2025年12月06日

【おすすめ本】西方ちひろ『ミャンマー、優しい市民はなぜ武器を手にしたのか』―非暴力から武装闘争へ 苦痛の転換=鈴木 耕(編集者)

 世界はいま、血と殺戮に満ちているとしか言いようがない…。 
 本書はミャンマー軍事政権の下で、市民たちの優しく切ない非暴力抵抗が、ついに武器を手にした闘争へと変貌していく過程を、現地での体験をもとに書き記したもの。軍事独裁政権が持つ悪辣な抑圧と残虐な暴力の凄まじさが際立つ。

 2021年の軍事クーデターは、国民が抱いた民主主義への希望を、卵の殻を踏み潰すようにあっさりと打ち砕いた。民主化のシンボルであったアウンサンスーチー氏は自宅軟禁され、民主選挙の結果は軍靴の下に壊滅した。だがそこから人々の抵抗が始まる。SNSで集まり、鍋を打ち叩いて抵抗の意志を示し、さまざまな手段を使って全国で闘いを繰り広げる。
 
 著者は国際開発の仕事で大都市ヤンゴンに暮らしていたが、銃口と抵抗を目の当たりにした。それを国際社会に伝えるべく、SNSでイラストなども駆使して状況を発信していく。報じられることの少ないミャンマーの市民たちの闘いが、リアルな臨場感を伴って記録される。追いつめられてついに非暴力抵抗から武器を手にした武装闘争へ転換していく若者たちの痛苦な想いが悲しい。

 著者は日本のミャンマーへの関わりにも目を向ける。政府も企業もミャンマー国民よりも軍事政権を優先している現状を厳しく批判する。
 
 この12月には選挙が行われるが、民主的とはとうてい言い難い軍事政権下の偽装選挙だ。やむを得ないとはいえ銃を執った若者たちへの著者の眼差しが切ない。 (集英社 1,800円)  
    
@ミャンマー.jpg
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2025年12月05日

【北海道支部「コメ騒動」講演会】農家に価格保証と所得補償を 食糧安保こそ最大の国防=高田正基

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         久保田 徳二さん(北海道大学客員教授・ジャーナリスト)
 JCJ北海道支部は「コメ騒動と食料安保の行方〜米国産米輸入、備蓄と増産、所得補償は…」と題した講演会を9月6日、札幌市内で開催した。北海道大学客員教授で元北海道新聞編集委員の久田徳二氏が、昨年来のコメ不足と価格高騰の原因や、ぜい弱な食料安全保障の問題点などについてさまざまなデータを示しながら解説した。久田氏は「北海道食といのちの会」会長、JCJ北海道支部運営委員なども務める。講演の要旨を報告する。

需給操作の限界

 「令和のコメ騒動」と言われるコメ不足、価格高騰の原因には@減反のやりすぎA需給操作の限界B農家の疲弊(農家経営の赤字放置)C猛暑による高温障害―がある。
 昨年夏に小売店からコメが消えてからも政府は「不足ではなく不足感だ」「新米が出れば価格は落ち着く」などと言うばかりだった。それでも止まらぬ価格高騰に「随意契約」という強引な手法で備蓄米を放出した。

 政府がようやくコメ不足を認めたのは今年8月。その理由について、外国人訪日客の増加や南海トラフ地震臨時情報による買いだめ、高温障害などを挙げた。2023年産は40万〜50万d、24年産は20万〜30万d不足していたと分析。24年産作況指数は101だったが、実際の収穫は94だったことも認めた。
 だが、こうした政府の説明はコメ不足の真因ではない。根底には減反を長く続け、作付面積が減ったことがある。1968年に1445万dだったコメ生産量は、23年には791万dへと45%も減った。政府は価格形成を市場に任せる一方で、供給過多による価格低下を理由に、農家に生産抑制を求めてきた。しかも供給量予測に不可欠の「作況」の信頼性が薄れた。結局、生産調整の目的だった「価格安定」は成功せず、官僚主導型需給操作の限界を露呈した。

時給わずか97円

 もう一つ、コメ不足の大きな原因が農家の疲弊だ。肥料や農薬、燃料など生産資材価格が高騰する一方で農産物価格が低迷し、作るほど農家の赤字は増加する。22年の農業統計調査によると、稲作農家の時給はたった10円だ。最近の調査でも時給は97円にすぎない。
価格・所得支持政策不備の中で、長期的経営不安が拡大し、稲作農家戸数は1965年の488万戸が2020年には69万戸へと85%減少、水稲耕作面積も280万fから103万fへと63%減少した。農家平均年齢は70歳と、高齢化も著しい。

 ようやく危機感を抱いた政府はコメの増産方針を打ち出したが、疲弊した農家は耕作面積を急には増やせない。転作で畑にしていたり、耕作していなかったりした土地を水田に戻すのも難しい。
 政府は輸出用米には10e当たり4万円の補助金を出している。60`で5千円相当の額だが、これは国内主食用米向けにこそ回すべきだ。
バイオテクノロジーの危うさも指摘しておく。政府は発がん性などが指摘されているゲノム編集(GE)食品5種(トマト、マダイ、トラフグ、トウモロコシ、ヒラメ)の流通届を受理している。GE生物が流通しているのは日本くらいだ。

 重イオンビーム照射米も登場した。DNAを切断・破壊して、突然変異を起こさせるのだが、GE同様に遺伝子を修復不能に破壊する恐れがある。元のコメとの区別ができる表示もないまま、政府や自治体は照射米を拡大普及しようとしている。

増やせ農業予算

 ではコメの増産には何が必要か。それは@減反廃止と生産支援A備蓄の抜本的拡充B価格保証と所得補償C種子生産・供給体制―の四つだ。
減反政策は見直されるようだが、小規模家族農を含む「多様な担い手」の経営が上向くよう、きめ細かい施策が必要だ。
 政府の一般会計総予算に占める農林水産予算の割合は1970年度に11・5%だったが、23年度は1・8%に減っている。26年度の概算要求額は2兆6000億円。これに対し、防衛費は8兆8000億円に上る。

 各国は食料安全保障のためにおカネをかけている。農家の農業所得に占める補助金の割合は、日本が30・2%と、英仏の3分の1。農業生産額に対する農業予算比率も、日本は38・2%で米国の半分に過ぎない。
 緊急時を想定した日本の政府米備蓄量は04年からずっと百万d以下で、普段の全国民の消費20日分程度しかない。これに対し、中国は14億人の胃袋のためコメだけで半年分を備蓄、家畜飼料を含む穀類の買いだめを進め、主要穀物在庫量は、世界の半分を超えたと言われる。日本のコメ備蓄量は国民消費のせめて2カ月分程度(300万d)を目標にすべきだ。

 コメ増産には価格保証が必須だ。農家が安心して生産できる価格を実現する仕組みで、欧米でも手厚く実施されている。
水田の洪水防止機能や水質・土壌浄化機能など、国土や環境を守る役割を評価して所得を補う所得補償も必要だ。補償額が例えば10e当たり2万円なら価格保証と合わせても6000億円前後の予算で済む。食料安保は最重要で最大の国防だ。
 農村現場では「種モミがない」との声がある。昔は農家が自家採種していたが、品質をそろえ、産地形成を進める中で、種子生産を都道府県などに委ねてきた。その公的種子事業を支える種子法が廃止され、事業が縮小されている。種子法を復活させ、主要穀物種子を早急に増産する必要がある。

                「自産自消」で対抗

 コメ価格の上昇に「安い米国産米輸入を増やせばいい」という声もあるが、輸入は国内生産に大打撃を与える。トランプ政権との交渉で「米国産米輸入を75%増やす」と約束したが、そうすれば米国からの輸入量は約60万dになり、国産米を圧迫するのは不可避だ。
ミニマムアクセス(MA、最低輸入量)米は現在年77万dで、日本の生産量の11%に相当し、国内生産基盤を弱体化させてきた。しかし、MAは「輸入の機会を与える枠」(農水相答弁)であり、輸入義務ではない。国内生産を増やしつつMAはなくしたほうがいい。
海外の巨大企業に対抗する食料自給体制を確立しなければならない。世界の食の市場は、種子が3社で50%、農薬が4社で75%、穀物は4社で90%を占める。これに対抗する最強の力は自給であり、最も安心できるのは「自産自消」だ。
私たちにできることがある。農薬と化学肥料を極力避け、植物を植えること、タネをまくこと。畑でもプランターでもいい。1人からでも始めよう。

                危機的な自給率

 世界ではすでに食料危機が始まっている。ウクライナ戦争により農業大国のウクライナからの輸出が止まった。世界の小麦やトウモロコシの価格は、ロシアのウクライナ侵攻から1カ月の間に約20%急騰した。肥料価格も上昇している。価格高騰の背景には巨大な人口を抱える中国の穀物爆買いもある。
 世界各地では土壌の劣化も進んでいる。過度な森林伐採や牧場開発、農薬と化学肥料漬けの工業的農業による砂漠化、塩害、土壌流出などが原因だ。国連環境計画(UNEP)によると、世界の農地土壌面積の38%が劣化。特にアフリカ、南米、東南アジアが激しく、2050年には地球上の土の90%が土壌細菌や土中生物の減少で耕作地としての機能を失うという。
 
 にもかかわらず、日本の食料安保政策は問題だらけだ。食料自給率はカロリーベースでも38%しかない。肉体形成と生命維持に必要なたんぱく質自給率は27%で世界155位。自給率80%の野菜も種子の自給率はわずか10%で種の輸入が絶たれればおしまいだ。
 東大の鈴木宣弘特任教授の試算では、もし肥料や飼料などの輸入が途絶えれば、実質自給率はコメが5%、野菜は3・8%、畜産物やイモ類を合わせても実質自給率は9・2%に落ち込んでしまう。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号 

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2025年12月03日

【25年JCJ賞受賞者スピーチ】特別賞 ガザの今、伝えねば 常軌を逸した非人道行為=萩原 健さん(国境なき医師団)

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 私はモノ書きでもジャーナリストでもない人権運動活動家です。その私が本を書いたのは、国境なき医師団の緊急対応コーディネーターとして昨年、ガザの現場で活動した者として、現地で実際に起きていたことをどうしても伝えなければならないと思ったからです。
その理由の一つは、人々の関心が時間が経つと失われていくことへの危機感です。

 ガザで起きていることはメディアやSNSで瞬時に伝わりますが、そこで起きている一つひとつのが何を意味しているかまでは伝わりません。
 私はこれまでシリアやスーダン、ウクライナなどの紛争地で活動してきました。昨年、ガザは私が訪れた時もイスラエル軍による凄まじい攻撃を受けていました。住民は退避を要求され、日に何度も移動を強いられます。ガザには安全な場所などありません。まばたきをした次の瞬間に、もうこの世にはいなくなってしまう、という現実を私自身が目撃しました。

 水もイスラエルに水源を握られ、海水を淡水化するための装置や給水車が攻撃の対象にされていました。
患者は病院で感染リスクと向き合いながら診療を受け、外はいつ起きてもおかしくない感染のアウトブレイクにさらされています。
 栄養失調や飢餓は、経済、社会、文化や風習、医療の全部を含めた社会システムによって起きる問題です。ガザは今、社会システムのすべてがイスラエルの軍事攻撃で壊されてしまっている状況です。

 ガザで行われているのは、イスラエルによる常軌を逸した非人道的行為の日常化です。それが常態化し普通になるとそれに異を唱える私たち、ガザの外にいる私たちの中には無力感を感じる人たちも出て来ます。その先に待つのは諦めと無関心、そして最終的には完全な無関心と沈黙です。

 私はガザで起きていることを、現場を見た人間が具体性を持って伝えたい。さらに時間をおかずに伝えたいと思い、本を書きました。
 私たち一人ひとりは、立場が違います。できること、できないことも違います。
 しかし今回だけは私の持っている危機感を少しでも多くの人に共有していただきたいと思います。少しでも多くの人たちの眼が、ガザの現状に向かってくれることを切に願ってやみません。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号 
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2025年12月02日

【25年JCJ賞受賞者スピーチ】信頼される報道をする 県警の不祥事隠ぺい追う=前田慎伍さん(鹿児島テレビ放送)

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 鹿児島県警の情報漏洩事件は、私たちが経験したことのない、ありえない状況の連続でした。本来は悪いことをした人を逮捕する警察が、悪事を取り締まる警察官を次々と逮捕するという異例の事態。その逮捕容疑も驚かされました。メディアに情報を流した、という私たちの日ごろの取材行為そのものを取り締まることができるという信じられないものでした。

 さらに逮捕された元生活安全部長は、その動機を「本部長が警察職員の犯罪行為を隠ぺいしようとしたことを許せなかった」と組織のトップを名指しで糾弾しました。本当に驚きました。
 今日ここに参加できなかったプロデューサーの四元良隆からのコメントを代読します。
 今回の一連の問題は警察の組織の問題だけでなく、私たちメディアの在り方が問われた問題になりました。実は今回の事件、鹿児島のメディアではなく、ほかの県のジャーナリストたちに寄せられた情報で発覚したものでした。

 私たちメディアは、地域の人たちに信頼される存在なのか、そんな重い問いかけを突きつけられました。何のために、誰のために私たちは報道しているのか―。ダメな自分たちを認め、地域のメディアの存在意義と向き合いながら、この問題と対峙することになりました。プロデューサー、ディレクター、記者、全員で現場に向かい、一つひとつ悩みながら取材し、繰り返し放送しました。

 ある警察官のインタビューに4カ月もかかりました。鹿児島の人たちに信頼される報道をする、そんな思いで60本を超えるニュースや企画を放送し、ドキュメンタリー番組へと繋げてきました。
 今回、私たちのような小さな報道がこの賞を頂けた意味は、「故郷のためにモノ言うテレビでありなさい」、今回の受賞は、小さな地方局でもジャーナリズムを忘れずに、弱者視点に立って伝えることが大切だと激励を受けたような気がします。これからも南の鹿児島から地域の人々のために頑張りたいと思います]

 元生活安全部長が逮捕されて1年3カ月以上経ちますが、裁判の日程すら出ていない状況です。同部長が行った行為が公益通報なのか否か、元本部長が隠ぺい行為に携わったのかどうか、これからも取材を一つひとつしていきます。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
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2025年12月01日

【月刊マスコミ評・新聞】公明離脱で政局、万博赤字で閉幕=山田 明

 1年前と同じように、自民党の総裁選がマスコミを総動員して繰り広げられた。新しい総裁に高市早苗氏が選出されたが、「アベ政治」への回帰、さらなる右傾化、放漫財政が危惧される。公明が連立を離脱して政局は波乱含みに。

 少数与党で、連立拡大に注目が集まる。高市氏は当初、国民民主に軸足を置いていたが、日本維新の会と連立協議を進める。維新は連立入りを見据えて「副首都構想」骨子案を公表。首都の法的規定もないのに「副首都」法案とは理解に苦しむが、首都機能のバックアップ体制構築などを掲げる。今回の法案には、大都市法による特別区設置を盛り込んだ。大阪市廃止、「大阪都」3度目の挑戦への布石ではないか。連立拡大の動きと「副首都」構想から目が離せない。

 半年間にわたる大阪・関西万博へ。会場は大阪湾の人工島・夢洲で、開幕前からアクセスや公災害など危険が指摘されてきた。夢洲リスクが顕在化したが、なんとか閉幕にこぎつけた。開幕当初は低調な出足だったが、何でもありの集客優先戦略により、後半に盛り返してきた。万博運営費の黒字が喧伝されるが、巨額の会場建設費やインフラ整備など、万博収支全体は「大幅赤字」である。

 夢洲万博は閉幕しても、終わりでない。海外パビリオン工事費の下請け業者への未払い問題は深刻化している。万博協会はもちろん、国や大阪府市の責任が問われる。閉幕後の解体工事も要注意だ。万博跡地開発が検討されているが、さらなる大阪市の財政負担、環境破壊が懸念される。
 朝日新聞9月24日夕刊1面「リングの先にどんな未来が」掲載の写真は、今回の万博を象徴するものだ。酷暑のなか大勢の人が大屋根リングを歩いているが、その先には巨大クレーンが立ち並ぶ。万博会場に隣接した夢洲IRカジノの建設現場である。万博会場が軟弱地盤の埋立地・夢洲になったのは、維新がここにカジノ誘致をめざしたからだ。

 万博とカジノを一体とした夢洲開発は、維新がツ―トップの大阪府市「成長戦略」として強行されてきた。夢洲カジノについては住民訴訟が大阪地裁で係争中である。マスコミもポスト万博の夢洲開発を注視してもらいたい。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号

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2025年11月30日

【お知らせ】消費税減税・インボイス廃止の実現を求める12・3国会集会=インボイス制度の廃止を求める税理士の会

 共闘するインボイス制度を考えるフリーランスの会からお願いです。12月3日(水)、消費税減税とインボイス廃止を求める国会集会を開催します。
 本集会では、インボイス制度の廃止を求める税理士の会による「インボイス廃止法案」の提出を求めるオンライン署名をインボイス問題検討・超党派議連に手交する予定です。
締切は12月1日(月)13時まで。こちらの署名へのご参加・拡散もよろしくお願いいたします。
※仮名OK、団体も署名可能です
【署名はこちらから↓】
forms.gle/Yawp9MkeFLyKcGXs5

11月に入り、政府が「2割特例・8割控除」の延長を検討しているというニュースも出てきています。皆さんの声が、確実に政治を動かしています。インボイス廃止に向けて、さらに声を届けていきましょう。3日のご参加、お待ちしています!

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「消費税減税・インボイス廃止の実現を求める国会集会」
日時:12月3日(水)11:00〜14:30
会場:参議院議員会館 B107
※参議院議員会館前で集会の中継も予定しています
主催:インボイス制度の廃止を求める税理士の会
協力:インボイス制度を考えるフリーランスの会
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2025年11月29日

【支部リポート】東海 戦争への道 止めたい 「沖西ネット」が連続行動=丹原美穂(「沖縄・西日本ネットワーク」事務局)

 進む戦争準備
 今年度の自衛隊と米海兵隊との実働訓練「レゾリュートドラゴン25」が9月11日〜25日、沖縄を中心に北海道や山口、大分、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の各県で行われた。

 今回の想定は島しょ(離島)防衛作戦。自衛隊約1万4千人、米軍約5千人の計1万9千人が参加した過去最大規模の「訓練」には民間空港や民間船舶も利用され、長射程ミサイル配備やオスプレイ、実弾訓練もあり、通信部隊は公園まで利用。市民の暮らしにも大きな影響があった。
 また月が変わった10月の陸・海・空の「自衛隊統合演習」は、日米豪の3カ国が参加して20日〜31日の日程で始まった。宇宙、サイバー空間や電磁波領域の演習も組み込まれ民間空港や港湾が利用されている。
 一方、各地では自衛隊の弾薬庫増設やミサイル配備計画が相次いでいる。

 戦争への道にNO

 戦争への道を拒否するため、JCJも支援する「沖西ネット」の参加団体もそれぞれ各地で「NO」の声を上げている。

 祝園…古都京都・奈良に立地する陸自祝園(ほうその)分屯地には、国内最大規模14棟の大型弾薬庫が増設される。京都府北部の経ケ岬Xバンドレーダー基地、舞鶴海自基地ミサイル搭載イージス艦とつながり京都があらたな軍事拠点と化す。
「京都が危ない!」『私たちは二度と戦争をしたくない!平和でこそ文化の香りは立つ!』と心を一つに10月19日、全国各地から一堂に会し祝園全国集会を開催、大軍拡・戦争準備に反対する声を上げました。

 大分…長射程ミサイル用大型弾薬庫の1棟目の完成が迫る大分分屯地では、保安距離や報復攻撃リスクへの不安をよそに、軍民分離原則違反他で建設が進んでいます。私たちは「戦争はイヤだ!大分連続行動」(11/22総決起集会、12/14現地集会とデモ、基地申し入れ)を行い、軍事力によらない平和的解決を国内外に訴えます。

 熊本…熊本市の健軍駐屯地では、「12式地対艦誘導弾能力向上型」が今年度中に配備される計画が進行しています。

 1000q以上の長射程ミサイルの配備決定に、住民は不安と危機感を抱いています。私たちはさらなる軍拡による戦争準備ではなく、対話や経済外交による、平和と安心の暮らしを守る道を選んでほしいと強く願っています。  
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号 
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2025年11月28日

【25年受賞者スピーチ】核の人間破壊に抗う 記録写真や手記を生かす=水川 恭輔さん(中国新聞)

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 「ヒロシマドキュンメント」は被爆80年に向けて昨年8月から始めました。79年前の同じ日、同じ時期に広島はどんな状況だったかを1945年については12月31日まで毎日報じました。今年は46年以降の状況をたどり、合計で350本以上の記事を掲載しました。

 米軍が投下した原爆のきのこ雲の下、人間たちや広島の街に何が起きたかに記録と証言で迫りました。中国新聞も社員の3分の1にあたる114人が被爆死し、本社は全焼しています。
 企画では45年8月6日に中国新聞のカメラマン、松重美人さんが撮影した写真を起点に朝日、毎日など報道機関が撮った記録写真を活用しました。原爆の写真というと、米軍が核兵器の効果を調べるため、上空から撮ったきのこ雲が教科書などに使われますが、今回は被爆者本人や報道機関などが撮った写真を重点的に取り上げています。

 背景にあるのは危機感です。ロシアのウクライナ侵攻に伴う核の脅しがあり「核のタブーが崩壊しかねない」状況です。被爆者の平均年齢が86歳を超え、証言だけに頼って当時を把握することは困難になっています。

 伝えたかったのは、核の力を誇る国家の視点とは正反対の人間、市民から見た核兵器の実態です。涙に目をくもらせながらシャッターを切った松重カメラマンの写真も含め、未曽有の惨禍を撮影した日本側の写真は3000枚近くになります。旧日本軍の焼却命令、占領軍の提出命令に抗って残されたものも少なくありません。報道制限の中で残された手記や日記、文学もあります。
 韓国をはじめ海外の被爆者や、マーシャル諸島などの核実験被曝者に対する救援、連帯活動も取り上げ、核の人間破壊に抗ってきた市民の歴史に光を当てました。

 壊滅した爆心地一帯の代表的なパノラマ写真を撮った林重男さんは「私たちの写真が永遠に最後にあるように」という言葉を残しています。次の世代が惨禍の実態と人間の営み、格闘を知り、継承していく一助になればと思っています。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号 
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2025年11月27日

【25年JCJ賞受賞者スピーチ】=南京と沖縄つなげる 新しい戦前≠ノはしない 中村 万里子さん(琉球新報社)

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 「新しい戦前≠ノしない」キャンペーンは昨年3月22日、沖縄戦を指揮した第32軍の創設の日に始めました。連載「戦世ぬ沖縄」では日本のアジア侵略と植民地支配の最終局面にあった沖縄戦までを体験者の証言で伝えました。沖縄は加害者にも被害者にもさせられたという内省を踏まえた取り組みです。

 沖縄戦は1945年3月下旬から3か月にわたる激しい地上戦でしたが、日中戦争が沖縄戦にどうつながったのかは、これまで取り上げられなかったテーマです。
 沖縄では「南京・沖縄を結ぶ会」が、中国と市民交流をしようと23年に初めて南京に行きました。沖縄戦を日中戦争から書き起こそうと思い私も、23、24年と同行取材しました。訪中団の参加者は日本兵の子や孫の世代。南京事件があった当時、父親は南京にいたことが軍隊手帳からわかったが、父は何も話さず、ただ中国残留孤児の番組を見ながら「日本軍はひどかったよ」とつぶやいた。そんな背中を見ながら育った方々でした。

 「南京陥落(1937年12月)の時、沖縄でもものすごく祝った」「神社になった首里城で提灯行列があり、日の丸を振って喜んだ」と話した首里の新元貞子さんは、「なんてばかだったのだろう」と振り返りました。
 日中戦争から引き返せなくなり、沖縄の人がどう動員されたか、その構造が見えてきました。
 沖縄戦に備えて1944年、大勢の兵士が中国から転戦して沖縄にきます。そこで彼らが目にしたのは中国と似た沖縄の習慣でした。
 豚を便所で飼い人糞も餌になる。それが重なり、沖縄の人への酷い暴力、差別につながったとの証言もあります。

 米軍の上陸時、第32軍は「沖縄語」をしゃべる人は殺害せよと命令しました。貫かれていたのは差別のまなざしです。
 沖縄戦の最中、3紙統合でできた「沖縄新報」は留魂壕に輪転機を持ち込み、特攻精神を高揚する新聞を発行し、学徒隊や壕内の住民に配りました。先輩たちは「あの時、何で軍の言いなりだったのか」と話しました。
 後悔を2度と繰り返してはいけない。武力によらない平和を願う心を伝え続けたいと思います。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
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2025年11月26日

【おすすめ本】井上 伸』民主主義のためのSNS活用術 連帯と共感のツールとして』―政治や社会を動かす 重要なツールをいかに使うか=矢野 彩子(愛知県医労連書記長) 

 「SNSって炎上が怖いから見ているだけ。投稿しても見てもらえない」と思ってませんか?
著者のSNS投稿は、独自のグラフを用いて説得力があります。筆者の属する愛知県医労連も、を入れるきっかけとなりました。

 選挙の投票に際し何を参考にするか、30代以下ではSNSが65%に上っています(NHK 2025年5月調査)。LIN Eを選挙に使う際も「一方的に情報を送りつける」のでなく、自分の「思い」を添え、相手の感想を一言聞くなど双方向で使うことが大事など、著者の具体的なアドバイスも納得。労働運動や社会活動にSNSを活用し、政治を動かした実例も多数紹介されています。選挙以外でもSNSの重要性がよくわかります。

 SNSをしていると、心ないコメントに心が折れそうになる時もあります。ネット右翼に絡まれて黙っていては相手の思う壺。「相手は私たちを 黙らせたい、発信をやめさせたい一念」と、指摘 する著者の言葉に、これで黙ってしまえば相手の思い通りになると勇気を奮い立たせてくれます。

 主にネット(特にSNS)から情報を得ている若い世代にとって、SNS上にない情報は、存在しないことと一緒なのです。私たちの思いを届けるには、SNSを活用するしかありません。私たちがSNS上で存在感を示さなくては、デマや差別で埋め尽くされてしまいます。
 本書を手に、SNS未経験の方も、ぜひ一歩踏み出してほしいのです。民主的な発信を増やし、SNS上での多数派を目指しましょう。(日本機関紙出版センター 1300円)
          
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2025年11月25日

【焦点】中露蜜月関係*{当か 中国は「敵」とみなす―ロシア内部文書で警戒 米NYT報道=橋詰雅博

 ウクライナに侵略以降、米欧などから経済制裁を受けるロシアを陰に陽に支援する中国。米国への対抗を隠さない両国は蜜月関係≠ニ言われる。11月17日モスクワ訪問中の中国の李強首相とロシアのプーチン大統領の会談でも、中露の貿易協力を引き続き発展させることを確認した。米欧の制裁でロシア産原油輸出先の先細り打開に向けて輸出継続を探る協力を惜しまないと李首相は約束したとされる。ロシアと中国の友好関係は深まる一方で、軍事・経済の協力は黄金時代≠ノ入ったとプーチン氏は公言しているという。

 しかし、ロシアは腹の底では中国を信頼していないどころか「敵」とみなしているというロシアの機密文書を入手した米紙ニューヨーク・タイムズは6月7日付電子版で報じた。NYTと提携する朝日新聞は特集記事翻訳を8月10日付紙面で掲載。それによると、国内治安機関「連邦保安局(FSB)」が2023年から24年初頭にかけて文書を作成されたとみられる。8nの内部文書は、中国情報当局の活動をかつてないほど詳細に明らかにしている。

 具体的には@ロシアの政治権力中枢に近い政府関係者や専門家、ジャーナリスト、ビジネス関係者を取り込む、Aウクライナ侵略で西側と戦うロシアの戦争の実態把握、特にドローン活用法や相手国の新型兵器への対抗情報入手に躍起、B遅れている航空技術を挽回するため軍パイロットや航空流体力学、制御システムなどの研究者に接近、C民間軍事会社ワグネルの戦闘員が持つ経験を自国の軍隊や、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカで活動する民間軍事会社に活用する、D自国の工作員が帰国すると、すぐに、ウソ発見器による検査を実施するほか、中国に滞在の2万人ロシア人学生の監視を強化し、中国人配偶者を持つロシア人をスパイ候補として勧誘―などだ。

 こうしたことからロシア情報機関幹部らは、中国の情報活動を「潜在的な敵」として心に刻み、中国への警戒心は絶対に解かないとしている。
 もちろんロシアも対中国への情報活動を怠っていないはずだ。
 国同士の付き合いは信頼と不信とが混じる、これはいつの世も変わらない。蜜月関係をうのみにしてはならないのだ。



 

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2025年11月24日

花角新潟県知事の判断は県政と日本の原子力エネルギー政策全体に大きな禍根を残す−県民意識調査を検証する−=原子力市民員会

【要約】
新潟県が実施した柏崎刈羽原発の再稼働についての「県民意識調査」は、質問順による回答誘導や誘導的な説明文など、社会調査の手法として避けるべき基本に反している。
そのような誘導にもかかわらず、再稼働へのさまざまな面での懸念を示す回答が多数を占め、再稼働容認が県民の総意であると解釈するのは無理がある。
知事が重視するとした論点も解消されておらず、この調査を根拠とする再稼働容認判断は妥当性および正当性を欠き、県政と日本の原子力政策に重大な禍根を残す。

●新潟県による「県民意識調査」には、質問配置によるキャリーオーバー効果、一面的で誘導的な説明、複数論点を一問に含むダブルバレル質問など、社会調査として看過できない重大な欠陥をはらむ。
●調査結果からは、安全性・防災対策・東京電力への信頼性のいずれも県民の懸念が強く、「再稼働の条件が整っている」との回答は37%に留まる。
●知事が重視するとした「必要性・安全性・東電への信頼」の3論点のうち、少なくとも安全性と信頼性は解消されていない。
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【本文】
2025年11月21日に、花角英世・新潟県知事は東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を容認するとの判断を表明した。知事は、この判断に至る過程で、県内市町村長の意向とともに、県が主催した公聴会と県民意識調査の結果をふまえてきたという。

しかし、2025年9月〜11月に県が実施した「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題に関する県民意識調査」(以下、県民意識調査)には、以下に記すような問題がある。この調査結果とその解釈をもって、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題に関する県民の意識を、実像に迫る形で把握できたとは言い難い。今回の知事の判断は不適切である。

県民意識調査は、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題について、県民の多様な意見を把握するため、地域・年代・性別等の幅広い属性を対象に実施されたもので、県内30市町村の6,000人に調査票を送付した大規模なものである。10月〜11月にはPAZ・UPZ地域を対象とした追加(補足)調査を6,000人に実施した。

県民の意見を広く把握しようとする試みは基本的に歓迎すべきものである。しかし、仮に調査設計が対象者に特定の結論を誘導しかねないものであったり、調査結果が恣意的に解釈されたりするようなことがあれば、その価値はたちまち失墜する。多額の公金を投じる意義も問われ、県民生活の安全を守る県の立場は厳しく問われるであろう。

脱原発をめざす市民や技術者、研究者らによって組織された原子力市民委員会には、社会調査の経験を積んだ社会学者・社会科学者が委員やアドバイザーとして複数参画している。私たちは県が公表している調査票や報告書の内容を精査し、以下の問題点を確認した。新潟県が行った県民意識調査は、社会調査や科学の基本的な作法から逸脱しており、この調査結果から、県民が柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に理解を示しているとは言い難い。知事の判断は、正当性がなく、新潟県にとっても、また日本の原子力エネルギー政策全体にとっても大きな禍根を残すものである。

1.調査票の設計に関する問題
「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題に関する県民の意識調査 調査票」には、以下の問題点がある。なお、調査票は11の大問からなるが、細分化された小問や小項目をカウントすると、調査対象者は総計43の質問に回答するものとなっている。

1.1 前の質問が次の質問に影響を与える「キャリーオーバー効果」を引き起こす配置になっている

調査票は最初の質問(問1)で「柏崎刈羽原子力発電所に限らず、日本における原子力発電所の必要性」について問うている。
この質問の配置は、前の質問の回答が続く質問への回答に影響を与えてしまう「キャリーオーバー効果」を引き起こすおそれがある。具体的に言えば、続く質問で聞かれた柏崎刈羽原子力発電所に関する評価が、日本における原子力発電所の必要性に関する回答と矛盾しないように、一定数の回答者に意識させてしまった可能性がある。

社会調査法に関する教科書の多くで、キャリーオーバー効果は影響を与えそうな質問の順番を変えることで避けられるとしている 。柏崎刈羽原子力発電所という県民意識調査の主題の範疇を超える質問は調査票の終盤にまわすなど、調査票設計上の工夫の余地は十分あった。「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題に関する県民の意識調査」をうたいながら、調査票の冒頭で「日本における原子力発電所の必要性」という、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題の範疇を超える一般論に関する意識を問うたことは社会調査の基本的作法からみて誤りである。

1.2 誘導的な内容が含まれている

問4-2は、柏崎刈羽原子力発電所の「防災対策」に関して、避難計画の策定から防災訓練の実施まで8つの取り組みに対する認知度を問うている。調査票には8つの取り組みに関する補足の情報が各項目の下部に記載されているが、避難計画や避難路の整備、除排雪体制の強化などの内実については、それぞれに多様な評価が存在し、公聴会等においても論点となってきた。にもかかわらず「訓練等を通じて連携を深めています」(項目(3))といった一面的な評価が含まれた説明が施されている点は、調査対象者の意識をある方向へと誘導することにつながりかねない。
続く問4-3では、防災への取り組みの実施度に関する評価を問うており、誘導的な内容を含む質問への回答が、上述したキャリーオーバー効果を引き起こすおそれもある。問3-1と問3-2の関係も同様である。

なお、問4-2には誘導質問となる可能性の他にも問題がある。それは、項目と説明が併記され、説明の情報量が多く複数の論点にまたがるため、回答者は何について「知っている」「知らない」を判断すればよいか、にわかに識別し難い。質問の中に複数の論点や対象を盛り込むことは「ダブルバ−レル」と呼ばれ、一般に避けるべきであることは社会調査の基本的作法である。

2.調査結果の解釈に関する問題

新潟県が公表した報告書の集計結果をそのまま読めば、県が主題とした「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題」に関わるポイントは以下の3点にまとめることができるだろう。

2.1 柏崎刈羽原子力発電所の安全性や防災への取り組みに対する評価は低い

1.で見たように、問1などキャリーオーバー効果が生じているおそれがある、または問4-2など誘導的な内容となっているおそれがある質問を含む調査票で実施された調査にもかかわらず、回答者の多数は、安全性や防災への取り組みに対する懐疑的な意識、または「わからない」とする意識を有していることが明らかである。

例を挙げよう。
・柏崎刈羽原子力発電所で実施されている対策により、安全性が「十分/おおむね確保されている」と回答した県民は44%にとどまる(問3-2)。
・防災への取り組みは「十分/おおむね実施できている」と回答した県民は36%にとどまる(問4-3)。
この結果を、県(ならびに事業者、事業監督者)は重く受けとめなければならない。

2.2 再稼働の条件は現状では整っていない
問5-1は柏崎刈羽原子力発電所6号機・7号機の再稼働に関する考え方を複数例示し、それぞれに同意するかを問うている。同意する(「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の合計)割合の多い順は次の通りであり、使用済核燃料の問題や原子力災害の発生に対する不安感がほとんどの回答者に認識されている。

(12)「使用済核燃料が増えていくことが問題だ」(92%が同意)
(5)「豪雪時に安全に避難/屋内退避できるよう、除雪体制のさらなる整備が必要だ」(同91%)
(10)「原子力災害が発生した場合、風評被害が起きないか心配だ」(同91%)
(11)「原子力災害が発生した場合、十分な補償が受けられるか心配だ」(同91%)
一方で、問5-1において同意する割合の最も少ない考えが、(14)「再稼働の条件は現状で整っている」(同37%)であったという事実を無視してはならない。

2.3 知事が認識する3つの論点のうち、少なくとも2つは解消されていない

加えて、問5-1の結果は次のような内容が含まれている。

(8)「地域経済や雇用に良い影響がある」(同67%)
(9)「自分の住む地域にさらなる具体的なメリットが必要だ」(同69%)

これらの経済的メリットに関する期待や同意は過半を超えている。しかし、花角知事は2024年9月4日の記者会見で、再稼働をめぐる論点は原発の必要性と安全性、東京電力への信頼性の3つであり、経済的メリットはこれら3つの論点とは水準が異なるとの認識を自ら示している 。
東京電力が柏崎刈羽原発を運転することについては、以下のような結果がでている。

(2)「東京電力が柏崎刈羽原子力発電所を運転することは心配だ」(同69%)

知事が認識する3つの論点のうち少なくとも2つ、すなわち原発の安全性と東京電力への信頼性は、解消されていないことが明白である。

3.県民意識調査は、新潟県知事の再稼働容認の根拠にならない

柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題に関わる県民の意識はある程度明確に示されている。とりわけ問5-1(14)において、「再稼働の条件は現状で整っている」との考えに同意する回答者は全体の37%にとどまったことは重大である。

にもかかわらず、報告書では安全対策や防災対策に関する認知度、つまり県民の知識量が増えるほど「再稼働の条件は現状で整っている」と思う割合が高くなる傾向にある(報告書、p.91-92)といった「詳細分析」が繰り返されている。これは人々の科学技術に関する知識の欠如が問題が解決されない原因であるとみなし、知識を増やせば問題が解決するという「欠如モデル」に基づく仮説である。この考え方は、科学技術社会論や科学技術コミュニケーションの領域では、すでに有効性を失っているものである。

県民意識調査の結果は、今般の知事の判断の根拠とはならない。東京電力が柏崎刈羽原発を再稼働することは、新潟県民の意思から乖離しており、許されない。
以上
https://www.ccnejapan.com/statement/19780/
※ 県民意識調査について
・調査票は以下のウェブサイトで確認することができる
新潟県「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題に関する県民意識調査の実施について」(2025年9月3日更新)
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/genshiryoku/kashiwazakikariwa-kenminishikityosa-tyousakaishi.html
・調査結果は以下のウェブサイトで確認することができる
新潟県「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題に関する県民意識調査の結果」(2025年11月11日更新)
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/genshiryoku/kashiwazakikariwa-kenminishikityosa-kekka.html

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2025年11月23日

【おすすめ本】金子 勝『フェイクファシズム 飲み込まれていく日本』―産業の衰退、農業は荒廃etc. <アベノミクス>から脱却を=坂本 充孝(元東京新聞編集委員)

 世界で民主主義と自由主義が揺らいでいる。気鋭の経済学者である著者は、その理由をフェイクファシズムの台頭にあると説く。フェイクファシズムとは何か。独裁的指導者が私利的目的のために使う政治手法で、特徴は3つあるという。
 @山ほど嘘をつくA陰謀論と同情論をまき散らすB「敵友概念」で対立構造をつくる。
 ナチスのファシズムは暴力装置を多用した。だが、最近はSNSを味方にし、フェイクを拡散することで力を得ている。この中心に座るのが、米国トランプ大統領であるというわけだ。

 気を抜けば日本も飲み込まれる。この危機をどう生きればよいのか。ここからが本書の核心といっていいだろう。
 著者が強調するのは、故安倍晋三首相が打ち出した経済政策<アベノミクス>の失敗を認め、脱 却することだ。金融緩和を軸としたこの政策の発動以後、日本の産業はみるみるうちに衰退した。
 特に情報通信技術の分野は世界の水準から取り残されつつある。米国のIT企業群GAFAMの猛攻に圧倒され、太刀打ちすらできない状態になっている。

 こんな愚策が、なぜ続いたのか。理由は安倍政権が構築した「2015年体制」であると、著者 は指摘する。内閣法制局長官、 日銀総裁、NHK会長などを身内で抑え込み、内閣人事局で官僚制を破壊し、電波停止示唆でテレビメディアを萎縮させた。
 批判の声は封じられ、この結果、デフレ脱却は遅れ農村は荒廃。原発は再稼働し国民はマイナ保険証失敗のツケを負う。
 まずは民主主義を立て直さなければ、と著者。そのための知恵が詰まった一冊。(日刊現代 1500円) 
            
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2025年11月22日

【お知らせ】緊急全国署名へのお願い 柏崎刈谷原発 再稼働に反対 第一次締め切り11月30日(日)=国際環境NGO FoE Japan

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 本日、新潟県の花角英世知事が、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の容認を表明しました。12月2日からはじまる県議会での議決を経たのち、国・東電に正式に「地元同意」を伝えるとしています。

 新潟県が実施した県民意識調査では、「再稼働の条件は整っているか」との設問に対し、「そうは思わない」「どちらかといえばそうは思わない」との回答が6割を超えました。市民団体による調査でも、県民の約6割が再稼働に反対の意を示しています。知事や県議会はこうした県民の声を無視するのでしょうか。

 東電福島第一原発事故は終わっていません。多くの人たちが今までの暮らしやコミュニティ、故郷をうばわれました。廃炉の道筋も見えていません。
 東電をめぐっては、隠ぺいや不祥事が多く発生してきました。つい昨日も東電社員が、テロ対策に関わる秘密文書を、必要な手続きを取らずに保管場所から持ち出してコピーしていたことが報じられました。
複合災害時には、住民は避難も屋内退避もできない状況におかれるなど、現在の避難計画は住民を守るものにはなっていません。

 全国緊急署名がはじまりました。一次締め切りは11月30日です。12月1日に新潟県議会に提出予定です。ぜひ、ご署名・拡散いただければ幸いです。

署名はこちらから👉https://c.org/KCQpm82VKv
参考情報👉【Q&A】東電柏崎刈羽原発、知っておきたい14のポイント
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新潟県知事 花角 英世 様
新潟県議会議長 青柳 正司 様
東京電力ホールディングス株式会社 代表執行役社長 小早川 智明 様

柏崎刈羽原発の再稼働について、新潟県が実施した県民アンケートにおいて、「再稼働の条件は整っているか」との設問に対し県民の6割が「そうは思わない」「どちらかといえばそうは思わない」と回答しました。市民団体が実施した調査においても県民の約6割が再稼働に反対の意を示しています。

福島第一原発事故は終わっていません。多くの人たちが今までの暮らしやコミュニティ、故郷を失いました。廃炉作業は遅々として進んでいません。処理汚染水の放出、「復興再生利用」という名で、除染で生じた土の拡散も進められようとしています。

柏崎刈羽原発では、核防護上の不祥事による運転停止が解けてからもトラブルが絶えません。この8月には、再稼働予定の6号機で制御棒1本が引き抜けないトラブルが発生していますが、原因は未解明なままです。東電に原発運転の資格はありません。

避難計画の実効性は確認されていません。集落が孤立し、避難も屋内退避もできない状況が生じるといった能登半島地震の教訓は反映されていません。柏崎刈羽原発は豪雪地帯に立地していますが、即時避難が必要な5キロ圏でも、大雪後の除雪等で避難できない場合は自宅等への屋内退避となり、大量の被ばくが避けられません。5キロ以遠でも屋内退避の継続が優先され、被ばくをさせてでも避難させない計画になっています。

柏崎刈羽原発は、東北地方の日本海沿岸および日本海から信州・北陸に至る活断層帯の真っただ中に位置しています。日本海側の海域活断層の長期評価に関する審査は継続中です。2007年の中越沖地震(M6.8)では設計の想定を超える揺れにおそわれました。再び想定外の地震におそわれる懸念はぬぐえません。

原発の稼働によって生み出される高レベル放射性廃棄物の処分も決まっていません。原発の再稼働は「核のごみ」を増やすだけです。

東電原発事故がそうであったように、原発事故の影響は全国に及びます。柏崎刈羽原発の電気は首都圏に送られますが、そのために多くの人を不安と恐怖に陥れることはゆるされません。全国から声を届けます。私たちは柏崎刈羽原発の再稼働に反対します。柏崎刈羽原発の再稼働に同意しないでください。再稼働をやめてください。

署名呼びかけ団体:
原子力規制を監視する市民の会
規制庁・規制委員会を監視する新潟の会
ひだんれん/原発事故被害者団体連絡会
脱原発福島ネットワーク
原発を考える品川の女たち
国際環境NGO FoE Japan
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