2020年10月29日

【フォトアングル】 原発もスガも去れ 経産省前テントひろば10年目集会=酒井憲太郎

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 9.11経産省前テントひろば10年目大集会が経産省前で開かれた。2011年3月11日東日本大震災の半年後、「撤去すべきは原発」と訴え、経産省前にテントを設置したのが始まりで、2016年8月に強制撤去されたが、本館玄関前に座り込んで脱原発を今も訴え続けて10年となった。安倍が辞任しても、フクシマは終わっていない。「安倍とともに原発も去れ」「スガも去れ」と講談師が講じた。=11日、東京・霞ヶ関の経産省本館正門前で、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年10月28日

【リアル北朝鮮】 3つの台風 被害甚大 経済の仕切り不可避=文聖姫

 3つの台風が北朝鮮を襲った。被害は甚大だ。朝鮮労働党の金正恩委員長は自ら各被災地に足を運んだ。北朝鮮の最高指導者が被災地を訪れるのは珍しいことだと思われがちだが、実は金委員長は数年前、中朝国境沿いの羅先で水害が起きた際にも、被災地を訪れ、壊された家屋の復旧を軍人らに命じたことがある。
 今回も黄海南北道や咸鏡南北道の被災地をただちに訪れた。黄海北道行きでは自ら車を運転した。咸鏡南道の被災地からは、平壌市の朝鮮労働党員に向け、被災地に来て復旧作業を手伝ってほしいと要請する公開書簡を送った。最高指導者が被災地から支援を要請するなど、私が記憶する限りなかったことだ。それだけ事態が深刻だということだろう。確かに、北朝鮮の代表的な亜鉛産地である剣徳鉱山や3大マグネサイト産地の大興・龍陽・白岩鉱山など、「経済の重要命脈」も被害に合った。
 それでなくても、新型コロナの影響で北朝鮮はいち早く国境を封鎖した。外国との経済関係は寸断状態で、経済は低迷している。今年は2016年に開催された第7回党大会で示された「国家経済発展5カ年戦略」の最終年にあたる。決められた達成目標があったはずだが、それも頓挫しているようだ。
 「朝鮮中央通信」によると、9月8日に開催された党中央軍事委員会で発言した金委員長は、予想もしなかった台風被害によって、国家的に推進してきた年末の闘争課題を見直し、その方向を変更せざるを得ない状況に直面したと語った。年末の経済計画を遂行できなくなったから、方向転換せざるを得ないということだ。北朝鮮では、10月10日の朝鮮労働党創建75周年に際して、平壌に総合病院を建てる計画などがあった。完成をあきらめざるを得ないかもしれない。
 北朝鮮では来年1月、第8回党大会が開かれ、「国家経済発展5カ年計画」が発表される。経済の仕切り直しが不可避な模様だ。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年10月27日

【メディアウオッチ】安倍政治に敗北したメディア 分断社会に深い亀裂 権力監視 十分に機能せず=徳山喜雄

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2800日におよぶ安倍晋三内閣が退陣、「菅雪崩」現象によって新首相に菅義偉氏が選出された。菅氏は第2次安倍政権以降、一貫して官房長官を務め、「安倍政治の継承と前進」を掲げている。その安倍政治とは、どのようなものだったのか。
端的にいえば、敵と味方を峻別する分断対決型の政治手法をとり、数々の重要法案を「数の力」で強行採決していった。問答無用といわんばかりに異論を排する手法は、政治だけでなくメディアや国民をも分断し、社会に深い亀裂を生むこととなった。
 この背景には、政権側の切り崩しによってジャーナリズムの要諦である権力監視が十分に機能しなかったことがあり、分断対決型の安倍政治にメディアが敗北するという事態になった。
 メディア選別
新政権の発足にあたり、安倍政治の功罪を明らかにし、何を引き継ぎ、何を改めるのか、見極める必要があろう。内政や外交政策はもちろんのことだが、その政治姿勢や国民への向き合い方が厳しく問われている。
 長期政権による奢りと緩みのなか、財務省による公文書改竄にまで発展した森友学園への国有地売却問題や、加計学園の獣医学部新設、首相主催の「桜を見る会」の疑惑について、国民が納得いく説明がいまもってなされていない。知人を優遇するもので、「国政の私物化」と批判されている。
 調査報道などで疑惑が追及されたが、いずれも詰め切れていない。ここには、首相に近いメディアとそうでないメディアを選別する巧みな首相官邸の戦術があり、一致団結できない昨今の分断状況が横たわる。「ほかに、もっとやることがあるだろう」と突き放す一部メディアの論調は、その典型であろう。
 近い報道機関を優遇するメディア選別は、権力監視というジャーナリズムの核心を切り崩していった。権力によるメディアの敗北はいまにはじまったことではないという見方もある。しかし、注目したいのは、「安倍一強」による弊害が政策や国民生活にまで多岐におよんだにもかかわらず、ジャーナリズムの役割が機能しなかったということだ。これは、歴代内閣が権力を抑制的に使ってきた戦後政治において、例をみないのではないか。
 在京6紙をみれば、保守系の「読売、産経、日経新聞」とリベラル系の「朝日、毎日、東京新聞」にくっきりと二極化し、お互いに聞く耳をもたない不毛といえる言論状況になっていった。
単独会見の妙
 手掛かりとして安倍政治が進めた、憲法を改正したともいえる安全保障政策や、エネルギー・原子力政策、歴史問題の対応などを見ながら、「安倍政治とメディア」について考えたい。
 国の根幹ともいえる安保政策は、特定秘密保護法の強行採決にはじまり、憲法9条の解釈改憲が国会審議ではなく閣議で決定。集団的自衛権の一部行使を認める安保関連法が成立し、日本は戦争ができる国にかたちを変えた。この原動力となった のが、首相と近いメディアとの「連携」であったとみられる。
第2次安倍政権は、首相会見を内閣記者会が主催する共同記者会見だけでなく、単独記者会見方式を取り入れた。これによって官邸は、首相の狙いを大きくアピールできるよう時期を見計らいながら単独会見の相手と日取りを調整することになった。その一例としては、2017年、安倍首相は読売新聞と単独会見し憲法改正について縦横に語り、憲法記念日の5月3日に改憲を前提とした特大記事を掲載。「権力と報道の距離」の問題が問われた。
当初は新聞、放送ともに会見の機会が均等に回されていたが、やがて偏るようになった。権力側にとって都合のよい情報が気脈を通じたメディアに流され、それを他のメディアが追いかけることで、安倍政治の独断的なシナリオに沿う流れができていった。
NHKをはじめとする放送においても、安倍政権のメディア選別は常套手段となり、情報と引きかえに取り込まれることとなった。
二元論的な世界
東日本大震災が2011年3月に発生。東京電力福島第一原発が津波の影響で爆発事故を起こし、最悪の場合「東日本壊滅」という事態にまで発展した。
 多くの住民が避難生活を余儀なくされ、甚大な被害がでたにもかかわらず、安倍政権は原発の再稼働を進めた。保守系メディアが原発推進、リベラル系が原発反対の立場を取り、激しく対立した。しかし同時に、保守、リベラルを問わずに「安全神話」を作りあげたメディアへの不信感が、国民に根強くあったことも忘れてはならない。
東京五輪招致が決まったIOC総会では、安倍氏が放射能について「アンダー・コントロール」と発言。これに対して東電関係者は否定的な見方を示している。「アンダー・コントロール」という言葉から、「安全神話」がよみがえってくるようでもあった。
 さらに、愛国か反省かを迫る歴史認識における対立が、社会に決定的な分裂状態を招くことになる。戦後70年の首相談話などをめぐって「歴史修正主義」的な動きがあり、保守系メディアがそれに呼応するということがあった。
 多様な意見があることは健全なことだ。それを否定しているのではない。ただ、安倍政権下での政治、社会状況は、改憲や原発の存廃、歴史認識など国論を二分するテーマで、保守とリベラルが鋭く対立、議論が二項対立化し双方ともに言いっ放しで終わっているケースが随所にみられた。
 このため深い議論や、第三の可能性を探るといった成熟した言論が成立しなくなり、二者択一の極論しかない二元論的な世界に社会が覆われることとなった。お互いに耳を傾けたうえで、切磋琢磨していく。これが民主主義社会のあるべき姿ではないか。
懐柔された報道
 菅首相による新内閣が発足した。安倍政治を「前に進めたい」といい、負の側面には目を向けようとしない。たとえば森友問題について、菅氏は財務省の処分や検察の捜査終結で「すでに結論がでている」と取り合わない。
官房長官時代の朝夕2回の記者会見での質問に対し、「そのような指摘はあたらない」「コメントは控えたい」など、そっけない受け答えをする場面がしばしばみられた。メディア対応は安倍氏以上に高圧的で乱暴という見方もある。
どう対応すべきなのか。現在の言論状況を打破する道として、@権力との適正な距離を保つA二極化、分断の解消につとめるB首相や官房長官らへの「質問力」をアップするC読者、視聴者への説明責任を果たすD女性や外国人が活躍できるよう組織の多様性をはかる、という点を挙げたい。
 首相や官房長官への多くの質問にみられるように、メディアは分断対決型の安倍政治を追及するどころか、懐柔された。巻き返さなければならない。   
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号


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2020年10月26日

【メディアウオッチ】 テレビ朝日労組が民放連脱退 社の意向 強く反映か 菅政権の攻勢に腰砕け=編集部

 テレビ朝日労働組合が7月25日、民放労連(日本民間放送労働組合連合会)から脱退した。テレビキー局労組の労連脱退は初めてのこと。民放労連加盟組合員は約7000人。テレ朝労組700人余が抜ける影響は小さく
ない。
 脱退の理由について同労組は@政治方針等の対立A会費の問題を挙げているが、真の理由は民放労連が加盟しているMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)の文書にあるという。
 大量の派遣切り
 テレビ朝日は昨年暮れ、看板番組の「報道ステーション」を支えてきたベテランの派遣ディレクターらスタッフ10数人に対し体制の刷新≠ネどを理由に「3月末で契約を打ち切る」と一方的に通告した。
 報道によると、スタッフはテレビ朝日労組を通して派遣切り撤回を社側に求めたが、撤回要求に応じなかったため、MICに駆け込んだ。
 相談を受けたMICは2月、国会で院内集会を開き、テレビ朝日に派遣スタッフ契約終了の撤回を求める集会宣言を採択し、スポンサー企業にも送付した。
身分の不安定な派遣労働者を守るためには、当然の行動だが、これが早河洋会長ら経営陣の怒りを買い、労連脱退につながったというのだ。
 テレビ朝日労組の労連脱退には、驚きと疑問を禁じ得ない。
菅のメディア支配
 16日に発足した菅義偉新内閣は、安倍政権の「負の遺産」の一つである「メディア支配」を継承する。菅首相は、これまで以上に強面の権力主義的な手法でメディアへの介入、干渉を強めるに違いない。
 そんな時、同労組の民放労連脱退は、テレビ朝日の番組制作者が菅新政権の攻勢に事実上丸腰≠ナ立ち向かうことを余儀なくさせる。
 歯に衣着せぬコメントで視聴者の信頼を高めている「羽鳥慎一モーニングショー」や「報道ステーション」への影響が出はしないか。
権力の「共犯者」
 労働組合が弱体化すれば、職場で自由にモノが言えなくなり、放送の自由は危機に瀕する。
 新聞労連と研究者がまとめ、新聞協会加盟の新聞・通信・放送129社に送った「ジャーナリズム信頼回復のための六つの提言」には、賛同人として多くの現役の若い記者、女性記者らが実名で署名している。
 メディアは、権力との「共犯者」になってはならない。テレビ朝日労働組合の組合員と番組制作者は、労連脱退がもたらす影響などについて、改めて議論してほしい。
 編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

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2020年10月25日

【今週の風考計】10.25─ベラルーシの「勇気ある女性」3人とタイの「黒シャツ」3本指

ロシアとポーランドに挟まれたベラルーシ共和国の首都ミンスクで、ルカシェンコ大統領の選挙不正を糾し退陣を求める大規模デモが、10週連続して日曜日ごとに開かれ、数万人が参加している。
 治安部隊が浴びせる放水やゴム弾にもめげず、「白・赤・白の旗」を掲げ、「パルチザンの行進」と名づけたデモが繰り広げられている。日本でも連帯のデモが始まった。
いま66歳のルカシェンコ大統領は、1994年に就任以来、この8月には不正選挙で6選を果たし26年間も君臨する。
 「ヨーロッパ最後の独裁者」が組閣する「残忍な政権」の弾圧に抗し、人権擁護と民主化を追求している活動には頭が下がる。
 EU議会は、活動のリーダーであるチハノフスカヤ氏、支援するノーベル文学賞受賞者アレクシエービッチ氏、当局に拘束された音楽家コレスニコワ氏らに、人権擁護に貢献した人に贈る「サハロフ賞」を授与した。「勇気ある女性」3人である。退陣に応じなければ26日からはゼネストに入るという。

眼を東南アジアに転じよう。タイでもプラユット首相の退陣と民主化を求めるデモが拡大している。
 これまた66歳のプラユット首相は、2014年の軍事クーデターを主導し、昨年3月の総選挙で民政に移行したとはいえ、そのまま首相の座につき政権を維持している。
 だが経済の低迷は続き格差は拡大し、さらに野党「新未来党」への解党命令や市民に対する軍兵の無差別殺害事件も起き、バンコクでは連日、2万人規模のデモが続いている。
とくに注目されるのは、「黒シャツ」を着た若者たちが3本の指を掲げ、これまでタブーとされてきた王室批判、すなわち王室関連予算の透明化や不敬罪・最長15年の禁錮刑の見直しなど、王室改革を求める行動にまで踏み込んでいる点だ。
ワチラロンコン国王は68歳、ドイツの高級ホテルを借り切って「ハーレム」を作り、若い女性20人ほどと一緒に暮らしている。全て税金で賄われている。
 しかも国民投票で承認された新憲法案を拒否し、政府に条文の修正を要求するなど、政治への介入は度を超す。国民からの信望は薄れる一方。王室改革を求める声が大きくなるのも無理はない。

アフリカでも大西洋・ギニア湾に面したナイジェリアで、汚職撲滅や市民の安全を求めるデモの隊列に、治安部隊が発砲し死者は50人を超す。長期に市民を虐待してきた警察の特殊部隊(SARS)への怒りは頂点に達し、2週間ほど前から各地で大規模なデモが行われていた。
 デモの拡大を受け、第2次ブハリ政権は首都ラゴスに無期限の都市封鎖を発令した。その数時間後、平和的なデモをしていた約1000人に向けて、またも武装した男たちが発砲した。
政権による人民弾圧に限らず、イエメン内戦、ナゴルノ紛争など、やっている時か。いまやコロナ感染者は世界で4220万人・死者114万人。全てが協力して、コロナウイルスと闘うのが先だろ!(2020/10/25)
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【焦点】 五輪選手村訴訟原告団 裁判長宛て「人証申出」ハガキ提出を開始 TBS「報道特集」が報じ関心高まる=橋詰雅博

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  東京五輪選手村用地を周辺地価よりも9割以上も安く売却したのは違法だとして小池百合子都知事や舛添要一前知事らに約1500億円の損害賠償を都民33人が求めている民事裁判の第10回口頭弁論は、12月8日(火)15時から東京地裁で開かれる。
 これに向けて原告らが集まる「晴海選手村土地投げ売りを正す会」(正す会)は、前回の弁論で証人申請した小池知事、舛添前知事を含む6人の「人証申出」を裁判長宛てに要請するハガキ(写真左)を出す活動を始めた。証人申請を認めて慎重に審理してほしいというハガキが多ければ多いほど、裁判長にプレッシャーがかかる。自分にきたハガキを裁判長がどう扱うか注目される。
 この五輪選手村訴訟をTBS番組「報道特集」が8月22日に報じた(写真下)。放送メディアがこの問題を真っ当に取り上げたのは初めてではないだろうか。原告側弁護士と原告3人が登場して値引き9割のカラクリを明らかにし、金平茂紀キャスターが五輪について疑問を投げかけた番組は、ユーチューブで流れており、正す会によると、22万人超が視聴し、850件を超えるコメントが寄せられた。「TBS報道でかなり広く知られるようになり(次回の裁判の傍聴者は)一般の方も増えるかもしれません。ぜひ傍聴したい方は早めに来られたと思います」(正す会ニュース10月19日付)。
 この訴訟の主な争点は@官制談合疑惑A不当な土地譲渡価格B都市再開発法による違法・脱法行為の3つだ。被告側弁護士は「原告らは特異な都市再開発だと非難するが、独断と偏見による評価に過ぎない」と反論している。
 12月8日の裁判終了後は、裁判官、原告、被告の3者が非公開で協議する。この席で証人申請について話し合いが行われるという。
橋詰雅博
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2020年10月24日

【おすすめ本】 山田朗『帝銀事件と日本の秘密戦』―事件捜査の裏で軍の「秘密戦」を隠蔽=菅原正伯 

 冤罪事件として知られる帝銀事件だが、では、12人もの銀行員たちを青酸化合物で毒殺した真犯人は誰だったのか。犯人の手際のよい毒薬の取り扱いや慣れた殺害のやり口から、捜査本部は旧軍関係者の関与を疑った。
  本書は、その捜査本部の全報告を克明に記録した警視庁捜査第一課・甲斐係長の膨大なメモ(甲斐手記)を整理・分析し、捜査過程を検証した。
 その結果、旧軍には陸軍を中心に毒物を扱う20以上の秘密戦を行う軍機関・部隊が存在し、戦時中、中国大陸で生きた人間(捕虜や住民)を細菌や毒物の実験材料にしていたこと等が、地を這う捜査で明らかとなる。
 だが警察の捜査は大きな壁に直面する。捜査と同時進行で、GHQと旧軍関係者の間で、秘密戦部隊の元隊員を戦犯にしないとの交換条件で、秘密戦の詳細データを米軍に提供する隠蔽工作が進められたからだった。
 隊員たちの口止め工作を先導したのは、秘密戦の総元締め・参謀本部の有末精三中将と七三一部隊の石井四郎部隊長。著者は捜査の焦点をそらす彼らの証言を歴史学者の目で冷静に指摘する。
 捜査が難航したもう一つの壁は、意外にも捜査陣の通常捜査の「盲点」だった。物証が少ないなか「年齢五〇歳前後」「白毛まじりの短髪」という目撃情報が、一人歩きし た。秘密戦の隊員にとって、「変装」は必須の技 術であり、年配者に化けるのは容易だった。これは著者独自の指摘。
 戦後史の深い闇を垣間見せる検証結果の内容だが、事件後、ほどなく日本は再軍備への逆コースに向かう。(新日本出版社2000円)
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2020年10月23日

【スポーツ】 競技者に負担強いる国際大会強行に疑問=大野晃

 国際体操連盟が11月8日に東京で国際大会を開催するという。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で2020年東京五輪1年延期決定後、国内で初めての五輪競技の国際大会である。
  体操の強豪だが、感染が拡大した中国、ロシア、米国の代表が参加して日本代表と競い2000人までの観客を見込んでいる。
 外国代表は72時間以内のウイルス陰性証明書を持参し、入国時にも検査。入国後2週間の待機は免除されるが、公共交通機関を使わずにホテルと競技場の往復などに行動が制限され、毎日検査を受けるとしている。
 出入国制限している国からの入国を特例で認めるが、延期された東京五輪運営の試験とされていることが気になる。
 東京五輪開催の不安を表面的に消すための政治的色彩が強い。競技者の人体実験とまでは言わないが、強引に安全宣伝するのは、GOTOキャンペーンとどこか似ている。
 五輪開催へ向けて、政府や組織委員会の強引さが目立ち始めている。各国代表を検査漬けにして、五輪開催を強行する腹づもりなのだろうか。国際交流が制約されてトップ競技者が悩んでいるのは、世界中で全競技に共通しているが、安心、安全を犠牲にできない。
 五輪の意義は、世界の競技者が競技を通じて交流し、友好連帯を強めることで世界平和につなげることにある。
 開催国や都市の運営能力や競技力を誇示する場ではない。五輪の観衆が求めているのは、競技者の高い技能や仲間とともに競技に取り組む姿勢を目の当たりにして、人類の到達点や国際協調の重要性を再認識することだろう。
 焦らず、入念に、それらの条件を十分に整えることこそ、五輪開催都市の使命である。
 「アスリート・ファースト」を軽々しく口にして、競技者に負担を強いる強引な開催を目指すのは、感染拡大対策に動かずに、自助を強調する政治姿勢に通じる。厳しい監視が必要だろう。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2020年10月21日

【オンライン講演】 会見は記者の主戦場 南彰新聞労連委員長が語る=須貝道雄

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 「記者会見は現代の主戦場だ」――新聞労連の南彰委員長(朝日新聞記者=写真=)は8月23日、オンライン講演会「メディアは今、何が問題か」で首相・官房長官会見を取り上げ「政治家の言いっ放し、宣伝の場にしてはならない」と語った。
 政治取材では自宅への夜回りやオフレコ取材が重視され、報道側は「表の場」である記者会見に力を入れない傾向があった。南氏はその転換を訴えた。
政治家はツイッターなどのSNSやネットで市民に直接情報を発信し「やってる感」を演出するようになった。一方で記者会見の無力化、形骸化を狙っていると話した。
 実際に2017年以降、官房長官会見では「公務があるのであと1問」と官邸側が発し、質問制限が露骨になった。その結果、会見は長くても10分か15分で終わっている。
今年8月6日、広島市であった安倍晋三首相の会見では、質問を求めた朝日新聞記者に対し、官邸報道室の職員が「ダメだよ。終わり」と腕をつかんで妨害した。明らかな知る権利の侵害だった。
 記者会見がネット中継され、可視化される中で「記者は質問を通じて、市民の期待に応え、報道への信頼を勝ち取っていくことが大事。その意味で会見 は主戦場だ」と南氏は繰り返した。
官房長官会見は元々、時間制限無しがルールだったという。菅義偉官房長官のもとで制限が生まれた。「官房長官が代わったら、時間制限無しのルールに戻す必要がある」と呼び掛けた。
 「桜を見る会」をめぐり安倍首相への疑惑が深まった19年11月、報道各社の官邸キャップは首相と中華料理店で懇談をした。その後も総理番、ベテラン記者と懇談が続いた。世間からは「正式な会見を要求すべきだ」と批判の声があがった。
 南氏はこの事態を「官邸側の作戦勝ち」と見ている。懇談の日程は官邸側が設定する。「この時期に懇談をすればメディアを共犯者にできるし、メディア不信もかき立てることができる」と分析。報道側はその意図を見抜き、「作戦」に乗らず、記者会見を機能させていくことが大事だと強調。「会見を、ある意味で記者の怖さ≠伝えていく場にしていくことが重要だ」と語った。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
 
  

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