2021年07月30日

【出版界の動き】コロナ禍と東京五輪のなかでの主な出来事=出版部会

7/24発売のKADOKAWA「東京2020オリンピック開会式公式プログラム」を販売中止。全書店に即廃棄を要請。東京五輪のディレクター・小林賢太郎氏のインタビュー記事を掲載していた。差別発言で辞職したため。

東京五輪のJOC参与であるKADOKAWA社長が、「くそなピアノの発表会」発言─夏野剛社長は21日、インターネットテレビ局「Abema TV」の番組内で、別の出演者から「子供の運動会や発表会が無観客である以上、東京五輪の無観客開催は頷ける」という見解に対し、「くそなピアノの発表会なんてどうでもいい、それを一緒にするあほな国民感情に、今年選挙があるから政府は乗らざるを得ない」などと語っていた。
 批判を浴びた夏野社長は謝罪の上、8月から3か月間、役員報酬の20%を自主返上する。

KADOKAWAは、『東京2020オリンピック公式記録集』を、10月下旬に発売する。その予約受付を書店などで始めた。同書は申込み期間に注文した人しか購入できない。本体9000円。申込み期限8月31日まで。

「漫画村」運営者に懲役3年の有罪判決。だが2019年秋ごろより海賊版サイトが再び増加してきた。今でも海賊版サイトは750もあり、上位10サイトだけで、月刊アクセス数は2万4千回を超え、「漫画村」をはるかに上回っている。
 海賊版サイトの多くはベトナムに拠点を置き、日本でコミックやアニメをいち早く入手し、翻訳するグループが存在しているようだ。

3月刊の佐高信『佐藤優というタブー』(旬報社)の内容が、名誉毀損にあたるという理由で、佐藤優氏が佐高信氏と旬報社の木内洋育社長を相手取り、1064万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
 佐藤優氏は「第一審判決が出るまで本件について、私のほうからマスメディアで発言することは差し控え」るとの「回答」をし、インタビューなどを拒否している。

さいとう・たかを「ゴルゴ13」が、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」として、ギネス世界記録に認定。7月5日に単行本201巻が発売。秋本治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(集英社)の巻数を越えた。「ゴルゴ13」はいまも「ビッグコミック」(小学館)にて連載され、累積発行部数は3億部を超える
出版部会
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2021年07月29日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】AMラジオ切り捨てでいいか

 全国の民放ラジオ局44局がAM放送からFM放送に全面転換すると発表した(6/15)。FMへの移行は2028年までにはほぼ完了するという。
 ラジオといえばAMでの放送が定番だった。AM電波は広範な地域に電波を飛ばせるという特徴があるが、ビル障害に弱い。そこで設備を手軽に設置できるFM電波を併用する「ワイドFM」が採用され、2014年以降、ラジオ局がAMとFM電波の二つを使うことになった。
 ところがラジオ経営の悪化から、今度は2重負担が重荷としてのしかかるようになった。その上送信アンテナの設備更新などが迫られる時期が重なっている。いっそのこと設備が手軽なFM一本にしては、ということになった。推進したのは、高層ビルの林立で、ラジオ電波の難聴に悩んできたTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送の基幹三局だ。
 今回の発表には北海道と秋田の民放3局が参加していない。広大な北海道全域をFM電波ではカバーしようとすれば、かえって膨大は経費がかかる。ABS秋田放送の場合も山間地が多く、FM放送でラジオ世帯の90%をカバーする経営体力がないという。北海道、秋田以外にも、県域局で電波が届かない山間部を取り残したままでFM転換する局も多い。
 さらに大きな問題は「ワイドFM」受信機そのものの普及率が53%にとどまることだ(三菱総研調査、19年)。「ワイドFM」を受信するためには90~94.9メガヘルツの周波数帯域を受信できることが必要だ。しかし多くの家庭で長年使われているラジオは90メガヘルツ未満の目盛りしかないので「ワイドFM」は受信できない。長年ラジオに親しんできた人の半数近くが切り捨てられる。
 ラジオの開始は1925年(大正14年)、96年の歴史を刻む。民放の開始(1951年)で一時期メディアの最先端に立った時もある。貴重なメディアだ。
 最近ラジオ聴取者が緩やかに増え、首都圏で週86万人を超えているという調査がある(20年6月ビデオリサーチ)。コロナ時代、在宅勤務など生活環境の変化から人々がラジオの有用性を見直し始めているのに、AMラジオ切り捨ては合点がいかない。
隅井孝雄(ジャーナリスト)。
               
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          大正、昭和初期のラジオ    
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2021年07月27日

【焦点】ロ疑獄から45年 売り込み工作で3大黒幕≠ェ存在=橋詰雅博

  45年前の今日7月27日、日本はもちろん世界が衝撃を受けた。旅客機の対日売り込みで米ロッキード社から5億円のワイロを受け取ったとされる田中角栄前首相が逮捕されたからだ。金脈問題で首相を辞任したとはいえ、最大派閥を維持し政界のドンとして君臨していた田中は、ロッキード疑獄で首相へのカムバックの道が閉ざされた。1976年の逮捕から17年後の93年末に田中は慶応大学病院で75歳で死去した。刑事被告人は死んだが、最高裁は首相の犯罪を認定した。
 ロ疑獄で表面化したのはロ社の売り込み工作に加担した黒幕の存在だ。中曽根康弘の盟友で戦後最大のフィクサー・児玉誉士夫、オランダの王子ベルンハルト、サウジアラビアの武器商人アドナン・カショギの3人だ。3大黒幕≠駆使して自社の航空機売り込みを画策した。  
 戦闘機輸入で影響力を発揮したベルンハルトは、ロ社に約3億円の手数料を要求する書簡が明るみに出たが、刑事責任の追及を逃れる代わりに世界自然保護基金(WWF)総裁など公的な役職からすべて退いた。2004年93歳で死亡。
 カショギはニクソン米大統領と関係が深く、64年からロ社の代理人に。ロ社だけでなく複数の米軍事企業の国際取引に関与し、80年代初めに総資産1兆円の富を築いた。2017年82歳で病死した。
 1958年からロ社の代理人だった児玉は、3人の黒幕の中で、貢献度が高いと評価されロ社から最も高い手数料を提示されていた。旅客機とP3C対潜哨戒機の売り込みで成功したら合計70億円の約束を交わした。ロ疑獄ではロ社の販売代理会社の丸紅と旅客機を購入した全日空の両ルートは解明されたが、児玉ルートは未解明で終わった。とはいえ脱税と外為法違反で在宅起訴され1984年72歳で病死。
 児玉ともちつもたれつの関係の中曽根は名前が出たことでロ事件モミ消しに動いた。春名幹男さんの著書『ロッキード疑獄』(KADOKAWA)によると、依頼を受けたCIA東京支局長から伝えられた駐日米大使が国務省に連絡した可能性が大きい。1982年11月、彼は首相に就任。巨悪は法で裁かれることなく2019年に百一歳で死去した。
 ロ疑獄の発覚で一時は政界浄化された。しかし時間の経過に伴い、政界は濁っていった。政治とカネの問題は相変わらず解決されていない。
 橋詰雅博
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2021年07月26日

【焦点】デジタル先進国・フィランド発展の秘密は国民の信頼 政治不信の日本は実現できるか=橋詰雅博

次世代通信規格6Gの研究開発で、日本は北欧のフィランドと連携協定を結んだ。フィランドは通信機器メーカーの世界大手ノキアを生んだ欧州一のデジタル国家だ。デジタル先駆者のフィランドと比べ、今の日本はデジタル敗戦。この差は何なのか。

 2年連続トップ
 欧州連合(EU)加盟28カ国のデジタル人材や技術、公共サービスなど5項目で算出した「デジタル経済社会指数」ランキングで、フィランドは2019年、20年と第一位だ。フィランドのデジタル化はどう進展してきたのか。5月21日、朝日新聞のオンラインイベント「デジタル国家の秘密とは」でフィランド発のIT企業「リアクタージャパン」のエンジニア、ラウラ・タルキアイネンさんはこう語った。
 「政府は90年代から個人ID番号(国民背番号制度、日本のマイナンバーに当たる)デジタル化を進め、IDで医療や介護、パスポート申請などの手続きがオンラインで可能にした。コロナ禍前からオンライン授業を始めた小学校は、感染拡大で完全オンライン化された。リモートワークも働き手の60%がコロナ禍前から始めており、欧州で最も高い割合だ」

  AI講座無料提供
フィランドは、国立ヘルシンキ大学とリアクター社が開発したAIを基礎から学べるオンライン講座を19年から無料で提供。今では20数カ国語で受けられ受講者は65万人に。受講した朝日の女性記者は「ITリテラシーがなくても受講できAI教育のギャップを埋められる」と体験を話した。
 録画で特別出演のマリア・ニッキラ財務省情報管理シニアアドバイザーは「デジタル化での経費削減は納税者にも恩恵がでた。基礎以上のデジタルスキルがある人材も人口の80%近くと、EUの平均以上」と述べた。デジタル国家に発展した秘密は「国民の政府への信頼」とマリアさんは指摘した。

 幸福度も第一位
 ラウラさんは「国民が政治家を身近に感じ、人口の半分近い250万人がコロナ通知確認アプリを利用。それは政府への信頼があるから」と語る。
 国連の21年版幸福度ランキングでフィランドは4年連続一位。国民の政府への信頼が厚く、政府もよりよい公共サービス提供で国民の期待に応えようとする。高い幸福度が好循環が支えているようだ。
 幸福度56位の日本では、役に立たない通知確認アプリや給付金受け取りなどで使い勝手の悪いデジタルサービスに振り回され、デジタル法成立で同意なき個人データ利活用の恐れで政治不信が深まる。フィランドの高度なデジタルネットワーク構築は政府と国民一体となって進んだ。その鍵は政府への信頼感。だが日本では政府が信頼されているか。これで血の通うネットワークが築けるのだろうか。 
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
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2021年07月25日

【今週の風考計】7.25─大会経費が3兆円を超える<東京五輪の闇>

★「東京五輪」が開幕した。コロナの再パンデミックが猛威を広げ、東京でも4回目の緊急事態宣言が発令、第5波の襲来がいわれている。その最中に開催を強行した。
 政府やIOCは、医療従事者や専門家の意見を無視し、中止や再延期を求める国内外からの大きな声にも、耳を傾けず突っ走った。
★閉幕する8月8日までに、コロナ変異株が若い世代へ急拡大するのは間違いない。とりわけ今夏の異常な暑さに、熱中症の頻発も重なり、医療従事者の負担や病床のひっ迫は避けられない。

★「安心・安全の祭典」どころか、入国した選手や関係者の間で、もう123人ものコロナ感染者が出ている。「バブル方式」で防ぐなど幻想だ。いかに拡大させないか、国名や氏名の公表も含め厳重管理が不可欠になっている。
 閉幕して帰国する際には、「東京五輪発」の変異株ウイルスを持ち帰らないよう、細心のチェックも必要だろう。もしアスリート人生に支障でも生じ、損害賠償などの請求が来たら、どうするのか。杞憂で済まされない。

★さらに見過ごしてならないのは、「東京五輪」の開催費用である。<#五輪の「闇」>というハッシュタグまでついて、その不明朗な実態を追究する動きが起きている。
 2013年に日本の招致委員会がIOCに行った説明では、競技会場や選手村を集約し、「世界一コンパクト」な会場による開催を計画し、開催費用も7300億円程度としていた。
★しかし、何度も経費の上積みを重ね、2019年末で1兆3500億円、2020年末には新型コロナによる延期と感染防止対策の2940億円を加え、約1兆6440億円に膨れ上がった。なんと当初の2.2倍だ。
 関連経費を加えると大会経費は3兆円を超え、五輪史上もっとも経費のかかる大会となる。この赤字の尻拭いは税金。つまり背負わされるのは国民だ。

★大会経費が膨張した背景には、IOC「五輪貴族」からの要請、電通やパソナグループなどの大企業による五輪経費の中抜き、ピンハネの横行がある。開閉式の費用に限ってみても、電通による制作に5輪史上最高額の165億円を支払う。
 メイン会場・新国立競技場の建設費用は1530億円。当時の猪瀬直樹都知事が「40年前の五輪施設を使うので世界一コンパクトな会場」との公言は、どこにいったのか。
 競技場の維持運営費だって年間24億円という。五輪が終わったら、あまりにも高い経費がネックとなり、閉鎖となりかねない。

★今や五輪は、コロナ禍でもやめられないほど、利権が絡む「巨大なスポーツ興業」と化した。IOCと契約する米国のテレビ局NBCや巨大スポンサーの意向は無視できない。開催するだけで約1300億円のテレビ・マネーが懐に入る。こうした「五輪の闇」を晴らさなければ、五輪の未来はない。(2021/7/25)
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2021年07月24日

【スポーツコラム拡大版】東京五輪の異常開催を許したマスメディア=大野晃

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 2021年東京五輪が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)拡大を増幅する危険のある緊急事態宣言下で開幕。医科学専門家の警告を無視し、開催の是非を封じ込めて、暴走した政府、東京都と国際オリンピック委員会(IOC)。追従の日本オリンピック委員会(JOC)。マスメディアは異常開催をなぜ許したのか。経緯を追って重点的に検証してみる。


テレビ向け見世物ショー

 競技は、互いに敬意をはらう競技者の友情と協力で成り立つ。 世界中の競技者に、その精神を拡大し、競技者の団結と連帯を強めて、支援者やファンなど取り巻く人々も含めた絆を深めることで世界平和実現の基礎を固めるのが五輪の基本理念だ。 単なる競技会ではなく、人類の理想を掲げた平和の祭典である。
 ところが東京五輪では、多国間、多競技間の競技者や関係者同士、そして応援ファンとの交流が禁止され、行動の自由が制限され、公平な条件での競争が保障されず、安全が確保されないまま、競技者は無批判な参加を強いられた。
 これでは、眼前にある五輪は似非五輪であり、公正な国際競技会ですらない。テレビ向けの見世物ショーにすぎない。膨大な税金を負担させられた国民のほとんどは、他国で開催された五輪同様に映像観戦に限られた。
 しかも、世界中で命の不安を膨張しかねない、スポーツに名を借りた悪質テレビ番組と言っていい。万人が楽しめるはずがない。

経済活性化国威発情を狙う

 世界の競技者を目の当りにし、世界のファンたちと一体に競技を楽しむ五輪の平和な、お祭り騒ぎに胸躍らせる国民ファンは多い。半世紀以上も前の最初の東京五輪を経験し、近年、国際競技会の拡大で、国際的な和気あいあいとした雰囲気の体験が増えた国民には、五輪人気が根深い。
 それを利用し、自民党政権は、巨額な税金を投じて、バブル崩壊後の日本経済活性化の切り札とし、それによる対外的な国力誇示と国威発揚を狙った政治的、経済的国家事業とするために、五輪開催に動いた。(→続きを読む)
 

(→続きを読む)
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2021年07月23日

【事件】なぜジャーナリストは標的にされたのか 右派が仕掛けた歴史わい曲 「標的」監督・西嶋真司さん寄稿

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 元朝日新聞記者の植村隆がジャーナリストの櫻井よしこらを相手取った名誉毀損訴訟で、最高裁判所は昨年11月に上告棄却の決定を出した。この決定を受けて、安倍晋三・前総理大臣は自身のフェイスブックに「朝日新聞と植村記者の捏造が事実として確定したということですね。」とのコメントを書き込んだ。もちろんこれは荒唐無稽なデマだ。
 裁判所は櫻井の主張によって植村の社会的信用が失墜したことを認めつつも、櫻井が記事を「捏造」と信じたことに相当の理由があるとして免責したにすぎない。
 植村や弁護士からの抗議を受けて安倍は自らの投稿を削除したものの、日本の前首相が放ったフェイクニュースはインターネットを通じて今も拡散されている。

 避難と脅迫
 植村は1991年8月、元慰安婦だった韓国人女性の証言を伝えるスクープ記事を書いた。その記事には「女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた」とある。報道から23年後の2014年、記事の内容をめぐって植村を「捏造記者」とするバッシングが始まった。
 植村の記事を“捏造”と決めつけたのは、右翼論客の櫻井よしこや西岡力をはじめ、不都合な歴史を消し去ろうとする日本政府の立場を支持する人々。植村を「売国奴」「国賊」などと非難し、植村が教職に就くことが内定していた大学や植村の家族までもが卑劣な脅迫に曝された。「記事が捏造と言われることは、新聞記者にとって死刑判決に等しい」と植村は言う。
 不当な攻撃によって言論を封じ込めようとする動きに対し、大勢の市民や弁護士が立ち上がった。

 20年で何が
 植村が元慰安婦の記事を書いた1991年8月、私は民放のソウル特派員として慰安婦報道の渦中にいた。当時、韓国では「挺身隊」と「慰安婦」が同義語として使われており、私をはじめ日本の多くのマスコミも慰安婦問題の記事に挺身隊という言葉を用いている。
 同じような内容を伝えた私や他のメディアはバッシングを受けずに、なぜ朝日新聞の植村だけが標的にされたのか?当時は“誤報”ですらなかった報道内容が、“捏造”と呼ばれるようになった20年余りの間に、日本に何が起きたのか?
 1997年に安倍晋三前首相を事務局長とする「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が発足して以来、日本政府は慰安婦問題に関して自国の責任を極限まで小さくしようとし続けてきた。戦場に送られた慰安婦の強制を裏付ける資料が発見されていてないことを理由に、慰安婦の募集は国家とは無関係だと主張する一方で、歴史教科書から慰安婦の記述をなくそうという動きが政府主導で進められた。
 2019年に愛知県で開催された「あいちトリエンナーレ展」では、慰安婦を象徴する〈平和の少女像〉が「日本人の心を踏みにじる」という理由で一時展示が見送られる事態になった。
 
 報道の萎縮
 最近の20年余りの間に日本のメディア界にも変化が起きた。慰安婦を扱う特集記事や番組は姿を消し、いつしか慰安婦問題はメディア界ではタブーとなった。政府に批判的な報道を行うことによってバッシングや脅迫の標的にされる様子を目の当たりにして、メディアは明らかに萎縮した。
 歴史の真実を伝えることはジャーナリズム本来の使命である。それはあらゆる外部の圧力から自由でなければならない。不都合な歴史を報じたジャーナリストを力で抹殺しようとすれば、民主主義は崩壊する。ジャーナリストを標的にしてはならない。(敬称略)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
                           
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2021年07月22日

【おすすめ本】半田 滋『変貌する日本の安全保障』─「引き裂かれた安全保障問題」の根源を読み解く絶好の書=前田哲男(ジャーナリスト)

 本書は、学生に向けたオンライン授業を基にしているが、それにとどまらず若い世代(とりわけ記者)に「自衛隊の今」を伝える一冊となった。
 「安倍安保」ともいうべき長期政権のもと進行した「9条と同盟」の矛盾、また「専守防衛か敵基地攻撃か」をめぐる葛藤。その相克は、菅政権下においても「台湾海峡防衛」に継承され、亀裂は極限に達した観がある。若者ならずとも「法と現実」のもたらす落差に目くるめく思いだ。

 12講に区切られた各章には、著者の強みである編集委員としての現場主義と、論説委員の本領の両面、いわば“腰の軽さ”と“論の重厚さ”がほどよく溶けあい、自衛隊海外活動の現状と、そこに至った時代の流れを織りまぜ、自衛隊の歩んだ道が記述される。話し言葉による文体も説得的だ。
 読者には、自分の関心にそって読むことをお勧めする。沖縄のことなら「第3回 沖縄の米軍基地」から。最新ニュースなら「第10回 ミサイル防衛とイージス・アショア」、また「安倍安保」の本質を知るには「第12回 安全保障関連法」といったように。興味のおもむくまま読めばいい。

 そうすると、なぜ「護衛艦いずもの空母化」が必要なのか? なぜ「非核3原則が国是であるのに核兵器禁止条約を批准しないのか?」などの疑問が解けてくる。PKO派遣という “戦闘への接近” も、著者の現地取材によって容赦なく実態が暴かれる。
 コロナとオリンピック問題のあおりで、最近あまり大見出しにならない「引き裂かれた安全保障問題」の根源を読む良書である。(弓立社2500円)
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2021年07月21日

2021年07月20日

【支部リポート】東海 何故咲いた?署名偽造のあだ花=加藤 剛

 コロナ禍を横目に愛知県では2020年夏から秋にかけて大村知事に対するリコール運動が展開され、大量の署名が不正・偽造と判明、逮捕者が出るなど今年に入ってからもごたごたが続いている。
 メディアはリコール運動の是非についてはあまり報道しなかったが、組織的な不正・偽造の判明で警察、検察が動くにつれて報道の見出しが大きくなり読者、視聴者の関心も先頭に立ったクリニック院長高須克哉氏や河村名古屋市長の関与の仕方、金の出どころ、週刊文春誌上での論戦(大村×河村)などに集まる傾向だ。
 しかし、メディアも市民県民も、大切なことを忘れていないだろうか。そもそも、このリコール運動はいったい何だったのか、偽造署名というあだ花は何故咲いたのか−−?

 「その後」のその後
 そもそもは、東京など各地の展示会で平和の少女像や天皇の肖像にかかわる作品、9条の俳句などの展示が外部からの抗議で取りやめになったため、その事例を実際に見て考えてもらおうという展示【表現の不自由展・その後】が一昨年愛知トリエンナーレ国際芸術祭の一部として企画・実行されたのが発端だ。
 事前にネットで紹介されたこともあって展示前から「平和の少女像」などの展示に反対する電話やファクスが目立ち、主催団体の幹部の一人(代表代行)である河村名古屋市長までが展示に反対を表明、反対者の一人から「ガソリンを持って会場へお邪魔する」という強迫のファクスが届くに及んで主催団体(代表=大村愛知県知事)は展示開始の二日後「表現の不自由展・その後」の中止に踏み切った。
 これに対し多くの市民団体が表現の自由を守る立場から中止に抗議し展示の再開を求める運動を展開、裁判和解による再開を実現した。

 もう一つ「そ・の・後」
 ところがこれで一件落着とはならなかった。主催団体の代表代行まで出している名古屋市が決められた分担金の支払いに応じないため代表の大村知事が河村名古屋市長を相手に支払い請求の裁判を起こした
 河村氏はこれに反発、コロナで市政多忙の時期にもかかわらず、ネトウヨを自任する高須克哉氏ともに大村知事リコールの運動を展開、街頭にも立ち「陛下の写真を燃やす絵の展示に金を払えという大村知事はやめてチョウ」と署名を呼び掛けた。
 河村氏は当初「慰安婦・少女像」の展示を非難の中心に据えていたがリコール運動では「陛下の写真を燃やす絵」を目の敵にした。
 リコール運動の本質は「表現の自由」抑圧であり、百田直樹氏ら著名人の協力を得ても少数の支持しか集まらなかったために不正のあだ花は咲いたのである。
 加藤 剛
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2021年07月19日

問題法案 続々成立 改憲投票法 立民の修正案は疑問=編集部

 コロナ渦のどさくさに紛れ、今国会にも「壊憲」の問題法案が続々出された。メディア報道も追いつかず、委員会所属者以外、衆参議員も法案検討の余裕すらない。本来、国会提出前の検討が重要だが、政策審議より政局優先の与党の姿勢が問題に拍車をかけている。
 今国会では、8国会にわたって継続審議のまま手つかずだった改憲手続法(国民投票法)の改正が成立した。広告規制や改憲運動への資金規制、最低投票率など、公選法と違う改憲国民投票の意味や投票の公正を保障する議論が全くないまま、「今国会で結論を得る」という自民・二階、森山、立憲・福山、安住の幹事長・国対委員長会談に縛られ、参院でもあっさり通過、成立した。
 「3年後を目途に見直す」という「付則」をつけた修正案をなぜか立憲民主党が出し、与党が丸呑み。どこで何が動いたかはわからないが、「政策」より「国会対策技術」が優先した結果だ。
 一方で外国人の強制収容などの管理強化を狙った入管法改正は、国際的な批判やスリランカ女性の死もあり、自民党は今国会成立を断念した。

 命と生活の問題
 国民生活に直接関わる問題なのに、これもほとんど報じられないまま通ってしたのが、高齢者医療費の倍増。現在個人負担は1割の75歳以上の老人医療について、年間200万円(月16・6万円)の収入があると倍の2割になる法案。6月4日あっさり成立。
 コロナ禍が日本の医療体制の脆弱さを明らかにした中、病院のベッド数削減と医師の長時間労働を進める「恥知らず」の医療法の改定も5月21日あっさり成立した。
 1割以上の削減を行った病院に対して補助を強化、全国での病床数削減を狙い、OECD諸国では最低の医師養成数の削減を前提に過労死ラインを超える医師の長時間労働を認めている。

国民管理と監視
 ひどかったのは膨大な「デジタル庁関連法案」の扱い。とにかく個人情報を政府に集中、自由に使うため一元管理するとの意図は明確なのにろくに議論ー使用を義務づけるなど、個々にみれば、数年かかる議論が必要なのに5月12日早々と成立した。
 国民の情報を管理し、監視する体制は、基地などの周辺から合法化し、強化しようという「重要土地党調査規制法案」で具体化している。防衛施設のほか、原発、空港どの周辺を「注視区域」とするなど、所有者の調査や規制を可能にする。既に基地周辺での写真撮影やデモ、宣伝活動などが勝手に規制されており、さすがにこれは、最終版国会の焦点になった。
 18―19歳を「特定少年」として厳罰化する少年法改定も成立した。犯罪防止には逆行である。
編集部
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号


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2021年07月18日

【今週の風考計】7.18─<世界最悪の経営者>ベゾスの地球帰還を許すな!

amazonのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が、7月5日付で退任した。退任して会長に就くや否や、20日には有人宇宙船「ニューシェパード」で宇宙旅行へ出発する。この「ニューシェパード」は、ベゾス自身が起こした会社が開発し、今回が処女飛行となる。
 すでに11日には、米国の大富豪リチャード・ブランソンが自分の企業グループ・バージンが開発した有人宇宙船で、いち早く宇宙旅行に出ている。大富豪同士の意地の張り合い、どうぞ宇宙で好き勝手にやってチョウダイ!

それより問題なのは、地球上で繰り広げるamazonのアコギな税逃れと劣悪な労働条件の押しつけである。その事態が深刻になるにつれ、amazon やベゾスへの反感は募るばかりだ。
 米国で「ベゾスの地球帰還を許すな」と銘打った、怒りの署名運動が展開され、1カ月も経たずに14万人を超す署名が集まっている。宇宙旅行をするなら、どうぞそのまま「もう戻ってくるな、地球外で遊覧していてくれ」そんな気持ちの表れだろう。
無理もない。2014年に国際労働組合総連合(ITUC)が、ベゾスを<世界最悪の経営者>に認定して以来、少しも改善されていないからだ。
 2年前までamazonの倉庫で働く人々はロボット同然の扱い、トイレに行く自由もなく、持参した飲料ビンへの用足しや紙おむつの着用を強いられていた。これが暴かれ世界各地で問題化した。今年4月には米国アラバマ州の物流倉庫の労働者に圧力をかけ、労働組合の結成を阻害している。

amazon創業は1994年、書籍のネット通販からはじめ、30年足らずで時価総額185兆円を超す巨大企業に発展した。今では2億人を超える通販会員を擁し、クラウドサービスなど新たな事業開発に注力している。
 ベゾスの総資産は日本円で21兆円。ペルーやギリシャ、ニュージランドのGDPに匹敵する。だが法人税や消費税などの税金は払わず、慈善事業が嫌いで“守銭奴”の異名がつく。
フリーランスの横田増生さんが、神奈川・小田原にあるamazonの巨大物流センターに潜入し、監視カメラが設置され、秒刻みで仕事がチェックされる作業員の実態や5年間で5人も死亡事故が起きた過酷な労働現場を告発している(『潜入ルポamazon帝国』小学館)。
 世界では175カ所以上の物流センターがある。日本国内では2020年現在20カ所、7年間で倍増している。その売り上げは1兆5千億円をこえる。日本で最大の物流会社になっている。

24時間の受付、翌日には配送してくれるamazon サービスの裏に、過酷な労働による犠牲があることを忘れてはならない。しかもベゾスは米国の新聞ワシントン・ポストも所有し、amazonに批判的な記事は徹底的に排除し、メディア支配を狙っていることも肝に銘ずべきだ。(2021/7/18)
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2021年07月17日

【フォトアングル】改憲反対!基地強化を許すな!6・6練馬駐屯地デモ=酒井憲太郎

                             
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有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実行委員会主催の集会デモ参加者は「練馬自衛隊基地撤去 有事立法・治安弾圧を許すな 北部集会実行委員会」の横幕を掲げて、「戦争」「反対」「基地」「撤去」のショートコールの後、練馬駐屯地司令らに宛てた「市街地行軍などの地域の戦場化を行わない事」「来年以降、練馬駐屯地祭りを中止する事」などを求める申し入れ書を読み上げ、制服自衛官に手渡した。参加者46=6日、東京練馬区の練馬駐屯地、酒井憲太郎撮影
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
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2021年07月16日

【裁判】幸福の科学公開施設 入ったら建造物侵入罪 取材の自由を奪う地裁判決=藤倉善郎

                            
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3月15日、東京地裁で罰金10万円、執行猶予2年の有罪判決が言い渡された。私が幸福の科学の「初転法輪記念館」に取材に入ったことが建造物侵入罪に問われた事件である。
 この施設は、教団設立の際に教祖・大川隆法が初めて説法を行った場所として、教団が一般公開している。私が入った際、中は無人だった。撮影禁止の張り紙に気づかず写真を撮っていたところ、教団職員が来て写真を消すように指示してきた。私は素直に従った。職員は怒る様子もなく、パンフレットまでくれた。しかし翌日、幸福の科学は地元・荒川警察署に被害届を出した。

 立入禁止は不当
建造物侵入罪は、管理者の意思に反して立ち入る行為を指す。初転法輪記念館(写真下)は一般公開だが、教団本部は以前から私に対して教団施設や行事への立入禁止を通告していた。これを根拠に検察は建造物侵入罪にあたると主張。紀藤正樹弁護士を主任弁護人とする8人の弁護団は、一般公開施設への取材は正当業務行為に当たること、教団による立入禁止通告が不当であることなどを理由に無罪を主張。これを罰することは表現の自由を定める憲法に反するとした。
 私は宗教団体を含め、いわゆる「カルト問題」を20年ほど取材している。幸福の科学から「立入禁止」を通告されたのは2012年。週刊新潮で「幸福の科学学園」(中学・高校、栃木県那須町)の違法な教育実態をリポートしたことが理由だ。
 当時、教団は新潮社と私を相手取って1億円の損害賠償を求める民事訴訟も起した。この訴訟では2016年、最高裁が学園側の上告を不受理とし、学園側の敗訴が確定。高裁判決は、記事の全てに真実性や評論の妥当性を認める内容だった。
 ところが教団は以降も「立入禁止」を継続した。私はいわば、正しい記事を書いたから立入禁止にされ、それゆえに今回、刑事被告人にされた。
 地裁判決は検察側の主張をほぼ踏襲。管理者の意思は取材の自由に劣後しないとした。教団による立入禁止の理由については「議論の余地はある」とし、これを踏まえた温情であるかのように、罰金刑に執行猶予が付く珍しい判決となった。

 おもねる方向に
しかし有罪は有罪だ。合法的に取材するなら、立入禁止を通告されないよう教団におもねった記事を書くしかない。地裁判決がもたらすのは、そういう論理である。
 過去、マンション等での政治ビラ投函を巡って、表現の自由と建造物侵入罪の兼ね合いが争われた事例はある(いずれも最高裁で有罪が確定)。しかし報道の自由との兼ね合いが争われるのは今回が初めて。日本初の悪しき前例となってしまった。
 私は別件も抱えている。統一教会との関係を取材するため2019年に菅原一秀衆議院議員の事務所に取材を申し入れに行き、奥のソファに通され「お待ち下さい」と言われ待っていると、秘書が110番通報。後日、同行したジャーナリストの鈴木エイト氏ともども刑事告訴、書類送検された。容疑は建造物侵入罪。
 直後、経産相に就任した菅原氏の会見を取材しに行った私と鈴木氏は、経産省からも「永劫に」出入禁止を告げられた。今後、庁舎に立ち入れば新たな容疑を着せられることになるのだろう。
 今のところ、立件は有罪判決を受けた1件だけ。現在、控訴中だ。
詳細は「藤倉氏を支える会」のウェブサイト(https://www.fujikura-hs.com/)に掲載されている。
藤倉善郎(ジャーナリスト)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
                             
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