2021年11月23日

自民圧勝、立憲惨敗の衆院選は「二大政党政治の終わり」のはじまりだった〜11.28JCJオンライン講演会で今後の政治を読み解きます!=鮫島浩

                                                     
 菅政権の退陣表明から自民党総裁選、岸田政権発足、そして衆院選での自民党圧勝と立憲民主党惨敗。9〜10月の政治の展開は速かった。SAMEJIMA TIMES(2021年11月22日付)はこの動きを逐次追い、先行きを展望してきたつもりである。
 しかし、政治の流れがあまりに急速だったため、いったい何が起きて、今後どうなっていくのか、俯瞰的に総括するタイミングがなかった。来年夏の参院選に向けて政治の行方をじっくり展望する機会があればと思っていたところ、日本ジャーナリスト会議(JCJ)にオンライン講演会の機会をいただいた。
 11月28日(日)14時から16時までのJCJ オンライン講演会「政治を読み解く〜与野党激突の総選挙後の行方」である。参加費500円。申し込みはネットで(こちらをクリック)。時間をかけてたっぷりお話ししたいと思っている。ご関心のある方はぜひ視聴してほしい。
 今日はこの講演のレジュメのつもりで、簡潔に論点を書き記したい。
 憲政史上最長の安倍政権とそれに続く菅政権を倒したのは、間違いなくコロナ危機だった。「モリカケサクラ」に象徴される権力私物化とそれら疑惑の隠蔽工作が次々に発覚しても倒れなかった政権は、すべての人々の命に直結するコロナ危機が襲来し、それにまったく対応できない行政崩壊の現実が露呈したことで、瞬く間に倒れたのである。
 自分たちの暮らしに直接かかわらない疑惑の数々に鈍感な世論も、自分たちの命に直結する危機に直面した途端に一気に沸騰するーーそんな民主主義の現実を私たちは目の当たりにしたのだった。

 これはこの国の民主主義の未成熟さを映し出すものかもしれないし、あるいは、民主主義とは本来そういうものかもしれない。ひとつ言えることは、このような脆弱な政治や行政が続けば、コロナ危機が去ったとしても、この国は来るべき人口減社会を乗り越えることはできないという現実である。コロナ危機が私たちにその現実を知らしめたことは間違いない。
 ところが、自公政権はこのような深刻な「政治の危機」を、首相の首をすげかえるというその場しのぎの対策で切り抜けた。菅義偉首相にコロナ対策の失態をすべて負わせ、岸田文雄首相に差し替えることで、4年ぶりの政権選択の機会である衆院選をいとも簡単に切り抜けてしまったのである。
 コロナ危機が一時的に収束したことで世論の怒りは鎮静化し、自民党の「小手先改革」を容認したといえるかもしれない。
 見逃してはいけないのは、衆院選の投票率は戦後三番目に低い55.93%にとどまったことである。自民党は選挙には圧勝したが、世論に圧倒的に支持されたわけではない。低投票率のなかで組織票を固めて逃げ切ったのだ。政治を根本的に改める政権交代の機運はまったく高まらなかった。
 自公政権の腐敗を許し、政治に閉塞感を漂わせている最大の原因は、「政権交代の受け皿」となって世論の期待を集めるべき野党にその力が欠如していることにある。

 なぜ野党は「政権交代の受け皿」になれないのか。日本の政治が長いトンネルから抜け出すには、この命題を解決しなければならない。
 戦後日本は万年与党の自民党と万年野党の社会党による自社体制のもとで政治は安定し、経済発展に傾注してきた。米ソ冷戦とバブル経済が崩壊した1990年代に入り、自社体制は崩壊。政権交代可能な二大政党政治をめざして小選挙区制度が導入された。紆余曲折を経て、自民党vs民主党の二大政党政治が定着し、2009年衆院選ではついに政権交代が実現して民主党政権が誕生したのである。
 一連の改革は米国の共和党vs民主党、英国の保守党vs労働党の二大政党政治にならったものだった。その本質は、政権交代可能な二大政党が競いあうことで、政治の緊張感を維持して腐敗を防ぐことにある。政権与党が失敗したら、野党が世論の支持を集めて政権を奪い、政治を浄化する。ここにこそ、二大政党政治の意義がある。

 日本でも2009年の政権交代が実現する前、自公政権は不祥事が相次ぎ、一年ごとに首相が目まぐるしく交代する事態に追い込まれていた。「自民党の失敗」が「民主党への期待」を生み、民主党政権を誕生させたのだ。その意味で二大政党政治は機能していたといえるだろう。
ところが、世論の圧倒的な期待を背負って誕生した民主党政権は大迷走した。マニフェストに掲げていなかった消費税増税を打ち上げて2010年参院選に惨敗したあげく、党内権力闘争が勃発し、自滅したのである。
 2012年に政権復帰した安倍自民党は、数々の権力私物化疑惑を重ねながらも、「民主党政権の悪夢」を強調するだけで6回の衆参選挙に圧勝し、憲政史上最長の政権となった。
 ここで注目すべきは、政権交代を実現させた2009年衆院選の投票率が69%だったのに対し、それ以降の衆参選挙いずれも50%台に低迷したことである。多くの有権者が「民主党政権の失敗」で政治をあきらめ、投票所から離れていったことが、自公政権を継続させる最大の要因となったのだ。

 その構図は今回の衆院選でも繰り返された。政権与党が権力私物化の疑惑に加え、コロナ危機で政権担当能力に重大な疑念が生じたにもかかわらず、野党があまりに不甲斐ないゆえに、政権に居座り続けている。
 この現実は、二大政党政治が機能不全に陥ったことを如実に映し出している。政権交代のリアリズムを欠いた「万年与党の自民と万年野党の立憲民主」という見せかけの二大政党政治は、自民党の派閥同士が牽制しあったかつての自社体制よりも「権力集中」が進んで「政治腐敗」を招くという意味で、より悪い政治状況を生んでいるといえるのではないか。
 今回の衆院選で野党が採用した唯一の戦略は「小選挙区における野党候補の一本化」だった。「与党vs野党」の一騎打ちの構図を作り出し、「二者択一の消去法」の選択を有権者に迫り、「与党がダメなら野党へ」と呼びかけることで政権交代を実現させる「二大政党政治のオーソドックスな戦略」といっていい。

 それはそれなりに機能し、接戦の選挙区をたくさんつくった。一方で、それだけでは政権交代の機運は高まらず、投票率は伸びなかった。「二者択一の消去法」を迫られた有権者の多くは「与党も野党もダメ」「投票先が見当たらない」とあきらめ、政治から目をそむけ、投票所へ足を運ばなかったのである。
 野党第一党の立憲民主党が魅力的で政権交代の受け皿となっていれば、民主党政権の悪夢がなければ、結果は違っていたーーそういう指摘もあろう。たしかにそうかもしれない。

 しかし、私は見解を異にしている。そもそも「二者択一の消去法」の選択を有権者に迫る二大政党政治のあり方が、デジタル化で価値観が多様化する現代社会の感覚にマッチしていないのではないか。(→続きを読む)

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2021年11月22日

【21年度JCJ賞受賞者スピーチ】ETV特集「原発事故最悪のシナリオ=v事故の教訓化終わらず NHKディレクター・石原大史さん

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 JCJ贈賞式にお招きを受けるのは、今回で3度目です。最初は2011年原発事故の年で、ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」がJCJ大賞。2度目は2013年NHKスペシャル「空白の初期被ばく〜消えたヨウ素131を追う〜」がJCJ賞を受賞しました。
 今回の番組の企画意図は「原発事故を危機管理の側面から検証したらどうなるか」というもので、そのキーワードになったのが「最悪のシナリオ」でした。通常「最悪のシナリオ」は、事故の初動のタイミングで必要と言われ、事故防止戦略の道具として事前に必要なはずなのに、今回の場合(4つの原子炉が損傷し)事故の最悪のタイミングである3月15日からさらに一週間以上も経って官邸に届きました。「これは変だ」ということで取材を始めました。
 「最悪のシナリオ」はアメリカ政府・軍、防衛省・自衛隊、東京電力も、それぞれ別個に作っていて、それぞれが違います。そのこと自体が危機管理が混乱した要因のひとつでした。
 制作での苦労はまず第一に、キーパーソンの誰にどうやって話してもらえるか、です。ローラー作戦で仲間たちで一人ひとり口説いていく作業が大変でした。
 第二は、これまで公の場で話したことのない内容を「テレビカメラの前で話してください。対話形式で2、3時間話してほしい」と要求したので、嫌がられました。

 では、なぜ応じてくれたのか。事故対応した人の多くは「あれで良かったのか」と反問、自己反省を繰り返していました。事故後10年を取材する側とのタイミングが合ったのではないか。幸運で有難いことでした。
 第三は、番組にどういうメッセージを込めるかが、最も苦労した点です。あらかじめ、結論やメッセージが決まっていた訳ではなく、取材から見えてきたもので終わろうと決めていましたが、難しかった。最後は「日本人は危機そのものを直視せず、根拠のない楽観論に陥りやすい」などと指摘する元自衛隊統合幕僚幹部や元首相補佐官のインタビューに番組のメッセージを込めました。
 私たちの社会が、事故からどういう教訓を引き出し、何を学ぶかは、未だ全然終わっていません。引き続き、番組制作を続けたいと考えています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月21日

【今週の風考計】11.21─「ヤマサクラ81」と「オリエント・シールド21」

◆季節外れだが、優しい名前のつく「ヤマサクラ81」が始まる。実はこれ、過去最大規模の日米共同軍事演習の別称なのだ。兵庫県伊丹市の陸上自衛隊・伊丹駐屯地に、臨時に大規模な施設を設置し、12月中旬まで行われる。
 在日米陸軍のシンボルである富士山の「山」と、陸上自衛隊のシンボルである「桜」を合わせて付けたもので、1982年から始まり、年2回、実施されている。
◆すでに今年は2月7日から15日まで、熊本市にある陸上自衛隊の健軍駐屯地で、離島防衛をテーマに「ヤマサクラ」図上演習が実施されている。陸自から約4千人、米側から約千人が参加した。

◆「ヤマサクラ」は、実践的な<戦争ゲーム>を通して、現場の指揮官クラスの状況判断や指揮の力量を向上させ、司令官レベルでの自衛隊・米軍の統合的指揮・統制力を高めることを狙いとした大規模な軍事演習だ。
◆伊丹駐屯地で始まる「ヤマサクラ81」は、陸自の各方面隊と米陸軍の司令部が、対中国を視野に、日本を拠点とする軍事戦略を日米共同して練り上げる。
 10月4日の米英3空母も参加した台湾周辺での6カ国演習に続き、30年ぶりの全陸自部隊が参加する史上最大の演習になる。
◆すでに伊丹駐屯地では、「指揮所に使用する建物と配電設備の建築・レンタル・解体業者を、東京・横田基地の米空軍第374契約中隊が募集。大阪府内の建設業者が9月21日に約1億6700万円で受注」(赤旗11/5付け)と、報じられている。

◆さらに北海道では、陸上自衛隊・矢臼別演習場など5カ所で、初めて米軍オスプレイとの日米共同軍事訓練が、12月5日から17日まで行われる。とりわけ酪農家たちの間では、オスプレイの騒音で乳牛がパニックに陥るのではないかと、不安が広がっている。
 それも当然、6月末には矢臼別演習場で、米陸軍と共同して国内初のロケット砲・実射戦闘訓練「オリエント・シールド21」が行われ、その砲声にびっくりしたばかりだ。
◆「オリエント・シールド21」なるもの、<東洋の盾>とのことだが、これまた陸上自衛隊と米陸軍が共同で実施する、対中国を視野に入れた戦争実動訓練の別称だ。今年は6月18日〜7月11日の期間、奄美駐屯地、伊丹駐屯地、矢臼別演習場など、7カ所で実施された。
 奄美駐屯地では、米陸軍ペトリオット部隊が奄美大島に初展開し、陸上自衛隊の中距離地対空ミサイルを活用しての共同対空戦闘訓練に取り組んだ。陸自から約1400人、米軍から約1600人、合わせて約3000人が参加。

◆政府は「沖縄の基地負担の軽減」を理由に、これら本土各地での日米共同演習を正当化している。しかし実態は、まさに北海道から奄美・沖縄まで日本列島を覆う、日米共同軍事ネットワークを完成させ、日本全体を日米共同管理の軍事基地化へ地ならしをしているのだ。
◆いわゆる「沖縄の基地を本土に引き取る」論があるが、その是非以前に、本土そのものが沖縄化している実態は、見過ごすわけにはいかない。(2011/11/21)
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2021年11月20日

【21年度JCJ賞受賞者スピーチ】大賞「五色(いつついろ)のメビウス」分断とは対極の社会を 信濃毎日新聞報道部次長 牛山健一さん

                           
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私たちの報道は、外国人のキャンペーンで始まったわけではありません。新型コロナの影響で苦しんでいる人たち、命の分岐点に立っている人たちの取材をしていく中、外国人が最も歪みの影響を受けていると感じ集中した。なので全くこの問題の専門家でもなく、素人集団で始まった。だからこそ執拗に取材できたのかもしれない。
昨年の夏から秋にかけ二つの大きな出来事があった。一つは浅間山の麓、小諸市のサニーレタス畑で起きた落雷事故。なぜ雷雨の中、農作業を強いられていたのか、死亡した2人は在留期限を超えて滞在していた。それから南牧村の農家で、ベトナム人の元技能実習生と元留学生が傷つけあう傷害事件が起きた。2人は大阪市の会社が国の許可を得ずに派遣した失踪外国人だった。この会社は佐久地方のレタス、白菜の農家に、県外で失踪した技能実習生ら230人を違法に派遣していたことが判明した。若者たちはなぜ元々の職場を逃げ出し、佐久地方に送り込まれたのか疑問は膨んだ。農業だけでなく、建設、製造業、食品加工、介護、私たちの便利な暮らし、手ごろで新鮮な食べ物、高齢者の福祉サービスは外国人労働者の働きなくしてはありない。

新型コロナの影響による出入国制限のため海外渡航しての取材は断念した。でも、ベトナムなどの送り出す派遣会社などの関係者の証言を集め、S N Sやウェブ会議システムを使って現地への取材にも成功し、日本企業・団体への裏金やキックバック、違法な手数料の実態も明らかに。地道な従来型の取材と、ネットも使った若い記者の踏ん張りも闇を暴くことにつながった。
新たな受け入れ制度である特定技能でも、外国人が違法な手数料を支払わされている実態を突き止めた。新型コロナウイルスに感染した外国人住民の苦労、入管法の改悪問題についても早くから取り上げてきた。
「五色(いつついろ)のメビウス」はどういう意味か。五色には多種多様の意味がある。五大陸をイメージし世界の意味を込めた。表が裏になり、裏が表になるメビウスの輪。循環するイメージから無限の可能性も意味する。私たちと世界の関係も同じ、多様な国々をルーツとする人々と一緒に築く社会、分断とは対極の社会を目指したい。少しでも近づけるよう引き続き、掘り下げて伝えていきたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月19日

【スポーツ】感染激減で正常化に焦り=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染者激減で、プロ野球やJリーグは、来シーズンからの正常化を実現する意気込みだ。
 観客制限が続いたプロ野球の今シーズンの観客数は、より規制の厳しかった昨シーズンからの緩和を政府に要望したこともあって、6割増しになったとはいえ、感染拡大前の2年前のシーズンの3分の1にすぎなかった。 正常化は切実だが、日本シリーズでは延長戦を復活させるなど焦りも感じられる。
 高校部活動の大会や対外試合は2年連続して規制下に置かれ、在学中に正常な活動を経験できないまま卒業する悲劇的な競技生活の恐れもある。まして市民スポーツレベルでは、正常化の見通しが立たず、グループの解散、縮小の危機に直面している。
 スポーツ庁は競技団体経営の効率化を訴えるばかりで、国民の競技環境改善の方途を示さない。強調されてきた東京五輪の国民スポーツへの遺産は、巨額を投じた競技会場の維持難という負の遺産だけなのか。
 メダル獲りを煽った民放テレビは、相変わらず五輪メダリストの番組タレント化を狙い、卓球の銀メダリストが大ケガをする事故まで起こした。

 11月に入って晴天が多かったため、公園で運動不足解消のマスクをしたランニング姿を多く見かけたが、国民の欲求不満は高まるばかりらしい。 しかし、日本スポーツ協会は知らんふりである。政府の無策ぶりが伝染して、公的なスポーツ振興機関の怠慢が、スポーツ関係者の焦りを生んでいるようだ。
 WITHコロナのスポーツライフは、屋内で個人的に、ということか。オンラインでゲームに取り組めばいいとでも言わんばかりだ。コロナ禍で、国民のスポーツ権無視が目に余る。
 政府が経済活動活性化に集中して、会食や旅行の規制緩和に動いても、国民の生活再建は見通せない。
  マスメディアは、多方面からの安全、安心な再建策を提示する努力が必要だろう。
   大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2021年11月18日

【おすすめ本】岡 大介『カンカラ鳴らして、政治を「演歌」する』─「演歌は庶民の叫び」 カンカラ演歌師の全国行脚=大原智也(北海道新聞)

 演歌といえば、こぶしを回す歌謡曲を思い浮かべるが、本来の演歌は明治・大正期に、自由民権運動から生まれた社会風刺の歌のことである。
 本書は43歳の著者が絶滅危惧種の演歌を歌う「演歌師」になった半生と、多くの人々との交流を綴った記録である。
 著者のストレートな歌声と少年のような愛嬌ある風貌に合わせ、その飾らない人柄が、多くの人を引きつけてきた。沖縄の三線(さんしん)の代用品であるカンカラ三線を手にして約20年。演芸会や酒場、集会で歌い続け、安倍晋三元首相など、不可解な答弁で迷走する政治家を、「ああわからない」「オッペケペー節」などの歌詞をつけ、軽やかに風刺してきた。

 プロサッカー選手の夢を諦めた20歳頃、実家の押し入れにあった吉田拓郎のレコードに衝撃を受け、歌手になろうと決意。当初はギターを手に自作曲を歌っていたものの芽が出ない。そんなときフォーク歌手の高田渡から本来の演歌や演歌師の代表格である添田啞蟬坊について教わり、のめり込んだ。
 カンカラ三線と出合った話など、読み進めるにつれ、偶然が重ならなければ唯一無二の「カンカラ演歌師」は誕生しなかったことが実感できる。
 今は亡き小沢昭一や永六輔らとのエピソードも読みどころの一つ。だがそれ以上に興味深いのが、北海道から沖縄まで全国各地で出会った人々との交流だ。いかに彼が人との縁を大事にしてきたか、よく分かる。
 「演歌は庶民の叫び」と語る著者。現在の政局を笑いに変え、さらなる鋭い風刺を生み出すよう期待して止まない。(dZERO1800円)
                          
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2021年11月16日

【21年度JCJ賞受賞者スピーチ】大賞『ルポ入管』行政の透明性の向上を 共同通信記者・平野雄吾さん

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    平野さんはエルサレム支局長のためビデオメッセージによるスピーチだった

 難民申請者や在留資格のない外国人を無期限に拘束する入管施設を私が初めて訪れたのは、2017年秋でした。その年の春までカイロ支局で勤務し、ヨーロッパで難民の取材をしていたため帰国後、日本では難民はどういう暮らしをしているのだろうと思ったのが取材のきっかけでした。茨城県牛久市の東日本入国管理センターの面会室で、約2年半で体重が80`から35`に減ったと話す、車椅子姿のパキスタン人に会い、ここで何か大変なことが起きていると直感した。それ以降、牛久入管や品川の 東京入管、時には大阪入管や長崎県の大村入国管理センターにも足を運びました。
 そして職員による暴力、暴言、監禁、懲罰、医療放置など信じがたい実態が収容者の話から出てきました。約2年間の取材・執筆過程で強く感じたのは入管施設の透明性の欠如という問題でした。
 図らずも、私が入管問題に没頭していた18年から20年の間に社会的に大きな問題となったのは、森友や加計、学術会議の問題でした。これらに共通するのは透明性や公平性の欠如です。多くの国民から反発が生まれたのは透明性や公平性が民主主義社会の基盤であり、これを放置すると基盤が揺らぐと感じたからでしょう。 

 私はこの時、入管当局の対応を思い出しました。取材には保安上の理由で答えない。情報公開ではほぼ黒塗りの文書を開示。外部からの視線をシャットアウトする姿勢が入管問題の根本にあるのは間違いありません。透明性の確保は極めて重要で、国家権力の暴走を防ぐ唯一の手段になり得ると思います。
 名古屋入管でスリランカ人女性のウィシュマさんが亡くなり、入管施設では一体何が起きているのか、多くの日本人が関心を寄せはじめました。今問われているのは、公文書の保存、情報開示、行政を監督する第三者委員会、公務員の市民への公表などで透明性向上のためにどんな方法があるかです。『ルポ入管』がJCJ大賞を頂いたのは、日本ジャーナリスト会議が社会に向けて行政の透明性の向上について議論を深めようと呼びかけるメッセージではないかと私は受け止めています。その議論の一助となるよう記者として今後も努力を続けたいと改めて感じています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月15日

【月刊マスコミ評・新聞】封印された1枚の写真が伝える水俣=徳山喜雄

 米国の報道写真家ユージン・スミス(1918―78年)が、1971年に熊本県の不知火海に面する水俣市で撮影した一枚の写真がある。「公害の原点」とされる水俣病を世界に告発したもので、胎児性水俣病患者の15歳の少女と浴槽に入る母を写した「入浴する智子と母」だ。
 ほの暗い浴室の湯が輝き、湯船に浮かぶように浸かる上村智子さん。抱きかかえ、見つめる母の良子さんの眼差しは慈愛にあふれていた。母親が食べた魚の水銀を胎内で吸い取って、母やその後に生まれてきた子どもを救った智子さんのことを、良子さんは「ほんに智子はわが家の宝子(たからご)ですたい」という。
 智子さんは撮影から6年後に21歳で亡くなる。死後も水俣病を象徴する一枚として脚光を浴び続けたが、両親は「亡き智子をゆっくり休ませてあげたい」と考えるようになった。著作権者のアイリーン・美緒子・スミスさんはその意向を受け、98年に「母子像の新たな展示や出版をおこなわない」と決めた。
 それから20年以上にわたり、古い雑誌や写真集などでしか見ることができなかった。しかし、映画「MINAMATA」の公開を機に、アイリーンさんが遺族と話し合い掲載の承諾を得た。
 私は封印が解かれたことを、読売新聞(9月16日朝刊)の文化面記事で知った。アイリーンさんは写真集『MINAMATA』の日本語版を復刻。「写真家には、被写体とその写真を見る人に対しての二つの責任がある」とのユージンの言葉を振り返った。水俣病の関係者や読者は、よみがえった「母子像」をどのように見るのだろうか。
 朝日新聞(10月3日朝刊)は1面トップ、2面、社会面と3個面にわたり異例の大きさでユージンの写真や水俣病の歴史を伝えた。ただ、智子さんの入浴写真には触れていない。残念だったが、アイリーンさんに再度話を聞き、読売から遅れること1カ月の16日朝刊で写真の封印・解除についてフォローした。
 毎日新聞(同)は、文化面に経済思想家の斎藤幸平さんの寄稿を掲載。水俣病を題材にした映画が封切られたとし、現在進行形の水俣病問題に焦点をあてた。「毒を飲まされ、苦しみ息絶えていく中にあっても、国家ぐるみに放っておかれた」と訴えた。
 徳山喜雄
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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2021年11月14日

【今週の風考計】11.14─郊外の庭・散歩道・畑にあふれる自然の豊かな実り

庭のセンリョウが色づいた。薄みどり色の葉の上で、鮮やかな橙色の実がこぼれそうだ。赤や黄色の実をつけるセンリョウも、それぞれ見事に輝いている。
 一方、マンリョウは葉の下に赤い実をつける。まだ色づくには早い。どうしたことか野鳥たちがついばむのはセンリョウの実だ。木の下の地面についばみ残した実が、いっぱいこぼれ落ちている。
シジュウカラ、ヒヨドリ、メジロ、ムクドリ、スズメなど、庭のヤマモモやボウガシの枝に据えたエサ台めがけて飛んでくる。それはうれしいが、鮮やかな色で庭を明るくしてくれているセンリョウの実をついばむのは、勘弁してほしい。ネットで覆って守ることにした。

そういえば、近くのそば屋のピラカンサス、出入り口の植垣にあるのだが、びっしり赤い実をつけている。たしか昨年は実をつけなかったが、今年はこぼれるほどだ。
 枝の棘をかいくぐって野鳥たちが実をついばむのは、実に含まれる毒が消える冬に入ってからだという。ネットを懸けるのも12月に入ってからだろう。
庭のサザンカも白い花を広げる。ツバキの赤も目に鮮やかだ。今年は異常気象のせいか、サザンカにチャドクガがはびこり、この夏は苦しめられた。
 4〜5日ほど目を離すと、小さな毛虫が葉の下に群生し、繊毛を動かしている。あっという間に葉が食べつくされる。すぐに軍手をはめ殺虫剤オルトランを吹きつける。
 それでも完全には退治できない。毛虫のついた葉を見つけたら、枝ごと切って袋に落とし込み、封をしてゴミ処理するのが一番だ。

さて晴天続きの日々、散歩に出ると道の垣根越しに黄色いミカンが目に入る。そこの住人は、いつミカンをもぐのだろう。酸っぱいのかな、気になってしょうがない。青緑色したミカンもある。これは近くまで行かないと見落としてしまう。もう柿をもいで皮をむき、軒に吊るす家もある。
鯉が泳ぐ野火止用水沿いの道を行けば、色づくカエデやモミジが頭上を覆う。対岸の樹木を見れば、真っ赤に色づいたカラスウリが、かわいい提灯のように、間隔をあけてぶら下がっている。

さらに足を延ばすと、畑に出た。白菜や里芋が植わっている。そこで作業していた小父さんによれば「今年は里芋が豊作でね。夏場に雨がたんと降ってくれたからねー」と言う。
 里芋を一株抜いて、その根っこに里芋がいっぱい着いているのを見せてくれる。けんちん汁やイカと里芋を炊いた煮物を思い出しヨダレが出る。
 空を見上げるとイワシ雲、穏やかな秋晴れの半日を楽しみながら、気候変動・COP26の議論や動きに思いが走る。(2021/11/14)
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2021年11月13日

JCJオンライン講演会「政治を読み解く――与野党激突の総選挙後の行方」11月28日(日)午後2時から4時まで

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講師:政治ジャーナリスト・鮫島 浩さん(元朝日新聞記者)
野党第一党の立憲が衆院選挙で大敗したことで、時代は二大政党制から新たな「多党制」に移行したのか。自公・維新などによる憲法改正を阻止できるか。そして政権交代は遠のいたのだろうか。また国政選挙での低い投票率をアップさせる妙案は―。元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩さんが政治の行方を読み解く。
参加費:500円
参加ご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
@http://ptix.at/ZFspRK をクリックする
A参加券を求める
B支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ
C初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
支払いを済ませた方に講演前日・11月27日までにZoomで視聴できるURLをメールでお送りします。
(JCJ会員は参加無料。onlinejcj20@gmail.com に別途メールで申し込んでください)
【講師の略歴】
鮫島浩(さめじま・ひろし)
1994年、京都大法学部卒業後、朝日新聞社入社。政治部で菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝らを担当後、2010年に39歳で政治部デスクに抜擢される。12年、特別報道部デスク。「手抜き除染」報道で13年度日本新聞協会賞受賞。2021年5月31日、49歳で朝日新聞を退社。独立後「新しいニュースのかたちに挑む」とブログ「SAMEJIMA TIMES」を立ち上げる。またテレビ朝日、AbemaTV、ABCラジオなど出演多数。
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2021年11月12日

【出版界の動き】コロナ禍の巣ごもり需要が終わりマイナス成長に逆戻り

●出版界の状況は、コロナ禍による巣ごもり需要やコミック『鬼滅の刃』の神風的なベストセラーの余波が止み、6月から再び前年比減が続いている。
9月の出版物販売金額1102億円(前年比6.9%減)、書籍659億円(同3.8%減)・雑誌442億円(同11.1%減)。月刊誌372億円(同12.1%減)、週刊誌70億円(同5.6%減)。
●KADOKAWA、増収増益の中間連結決算─2022年の中間決算では、売上高1048億円(前年同期比7.4%増)、営業利益99億円(同26.6%増)、経常利益106億円(同30.3%増)、純利益71億円(同36.7%増)の増収増益。併せて中国テンセントグループと資本業務提携を結んだことを発表。
●各出版社イチオシの年末年始に向けた本や商材を、オンラインで一挙に説明する会を、11月17日〜18日の両日、13時〜17時に開催。期間中は常時Zoomミーティングが開かれ、入退はいつでも自由。
●累計200万部突破の大人気絵本シリーズの第9弾、工藤ノリコ『ノラネコぐんだん ラーメンやさん』(定価1320円・白泉社)が11月5日発売。またまた販売部数が伸びそう。
●「2021ユーキャン新語・流行語大賞」に30のノミネート語が決まる。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)が選ぶ同賞のノミネート語が、7人の選考委員により選出された。
今年の傾向は「長引くコロナ禍で、コミュニケーションが希薄になり、軽い言葉やあたたかみのない言葉が生まれてきている」という。ノミネート語トップ10は次の通り。
皆さんは、どれだけ理解できますか。
@「イカゲーム」 A「うっせぇわ」 B「ウマ娘」 C「SDGs」 D「NFT」 E「エペジーーン」 F「推し活」 G「親ガチャ」 H「カエル愛」 I「ゴン攻め/ビッタビタ」
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2021年11月11日

【フォトアングル】衆院会館前 岸田政権打倒で300人参集=酒井憲太郎

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菅内閣終わり、岸田内閣が選出される当日。選出前の「10・4臨時国会開会日行動」に300人(主催者総がかり行動実行委員会)が集まった。「岸田じゃ変わらない」「政治を変えよう」のプラカード。横断幕では「自公政権交代!政治を変えよう!総選挙勝利」と訴えた。野党議員たちは「いのちを守れ」「軍事費よりもコロナ対策を」のプラカードを掲げ演説した。挨拶の中で、「岸田内閣打倒」のプラカードを見たとの報告もあった。=4日、東京・衆議院第2議員会館前、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
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