2024年07月22日
【焦点】8月集会パネラー・久道弁護士が参加する公共訴訟支援「CALL4」とは=橋詰雅博
8月17日にJCJが開催する集会「軍拡の動きに、私たちはどう対抗するのか――戦後80年を前に」にパネリストとして登壇する久道瑛未弁護士=写真=に先だって藤森研JCJ代表委員、古川英一同事務局長と一緒にお会いし、当日の打ち合わせをした。その際、久道弁護士は社会課題の解決を目指す公共訴訟の支援に特化した日本初のウェブプラットフォーム「CALL4(コールフォー」
(https://www.call4.jp/)のケースサポーターとして5年ほど前から参加していると述べた。
HPによると「CALL4」という名称は「〜を呼び起こす」「〜を必要とする」という意味のcall for≠ニいう言葉に由来。立法、行政、司法の三権に加えて社会を形作る4つめの力として市民の力があると考える。この4つ目の力を呼び起こすという意味で、for≠フ代わりに4=ifour)という数字を使っている。
公共訴訟は、たとえ少数者の声だとしても、それが憲法や法律に反していたら、司法の力で国や自治体の施策を変えることを命じられるのが大きな特徴だ。違憲判決を得て社会が良い方向に変わった代表例は、「在外日本人選挙権訴訟」や「らい(ハンセン病)予防違憲国家賠償請求訴訟」。
しかし国や行政を相手に訴訟を起こすには、とりわけお金が必要だ。「CALL4」では提起された数々の公共訴訟の中身を紹介するとともに各訴訟への寄付(クラウドファンディング)を募っている。例えば目標額100万円を設定した「日本の『黙秘権』を問う訴訟〜56時間にわたる侮辱的な取り調べは違法〜」では114万の支援額が現在集まっている。個別によって支援額は違うが関心の高さが伺える。これまで約60件に対して合計約1億の寄付が寄せられている。
「CALL4」は弁護士紹介や法律相談は行っていないが、クラファンへの手数料はゼロ。この点はほかのクラファン事業とは大きく異なる。若手弁護士や法学部学生、大学院生などがボランティアで運営に当たる。
久道弁護士は「あなたが『仕方ない』と飲み込んでいる理不尽は、他の誰かも直面している理不尽かもしれません。社会の理不尽に対して声を上げている人たちの目的は、自分のためというよりも、社会を変えて他の誰かも救うためであることがほとんどです。そんな他の誰かのために、理不尽を我慢せずに声を上げてくれた当事者の方々や、使命感をもって戦いを請け負った代理人の方々に、CALL4での活動を通じて社会全体から、感謝と支援を届けていきたいと思っています」と抱負を語っている。
ぜひ「CALL4」をのぞいてみてください。
2024年07月21日
【おすすめ本】神野 直彦『財政と民主主義 人間が信頼し合える社会へ』―市場と為政者に委ねて良いのか 民主主義の危機を問う=友寄英隆(経済研究者)
本書は、「あとがき」で述べているように、著者が網膜剥離と言う視覚障害の危機をのりこえて、渾身の思いをこめてまとめた一書である。
「財政と民主主義」というタイトルであるが、狭い意味の財政問題の書にとどまらず、日本の経済と民主主義のありようを根源から問い直し、人間らしく生きられる社会を構想したスケールの大きな新書である。
序章の「経済危機と民主主義の危機」と第1章の「『根源的危機の時代』を迎えて」では、新自由主義の浸透による格差と貧困、環境破壊などについての、著者の時代認識が示されている。
第2章の「機能不全に陥る日本の財政」では、コロナ・パンデミックが日本財政の矛盾を白日のものにしたことが分析され、続く第3章「人間主体の経済システムヘ」ではスウェーデンの「参加型社会」と対置することによって、岸田政権の「人間不在の『新しい資本主義』論」を厳しく批判する。
具体的な財政分析という意味では、第4章「人間の未来に向けた税・社会保障の転換」は説得力がある。日本財政の歪み、矛盾、改革の方向が描き出されている。財政民主主義のあるべき方向として、中央政府、地方政府、社会保障基金政府からなる「三つの政府体系」に再編成することが必要だと主張する。
著者は最後に「本書では、共同体意識に裏打ちされた社会の構成員が、自分たちの運命を自分たちで決定できる共同意思決定空間を下から上へと積み上げて、代表民主主義をも活性化させる途を模索してきた」(243n)と述べている。この文言が評者には重く響いて残った。(岩波新書1000円)
「財政と民主主義」というタイトルであるが、狭い意味の財政問題の書にとどまらず、日本の経済と民主主義のありようを根源から問い直し、人間らしく生きられる社会を構想したスケールの大きな新書である。
序章の「経済危機と民主主義の危機」と第1章の「『根源的危機の時代』を迎えて」では、新自由主義の浸透による格差と貧困、環境破壊などについての、著者の時代認識が示されている。
第2章の「機能不全に陥る日本の財政」では、コロナ・パンデミックが日本財政の矛盾を白日のものにしたことが分析され、続く第3章「人間主体の経済システムヘ」ではスウェーデンの「参加型社会」と対置することによって、岸田政権の「人間不在の『新しい資本主義』論」を厳しく批判する。
具体的な財政分析という意味では、第4章「人間の未来に向けた税・社会保障の転換」は説得力がある。日本財政の歪み、矛盾、改革の方向が描き出されている。財政民主主義のあるべき方向として、中央政府、地方政府、社会保障基金政府からなる「三つの政府体系」に再編成することが必要だと主張する。
著者は最後に「本書では、共同体意識に裏打ちされた社会の構成員が、自分たちの運命を自分たちで決定できる共同意思決定空間を下から上へと積み上げて、代表民主主義をも活性化させる途を模索してきた」(243n)と述べている。この文言が評者には重く響いて残った。(岩波新書1000円)
2024年07月20日
【焦点】子どもの万博動員≠ウらに拍車、大阪で無料専用列車も 夢洲は依然ガス爆発危険性あり=橋詰雅博
2025年4月に開幕予定の大阪・関西万博では、大阪府・市は万博への学校単位での子どもを無料で招待する事業を進めている。バスの数の不足や地下鉄の混雑問題などで会場までの交通手段確保の課題を解消するため大阪の横山英幸市長は、校外学習での利用を目的とした「子ども専用列車」の運行を大阪メトロと協議していることを今月に明らかにした。これを受けて大阪府の吉村洋文知事も「協力していきたい」と賛同。実現となればこれも無料招待となる。
これまで国公私立校を対象とした関西6府県の万博子ども無料招待事業の中身と予算額はこんな具合だ。
●大阪府=4歳から高校生(人数約102万)19億3千万円
●兵庫県=小中高校生(約56万)8億(このうち一部は県内企業による寄付)
●京都府=小中高校生(約25万)3億3千4百万
●奈良県=小中高校生(約12万7千)1億7千万
●滋賀県=4歳から高校生(約18万)4億から5億
●和歌山県=小中校生(約6万7千)1億8千万
この事業に関西6府県は合計約38億円を投じる見込み。これに「子ども専用列車」の費用が上乗せされる。どのくらいのお金がかかるのかはわからないが、かなりの額だろう。
「いのち輝く」をテーマにした万博のすばらしさを子どもたちが体験できるなら多額の税金をかける価値は十分にあるが、問題は会場だ。
3月に工事現場で、土壌から発生したメタンガスに溶接の火花が引火し爆発する事故が起きた。事故現場はトイレ設置予定地。コンクリート床約100平方bが損傷した。付近には受付ゲートや飲食ブースなどが予定されており、来場者が多く集まる場所だ。
会場の夢洲(ゆめしま)は今も使われているごみの最終処分場。しゅんせつ土砂やPCB・ダイオキシンなどの有害物質が埋められている。メタンガスは引火しやすく、爆発の危険性がある。このため当初から問題視されていた。2月から5月の間には基準値を超えるメタンガスが76回も検知していたと日本国際博覧会協会が6月下旬に明らかにしている。
協会は開催中毎日ホームページで測定値の公表を検討するとしているが、根本的な対策はないようだ。こんなメタンガス爆発の危険性がある会場に子どもたちを入場させるのは、「いのちの危険」の恐れがある。
それなのに文部科学省は全国の学校へ修学旅行先として万博をすすめる通達を出している。危険性を知ってか知らずか、来年の修学旅行は万博と決めた千葉県や福島県の学校もある。
関西の無料招待事業も修学旅行先通達も政府が音頭を取る万博動員<vランの一環だ。
子どもが犠牲になったら誰が責任をとるのだろうか。
これまで国公私立校を対象とした関西6府県の万博子ども無料招待事業の中身と予算額はこんな具合だ。
●大阪府=4歳から高校生(人数約102万)19億3千万円
●兵庫県=小中高校生(約56万)8億(このうち一部は県内企業による寄付)
●京都府=小中高校生(約25万)3億3千4百万
●奈良県=小中高校生(約12万7千)1億7千万
●滋賀県=4歳から高校生(約18万)4億から5億
●和歌山県=小中校生(約6万7千)1億8千万
この事業に関西6府県は合計約38億円を投じる見込み。これに「子ども専用列車」の費用が上乗せされる。どのくらいのお金がかかるのかはわからないが、かなりの額だろう。
「いのち輝く」をテーマにした万博のすばらしさを子どもたちが体験できるなら多額の税金をかける価値は十分にあるが、問題は会場だ。
3月に工事現場で、土壌から発生したメタンガスに溶接の火花が引火し爆発する事故が起きた。事故現場はトイレ設置予定地。コンクリート床約100平方bが損傷した。付近には受付ゲートや飲食ブースなどが予定されており、来場者が多く集まる場所だ。
会場の夢洲(ゆめしま)は今も使われているごみの最終処分場。しゅんせつ土砂やPCB・ダイオキシンなどの有害物質が埋められている。メタンガスは引火しやすく、爆発の危険性がある。このため当初から問題視されていた。2月から5月の間には基準値を超えるメタンガスが76回も検知していたと日本国際博覧会協会が6月下旬に明らかにしている。
協会は開催中毎日ホームページで測定値の公表を検討するとしているが、根本的な対策はないようだ。こんなメタンガス爆発の危険性がある会場に子どもたちを入場させるのは、「いのちの危険」の恐れがある。
それなのに文部科学省は全国の学校へ修学旅行先として万博をすすめる通達を出している。危険性を知ってか知らずか、来年の修学旅行は万博と決めた千葉県や福島県の学校もある。
関西の無料招待事業も修学旅行先通達も政府が音頭を取る万博動員<vランの一環だ。
子どもが犠牲になったら誰が責任をとるのだろうか。
2024年07月19日
【オピニオン】政府主導の改組に抗議 学術会議歴代会長が声明発表=編集部
2020年の菅政権による学術会議会員候補者の任命拒否を契機に政府が進めている同会議法人化の議論に対し、歴代の学術会議会長6氏が6月10日、岸田首相に「政府主導の見直しを改めることを要望する」とした声明を発表した。
前会長の梶田隆章・東京大卓越教授は、日本記者クラブでの会見で「日本の学術の終わりの始まりとなることを強く懸念する。極めて危うい」と述べた。
声明には吉川弘之・東大名誉教授(工学)、黒川清・東大名誉教授、東海大特別栄誉教授、広渡清吾・東大名誉教授(法学)、大西隆・東大名誉教授(工学)、山際寿一・京大名誉教授(人類学)、梶田隆章・東大特別栄誉教授(物理学・ノーベル賞受賞者)の1997年の17期以降、25期までの各会長が署名した。
声明は、政府が進める「法人化」方針について、
20年に発覚した会員6人の任命拒否問題を「正当化するためと疑われる」と批判。会員選びに外部有識者が意見を述べる「選考助言委員会」設置案についても、「学術会議の独立性と自主性に手をつけるもの」だと懸念を表明。学術会議のあり方は、社会や与野党を超えて国会で議論すべきだとの考えを示した。
理由頑なに拒否
菅政権が、推薦された新会員候補者105人のうち、芦名定道・京大教授、宇野重規・東大教授、岡田正則・早大教授、小沢隆一・東京慈恵医大教授、加藤陽子・東大教授、松宮孝明・立命館大教授の6人の任命を拒否した問題は、同会議のほか90を超す学会団体が抗議声明を出すなど、広く反対運動が起きた。
だが、政府は「任命拒否」の理由説明を拒み、その一方で役員任命や、委員会、分科会などの組織改革や「見直し」が必要だとして問題を学術会議の組織問題にすり替え、強引に改革論議を進め、「総合科学技術・イノベーション会議」の有識者懇談会から「学術会議の在り方に関する政策討議とりまとめ」を得て、内閣府の「日本学術会議の在り方についての方針」を発表。「法人化」の方針を決定した。
政府決定に懸念
一方、学術会議も今年4月「政府決定の『学術会議法人化に向けて』に対する懸念」を決議として発表。国の在り方や政府の政策への「基盤勧告機能」など「より良い役割」果たすための要件として@十分な財政措置A組織・制度の政府からの自律性、独立性の担保B海外の多くのアカデミーも採用する会員自身が次期候補者挙げ、選考委員会が推薦する「コ・オプテーション方式」会員選出、会員による会長選出を改めて声明した。
歴代会長の声明はこれを受けたもので、「世界が直面する人類社会の自然的、共生条件の困難さは一層大きく学術の役割を要請している。学術会議の在り方について政府主導の見直しを改め、学術会議の独立性と自主性を尊重し擁護することを要望する」としている。
提訴し真相解明
一方、任命を拒否された6人の教授は今年2月、国を訴え「拒否理由」関係文書開示などを求めて立ち上がった。「学術会議は憲法の『学問の自由』に沿い作られた。任命拒否の真相を明らかに」と訴えている。既に6人の氏名と肩書、「R2・6・12」の文字や大きなバツ印が書かれた公文書が明らかになった。
学術会議が発足当初から何度も「科学者は軍事研究に従事すべきでない」と決議していることや、6人が安倍政権の軍事化推進姿勢などに何らかの形で異議を申し立てたことなどが問題にされ、任命拒否されたと言われている。
頑なな「説明拒否」で追い詰められた政府が「学術会議改組」で「対抗」しているのも明らかだ。かつて戦争前夜の日本で、研究機関や大学で政府の見解に沿わない研究者が次々とパージされた。主体的な学問研究は政策推進の邪魔とされた。「学問の自由」への攻撃は「思想、信条、の自由」への攻撃に直結する。「ものを言う自由」「研究の自由」をどう守るのか、重要な闘いが始まっている。
前会長の梶田隆章・東京大卓越教授は、日本記者クラブでの会見で「日本の学術の終わりの始まりとなることを強く懸念する。極めて危うい」と述べた。
声明には吉川弘之・東大名誉教授(工学)、黒川清・東大名誉教授、東海大特別栄誉教授、広渡清吾・東大名誉教授(法学)、大西隆・東大名誉教授(工学)、山際寿一・京大名誉教授(人類学)、梶田隆章・東大特別栄誉教授(物理学・ノーベル賞受賞者)の1997年の17期以降、25期までの各会長が署名した。
声明は、政府が進める「法人化」方針について、
20年に発覚した会員6人の任命拒否問題を「正当化するためと疑われる」と批判。会員選びに外部有識者が意見を述べる「選考助言委員会」設置案についても、「学術会議の独立性と自主性に手をつけるもの」だと懸念を表明。学術会議のあり方は、社会や与野党を超えて国会で議論すべきだとの考えを示した。
理由頑なに拒否
菅政権が、推薦された新会員候補者105人のうち、芦名定道・京大教授、宇野重規・東大教授、岡田正則・早大教授、小沢隆一・東京慈恵医大教授、加藤陽子・東大教授、松宮孝明・立命館大教授の6人の任命を拒否した問題は、同会議のほか90を超す学会団体が抗議声明を出すなど、広く反対運動が起きた。
だが、政府は「任命拒否」の理由説明を拒み、その一方で役員任命や、委員会、分科会などの組織改革や「見直し」が必要だとして問題を学術会議の組織問題にすり替え、強引に改革論議を進め、「総合科学技術・イノベーション会議」の有識者懇談会から「学術会議の在り方に関する政策討議とりまとめ」を得て、内閣府の「日本学術会議の在り方についての方針」を発表。「法人化」の方針を決定した。
政府決定に懸念
一方、学術会議も今年4月「政府決定の『学術会議法人化に向けて』に対する懸念」を決議として発表。国の在り方や政府の政策への「基盤勧告機能」など「より良い役割」果たすための要件として@十分な財政措置A組織・制度の政府からの自律性、独立性の担保B海外の多くのアカデミーも採用する会員自身が次期候補者挙げ、選考委員会が推薦する「コ・オプテーション方式」会員選出、会員による会長選出を改めて声明した。
歴代会長の声明はこれを受けたもので、「世界が直面する人類社会の自然的、共生条件の困難さは一層大きく学術の役割を要請している。学術会議の在り方について政府主導の見直しを改め、学術会議の独立性と自主性を尊重し擁護することを要望する」としている。
提訴し真相解明
一方、任命を拒否された6人の教授は今年2月、国を訴え「拒否理由」関係文書開示などを求めて立ち上がった。「学術会議は憲法の『学問の自由』に沿い作られた。任命拒否の真相を明らかに」と訴えている。既に6人の氏名と肩書、「R2・6・12」の文字や大きなバツ印が書かれた公文書が明らかになった。
学術会議が発足当初から何度も「科学者は軍事研究に従事すべきでない」と決議していることや、6人が安倍政権の軍事化推進姿勢などに何らかの形で異議を申し立てたことなどが問題にされ、任命拒否されたと言われている。
頑なな「説明拒否」で追い詰められた政府が「学術会議改組」で「対抗」しているのも明らかだ。かつて戦争前夜の日本で、研究機関や大学で政府の見解に沿わない研究者が次々とパージされた。主体的な学問研究は政策推進の邪魔とされた。「学問の自由」への攻撃は「思想、信条、の自由」への攻撃に直結する。「ものを言う自由」「研究の自由」をどう守るのか、重要な闘いが始まっている。
2024年07月18日
【JCJ広島支部】8・6ヒロシマで何が起きようとしているのか 7月21日(日)午後1時30分から4時30分 リアルととオンラインによるハイブリット開催
■開催趣旨:
今年の8・6平和記念式典で広島市は、平和公園の全域に入園規制をかけようとしている。原爆ドーム、原爆供養塔をはじめ多くの慰霊碑がある一帯すべてが午前5時から9時までの4時間、「安全対策の強化」を理由に手荷物検査を受けて許可されないと入れなくなる。
被爆者や遺族の人たちは早朝から平和公園のあちこちで手を合わせておられるが、この人たちにも手荷物検査が行われる。ゼッケン、たすきなどは着用できない。プラカードやのぼり、横断幕の類も持ち込みを禁止される。核戦争の危機が現実化しているなか、今年こそ平和公園から「NO WAR」「NO NUKES」を訴えたいと思っている人は多い。しかし、様々な工夫を凝らした表現活動はできない。広島市は、規制に「法的な根拠はない」としながら、従わなかったら退去を命じるという。これはいったい何なのか。「安全対策」を口実にすれば、憲法が認めた「表現の自由」を奪っても構わない、と言わんばかりだ。
このたびは、札幌市で5年前、安倍元首相の遊説中 に政権批判の声をあげた市民を警察官が取り囲んで排除した事件を取り上げたドキュメンタリー「ヤジと民主主義」の制作者を広島に招いて、平和公園での規制強化は、全国で起きている「言論・表現の自由」封殺と通底していないか、市民の皆さんとともに考えたい。
■プログラム:
◎8・6規制強化の経過 日本ジャーナリスト会議広島支部
◎法的根拠のない規制強化 田村 和之・広島大学名誉教授
◎講 演
どんな声も、かき消されてはならない!・・・『ヤジと民主主義』は何を暴いたのかー
山ア裕侍さん(北海道放送報道部デスク)
◎市民討論
■講演者プロフィール:山ア 裕侍 (やまざき ゆうじ)
HBC北海道放送エグゼクティブマネージャー、報道部デスク。主なドキュメンタリー作品に「命をつなぐ〜臓器移植法施行から10年・救急医療の現場から〜」「赤ひげよ、さらば。〜地域医療再生≠ニ崩壊≠フ現場から〜」「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜核のごみ≠ニ科学と民主主義〜」「性別は誰が決めるか〜『心の生』をみつめて〜」「アイヌとヘイト〜文化振興の陰で〜」「クマと民主主義〜騒動の村から〜騒動の村からトップランナーへ〜」など。日本民間放送連盟賞、ギャラクシー賞、文化庁芸術祭賞、放送文化基金賞、日本ジャーナリスト会議JCJ賞、日本記者クラブ特別賞、文化庁芸術選奨(個人)など受賞。
■会 場:広島弁護士会館 3階大会議室(広島市中区上八丁堀2-73 ※広島城の東側)
■開催方式:7月21日(日)13:30〜16:30(会場リアルとzoomでのオンラインのハイブリッド開催。オンラインでの参加者には記録動画の配信有り)
■参加申し込み:会場参加、オンライン参加共に資料代 1,000円。(会場参加:学生・障がい者は無料)
https://jcj0721.peatix.com
■主催:日本ジャーナリスト会議広島支部(お問い合わせ先:090-9060-1809(藤元)
2024年07月17日
【JCJ声明】相次ぐ米兵の女性暴行事件と、政府による隠ぺいに抗議する
「楽しいはずのクリスマスイブの日を、これから少女は毎年つらい思いで過ごさなければならない」。米軍兵士による16歳未満の少女に対する誘拐暴行事件が起きたのは去年の12月24日、クリスマスイブの日。被害にあった少女について沖縄に住む人たちは絞り出すように語った。
日本政府が一体となって沖縄県に事実を隠し続けたこの事件が、琉球朝日放送の昼のニュースで第一報が報じられ明るみに出たのは6月25日。外務省や防衛省、そして県民の警察のはずの沖縄県警は、県に連絡しなかった理由として「被害者のプライバシーへの配慮で慎重な対応」とオウムのように同じ言葉を繰り返した。
沖縄の人たちの言葉と比べた時、政府側の言葉の軽さが浮かび上がる。建前の裏側に、辺野古新基地建設に向けた国の代執行、岸田首相訪米、沖縄県議会議員選挙、「慰霊の日」追悼式などへの政治的影響を考えた、地元沖縄県に対する隠ぺいの意図が透けて見える。
この問題について日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ沖縄)は、いち早く6月27日に抗議声明を出し、「今回の事件が発覚するまでの半年間の経緯をみれば、日米政府は捜査・司法当局も含めて、県民に対して事件を隠ぺいしたと言わざるを得ない。沖縄県民の安全や尊厳をないがしろにする姿勢が暴露されたのである」と指摘し、「米軍の特権を支えるために県民を犠牲にする日本政府や当局に断固抗議する」と訴えた。
さらにJCJ沖縄が声明を出した後も、米軍による性的暴行事件が次々に明るみになり、県警が発表しなかった米軍による性的暴行事件は昨年以降合わせて5件あったこともわかった。「県民に強い不安を与えるだけではなく、女性の尊厳を踏みにじるものだ」とする玉城デニー知事をはじめ沖縄の人々の強い怒りに、政府はようやく7月5日に、捜査当局が米軍人を容疑者と認定した性犯罪事件については非公表であっても例外なく沖縄県に伝達する方針を表明した。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は沖縄の人々と連帯し、政府の隠ぺい行為に強く抗議し、沖縄県への伝達については速やかに確実に履行することを政府に求める。
沖縄県には在日米軍基地の7割が置かれている。基地問題が引き起こす性暴力の数々は、人間の尊厳に対する蹂躙であり、女性を軽んじるジェンダーの権力構造を露骨に示している。「国家の安全保障」が、一人ひとりの人権に優先するものであるのか、政府は沖縄の人々が置かれている現状と真摯に向きあい自問してほしい。
そのうえでJCJは、政府に対して米軍への再発防止の徹底の申し入れと、日米地位協定の見直しに取り組むことを強く求める。
以上
2024年7月12日
日本ジャーナリスト会議(JCJ )
日本政府が一体となって沖縄県に事実を隠し続けたこの事件が、琉球朝日放送の昼のニュースで第一報が報じられ明るみに出たのは6月25日。外務省や防衛省、そして県民の警察のはずの沖縄県警は、県に連絡しなかった理由として「被害者のプライバシーへの配慮で慎重な対応」とオウムのように同じ言葉を繰り返した。
沖縄の人たちの言葉と比べた時、政府側の言葉の軽さが浮かび上がる。建前の裏側に、辺野古新基地建設に向けた国の代執行、岸田首相訪米、沖縄県議会議員選挙、「慰霊の日」追悼式などへの政治的影響を考えた、地元沖縄県に対する隠ぺいの意図が透けて見える。
この問題について日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ沖縄)は、いち早く6月27日に抗議声明を出し、「今回の事件が発覚するまでの半年間の経緯をみれば、日米政府は捜査・司法当局も含めて、県民に対して事件を隠ぺいしたと言わざるを得ない。沖縄県民の安全や尊厳をないがしろにする姿勢が暴露されたのである」と指摘し、「米軍の特権を支えるために県民を犠牲にする日本政府や当局に断固抗議する」と訴えた。
さらにJCJ沖縄が声明を出した後も、米軍による性的暴行事件が次々に明るみになり、県警が発表しなかった米軍による性的暴行事件は昨年以降合わせて5件あったこともわかった。「県民に強い不安を与えるだけではなく、女性の尊厳を踏みにじるものだ」とする玉城デニー知事をはじめ沖縄の人々の強い怒りに、政府はようやく7月5日に、捜査当局が米軍人を容疑者と認定した性犯罪事件については非公表であっても例外なく沖縄県に伝達する方針を表明した。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は沖縄の人々と連帯し、政府の隠ぺい行為に強く抗議し、沖縄県への伝達については速やかに確実に履行することを政府に求める。
沖縄県には在日米軍基地の7割が置かれている。基地問題が引き起こす性暴力の数々は、人間の尊厳に対する蹂躙であり、女性を軽んじるジェンダーの権力構造を露骨に示している。「国家の安全保障」が、一人ひとりの人権に優先するものであるのか、政府は沖縄の人々が置かれている現状と真摯に向きあい自問してほしい。
そのうえでJCJは、政府に対して米軍への再発防止の徹底の申し入れと、日米地位協定の見直しに取り組むことを強く求める。
以上
2024年7月12日
日本ジャーナリスト会議(JCJ )
2024年07月16日
【トピックス】鹿児島県警・内部通報と「情報源暴き」=萩山 拓(ライター)
◆県警・不祥事の3カ月
鹿児島県警の元巡査長による捜査資料漏えい事件の発生から、すでに3カ月以上が経過する。県警は4月8日、県警に批判的な報道を続けるニュースサイト運営者を漏えい事件の関係先として家宅捜索し、パソコンのデータを押収し、その内容をもって巡査長を地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕した。
この捜索で得た関連資料や証拠を基に、さらに前県警生活安全部長も漏洩容疑で逮捕した。こうし漏洩事件が起きる背景には、県警トップの事件もみ消し・隠蔽の動きに対し、不満が県警内に充満していたと考えられる。
現に逮捕された当事者からは、「資料を公表して県警内の体質を変えたかった」と、動機の説明がなされている。
◆踏みにじる「情報源の秘匿」
しかも県警が行ってきた一連の捜査は、極めて異常なやり方だといわざるを得ない。パソコンのデータを始め、メールや携帯でのやりとりなど、捜査・検索・閲覧の範囲そして押収は通常の限度を超えている。
こうした捜査に対して、新聞社の「社説」および新聞労連や出版者協議会を始め、メディアにかかわる多くの組織や有識者が、鹿児島県警による異様な「情報源暴き」に抗議の声を挙げてきた。
そこには「捜査権の乱用」のみならず、「情報源の秘匿・保護」や「表現・報道の自由」が脅かされる重大な危険がはらんでいるからだ。民主主義社会では許されない権力の暴走を感じ取ったからに他ならない。
◆公益のための内部通報
この暴走をくい止めるため、東京都の出版社「リーダーズノート出版」の木村浩一郎社長は、鹿児島県警トップの野川明輝本部長らを、特別公務員職権乱用などの罪に当たるとして告発した。ところが鹿児島地検は7月5日付で、野川本部長らを嫌疑なしで不起訴処分とした。
しかし同社長は、地検の不起訴処分は不当だとして、7月10日、鹿児島検察審査会へ審査を申し立てたと明らかにした。「不法・不当に当該報道機関の強制捜査を行った疑惑があり、強制捜査は取材源の秘匿に関わり、日本国憲法にも違反する」うえに、「地検の捜査は短期間で不十分だ」という世論もあるとしている。
とりわけ逮捕された前生活安全部長は「県警本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとしたことが許せなかった」「書類を送れば積極的に取材してくれると考えた」と述べているだけに、隠された組織内部の腐敗を告発しようとする公益通報の意図が明確である。こうした事情をどう汲みあげるのか、これからの審査が注目される。
鹿児島県警の元巡査長による捜査資料漏えい事件の発生から、すでに3カ月以上が経過する。県警は4月8日、県警に批判的な報道を続けるニュースサイト運営者を漏えい事件の関係先として家宅捜索し、パソコンのデータを押収し、その内容をもって巡査長を地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕した。
この捜索で得た関連資料や証拠を基に、さらに前県警生活安全部長も漏洩容疑で逮捕した。こうし漏洩事件が起きる背景には、県警トップの事件もみ消し・隠蔽の動きに対し、不満が県警内に充満していたと考えられる。
現に逮捕された当事者からは、「資料を公表して県警内の体質を変えたかった」と、動機の説明がなされている。
◆踏みにじる「情報源の秘匿」
しかも県警が行ってきた一連の捜査は、極めて異常なやり方だといわざるを得ない。パソコンのデータを始め、メールや携帯でのやりとりなど、捜査・検索・閲覧の範囲そして押収は通常の限度を超えている。
こうした捜査に対して、新聞社の「社説」および新聞労連や出版者協議会を始め、メディアにかかわる多くの組織や有識者が、鹿児島県警による異様な「情報源暴き」に抗議の声を挙げてきた。
そこには「捜査権の乱用」のみならず、「情報源の秘匿・保護」や「表現・報道の自由」が脅かされる重大な危険がはらんでいるからだ。民主主義社会では許されない権力の暴走を感じ取ったからに他ならない。
◆公益のための内部通報
この暴走をくい止めるため、東京都の出版社「リーダーズノート出版」の木村浩一郎社長は、鹿児島県警トップの野川明輝本部長らを、特別公務員職権乱用などの罪に当たるとして告発した。ところが鹿児島地検は7月5日付で、野川本部長らを嫌疑なしで不起訴処分とした。
しかし同社長は、地検の不起訴処分は不当だとして、7月10日、鹿児島検察審査会へ審査を申し立てたと明らかにした。「不法・不当に当該報道機関の強制捜査を行った疑惑があり、強制捜査は取材源の秘匿に関わり、日本国憲法にも違反する」うえに、「地検の捜査は短期間で不十分だ」という世論もあるとしている。
とりわけ逮捕された前生活安全部長は「県警本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとしたことが許せなかった」「書類を送れば積極的に取材してくれると考えた」と述べているだけに、隠された組織内部の腐敗を告発しようとする公益通報の意図が明確である。こうした事情をどう汲みあげるのか、これからの審査が注目される。
2024年07月15日
【焦点】鹿児島県警不祥事事件の全容″数ュ文受け取った札幌市のライターが地元誌で報じる 県警の文書提出強要を拒否=橋詰雅博
相次ぐ不祥事で県民の信頼揺らぐ鹿児島県警
県内外が注目する鹿児島県警の不祥事隠ぺい事件。新聞報道だけでは全容がわかりづらい。関係者の話を総合すると、この事件は地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで4月に逮捕され起訴された巡査長の藤井光樹被告(49 懲戒免職)と北九州の福岡市のデジタルニュースサイト「HUNTER」との関係が原点のようだ。藤井被告から受け取った県警のさまざまな不祥事情報を「HUNTER」は報じていた。組織維持のため目障りと県警は警務部長をトップとした50人からなるプロジェクトチームが調査にあたり、「HUNTER」のネタ元が藤井被告であることを突き止めた。「HUNTER」と藤井被告との間で金銭的なやり取りがあったかは分からない。
県警は4月8日に「HUNTER」編集部を家宅捜索。パソコンに残っていたPDFファイルを見て驚愕した。未発表の盗撮事件(後日発表)やストーカー事件などの概要が記録されていた。匿名だったので告発者が誰なのか不明だったが、送信元は北海道札幌市に住む月刊誌「北方ジャーナル」記者の小笠原淳氏(55)。
小笠原氏は「北方ジャーナル」7月号でその経緯を自ら書いている。概要はこうだ。<闇をあばいてください>という文言で始まる匿名の文書が4月3日に届く。消印は「鹿児島中央」「3・28」。鹿児島市内から6日間を経て札幌市在住の彼の元に。告発文書を「なぜ鹿児島の人がこれを札幌に」と首を傾げた。情報を共有する考えで日ごろから付き合いのあった「HUNTER」の中願寺純則編集長に文面などをデータ化したPDFをメール送信した。3日の午後3時過ぎだった。
県警はこのPDFを8日の家宅捜査で発見・押収したわけだ。割り出した告発者は県警前生活安全部長の本田尚志氏(60)。本田氏は3月に定年退職し、在職時の階級は警視正。本田氏は5月31日に国家公務員法(守秘義務)違反で逮捕された。ノンキャリアだったが、幹部だったので国家公務員法が適用される。
小笠原氏は6月4日に鹿児島県警組織犯罪対策課の捜査員と名乗る男性から電話を受け取る。「うちの元生活安全部長が逮捕された件で、証拠品が小笠原さんに送付されていたことがわかりまして‥‥」。「重要な証拠品ということで、返還していただきたいと思いまして」
――返還?どういうことですか。
「簡単に言いますと、証拠品として押収させていただきたいと」
――押収?令状か何か出てるんですか。
「今のところは、ないです」
――ああ、任意ってことですね。
「はい、お願いベースになります」
――私の職業とか知っていますよね。
「そうですね、はい」
――誰からどういう情報を貰ったとか、普通、外部には言わない仕事なんですけど。
「‥‥ああ」
――それやっちゃたら、この仕事できなくなるんで。
「ああ、なるほどですね」
――出さないと強制捜査(家宅捜索など)になるんですか。
「なんとも言えないところです。ただまあ、重要な証拠品であると判断しておるところで」
――普段どういう報道対応なさってるかわからないんですけど、報道関係者はこういうの出さないですよ。
「そこをですね、どうにかお願いできないかなあと‥‥」
県警からはこの後複数回の打診があったが、小笠原氏は提出を拒否した。さらに任意聴取の要請に対しては「弁護士同席」「録音」「撮影」などの許可の条件を示したうえで「何を問われても答えない」と表明した。その結果、県警側は要請を断念した。
藤井容疑者は一審で罪を認め結審、「野川明輝県警本部長(警察庁のキャリア官僚)の指示で事件はもみ消された」と告発した本田容疑者は、拘置所から保釈されこれから裁判が始まる。本田容疑者が県警不祥事の公益通報だとして無罪を訴えるのかどうかが注目される。
県内外が注目する鹿児島県警の不祥事隠ぺい事件。新聞報道だけでは全容がわかりづらい。関係者の話を総合すると、この事件は地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで4月に逮捕され起訴された巡査長の藤井光樹被告(49 懲戒免職)と北九州の福岡市のデジタルニュースサイト「HUNTER」との関係が原点のようだ。藤井被告から受け取った県警のさまざまな不祥事情報を「HUNTER」は報じていた。組織維持のため目障りと県警は警務部長をトップとした50人からなるプロジェクトチームが調査にあたり、「HUNTER」のネタ元が藤井被告であることを突き止めた。「HUNTER」と藤井被告との間で金銭的なやり取りがあったかは分からない。
県警は4月8日に「HUNTER」編集部を家宅捜索。パソコンに残っていたPDFファイルを見て驚愕した。未発表の盗撮事件(後日発表)やストーカー事件などの概要が記録されていた。匿名だったので告発者が誰なのか不明だったが、送信元は北海道札幌市に住む月刊誌「北方ジャーナル」記者の小笠原淳氏(55)。
小笠原氏は「北方ジャーナル」7月号でその経緯を自ら書いている。概要はこうだ。<闇をあばいてください>という文言で始まる匿名の文書が4月3日に届く。消印は「鹿児島中央」「3・28」。鹿児島市内から6日間を経て札幌市在住の彼の元に。告発文書を「なぜ鹿児島の人がこれを札幌に」と首を傾げた。情報を共有する考えで日ごろから付き合いのあった「HUNTER」の中願寺純則編集長に文面などをデータ化したPDFをメール送信した。3日の午後3時過ぎだった。
県警はこのPDFを8日の家宅捜査で発見・押収したわけだ。割り出した告発者は県警前生活安全部長の本田尚志氏(60)。本田氏は3月に定年退職し、在職時の階級は警視正。本田氏は5月31日に国家公務員法(守秘義務)違反で逮捕された。ノンキャリアだったが、幹部だったので国家公務員法が適用される。
小笠原氏は6月4日に鹿児島県警組織犯罪対策課の捜査員と名乗る男性から電話を受け取る。「うちの元生活安全部長が逮捕された件で、証拠品が小笠原さんに送付されていたことがわかりまして‥‥」。「重要な証拠品ということで、返還していただきたいと思いまして」
――返還?どういうことですか。
「簡単に言いますと、証拠品として押収させていただきたいと」
――押収?令状か何か出てるんですか。
「今のところは、ないです」
――ああ、任意ってことですね。
「はい、お願いベースになります」
――私の職業とか知っていますよね。
「そうですね、はい」
――誰からどういう情報を貰ったとか、普通、外部には言わない仕事なんですけど。
「‥‥ああ」
――それやっちゃたら、この仕事できなくなるんで。
「ああ、なるほどですね」
――出さないと強制捜査(家宅捜索など)になるんですか。
「なんとも言えないところです。ただまあ、重要な証拠品であると判断しておるところで」
――普段どういう報道対応なさってるかわからないんですけど、報道関係者はこういうの出さないですよ。
「そこをですね、どうにかお願いできないかなあと‥‥」
県警からはこの後複数回の打診があったが、小笠原氏は提出を拒否した。さらに任意聴取の要請に対しては「弁護士同席」「録音」「撮影」などの許可の条件を示したうえで「何を問われても答えない」と表明した。その結果、県警側は要請を断念した。
藤井容疑者は一審で罪を認め結審、「野川明輝県警本部長(警察庁のキャリア官僚)の指示で事件はもみ消された」と告発した本田容疑者は、拘置所から保釈されこれから裁判が始まる。本田容疑者が県警不祥事の公益通報だとして無罪を訴えるのかどうかが注目される。
2024年07月14日
【JCJ沖縄声明】南城市長の取材対応に抗議する
古謝景春南城市長が琉球新報の記者を突き飛ばしたと報道された。事実であれば、取材を暴力と威嚇で妨害しようとするものであり、公人としての資質を欠くと言わざるを得ない。市長は琉球新報社の抗議を真摯に受け止めるべきだ。
報道によると、6月18日の南城市議会終了後、市長は、歩きながら記者からセクハラ疑惑について質問され、記者の背中を突き飛ばした。記者は「暴行を振るったということでいいのか」と市長に問いただしたが、市長は無言で市長室に入った。
記者は、市長の発言を録音するためレコーダーを差し出しながら横向きの姿勢で質問していたところ、市長に背中を突き飛ばされ、「あやうく倒れそうになるのを、足を踏ん張りどうにかこらえた」と述べている。
翌19日、琉球新報社は島洋子統合編集局長名で「今事案は暴力によって記者の安全を脅かし、取材活動を妨害したものだと考える」と市長と南城市宛てに抗議文書を送付し、謝罪と経緯の説明を申し入れた。これに対し市は25日に文書で回答し「突き飛ばし行為の事実はない」と否定。逆に「行き過ぎた取材活動があった」と記者を批判した。琉球新報社は「(記者の)録音データでは記者は丁重に質問をしており、職員の指示にも従っている」と反論する再抗議文を同日送付した。
市長のセクハラ疑惑を巡っては、訴訟になっている元市長車運転手の女性のほか、市議会特別委員会が実施した職員アンケートでも複数の被害が訴えられている。しかし、市長は十分な説明をしておらず、記者が市長に説明を求めるのは当然のことだ。追及を避けるため突き飛ばしたとしたら言語道断である。
突き飛ばし行為は、それによりけがを負うことがあれば傷害罪も成立し得る暴力だ。今後、市を取材する他の記者への対応にも影響しかねず看過できない。
記者・ジャーナリストの取材活動は、知る権利を守り、社会正義の実現を目指すものだ。市長は市民の知る権利にきちんと向き合うべきであり、暴力行為があったとしたら断じて許されない。市長の不誠実な対応に抗議する。
2024年7月10日
日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ 沖縄)
報道によると、6月18日の南城市議会終了後、市長は、歩きながら記者からセクハラ疑惑について質問され、記者の背中を突き飛ばした。記者は「暴行を振るったということでいいのか」と市長に問いただしたが、市長は無言で市長室に入った。
記者は、市長の発言を録音するためレコーダーを差し出しながら横向きの姿勢で質問していたところ、市長に背中を突き飛ばされ、「あやうく倒れそうになるのを、足を踏ん張りどうにかこらえた」と述べている。
翌19日、琉球新報社は島洋子統合編集局長名で「今事案は暴力によって記者の安全を脅かし、取材活動を妨害したものだと考える」と市長と南城市宛てに抗議文書を送付し、謝罪と経緯の説明を申し入れた。これに対し市は25日に文書で回答し「突き飛ばし行為の事実はない」と否定。逆に「行き過ぎた取材活動があった」と記者を批判した。琉球新報社は「(記者の)録音データでは記者は丁重に質問をしており、職員の指示にも従っている」と反論する再抗議文を同日送付した。
市長のセクハラ疑惑を巡っては、訴訟になっている元市長車運転手の女性のほか、市議会特別委員会が実施した職員アンケートでも複数の被害が訴えられている。しかし、市長は十分な説明をしておらず、記者が市長に説明を求めるのは当然のことだ。追及を避けるため突き飛ばしたとしたら言語道断である。
突き飛ばし行為は、それによりけがを負うことがあれば傷害罪も成立し得る暴力だ。今後、市を取材する他の記者への対応にも影響しかねず看過できない。
記者・ジャーナリストの取材活動は、知る権利を守り、社会正義の実現を目指すものだ。市長は市民の知る権利にきちんと向き合うべきであり、暴力行為があったとしたら断じて許されない。市長の不誠実な対応に抗議する。
2024年7月10日
日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ 沖縄)
2024年07月13日
【JCJ北海道支部】北海道内民放3局 ドキュメンタリー相次ぎ映画化 情熱と覚悟 課題 担当3氏が語る=渡辺 多美江
トークイベント「ドキュメンタリーが面白い!」でテレビ番組から映画制作の経緯や意義を語る、北海道民放3局の担当各氏=5月26日、札幌
JCJ北海道支部は5月26日、トークイベント「ドキュメンタリーが面白い!/テレビ局はなぜ映画を作るのか/道内民放3局の制作者が語る」を札幌で開催。登壇した山ア裕侍さん(HBC報道部デスク・「ヤジと民主主義 劇場拡大版」監督)、吉岡史幸さん(UHB取締役・「新根室プロレス物語」プロデューサー)、沼田博光さん(HTB報道部デスク・「奇跡の子 夢野に舞う」監督)の3氏が、昨年から今年にかけ映画化されたドキュメンタリー番組の取材や制作意図、現場の課題などを本音で語り、参加者約90人の共感を呼んだ。
「首相批判」排除
おかしくないか
山アさんは、2019年、札幌で街頭演説した安倍晋首相(当時)にヤジを飛ばした市民が、警察官に強制排除された問題に迫った。
「地声で『安倍やめろ』と10数秒言っただけで排除。『プラカードが風にあおられて危ない』と移動させられた市民もいたが、安倍首相応援のプラカードは排除されなかった。これはおかしい」と感じたことが、番組とその後の映画化を含めての出発点となった。
「TBSドキュメンタリー映画祭出品が上映の機運を呼び、『劇場拡大版』のKADOKAWA配給に」と話した。
「思い実現を」
プロデュース
吉岡さんは「根室の人たちの思いを実現させたかった」と、初代リーダーを病で失った根室のアマチュアプロレス団体の「奮闘ドラマ」をプロデュースした。「映画の起点は長く映像を撮り、編集を続けたカメラマンと編集マン。それが番組につながった」と振り返った。当初検討された俳優を使っての映画化は、紆余曲折の末、ドキュメンタリーになったという。
農家の声今こそ
7年追い続けた
沼田さんは空知の長沼町で「タンチョウを呼び寄せマチおこしをしよう」とする14人の農家を、自力で7年間追った。農家は1981年の「五六水害」被害者。その治水対策だった千歳川放水路計画は、自然保護論争の末に中止された。
「14人は『自然保護団体は大嫌い』だった長沼の普通のお父さん」。「僕は当時、農家の人たちの声を取材していなかった。それを今、映画にしたいと思った」と、一人で制作に手を挙げた理由を語った。
映画化に意義も
現状には危機感
映画化の意義を、山アさんは「採算ラインはともかく社のブランド力は上がり、お金に代えられない価値がある」。吉岡さんも「テレビは視聴率競争が厳しいが、映画で良質なものを作るという原点に帰れた」と評価。沼田さんは「お客さんの感想を直接聞ける映画は製作者を鍛える。この経験を後輩に伝えたい」と意気込みを語った。
一方、ドキュメンタリーの現状には「放送枠は毎週あるが、作りたいとアピールする記者が少なくなった。記者がデジタル情報の用意のために忙しい」(山アさん)。「合間仕事だったデジタル作業がいまや本業を圧迫し、記者もデスクも忙しい。長い視点で取材する仕事ができなくなっている」(沼田さん)。「国の石炭政策などのひずみが起きた北海道では、かつて良いドキュメンタリーが多く作られたが、近年は『夕方ワイド戦争』で、情報番組にニュースも組み込まれ、制作が難しくなってきた」(吉岡さん)と、3氏は揃って危機感を口にした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
JCJ北海道支部は5月26日、トークイベント「ドキュメンタリーが面白い!/テレビ局はなぜ映画を作るのか/道内民放3局の制作者が語る」を札幌で開催。登壇した山ア裕侍さん(HBC報道部デスク・「ヤジと民主主義 劇場拡大版」監督)、吉岡史幸さん(UHB取締役・「新根室プロレス物語」プロデューサー)、沼田博光さん(HTB報道部デスク・「奇跡の子 夢野に舞う」監督)の3氏が、昨年から今年にかけ映画化されたドキュメンタリー番組の取材や制作意図、現場の課題などを本音で語り、参加者約90人の共感を呼んだ。
「首相批判」排除
おかしくないか
山アさんは、2019年、札幌で街頭演説した安倍晋首相(当時)にヤジを飛ばした市民が、警察官に強制排除された問題に迫った。
「地声で『安倍やめろ』と10数秒言っただけで排除。『プラカードが風にあおられて危ない』と移動させられた市民もいたが、安倍首相応援のプラカードは排除されなかった。これはおかしい」と感じたことが、番組とその後の映画化を含めての出発点となった。
「TBSドキュメンタリー映画祭出品が上映の機運を呼び、『劇場拡大版』のKADOKAWA配給に」と話した。
「思い実現を」
プロデュース
吉岡さんは「根室の人たちの思いを実現させたかった」と、初代リーダーを病で失った根室のアマチュアプロレス団体の「奮闘ドラマ」をプロデュースした。「映画の起点は長く映像を撮り、編集を続けたカメラマンと編集マン。それが番組につながった」と振り返った。当初検討された俳優を使っての映画化は、紆余曲折の末、ドキュメンタリーになったという。
農家の声今こそ
7年追い続けた
沼田さんは空知の長沼町で「タンチョウを呼び寄せマチおこしをしよう」とする14人の農家を、自力で7年間追った。農家は1981年の「五六水害」被害者。その治水対策だった千歳川放水路計画は、自然保護論争の末に中止された。
「14人は『自然保護団体は大嫌い』だった長沼の普通のお父さん」。「僕は当時、農家の人たちの声を取材していなかった。それを今、映画にしたいと思った」と、一人で制作に手を挙げた理由を語った。
映画化に意義も
現状には危機感
映画化の意義を、山アさんは「採算ラインはともかく社のブランド力は上がり、お金に代えられない価値がある」。吉岡さんも「テレビは視聴率競争が厳しいが、映画で良質なものを作るという原点に帰れた」と評価。沼田さんは「お客さんの感想を直接聞ける映画は製作者を鍛える。この経験を後輩に伝えたい」と意気込みを語った。
一方、ドキュメンタリーの現状には「放送枠は毎週あるが、作りたいとアピールする記者が少なくなった。記者がデジタル情報の用意のために忙しい」(山アさん)。「合間仕事だったデジタル作業がいまや本業を圧迫し、記者もデスクも忙しい。長い視点で取材する仕事ができなくなっている」(沼田さん)。「国の石炭政策などのひずみが起きた北海道では、かつて良いドキュメンタリーが多く作られたが、近年は『夕方ワイド戦争』で、情報番組にニュースも組み込まれ、制作が難しくなってきた」(吉岡さん)と、3氏は揃って危機感を口にした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
2024年07月12日
【おすすめ本】菅原 出『民間軍事会社 「戦争サービス業」の変遷と現在地 』─国の安全保障や企業防衛の最前線に立つ実施部隊=前田哲男(軍事評論家)
「民間軍事会社」と聞いて思い浮かべるのは、ロシア・ウクライナ戦争さなかに起きた、「ワグネル」「プリゴジンの乱」だろう。この事件、現代戦の暗部が資本主義国アメリカだけでなく、旧ソ連=ロシアにも存在する事実を照射してくれた。
もちろん本書にも詳述されている。「ロシア国家によるワグネル乗っ取り」「プリゴジン暗殺」の章は、読みどころの一つだ。
だが本書は、もっと広範に、アメリカ「戦争請負会社」の活動からアフリカの地域紛争や湾岸戦争、イラク戦争にもおよび、「民間軍事会社」が 現代の戦争に不可欠なものであることを教えてくれる。
あまり知られていないが、日本の自衛隊にも民間会社の利用が浸透し、隊員不足を補うために拡大する勢いにある。
本書を読んで再読したのが、カイヨワの『戦争論』(法政大学出版局1974年)とプレティヒャ『農民戦争と傭兵』(白水社2023年)である。「傭兵」を戦争の民間人利用と考えれば、その起源は古い。
両著とも「歩兵」のルーツを「傭兵」に求めている。「マスケット銃が歩兵を生み、歩兵が傭兵を生んだ」(カイヨワ本)というわけだ。この「傭兵」の現代版・適用例が「民間軍事会社」だといえなくもない。
しかし、現代資本主義が向かい合う「テロとの戦い」においては、「民間軍事会社」は、「各国の安全保障政策や企業のセキュリティ対策を最前線で履行する実施部隊である」(本書あとがき)。
そう考えれば岸田政権が掲げた「GDP2%防衛費・5年間43兆円」の使途とも無縁ではない。その意味でも広く読まれるべき書である。(平凡社新書1050円)
もちろん本書にも詳述されている。「ロシア国家によるワグネル乗っ取り」「プリゴジン暗殺」の章は、読みどころの一つだ。
だが本書は、もっと広範に、アメリカ「戦争請負会社」の活動からアフリカの地域紛争や湾岸戦争、イラク戦争にもおよび、「民間軍事会社」が 現代の戦争に不可欠なものであることを教えてくれる。
あまり知られていないが、日本の自衛隊にも民間会社の利用が浸透し、隊員不足を補うために拡大する勢いにある。
本書を読んで再読したのが、カイヨワの『戦争論』(法政大学出版局1974年)とプレティヒャ『農民戦争と傭兵』(白水社2023年)である。「傭兵」を戦争の民間人利用と考えれば、その起源は古い。
両著とも「歩兵」のルーツを「傭兵」に求めている。「マスケット銃が歩兵を生み、歩兵が傭兵を生んだ」(カイヨワ本)というわけだ。この「傭兵」の現代版・適用例が「民間軍事会社」だといえなくもない。
しかし、現代資本主義が向かい合う「テロとの戦い」においては、「民間軍事会社」は、「各国の安全保障政策や企業のセキュリティ対策を最前線で履行する実施部隊である」(本書あとがき)。
そう考えれば岸田政権が掲げた「GDP2%防衛費・5年間43兆円」の使途とも無縁ではない。その意味でも広く読まれるべき書である。(平凡社新書1050円)
2024年07月11日
【リレー時評】「戦死手当」まで検討⁉ 経済的徴兵だ=中村 梧郎(JCJ代表委員)
北富士演習場で、手榴弾訓練中の陸自隊員が5月末に被弾死した。岐阜の日野射撃場では昨年、3人を殺傷する兵が出た。演習は戦争ごっこ≠ナはない、敵を殺す能力を新兵に叩き込む場であり、危険と紙一重である。自衛隊のポスターはカッコ良さを演出し、若者らのあこがれを煽る。でも戦場は甘くはない。敵と遭遇したら殺すか殺されるかの世界である。
銃弾も爆弾も大量殺害の手段である。だから軍はそれを扱う殺人のプロを育てる。戦艦も戦車も殺人装置。その最上位にある戦闘攻撃機の輸出を岸田内閣は決めた。明白な憲法違反である。
ウクライナやガザではクラスター爆弾が使われている。50年前に終わったベトナム戦争で登場したこの爆弾(当時はボール爆弾)は何なのか、という解説が日本のメディアの多くで誤っている。
「カプセルから野球ボール大の子爆弾数百が飛散し広域を破壊する。その3割が不発で地雷と化すから非人道的」という説明だ。だが地雷を凌ぐ残虐兵器なのだ。子爆弾は無数の弾丸を内包、爆発で放射状に飛び散る。ビルは破壊できないが、人間は全身に弾を浴びて即死、遠くでも何発かは貫通する。つまり殺害専門の「対人殺傷爆弾」なのだ。非人道性はそこにある(もっとも人道的兵器≠ヘありえないが…)。
自衛隊への応募者が減った。一昨年6月、野田聖子・内閣府大臣は日経日曜サロンで「少子化は自衛官の減少をもろに受ける。国の安全保障、国防にも影響する」と発言、少子化対策を急ぐ狙いが実は将来の自衛官の確保にあることを漏らした。
機密保護法、経済安保法も揃った。だが権力を監視すべき新聞TVはなぜか糾弾を避ける。「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」には読売新聞グループ本社の山口寿一社長が名を連ねている。今年、日本のジャーナリズムの自由度は世界70位へと順位を下げた。先進国中最下位。政権広報機関への転落、という評価なのだろう。
徴兵制をやめた米国では給与を増額、低賃金労働者を誘ってイラクやアフガンに送る兵とした。日本では兵役適齢の市民学生の情報が自治体から自衛隊に渡されている。北海道では、子ども食堂に隊員募集パンフを配布したことも発覚した。貧困家庭のはず、という勧誘である(『週刊金曜日』5月24日号)。
徴兵制がなくとも貧しさがあれば兵は募れる。防衛省は奨学制度の拡大も図る。学生に月5万4千円を貸与し、卒業後に自衛官となれば返還免除。サイバー分野の人材なら幕僚長並みの給与支給が可能だという(「赤旗」1月20日)。その上なんと「戦争(戦死)手当」の導入を検討している。安心して死んでくれ、というわけだ。
戦争遂行の具体的準備が進む。事あれば米・日統合軍司令部のもと、自衛隊が最前線に出る。
日本はまさしく戦争をする国になりつつあるようだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
銃弾も爆弾も大量殺害の手段である。だから軍はそれを扱う殺人のプロを育てる。戦艦も戦車も殺人装置。その最上位にある戦闘攻撃機の輸出を岸田内閣は決めた。明白な憲法違反である。
ウクライナやガザではクラスター爆弾が使われている。50年前に終わったベトナム戦争で登場したこの爆弾(当時はボール爆弾)は何なのか、という解説が日本のメディアの多くで誤っている。
「カプセルから野球ボール大の子爆弾数百が飛散し広域を破壊する。その3割が不発で地雷と化すから非人道的」という説明だ。だが地雷を凌ぐ残虐兵器なのだ。子爆弾は無数の弾丸を内包、爆発で放射状に飛び散る。ビルは破壊できないが、人間は全身に弾を浴びて即死、遠くでも何発かは貫通する。つまり殺害専門の「対人殺傷爆弾」なのだ。非人道性はそこにある(もっとも人道的兵器≠ヘありえないが…)。
自衛隊への応募者が減った。一昨年6月、野田聖子・内閣府大臣は日経日曜サロンで「少子化は自衛官の減少をもろに受ける。国の安全保障、国防にも影響する」と発言、少子化対策を急ぐ狙いが実は将来の自衛官の確保にあることを漏らした。
機密保護法、経済安保法も揃った。だが権力を監視すべき新聞TVはなぜか糾弾を避ける。「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」には読売新聞グループ本社の山口寿一社長が名を連ねている。今年、日本のジャーナリズムの自由度は世界70位へと順位を下げた。先進国中最下位。政権広報機関への転落、という評価なのだろう。
徴兵制をやめた米国では給与を増額、低賃金労働者を誘ってイラクやアフガンに送る兵とした。日本では兵役適齢の市民学生の情報が自治体から自衛隊に渡されている。北海道では、子ども食堂に隊員募集パンフを配布したことも発覚した。貧困家庭のはず、という勧誘である(『週刊金曜日』5月24日号)。
徴兵制がなくとも貧しさがあれば兵は募れる。防衛省は奨学制度の拡大も図る。学生に月5万4千円を貸与し、卒業後に自衛官となれば返還免除。サイバー分野の人材なら幕僚長並みの給与支給が可能だという(「赤旗」1月20日)。その上なんと「戦争(戦死)手当」の導入を検討している。安心して死んでくれ、というわけだ。
戦争遂行の具体的準備が進む。事あれば米・日統合軍司令部のもと、自衛隊が最前線に出る。
日本はまさしく戦争をする国になりつつあるようだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
2024年07月10日
【JCJ オンライン講演会】「小池氏が都知事に3選 今後の政治への影響を読む」講師:鮫島 浩さん(SAMEJIMA TIMES、元朝日新聞記者)7月27日(土)午後2時から3時
■開催趣旨
アンチ小池票が分散したおかげで小池氏は都知事選で逃げ切った。小池氏をステルス支援した裏金自民党は息を吹き返すかと思いきや、都議補選は2勝6敗と大敗した。自民党への逆風はおさまっていない。この都議選の結果は9月の自民党総裁選、年内にもいわれる解散総選挙、蓮舫ショック≠ノ揺れる立憲民主党を始め野党にどんな影響をあたえるのか。元朝日新聞記者の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏が大胆に予測する。
■講演者プロフィール
鮫島浩(さめじま・ひろし)
1971年生まれ。京都大学法学部の佐藤幸治ゼミで憲法を学ぶ。94年に朝日新聞へ入社し、99年から政治部。菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家を幅広く担当し、39歳で政治部デスクに。2013年に「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。21年に退社し「SAMEJIMA TIMES」創刊。連日ウェブサイトで政治解説記事を無料公開し、ユーチューブでも政治解説を発信。登録者は11万人超。サンデー毎日やプレジデントオンラインに寄稿。ABEMAなど多数出演。近著に『朝日新聞政治部』(講談社22年)、泉房穂・前明石市長との共著に『政治はケンカだ!』(同23年)。6月に『あきらめない政治 ジャーナリズムからの政治入門』(那須里山舎)を刊行した。
■オンライン講演開催日時:7月27日(土)14:00〜15:00(zoomにてオンライン 、見逃し視聴用記録動画の配信有り)
■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://peatix.com/event/4044104)で参加費をお支払いください。
JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に支部名を明記の上お申し込み下さい。先着100名の定員となります。
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
03-6272-9781(月水金の13時から18時まで)
https://jcj.gr.jp/
■JCJ会員の方はJCJホームページ・ユーザー登録をすることで記録動画をご覧になれます。
2024年07月09日
【福島訴訟】国の賠償免責から2年 「人間の鎖」で最高裁包囲=編集部
東電福島第一原発の事故は「国が対策を命じても事故は防げなかった。国に賠償責任はない」と国を免責した最高裁を「人間の鎖」で包囲する抗議行動が、判決から2年目の6月17日に行われた。
2011年3月の原発事故後、被災者が国や東電に賠償を求めた訴訟は全国で約30件を数えた。最高裁は22年6月17日、原告が約3700人にのぼる福島、群馬、千葉、愛媛の4件の訴訟について、「津波対策が講じられていても事故が発生した可能性があった」とし、裁判官4人中、「国の責任を認めるべき」と三浦守裁判官1人を除く3人の多数意見で国策で原発を推進してきた国の賠償を免責した。
原発推進を支持
メディアも批判
福島原発事故を自然災害とは言えない。国が予測された津波への対策指針を怠った結果が大事故につながった。これを受け原発推進のメディアでさえ、「(国も)被災者支援の取り組みを緩めてはならない」(読売)、「政策の誤りを指摘する意見が少なからずあったことを国は重く受け止めるべきだ」(日経)「賠償責任を免れたことで国が胸をなで下ろしていては大間違いだ」(産経)などと判決を批判した。
大手法律事務所
最高裁と「癒着」
判決を出した裁判官は、別の裁判で東電側の代理人を務める弁護士が所属し、東電の社外取締役を出す大手法律事務所のOBだったりし、陪席裁判官も、退職後、関係事務所に就職するなど最高裁と大手法律事務所との「癒着」が明らかになっている。
こうした中で、最高裁判決を第一陣が受けた福島生業(なりわい)訴訟では、第2陣の原告団に約700人が加わった。
広がる抗議の輪
訴訟団連帯行動
この日の抗議行動は「6.17最高裁共同行動実行委員会」が主催。「人間の鎖」には、被災者や株主代表訴訟の原告たちのほか、子どもの被ばくの責任を問う訴訟や東電株主代表訴訟の原告団、原発事故の刑事訴訟を支援する団体などが参加。数多く残る今後の最高裁審の際「公正な判決を」と求める要請書を約3万人の著名とともに提出。主催者調べで950人の参加者は正午から午後1時まで、最高裁の皇居側にある東門付近から青山通り沿いを経て、国立劇場手前の西門近くまでの約1`を「人間の鎖」で取り囲んだ。
集会後は国会でシンポジウムを開催。最高裁と原発の癒着を告発したジャーナリストの後藤秀典さんらが報告した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
2011年3月の原発事故後、被災者が国や東電に賠償を求めた訴訟は全国で約30件を数えた。最高裁は22年6月17日、原告が約3700人にのぼる福島、群馬、千葉、愛媛の4件の訴訟について、「津波対策が講じられていても事故が発生した可能性があった」とし、裁判官4人中、「国の責任を認めるべき」と三浦守裁判官1人を除く3人の多数意見で国策で原発を推進してきた国の賠償を免責した。
原発推進を支持
メディアも批判
福島原発事故を自然災害とは言えない。国が予測された津波への対策指針を怠った結果が大事故につながった。これを受け原発推進のメディアでさえ、「(国も)被災者支援の取り組みを緩めてはならない」(読売)、「政策の誤りを指摘する意見が少なからずあったことを国は重く受け止めるべきだ」(日経)「賠償責任を免れたことで国が胸をなで下ろしていては大間違いだ」(産経)などと判決を批判した。
大手法律事務所
最高裁と「癒着」
判決を出した裁判官は、別の裁判で東電側の代理人を務める弁護士が所属し、東電の社外取締役を出す大手法律事務所のOBだったりし、陪席裁判官も、退職後、関係事務所に就職するなど最高裁と大手法律事務所との「癒着」が明らかになっている。
こうした中で、最高裁判決を第一陣が受けた福島生業(なりわい)訴訟では、第2陣の原告団に約700人が加わった。
広がる抗議の輪
訴訟団連帯行動
この日の抗議行動は「6.17最高裁共同行動実行委員会」が主催。「人間の鎖」には、被災者や株主代表訴訟の原告たちのほか、子どもの被ばくの責任を問う訴訟や東電株主代表訴訟の原告団、原発事故の刑事訴訟を支援する団体などが参加。数多く残る今後の最高裁審の際「公正な判決を」と求める要請書を約3万人の著名とともに提出。主催者調べで950人の参加者は正午から午後1時まで、最高裁の皇居側にある東門付近から青山通り沿いを経て、国立劇場手前の西門近くまでの約1`を「人間の鎖」で取り囲んだ。
集会後は国会でシンポジウムを開催。最高裁と原発の癒着を告発したジャーナリストの後藤秀典さんらが報告した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年6月25日号
2024年07月08日
【おすすめ本】是枝裕和・川端和治・早田そうだったのか!ジャーナリズム研究会『僕らはまだテレビをあきらめない』―公権力の放送介入に抗う貴重な論考=長井 暁(ジャーナリスト)
本書は、安倍晋三政権がテレビ放送への介入を繰り返されていた時期に、BPO放送倫理検証委員会の委員を務めた弁護士の川端和治氏と映画監督の是枝裕和氏による数々の論考と、両氏へのインタビューを中心に構成されている。掲載されている是枝氏が当時ブログに発表した3本の私見は、評者も講演や大学講義で何度も参考にして来た貴重な論考である。
2015年4月、高市早苗総務大臣は出家詐欺番組を放送したNHKへ行政指導(厳重注意)。同年11月には、一つの番組のみでも政治的に公正と認められない場合があると発言。16年2月には、放送法違反を繰り返した場合、電波法76条に基づき電波停止の可能性があると発言した。
BPOはNHKへの行政指導について、15年11月に公表した意見書の中で、「放送法が保障する『自律』を侵害する行為そのものと言えよう」と厳しく批判。意見書公表の翌日に是枝氏は私見を発表し、放送法は公権力から放送の「表現・報道の自由」を守るためのものであり、公権力が放送を規制するためにあるのではないと指摘した。
さらに10日後に発表した私見では、放送法四条(「政治的な公正」など)が成立した経緯を詳しく検証し、この条文は「法規範」ではなく「倫理規範」であると明確に指摘。さらに16年3月の停波発言を受けて発表した私見では、公権力の誤った法解釈や人々の無理解によって、「放送を守るための放送法が、公権力が放送局を監視するための法律」にされてしまっており、その倒錯した状況を改めなければならないと厳しく指摘した。
映画の製作等で多忙を極める中で、「資料集め及び清書をしてくれた分福のスタッフも呆れています」と言うほど、放送法に関する私見の執筆に熱心に取り組んだ理由について是枝氏は、自分を育ててくれた放送への愛着=テレビ愛があること語っている。本著はメディア関係者必携の一冊である。(緑風出版2500円)
2015年4月、高市早苗総務大臣は出家詐欺番組を放送したNHKへ行政指導(厳重注意)。同年11月には、一つの番組のみでも政治的に公正と認められない場合があると発言。16年2月には、放送法違反を繰り返した場合、電波法76条に基づき電波停止の可能性があると発言した。
BPOはNHKへの行政指導について、15年11月に公表した意見書の中で、「放送法が保障する『自律』を侵害する行為そのものと言えよう」と厳しく批判。意見書公表の翌日に是枝氏は私見を発表し、放送法は公権力から放送の「表現・報道の自由」を守るためのものであり、公権力が放送を規制するためにあるのではないと指摘した。
さらに10日後に発表した私見では、放送法四条(「政治的な公正」など)が成立した経緯を詳しく検証し、この条文は「法規範」ではなく「倫理規範」であると明確に指摘。さらに16年3月の停波発言を受けて発表した私見では、公権力の誤った法解釈や人々の無理解によって、「放送を守るための放送法が、公権力が放送局を監視するための法律」にされてしまっており、その倒錯した状況を改めなければならないと厳しく指摘した。
映画の製作等で多忙を極める中で、「資料集め及び清書をしてくれた分福のスタッフも呆れています」と言うほど、放送法に関する私見の執筆に熱心に取り組んだ理由について是枝氏は、自分を育ててくれた放送への愛着=テレビ愛があること語っている。本著はメディア関係者必携の一冊である。(緑風出版2500円)