2019年08月26日

JCJ賞贈賞式に約500人が参集 前川喜平さん「報道と教育は民主主義守る両輪」と語る=編集部

8月17日、東京・内幸町のプレスセンターホールで第62回JCJ賞贈賞式を開いた。

吉原功JCJ代表委員の挨拶の後、元文部科学省事務次官の前川喜平氏が「私が見た『安倍官邸とメディア』」と題して記念講演。今、果敢に安倍晋三政権批判している前川氏の話を聞こうと、約500人が会場を埋めた。

一昨年、加計学園の新学部認可をめぐり、「総理のご意向」と書かれた文書の存在を認めた前川氏は、安倍官邸の指示と思われる自身に対するネガティブ報道の経緯を具体的に語った。

前川氏は官邸サイドが自分の周辺を調査しているらしいと聞いていたこと、NHKや週刊文春、月間文藝春秋のインタビューの模様などを具体的に語った。また、約6年半にわたる安倍長期政権で、政権寄りの官僚が多くなっている現実を指摘した。さらに前川氏は、民主主義社会において人々の考え方を形成する上で、教育と報道の役割が大きいとし、ジャーナリズムへの期待を語った。

続いてJCJ賞贈賞式。

今年は『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』を上梓したみんなのデータサイト出版、秋田魁新報社イージス・アショア配備問題取材班、山形放送の「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心=v、NHK・ETV特集「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」がJCJ賞を、東京新聞社会部の「税を追う」キャンペーンがJCJ大賞を受賞した。

 受賞作を作るために出版社を設立したみんなのデータ事務局長の小山貴弓、秋田魁新報社編集委員の松川敦志、山形放送報道制作局長の伊藤清隆(取締役)、NHK第1制作センター文化・福祉番組部の鍋島塑峰、東京新聞社会部の鷲野史彦の各氏が、JCJ選考委員から賞牌と賞状を送られた。   

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
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2019年08月25日

【今週の風考計】8.25─2つのアマゾン、焼失と支配の恐ろしさ

●ブラジル・アマゾンで大規模な森林火災が発生している。年初からの8か月間で7万5000件も発生し、昨年比185%、過去10年で最大となっている。その主要な原因は、同国のボルソナロ政権が、環境保護より開発を優先し、森林を焼いて家畜の放牧地や畑を作るための意図的な放火を奨励したことにあると指摘されている。
●アマゾンの熱帯雨林は二酸化炭素を吸収し地球温暖化を防ぐ大事な要となっている。まさに「地球の肺」とも呼ばれている。だがそこでの火災で、1億7千万トン相当もの二酸化炭素が、逆に排出される事態となった。

●さらに煙はアマゾン地域から3200キロも離れたブラジルの最大都市サンパウロの空を覆い、街は暗闇に包まれる被害も出ている。ヴェネズエラやボリヴィアにも森林火災は広がっている。
●ボルソナロ大統領の怠慢や対策を取らない姿勢に、世界から抗議が起きている。フランスのマクロン大統領は、G7でもアマゾン問題を取り上げると言明し、ついにボルソナロ大統領は、消火活動に軍の出動を指示した。

●さてアマゾン問題は、もう一つある。26日閉幕するG7首脳宣言が見送られる背景には、アマゾンを含む米国の巨大IT企業を対象とした、フランスの「デジタル課税3%」に対し、トランプ大統領が、2020年末のOECD合意を待たずに先行導入するとは何事か、と猛反発した経緯がある。

●なにもアマゾンへの課税だけでなく、大規模通信障害を始め、膨大な個人情報の収集は、きわめて深刻な問題をはらんでいる。アプリを使い検索・閲覧・買い物まですれば、自分の個人情報は全て分析されて、そのデータが時には第3者に売買されるに至る。
●現に、就職情報サイトの大手会社が、学生の閲覧履歴を分析し、内定辞退率の予測データを企業に400万〜500万円で売っていた。知らぬ間に自分が売り買いされている、オソロシイ事態が来ているのだ。

●日本の公正取引委員会も、アマゾンなど巨大IT企業による個人情報の収集に対して新しいガイドラインを策定した。8月にも公表し年内にも実施するという。まずはSNSやネット検索を控えるのも一法だ。(2019/8/25)
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2019年08月23日

【おすすめ本】巣内尚子『奴隷労働 ベトナム人技能実習生の実態』─安い労働力として使い捨てにする現場の生々しい実態をルポ=栩木 誠

 「移民政策はとらない」─この安倍発言を反故にするような、日本の「移民大国化」が進む。
国内に住む外国人の数は約267万人、総人口の2%を超えた。中でも目立つのが、農水産業や製造業などで働く外国人技能実習生と留学生で、合わせて60万人を超える。コンビニや外食、建設、介護、農水産業など、過酷な労働条件下で底辺を支える、彼らの存在なくしては「持続不可能」な産業も数多い。

 今年4月から施行された改正入国管理法の国会審議では、「低賃金の単純労働に従事され、技能が実習できない」実習生の劣悪な環境、人権軽視の問題点が赤裸々にされた。この利害と差別の複雑な結合が生み出す問題点を、急増するベトナム人実習生に焦点を当て、浮き彫りにしたのが本書だ。
 「送り手」のベトナム、そして「受け手」である日本の両国で、技能実習生の実態に迫る。その多角的な取材は労働組合などの支援者や仲介業者など、140人を超える。
低賃金に長時間労働、多額の借金、暴力、パワハラ、セクハラ、劣悪な住環境、除染などの危険業務…その一方で、隆盛を極める“実習生ビジネス”。

 現代日本の様々な社会問題の実態が、実習生などの発言から鮮明にされる。著者の五感で得た迫真のルポは、その実態を生々しく伝える。
 著者は「都合のよい労働力として使い捨てにする─この認識を捨ててこそ、移住労働者を社会が受け入れる必須条件なのだ」と、強調する。しかし、「特定技能」という新たな衣をまとった改正入管法下で、「奴隷労働」は、さらに“再生産”されようとしている。それを許さない「私たち」の取組みが、重要になっている。(花伝社2000円)
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2019年08月18日

【今週の風考計】8.18─『放射能測定マップ』の地道な成果!

17日、第62回JCJ賞贈賞式が日本プレスセンターで行われた。JCJ大賞は東京新聞の「税を追う」キャンペーンに、またJCJ 賞は4作品に贈られた。なかでも受賞した『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』(みんなのデータサイト出版)への受賞理由や受賞者スピーチには、感銘を受けた。
「市民による市民の調査が結実した貴重な特筆すべき成果。我々が見習うべき調査報道の在り方を示す」と、選考委員のメンバーが絶賛する。この本に目を通していた筆者には、改めて認識を新たにした。少し、この本の内容を記しておくべきだろう。

「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」のメンバーが、なんと東日本の青森県から静岡県までの17都県3400地点の土壌サンプルを、延べ4000人の協力で採取し、セシウム134とセシウム137の測定結果から得たデータを、地図上に分かり易くカラーでマッピングし、合わせて各県ごとに解説を加えた画期的な本なのだ。

8年前の3・11福島事故以降、政府は放射能汚染の影響を軽視し、その正確な実態調査を怠ってきた。福島事故の放射能汚染の実態は、今どうなっているか、多くの人々が知りたいと思っている。
国は、空間線量を測って公表はしているものの、長期に放射線の影響を調べるには、土壌の汚染調査は欠かせない。だがこの調査はしていない。にもかかわらず避難者へ、帰還するよう煽り急かせている。こうした事態に危うさを感じた上記メンバーが、「避難する人、しない人、すべての人に被ばくを避け、人間らしく生きる権利を!」と、土壌調査プロジェクトをスタートさせ、2014年から3年かけて測定した数値を、2011年3・11時点に合わせて汚染状況を再現した。

この取り組みの趣旨を表現した横断幕を用意し、6人のメンバーとともに登壇した受賞者代表の女性は、こう語る。
「縦10センチ、横20センチ、深さは地上から5センチ下の土壌を測ります。これはロシアのチェルノブイリと同じ深さです。採取法マニュアルを分かりやすく漫画で作り、WEBサイトに公開し多くの人に理解を促しました。根気よく呼びかけていくと、測定ポイントが増えていく喜びは格別。集まった東日本全域のデータの貴重さ、これをいかにわかりやすく市民に伝えるか、ここからみんなの議論が始まりました」

議論を重ねるうちに、測定データだけでなく、注意の必要な食品についてのデータも分析し加えることになった。そしてクラウドファンディングを活用し、自分たちの出版社を立ち上げるまでになった。その結果、A4版・オールカラー200ページ、チェルノブイリとの比較も視野に「日本版アトラス」を目指し、20年後・100年後の状況も加えて仕上がった。 ぜひ読んでほしい。発行所:みんなのデータサイト出版 https://minnanods.net/map-book/ (2019/8/18)
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2019年08月16日

【緑陰図書─私のおすすめ】「資本主義」でつながる世界と私たちの現実を問う=工藤律子(ジャーナリスト)

 最近、メキシコや中米の移民、また若者ギャングについて、その背景にある格差や貧困に目を向けた報道が多くなってきた。だが私たちとの関係にまで、筆が及ぶには至ってない。
拙著『マラス 暴力に支配される少年たち』(集英社文庫)や『マフィア国家』(岩波書店)に目を通し、彼らの現実が私たちとどうつながっているか、共に考えていただけるとうれしい。

 さて経済のグローバル化が進むなか、格差や不平等は、一国・一地域での問題ではなく、国際的な「資本主義」のありよう、そのものに関わっている。今やこの事実は自明の理となった。その「資本主義」とは何か。京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター編『資本主義と倫理』(東洋経済)は、その問いを考えるのに、格好の本だ。
 シンポジウムをまとめた本書は、「資本主義」を経済だけでなく、社会や教育など、多様な角度から解く。特に注目したいのは「資本主義の中核には倫理が存在する」という点だ。現代世界の大きな問題は、支配的な資本主義から倫理が失われていることだろう。

 では、私たちはこの先どんな世界を築いていけばいいのか。同じく「資本主義」を軸に考えるには、伊藤誠『入門 資本主義経済』(平凡社新書)が役立つ。その最終章「資本主義はのりこえられるか」では、21世紀型社会主義の可能性が考察されている。
 そこではベーシックインカム、私もスペインで取材している地域通貨、さらには労働者協同組合など、「社会的連帯経済」の取り組みが考察されている。これはメキシコや中米を含む、世界各地で進んでいる動きだ。

「労働力の商品化を廃止」し「働く人々の自由、平等、人権を主体的に実現する社会経済」を模索している。いま私たちは、こうした発想と取り組みが求められている。
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2019年08月11日

【今週の風考計】8.11─脅迫の電凸が、憲法21条をつぶす危機!

<あいちトリエンナーレ2019>の企画展「表現の不自由展・その後」が、脅迫の電凸・メル凸、さらには「撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というテロ予告FAXまで送られる事態に及んで、ついに中止を余儀なくされた事件は、国内外に大きな波紋を呼んでいる。

慰安婦問題に焦点を当てる「平和の少女像」や憲法9条をテーマにした俳句、天皇に関する作品など、各地の美術館から撤去させられた20数点を展示。それを主催側の会長代行である河村たかし名古屋市長自らが、展示場に乗りこんで「日本国民の心を踏みにじる行為」などと言い、展示物を検閲するかのように、自分ひとりの判断で中止を求めるなど言語道断だ。「言論・表現の自由」を保障する憲法21条を踏みにじる、まさに最悪の違憲行為だ。
そのうえ、官邸や一部の政治家が悪のりし、主催団体や自治体などに圧力をかけ、補助金の支給にまで言及するなどして、ヘイトを増長させる。

今回の展示がこのまま中止となれば、「脅せば表現は封印できる」前例となり、同様の事件が急増するのは必定だ。また事件を恐れて萎縮が広がる可能性は高い。芸術家や日本ペンクラブ、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、憲法・歴史学者、市民らが抗議と展示の再開を求めて行動に立ちあがっている。

にもかかわらず神戸市が、9〜11月に開催する「現代美術の祭典」の関連行事として、いま渦中にある津田大介氏を加え、3人による鼎談シンポジウムを中止すると決めてしまった。理由は抗議電話ばかりでなく、自民党市議からも津田氏の参加を断るよう要請されていたからだという。
「抗議電話によって催しが潰れることが続けば、気に入らない言論・表現活動は潰してしまおうとする人たちは勢いづき、次のターゲットを探すだろう」(江川紹子)。
 
自治体や主催団体は、とりわけ右派からの動きを忖度し、次なるターゲットにならないよう、物議をかもすような人物やテーマ、企画表現は除外しておこう、という空気が広がるのは目に見えている。こうして日本の「言論・表現の自由」が骨抜きにされていく。それが怖い。(2019/8/11)
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2019年08月08日

【支部リポート】 北九州 最新治療と医療支援学ぶ 歯科医ら国際エイズ学会へ=杉山正隆・久保ゆかり

今も全世界で毎年約200万人が新たに感染するHIV/AIDS。4000万人近くが差別や偏見にも苦しむ病禍だ。最新治療や医療的支援のみならず、背景にあるLGBTIQなど性的弱者や薬物依存、性労働などに関する問題解決を話し合う第10回国際エイズ学会会議(IAS2019)が7月21日〜24日、メキシコシティで開かれる。

 会議には160カ国から1万人の医師や研究者らが参加。取材に当たるジャーナリストは千人近くになる見込みだ。HIV/AIDSは、有効とされるワクチンの開発には至っていないものの、発症を遅らせるなど生活の質を上げる治療法はほぼ確立しており、「慢性病」の様相を呈している。

 国連のグテーレス事務局長は「18年前に国連がHIV/AIDSに関する最初の特別総会を開いた頃、『エイズのない社会』など想像できなかった。現在は子どもの新規感染はほぼ半減、成人でも2割減っている」と強調し、30年までにエイズの流行を終焉させる目標を打ち出す。

 国連は、HIV陽性者の90%が検査を受け自らの感染を知り、そのうちの90%が抗HIV治療を受け、そのうちの90%が体内のHIVを検出限界以下にする「90―90―90」を2020年に達成したい、とする。が、実際には「75―79―81」(17年)にとどまっているのが現実だ。

 日本では17年の1年間で1389人が新たに感染。1600人に迫る勢いだった。13年より勢いが衰えたものの「高止まり」にある。累積報告数は約3万人だが、実数は数倍とされる。

 IAS2019では、ワクチンなど最新の研究成果や、35年間で3500万人が亡くなった中、「自然治癒した」とされる2例目の完治例の発表に注目が集まっている。あらためて問題となっているLGBTIQや薬剤依存者、性労働者など「弱い立場の人々」への支援策などが話し合われる見込みだ。

 北九州支部から歯科医師と看護師の資格を持つ2人が正式な取材登録を経て会議を取材する。日本ではほとんど報道されないこうした問題にも取り組んでいく。 

杉山正隆・久田ゆかり

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月07日

【リレー時評】 異常気象を無視したニッポンとG20=中村梧郎

7月はじめに九州を旅した。

地球温暖化による集中豪雨。鹿児島や宮崎では死者が出た。異常降雨は三〇年前の一・五倍ほどだという。国は「行政の限界。自分の命は自分で守って」とTVで呼びかけた。動けない高齢者もいるのに国は救わないよ、との開き直りである。

地球環境問題が主題であったはずのG20は一体何の意味があったのか。日本は気候変動防止に背を向けていることが、会議を通じて逆にあぶりだされてしまった。

パリ協定はCO2排出ゼロの目標で合意した。

EUは2050年までに80〜95%を削減する。しかし、日本の削減目標は30年に26%。主要国の中でも最低である。加えて最大のCO2排出源である石炭火力発電を「基幹電源」と位置づけ、25基を新設する。電力企業や銀行はインドネシアなどへの輸出に奔走。原発を拒否したベトナムにも石炭火力を売り込む。日本はパリ協定からの離脱を決めたトランプ政権同様、協定を骨抜きにしたいようだ。

一方フランスは2021年、イギリスは25年までに石炭火力をゼロとする計画だ。豪雨災害が頻発しても日本は「脱石炭」を決して言わない。

G20の次の課題であったプラごみ問題。日本はここでもトリックを使う。「プラスチックは燃やせば良い」これを「サーマル・リサイクル」という…と。焼却はCO2を生み、塩ビはダイオキシンを出す。各家庭がプラを分別しても焼却炉では混焼されたりする。産廃炉を含めて2千基以上の炉が夜昼なくプラを燃やす。これを「リサイクルだ」と称するのは世界では否定されている。

その上で途上国への輸出問題がある。ベトナムのニャチャン港に山積みされた日本のプラごみとドラム缶群を見た。プラは熔かされて質の悪い樹脂となり、残りは野焼きされた。廃棄物の移動を禁ずるバーゼル条約違反だが「有価物」の名目だった。いま排出国への返還が始まっている。

地球の海には800万dのプラごみが漂う。それは砕けてマイクロ・プラスチックと化す。魚類はPCB等を吸着したプラを食べ生体濃縮を進める。危険はブーメランのように人体に還流する。

やれストローだレジ袋だと、国もメディアも消費者の使い捨てを標的にするが、これはプラ生産量3位の日本の、ほんの一部に過ぎない。20年前のドイツ。すでにレジ袋もプラ容器も無いのに驚かされた。倫理観ではない。プラ生産企業に回収責任を持たせたため市場に出なくなったのだ。

昨夏スウェーデンの女高生グレタが始めた温暖化阻止行動は今や125カ国に拡がった。今月、世界7千の大学は「気候危機」を共同で宣言した。

世界から取り残される災害大国・日本。国家が温暖化を顧みず「自分の命は自分で守れ」と言いだすようでは困るのだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月06日

安倍政権「生活破壊」 学者の会ら緊急アピール 暴走政治を阻止=古川英一

 6月下旬の夕方、東京神田の学士会館に、平和主義・立憲主義・民主主義を基本的な価値とする、学者や市民90人余りが集まった。集会は安保法制に反対するために4年前に設立された学者の会が、暴走する安倍政権への危機感から開いた。憲法や経済学などを研究する学者が次々に発言した。

愛敬浩二・名古屋大学教授は安倍自民党の憲法9条の改正案について「安倍首相は自衛隊を明記するだけで現状は変わらないと説明するが、その現状こそが問題だ。安全保障関連法ができて日本は戦争ができる国へと変わってしまった。9条を改正すれば米軍のグローバルな軍事展開に基地を貸すことを明確にすることになる」と述べ、安保法制を廃止し、ここまで変えられた国の在り方をそれ以前に戻すことを訴えた。

▽間宮陽介京都大学名誉教授は今の日本社会の「破壊」されている状況を列挙した。まず安倍政権が、立憲主義、憲法、そして教育や労働までをも暴走して破壊していること。さらにアベノミクスの失敗により経済が破壊されていること・・本来、経済の目的は国民一人ひとりの生活を向上していくものなのに、アベノミクスは経済成長のために一部の富裕層を優遇するものだと指摘。

大沢真理・東京大学名誉教授は、安倍政権の社会保障に対する考え方は「70歳まで働け、病気になるな、お上に頼るな」と、社会保障の強化どころかむしろ背を向けていると厳しく批判した。

 最後のアピールでは、「自らの蒙を開く研鑽の場としての大学は、未来を切り開くための『自由の砦』たりうるはずです」としたうえで、安倍政権の暴走をくいとめるために主権者としての行動を起こし、議会を動かしていこうと呼びかけた。

集会の中ではメディアの責任の重さを訴える声が上がった。市民が連帯していく仲立ちとなること、ジャーナリストとして私たちがやるべきことはこれからも続くのだ。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月05日

【支部リポート】 神奈川 薄氷を踏む景気あやうい 狙い外れたアベノミクス 神奈川新聞・田崎記者が話す=保坂義久

神奈川支部は7月6日、横浜市の神奈川婦人会館で例会を開いた。神奈川新聞経済部記者・田崎基さんが「アベノミクスの嘘」を話した。

 田崎さんは異次元緩和といわれる金融政策、10兆円規模の公共投資など機動的な財政政策、規制緩和などで民間投資を促す成長戦略によって経済成長させるアベノミクスのシナリオを説明した。

 そのシナリオは、政府が国債を発行し、国債を買った金融機関が日銀に売却。日銀は紙幣を印刷してそのカネを銀行に支払う。大量の円が出回り円安になることで輸出系企業の利益があがり、それが給与や設備投資に回る。また、金利が下がってカネが市場に回り、需要が喚起されることで物価が上昇するはずだった。

 しかし、企業の利益は増加したものの実質賃金は上がらず、消費支出指数は低下した。

 肝心の需要が伸びなかった理由について田崎さんは、日本に有望な成長分野がない、企業が思いのほか利益を賃金に還元しなかった―この2点をあげた。

企業が増えた利益を賃金に回さずに済んだのは、経営方針に沿い非正規雇用を拡大させて、コストのかかる正規雇用の社員を減らしたからだと分析する。

また、せっかくの成長分野である再生エネルギーや蓄電池への投資を企業がためらったのは原発維持政策が原因ではないかと話す。

 田崎さんは所得階級別の世帯数割合を過去と比較したグラフでアベノミクスの結果を示した。生活が苦しい層が増えて、中間所得層が減っていることが一目瞭然だ。

にもかかわらず安倍政権を支持する若者が増えているのは、増大し続ける貧困層の現実を伝えきれていないからだと田崎さんは自戒を込めていう。

アベノミクスに批判的な学者などは、国債への信認が失われ暴落する危険性を指摘するが、そもそも景気は大きく冷え込んでいる。

 田崎さんは全ての地方銀行で貸倒引当金の積み増しが進んでいることをあげた。地銀は「今の景気は薄氷の上を歩くように危うい」と見て先手打っている証拠だという。

保坂義久

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月04日

【今週の風考計】8.4─制裁が席巻する世界、おかしくないか?

■地球規模の気候変動によって、世界各地で「史上最も暑い月」が続く。そのせいだろうか、制裁・除外・失効・離脱─なんとも知恵のない非生産的な言動や措置が、いま世界各国で乱舞し<いがみ合いのルツボ>と化している。

■まずは日本政府が下した2日の閣議決定である。韓国を輸出管理の優遇対象「ホワイト国」から除外する措置は、日韓両国の関係を根本的な危機に陥れかねない。元徴用工への賠償問題に端を発した日韓外交の頓挫が、韓国民衆の反日感情を煽り、さらに観光・文化・スポーツ交流の中止に加え、東京五輪ボイコットの動きすら出ている。
■8月下旬には更新期限を迎える、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が破棄される可能性も含め、東アジアの安全保障まで不安定となりかねない。北朝鮮のミサイル発射、ロシア・中国の両国軍機による竹島領空侵犯も、日韓対立のスキをついた揺さぶりとみられている。

■続くは米国・トランプ大統領の中国への経済制裁だ。新たに中国の輸出産品3千億ドル(約32兆2千億円)に、9月1日から10%の追加関税を課すと表明。トランプ大統領による対中制裁は1年半に及ぶ。米国の小売業界も衣料品や玩具、家庭用品、パソコンなど日用品の価格が上昇し、家計が圧迫されると反発。加えて原油相場は8%近く下落し、世界経済への影響は計り知れない。

■31年前、米ソ冷戦後の核軍縮の柱となった「中距離核戦力(INF)廃棄条約」すら、2日失効してしまった。「核なき世界」を目指す国際的な軍縮の機運が後退するのは必定だ。現に米国の国防長官が、「中距離ミサイルの開発を加速させる」と表明した。
■被爆から74年、今週8・6広島と8・9長崎を迎える。いま日本政府にとって最も緊急な課題は、核兵器禁止条約に参加し、核兵器廃絶に向けて世界の先頭に立つ、これに尽きる。(2019/8/4)
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2019年08月03日

植村東京訴訟 地裁も不当判決 被告の謝罪も賠償も棄却=編集部

 元従軍慰安婦の証言を伝えた1991年の記事で、執拗な「捏造記者」攻撃の標的にされた元朝日新聞記者植村隆氏の名誉棄損訴訟で東京地裁(原克也裁判長)は6月26日、名誉が棄損されたことを認めながら植村氏への謝罪と損害賠償請求を棄却。西岡力被告らを免責する「不当判決」を下した。植村氏は7月9日、「原判決には事実認定と法解釈に誤りがある」として控訴。植村氏の名誉回復の闘いは札幌訴訟(櫻井よしこ被告ら)に続き、高裁に舞台を移して続く。

名誉毀損認めるが

 判決は、西岡被告の植村氏への「捏造」との表現が事実の適示だと認め、植村氏の名誉が毀損されたことを認めた。つまり西岡被告と文芸春秋の表現と記事が「名誉棄損に該当する」と、植村氏が「捏造記者」でないことを認めているのである。

 だが原克也裁判長は西岡被告らを「免責」した。法廷で代読された判決理由要旨によれば「各表現は、公共の利害に関する事実について専ら公益を図る目的で行われた」「各事実について、その重要な部分が真実または真実と信ずる相当の理由…の証明がある。かつ、意見ないし論評の域を逸脱したものでもない」という。

 だが本当にそうか?判決は西岡被告が植村氏を「捏造記者」とした@金学順さんが妓生に身売りされた経歴を知りながら記事に書かなかったA義母の裁判を有利にするため、意図的に事実と異なる記事を書いたB「金さんが女子挺身隊として日本軍に強制連行された」と、意図的に事実と異なる記事を書いた、の3点について判断を下した。

 判決は@、Aの西岡被告の「真実性」を否定した。だが「推論として一定の合理性がある」と、真実相当性を持ち出して免責した。さらに最大の問題はBで、いきなり「真実性」を認めたことだ。つまり原裁判長は何の根拠もなく「植村には(金さんが)騙されて慰安婦にされたとの認識があったのに、意図的に強制連行と書いた」と認定し、西岡被告を免責したのだ。

判例の基準逸脱

これについて弁護団は「声明」で、「植村氏が嘘と知りながらあえて書いたか否か、本人に全く取材せず『捏造』と表現した(西岡被告)を免責しており、従来の判例基準から大きく逸脱したもの」と、厳しく批判。「また、金学順氏自ら『私は挺身隊だった』と述べており、騙されて中国に行ったが、最終的には日本軍に強制連行され慰安婦にされたと述べていた。騙されて慰安婦にされたことと強制連行の被害者であることは矛盾するものではない」と指摘した。また、裁判後の記者会見で弁護団の一人は「裁判所の認定は真実をねじ曲げ植村氏だけでなく「慰安婦」制度の被害者の尊厳をも踏みにじった」と、強い怒りを表明した。

10月10日 札幌結審

一方、札幌訴訟控訴審は7月2日、札幌高裁で第2回目の口頭弁論が行われた。裁判長が人事異動で交代し、新裁判長の冨田一彦・部総括判事(前神戸地裁部総括判事)の下、審理更新手続きと提出証拠の確認の後、植村氏が再度、意見陳述。「証拠をきちんと検討し、公正な判決を出していただきたい」と改めて訴えた。また、弁護団は一審の問題点を指摘した計3通の意見書・陳述書をもとに一審判決の取り消しを求める準備書面の要旨を説明。さらに弁論終結を求める櫻井側弁護団に対して弁論続行を求め、@東京、札幌両地裁判決に共通する問題点への主張書面A梁順任さん陳述書の補充書面提出を表明。

冨田裁判長の裁定で、次回口頭弁論を10月10日午後2時半から開き、その日に結審との日程が決まった。

歪んだ歴史観正せ

植村訴訟の札幌、東京両地裁は、ともに植村氏への「捏造記者」攻撃は名誉毀損だが、謝罪、賠償を免責するとの「不当」判決を下した。だが裁判では真の「捏造者」が櫻井、西岡両被告だったことが暴かれた。「問われているのはこの国のデモクラシーの根幹。だから怒りは静かです」。判決後、植村氏はこう述べた。両地裁の判決は「従軍慰安婦」を「公娼制度の下で戦地において売春に従事していた女性」と記述した。そこにあるのは「慰安婦」制度が被害者がいる強制売春だということを無視した「歪んだ歴史観」そのものだ。闘いはまだ続く。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月02日

【メディアウオッチ】 権力介入が常態化 JCJ6月集会 こびない情報発信で対抗=編集部

 JCJは6月29日、東京・飯田橋の法政大学でシンポジウム「安倍政権とメディア 攻防7年」を開いた。

 冒頭、共催の法政大学図書館司書課程の坂本旬教授は、このシンポは5月6日に法政大学で開いた『世界報道自由デー・フォーラム』のパート2にあたると挨拶した。

 次ぎにコーディネーターと4人のパネリストが発言した。

 シンポで考える論点について、和光大名誉教授でコーディネーターの竹信三恵子さんは「権力によるメディアへの介入」がポイントと述べた。

 沖縄タイムス編集委員の阿部岳さんは、海上保安庁が長官の記者会見前に記者クラブ加盟社を呼び出し、「沖縄二紙の記事は誤報だ」と説明したケースなどをあげた。

 NHK大阪報道部記者から大阪日日新聞論説委員に転じた相澤冬樹さんは、官邸寄りと言われる板野裕爾NHK専務理事についてこう語った。

「安保法制(2015年9月)をめぐり、国会包囲反対運動が続いていた頃、NHKはそれを一切報道しなかった。当時の板野放送総局長が抑えて出させなかった。取材していたNHK記者たちは『板野のせいで放送できなかった』と今でも言っている」

 東京新聞社会部デスクで「メディアで働く女性ネットワーク」会員の柏崎智子さんは、麻生太郎財務相をはじめ自民党国会議員がセクハラ問題に対し妄言を続けたのは、「これまでの記者の政治家への忖度による安心感からです」と語った。

 元NHKプロデュサーで科学ジャーナリストの林勝彦さんは、自らも制作に携わった福島原発事故の映画「いのち フクシマから未来の世代へ」の一部を上映。そして早期帰還政策は「放射能安全神話」を定着させたいためだと安倍政権を批判した。

朝日新聞OB記者の植村隆さんは、記者時代の慰安婦報道を右派ジャーナリストなどによって痛烈なバッシングを受けた。自分を攻撃した櫻井よし子氏や西岡力氏と安倍晋三首相との密接な関係を提示。その上で「巨大な敵と闘っている」と覚悟のほどを語った。

 後半は登壇者によるフリートーキング。相澤さんは「権力を監視するのはメディアではなく市民。メディアは忖度しない情報を発信し、市民に判断材料を提供するのが役目だ」と対抗策を示した。

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年08月01日

【メディアウオッチ】 韓国民主化運動支えた 伝説のジャーナリスト 札幌で植村裁判を支援 「言論弾圧に声あげねば」=林秀起

軍事独裁政権と闘った韓国の伝説的ジャーナリスト任在慶(イム・ジェギョン)さん、李富栄(イ・ブヨン)さんが7月3日、北海道大学で講演した(JCJ北海道支部など主催)。2人は韓国で植村隆さんを支援する団体を立ち上げ、札幌高裁で開かれた植村裁判も傍聴した。講演での両氏の発言を紹介する。

「忍耐は美徳」ではない

任在慶さんは、1988年に市民の出資で創刊されたハンギョレ新聞の初代副社長。韓国では「ムチで打たれても痛いと言えず、腹が空いても言えない時代が続いてきた。圧力が強ければ反発も強まる。(ハンギョレ新聞)創刊は、言論弾圧に対する人々の強い反発の結果だった」と話す。

 「『忍耐は美徳だ』というのはウソだ」と強調した。

 同国では、かつて李承晩(イ・スンマン)大統領を退陣させた民主化運動のなかで誕生した新聞が、40日で廃刊に追い込まれ、創設者は北のスパイとして処刑された。そんな国柄で、生まれたてのハンギョレ新聞を守ったのは読者、市民、広告主たちだった。創刊時2万7千人の株主は今6万9千人。発行部数は50万部という。

 「株主は一度も配当を受けていない。それはハンギョレ新聞のあり方に納得してくれているからだと思う」

 時代の大きな流れ、運動の方向が味方したともいう。民主化闘争で軍事政権が終結に向かい、経済的平等への志向が強まった「時の運」が、ハンギョレ新聞を生んだと振り返る。

 「時の運は、偶然には生まれてこない。日本の言論の自由は、憲法9条を変えようとしている勢力との戦いに左右される。国の主権は、君主や大統領にあるのではない。人々が『国民主権』をどれだけ意識しているかにかかっている」「言論の自由が保障されている日本で、人々は言うべきことを言っているのだろうか。慰安婦報道で裁判を闘っている植村隆さんのように、不当な攻撃には声をあげなければならない」とも指摘した。

弱まる言論の発言力

李富栄さんは元東亜日報記者。44年前、朴正熙(パク・チョンヒ)政権の言論検閲に抗し、解雇され投獄された。

「特派員をはじめ日本の人々は、私たちの闘いをずっと支援してくれた。だから慰安婦報道で植村隆さんが攻撃されているのは、信じ難い」

 1965年の日韓条約反対の学生運動にかかわった。「条約は朝鮮併合、植民地支配の反省もないところで結ばれた。経済協力金は『独立祝賀金』とされた。河野談話や数々の首相談話、平成天皇の『痛惜の念』表明は、植民地化への謝罪だが、安倍政権はすべて覆した」

 東亜日報の約200人が、自由な言論の実施を宣言して朴正煕の検閲に対抗した。全国35社の言論人が同調した。新聞広告を出させない圧力で白紙になったスペースに、市民の激励広告が寄せられた。しかし会社側は圧力に屈し、朝鮮日報と合わせ166人を解雇した。

 「軍事独裁政権を終わらせないと記者には戻れない。民主化運動の全国組織を作る一方、金大中(キム・デジュン)、金泳三(キム・ヨンサム)ら野党指導者などとの橋渡し役も務めた」。大統領の直接選挙制を目指す改憲運動で、4回目の逮捕。度重なる刑務所暮らしで親しくなった保安係長から、ソウル大生が水攻めの拷問で死亡したこと、犯人とされる捜査官2人がここにいるが真犯人3人は外にいることを知った。

 「保安係長に、私との面談記録は廃棄しろと伝えた。私が何をしようとしているのか彼は察したと思うが、黙って見過ごしてくれた」。事件の真相は外部の協力者を通じて暴露され、大統領直選制に結び付いた。「私は記者の使命を果たせて満足している」

 「政治は残酷なものだ。議席を得るようになった政治家は『在野の者は口を出すな』という態度に変わっていく。復職の望みを断たれた記者たちは『自分たちで新聞を作ろう』と思い立った。それがハンギョレ新聞となって実を結んだ」

 新聞などのメディアは以後急増したが、大資本の影響力も強まり、保守化が進んでいるという。「大新聞が変節、SNSの発達で、正当な言論の発言力が弱まっている」のが今の課題という。

林 秀起(北海道支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月31日

【リアル北朝鮮】 電力不足解消の証? ビール缶の写真掲載=文聖姫

朝鮮総聯機関紙の朝鮮新報(2019年7月17日付2面)に興味深い写真が掲載されている。樹脂ボトルと缶の大同江(テドンガン)ビールである。

 拙著『麦酒とテポドン』(平凡社新書)でも紹介したことがあるが、北朝鮮の大同江ビールは実においしい。2003年に朝鮮新報平壌特派員をしていた頃は、ほぼ1週間に1度の割合でビール工場に通った。工場で直売するビールを5ケースぐらいずつ購入していた。支局の冷蔵庫にビールを入れておくと、すぐになくなった。「案内員」と称されるガイドら現地の人々にふるまっていただからだ。

 酔ってくると本音が出てくるのは北朝鮮の人たちも同じ。彼らから取材のときとは違う話が聞けるから、ビールの代金など安いものだった。

 大同江ビールは北朝鮮の人々に大人気。平壌市内には大同江ビールを飲ませる店がいくつもあった。ビアホールは仕事の帰りに一杯ひっかけていく労働者らでにぎわっていた。

だが、私が頻繁に訪朝していた2010年代の初め頃に缶ビールはなかった。缶ビール販売の再開は16年8月。大同江ビール工場のキム・グヮンヒョク工場長は、対外市場に出しても遜色のない「大同江ビール工場を代表するビール」(朝鮮新報朝鮮語版・電子版17年3月13日付)と自画自賛していたが、この発言を見る限り、缶ビールの海外輸出を目指していたことがうかがえる。同じ頃、平壌では外国人客も招待して「ビールの祭典」が開催された。ガイドブックまである。

もし、アルミ缶ビールの大量生産が可能になったとすれば、電力不足の解決にメドがついたともいえるかもしれない。もちろん、写真だけで判断するのは早計すぎるかもしれないが。

 世界的にも評価の高い大同江ビールだが、いまは経済制裁下で輸出もままならない。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月30日

【編集長EYE】 武村元官房長官 会見の心構えを語る

 新聞労連は6月下旬に東京都内でシンポジウム「官邸会見の役割を考える」を開いた。

 このシンポには菅義偉官房長官と東京新聞社会部・望月衣塑子記者との官邸バトル≠ェ背景にある。これの波紋は大きかった。官房報道室長が内閣記者会に望月排除≠ほのめかすような申し入れをした。これに対して新聞労連などマスコミ労組は報道の自由を制限し、国民の知る権利を阻むと官邸前で抗議行動を展開。シンポはこの問題を広く知ってもらうため企画された。

 現在、菅長官との会見は平日の午前11時と午後2時の2回実施されている。金曜日の午後は記者会に非加盟だが、特定の雑誌記者やフリージャーナリストが出ている。

 シンポに出席した細川護熙内閣(93年8月から94年4月)で官房長官を務めた武村正義さんは「私の頃は2回の会見に加えて記者懇談会を午後3時と夕方に行った。1日に4回記者とお付き合いした」と振り返った。

 続けてこう言った。

 「官房長官は政府の広報官です。情報を隠さない∞捏造しない∞身構えない≠モットーに会見に臨んだ。従って知らないことは『知らない』と答え、答えられないことは『答えられない』と言った。質問の制限や拒否は官房長官の姿勢としてよくないと思っていた」

 加計学園疑惑で「総理のご意向」と書かれた政府の内部文書を菅官房長官は「怪文書」と打ち消したが、これについても語った。

 「あるものを隠すという発想は取らなかった。クロをシロと言いくるめるウソを繰り返すと政府は信頼を失う。そういうことはしませんでした」

 同じくシンポに出席の毎日新聞政治記者30年・与良正男さんによると、官邸側はこちらの都合の悪い話を報じない新聞・テレビがあると自信を深めている。状況を打ち破る糸口はあるのか。

 「(望月記者のような)気概のある人が多く出てくれば、政治は変わると思う」(与良さん)

 そうなればいいのだが……。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月29日

【メディアウオッチ】 出版界は制度疲労 『出版ニュース』元編集長・清田さんが講演=土居秀夫

『出版ニュース』誌と『出版年鑑』で知られる出版ニュース社が今春、惜しまれつつ経営の幕を降ろした。その代表で、長年JCJ賞選考委員も務めた清田義昭さんが、6月28日の出版部会例会で、「『出版ニュース』編集50年―いま出版界に大切なこと」―と題して語った。

清田さんは冒頭、比較哲学への関心を経てアカデミズムについて考えるようになり、その中で出版への興味を深めて出版ニュース社に入社したことなど、出版界との関わりの原点を振り返った。

 出版ニュース社は当時、国会図書館への納本事務を行っていて、常に新刊に目を通せたこと、入社2年目以降は自分のプランが誌上で実現できるようになったことから、清田氏は、自身と『出版ニュース』の業界ウォッチとしての役割を自覚するようになったという。

出版支える再販制

 出版は、多品種・少量生産で、ときには反公共的な面もある点で、大資本で公共性や公益性を求められる新聞、放送とは、大きく異なる。そこから清田さんは、出版・表現の自由は流通の自由なくしてはありえないことを強く意識するようになった。そして出版・表現の自由は「守る」のではなく「拡げる」ものだと強調。現在も年間出版点数は8万点もあるが、誰もが手がけられるメディアとして当然なことで、それを支えているのが再販制(再販売価格維持制度)と委託販売だと、講演の主題へ話を移した。

 オイルショックでも成長を続けた出版業界に対し、公正取引委員会が、定価の高さ、断裁の無駄、流通の非効率などから出版物の再販制廃止を言い出し、騒然となったのが78年。業界側は、寡占化や流通の困難、中小出版の経営悪化の恐れなどを挙げて反論し、『出版ニュース』も「再販ニュース」と言われるほど、この問題に取り組んだ。

 公取委は結局、2001年に再販制存置を決めたが、電子出版物は除外。同じ著作物でありながらそうなったのは問題だと、清田さんは指摘した。

深刻アマゾン問題

 出版業界は80年代以降、雑誌が牽引する「雑高書低」の成長を続けたが、1995年がピークで、同年、ウィンドウズ95が発売されたのが大きな分岐点となったと分析。以後、右肩下がりが止まらず、いまや「雑低書高」となり、雑誌の時代は終わった。それが中小書店の経営を打撃し、日書連の書店は3000店にまで減少したこと、2000年のアマゾン参入後は、ポイント制や割引販売、出版社との直接取引などで再販制が事実上、無視されていることを述べた。

 一方、業界は出版社、取次、書店とも対応はバラバラだ。その結果、再販制がなくなればかつて業界が危惧したことが起きるだろう。「制度疲労」といわれるが、どこがなぜ疲労しているのか、運命共同体である業界三者で議論・検証する必要があると主張した。

 国会の活字文化議員連盟の「公共図書館プロジェクト」が出した答申でも、書店の疲弊と図書館問題を取り上げているが、書店は読者と出版界が向き合う最前線であり、その問題を起点に再販制の議論をしていくべきだと提案して、講演を終えた。

 講演後の質疑応答でも再販制とアマゾンが話題となり、この問題の大きさが改めて浮き彫りにされた。  

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月28日

【今週の風考計】7.28─「祇園祭」に厄除・無病息災への願いを込め

今年の祇園祭は、創始1150年のアニバーサリーイヤー。平安時代初期の貞観11年(西暦869年)、京の都に疫病が大流行したとき、厄災の除去を祈ったことから始まる。7月1日から1カ月間続く。

念願かなって、7月24日の後祭・山鉾巡行を観にいくことができた。山鉾巡行は、八坂神社に鎮座の牛頭天王を楽しませる神賑わいとしての行事。
蝉が御池通りの街路樹でうるさいほどに鳴いている。この日、朝9時にして32度を超える真夏日。烏丸御池をスタートした「橋弁慶山」を先頭に、山鉾11基が、それぞれの町の伝統と歴史と誇りをかけて、意匠を凝らした金糸銀糸のきらびやかな前・胴・見送り懸けや欄縁が台車に巡らされている。

最重量は12トンにおよび、最高は地上から山鉾のてっぺんまで25メートルになる。巡行に就く者は、武士の正装によるお供が二十数名、鉾に乗る人形方数名、コンチキチンと祇園囃子を奏でる鉦・笛・太鼓の囃子方40人、曳き手46人、そのほか約30人。
とりわけ北観音山、南観音山、掉尾の大船鉾、この3山鉾の壮観さには圧倒された。御池河原町の四つ辻で、竹を敷きならべて車輪を90度回す辻回しの掛け声や一気に力を合わせる曳き手の捌きは見事だ。

続く花傘巡行も2年ぶりの開催。色とりどりの花傘の女性や4花街の芸妓・舞妓が載る屋台、子ども神輿が練り歩く。
 翌日、帰宅して玄関口に粽を飾った。厄除けと幸せを祈願する「蘇民将来子孫也 大船鉾」の護符が添えてある。

その後、祇園祭の大切な神事は、山鉾巡行後の夕刻より始まるのを知った。24日夜の「還幸祭」である。17日から四条御旅所に鎮座していた3基の神輿を、白い法被姿の担ぎ手たちが、「ホイット、ホイット」の掛け声とともに、頭上に掲げて激しく揺さぶり、飾り金具の音を響かせながら八坂神社へ戻す神事。
さらに28日夜8時からの神輿洗い。四条大橋の中ほどで鴨川から汲みあげた水で、神輿を清める。31日は疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)。八坂神社内の摂社・疫神社で祇園祭を締めくくる最後の行事。
 神前に粟餅を供え、鳥居に茅の輪(ちのわ)を設けて厄除・無病息災を祈願する。茅の輪を八の字を描くように合計3回くぐると、厄除けのご利益があるという。(2019/7/28)
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2019年07月27日

【沖縄リポート】 ハンセン病元患者 本土以上に過酷な運命=浦島悦子

 国の強制隔離政策によって、元患者だけでなくその家族も甚大な被害や差別を受けたとして561人が提訴したハンセン病家族訴訟で、熊本地裁は6月28日、国の責任を認め賠償を命じる判決が出た。安倍晋三首相は7月9日、控訴しないことを表明、12日には謝罪の首相談話を発表した。参議院選向けのパフォーマンスという側面は否めないにしろ、原告勝訴が確定した。

 しかし、原告や元患者の多くは、これを手放しでは喜んでいない。生死をも左右した深刻な差別被害に見合わない、あまりにも低額の賠償。2001年の熊本地裁判決(元患者による訴訟で隔離政策を違憲とし、国が謝罪)以降の被害については国の責任を否定し、原告のうち20人の請求を棄却したこと。そして、原告の約4割を占める沖縄の家族(250人)にとっては何よりも、米軍統治下の被害について日本政府の責任を認めなかったことは、あまりにも不当だ。

 沖縄の元患者・家族は、「本土防衛」のための捨て石とされた沖縄地上戦によって、「本土」とは異なる被害を強要された。1944年3月に沖縄入りした日本軍がまず行ったのが、軍民混在の地上戦に備え、「戦闘の邪魔になるハンセン病者の一掃」をめざす沖縄島全土での「患者狩り」=「軍収容」だった。こうして、沖縄愛楽園(「療養所とは名ばかりの強制収容所」=元患者の言葉)に定員の2倍以上も押し込まれた人々は、劣悪な居住環境や強制労働、不自由な体を押しての防空壕掘りなどで病気や後遺症を悪化させ、沖縄戦前後の1年間で300人近くが命を落とした。

 愛楽園の収容人数が1000人を超え、最も多かったのは戦後すぐだ。戦争による劣悪な衛生・栄養状態の中、ハンセン病を発症する人が増え、沖縄を占領した米軍は、日本の隔離政策を引き継いで強制収容を行った。しかしこれによって日本政府の責任が免罪されるとは思われない。沖縄の元患者・家族を、「本土」より格段に苛酷な状況に追い込んだのは、沖縄を戦場にし、米軍に売り渡した日本政府だからだ。

 原告・弁護団は「本土」と一律の補償を求める方針だが、むしろそれ以上に手厚い対策を取ってしかるべきだ。ある元患者は「(元患者以上に)それぞれの家族の状況は複雑だ」と語った。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月26日

【メディアウオッチ】6月~7月=編集部

◇ロシア記者軟禁で抗議の200人を拘束
ロシアの独立系ニュースサイト「メドゥーザ」のイワン・ゴルノフ記者が麻薬密売容疑で捜査当局に一時軟禁されたことに抗議する市民ら数百人以上が12日、モスクワ中心部に集まった。野党系サイトによると約200人が拘束された。(「東京」6月14日付ほか)

◇「性別確認」BPOが審議〜読売テレビのニュース番組
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は14日、番組内のコーナーで一般人の性別をしつこく確認する様子を放送した読売テレビ(大阪市)のニュース番組「かんさい情報ネットten.」について審議入りすることを決めた。問題となったのは、5月10日に放送した街角ロケのコーナー。飲食店員から「(常連客に)男の人か女の人か聞いて」と依頼を受けたお笑い芸人が、常連客の同意を得て胸を触ったりする模様を流した。(「毎日」6月15日付ほか)

◇NHK同時配信、費用上限順守を〜民放連会長
民放連の大久保好男会長は14日の会見で、NHKに放送番組のインターネット常時同時配信を認める改定放送法が成立したことを受け、「NHKには配信費用の現行枠をしっかり守ってもらいたい」と述べた。受信料収入の2.5%までと定められたネット関連業務の上限順守を訴えた。(「しんぶん赤旗」6月16日付ほか)

◇関テレ「ヘイト」放送、番組で謝罪
関西テレビが5月18日放送のバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」で、作家の岩井志麻子氏の「(韓国人は)手首を切るブスみたいなもん」とヘイトと受け取られかねない発言を編集せずに放送した問題で、同社は22日昼の番組冒頭で謝罪した。(「毎日」6月23日付ほか)

◇大阪市、街宣ヘイト初認定
ヘイトスピーチ抑止を目的とした条例に基づき、大阪市の有識者審査会は2日までに、2016年9月の大阪市内での街宣活動と、その音声ファイルをインターネット上で公開した行為がヘイトスピーチに当たると認定し、市に答申した。街宣活動の認定は初めて。(「神奈川」7月3日付ほか)

◇NHK、吉本興業に要望
吉本興業のお笑い芸人らが振り込み詐欺グループの宴会に参加し金銭を受け取っていた問題について、NHKの上田良一会長は4日の会見で「番組の出演者をめぐって視聴者から不信感や疑念を抱かれることがないよう、しっかり対応して参りたい」と述べた。担当者によると、番組制作に影響が出かねないような情報があれば、速やかにNHKに伝えるよう求めたという。(「朝日」7月5日付ほか)

◇一部記者排除「独裁政権のよう」〜NYタイムズが批判
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は5日、東京新聞の望月衣塑子記者を紹介する記事を掲載した。菅義偉官房長官らに対して多くの質問を繰り出すことで、日本の報道の自由にとって「国民的英雄のような存在」になっていると指摘した。背景として、日本政府は一部の記者を会見から排除するなど「独裁政権のような振る舞い」をすることがあると批判。日本には多くの記者クラブがあり、所属する記者たちは情報を得られなくなることを恐れ、当局者との対立を避ける傾向があるとの見方も紹介した。(「東京」7月7日付ほか)

編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月25日

【メディアウオッチ】NHKもテレ朝も「安倍忖度」人事 「官邸御用聞き」専務理事に3年ぶり復帰 政権批判の経済部長 報道局からパージ=河野慎二

 このところ、安倍晋三政権寄りとの批判が強まるテレビ朝日で7月1日、それを印象づける報道局幹部の人事があった。「報道ステーション」のチーフプロデューサー(CP)として、テレビ朝日の報道を支えてきた松原文枝経済部長が報道局から外され、イベント事業戦略担当部長に発令された。

不正追及崩さず    
 松原部長は「報ステ」CPを務めた2016年、「ワイマール憲法の教訓」を題材に安倍改憲の危険性を取材した映像で、JCJ賞を受賞している。
 経済部長就任後も、政権の不正追及の姿勢を崩さず、年金に関わる「2千万円不足問題」では、テレ朝記者が麻生太郎財務相追及の口火を切った。重要な局面では松原部長自身が記者会見に出席し、現場記者を支えた。テレ朝記者の質問に麻生財務相は「またテレビ朝日か。ものの見方が俺たちと全然違う」と敵意を隠さなかった。
 この点について、森友学園疑惑のスクープ取材を巡る配転命令でNHKと訣別した相澤冬樹氏がJCJの6月集会で「松原経済部長は政権を忖度せず、真っ当にニュースを出してきたから、それがダメだとして配転された。何が何でも、報道の外に出すという(上層部の)意思がある」と指摘した。
 その上で相澤氏は「早河洋会長と近い見城徹氏がテレビ朝日番組審議会の委員長に就任してから『報道ステーション』をヤリ玉にあげるなど、今回の松原氏外しにつながった」と松原経済部長の異例な人事の背景に言及した。

見城徹氏の役割
 見城氏については本紙6月号で記事にしたが、ベストセラーづくりの名物編集者で幻冬舎の社長。もう一つ安倍応援団≠フ顔を持ち、知人や友人を安倍首相に引き合わせている。
 早河会長も13年3月見城氏の紹介で安倍首相と会食。これを境にテレビ朝と安倍官邸の距離は急速に縮まり、NHKに劣らずアベチャンネル化≠ェ進むのではないかと懸念が広がる。松原氏のもとには「誰が見ても左遷人事だ。大変だけど頑張れ」と激励する仲間が少なくない反面、若い後輩からは「テレ朝にとって、想像以上のダメージです」「テレ朝報道の終わりの始まり。政権監視は当たり前なのに、安倍忖度≠ナすね」などのメールが送られ、衝撃が広がった。

内示後もスクープ
 松原氏は「萎縮したら、向こうの思うツボ。ひるまず、取材を続けて」と返信。「私もへこんでばかりではいられない」と前を向く。
 異動内示後も松原氏は、農水省が所管する政府系ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」のズサンな融資と累積損失の実態をスクープする。「支援機構」には、国が300億円を出資している。
 松原氏自ら「報道ステーション」(6月25日)に生出演し、独自に入手した「支援機構」の内部文書をもとに、国民からの資金で運営する財政投融資が食い物にされる危険性を解説した。
 さらに彼は、立教大学が開催した「国際カジノ・シンポジウム」の取材を指揮した。「日本統合型リゾート〜健全社会のIRを目指して」と題して5日から開催されたが、実態はカジノの人材養成講座で、文学部と社会学部の教授会が総長に連名で抗議。豊島区も後援を取りやめた。
 テレ朝は学内で教授や学生にインタビューを行い「立教はカジノに魂を売るな」などの声を伝えた。この「カジノ・シンポ」を取材したのは、民放ではテレ朝だけだった。
 権力の不正に迫ろうとする松原氏の姿勢に揺らぎはない。しかし、報道強化に欠かせない貴重な人材を報道局からパージするテレ朝首脳の判断は、安倍官邸の評価は得ても、視聴者の信頼は失うだけだ。

裏で密かに蠢く
 一方、NHKでは、籾井勝人元会長の側近・板野裕爾氏の専務理事復帰で、テレ朝以上に安倍政権御用化≠ェ進むことが危惧されている。
JCJが参加する「NHKとメディアの『今』を考える会」は6月25日、NHK前で板野氏の退任を求める集会を開催した。大貫康夫さん(元NHKヨーロッパ総局長)はこう言った。「NHKは政権べったりで、公共放送と言えるのか。板野専務理事の仕事は裏で蠢くことではない」。
各参加者は口々に板野即刻退任の声を上げた

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月22日

【お知らせ】JCJ賞、決まる! 8月17日(土)に贈賞式と記念講演(どなたでも参加できます)

2019年度のJCJ賞が決まりました。
8月17日(土)午後1時からの8月集会で贈賞式があります。

元文科省事務次官の前川喜平さんが「私が見た『安倍官邸とメディア』」のテーマで記念講演をします。
会場は東京・内幸町のプレスセンターホール。日本プレスセンタービルの10階です。
参加費は1000円(学生と障がい者手帳をお持ちの方は無料)。
予約いりません。どなたでも参加できるオープンな集まりです。どうぞ御来場ください。
詳細は下記をご参照ください。

【JCJ大賞】 
○「税を追う」キャンペーン 東京新聞社会部 
 
【JCJ賞】 4点(順不動)
○『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』みんなのデータサイト出版
○「イージス・アショア配備問題を巡る一連の報道」
 秋田魁新報社・イージス・アショア配備問題取材班
○「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの“心”」山形放送
○ ETV特集『誰が命を救うのか 医師たちの原発事故』NHK

問合せなどは、下記事務局までお願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1−18−1  千石屋ビル402号
電話 03-3291-6475 FAX 03-3291-6478
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8月集会・JCJ賞贈賞式PDF版チラシ2019年8月集会.pdf
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2019年07月21日

【今週の風考計】7.21─参院選後、すぐに襲ってくる3つの危機

参院選が終わったとたん、安倍首相が封印し、国民の前に明かさなかった安倍・トランプ密約″が暴かれる。日本の「農産物や自動車・サービス」へ、米国から要求される法外な内容を、暗黙に受け入れるという疑惑取引である。
TPPを離脱したトランプ政権が、日本を2国間交渉のFTAに引きずり込み、8月中にも、日本が輸入拡大で大幅に譲歩する日米合意へもっていく狙いだ。24日にはワシントンで日米両国の事務レベル交渉が始まる。

さらにトランプ大統領はイラン包囲網を視野に、「有志連合」構想をブチあげた。19日には日本も含む世界60か国の外交関係者を招いて、非公開の説明会を開いた。ホルムズ海峡の安全確保に向けて、各国は護衛艦や要員の派遣あるいは経済的な支援を選択肢として挙げている。さっそく日本の防衛省が検討に入った。
それにしてもトランプ大統領の「自作自演」ぶりには呆れる。イランとの緊張を高めたのは、イランとの核合意を離脱し、イラン産原油の禁輸報復に加え、戦争ボタンを押す寸前までの冒険をしたトランプ本人にある。その責任はどうなるのか。
日本は25日のフロリダで開かれる、「有志連合」オペレーション検討会議に、どのような顔して参加するのか。大いに気になる。

日韓関係も緊張が深まるばかり。日本は徴用工問題と絡めての半導体材料の輸出規制など、韓国への経済制裁がエスカレート、対立は長期化しそうだ。G20大阪サミットで、自由貿易の原則を再確認したばかりなのに、政治的テーマに絡めての経済制裁は「禁じ手」とのそしりは免れない。韓国は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も再検討カードに入ると示唆する。
徴用工問題は、1965年の日韓基本条約で国家間の請求権は放棄されても、被害者個人の請求権は残っている。日本企業に補償を求める行為は、裁判所の判決でも認められている。この前提で、被害者の名誉や尊厳を回復するため、人道上の解決に向け、両国政府は全力を挙げるべきだ。(2019/7/21)
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2019年07月17日

【2019年度JCJ賞】大賞は東京新聞「税を追う」キャンペーン報道 ほかにJCJ賞4作品を決定

7月13日のJCJ賞選考委員会で、次の5点を受賞作に決定しました。
選考委員:諌山 修 石川 旺 伊藤洋子 酒井憲太郎 柴田鉄治 鈴木 耕

【JCJ大賞】 
「税を追う」キャンペーン 東京新聞社会部
受賞理由: 深刻な財政危機に直面しながら、安倍政権は税金の無駄遣いを続ける。米国からの兵器爆買い急拡大で、5兆円を突破した「兵器ローン」の 実態を浮き彫りにした第一弾。教育や社会福祉など国民生活を犠牲にした軍事費を皮切りに、キャンペーンは、沖縄・辺野古の米軍新基地建設や東京五輪などにテーマを広げ、昨年末の予算編成論議にも影響を与えた。政策の是非を丹念に検証し、利権や既得権をあぶり出す手法や報道姿勢は、多くの読者や識者などから高い評価を得ている。 

【JCJ賞】
『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』みんなのデータサイト出版
受賞理由:「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」が、福島原発事故後、3400カ所以上から土壌を採取・測定し、延べ4000人の市民の協力で2011年3月のセシウム推定値の「県別土壌マップ」(第1章)をまとめた。放射能プルームの動き、100年後の予測も入れた。第2章で食品についての不安を解消し、自分の“物差し”が持てる。第3章「放射能を知ろう」では、放射能の基礎知識、チェルノブイリとの比較などが深く学習できる。国はやらない、市民の市民による市民のためのA4判放射能必読テキスト。

「イージス・アショア配備問題を巡る一連の報道」 秋田魁新報社・イージス・アショア配備問題取材班
受賞理由: 2017年秋に始まったイージス・アショア配備問題は秋田、山口県を直接、世界大の問題に突き当たらせている。秋田魁新報は県民の不安に寄り添い、判断材料を誠実に提供していく中で、問題の真意を多角的に探り、県民の声、県知事、市長の取材、議員アンケート、ルーマニア・ポーランドルポを続けた。そして、公立美大での卒業謝辞削除事件を浮かび上がらせ、後に防衛省の適地調査の杜撰さをあぶり出させることになる。配備反対の声は実現していないが、ここには、権力の監視を地で行く地域ジャーナリズムの力の真骨頂がある。

「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの“心”」 山形放送
受賞理由:児童文学者・国分一太郎は1930年、山形県の小学校で教職に就き、「想画」と呼ばれる生活画教育と、「生活綴り方」教育に打ち込んだ。凶作に見舞われた中で、たくましく生きる村人たちの暮らしを、子供たちは生き生きと画に描き、作文に綴った。しかし、国分の教育にも戦争の影が忍び寄り、治安維持法で罪に落とされる。安倍一強政治のもとで「共謀罪」は治安維持法との類似性が指摘される。制作者は、自由に表現できる未来に向けて「釘一本を打ち込みたい」と考え、番組を世に送り出した。

ETV特集「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」 NHK
受賞理由:東電福島第一原発の爆発事故発生直後、広島などから多くの医師たちが現場に入り、汚染された住民や爆発で負傷した自衛隊員の治療など、被ばく医療の最前線で奔走した。医師たちの多くは沈黙を守り、その結果、彼らの多様な体験が十分政策に反映されないまま、各地で原発再稼働が始まることになった。取材班は、治療にあたった医師たちをしらみつぶしに訪ね歩き、医師たち自身の撮影による3000の写真と映像を入手。当時の医療現場のすさまじい実態の全貌を初めて明らかにした。                       

JCJ賞贈賞式:8月17日(土) 13:00〜 プレスセンターホール(東京・内幸町)
案内チラシ・PDF版2019年8月集会.pdf

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2019年07月16日

【参院選】 争点は「改憲」「安倍政治」 野党が政策合意 自民 若者対象の新広報戦略展開=丸山重威

2019年参院選は「老後の生活には2000万円の準備を」という金融審議会報告とその受け取りを拒否するという麻生太郎副総理・財務相の前代未聞の対応で同日選はなくなったが、自民党が5つの政策の中に「早急な改憲」を掲げ、「憲法」が争点の中心におかれることになった。

全一人区で統一

 一方、立憲民主党、共産党、国民民主党、社民党と、衆院の「社会保障を立て直す国民会議」の5野党・会派は5月29日、「市民連合」が示した安保法制(戦争法)の廃止など13項目の「共通政策」に合意。6月初めまでの協議で、参院選の1人区全32区での野党統一候補が決まった。

市民連合の政策を野党が合意しての統一は、2016年参院選、17年衆院選に続くもので、17年にはなかった「改憲発議」そのものへの反対や、「沖縄・辺野古新基地建設反対」、「消費増税中止」、「原発再稼働反対」「防衛予算削減」などが入り、国政の根本問題での共通の主張が明確にされた。メディアについても「放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築する」が第13項に入っている。

「新時代」で宣伝

 これに対し自民党は6月7日「日本の明日を切り拓く」と題した参院選政策を発表した。

 内容は@力強い外交・防衛A強い経済B誰もが安心、活躍できる人生100年社会C最先端をいく元気な地方D復興・防災E憲法改正を目指す−の6項目を挙げ、都合のいいことを並べた「令和新時代・伝統とチャレンジ」とのキャンペーン。しかし、「改憲」には「早期の憲法改正」と具体化を強調した。

 その一方で、自民党は若者と女性を対象にした「#自民党2019」と名付けた新広報戦略を進めている。歌・ダンス・落語などで活躍する10代の若者たちが登場する動画を展開。女性誌「vivi」の6月10日のウェブ版は「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?」のタイトルの企画広告を掲載。どんな世の中にしたいかを投稿した人からモデルの思いを印刷したTシャツを贈るという。

ムード選挙狙う

自民党・安倍政権は、令和―代替わり―トランプと続いた社会フィーバーの流れの中で参院選と「改憲」発議を実現しようとの大戦略をつくってきた。この結果、5月の内閣支持率と不支持率はNHK調査支持48%、不支持32%、JNN(TBS系)支持59・1、不支持36・9%、共同通信支持50・1%不支持36・2%など、軒並み上昇、不支持率も減少の傾向を見せた。

 自民党は、世論調査で「参院選で投票したい政党・候補者は?」という質問に、「自民党」との答えが、全体では約40%なのに、18〜39歳では50%だったことを見た、という。

 自民党は「新聞を読まず、SNSを日常的に使う若年層の支持」を期待してムードに訴え、彼らの心を掴む」という作戦で、有権者の半数を占める無党派数の支持を獲得する作戦だ「新時代」に自民党、「新時代」に憲法改正、のムードを駆り立てようとしている。


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
posted by JCJ at 08:27 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月15日

【内政】 基地取材 大きく制限 改正ドローン規正法施行 新聞協会「極めて遺憾」=新藤健一

飛行禁止区域を米軍基地などにも広げる改正ドローン規制案が6月13日施行された。日本新聞協会編集委員会は遅ればせながら「極めて遺憾」との談話を発表した。

6月6日には、岩屋毅防衛大臣に要望書を提出し、「施設指定」と「飛行同意」の基準を作成、制限はこの範囲に限ることを求め、同意しない際は合理的理由について申請者の報道機関に誠実に説明するよう求めた。在日米軍施設・区域に関しても同様だ。

要塞地帯法の復活

改正案が成立前日の4月16日、参院内閣委員会では、社民党の福島みずほ議員が「これは要塞地帯法でないか」と質した。要塞地帯法は日露戦争後の明治32年7月、勅令で公布された。一定距離内を要塞地帯と指定し、地域内への立入り、撮影、模写、測量、築造物の変更、地形の改造、樹木の伐採などが禁止、制限された。罰則と軍機保護法で規制された。

 「ドローン規制法は、非常時には拡大解釈される恐れある」との危惧は去っていない。

 それだけではない。すでにドローン取材については、電波による妨害が行われているのではないか、との危惧がある。

辺野古で妨害?

沖縄の米軍基地をドローンで取材してきた琉球新報の花城太カメラマンは、「辺野古上空に近づくとコントローラーに障害物を検出しました、という警告が出て驚いた」という。「その瞬間、機体は前進できなくなる。高度を落とし低空50メートル位に入ると飛べるが、こうした現象は3、4か月前から始まっている。基地から妨害電波を出しているのだろうか」と語る。

 ドローン取材は、基地取材では極めて重要だ。例えば、辺野古建設に注目が集まる陰で、キャンプシュワブに隣接した辺野古弾薬庫では大規模な改造工事が進んでいる。

海兵隊唯一のこの弾薬庫は、以前から、核・生物・化学兵器貯蔵の疑惑が絶えない。私は「沖縄ドローンプロジェクト」が撮影した画像をもとにこれを報じたが、規制法が施行されるとこうした取材や市民の監視活動がやりにくくなることは明らかだ。(「週刊金曜日」3月17日号)

「基地隠し戦略」進む

いま、沖縄の辺野古新基地建設と併せ、南西諸島への自衛隊進出が進んでいる。

 与那国島には沿岸監視隊が配備され、宮古島には南西諸島全域の司令部が置かれ、大規模の駐屯地が作られた。石垣島にも、大規模の部隊配備が進んでいる。

防衛省は既に2012年、米軍のキャンプシュワブとキャンプハンセンの部隊と島嶼に置く自衛隊によるで共同作戦構想をたてている。

 南西諸島での自衛隊基地建設は、辺野古の米軍新基地建設と連動、「基地を見せないドローン規制」もこれと密接に関わっている。

新藤健一(フォトジャーナリスト)

 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年07月14日

【今週の風考計】7.14─いま迫ってくる「報道の自由」への牙

★「報道の自由のための国際会議」が、10日と11日、ロンドンで開催された。100以上の国から閣僚級の代表者や学者、報道関係者など約1500人が参加。サウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件やミャンマーでの記者収監など、報道の自由の侵害状況や改善策について意見交換したという。
★だが英国とカナダ政府が主催する会議で、「権力を監視・批判するメディアが報道の自由」を、権力者とともに論ずる居心地の悪さは、ぬぐえなかったと漏らす参加者も多かったという。

★さて「国境なき記者団」の調査によると、昨年、報道によって殺害されたジャーナリストは少なくとも99人、前年より15%増えている。新たに投獄された被害者は348人、人質となった者60人。しかし殺害犯が責任を問われることはほとんどない。
★4月半ばには、2019年の「報道の自由度ランキング」も発表している。180カ国・地域のうち、トップはノルウェー、2位がフィンランド。米国は「報道の自由度」が、初めて「問題あり」に格下げ、「トランプ大統領のフェイク・コメント」やジャーナリストへの敵対的な風潮が要因となり、45位から48位に順位を落とした。

★日本は前年と同じ67位だが、沖縄の米軍基地などを取材するジャーナリストへのバッシング攻撃が指摘されている。とりわけ安倍政権の報道対応が国際的な関心事となり、官邸における新聞記者への質問制限について、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、<日本は報道の自由が憲法で保障されている民主国家だが、時には独裁政権のように振る舞っている>と批判している。
★記事は、これまでの官邸における経過を紹介したうえで、<情報が取得できなくなることを恐れ、多くの記者が当局との対立を避ける中、「日本の報道の自由」にとって東京新聞の女性記者は庶民の英雄になっている>と指摘。
 さらに、記者クラブ制度について、<多くの記者の調査意欲をそぎ、国民が政治について知ることを妨げている>という識者らの声を伝えている。同感だ。映画「新聞記者」がヒットしているのも頷ける。(2019/7/14)
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【月刊マスコミ評・放送】 小川彩佳キャスターと筑紫イズム=三原治

テレビ朝日を4月に退社し、その2カ月後、TBS系報道番組『NEWS23』のメインキャスターに抜擢された小川彩佳キャスターのリニューアル版が6月3日スタートした。小川さんは2007年4月にテレビ朝日に入社して以降、『サンデープロジェクト』の司会、『報道ステーション』のサブキャスター、直近ではインターネットテレビ局「AbemaTV」のニュース番組『AbemaPrime』の司会進行を務めるなど、一貫して報道畑に携わってきた。特に看板番組『報道ステーション』を7年半経験し、将来の報道番組を背負っていく逸材に違いなかった。そんな未来あるキャスター移籍の話題が夜のニュース戦争に拍車をかけている。

夜11時台に放送されているニュース番組と女性キャスターは、NHK『ニュースきょう一日』は井上あさひ。日本テレビ『news zero』は元NHKでフリーの有働由美子。TBS『NEWS23』は小川彩佳。フジテレビ『Live News α』は三田友梨佳。テレビ東京の老舗番組『ワールドビジネスサテライト』は大江麻理子。夜10時のテレビ朝日『報道ステーション』は徳永有美といった顔ぶれである。平成から夜ニュースは女性キャスターの時代に入っていたが、令和となって小川キャスター参入で、夜のニュース戦争が激化してきた感がある。

 骨太なニュース番組は姿を消した。権力を監視する辛口なキャスターもいなくなった。報道のTBSを自負する『NEWS23』も筑紫哲也氏の頃の緊張感はなくなった。安倍内閣の下、益々右傾化する今こそ、筑紫氏のようなキャスターを必要としている。彼は、少数派の立場に立ち続け、沖縄への思い入れを持ち続け、護憲の立場を崩さなかった。世の中にはびこる権力や日本という国を踏みにじるような社会の趨勢に、常に「にこやかに」、硬直的でない抵抗のスタイルを貫いた。彼の剛健な気風は、どんな人が投げるどんな球でも受け取り続けた。

 『NEWS23』という冠を受け継ぐ小川キャスターにその精神や心構えは宿っているのだろうか。

 小川キャスターは、半年間のブランクを感じさせない番組さばきは見事。インタビューでは、自分なりの感性と言葉で伝えようとする姿勢が垣間見えた。ジャーナリストとしての資質を褒める評論家の指摘もある。

これまでメインキャスターを務めてきた星浩氏がアンカーとして小川キャスターを支える。スポーツは石井大裕アナウンサー、サブキャスターを山本恵里伽さん、取材キャスターを報道局の村瀬健介記者が務める。2週間視聴したが、期待は感じている。目先の視聴率で揺らぐことなく、信じる報道姿勢を貫いてほしい。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月13日

【おすすめ本】川本裕司『変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場 』─政治に翻弄される公共放送、危ういニュース報道への信頼=河野慎二

 受信料制度を合憲とした最高裁判決を梃子に、NHKの2018年度受信料収入が初の7千億円を超え、5月には改正放送法の成立で番組のネット同時常時配信が認められ、NHKは新たな受信料収入の手段を手に入れた。
 これで上田会長率いるNHKは盤石か?
 問題は官邸にひれ伏すNHKの報道姿勢だ。著者はNHKの政治報道について「政権との一体化」という見方が増えていると指摘する。
 87年から足かけ30年、NHKを取材してきた著者は「その残像は、『政治』に翻弄される公共放送の経営」であり、「とりわけ報道のニュースに、その痕跡が深く刻まれてきた」と振り返る。
 2001年1月、慰安婦問題を取り上げたNHKの番組について、安倍官房副長官が放送総局長らに「公正、公平な番組になるべきだ」と述べ、NHKは番組を改変。
 安倍氏が政権を握ると、官邸に対するNHKの忖度の度合いが強まり、政権に不都合な事実はニュースに載らないようになる。著者は「加計学園問題を取材する社会部に対し、ある幹部は『君たちは倒閣運動をしているのか』と告げた」事実を明らかにする。
 NHKと政治の関係については昨今、NHKの「政府広報機関化」が懸念されるほど、危機は深刻になっている。
 著者は「自壊しかねない不安要素を抱えながら、肥大化していく公共放送の未来が明るい、とはとても言えない」と強調。視聴者の怒りが限度を超えれば「公共放送への信頼は瓦解する」と警鐘を鳴らす。
(花伝社1500円)
「変容するNHK」.jpg
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2019年07月09日

【リレー時評】年金問題、巨額な武器購入とも関連=吉原 功

 野党に脚光が浴びるのを避けているのではと疑念の声が高まっていた予算委員会が6月10日、参議院でやっと開かれた。4月4日以来実に2ヶ月ぶりである。議論の焦点は年金問題。
 2004年の年金改革時、与党は「百年安心年金制度」と喧伝した。ところが金融庁が6月3日公表した報告書はそれを真っ向から否定するような内容だった。野党が追求するのは当然だろう。
 同報告書は、2017年の家計調査に基づき「高齢夫婦無職世帯」(夫65歳、妻60歳の無職世帯)の月平均収支を算出。収入の9割は年金で20万9千円、支出26万4千円、毎月5万5千円の赤字は貯蓄など金融資産で補填という結果であった。20年後までに1300万円、30年では2000万円必要となるので資産を運用して自分で用意しなさい、というのが金融庁の結論だった。「人生100年時代」・少子高齢社会を迎えるにあたって「公助」は限界があるので「自助」で対処しなさいという内容だ。

 蓮舫立憲民主副代表は「100年安心とは嘘だったのか」と問い、大塚国民代表代行は「安心とは年金制度維持との意」と断じ、小池共産書紀局長は「大企業・富裕層優遇税制を改め低年金層の底上を」と要求した。
対して安倍首相は「嘘ではない」と反論。04年に約束したのは「所得代替率」50%であり、今は6割と強弁。「所得代替率」とは、現役世代の 平均手取り収入に対する年金支給率の割合のこと。「マクロ経済スライド」も適用し支給額を、賃金の伸び率0.6%を下回る0.1%増に抑制しつつ、プラスにできたと自慢した。04年に物価スライド制をやめ「マクロ経済スライド」を導入したことで「現在の受給者、将来世代にプラスになり、公的年金の信頼性はより強固になった」と誇ったのだ。
 翌11日、麻生副総理兼財務・金融担当大臣は金融庁報告書を「世間に著しい不安を与え、政府のスタンスとも異なる。正式な報告書として受け取らない」と表明した。前代未聞のことだ。麻生氏は報告書を「表現が不適切」と言ってきた。いったいどこがどのように不適切だったか。「マクロ経済スライド」は年金を抑制するシステムであり、受理を拒否しても報告書の指摘は概ね正しく制度を変えない限り「世間の不安」は消えないであろう。

 メディアはこの問題を比較的大きく取り上げているが、参議院選挙を巡る攻防という視点で捉えているように思える。年金問題、高齢社会問題を正面から深く把握し国民に提起すべきである。その際国家財政全体の問題として、小池氏が指摘する大企業・富裕層優遇税制とともに、輸出大企業を潤す消費税や最新鋭戦闘機F35、イージス・アショアーなど米国言いなりの巨額な武器購入なども考慮にいれるべきであろう。
posted by JCJ at 09:17 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする