり、NPTは30年後になって、核保有国に「自国の核兵器の完全廃絶を達成する」よう、明確な約束を求めることとなった。それでも核拡散の状況は改善されず、かつ米国・ロシア・中国は核兵器を改良し質的な核軍拡に突き進んでいる。
 実戦配備に適した核の小型化によって、核使用の脅威は高まっている。米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約も失効するなど、核なき世界は遠のくばかりだ。

だが核兵器禁止条約が発効すれば、核保有は「国際法違反」となり核廃絶への圧力となるのは確実である。
 日本政府は「唯一の戦争被爆国」でありながら、米国の「核の傘」に身を委ね、「橋渡し」役などと詭弁を弄し、核兵器禁止条約に背を向ける。国際的にも見放されるのは間違いない。(2020/11/1)
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2020年10月31日

【セクハラ】 杉田議員のウソ発言に非難高まる 女性を貶める偏見土壌 性被害者にさらなる暴力=吉田磨美

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が性暴力被害者の相談事業を巡って「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言し、その後謝罪した問題で、市民から抗議の声が上がっている。10月3日には東京都内で性暴力に抗議する「フラワーデモ」の主催者らが、杉田議員に抗議する緊急のフラワーデモを開催し、13日には杉田氏に謝罪と発言の撤回、議員辞職を求めるウェブ署名約13万6000筆を提出しようと自民党本部を訪れた。
 杉田議員の問題発言は、杉田議員固有の問題ではない。2018年4月に明らかになった女性記者に対する財務次官のセクシュアルハラスメント事件後、新聞労連は新聞社内外でのセクハラや性暴力の被害者への支援活動に取り組んでいる。「女性はうそをつく」という偏見は「被害者をバッシング」する典型的手法や定説として被害者を苦しめ黙らせてきた。
 新聞労連が昨年4月の提訴段階から支援をしている「長崎市幹部による女性記者に対する性暴力事件」の損害賠償訴訟(長崎地裁)では、幹部と原告の女性記者が以前から男女関係であったかのような噂が流されたことによる二次被害も焦点の一つとして争われている。
 裁判では、女性記者による被害の訴えがうそであることを前提にした噂が市役所や市議会で流されていたとされる。訴訟で、原告は「デマを流されて、私の社会的名誉や記者としての信用は爆破されたように砕けた。病状も悪くなった」「二次被害も性暴力と一体の暴力だという自覚が全然ない」と訴えている。
  事件後女性記者は職場から離れていて、市側から直接聞き取り調査もされずにいた。それにもかかわらず、女性記者がうそをついていることを前提とした噂が広まった背景には、この種の女性の訴えに共通で吹き出してくる「女性はうそをつく」という社会的偏見がベースにあるからではないか。実は、直接利害関係のない噂の受け手側にも女性に対する嫌悪や蔑視、差別の意識があり、当たり前のようにこの手の噂が広まっていく土壌がある。
 今回の杉田議員の発言は女性を貶める、重大な問題だが、読み解くには議員の個人的資質を問題視するだけでは足りない。一人一人が自分ごととして捉え、「このような偏見を生み出す根本は何か」について考えていくことが求められている。
吉田磨美(新聞労連・中央執行委員長)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号


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2020年10月30日

【支部リポート】 香川 それぞれの「8・15」 次世代にどう語り継ぐか=刎田鉱造

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 香川支部は2020.8.15、午後2時から4時まで高松で8月集会を持ちました。9人が参加、それぞれの「8・15の思い」を語りました。ヒロシマ被爆手記朗読の会にかかわるYさん。「今年は若い人に引き継いで、新しい活動をする。会の歩みと未来へ語り継ぐための宝の動画を作ります」と。   「語り継ぐがキーワード」と高松空襲の語り部に取り組むSさん。「動員されてきた労働組合の青年にわが町の近代史を知りましょう、と話した。私の仕事は伝えるための資料つくりを急ぐこと」。 午前中、野党の街頭宣伝に参加してきたTさん。「いまの政治のテーマをもっと深めなくちゃあ。若い人であれ、年配者であれ分かったつもりになっていないか」。1939年生まれ、年配のHさん。「このさき10年は生きていられないと思うから、いま私の8.15を若い人に伝えたいがどうしたら……」。
 1945年、国民学校1年生だったIさん。「15日の記憶ない。7月4日の高松空襲、その日予讃線は動いていた。そういう周辺のことをもっと記録していくことが大事だ。いまから私に何ができるか。戦前世代でも戦後世代でもないことにこだわり続ける」。
同じ8・15、9歳だった私。「午後、川へ泳ぎに行く途中、白衣に戦闘帽の兵隊から『戦争は終わった』と聞かされた.玉音放送は覚えがない.先生のいうことがコロッと変わっていた9月の学校。そのままいまも地続きの8月15日」。大学で若い人と学んでいる元民放局員。「最近の子どもたちは感性豊かだ.。きちんと分かってくれるが、じゃあ自分が何かするべきだとはならない。私たちの世代が過去を懐かしく語り継ぐだけではだめで地域や子どもたちにアクションかけよう」。 
 教員組合で頑張る小学校教員。「若い先生たち、平和の旅にいって、ここを学んでほしい、こう思ってほしいから、あなたの感性で見てきてといえるまで15年かかった」とまた「この夏コロナで走る世間のありさまを見て、恐ろしかった」とも。午前中、10月31日(日)に開く「平和ケンポーがだいじ20周年フェス」の相談会に行ってきたYさん。「野外でのオープンなイベントだけれど、そんな場所で人がよってくれるかな心配」といいながらでも「景気悪くなったら戦争という戦前起こったことがまたくるの?ちょっとそれどうよ」と。平和の日々の影でうごめくものを止める「いまが正念場」というみんなの思いがひとつに……。
刎田鉱造
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 中国・四国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする