2018年02月28日

≪おすすめ本≫ DAYS JAPAN 1月増刊号「日本列島の全原発が危ない! 広瀬隆 白熱授業 」─いつ原発を襲う大地震が起きても不思議でない日本沿岸のプレート=藍原寛子(ジャーナリスト)

 次なる原発事故、核災害の予言の書。福島県沖から九州と日本列島を縦断する1千キロの巨大活断層「中央構造線」が地震激動期に入った。加えて津波、活火山、そしてテロの危険が迫る。原発や核燃料再処理工場の大惨事が日本のどこで起きても不思議でない時代。

 著者は10年前に岩手・宮城内陸地震が「日本に原発を建設・運転できる適地はないことを知らしめ」たと指摘。国の原発政策、事業者の問題を挙げ、破局を避けるには原発を再稼働せず停止・廃炉にした上、応急処置として高レベル廃棄物を含んだ使用済み核燃料の乾式貯蔵をと説く。
 何もしなければ、最悪のシナリオ―施設爆発で高レベル廃液が全量放出され、「日本とアジア全土が世界地図から消える」と、センセーショナルな宣告をする。

 これまで予測が当たってきた理由を尋ねると「内心の恐怖と、地球規模で問題を見ているからだ」と著者はいう。九州の群発地震、台湾大地震が続いた。昨年9月に中南米で連続した地震と海底マグマの噴出は、日本の地震に影響を与える地球内部のマントルの動きであり、日本沿岸のプレートは、いつ大地震が起きてもおかしくない状態だとみなしている。
 福島第一原発事故から7年。高度な科学技術が容易に凶器になり得る現代、人間は生き残りをかけて、どんな直感と叡智で行動するのか。福島原発事故の避難者の存在が無視され、次の核災害まで避難の妥当性を認めないとしたら遅すぎる。あとがきの「重罪弾劾」は圧巻。「広瀬節」は絶好調。
(デイズジャパン2150円)
「日本列島の全原発が危ない」.jpg
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2018年02月25日

《編集長EYE》 ICAN、金融機関にアプローチ=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に貢献したことで、昨年、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)。その事務局長のベアトリス・フィンさん(スウェーデン出身)は1月来日し、広島、長崎、東京で講演した。 

 フィン事務局長は「格兵器を持つことが力の象徴ではなく、恥の象徴だと認識させて、核兵器を持つ国に悪の烙印を押すことができれば、核保有国ももっと理にかなった考え方をするようになる」と訴えた。

 核保有国は「恥だ」という認識を世界に定着させるためICANは、さまざまな活動を展開する。1月初旬に本紙のインタビューを受けた(1月25日号に既報)ICAN国際運営委員の川崎哲さんは、その活動を4つに分ける。第一は核禁止条約の署名・批准を世界的に促進するため広島と長崎の被爆者による証言活動とメッセージ発信だ。第二が核武装国の「核の傘」の下にある日本のような協力国の核政策見直しを求める積極的なロビー活動。第三は将来の核武装国の核禁止条約参加を視野に入れて、核武装廃棄や検証措置をさらに精緻する議論を行う。第四が民間の金融機関などへの働きかけだ。核禁止条約が発効されれば、核兵器は国際法上、非人道兵器として認定される。そのような兵器の製造に関わる企業に融資することは社会的な責任を欠いたものと見なされる。対人地雷もクラスター爆弾も禁止条約発効(地雷は99年3月、爆弾は2010年8月)で、企業への融資が引き上げられて兵器の生産や貿易が大幅に縮小した。

 川崎さんはこう語った。

 「三菱UFJファイナンシャルグループは、『非人道兵器』のクラスター爆弾を製造する企業に対して今後、その資金使途にかかわらず、融資しない方針を昨年12月に発表した。例えば三菱UFJに核兵器の製造では、どう考えているのか≠ニいったアプローチは重要です」

 企業が相手ならば方針の転換は期待できそうだ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年2月25日号
posted by JCJ at 16:54 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【今週の風考計】2.25─あらためて<築地でええじゃないか!>

「築地は守る、築地の後は築地」と言明してきた小池百合子都知事が、「築地に市場をつくる考えはない」と仰天発言。
これまで都知事は、築地には<セリ>などの市場機能を残し、豊洲には流通センターの役割を担ってもらう─両市場“併存”構想を声高に語ってきた。その約束を反故にする、まさにチャブダイ返しの暴言である。

豊洲移転に反対する<築地女将さん会>の一員である鈴木理英子さんをガイドに、このほどJCJ会員メンバーは「築地」を実地見学した。建物の6階屋上から一望すると、隅田川へ扇子を広げたように昭和モダンの棟屋が伸びる。その湾曲したカーブは鉄道の引き込み線に対応し、トラック輸送にも便利だったという。

地上に降りると、セリも終わり仲卸の人たちが買荷保管所へ荷物を運ぶターレが勢いよく行きかう。仲卸は約500社、目利きの技を支えに、現物を見てもらい値段を決める建値市場の魅力。健全な価格が形成され、漁師や農業生産者への利益還元と品質向上に結びつくという。ちなみに鹿児島県産のアカヤガラがキロ1700円、千葉県産キンメがキロ3600円。
さらに場内・場外を回わる首都圏からの買出人は、毎日1万人を超える。加えて海外からの観光客が場内の市場メシや場外の御鮨に長蛇の列をなす。築地ブランドここにあり。<築地でええじゃないか!>。わざわざ10月11日、なぜ豊洲へ移転させるの? 

いま豊洲では、ベンゼン・シアン・水銀などの有害物質がしみこむ地下水のコントロールに躍起だ。海抜より1.8メートルまでの水位に抑えないと、汚染物質の漏出も大地震による液状化現象も防げない。現実は地下水の水位は、最高で海抜より4.6メートル。地下水を抜き取るポンプの稼働費用は巨額になるのは必定だ。
40ヘクタールもの広大で、かつ複雑に入り組んだ土地の地下水を、1.8メートル以下に管理すること自体が至難の業。“安全宣言”が出せなければ移転はとん挫。危ない橋を渡るより、築地を守るほうがずっといい。(2018/2/25)
posted by JCJ at 15:52 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

≪リレー時評≫再び「住民投票」にひた走る維新の会=清水正文

 2015年5月、維新の会は「大阪都」構想の是非を問う住民投票を32億円もの市税を投じ、5億円ともいわれる宣伝費をかけて行ったが、大阪市民から「ノー」の意思が示され、法的にも明瞭な決着をみた。
 ところが、松井大阪府知事、吉村大阪市長は「副首都構想」と装いを変え、「総合区」も議論するからと公明党を抱き込んで、昨年大阪府・市に「特別区設置協議会=法定協議会」を設置し、今年の秋に再び「住民投票」を行おうとしている。

 しかし、新たな「特別区」案なるものは、否決された「5区案」を「4区または6区案」にするというだけで、本質的には何の違いも打ち出せていない。前回の「二重行政の解消」や「財政効果額」の大義や道理は消え、万博誘致を利用した「IR」(カジノ)などを進める以外に「都構想」のメリットを示すことができず、矛盾が広がっている。
 「法定協議会」では、「現行法では都区調整財源に地方交付税は使えない」「財政シミュレーションを出さないのは、メリットがないからではないのか」などの異論や疑問が維新以外の政党から出されている。

 昨年9月の堺市長選挙では、4年前に続き「大阪都構想」反対を掲げる竹山市長が「堺は一つ、堺のことは堺で決める」と主張し、「堺市つぶし」を狙う維新の候補に勝利した。世論調査でも、大阪市民の「都構想」反対は1年間で5ポイント増えて47%に、賛成は10ポイント減って37%(「読売」)となっている。
 「総合区」とは大阪市を存続させたうえで、行政区の権限を強化するために、単独あるいはいくつかの区を合わせて設置しようとするもので、地方自治法に基づき市議会で決定すれば「住民投票」など不要であり、変更・解消も市議会の権限になっている。

posted by JCJ at 15:26 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月18日

【今週の風考計】2.18─幕山ハイクと羽生の金メダルと3・11

友達6人と湯河原梅林を見ながら、幕山ハイクを楽しんだ。快晴の空に浮かぶ梅4千本。「紅千鳥」や「白加賀」などの梅が、香りを漂わせながら、もう一杯に赤や白の花弁を広げて咲きほこる。

梅の散策路を過ぎ登山道に入ると、きつい傾斜の木の階段が続く。つづら折りに伸びる山道に、ハーハー息が出る。五郎神社とある標識を超え、しばらく行くと大きな岩に出会う。その平らな面に、「追悼 2011年3月11日 東日本大地震 落石」と記されている。7年目の3・11が近いと思いながら、岩のわきを抜ける。
パッと展望が開ける。眼下に湯河原の街、春霞にけぶる相模灘、初島、ぼんやり大島まで見える。さらに登る。やっと標高625mの頂上。真鶴半島が真下に突き出ている。おにぎりの旨いこと。

帰りは一瀉千里、転ばぬようバランスを保つのが精いっぱい。湯河原駅近くの湯場で汗を流す。その湯上りロビーにあるテレビが、羽生結弦選手の快挙を映している。ソチ五輪に続き、平昌五輪でも金メダル獲得、66年ぶりの連覇だ。数々の試練を乗り越え、今や伝説のスケーターになった。
2011年3月11日、彼は東北高校1年・16歳の時、東日本大震災に遭遇した。被災した自分の家族の苦労と合わせ、「ガスや、電気、水道も止まって大変でした。それ以上に、苦しんだ人たちがたくさんいて、特に津波、原発事故の被害にあった地に行って思った」と、多くの被災者への思いも口にしている。ジーンと胸が熱くなった。(2018/2/18)
posted by JCJ at 11:41 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月17日

【マスコミ評・放送】DHC、確信犯として沖縄を揶揄=岩崎貞明

 昨年12月、NHKと民放が設置する放送の自主規制機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が、昨年1月に東京都のローカル局、東京メトロポリタンテレビジョン(MX)が放送した番組『ニュース女子』の沖縄特集が「重大な放送倫理違反」だったとの意見を公表した。

 番組は、沖縄の「基地反対派」は「過激派で危険」「日当をもらっている」などという根拠のないデマ情報をレポートし、米軍基地建設反対を訴えて工事現場付近で座り込みの抗議行動を続けている地元の人々を笑い者にするものだった。化粧品製造・販売のディーエイチシーの関連会社が番組を制作し、スポンサー料も付けて放送させるという「持ち込み番組」のスタイルだった。

 BPO放送倫理検証委は、この番組が放送局において適正な考査が行われたかどうかを検証したが、それは沖縄の現地に赴いて関係者に聴き取り調査を行うなど精緻な検証作業を試みたものだった。
 その結果として同委員会は、MXに対して「抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった」「『救急車を止めた』との放送内容の裏付けを確認しなかった」「『日当』という表現の裏付けを確認しなかった」「『基地の外の』とのスーパーを放置した」「侮蔑的表現のチェックを怠った」「完パケでの考査を行わなかった」という六つの点を指摘し「本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があった」と断じている。

 問題は、直接番組制作に携わったディーエイチシー側が、反省どころか開き直りの態度を改めないことだ。基地反対派の取材をしていないことについては「言い分を聞く必要はないと考えます」などと一方的な主張に終始して、まさに確信犯として沖縄の人々を揶揄している。ネット上に蔓延する「沖縄ヘイトスピーチ」は深刻な問題だ。

 この番組をめぐってはもう一件、BPOの放送人権委員会にも人権侵害救済の申し立てが行われている。人権問題であるからには、こちらのほうこそ早急な対応が待たれているはずだ。いずれにせよ、決定を受けたMXの態度が懸念される。
posted by JCJ at 01:14 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月11日

【今週の風考計】2.11─籠池夫妻を6カ月も拘留する不可解な理由

■「マンデラ・ルール」とは? 監獄に収容された人たちへの拷問や非人道的な取り扱いを禁じ、定期的に家族や友人との連絡を保障する国際基準である。不条理で苛酷な27年もの長期投獄に屈せず、南アフリカ大統領となった故ネルソン・マンデラさんを讃えて名づけられたという。

■参議院議員の山本太郎さんが、このルールを国会質問で取りあげ、安倍首相に迫る内容が喝采を浴び、広く知られるようになった。「籠池氏と奥様は半年以上にもわたり独房で長期間拘束。総理ご自身が口封じのために長期拘留を指示したなんてありませんよね?」という質問だ。
■これまで安倍首相が「この籠池さん、真っ赤な嘘、嘘八百ではありませんか」と誹謗し、「詐欺を働く人物」とこき下ろす、あの森友学園の前理事長・籠池泰典さんと妻の諄子さんの事態が深刻なのだ。夫妻の勾留が、なんと6カ月に及んでいる。

■検察は証拠品を押収し関係者の聴取を終えたが、完全黙秘を続けている以上、さらに証拠隠滅の恐れがあるという理由で、起訴後も拘留を続けている。いま大阪拘置所に収監されている籠池泰典さんは、窓のない新館の独居房に入れられ、諄子さんは窓はあってもエアコンがない旧館に収容されている。家族との接見もできない。まさに「マンデラ・ルール」に違反しているではないか。
■ひるがえって、森友への国有地売却の橋渡し役を務めたとされる昭恵夫人は平然と海外を経めぐる。しかも音声データがあるにもかかわらず、「私こそ真実を知りたい」と言いつくろい、偽証罪に問われかねない証人喚問に応じない。

■財務省は破棄したはずの資料を、1年近くたってポロりポロりと出してくる。佐川宣寿・前理財局長の国会出席に踏み切り、累を昭恵夫人に及ばさないための戦術との声も挙がる。国民を馬鹿にするな。(2018/2/11)
posted by JCJ at 13:33 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月08日

リニア事件 JR東海は共犯者 「三位一体」で国民だます 関島保雄弁護士に聞く=橋詰雅博

 リニア中央新幹線の沿線住民738人が16年5月に品川―名古屋間の工事認可取り消しを国に求めた行政訴訟は、東京地裁で8回の口頭弁論が行われている。原告弁護団共同代表の関島保雄弁護士(70)に、リニア談合事件をどう見ているのかなどを聞いた。

――談合事件への感想は。
 大手ゼネコン4社が工事受注前に談合を当然やっていると思っていました。リニア新幹線はJR東海が全額自己資金で建設すると07年に表明。だから国も国会も国民も民間事業だから口を挟めないという流れできました。

「民間事業」口実に
――しかし、リニア新幹線は公益事業を対象とした全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づいて建設されています。
 全幹法の場合、用地買収や建設残土の処分などで自治体を協力させることができて、環境アセスメント前に提出する工事計画などはアバウトです。環境アセスはおおざっぱなものにならざるを得ません。全幹法の適用はJR東海にとってメリットは大きいのです。それでいて民間事業を口実にJR東海はいろいろな問題から逃げています。背後に政治的な動きがあったとしか思えません。

――そのうえ安倍晋三首相は16年6月に財政投融資による支援を打ち出しました。
 総事業費約9兆円のうち3兆円を財投で賄っています。しかも超低金利で、30年間返済据え置きです。
これを実現するため安倍政権は独立行政法人「鉄道・運輸施設整備支援機構」の法改正を行い、財投資金よってリニア新幹線の工事を発注できるようにしました。全幹法を適用、さらに財投という名の税金が投入されたリニア新幹線は、今や国家的プロジェクト。国が様変わりさせておきながら民間事業のイメージを維持し、国民をだましています。

9兆円の利権隠す
 9兆円という大きな利権を隠すため国、JR東海、大手ゼネコンが三位一体となってリニア新幹線建設を進めてきています。談合によって工事費がはね上がったのだから発注元のJR東海は本来ならば被害者だが、共犯者と言っても過言ではありません。JR東海の葛西敬之・取締役名誉会長は安倍首相の財界応援団の有力メンバー。ここでも首相に近い民間人が有利になるよう政策がねじ曲げられていると思います。

――裁判への影響はありますか。
 ストレートに影響するとは言えないでしょう。しかし、この事件は、談合のような違法行為がさまざまな場面で起きているにもかかわらず強引に建設が進められている実態を裏付けるいい材料になります。原告側の主張に説得力の厚みが増します。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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ICANのノーベル賞受賞と被爆者運動への目─第五福竜丸展示館を訪ねて=木下壽國(ライター)

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が昨年、ノーベル平和賞を受賞した。メディアはこぞって、このニュースを大きく取り上げた。
 メディアが受賞に沸き立つ中、私は何十年ぶりかで東京都江東区の夢の島にある第五福竜丸展示館を訪れた。核兵器問題についてささやかながらも自分自身でなにかを感じてみたいと思ったからだ。訪ねたのは平日で、閉館時間に近かったこともあり、展示を見ている人は少なかった。

 館内では特別展<この船を描こう>というイベントをやっていて、小中学生の描いた第五福竜丸の絵がたくさん展示されていた。それを見た私はちょっとした感動を覚えた。船の姿をそのまま描いているのだろうと半ば見下していたのだが、なかなかどうして。想像力が豊かなのだ。
 中学2年生による「朝日を告げる福竜丸」などは、海をドーッ、ドーッと流れる川のように表現し、ちょっとした迫力を与える。そのほかの作品もそれぞれの想像力の中に船を自由に遊ばせていた。
 第五福竜丸の船体に沿って左回りに歩みを進めていくと、水爆ブラボー実験で汚染された太平洋の海域を赤丸などで表示するパネルがあった。一瞥して、改めて汚染地域の広さとひどさに驚いた。
(→続きを読む)
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2018年02月07日

≪おすすめ本≫ 太田昌克『偽装の被爆国 核を捨てられない日本』─「核の傘」という「幻想」にすがり、<唯一の被爆国>がかぶる仮面=倉澤治雄(科学ジャーナリスト)

 「『唯一の被爆国』をアピールして被害者面するな」
 そんな声がいずれ世界から沸き起こるだろうと、本書を読んで確信した。日本はまさに「偽装の被爆国」である。「唯一の被爆国」という仮面の下で、安倍政権が核不拡散に逆行する行動を取っている実態を、綿密な取材をもとに論証する。

 米国の「核先制不使用」に対する反対表明、核兵器禁止条約交渉への不参加、安易な原発の再稼働、47トンというプルトニウムの蓄積量、インドとの原子力協定、これらは一体何を意味するのか。世界が日本の核武装を警戒するのも当然である。
 すべては「核の傘」や「核抑止」という日本政府が固執する幻想から始まる。「核を持てば強くなる」「核を持てば侵略の意図を抑止できる」という幻想である。
 「核戦略」は、「相手も自分と同じように考える」─その前提をもとに成立する。「相互確証破壊」が良い例だ。しかし「同じように考えない」主体が核を持てば成立しなくなる。失うものがない勢力に「核の傘」や「核抑止」は通用しない。「核の傘」は「破れ傘」という「幻想」となる。

 私の父は広島で原爆投下の惨状を、高射砲部隊の一員として目の当たりにした。しかし自分の見たことを一言も語らず、6年前に他界した。「非人道的」な核の惨状に、言葉を失ったからであろう。
 「核戦力を背景にした恫喝と威嚇を続けるトランプに同調し、下手をすると、その強硬路線に加勢しているように映る」
 著書の懸念に、私は完全に同調する。核の緊張が高まる今こそ、日本は仮面を脱ぎ捨てる時が来た。
(岩波書店1700円)
「偽装の被爆国」.png
posted by JCJ at 10:19 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月04日

【今週の風考計】2.4─「使える核」を高く評価する日本政府の感覚

「炎と怒り」に駆られたトランプ大統領は、<脱オバマ>なら何でもあり、ついには「核なき世界」を目指すオバマ宣言まで廃棄した。
「柔軟な核オプションを拡大する」ために、敵国の重要施設を、ピンポイント攻撃できる態勢づくりに向け、使いやすい核の開発に全力を挙げるというのだ。

長崎に投下した原爆の爆発力を、ほぼ4分の1に抑えた小型核弾頭を開発し、水上艦・潜水艦を問わず、搭載した弾道ミサイルに装着する企てだ。核兵器を使う基準についても「国民やインフラ、核施設などへの通常兵器による重大かつ戦略的な攻撃も含まれる」と記し、核が使える機会を拡大させた。
この約20年で世界が保有の核弾頭7万発を、1.5万発まで削減してきた。にもかかわらず「核弾頭を格納庫から運び出し、改良を加え最新モデルにして使う」とは。ICANがノーベル平和賞を受賞するほど、核兵器廃絶の流れは世界に広がる。それに逆らう蛮行そのもの。

驚くのは世界で唯一の戦争核による被爆国・日本政府の態度だ。事前に米国から説明を受けるや、世界のトップを切って「高く評価する」とは、なにごとだ。被爆者・平和団体は「悪魔に魂を売り渡した」と、怒りの声を挙げている。「トランプ大統領は核被害に無知・無関心だ。広島・長崎に来て被爆者の話を聞き、核の恐ろしさを実感すべきだ」と話す。

先月末、人類が滅亡する「地球最後の日」へ残り2分、30秒早める宣告が出された。午前0時と定めた「終末時計」の残り時間は、どんどん短くなり、過去最短となっている。さらにトランプと日本が早めたのは間違いない。(2018/2/4)

posted by JCJ at 12:02 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月02日

核禁止条約反対「ムダな抵抗」 ノーベル平和賞のICAN国際運営委・川崎哲さんへのインタビュー=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」へのノーベル平和賞は昨年、世界に深い感銘を与えた。しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は条約を黙殺=B日本の多くの国民はもとより世界の人々も安倍晋三首相の冷たい態度に落胆、失望した。安倍首相はICANに対してそっぽを向くが、どこまでも「核兵器なき世界」を追求するICAN国際運営委員でNGOピースボート共同代表の川崎哲さん(49)が本紙のインタビューに応じた。条約発効の見通し、将来日本の参加はあり得るのかなどに答えた。

 ☆     ☆

――核兵器禁止条約に署名した国は56カ国で、批准は3カ国(ガイアナ、バチカン、タイ)ですが、どう思いますか。

 まず核兵器禁止条約は反核運動として理想に近いもので、核兵器廃絶への道筋ができた。

メキシコ批准済み

 条約の批准に関してメキシコは昨年12月に議会で批准している。ただ、国連への文書提出が遅れている。正確に言えば批准国は4カ国。しかし、条約発効に必要な50カ国には遠く及ばす、国連で122カ国が条約に賛成したにもかかわらず署名は56カ国にとどまっている。

――署名・批准が進まない理由は何ですか。

 2つ挙げられる。一つはどこの国も政治課題を抱えていて、そちらを優先しているので署名・批准には時間がかかる。単純な理由です。もう一つは米国など核武装国(9)が「役に立たない条約だ」とネガティブキャンペーンを打って、「署名・批准するな」と言っているからだ。2つの理由でいまのような状態になっている。私は前者の理由が大きいと思う。

 昨年末、早期に禁止条約の署名・批准を求める国連決議に120カ国以上が賛成している。署名・批准へ各国の世論が盛り上がれば、批准国は増えるはず。決して核武装国の圧力に屈服してはいません。条約の署名・批准案を国会で審議する順位をより高めるため世論喚起が必要です。

――それにはどうすればいいですか。

 ICANの今年の課題だが、ピースボートの場合、いままでやってきた広島・長崎の被ばく者の方を海外にお連れして核兵器廃絶を訴えてもらう取り組みを継続させて発展させることです。生き残った被ばく者の話は、地元メディアが大きく報じるし、高いレベルの政治家にも被ばく者は会える。気運を高めれば、必ず批准は実現できる。

協力国を揺さぶる

――格武装国と、米国の核の傘に依存する日本のような核武装協力国(約30)をどう攻略≠キるのか。

 核兵器武装国の条約への参加は当面、望み薄。条約を速く発効させれば、武装国も無視できなくなる。これに力点を置く。このため格武装協力国を揺さぶる。私が見るところ、これらの国は一枚岩ではない。核兵器を受け入れる積極派とお付き合い程度の消極派に分かれる。

 北朝鮮の核・ミサイル開発に向きあう日本と韓国、ロシアの核兵器に脅威を抱くバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やドイツ、オランダ、ベルギー、トルコ、ポーランドなどの積極派を落すにはやはり時間を要する。このため消極派にターゲットを絞る。NATO(北大西洋条約機構、29カ国で構成)に加盟するノルウェーは議会で政府に条約加盟への可能性を検討するよう求める決議が可決される。同じくNATO加盟のアイスランドは自国の軍隊がなく、NATO駐留軍もいない。格兵器を受け入れる気持ちはさらさらない。米国の核兵器を配備して積極派と見られるイタリアでも、議会は、禁止条約に参加できるかどうか政府に求める動議を可決している。

 また、欧州では自治州の力が強い。条約賛成の自治州が中央政府にプレッシャーをかけると効果は大きい。消極派の国々や自治州などを落すのがICANの次の戦略だ。

条約は防衛に貢献

――日本が条約に署名・批准する可能性は。

 どんな総理大臣でも毎年8月に被爆地で核兵器廃絶を求める演説を行う。それなのに核兵器禁止条約に参加していない。先だって民放で核問題の特集番組を放送していたが、その実態を知らされた若いタレントは「えー」と驚いていた。多くの国民もこのタレントと同じで、それをよく知りません。日本は被爆国でありながら禁止条約に参加しないという二重性≠フ側面を持っている。このことを常識化させて、国民的な議論を巻き起こす。「条約にコミットしないのは被爆国として理解しがたい、おかしい」という声が大きくなると、日本政府の政策が転換する可能性がある。

 122カ国の賛成を得た禁止条約はいずれ発効する。格武装国と格武装協力国はムダな抵抗を止めるべきだ。条約は、核武装廃棄や国際的査察を義務付けるなども盛り込んでいる。自国防衛のためにも条約を役立てることをめざして知恵を絞ることが日本には重要です。

聞き手 橋詰雅博


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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2018年02月01日

≪リレー時評≫ 沖縄の私たちは、この国の姿を問い続ける=金城正洋(「JCJ沖縄」代表世話人)

 昨年2月の「JCJ沖縄」立ち上げから、やがて1年。年末に「リレー時評」の依頼があった。さっそく正月3日に、この稿を起こす。沖縄では年の初めに手掛けることを初興し(ハチウクシ)と言う。縁起ものですのでどうかよろしく。
 と書いたところで新年早々縁起でもないことが起きた。6日、伊計島の民家の数十メートル先に米軍ヘリが緊急不時着。8日には読谷村のリゾートホテル近くに別の米軍ヘリが緊急不時着した。

 米軍機の事故は枚挙にいとまがない。一昨年暮れ名護市の東海岸にオスプレイが墜落大破。オーストラリア沖で墜落した普天間基地所属のオスプレイは、その後も岩国基地や大分、奄美、石垣などの民間空港に緊急着陸。衆議院選公示翌日には高江の民間地で大型ヘリが墜落炎上している。
 去年暮れには普天間基地周辺の保育園にヘリの部品が落下。さらに近くの小学校校庭で体育の授業をしていた児童たちの十数メートル先に重さ約8キロの米軍ヘリの窓が落下し、衝撃で飛んだ小石で児童が軽傷を負った。

 それだけではない。米軍関係者による殺人事件や飲酒運転死亡事故も起きた。米軍も日本政府も沖縄を戦争の訓練場としか見ていない。1945年から憲法の蚊帳の外に放置され、時計の針が止まったままだと言っても過言ではあるまい。
 昨年1月、東京地方放送局の番組「ニュース女子」に端を発する「沖縄ヘイト」が表面化。BPOが問題視して審議入り。「重大な放送倫理違反があった」と異例の決定を下した。
 だが沖縄ヘイトは止まらない。「部品落下は作り話」と誹謗中傷が後を絶たない。米軍が非を認め謝罪したにもだ。正体を隠し暗闇から弓を放つこの国の人々。沖縄だからどんなに叩いても許されると言うのか。無知無理解無関心なのか、憎悪に満ちた確信犯なのか、「嫌沖縄」の底が抜けてしまったようだ。
 辺野古の海と陸では基地建設に抗議する人々に対して国家権力が暴力的に排除し、逮捕行為にまで及んでいる。

 沖縄は11月の知事選を頂点とした統一地方選の年。2月4日は辺野古新基地建設を争点とした名護市長選だ。基地建設に反対する現職対自公維新が推す基地容認派の新人の争い。自民は党と政府挙げてなだれ込む。「辺野古反対は堅持する」という公明は基地容認候補を担ぐ矛盾を露呈。実質基地押し付け役に回る。
 昨年2月のJCJ機関紙に米大統領と対峙する「ロイター」編集主幹の言葉があった。「われわれは最善を尽くして記者たちを擁護し、ニュース活動を続ける」「報道の現状を悲観してはならない」。その通りだ。

 私たちは悲観しない。沖縄の歴史に立てば、権力に踏みつけられた者の視点で民衆の声をすくい上げる努力を怠りはしない。沖縄の現実を発信し、沖縄から見えるこの国の姿を問い続けていく。

posted by JCJ at 10:51 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月28日

リニア談合事件 税金3兆投入の仕掛け人は?JR東海への破格優遇に捜査のメスを=樫田秀樹

リニア巨額談合事件について、2015年度JCJ賞を受賞した「悪夢の超特急<潟jア中央新幹線」(旬報社)の著者でジャーナリストの樫田秀樹さんに寄稿してもらった。

          ☆     ☆

 昨年末からリニア中央新幹線の建設を巡る談合事件が報道されている。

東京地検特捜部はスーパーゼネコン4社(大林組、大成建設、清水建設、鹿島)の談合解明に努めているが、私が注視するのは、地検が果たして「リニア計画への3兆円の財政投融資(以下、財投)」の絵を誰が描いたかまで究明するかだ。

 15年11月、私は某準ゼネコンのベテラン社員から「弊社はリニア計画に参画しない」との話を聞いた。理由は単純明快。リニア工事ではペイしないからだ。

 07年、JR東海は「リニアの建設費9兆円を自己負担する」と公表し関係者を驚かせた。このうち、第一期工事となる品川―名古屋間で5兆5000億円だ。

銀行から融資無理

 ここで私は2つの疑問を抱いた。


@5・5兆円のうち東海道新幹線の収益を当てても、3兆円足りない。どう工面するのか。

A5・5兆円を工面できても、果たしてそれで竣工できるのか。

以下、拙著「リニア新幹線が不可能な7つの理由」(岩波書店)にも書いたが、若干の加筆をして説明したい。

JR東海の15年度末の純資産額は2兆円強だった。つまり3兆円を借りる担保がないため、銀行融資は難しいと予測されていた。

 仮に5・5兆円を工面できても、準ゼネコン社員が「参画しない」と表明したのは、「近年の新幹線は、当初予算の倍以上もかけて竣工している」からだ。従来の新幹線は、国と自治体とが建設費を出し合い、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、機構)」が建設し、竣工後にJR各社が機構に毎年「線路使用料」を払い運用されている。だが、リニア計画での当初の資金源はJR東海の自己資金だけ。だから、準ゼネコン社員は、「難工事で工費がかさんでも、JR東海は当初の契約金額以上は払わない」と予測した。 

国の金を引っ張る

そして言葉を続けた。

「だからゼネコンはうまいこと国から金を引っ張ろうとしているはず」

 その動きがあったのかは判らない。だがその7か月後の16年6月、安倍首相は突如「リニア計画に財投を3兆円投入」と発表した。

財投は、国債発行で集めた資金を財務省が35ある政府系特殊法人(財投機関と呼ぶ)に融資することで大規模事業を実現する制度だ。

 今回の財投投入で不可思議なのは、財投機関ではあるが、金融機関ではない機構に、16年11月、法改正までしてJR東海に融資できる機能をもたせたことだ。財投機関には「日本政策投資銀行」というれっきとした金融機関がある。

なぜここからの融資ではなかったのか。同銀行OBは「当行は民間銀行との協調融資と要担保が原則。担保のないJR東海への融資は無理」と語った。

債務不履行もある

実際、法改正直後から、機構は5回に分け3兆円をJR東海に融資したが、「無担保」に加え「30年据置き」という破格の条件だった。誰がこの絵を描いたのか。

 財投投入の方針は安倍首相の表明の何カ月も前から政府内部で話し合われていたはずで、16年から、リニアの工事契約が一気に増えたのは偶然なのだろうか。

 そして、私は懸念する。工期が伸びれば工費もかさむが、そのときにまた兆単位の財投を発動するのか。旧国鉄の28兆円の借金のうち約16兆円は財投での借金だ(その反省から現在の建設方式になった)。これを今国税で償還しているのは周知のとおりだが、もしJR東海が債務不履行に陥った場合、国税で償還するのだろうか。

 注視しなければならない。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
posted by JCJ at 14:24 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【今週の風考計】1.28─不正流出580億が示すズサン管理の実態

「やばいよ、やばいよ」─お笑い芸人の出川哲朗さんも真っ青。年末から「コインチェック」のCMに出演していたからたまらない。持ちネタが現実になってしまったのだ。
「コインチェック」が扱う、仮想通貨<NEM>がハッキングされ、580億円が不正流出した。その原因は、インターネットから隔離して管理する「コールドウォレット」が施されておらず、さらに秘密鍵を複数に分割して別々に管理する「マルチシグ」も使わず、信じられないほどの、セキュリティ保全のズサンによる「やばい」ものだった。

盗まれた<NEM>を追跡捜査しつつ、当面、保有者26万人に日本円で返済するというが、加熱する仮想通貨市場へ冷や水を浴びせた。ビットコインやリップル、イーサリアムなど他の仮想通貨も値下がりし、商品やサービスの決済にも影響が広がっている。
3年前に約480億円分の仮想通貨を消失させた、日本のマウントゴックスは経営が破綻。金融庁も仮想通貨取引所への管理監督を強化し、野放図な開設をストップさせるべきだ。中央銀行の保証がない仮想通貨の取引を禁止、法規制する国や地域も出てきている。

昨年、世界中でランサムウェアやサイバー攻撃による大規模な情報漏えいが起きた。また日本ではマイナンバーに基づく情報管理がいい加減との指摘もある。高い情報セキュリティを確保したシステムの構築が急がれる。
個人・組織を問わず、さまざまな狙いや意図をもって、情報のハッキングやサイバー攻撃にさらされる危険は募る。くしくも2月2日は「情報セキュリティの日」、まず金融庁は肝に銘じよ。(2018/1/28)
posted by JCJ at 13:07 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月25日

《編集長EYE》 異様な「デベロッパーファースト」=橋詰雅博

 都民が東京都を相手取り、2020年東京五輪・パラリンピック選手村用地として都有地を不動産会社11社にたたき売りしたのは違法だとする住民訴訟の第2回口頭弁論が2月27日(火)、15時から東京地裁419号法廷で開かれる。周辺価格の10分の1でつまり9割値引きで売却されたことから8億円値引きされて国有地が売られた森友疑惑になぞらえて「都政版森友疑惑」裁判とも呼ばれている(本紙17年10月25日号で既報)。

 昨年11月17日の第1回口頭弁論では、小池百合子都知事らに差額分約1209億円の請求を求めた原告33人を代表して中野幸則さん(66)が意見陳述した。陳述の中で中野さんは「本件は都が官民癒着、官製談合のもとで、市街地でない土地を市街地再開発事業と称して、『大地主』・『監督官庁』・『施行者』を演じた一人三役の『一人芝居』であり、デベロッパーファーストとも言うべき異常なものです」と訴えた。そして「(都有地の)売却はやめて定期借地権に変更して、数十年後には土地をとり戻すべきではないか」と主張した。

 実は被告弁護団団長の外立憲治弁護士は、中野さんらの陳述を阻む行為に出ていた。原告が読むことを認めないよう求める上申書を提出したのだが、清水千恵子裁判長はこれを却下したのだ。その腹いせなのか、外立弁護士は、中野さんと原告代理人の各陳述が終わった後、事前提出していない陳述書を読み上げ「(原告の主張は)言いがかり」と反論。このいきなりの陳述に対して原告代理人が抗議する一幕があった。

 原告弁護団は「(上申書提出や通告なし陳述を行った)被告は、ムキになっている。焦りと危機感のあらわれ」と相手の胸中を推し量った。  

  訴訟を広く知ってもらうため2月17日(土)には「都有地投げ売りシンポジウム」を13時半から16時半まで専修大神田校舎で開く。「都政版森友疑惑」裁判にもっと都民は関心を。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
posted by JCJ at 15:17 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月21日

【今週の風考計】1.21─「もり・かけ・スパ」三点セットで追求を

▼150日に及ぶ通常国会が始まる。政府は過去最大の総額97兆7千億をこえる予算案をトップに、「残業代ゼロ法案」にも等しい「働き方改革」関連法案を含め、64本の法案成立をもくろむ。
▼9条つぶしの改憲にも拍車がかかる。2月中旬には憲法審査会での議論を始め、年内にも国会発議を目指す方針だ。バラバラと揶揄される野党も、国会審議では足並みそろえ、法案の狙いを明らかにし、国民の負託に応えてほしい。

▼ここにきて急浮上しているスパコン疑惑への解明も、疎かにしてはならない。経産省からの助成金4億円の詐欺で逮捕されたベンチャー企業の斎藤元章社長は、安倍政権の有識者会議の委員を務めていた経歴がある。かつ自社の顧問に月額200万円払って就任していたのが、あの安倍政権と近い元TBS記者の山口敬之氏というから、問題の根は深い。
▼また山口氏の生活拠点である永田町・キャピトルホテル東急にある一室への賃貸料(月額70万円ほど)も負担していたという。山口氏といえば、伊藤詩織さんレイプ事件で訴えられた立場にある人。
▼かつ斎藤氏と共同で立ち上げた財団法人「日本シンギュラリティ財団」は、その事務所の土地家屋の所有者の住所が、山口氏の実家と同じ住所だという。また山口氏は斎藤氏のセミナーにも参加して、彼の実績をほめあげる仲だ。これほどまでの蜜月は何故?

▼「もりそば・かけそばだけでなく、スパゲッティまで出てきた」と、立憲民主党の辻元清美国対委員長は言う。森友学園・加計学園問題に続く疑惑に発展しうる、重要なテーマだ。「もり・かけ・スパ」疑惑の三点セットで追及してほしい。(2018/1/21)


posted by JCJ at 12:43 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月19日

2月17日JCJ講座「テレビ記者疑似体感!試作&座学の濃密3h」=須貝

JCJジャーナリスト講座のお知らせです。今回はテレビ記者を志望する人たち向けに開催します。講師は元TBSの下村健一さん。
最近はテレビ記者の希望者が減っているそうです。あんなに面白い仕事なのになぜなのか、と下村さんは考え、若い世代向け講座の開催に協力していただきました。
詳細は下記の通りです。ゼミ方式に近い形で開きます。
ご参加、お待ちしています。お知り合いに広めていただければ、ありがたいです。どうぞよろしくお願いします。
★JCJジャーナリスト講座★
「テレビ記者疑似体感!試作&座学の濃密3h」

―――この職業は、本当に厳しくて、本当に面白い。志すなら、思いきりワクワクして、しっかり覚悟して、臨もう。それにはまず、現場を知ろう。
「筑紫哲也NEWS23」「みのもんたのサタデーずばッと」などで、自ら取材・リポートしてきた元TBSの下村健一さんが「テレ
ビ記者」を目指す若い世代と熱く語り、何を準備すべきか、どう向き合うべきか指導します。
2月17日・土曜
午後1時半〜5時
講師:ジャーナリスト・下村健一さん
(白鴎大学客員教授・元TBS報道局)
会場:日比谷図書文化館・4階セミナールーム(定員20人)
東京都千代田区日比谷公園1の4 最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅
参加費:1000円(予約が必要です)
予約:参加希望日と氏名、連絡先電話番号、メールアドレスを明記して、下記にメールかファクスでお申し込みください。
メール sukabura7@gmail.com ファクス 03・3291・6478
★自由提出課題:受講する方は任意で前々日までに、30〜90秒の自己紹介映像
をつくり、無料の大容量データ転送サービス(ギガファイル便など)で上記アドレスまで提出してください。(義務ではありません。)映像は、スマホの
横撮りで結構で。秀作10本を講座内で披露し、講師が批評・助言します。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 電話03・3291・6475
posted by JCJ at 14:39 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月15日

《月間マスコミ評・新聞 》核廃絶運動に平和賞、次につながる=山田 明

 毎年のことだが、年末になると1年を振り返りたくなる。記憶をしっかり記録するためにも。
 世界に目をやると、やはりトランプ米大統領に振り回された1年だった。欧米だけでなく・アジア・中東を揺るがす。国際的にトランプ批判も高まってきたが、安倍首相のトランプ追従ぶりが際立つ。日本外交の姿勢が問われている。
 北朝鮮情勢が緊迫化し、戦争や核への不安が高まるが、平和に向けて明るいニュースも飛び込んだ。今年のノーベル平和賞に国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が選ばれた。核兵器禁止条約の国連採択への貢献が評価された。草の根の運動体、NGOが受賞したことの意味は大きいが、広島・長崎の被爆国である日本政府の対応はあまりに冷たい。
 日本の政治に目を向けると、「安倍一強」政権のもとで、政治の劣化がますます進んできた。何といっても、焦点は森友学園と加計学園をめぐる疑惑だ。日本政治を揺るがす「もりかけ問題」は、安倍首相夫妻が関係する疑惑である。
 そのため政府・自民党は真相隠し、国会審議の先送り、野党の質問時間削減に躍起となった。毎日12月8日社説は、特別国会閉会にあたり、第4次安倍政権の運営方針をただすとともに、「森友・加計」問題の真相を解明すべき国会だったが、その役割を果たしたとは言い難いと。
 先の衆院選は民進党の分裂騒ぎもあり、与党が勝利した。安倍改憲、憲法9条改悪が現実味を帯びてきた。その一方で、市民と野党共闘が全国的に広がりつつある。
 メディアで注目されるのが、NHK受信料に対する最高裁の初判断。読売7日社説も、判決は「NHKがテレビ設置者の理解が得られるように努め」と指摘。政権べったりではなく、NHKは「知る権利」に応えるベきだ。
 朝日10日は1面トップで「リニア入札不正容疑」を大きく伝えた。大手ゼネコン大林組に強制捜査が入り、巨大事業に激震。リニア中央新幹線は環境破壊をはじめ、多くの問題が指摘されている。リニアは公的資金も投入される巨大事業だ。沿線各地の住民が提訴しているが、国会でほとんど議論されていない。メディアもJR東海に遠慮してか、リニア報道が弱い。今回の疑惑など、厳しく追及してほしい。    
  
posted by JCJ at 22:33 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月14日

【今週の風考計】1.14─トランプ大統領が、ほんとに「やばい」。

20日に就任1年を迎える米国のトランプ大統領─今なお品格が問われる、呆れた事態が続く。移民政策をめぐり「野外便所のような国の人々を、なぜ米国に受け入れるのか」と発言。
度し難い人種差別の発言に、メキシコのビセンテ・フォックス元大統領は、「トランプの口は世界一汚いケツの穴だ」とツイートした。

さらには以前に性的関係を持ったポルノ女優に対し、「個人的な弁護士を通じ13万ドル(約1443万円)の口止め料を、投票日を控えた昨年10月に支払っていた」とまで暴露される始末。
マイケル・ウォルフ『炎と怒り:トランプ政権の内幕』も、いかにトランプが「無知」で「臆病」かに始まり、トランプ一族と側近たちの確執、「ロシア疑惑」の真相、髪型の秘密までが赤裸々に記され、1月5日の発売から1週間で100万部を超えたという。邦訳版は早川書房から2月に刊行される。

こうした人物が権力を握る米国政権は、オバマ前政権の「核なき世界」という方針を大転換し、核兵器の役割を拡大させ、海洋発射型の核巡航ミサイルを新たに開発し、艦船への配備を計画している。通常兵器に反撃する場合でも核の使用は排除しない方針だという。ノーベル賞を受賞したICANのベアトリス・フィン事務局長は「核兵器が使われる危険性の高い状態」と批判する。

品格の疑われる権力者が<核のボタン>を握っている怖さが身に迫る。現にハワイでは、弾道ミサイル飛来との緊急警報に避難の大騒ぎ。なんとボタンの押し間違いによる誤報!
新しい広辞苑の発売広告にあるコピーじゃないが、まさに「やばい」。そんな米国本土に、初めて日本で生産された最新鋭ステルス戦闘機F35Aを運び、点検確認を受け、航空自衛隊に42機配備する段取り。この配備も米国の<核の傘>を補完するため。ほんとに「やばい」。(2018/1/14)
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2018年01月08日

《沖縄リポート》奇跡に近い20年に及ぶ辺野古闘争 日米両政府への怒りが噴出=浦島悦子

 1997年12月21日、名護市民が住民投票で「辺野古新基地NO」の市民意思を示してから丸二十年になる。日本政府の権力と金力を総動員した市民投票潰しを跳ね返し、地域住民・市民が心血を注いで勝ち取った勝利はわずか3日後、政府の圧力に屈した当時の比嘉鉄也市長によって覆され、以来、私たちは日米の国家権力との対峙を強いられてきた。
 その間に基地建設計画の中身は何度も変わり、沖縄県知事も名護市長もそれぞれ4人目を数える。彼我の圧倒的な力の差を考えれば、20年もの長い間たたかい続けてこられたことは奇跡に近い。地域住民の地を這うようなたたかいが名護全体へ、そして沖縄から全国・世界へと広がってきたからこそ、「着工」されたとはいえ工事は計画通りには進んでおらず、辺野古・大浦湾の海はまだ、私たちの目の前に美しく輝いている。
 しかし今、私たちは、この海を守り切れるかどうかの瀬戸際にある。埋め立て工事を加速させる護岸用石材の海上輸送が明日にも始まるかもしれないのだ。国頭村奥港はその後使われていないものの、辺野古への海上輸送船の給水や乗組員の休憩のための中城湾港使用を沖縄県が許可した(12月7日)こと、県が有効な手立てを打てないまま本部町が11日、本部港塩川地区の港湾使用許可を出したことは、辺野古ゲート前で体を張って石材搬入に抵抗している市民を落胆させた。
 名護市安部海岸へのオスプレイ墜落・大破からちょうど1年目の12月13日、普天間基地に隣接する普天間第二小学校の体育授業中の校庭に、飛行中の米軍CH53ヘリの窓が落下するという信じがたい事故が起こった。6日前にも、同じ宜野湾市の保育園の屋根に同型機の部品が落下したばかりだ。同日行われた「安部のおばぁ達の会」主催の「オスプレイNO!」勉強会では、「海も空も奪い」「この島を勝手放題に使う」米軍と、それを野放しにしている日本政府への怒りが噴出した。
 2004年8月の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落・炎上事故のあと、「普天間基地の危険性を除去する」ためと称して、辺野古新基地建設に向けた作業が強行・加速されたのを思い出す。今回も同様の口実に使われることを許してはならない。
浦島悦子
posted by JCJ at 13:11 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月07日

【今週の風考計】1.7─年始の早々から気がかりな三つの動静

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。さて、年始の1週間、気になって気になって、しまいに腹が立ってきた三つの動静を挙げておきたい。

まずは安倍首相の日々だ。渋谷・富ケ谷に豪邸がありながら、昭恵夫人ともども都心の高級ホテルに連泊しゴルフ三昧、そして昼となく夜となく3つ星クラスの料理店で贅沢な食事。これらの費用は税金から? 昭恵夫人は自宅で朝の味噌汁など作らないのか? もしや森永ビスケットで済ませてしまうのか? 私たち庶民には、すぐに浮かぶ素朴な疑問だ。

二つは、9日に開催される韓国と北朝鮮との高官級会談に対する日本政府の態度である。2年ぶりの対話による南北関係の改善は、北朝鮮の非核化に向けた環境づくりに役立つのは間違いない。大歓迎だ。
だが政府は南北会談を歓迎し成功を祈るどころか、北朝鮮の脅威を「国難」と煽り、制裁・圧力に血道をあげるだけ。北朝鮮にミサイル核の放棄を求めるのなら、まず国連で可決された核兵器禁止条約に賛成するのが先だろう。戦争核による唯一の被爆国・日本が、いまだに反対し続ける態度に、ブーイングの声は世界中に広がっている。
あまつさえ、安倍首相は12日から東欧6カ国を訪問し、「北朝鮮への制裁・圧力強化に向け緊密な連携を強化したい」と意欲マンマンだ。

三つには原発への態度だ。「原発輸出」に拍車をかけ、担う民間企業には、巨額な銀行融資が可能となるよう、政府保証まで与えて厚遇する。10日には小泉・細川元首相らが、脱原発運動を積みあげてきた成果を踏まえ、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表する。22日に召集の通常国会に提出するという。世界から拍手や歓迎の声が挙がるだろう。安倍首相、少しは煎じて飲んだらよい。(2018/1/7)
posted by JCJ at 10:57 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月05日

≪おすすめ本3冊≫ まず伊藤詩織『Black Box』─性暴力被害に屈せず闘い続ける強い矜持=伊藤和子(弁護士/「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長)

 昨年6月、デイビッド・ケイ国連特別報告者は日本の表現の自由に関する調査報告書を国連に提出、報道の自由を確保するよう勧告した。
 彼は「日本のメディアは政府からの圧力を跳ね返す力が弱い」とし、記者クラブ制度など報道機関と政権の癒着に疑問を呈し、ジャーナリストの横の連帯、調査報道の環境醸成を訴えた。この提起は主要メディア内では、必ずしも掘り下げられなかったが、現状を打ち破る新しい動きが起きた。

 東京新聞の望月衣塑子記者による政権追及である。著書『新聞記者』 (角川新書)には、記者を志した軌跡、官邸会見で追及する心の葛藤や熱い想いが綴られている。
 多くの記者が政権幹部に踏み込んだ追及をしなくなる中、あえて質問を重ねる勇気を支えるのは権力監視というジャーナリストとしての強い使命感だ。「前川さんや詩織さんがたった一人でも戦おうとし、社会的に抹殺されるかもしれないリスクと背中合わせで疑惑を追及している。2人の勇気をだまって見ているだけでいいのか」と問う。

 その詩織さんは、首相に近い元テレビ記者による性的暴行被害を告訴、逮捕状執行が直前で見送られ不起訴に。検察審査会でも「不起訴相当」。それでも諦めず記者会見で被害を実名告発し、伊藤詩織『Black Box』 (文藝春秋)を出版した。
 屈せずに闘い続ける動機は「自分の中で真実に向き合えないのであれば、私にこの仕事をする資格はないだろう」というジャーナリストの強い矜持にある。性暴力被害者に泣き寝入りを強いる日本の社会的法的システムを、実体験から克明に問題提起した価値ある一冊だ。

 最後に横田増生『ユニクロ潜入一年』 (文藝春秋)を挙げたい。企業内部の過酷労働の実態を追及するため、自ら働き、潜入調査するという究極の調査報道姿勢に心から敬意を表したい。圧巻のルポだ。彼らに孤独な戦いをさせてはならない。社会が、そしてジャーナリストの横の連帯がこれを支え、真実に迫り権力を監視する報道が強まることを期待する。
「BlackBox」.jpg
posted by JCJ at 11:45 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月04日

《月間マスコミ評》NHK記者過労死、当確報道に疑問=諸川麻衣

 2013年7月24日、NHK首都圏放送センターで都議選、参院選取材に当たってきた佐戸未和記者が、月159時間余の時間外労働の末に31歳の若さで過労死した。4年後の今年11月20日放送の「プロフェッショナル 仕事の流儀 過労死と闘い、命を守る」では、冒頭で生前の佐戸さんの活躍や今のご両親の声を紹介、過労死問題は「この番組を作るNHKにとっても大きな課題です」と述べた。
 調べてみると実はNHKは06年度に既に、年間総労働時間2100Hを指標に各職場で働き方を見直すという「働き方総点検」を始めていた。さらに12年度にはこれを「働き方改革」に発展させ、「業務の棚卸し」を課題とした。13年度には、全経営業務量に見合う要員数(約一万)の枠内で各職場の「歪み」を解消するため、要員再配置や業務の調整=「全体最適」に乗り出した。
 翌14年5月に佐戸さんの過労死が認定されたが、この年は改革の重点事項に「過重労働防止による健康確保」を掲げ、記者の勤務制度の議論、「専任職」を労働時間を管理する一般職に移行する、三六協定の上限を超えた勤務を「限度越え」として報告するよう労組が呼びかける、などの動きが見られた。
 その後、番組の編集期間に休日を設けるなども行われ、16年度には全部局で年間総労働時間平均が前年度を下回り、全体最適も達成されたという(ただし「限度越え」報告は14年度以降一貫して増え続けているらしい)。
 そして今年度には記者の「専門業務型裁量労働制」が発足、10月に佐戸さんの過労死がやっと公表された。また12月7日には、NHKグループ全体として「長時間労働に頼らない組織風土をつくります」と宣言した。
 このように、NHKが過重労働問題にまったく無策だったとは言えない。ただし、佐戸さんの件は当初、職場集会参加者に口頭で報告されただけで、一斉周知はされなかったという。「過労死の事実をしっかり伝え、再発防止に役立ててほしい」とのご両親の気持ちは裏切られていたのである。「できるだけ早く当確を打つ」という意義不明な目標のために人材を集中投入する選挙報道のあり方への根本的な見直しも、ほとんど見られない。
 一方で佐戸さんの過労死はメディアの他社でも反響を呼び、選挙取材期間の勤務管理のあり方を見直す動きが出ているという。三年後、五年後、放送の現場が「以前よりは働き方がまともになってきた」と実感できるようになれば、報道人として志半ばで斃れた佐戸さんの無念は少しは晴れるだろうか? 
      
posted by JCJ at 17:24 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月02日

JCJに多額遺贈 元出版部会の阿部丈夫さんは、「静」と「動」の人だった=池田隆(出版部会世話人)

 出版部会会員だった阿部丈夫さんは「静」と「動」の人でした。1953年4月に日本出版販売(日販)に公募1期生として入社し、7年間ほどは「自称」文学(演劇)青年として活動、青春を謳歌。動の人生に入った転機は、60年「安保闘争」だった。労組執行委員としてデモ行進に参加、壮大さに触発、感動、その後23年間組合役員として活動した。私と阿部さんとの出会いは67年の青年部結成でした。69年から8年間書記長として民主的労使関係の確立に向け千代田区労働組合協議会(千代田区労協)、75年には日本出版労働組合連合会(出版労連)に参加し、その先頭に立って実現した。背景には常に民主的出版物の普及に貢献したいという信念でした。

 退職後は、23年間の運動を記録した組合機関紙や資料を、過ぎた事として廃棄するのは忍び難いと7年間にわたって住まいがあった草加市であったことから「想過思今」として編集、かつての仲間に送付。その集大成は全3巻私家版「日販労働運動史」として刊行された。「出版流通九条の会」の結成にも尽力された。

 阿部さんは81歳で昨年4月に亡くなられたが、相思相愛、同志でもあった夫人の明子さんが今年4月に亡くなられ、生前お二人の遺志で何らかの費用に活用してほしいということでJCJに遺贈された。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
posted by JCJ at 13:14 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月31日

【今週の風考計】12.31─ウオッチ・ドッグとして歩んでいきたい

ゆく年くる年、酉が飛び立ち、戌が走ってくる─使い納めとなる年賀52円はがきに、「9条が正念場、懐憲ストップ! 力を合わせよう」と認め、投函する。

このほど組まれた防衛予算を見れば、背筋が寒くなる。なんと5兆2千億、6年連続の増額、過去最高となる。弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入だけではない。射程千キロに及ぶ巡航ミサイルを、ステルス戦闘機に搭載するシステムの予算化まで図る。
加えて護衛艦<いずも>を「攻撃型空母」へ改修する計画だ。空母化すれば米軍のステルス戦闘機F35Bが垂直のまま離着陸できる。まさに「専守防衛」どころか「敵基地攻撃能力」を持つ兵器の導入と活用のオンパレードじゃないか。憲法9条2項「戦力の不保持」を踏みにじる“戦争予算”と言っても過言ではない。

政官歩調を合わせ、南スーダンPKO部隊に派遣された自衛隊の「日報隠し」に始まり、<モリ・カケ>疑惑にはフタをし、「ご意向や忖度」にキュウキュウとする。国会では「共謀罪」法を強行可決し、準備・計画・未遂の行為まで処罰する。政治権力にとって、目障りな人々や組織を監視・処罰する法律に一変するのは必定だ。
あらためてJCJは、「忠犬ポチでなく、ウオッチ・ドッグ」に徹したい。しかも市井に暮らす人びとの心に寄り添い、危険を嗅ぎとったら鋭く吠える役目を果たしたい。

お年玉は、初読みにおすすめの一冊、ボストン・テラン『その犬の歩むところ』(文春文庫)をあげよう。犬も人間も等しく翻弄され過酷な目に遭うが、互いに助け合いながら逆境を克服していく感動の物語だ。(2017/12/31)
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2017年12月30日

≪おすすめ本≫ 新垣毅『沖縄のアイデンティティー』 沖縄メディアで奮闘する記者の情熱と使命感=米倉外昭(「琉球新報」文化部記者)

 「新聞記者をしながら本を書く」ということがどれほど大変なことか、私には、正直なところ実感できていない。今年、2人の畏友がそれを実行した。
 沖縄タイムスの阿部岳『ルポ沖縄 国家の暴力』(朝日新聞出版)が8月に発刊された。そして11月、琉球新報の新垣毅『沖縄のアイデンティティー』(高文研)である。

 阿部は北部支社報道部長として基地問題の最前線を担当。副題は「現場記者が見た『高江165日』の真実」である。全国から機動隊を動員してヘリパッド(オスプレイ発着場)の建設工事が強行された「戒厳令下」の現場を、軍事基地に反対する住民の立場に身を置いてリアルに描写。「政府の暴走を本土の無関心が可能にしている」と指摘する。
 名護市安部海岸のオスプレイ墜落など、大事件が相次ぎ、忙殺されている阿部が本を出したと知った時は驚いた。あとがきに、半年間、休日を全て執筆にあてたとある。日本全国に伝えなければという強い情熱と使命感ゆえであろう。
 ネトウヨの攻撃にもさらされている沖縄メディアには、多くの「本土」出身記者がいる。東京生まれの阿部は「沖縄に対する本土という多数派、加害者の側にいる者として」「責任の果たし方は、これからもずっと問われていくだろう」と記し、本土出身という「十字架」を背負って現場に身を置くことの決意を示した。

 一方、新垣は「沖縄人」としてアイデンティティーを正面から問うた。東京支社報道部長の新垣は、沖縄と「本土」がぶつかり合う第一線である東京で多忙な日々を送る。そんな中で、20年前の修士論文を基に、その後の取材や変化を踏まえて加筆・修正したという。
 記号論、言説(ディスコース)理論、ポストコロニアリズムなどの用語は、ややとっつきにくいが、「うちなーんちゅとは何者か」と自問自答しながら、格闘してきた成果を結実させた。これも情熱あふれる一冊である。
「沖縄のアイデンティティー」.jpg
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2017年12月28日

≪リレー時評≫ 最高裁の受信料制度「合憲」判決、公共性が問われるNHK=隅井孝雄

 NHKの現行の受信料制度について、最高裁判所は12月6日「合憲」と認めた。
 放送法は「NHKを受信できる設備を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない」としている。一方受信料の支払いは、NHKの内部規約だ。そこでこれまで「受信者はNHKの番組や経営姿勢に同意できない場合には、支払拒否もありうる」という解釈が有力だった。判決は「双方の意思表示の一致は必要だ」としながらも、「受信料は合理性、必要性がある」とした。NHKとっては追い風だ。

 1990年代の初頭、本多勝一『受信料拒否の論理』に触発されて、受信料拒否が注目された。2004年紅白歌合戦の制作費着服の発覚をきっかけに、不払いが広がり、2005年1月海老沢勝次会長が引責辞任した。収納率は低下、2006年度末までには63%まで落ち込んだ。NHKが不払いに対する裁判を始めたのは2006年11月からだった。
 その後、籾井勝人元NHK会長が、「政府が右というものを左とは言えない」と発言(2014年1月)、政府寄りの姿勢を見せたことから、市民の新しい運動形態として「籾井退任まで支払いを保留する」という動きで、一期での退任という結果となった。
 受信料訴訟のほとんどはNHKによる。だが奈良地裁では視聴者が「NHKは放送の公正を守っていない、放送法順守義務違反だ」として46人が集団訴訟している。

 現在、NHKはインターネットへの放送再送信を計画しており、受信料をデジタル機器所有者にも付加するかどうかが論議を呼んでいる。デジタル時代、変化する受信料環境に、最高裁は全く触れなかった。
 私が注目するのは最高裁判決が受信料の役割を述べている部分だ。
(受信料は)「特定の個人、団体、国家機関から支配や影響が及ばないよう、広く負担を求めた」。「憲法が保障する表現の自由の下、国民の知る権利を充足する」。

 現実はどうか。安倍第二次政権下で、政府主導のメディア操作、NHK御用化が進んでいる。「公正ではない放送を繰り返せば、免許停止もありうる」発言(高市元総務相、2016年2月)、国谷裕子キャスター退任(2016年3月)、「安倍首相の意向を代弁するレポートばかりだ」と批判される記者、秘密保護法、集団的自衛権、安保法制についてNHK報道が民放に比べて著しく不十分、などなどを視聴者は体験している。
 果たしてNHKは「国家機関からの影響が及ばない」、「知る権利を充足する」公共放送なのか、という疑問が市民、視聴者の間で広がっている。
posted by JCJ at 09:28 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月26日

戦争の危機迫る 自衛隊員の心境は=橋詰雅博

 安倍晋三政権は安保法成立など戦争する国に向かい着々と手を打っている。戦争の最前線に立つことになる自衛官は今、何を思っているのか。東京・練馬区の陸上自衛隊駐屯地を中心に部隊の行動の監視と自衛官への接触を行う練馬平和委員会の坂本茂事務局長(64)に今の自衛官の心境を聞いた。

――安倍政権が戦争する国づくりを進めていることに自衛官はどう感じているのか。
 昨年10月16日に中央観閲式予行訓練が陸上自衛隊朝霞駐屯地訓練場で行われた際、一般向け入場券で駐屯地内に入った。警務隊などが尾行していましたが、「安保法をどう思うか」「8月、家族向けに配布された安保法解説書の感想は」などの質問を自衛官にぶつけた。「安保法は違憲」「入隊する際に署名捺印する『服務の宣誓書』には日本国憲法及び法令を遵守と書かれており、これと矛盾する」「解説書は美辞麗句だらけでインチキ」などと答えた。

20人が答える
 また、PKO(国連平和維持活動)の新任務である駆け付け警護の訓練を経験した自衛官(1曹)は「海外に派遣されたら死ぬかもしれない」ともらした。3年に1回実施される中央観閲式は自衛隊のひのき舞台。予行演習とはいえ、本来は一般の人とのおしゃべりは厳禁です。にもかかわらず直撃インタビューに20人もの自衛官が答えたのは、命が危ういという不安の現れだと思います。

――九条改憲について何か言っていますか。
 九条改憲には口を閉ざしているが、自衛隊のイラク派遣(2003年12月から09年2月)でこんなエピソードがあります。イラクに6カ月間派遣されて帰国した幹部自衛官は、私に「九条があったから生きて帰れた」と話してくれました。憲法改正についてどうなのかと尋ねると「政治問題には答えられない」と言いました。

ドタキャン増加
――志願者の大幅減により自衛官募集も相当減っているそうですが……。
 13年から一般曹候補生(正社員に当たる)募集は毎年2割ペースで激減している。1年を通して募集している非正規雇用に当たる自衛官候補生(陸自2年、海自・空自3年の任期制)も同じペース。
 最近目立つのが試験当日のドタキャンです。母親や祖父などから『紛争地への海外派遣もあり得る。命は一つ。受験は止めなさい』と忠告されて止めるという。ある自衛官募集担当者は「上官から縁故募集も命令されている。わが子は自衛隊以外の仕事に踏み出したので、内心ホッとしている」と話した。若者の自衛隊離れは加速しています。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
posted by JCJ at 17:06 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《おすすめ本》 『亡国の武器輸出』 池内了+青井美帆+杉原浩司編=橋詰雅博

 2014年4月、安倍晋三内閣は「防衛装備移転三原則」を閣議決定。武器輸出三原則が撤廃されて武器の輸出が全面解禁になった。「平和国家」から武器輸出を国家の「成長戦略」として政策が転換されたことで、大物防衛利権フィクサーが再び蠢動している。

 秋山直紀氏だ。秋山氏は防衛利権に絡んだ事件で約1億円の脱税容疑によって11年10月に懲役3年執行猶予5年の有罪判決が確定した人物。彼の復活を印象付けたのは16年5月都内のホテルでの現職の国会議員と防衛官僚による講演会の仕掛け人として名前が挙がったのだ。自ら理事を務める国際平和戦略研究所の代表理事、久間章生元防衛相を呼びかけ人として講演会開催を企画した。ただ、講演会は、直前に中止になった。本書執筆陣の一人であるジャーナリストの田中稔氏は、その理由を有罪になった人物が関係する会合で国会議員らが講演するのはまずいと防衛省などが判断したと指摘する。
 本書は武器輸出の問題点を15人が多面的に摘出した好著。
(合同出版1650円)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
 
posted by JCJ at 16:50 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする