2021年12月09日

【おすすめ本】加藤登紀子『哲さんの声が聞こえる 中村哲医師が見たアフガンの光』─「優しくて強靭な意志」への鎮魂歌=鈴木 耕(編集者)

これはラブレターなのです。去って行ったステキな人へのちょっと淋しい手紙なのです。
 著者が「哲さん」と呼ぶ中村哲さんへの愛を込めて、二人の交友を淡々と綴ったのが本書です。
 小さな断片の重なりが不世出の医師の生涯を写し出します。アフガニスタンに注いだ哲さんの思いは、あの「用水建設」や「診療所」に象徴され ます。それなのに、哲さんの無念の死。
 第一部は哲さんの生き方の「軌跡」です。そして哲さんが起こした「奇跡」、ふたつのキセキ。
 私が好きなのは第二部の「哲さんへの手紙」にある「哲さんともう会えない」と題された哀切な文章には、涙腺の弱くない人でも、瞼が熱くなるはずです。ここで著者と哲さんの出会いから交流が語られます。
 そこに、著者の亡き夫(藤本敏夫さん)との想い出が重なります。学生運動のリーダーであり、後に生協運動、自然農法に尽力した藤本さんは、2002年、58歳という若さで世を去りました。
 藤本さんと哲さんは、たった2歳違いでしたが哲さんもまた2019年、アフガンで凶弾に倒れました。73歳でした。
 著者は、藤本さんと哲さんに、共通の「優しいけれど強靭な意志」を感じ取っていたのでしょ う。だから本書は実は哲さんと藤本さんの生き方への、真剣な愛に満ちたラブレターなのです。
 二人のかけがえのない人を失った著者は、それでも前を向いてひとりの旅を重ねます。第三部の「哲さんの残した言葉」を携えながら…。心に沁みる一冊です。(合同出版1700円)
namura.jpg
posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月07日

【リレー時評】連合は本当に政権交代を望まないのか=白垣詔男(JCJ代表委員)

 連合(日本労働組合総連合会)は初めての女性会長、芳野友子さん(55)の下で初の国政選挙を終えた。しかし、報道によれば、芳野さんは、日本共産党が入った選挙協力に釘を刺したという。
連合はこれまでも「共産党排除」の姿勢が強かった。今回の衆議院選挙でも事前に「4野党共闘」が確認した目標の1つ「連合政府」を認めないことを、野党共闘の要だった立憲民主党の枝野幸男前代表に意向を表明したと伝えられている。
 連合が真の労働組合と自認しているならば、同じ働く者の側に立つ他の立憲野党とともに、今回の総選挙で少なくとも「自公過半数割れ」「政権交代」を目指すのは当然ではなかったか。
 しかし、芳野会長や連合幹部の大半は、「まず自公の過半数割れ」を目標に掲げながら実態は「共産党との共闘」は全面的に否定したようだ。防衛装備品製造会社の労組が力を持つ連合の力が選挙の結果を左右する国民民主党は4党共闘には入らなかったうえに、選挙後、国会で野党の国対委員長会議にも参加しないという。維新の会と改憲論議を始めるともいう。
 それにしても総選挙ではまず、自公の議席を過半数割れにして、その後の野党連立、野党連合協議に向けて、連合の意見を述べるのが本道で、選挙前から「共産党排除」を打ち出したのは、連合が「自公過半数割れ」を本当は望んでいないのではないかと疑ってしまう。つまり、表面的には「自公過半数割れ」を掲げながら、実は「戦争ができる国」志向の自民党の補強組織ではないかとも勘ぐってしまいたくなる。
 私が住んでいる福岡県では、選挙前、「市民連合ふくおか」が主導して「自公連立政権を打倒して野党連合の政権を」「棄権しないで投票に行こう」などの旗印を掲げ、街頭行動を盛んに展開した。その中で、驚くことに、立憲民主党の候補者に対して、連合が「できれば共闘をしないように」「一緒に街頭演説をする際、共産党の旗が立ててある場所に立憲民主党の旗を立てるな」と強く指示していたという。
 「市民連合ふくおか」の活動報告をユーチューブで見ると、なるほど政党の旗は「日本共産党」「社民党」「れいわ新選組」「緑の党」のものは見えるが「立憲民主党」の旗は見当たらなかった。地方組織に対しても連合の「反共産党」の姿勢は徹底している。
  連合に初めて女性会長が誕生したことは歓迎したい。これまでの男性主導の労組活動に新風を吹き込むことが期待されている。女性労働者に非正規が多いことや「コロナ禍」で職を失う女性が増えたことなどで、これからも女性会長に寄せられる声は高まるだろう。
 しかし、連合が労働組合というのならば、せめて「要求で一致する運動には共闘を」と強く言いたいが、芳野会長は、その点をどう考えているのか、「連合は不可解な労働組合」と言ってもいい。
  白垣詔男
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
posted by JCJ at 01:00 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月06日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】字幕付きCM登場 TVの効用を聴覚障害者に

                           
2112 字幕付きCM.jpg

 10月から全国の民放テレビで字幕付CMが放送されるようになった。
 字幕付きCMとは音声を文字化しが目に表示するCMのことだ。設定はリモコンの「字幕」ボタンを押すことにより音声を字幕で表示できる。
 総務省の調べによれば聴覚障がい者は34万人(2118年厚生省)だが、「難聴」といわれる人は3400万人(2016年総務省)に達する。高齢化に伴い,今後の増えることが予想される。
  
 平成22(2010)年3月にTBSテレビ系列28局で放送されたドラマ「ハンチョウ」で、パナソニック株式会社が字幕付きCMを放送したのが、初めての取り組みだった。その後、取り組みは徐々に広がっており、平成27(2015)年春改編時からは、従来の1社提供番組に加えて複数提供番組でも字幕付きCMが放送できるよう、在京テレビ5社を中心に、拡大に向け取り組んできた。今回放送されるようになったのは、地上民放99局と民放BS5局だ。

 民放連は、平成26(2014)年10月に広告主の団体である日本アドバタイザーズ協会、広告会社の団体である日本広告業協会と共同で字幕付きCM普及推進協議会を設立した。「聴覚障害者の情報アクセシビリティ向上のため、関係3団体の連携により字幕付きCMの普及を図ること」を目的に、情報共有やセミナーの開催などの活動を行っている。
 ユーチューブなどに登場する「それ行け!字じまく君」、「字幕付き5つのお話」などはキャンペーンの一環だ。

 コマーシャルにも字幕をとの声は、聴覚障がい者の間では切実だ。しかしこれまで関東地域に限られていたことから、付与率は、わずか1.05%に限られていた。せっかくリモコンについている字幕ボタンを押すだけ、という簡便な方法なのに、関東地区以外ではこれまで放送局側の設備が整っていなかった。
 10代で両耳を失聴した、松村かりんさん(IAUD理事)は長年にわたって字幕CMの必要性を訴えかけてきた。消音ボタンがあっても、字幕ボタンがないことに疎外感があったような事態が解消されつつある。「このままではせっかくのCMが全く伝わらない」として長年プロジェクトを行っており、広告主にテレビスタッフに音のないCMを聞いてもらうなどの働かけを続けてきた。

 CMは短いものが多いため前のCMが次のCMにかぶった場合でも事故扱いにはしたいなどという合意もある。
 字幕によるCMに触れる人が増えれば企業のイメージアップのつながるのは当然のことだ。加えて、病院やオンライン会議など音が出しにくい場所でもCMをみられる。そのため健常者にも、メッリットがある。
 技術的には多少複雑なので、全面的な展開は2022年10月としている。関係者は「CMも社会インフラ、全面的な展開で、情報がスムースに行き渡るよう尽力したい」といっている。
 隅井孝雄(ジャーナリスト)

posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月05日

【今週の風考計】12.5─いま甦るシンガーソングライター・西岡恭蔵の息吹

これこそページターナー、一気読みした。中部博『プカプカ 西岡恭蔵伝』(小学館)である。448ページもある厚い本を、右親指で押さえつつ、ページをめくってきたせいか、その夜、右手首の筋肉が痛むほどだった。
 フォーク&ポップスが全盛をきわめた1970年代、熱い声援を受けた三重・英虞湾出身のシンガーソングライター・西岡恭蔵の全体像に迫った本格的な初の評伝だ。まさに知られざる生涯が明かされていくにつれ、驚くことしばしば。

書名は、彼が1971年に作曲し、50年たってもすたれない彼の代表曲「プカプカ」からきている。タバコ好きで、いつもプカプカ吸っている奔放な「俺のあん娘」に思いを寄せる男の心情を歌った名曲である。
 だがファンの間では「俺のあん娘」は誰か、モデルをめぐる“謎”が広がっていたそうだ。それを著者は綿密な踏査と取材で解きほぐす。歌詞のサブタイトルにつけた「赤い屋根の女の子」から、謎を解く叙述には説得力がある。
その後、おしかけて来た大柄な田中安希子(KURO)と結婚する。以降、伴侶の作詞家KUROとして、まさに二人三脚でニューヨークやカリブ海、モロッコなど世界中を旅し、名曲を生み出していく。やがて矢沢永吉への歌詞の提供は、KUROとの共同作業になる。
 ところがKUROに乳がんが見つかり、懸命な闘病もかなわず、1997年4月4日46歳で亡くなってしまう。その三回忌が迫るなか、西岡恭蔵もまた、1999年4月3日に世を去ることになった。享年50。

本書は「西岡恭蔵伝」であると同時に、その妻&作詞家だったKUROとの夫婦の物語≠ナもある。いや西岡恭蔵と著者・中部博が共同して紡ぎあげた、KUROに捧げる鎮魂歌でもある。その感動が今も胸に迫ってくる。本書のすばらしさだ。
いま彼のCD「ハーフムーンにラブコラージュ」やCD「西岡恭蔵 ゴールデン☆ベスト」を聴いている。本書を読んだだけに、曲の成り立ちやメロディの受け止めも新鮮に、彼の澄んだ歌声やアコースティック・ギターの音が響いてくる。
 なかでも「サーカスにはピエロが」や「KUROのサンバ」「GOOD NIGHT」「3時の子守歌」がいい。

1970年代といえば、フォークソングがキャンパスや駅ターミナルなどで歌われ、1973年には、南こうせつとかぐや姫が歌った「神田川」が、ミリオンセラーとなった。その作詞家・喜多條忠さんが11月22日、肺がんのため死去した。享年74。
 文化放送で放送作家をしていた喜多條忠さんは、南こうせつから作詞を依頼され、自身の学生時代の下宿体験をヒントに、東京・新宿小滝橋近くの神田川や早稲田界隈の銭湯を作詞にし、電話で読み上げると、すぐに「神田川」の名曲が出来上がったという。
 その後「四畳半フォーク」といわれ、私的な生活や個人の心情を歌う曲が流行していった。そしていま、「フォーク」そのものが、どこへ行っちゃったのか?(2021/12/5)
posted by JCJ at 06:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月04日

【焦点】ゲノム編集食品トマトとマダイ販売 安全性の審査なし 体に悪影響の可能性も=橋詰雅博

                             
GABA1.png

 野菜や動植物などの品種改良の一つゲノム(全遺伝情報)編集技術を使った食品の販売が相次ぐ。血圧上昇を抑える成分「GABA(ギャバ)」が通常の5倍以上含むトマト(写真上)と肉厚のマダイ(写真下)だ。短期間で量産ができるという。ただ遺伝子操作による食品だけに安全性の問題がつきまとう。体に有害の可能性があると警鐘を鳴らす人は少なくない。
 GABAトマトを開発したのは筑波大発のベンチャー企業「サナテックシード」。肉厚マダイは京都大と近畿大が共同開発したもので、京大発ベンチャー「リージョナルフィッシュ」が販売。どちらも当面はスーパーなどで一般販売せず、ネット注文だけに対応する。
 遺伝子組み換え技術は外部から遺伝子を入れるが、ゲノム編集技術は働きを抑える遺伝子を切断する。GABAトマトの場合、GABA濃度を低下させる遺伝子をカット。肉厚マダイは筋肉成長を抑える遺伝子「ミオスタチン」を切断している。
                       
マッスル鯛1.jpg
           
標的外切断も
本当に問題ないのだろうか。元名古屋大学理学部助手で分子生物学者の河田昌東(まさはる)さんはこう説明する。
 「特定の遺伝子の塩基配列を切断し機能を失わせるゲノム編集技術をノックアウトと呼んでいる。GABAトマトも肉厚トマトもハサミ役を担う特殊な分解酵素で標的遺伝子を切断。問題なのは、標的外の遺伝子を破壊するオフターゲットが起きていないかどうかです。これが起きていたら体に悪影響が考えられる」
 さらにGABAトマトにはノックアウト確認のためのマーカーとして抗生物質耐性遺伝子を用いている。
 「この遺伝子を含む食品を食べると腸内細菌がこれを取り込み抗生物質耐性菌に変わる。結核や肺炎などに罹患したとき、細菌をやっつける薬である抗生物質の効き目が弱くなります。この遺伝子がトマトに残っているリスクは消えません」(河田さん)
 トマトの製法と少し違い抗生物質耐性遺伝子は使わないが、肉厚マダイにも別のリスクがある。河田さんは「筋肉成長抑制の遺伝子カットは、成長ホルモン『IGF(インシュリンライク・グロース・ファクター)−1』が多く含むマダイになっているはずです。IGFは発がん性が確認されており、男性は前立腺がん、女性は乳がんになりやすい」と指摘する。

届け出でOK
 しかもゲノム編集食品は厚生労働省に届け出るだけで販売できる。ゲノム編集食品の販売を促進するため安全性審査も表示義務も不要にした米国に日本は追随した。
 「トマトとマダイを開発したメーカーは、厚労省薬事・食品衛生審議会と1年ほど前から事前相談している。メーカーが提出した各種の資料などに基づき審議会は届け出を認可。議論の内容も資料もほとんど公開されていません。相談会という曖昧な会合で、ゲノム編集食品の事実上の安全性審査が行われるのは極めて危険です。遺伝子組み換え食品と同じく安全性審査を実施し、表示もメーカー任せではなく義務付ける。EUはゲノム編集食品も遺伝子組み換え食品も安全性審査と表示を義務付けている」(河田さん)
 いまのところトマトもマダイもゲノム編集食品と表示されている。メーカーはそれをウリに売り上げを伸ばそうとしているからだ。しかし加工食品に使われるときは表示されるだろうか。
 安全性に疑義あるゲノム編集食品。取り返しのつかない被害が生じる恐れがある。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月03日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】子どもだましの岸田発言にメディア批判せず=隅井孝雄

                          
2111 Cop26での岸田首相演、石炭使用に固執.jpg
  
 石炭火力の削減か廃止かをめぐってもめ続けたCOP26は、13日夜(日本時間14日早朝)石炭火力発電を「段階的に削減する」文書、「グラスゴー気候合意を」採択、ようやく閉幕に至った。
 グラスゴーで岸田文雄首相(写真)は次のように発言した(11/2)。
「日本だけでなくアジア全体で、化石燃料と同様に水素とアンモニアを燃料としてゼロ・エミッション化を推し進める」。
石炭燃焼を燃焼する際、CO2の濃度を低めるアンモニアを混ぜて排出を抑え、火力発電から出るCO2を回収し地中に埋めて再利用する技術をしてゼロ・エミッションと称する。本格的な解決策にはならないことは明らかだ。この発言に対し「化石賞」が与えられた。
 「石炭火力全廃」を盛り込んだ当初案に対しインド、中国などが強硬に反対して合意文書は「段階的削減」となったことに日本も責任がある。日本政府は石炭火力全廃の46カ国の声明に加わらなかったどころか火力発電を維持、アジア諸国の石炭の継続使用を後押ししている。
 議長国イギリスのアロク・シャーマCOP26議長は「この展開について謝ります」と全体会議で謝罪、声を詰まらせ涙ぐんだ。この報道をBBCなど多くメディアが映像も含め取り上げ、「涙」が欧米ニュースで大きな話題となった。
 日本の報道は、政府が石炭火力の依存を進めていることをほとんど批判しなかった。
NHKニュースでは中国の石炭火力維持発言を「途上国を考慮すべき点で評価できる」(11/15)と解説。気候変動問題を扱ったNHKスペシャル「グレートリセット〜脱炭素社会 最前線を追う」(11/7日)では石油への依存、電気自動車、風力発電などは扱われているが、石炭を使用する火力の問題にはほとんど触れかった。
 日本のメディアは“子供だまし”のような岸田発言を批判しなかった。アンモニアを混ぜてもCO2が減るわけでもなく、またCO2を地中に埋める技術は確立されていない。
 日本政府はCOP26の石炭火力問題で中国、インドなどの片棒を担いだと言えよう。日本のメディアもまた岸田首相の「グラスゴー」演説に対する批判を避けている。
 隅井孝雄(ジャーナリスト)
posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月02日

JCJ12月集会=オンライン・シンポジウム◇「入管行政の闇」――失踪・暴力・医療放置はなぜ?12月12日(日)午後7時から(Zoom利用)

「技能実習」の名で使い捨てにされ、失踪する人が少なくない。外国人労働者が置かれたそんな厳しい境遇が、ようやく広く注目され始めた。3月には、名古屋入管に収容されたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが、医療放置の末に痛ましい死を遂げた。市民の間に人権軽視の日本の入管行政への批判が高まり、問題を正視しようとしない入管法改正案は採決見送りに追い込まれた。
 今年のJCJ12月集会は、「入管行政の闇」をテーマに、オンラインでシンポジウムを開きます。 パネリストは、技能実習生の失踪の構造を暴いた信濃毎日新聞連載「五色のメビウス」を率いた報道部次長の牛山健一さん、暴力、医療放置が横行する入管施設内の実態を暴き、新書『ルポ入管』にまとめた共同通信記者の平野雄吾さん、若い仲間たちと入管の人権侵害への抗議行動を始めた国際基督教大学1年生の宮島ヨハナさんの3人です。
◎パネリスト
         
信濃毎日新聞報道部次長     
牛山健一さん

共同通信エルサレム支局長
平野雄吾さん

国際基督教大学
宮島ヨハナさん

◎司会・進行 藤森研(JCJ代表委員・元朝日新聞論説委員)

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 
電話03・6272・9781(月水金の午後1時から6時まで)
メール office@jcj.sakura.ne.jp   ホームページ http://www.jcj.sakura.ne.jp/
◇参加費500円(学生は無料)
参加ご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
学生の方もPeatixで学生無料券をお求めください。
(1) https://nyukanyami.peatix.com/ をクリックする
(2) 参加券を求める(一般か学生かを選ぶ)
(3) 支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ(学生は不要)
(4) 初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
(5) 支払いを済ませた方(無料参加の学生も含む)に講演前日・12月11日までにZoomで視聴できるURLをメールでお送りします。

◎パネリストの略歴
牛山健一さん
 1969年長野県生まれ。早稲田大学卒。信濃毎日新聞に入社、佐久、飯山、伊那各支社局、東京支社などを経て、編集局報道部県政キャップを務め、主に政治、自治、交通、環境を取材。2014年から報道部デスク。若者の政治・社会参加の連載を手掛けたほか、外国人労働者らを追った連載「五色のメビウス」の取材班代表・デスクとして2021年JCJ大賞を受けた。現在報道部次長・部長待遇。

牛山1.jpg

平野雄吾さん
 1981年東京都生まれ、一橋大学大学院経済学研究科修了。共同通信記者。前橋、神戸、福島、仙台の各支社局、カイロ支局、特別報道室、外信部を経て、現在エルサレム支局長。著書『ルポ入管ーー絶望の外国人収容施設』で2021年JCJ大賞を受けた。共著に『労働再審2ーー越境する労働と〈移民〉』『東日本大震災復興への道ーー神戸からの提言』などがある。


平野.jpg


宮島ヨハナさん
 2002年静岡県生まれ。国際基督教大学1年生。牧師の父が支援する外国人仮放免者らと幼時から接した。高校の卒論調査で入管施設内の人権侵害を知る。名古屋入管で起きたウィシュマさん死亡事件の「真相究明を求める学生・市民の会」に参加、#Justice for Wishmaのハッシュタグをつくり抗議行動を呼びかけた。学内で難民・移民支援サークル「IRIS」を立ち上げ、共同代表に。

宮島1.jpg

posted by JCJ at 01:00 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月30日

【おすすめ本】北川成史『ミャンマー政変 クーデターの深層を探る』─少数民族への丹念な取材が光るルポ=藤川大樹(「東京新聞」外報部)

今から10年前、ミャンマーは半世紀に及ぶ軍事政権に終わりを告げ、民主化への道を歩き始め た。2015年の総選挙では「建国の英雄」の娘・アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が大勝した。民主 化は必然の流れだと思われた。
 だが、今年2月の国軍クーデターにより、ミャンマーは再び暗い時代に引き戻され、人々がようやく手に入れた自由は奪い去られた。本書では、クーデターの背景や国軍の利権構造、市民らの抵抗運動の軌跡を描く。

 政情は「国軍」対「民主派」という単純な構図では語れない。ミャンマーには、中央政府が認定するだけで135に上る少数民族がいる。独自の歴史と生活を持ち、利害も複雑に絡む。国民的な人気を誇るアウンサンスーチー氏に対する温度差もある。
 著者は社会部畑が長い記者だけに、現場を丹念に歩き、市井の声に耳を傾ける。少数民族地域や難民キャンプにも足繁く通い、人々の本音を引き出している。特に中央政府や国軍も自由に立ち入れない事実上の独立国、ワ自治管区の実情を知らせる報告は見事だ。

 クーデターから8カ月が過ぎた。民主派は少数民族との連携を模索しながら、抵抗運動を続けるものの、国軍の力任せの支配は固まりつつあるように見える。
 人々は再び自由と民主主義を取り戻すことができるのだろうか。著者は「自由の価値を知った以上、理不尽な束縛など到底受け入れられない」と前置きした上で、抵抗運動は「必ず実を結ぶ」と 断言する。(ちくま新書 840円)
mi.jpg
posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月29日

【スポーツ】個性尊重の指導が求められている=大野晃

 エンゼルスの大谷翔平投手が、米大リーグで最高のア・リーグ最優秀選手(MVP)に選ばれた。投げて9勝、156奪三振。打って46本塁打、100打点。走って26盗塁。チームは優勝に遠かったが、投打の二刀流で申し分ない見事な成績だった。
  日本人としてイチロー外野手以来の20年ぶり2人目の栄誉だが、伝説的なベーブ・ルースに挑んだ27歳の若きヒーロー誕生で、コロナ禍の米国ファンの夢を育んだ。
 テレビ観戦がほとんどの日本人ファンも歓喜した。パワフルな豪速球を投げ込み、三振を恐れずに豪快に振り抜く。ライナーでスタンドに突き刺さる本塁打は本場ファンの度肝を抜いた。
 笑顔を絶やさず、生真面目で、しかも、楽しそうにプレーする姿は、さわやかで大らかな青年の魅力を振りまいた。その裏で、体を鍛え抜いてケガを克服し、研究熱心な努力家でもある。
 高校野球ならエースで4番はあっても、プロ野球では、投打二刀流は理想であり、憧れであっても、現実的ではないと思われてきた。しかし、193aの恵まれた体格と高い潜在能力を見込まれて、日本ハム時代から大きく育てることに、指導者が十分に留意し、渡米後も継続されて開花したが「米国の方が、二刀流を受け入れてもらえた」と言う。うれしい挑戦の場があったということだろう。

 ともすれば、日本野球は、勝利至上で競技者を型にはめて、個人プレーの評価を狭くする傾向があり、大きな飛躍の障害となるケースが少なくなかった。だから、奇跡の幸運児でもある。
  多くの競技で、大型の外国人に匹敵する日本人離れした体形の少年が育っている。鍛え方しだいでは、大きく能力を伸ばす可能性を秘めている。
 大谷の躍進は、保守的な日本的指導法に新たな問題を投げかけた。イチローの活躍以来、個性を尊重する指導の必要性が訴えられた。
  しかし、多くの指導者が改革には尻込みしがちである。第二、第三の大谷登場を見逃してはいないだろうか。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)
posted by JCJ at 01:00 | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月28日

【今週の風考計】11.28─冬の「オリオン座」から「ランニングマン星雲」へ

日の暮れるのが早い。所用で出かけた帰り道、寒風が吹く冬の夜空を見上げれば、オリオン座がひときわ明るく目に入る。
 その巨人オリオンのベルトあたりに並ぶ三ツ星を軸に、肩のあたりにベテルギウス、左足にはリゲルが輝く。そのベテルギウスとおおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンを結んだ「冬の大三角」が、大きく頭上を覆う。
オリオン座流星群が、東の空を飛び交ったのは10月22日〜23日。ハレー彗星が軌道上でまき散らしたチリの帯に、地球が近づいたため、そのチリが地球の上空100km前後で発光して、オリオン座流星群となる。早いもので、もう1カ月になる。

足を止めて、よくよくオリオン座を見ると、巨人オリオンのベルトあたりに並ぶ三つ星のすぐ南に、小さくタテに3つ並ぶ星列がある。そのあたりがモヤモヤした雲みたいなベールがかかっている。いつも気なっていた。
 改めて調べてみると、この星列を「小三ツ星」というそうだ。しかも真ん中のものは星ではなく、鳥が翼を広げたような形の「オリオン座大星雲」と呼ばれ、全体が淡いピンク色をおび、天体望遠鏡で見れば目のさめるような美しさだという。地球からおよそ1500光年先にある。
「オリオン座大星雲」のすぐ隣に、いま注目されている「ランニングマン星雲」があると分かった。星雲の暗い部分の形が、走る人物の姿にも見えることから名づけられている。
 この「ランニングマン」の姿は、電離した水素原子が発する赤い輝きによって描き出され、その周辺は青っぽい恒星の光を反射するガスに覆われているそうだ。

だが「ランニングマン星雲」は、まだまだ解明されていない問題が多い。
 先日、米航空宇宙局(NASA)が、「ランニングマン星雲」から、高温のガスを噴き出しながら、周囲にあるガスと塵の雲に秒速数百kmもの速度で衝突し、明るい衝撃波を生み出す様子をとらえた画像を公開した。
視野全体に漂う雲の中央付近から右上と左下に向かって、間欠的に噴き出すジェットのような構造が写っている。これが生まれて間もない若い“ハービッグ・ハロー天体”だといわれる。
 天文学には知識のない筆者にとっては、星や天体の生まれる経緯が、この映像などを通して、さらに解明されていくことを願うばかりだ。

肉眼で見える「オリオン座」に戻ろう。今日28日の夜明け前、年内最後の「オリオン座流星群」が見られたのだが、寝坊の筆者には無理。
 残されるのは「ふたご座流星群」。「オリオン座」の左に、同じ明るさの星カストルとポルックスが2つ並んでいる。それが「ふたご座」。12月14日ごろを中心に夜半過ぎまで、月から離れた方向を広く見渡せば、たくさんの流れ星が飛ぶという。(2021/11/28)
posted by JCJ at 06:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月27日

【焦点】五輪選手村訴訟 12月23日に東京地裁で判決 官製談合の是非に注目=橋詰雅博

                            
mura.jpg
   
都有地の東京五輪選手村用地を晴海の周辺地価と比べ10分の1以下の約130億円で大手デベロッパー11社に売却したのは違法だとして都民33人が都に対し、損害賠償約1500億円を小池百合子都知事らに請求するよう求めた裁判は、12月23日(木)午後3時、東京地裁103号法廷で判決が言い渡される。
 筆者は4年前の第1回口頭弁論前に原告代理人の淵脇みどり弁護士にインタビューし、JCJ機関紙2017年10月25日号に記事を掲載した(写真下)。そして裁判の傍聴を続けてきた。
 この住民訴訟の問題の核心は東京都が「一人三役」の役割を務めたこと。どういうことかと言えば、地権者と個人施行者、許認可業者の3つを都が併せ持つという異様な構図をつくったのだ。都都市整備局によると、自治体が個人の地権者として個人施行の再開発事業を行った事例は5件あるが、都のような「一人三役」のケースはない。
 通常の都市計画事業という形態ならば、公聴会・縦覧・意見書の提出に加えて都市計画審議会での議決という一連の手続きが必要。また都議会や財産価格審議会にも諮らなければならい。「一人三役」はこうした面倒なことを省くことができる。実質、直接売買を可能にしたのだ。
 なぜ都はこうしたカラクリを編み出したのか。それは選手村を建てる大手デベロッパーに破格の安さで土地を売却するためだ。デベロッパーは五輪終了後に選手村建物を活用して手直し、新築マンションとして販売するので、入手する土地は安ければ安いほどいい。一方、晴海という好立地の物件ならば、高く売れる。利幅が大きくなる。
 都とデベロッパーはこの五輪村用地の売却を巡り数年前から協議を重ねてきた。こうした官民の癒着の「官製談合」によって土地のたたき売りを実現させた。カラクリはそれをスムーズに運ぶための方法だった。ちなみにデベロッパー11社のうち7社に都幹部職員12人が天下りしている。
 もしも正常な価格で売却していたら、裁判もなく財政面でプラスになり納税者への公共サービス向上につながったのではないか。
 橋詰雅博
                       
sensyu.jpg
  

posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月26日

【21年度JCJ賞受賞者スピーチ】学術会議問題スクープ 問題意識が生んだ報道 いんぶん赤旗編集局長 小木曽陽司さん

ogiso.jpeg

 受賞発表の9月3日は菅首相が政権を投げ出した日。昨年の「桜を見る会、私物化疑惑」報道のスクープの大賞受賞も安倍さんの退陣表明直後でした。安倍さんは病気、菅さんはコロナ対策に専念するというのが表向きの理由ですが、権力トップの違法行為を暴いて退陣に追い込むスクープを2年連続でやったのは初めてです。
 最初は昨年10月1日付の1面トップ「菅首相、学術会議人事に介入、推薦候補任命せず」のスクープ記事。日本学術会議法は、学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が候補を任命すると定めており、3年ごとに半分が交代する。ところが菅首相は法に反し、学術会議が推薦した6人の任命を拒否した。すべてが安保法制や共謀罪に反論した学者でした。当日は学術会議の総会で、各社が一斉に報道しました。
  私たちは単独スクープになるとは思っていませんでした。きっかけは公開情報だったからです。任命拒否された刑法学者の松宮孝明立命館大学教授が、推薦名簿には名前があったのに、任命名簿にはなかったとSNS、フェイスブックで暴露したのが、9月29日の午後5時40分頃。これが色々な方に共有、拡散された。私たちも重大情報に遭遇し、すぐに体制を整えて取材、報道しました。

  なぜ、大手メディアでなく赤旗の単独スクープになったのか。「ご飯論法」で知られる法政大学教授の上西充子さんは「安倍政権の時代から表現の自由や学問の自由が制限される流れは続いており、赤旗編集局に問題意識があった」と指摘。また、政府の言い分を含めた「両論併記」でなく、赤旗は一歩踏み込んで重大問題だと提示し、深刻さが伝わったと。
  実際、私たちは、菅首相の人事をテコにした権力支配、強権政治は科学の分野にまできたかと強烈な危機感を持ちました。民主主義を揺るがし、社会を萎縮させる。だからこそ違憲・違法の任命拒否は撤回せよと続報、キャンペーンをずっと続けました。
 桜のスクープは「権力の私物化」と捉えた視点の違いが評価されましたが、今回は民主主義の危機への問題意識、感度が問われたとの指摘です。この問題は首相が任命拒否を撤回しない限り解決しない。絶対に曖昧にせず、撤回で決着をつける。そうでなければ政権交代を実現するしかない、との決意でおります。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 21年度JCJ賞受賞者スピーチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月25日

【21年度JCJ賞贈賞式記念講演】「私と沖縄」矛盾しわ寄せの島 TBS報道局 佐古忠彦さん

seko.jpeg

2017年から沖縄のドキュメンタリー映画を3本続けて作りました。TVの世界で長くやってきましたが、TVとは違った古くて新しい世界が映画にはあると感じています。
なぜ、沖縄なのか、私が沖縄に通い続けて四半世紀を超えています。TBSのニュース23、かつて筑紫哲也さんがキャスターをしていた番組に私も参加していました。筑紫さんは記者として沖縄への眼差しを持ち続けた人で、「沖縄から日本が見える、その矛盾がつまっている」と話していました。米軍が起こした交通事故で息子を失った父親が日米地位協定の壁に立ち向かい訴訟を起こした問題を取材したことなどから、私も沖縄へ深く関わるようになりました。そしてなぜ沖縄の今があるのか、という意識からどんどん過去の歴史を遡っていくようになりました。安全保障の問題は、イデオロギーになりがちですが、実は生活の問題で、主権国家としての振る舞いが問われている、その矛盾が一番押しつけられているのが沖縄です。
米軍統治下の政治家・瀬長亀次郎、カメジローの不屈の闘いを描いた番組は最初深夜の時間帯に放送されました。翌朝、視聴者からの反応の大きさに驚きました。今度は違った形で全国に届けたいと映画化に踏みきりました。映画館に多くの人が集まってくれたのを見て、涙が出そうになりました。

2作目はカメジローの230冊の日記をもとに、主権を取り戻して日本に還るための奮闘を描きました。辺野古への基地移転問題など、政府は、今も沖縄の民意に向き合おうとしていません。最近も埋め立ての土砂を、沖縄戦の犠牲者の遺骨が眠る南部から運ぼうとしています。戦時中最後の知事として送り込まれた島田叡についての映画は、その沖縄戦に立ち返った作品です。内務官僚として軍とともにする立場にあった島田が、最後に「個」として「人間」として何をしたのかを描きたかったのです。島田は全体主義に「個」が押しやられる中で、最後に「個」に自らが向き合うことができたのではないか。この映画をリーダー論としても見ていだだけると思います。
そしてカメジローもまた「個」の大切さを訴え、「個」の力が積み上げられて沖縄ができていた、と信じていたのです。民主主義とはどういうものか、沖縄がそれを示しているのではないか、私はこれまでと変わらない視点を持って、やっていきたいと思います。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
posted by JCJ at 01:00 | JCJ賞情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする