2025年03月01日

【出版トピックス】コミック市場好調、フリーランス春闘宣言=出版部会

◆24年コミック市場7043億
 出版科学研究所の発表によると、標記の金額は電子コミックが牽引し、1・5%増と7年連続のプラス成長となった。内訳は、紙のコミックス1472億円(同8.6%減)、紙のコミック誌が449億円(同9.7%減)、この2部門を合わせた推定販売金額が1921億円(同8.8%減)となる。3年連続の大幅マイナス。
 一方、電子コミックは5122億円(同6.0%増)で、コミック市場での占有率は72.7%となる。コロナ禍前の19年からは、ほぼ倍増している。電子書店の積極的な広告出稿やキャンペーンが功を奏しているといわれる。映像化作品だけでなく、独占先行配信・ストアオリジナル作品などが牽引している。
 なお、同研究所による紙のコミック推定販売金額は取次ルートのみであり、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。また、電子コミックの市場推計は定額読み放題を含む「読者が支払った金額の推計」で、広告収入や電子図書館向けは含まれない。

◆遠隔複写サービス開始
 料金は、資料の種類や複写方法別に規定した「複写物の作成に要する費用」と、図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)ホームページで公開されている「図書館等公衆送信補償金規程」に規定された「著作権者に支払う補償金に相当する額」を合算したもの。
 SARLIBは1月22日、図書館等公衆送信サービスを実施する「特定図書館」の登録受付を開始。2月13日現在、国立国会図書館や大学図書館など約10館が登録されている。
 費用の見積もりが画面上に表示され、本体価格3200円の本を15ページPDFダウンロードで複写してもらうと、推定金額が2700〜3509円と出るそうです。郵送受取の額も同時に表示され、その場で郵送に切り替えることも可能。

◆講談社は減収減益
 売上高1710億3800万円(前年比0.6%減)。営業利益108億円(同24.6%減)、経常利益143億円(同16.3%減)、当期純利益93億7000万円(同17.9%減)。9年ぶりに減収減益に。
 マンガで累計4000万部の「ブルーロック」や「WIND BREAKER」など、映像化作品が好調だったものの、マンガ「東京卍リベンジャーズ」の好調が続いた前期に比べれば売上高が減ったほか、紙など原材料費や輸送費の負担に加え、グローバル戦略を見据えた海外への投資がかさんだ。
 役員人事では、金丸徳雄、古川公平、白石光行の3氏が退任。金丸氏は最高顧問、古川氏と白石氏が顧問に就いた。新任はなし。機構改編については、役員直轄業務改革部を社長室に移管した。

◆新聞発行部数減少続く
 新聞のABC部数(2024年12月度)が明らかになった。各社とも部数減に歯止めがかからない。この1年間で朝日新聞は約20万部、読売新聞は約37万部も減らした。中央紙のABC部数は次の通り。
朝日新聞:3,309,247(-200,134)
毎日新聞:1,349,731(-245,738)
読売新聞:5,697,385(-365,748)
日経新聞:1,338,314(-70,833)
産経新聞: 822,272(-63,548)
 なおABC部数には、「押し紙」(販促用の部数)が含まれているので、新聞販売店が実際に配達している部数とは異なる。新聞社によって「押し紙」の割合は異なるが、おおよそ販売店に搬入される新聞の3割ほどが「押し紙」といわれるである。従って実際の配達部数は、ABC部数よりも遥かに少ないと推測される。

◆10%増額要求へ
 コンテンツ産業を支える創作活動の従事者からすべてのみなさんへ
 紙と電子とを問わず、文字、ビジュアル情報に日々接する読者、ユーザーのみなさん、そしてそれを創り出す仕事に勤しんでいるみなさん、表現の現場で働くみなさん、業界のみなさん、経営者のみなさん、すべてのみなさんに訴えます。
 私たち出版ネッツは、成果物の正当な対価がフリーランスにも還元される春闘をと、22年以来、フリーランスの春闘宣言を発し、前世紀からずっと据え置かれたままの報酬の、10%アップに取り組んでいます。
 この業界に働く、私たちのようなフリーランスの編集者、ライター、カメラマン、デザイナー、イラストレーター、校正者だけでなく、著名な作家、文筆家、ジャーナリスト、脚本家など、技術を伴う創作活動の従事者、文字情報作成従事者、クリエーターの多くが、紙とデジタルとを問わず、実に低廉な報酬、前世紀から据え置かれた報酬で仕事をしています。3日間かかる仕事が2万円、またはそれ以下では、生活していけません。
 出版社、コンテンツ・プロバイダー、取次、書店だけが産業ではありません。産業の要請によって輩出され、業界をかたち作っているフリーランスは、コンテンツ産業そのものでもあります。このクリエイティブワークが、替えのきく仕事として軽んじられる業界のままでは、次世代への継承もままなりません。仕事をして生活するという、労働者としての当たり前の循環が危機に瀕しています。創造の源泉である報酬の充実は、どうしても必要です。
 「安い日本」という呪縛から抜け出せていない経済に、毎年数%ずつ上昇する物価高騰が追い打ちをかけ、一昨年から始まったインボイス制度が混乱をもたらしています。インボイス制度によって、大半のフリーランスは減収となり、膨大な事務負担に直面しています。誰も得をしない、誰も幸せにしない制度です。
 昨年11月、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。462万人と言われるフリーランスを、取引適正化で保護しようというものですが、生身の働き手である私たちは、さらに労働法制による保護を求めるものです。
 出版産業がコンテンツ・ビジネスへと変容を遂げていく産業状況にあっても、文字情報、ビジュアル情報は、商品であると同時に、文化的で普遍的な価値を持つものです。一方で、何年も何十年もフリーランスの報酬が据え置かれ、クリエイティブワークをコストと見立て、安さにのみ価値を見出すような、働き手を尊ばない産業は必ず衰退します。
 この春闘=春季生活闘争の期間を通じて、多くの企業が賃金アップを実施します。急速な人口減、粘着する人手不足、人材流出の危機感から、政府、財界までもが賃上げに取り組む今、フリーランスを含めたすべての働く者の報酬アップは社会的課題と言えるのではないでしょうか。
 創造の成果を世に問い、知的生産に向き合う、すべてのみなさんに改めて訴えます。フリーランスの報酬を、10%増額してください。雇用労働者だけでなく、フリーランスにも生活給を保障してください。
 フリーランサーは、この宣言を仕事先に示して報酬アップを交渉して下さい。69年目を迎える春闘の果実が、フリーランスにも届く春となることを、すべてのみなさんに訴えます。                                             
ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)
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2025年02月28日

【おすすめ本】河原 仁志『異端 記者たちはなぜそれを書いたか』―スクープを検証する勇気 読者が知るべきことを報じる=谷 定文(公益財団法人ニッポンドットコム顧問)

 新聞の「常識」から外れた、「異端」の記者と編集者の苦悩を鮮やかに描いた。取り上げたのは福岡、沖縄、秋田、岩手、兵庫、広島に本社を置く6地方紙と朝日新聞。新聞協会賞に輝いた記事もあるが、成功譚ではない。

 西日本新聞の章を紹介しよう。1992年2月、福岡県内の山中で小学生の女児2人が絞殺体で発見された。同紙は8月、「重要参考人浮かぶ DNA鑑定で判明」とスクープ、さらに福岡県警が2年後の94年9月にその男性参考人を逮捕する前日にも特報した。その後、男は死刑が確定し、2008年10月に執行された。

 物語は9年もたった17年、事件当時の報道に関わった記者の一人が取締役編集局長に就任して動き出す。彼は、逮捕の決め手となった当時最新だったDNA鑑定の証拠能力が08年に否定され、悔恨にも似た気持ちを引きずっていた。冤罪だったのではないかと。そして、既に確定した裁判を検証する企画記事の連載を提案したのだ。

 それは、自らのスクープの否定を意味する。当然、社内の反発は強かったのだが―。
「異端」は「正統」の作法を逸脱していると批判される。しかし、本書に登場する記者たちこそ、むしろ正統なのではないか。そこにあるのは、読者が知りたいこと、知るべきことを伝えたいという一念。SNS上にフェイクニュースがあふれ、既存メディアの信頼が揺らいでいる今、著者は「読者に対して誠実に」という原点の必要性を訴えたかったのだろう。(旬報社1700円)
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2025年02月27日

【オピニオン】その場しのぎの公選法改正論議、選挙の本質を黙殺=木下寿国(ライター)

 公職選挙法改正案が国会に提出された。背景には昨春行われた東京15区衆院補選以降における選挙の混乱がある。だが議論の成り行きを見ていると、その内容がどうも本質からずれているような気がしてならない。

 補選やその後の都知事選、兵庫県知事選で何が起きたのかは、ここでは繰り返さない。しかし、法令に書いてなければ何をやってもオーライという風潮がまん延したことは、だれもが感じているところではないか。そこから公選法の見直しを、という声が出てくるのは当然でもあろう。
 だが今のところ、国会で出てきているのは風俗店広告などの営業目的のポスターを掲示してはならない、女性がほぼ全裸になっているような品位を損なうポスターを掲示してはならないなどで、もっと大事だと思われるSNSによる誹謗中傷や「2馬力選挙」に関しては、今後の検討課題となっているようだ。いかにも中途半端だし、対症療法にとどまっているように見える。

 そもそも筆者が選挙法っておかしいんじゃないのと最初に感じたのは、振り返ってみれば、大学を卒業して間もなくのころだった。東京銀座辺りのデモ行進で「平和を」とコールしていたら、通行人から「何を言っているんだ。日本はいま平和じゃないか」というような声が聞こえてきた。本当はもっと具体的なことを訴えたかったのだが、選挙期間中はダメだということのようだった。不自由なものだと思った。抽象的にしか口に出せないから、気持ちをはっきり伝えられず、はがゆい思いをしたことをいまでも覚えている。

 公選法で本当によくわからないのは、戸別訪問の禁止だ。それをして支持を訴えると有権者の投票の自由を奪うことになるらしい。しかし自宅などに来た人に投票を依頼したり、知人などに電話掛けしたりすることはオーケイなのだ。両者の間になにか決定的な質の違いでもあるというのだろうか。
 要するに、これは運動する側の“足”の有無にかかわることなのだろうと理解している。昔から草の根運動が得意なのは公明党や共産党ということに決まっている。戸別訪問も可ということになれば、地域をこまめに回る気もなくそんな部隊もない自民党などには圧倒的に不利になるだろう。だから、というわけだ。

 選挙プランナーの大濱崎卓真氏は「戦後政治のほとんどの期間、自民党が与党です。そのため、選挙のルールも、自民党の思惑と密接に関係していると私は見ています」(「『コンテンツ化』した選挙を考える 普通選挙法100年の現在と未来」朝日新聞デジタル2・4、14:00)と述べている。公選法改正のこれまでの動きには野党の協力もあったという学者の指摘もあるが、基本的には与党・自民党の思惑や都合が反映されてきたのだろうと考えている。

 選挙運動期間が公選法制定時の30日から9回の改正を経て12日(衆議員)と三分の一強まで短縮されてきたのは、金と労力を節約するため選挙運動をさっさと切り上げたい与党側の意識の露骨な表れとしか思えない。そんなに短い期間で、有権者は複雑な国政の何を理解できるというのだろうか。立候補者はといえば、いきおい名前を連呼するしかなくなる。

 昨年の総選挙で弊害が目立ったのは、投票権の問題だったろう。地震で被害を受けた能登半島やその他の地方では、投票所が減らされたり投票時間の終わりが繰り上げられたりした。能登では投票に行くこと自体が難しい被災者もいたといわれる。にもかかわらず選挙は強行され、関係者の人手不足を理由に有権者の投票権が事実上制限される事態に追い込まれたのだ。筆者は、これはたいへんなことになりそうだと感じていたが、終わってみればほとんど問題にもされなかった。

 いまの公選法をめぐる議論を眺めていると、表面的な部分をなぞっているだけのような気がする。問題は、ネットにかかわるものだけではない。立候補者がさまざまな政治課題を訴え有権者にじっくり判断してもらう、投票権を確保する、言い換えれば有権者に真の意味で政治に参加してもらうといった本質的な側面があまりにも軽んじられているのではないか。選挙本来の役割や機能を深めていくための議論がなおざりにされたままなのだ。いや、むしろその正反対に進んできたようにさえ見える。
                         
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2025年02月26日

【日本被団協】いまこそ核兵器廃絶へ= 田中田中熙巳さんメッセージ

            
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 人類への大きな貢献と世界の平和を目指して、制定されたノーベル賞の2024年度の平和賞に、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が選ばれた。12月の授賞式には、日本から多数の被爆者と支援団体の人々が参加、核廃絶の早急の実現を訴えた。授賞式で受賞演説をした、代表委員の一人、田中熙巳(てるみ)さんに、受賞をどう受け止めたか、忙しさを押してメッセージを寄せてもらった。 編集部

 昨2024年10月11日夕、私たち日本被団協の役員の誰もが全く思いもかけていなかった「二ホンヒダンキョウ」へのノーベル平和賞授賞のニュースが流れた。当日まで開かれていた中央行動を無事終え、帰宅中の路上や車中で授賞を知った者も少なくない。私も自宅近くの路上で電話を受け一瞬耳を疑った。
 事実は動かしがたい。帰宅を待ち受けていたのは報道各社の取材陣で、門外で取材を受けたが、記者から見せられたテレビは、体調不良で広島にいた箕牧代表委員が一人対応していた。

 実は、私たち日本被団協の役員たちは、2017年のノーベル平和賞が、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与されたとき、それまで度々有力候補と報道されていた日本被団協の名前が全く挙げられなかったことで、NATO加盟国ノルウェーのノーベル委員会には、米国が投下した原爆の被害者団体の日本被団協に授賞することに、何らかの政治的なためらいがあるに違いない、と詮索していた。だから、私たちにとって、授賞はまさに「青天の霹靂」というのがふさわしかった。

「核超大国のロシアが隣国のウクライナに侵攻し、あからさまな核兵器使用の威嚇で戦闘を長引かせている。中東ではイスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区への徹底破壊を行い、多くの子供を含む市民に死傷者を出し続けている。また、核兵器不拡散条約国に参加していない核保有国の政府要人が核兵器の使用について広言した。広島、長崎以来80年、核兵器を使用させなかった障壁の高さを低くする危険な核兵器を巡る国際情勢に、ノルウェーのノーベル委員会も黙示できないとの英断があったのに違いない」―。

 私は野外での記者団の質問にこう答えた。
とはいえ、1985年に初めて受賞候補に挙がり、その後も何度か期待しては諦め、そのうえで実現したノーベル平和賞である。受賞の喜びがじわじわと身体を熱くした。
とくに、嬉しかったのは、そのあと、ニュースの映像、新聞の記事などで確認できたノーベル賞委員会・委員長の簡潔で明確な授賞理由の詳細だった。
 委員長による日本被団協の組織と運動とその成果についての具体的でかつ正確な紹介は、その認識に感動さえ覚えた。
委員長はその短い言葉の中で、「核のタブ」(タブー)という言葉を3回も使った。私は、その新鮮さと、日本の言葉としても使える含意に委員会の工夫があったのか、と思いを巡らせた。

 21分にわたる代表委員としての私の受賞講演は、感動と好意をもって受け止められた。私も多くの被爆者も、残り少ない草の根の証言活動に、精一杯頑張ろうとの決意を促されている。
 同時に、忘れられないのは、受賞を一緒に分かち合うことのできなかった多くの仲間のことだ。今回の受賞は、彼らが残してきたものを、次の世代の世界中の人々と生かして、核兵器のない、戦争もない世界を世界のすべての人々と速やかに作り出さなければ、との決意を呼び起こしている。

 ノーベル賞委員会のヨルゲン・フリードネス委員長は授賞発表時39歳。授賞式典は40歳で迎えた。その推挙の言葉、授賞式での格調高い講演はノーベル平和賞の歴史に深く刻まれるに違いない。
 委員長は、全ての報道機関が紹介した通り、「核のタブー」という言葉に光を当て、原爆被害者たちが体験の証言をとおして粘り強く訴えてきたこと。草の根の活動で、核兵器の使用の非道徳性、非人道性を深く刻みこんできたことを強調し、たゆまぬ運動で築き上げてきたこの言葉の重要性を強調した。そして、一国の首脳の威嚇の言葉として「核の使用」が軽々しく多用されることで、そのバリアーが限りなく低められ、実際に使われるという危機感を強くした。

 盟国アメリカに対する気兼ねなどしている余裕はもはやない、と判断したに違いない。あるいは議会の構成の変化がノーベル委員会の人選で大幅な変化があったのかもしれない。 
 被爆者は年々高齢化し、原爆被害者の「自らの声を通して、核兵器も戦争もない世界の実現を強く訴えることのできる最後の年になるかもしれない」との思いも強い。

 いまこそ、私たちは被ばく80周年を前にしたこの判断を全面的に生かし核兵器禁止条約の一層の普遍化と核兵器廃絶への世界の世論形成、強化を急がなければない。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号

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2025年02月25日

【JCJ12月集会】栗原氏講演 戦争は80年続行中だ 藤森氏 権力との対峙崩さず 中村氏 「報道愛国」か=古川英一

JCJ12月集会、約80人の方々が参加した(12月22日、東京しごとセンター講堂) 4.jpg


「メディアは8月に集中して戦争体験などを取り上げるが、戦闘は終わっても戦争の被害は続いている。広義の戦争は未完だ」毎日新聞記者の栗原俊雄さんが強い口調で訴えた。
 JCJの12月集会は、太平洋戦争が始まった12月にちなみ「なぜ戦争を止められなかったか」をテーマに暮れの22日に東京で開かれた。講演に立った栗原さんは20年近く戦争や戦後補償の問題などの取材を続けている。
 
 講演では、明治憲法体制には、首相が軍部を抑えることができずシビリアンコントロールが効かなかったシステムエラーがあったこと。軍部は願望の上に空想を載せた終戦構想しか持っていなかったこと。さらに総力戦になったらどのくらいの被害を受けるのか誰も想像できなかったことをあげ「もしメディアが政府・軍部の嘘やインチキを暴いていたら国民の世論も違っていたのではないか」と指摘した。だからこそ戦争を防ぐためには「メディアは戦争被害の実態を具体的な例で伝えていき、市民は政府に対して戦争が起きた場合にどのような被害があるのかを算定させて明らかにさせることが必要だ」と述べた。
24年12月22日・JCJ12月集会の写真 1.jpg

 続いて共にJCJの代表委員で、元朝日新聞論説委員の藤森研さんと、フォトジャーナリストの中村悟郎さんが加わりシンポジウムが行われた。
 問題提起のなかで、藤森さんは新聞が戦争を止めることができなかった分岐点は満州事変にあり、その時「普選と軍縮」を唱えた朝日などが軍事行動の追認へと社論を転換したこと、絶対天皇制や、右翼・軍の圧迫、国民から孤立する恐怖などが臨界達したことが要因。では戦後の今はどうか「記事で『わが国』と書くように「権力への姿勢は変わったのだろうか」とメディアへの疑問を呈した。

 一方、中村さんは戦後中国からの引き揚げの際に軍は真っ先に逃走して国民を守らなかったと、引き揚げ体験を語った。また自身も取材したベトナム戦争は、メディアがアメリカの世論を動かしたが、多くのジャーナリストが命を落とし、その半数近くの17人が日本人だったことを挙げた。一方で大手メディアの幹部が政府の委員になるなど戦前の「報道愛国」の現代版が進んでいると危機感を示した。
 
 今も世界ではウクライナやガザで戦闘が続き、日本政府は中国への脅威を煽り軍拡へとひた走る。こうした状況に、栗原さんは「8月だけでなく、『常夏記者』として取材を続けていきたい」と決意を述べた。
 藤森さんは「記者同士、メディア同士、そして国際間で共同、連帯していければ」と語った。そして中村さんは「自衛隊は基地内にシェルターを作っている。でも住民にシェルターはない。ではどこに逃げればいいのだろう」と疑問を投げかけた。
 最後にJCJは集会アピールで「過去から学び、二度と戦争への道に踏み込んではならない、そのために、私たちが、日常の中でできることは何なのか」と問いかけた。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
       
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2025年02月24日

【イベント】いつまで米兵犯罪をみすごすのか 沖縄で抗議の県民大会 148団体 世代超えた怒り=JCJ沖縄

 昨年12月22日、沖縄県の沖縄市民会館大ホールで「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会」が開催された。
 23年12月に起きた、16歳未満の少女が米兵に誘拐され性的暴行を受けた事件から1年、政府と司法当局の半年間の隠ぺい後に発覚してから半年で、年末の寒い時期に屋内開催となった。2500人超が集まり、宮古島市、石垣市、名護市のサテライト会場から大会を見守る人や、オンライン参加もあった。呼応して東京、大阪でも集会やデモ行進が行われた。

 大会決議では@被害者への謝罪と丁寧な精神的ケアおよび完全な補償を行うこと、A被害者のプライバシーの保護と二次被害の防止を徹底すること、B事件発生時の県・市町村など自治体への速やかな情報提供を確実に行うこと、C米軍構成員などを特権的に扱う日米地位協定の抜本的改定を行うこと――の4項目を要求した。
 今回は、過去の県民大会以上に若者の発言が重みを持って受け止められた。
 東京の大学に通う崎浜空音さんは「東京にいて、米兵に襲われることを恐れたことは一度もなかった」と沖縄の日常の異常性を訴えた。そして、16年に、米軍属による女性暴行殺人事件に抗議する県民大会に参加したことを振り返り「また数年後に中高生の子たちをここに立たせてしまうのか。これで最後の大会にしたい」と訴えた。

 沖縄平和ゼミナールの高校生たちのメッセージも、高校生自身の声で会場に流された。「繰り返される米軍の犯罪をいつまで見過ごすのですか」と日本政府の不作為を糾弾し、「誰かの犠牲によって成り立つ平和は本当の平和ではない」と訴えた。

 1995年の女子小学生が被害にあった事件で県民大会があってから30年になろうとしているのに、変わらない現状を訴える発言も多く、世代を超えた怒りと悔しさが共有された。
 今回、21の女性団体が加盟する女団協(県女性団体連絡協議会)が再三、県議会に県民大会開催要請をしたが、自民会派などは「県議会として全会一致で決議し政府・米軍に抗議と要請をしたことで役割を果たした」と応じなかった。結局、女性団体主導で148の賛同団体による実行委員会主催の開催となった。

 大会の9日前には、米兵の刑事裁判の一審判決があった。被告の米兵は少女が18歳だと思っていたとして無罪を主張していたが、懲役5年(求刑7年)が言い渡された。被告はすぐ控訴した。日米両政府も謝罪をしていない。
 大会からわずか17日後の1月8日、不同意性交致傷疑いで米海兵隊員が書類送検された。事件は昨年11月に起きていた。県民は再び衝撃を受けている。

 一連の米兵事件も県民大会も、全国的な報道は弱い。主要メディアには、悲劇が繰り返された責任は、沖縄に米軍基地を押し付けている日本全体にあるという認識が乏しいと言わざるを得ない。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
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2025年02月23日

【寄稿】沖縄戦後80年 ジャーナリストの「立ち位置」 国家への抵抗力を築けたか 戦争・日本・基地と人権から考える=諸見里 道浩

                  
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 戦後80年のメディアについて、沖縄の出来事から考えてみます。戦争(沖縄戦)・日本(祖国復帰)・基地と人権(少女暴行事件)の3つのことがらを柱に。
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米兵による少女暴行事件に抗議する県民大会を報じる2024年12月23日付の沖縄タイムスと琉球新報

基点はナショナリズムへの抵抗力
 「一人十殺」。沖縄に配備された32軍参謀長の談話が1945年1月の沖縄新報に載っている。2月の社説は「皇土」を守るため「一人十殺の必殺/これが県民の絶対的使命」とこたえている。翌月、沖縄戦がはじまる。
 沖縄新報の記者たちは戦後の48年、沖縄タイムスを創刊、翌年に住民の証言取材に取り組み『沖縄戦記・鉄の暴風』を発刊する。弾雨の中、生死の境をさまよう住民と兵士を克明にたどり、戦(いくさ)の実態を描いている。
 私は混乱期の取材力に驚きつつも戸惑いをおぼえた。
 米軍におびえ病で任を解かれた司令官、大空襲の前夜に宴を開き「不覚の朝」を迎えた軍幹部、自棄的な将兵、防空訓練を拒む者を国賊とする住民たち…沖縄戦前夜もくわしく、記者の確かな視線がうかがえる。これら戦時下の取材が紙面になることはほぼなかった。
 戦後、記者たちは戦争を否定し米軍政に異を唱える新聞をつくり、私たちはその延長にいる。いま確認すべきは、国家と一体となり住民を煽(あお)り事実を書かなかったジャーナリズムの時代があったことだ。
 戦後80年、「戦前」のきな臭さが漂う。米軍にくわえ自衛隊基地が増強され、メディアは安易に「有事」をつかう。私たちはナショナリズムや国家への抵抗力を築いてきたのか、という自問からはじめたい。

復帰という新たな差別と疎外
 51年のサンフランシスコ講和条約は日本の独立を祝すものだった。同日に締結された日米安保条約は沖縄の米軍基地を前提とし、天皇メッセージは「沖縄の長期リース」を米国へ伝えていた。一方で蚊帳の外の住民は日本復帰を願い、沖縄タイムスも米軍政下で復帰論をかかげた。
 施政権返還を決めた69年11月の佐藤・ニクソン日米首脳会談。社説は「万歳を叫ぶほどの感慨はむろんない」と率直だ。日本の戦後を安保強化、自衛隊増強ととらえ「(平和)憲法体制の否定の歴史であった」。その日本へ帰ることに「新たな差別と疎外が待ち構えている」と書かざるをえなかった。この苦渋の論調も私たちは引き継いでいる。

沖縄メディアが学んだこと
 「軍隊は女性の人権を脅かす」ことを沖縄メディアは新たに学んだ。
 戦後50年の95年、米兵三人による少女暴行事件は起きた。沖縄社会は「少女の尊厳を守れない」悔いと憤りに満ちた。抗議の中心は女性たちで、報道に対して「セカンドレイプ」にならぬよう強く求めた。普天間基地返還と辺野古新基地建設という新たな基地問題のはじまりでもあった 
 米兵による性犯罪は現在も日常的に続いている。
 2024年も暮れの12月22日、米兵による16歳少女の誘拐と性的暴行事件に抗議する県民大会は女性団体が主導した。大学生は「なぜ沖縄に生まれ、基地があるからといって青春を奪われなければならないのか」と訴えた。発生から約半年、外務省、県警は事件を伏せた。「性暴力は権力差のあるところで起きる」と記事は伝える。

30年で進んだ「民意徹底無視」
 12月28日、辺野古の海で軟弱地盤の改良工事がはじまった。恒例のごとく年の瀬に基地政策は進む。政府はこの30年で民意を徹底して無視するようになった。
沖縄タイムスは「復帰運動の機関紙」といわれ、現在も「偏向新聞」と名指しされることがある。筑紫哲也氏は著書『旅の途中』で米軍政下の先輩記者の言葉を紹介している。 
 権力を持つ統治者と基本的な権利を奪われた被統治者を平等に扱うことが公正なのか。「弱い側の立場に新聞が立つことが、不均衡を少しでも改めることに役立てば、それが公正というものではないか」
 冒頭にあげた「一人十殺」の社説を書いただろう記者の、戦後のジャーナリストとしての立ち位置だった。
                          
◆略歴 諸見里 道浩(もろみざと・みちひろ)
1951年那覇市生まれ。74年沖縄タイムス入社、元論説委員長、編集局長、専務。著書『新聞が見つめた沖縄』(沖縄タイムス社)など。沖縄対外問題研究会会員、JCJ沖縄顧問
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
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2025年02月22日

【おすすめ本】木原育子『服罪 無期判決を受けたある男の記録』─35年服役してきた男、彼はどう生き直したか=坂本充孝(ジャーナリスト)

 二人の命を奪う事件を起し、35年間も服役した男性と出会い、「社会のために、ぜひ僕の話を聞いてほしい」との願いを受け、語られた男の人生に著者は息を呑んだ。そこから紡ぎだされた記録が本書である。
 男は北海道の漁村に生まれ、アイヌの血を引いているため、差別と貧困に苦しんだ。さらに不仲だった兄が殺され、犯罪被害者の身内となる。落胆した母は病死し、この理不尽な日々を歯ぎしりしながら過ごしてきた。
 町を彷徨するうちに覚せい剤に手を出し、やがて前後不覚の状態で、名も知らぬ二人を殺害してしまう。

 ここから35年の獄中生活が始まった。塀の中にあっても差別やいじめがあり、社会のねじれや歪みに思いを巡らすようになった。生きなおしたいと渇望し、模範囚となるよう勤めてきた。その結果、無期懲役囚としては、極めて異例の仮釈放を勝ち取った。
 著者が男性と出会ったのは、刑務所関連のイベント会場だったという。著者は現役の新聞記者でありながら、社会福祉士の資格を持ち、ソーシャルワーカーとしても活動している。最初の関心は男が罪を犯すまでに、福祉関係者と連絡が取れなかったのか。日本の福祉行政の是弱性が気になっていたからだ。
 そして次第に「悲しい事件を、悲しい被害者を二度と生み出さないために」「教訓は社会で共有していいのではないか」との思いに行きつく。まさに新聞記者の視点だ。
 著者は長くアイヌ民族の差別問題も取材してきた。常に社会の片隅に生きる人々を見据える姿勢が結実した一冊。(論創社1800円)
     
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2025年02月20日

【出版界の動き】2月:書店の活性化に向けた多様な取り組み=出版部会

◆アマゾン日本売上高は約4.1兆
 2024年アマゾン日本事業の売上高(ドルベース)は、274億100万ドル(約4.1兆円・前期比5.4%増)となった。2ケタ増収は2016年から2021年まで続いたが、直近3年は1ケタ増収にとどまっている。全売上高に占める日本の割合は4.3%、2023年比で0.2ポイント減った。世界各国の24年売上高は以下の通り。
アメリカ → 4380億1500万ドル(前期比10.7%増)
ドイツ → 408億5600万ドル(同8.7%増)
イギリス → 378億5500万ドル(同12.7%増)
日本 → 274億100万ドル(同5.4%増)
その他 → 938億3200万ドル(同14.5%増)

◆読売・講談社共同提言
 読売新聞グループ本社と講談社は2月7日、全国各地で書店が衰退し、無書店エリアが拡大している現状に歯止めをかけたいと、書店の活性化へ向けた共同提言を発表した。その内容は、1. キャッシュレス負担軽減 2. ICタグで書店のDX化 3. 書店と図書館の連携 4. 新規書店が出やすい環境 5. 絵本専門士などの活用 この5項目にまとめることができる。
 すでに経産省からはアクションプラン案(PDF)が出ており、ICタグ(RFID)関連の環境整備は進んでいる。キャッシュレス負担軽減は、決済事業者に対する補助が必要だから不透明。書店と図書館の連携は、いままさに文科省「図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議」で議論が行われている。
 この5つの他に、不公正な競争環境等の是正、出版物への消費税・軽減税率の適用などは、この読売新聞社・講談社共同提言にはない。こうした課題はどうするのか。検討が必要なのは間違いない。

◆扶桑社が早期退職募集!
 フジテレビは、元タレントの女性トラブルに端を発した問題で、スポンサー離れが加速し業績が悪化している。出版子会社の扶桑社の早期退職募集は、フジテレビの不振が影響しているのではないか。グループ各社に波及する“業績悪化ドミノ”の恐れも言われだしている。
 フジグループは子会社89社、関連会社50社を擁するメディア界の“巨大帝国”だ。放送局や制作プロダクションのほか、出版・音楽事業、不動産やホテル事業を行う会社などがある。グループ各社への打撃も甚大である。1月30日には2025年3月期の業績を大幅に下方修正すると発表した。放送収入は前期から233億円減の1252億円まで落ち込む見通し。
 いち早く人員整理に動いたのは扶桑社。すでに産経新聞社が発行する「夕刊フジ」は、2025年1月31日をもって休刊となっている。スマートフォンの普及など、生活スタイルの変化で発行部数が減少傾向だったことに加え、新聞用紙の高騰などが理由で、1969年2月の創刊から約56年の歴史に幕を下ろした。

◆「狐弾亭」立川市に開業
 トーハンの小型書店開業サービス「HONYAL」を利用して、「狐弾亭(こびきてい)」が2月8日、東京・立川市羽衣町1-21-2にオープンした。初の個人による開業で、「物語を通して妖精と出会える場所」をコンセプトとするブックティーサロン。
 23坪の売場に、アイルランドの妖精譚や妖精関連の専門書、妖精が登場するコミックスなど約3000冊(古書含む)を揃え、カフェを併設。
 店主の高畑吉男さんは、アイルランドを中心とした妖精譚の専門家で著書も多く、自ら選書した書目を並べ、また所蔵する貴重な文献資料も置き、非売品だが紅茶をオーダーすると店内で閲覧が可能。

◆「大阪ほんま本大賞」の成果
 地域ゆかりの一冊を書店員らが選んで表彰するご当地文学賞、そのなかでもユニークなのが「大阪ほんま本大賞」だ。それぞれの書店の店頭で受賞作を大々的にアピールし、少しでも書店の黒字を増やす狙いはもちろん、売り上げの一部は、児童養護施設の子どもたちのプレゼント本に使われる仕組みになっている。
 ほんま本大賞を主催しているのは、大阪府内の書店のほか、トーハン、日販、楽天ブックスネットワークといった出版取次会社の有志らでつくる団体「Osaka Book One Project」。実行委員として20人が活動する。「大阪からベストセラーを出したい」という思いで2013年に始まり、第3回までは「大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本」、第4回からは「大阪ほんま本大賞」としてお薦めの一冊を選んで表彰している。
 選考の対象とする条件は、@ 大阪が舞台の物語、あるいは作者が大阪にゆかりあること、A 文庫本であること、B 著者が生存していること の3つを満たす作品に限っている。
 それに加えて「ほんま本大賞」の特徴は、受賞作の売り上げの一部で、児童養護施設の子どもたちに欲しい本をプレゼントし続けていることだ。初回から2024年の第12回を合わせると、1000万円近くの本を寄贈している。

◆月刊誌「母の友」最終号
 福音館書店が発行する月刊誌「母の友」3月号(2/3発行)をもって、72年の歴史を閉じる。 1953年に「幼い子と共に生きる人への生活文化雑誌」と位置づけて創刊し、子育ての「ハウツー本」というより、作家や画家の書き下ろしの童話やエッセー、インタビュー、寄稿、読者の投稿などを通して、「言葉」に光を当ててきた。
 他社の広告を載せないのも雑誌としては珍しかったが、「昨今の情報メディアをめぐる環境の大きな変化」を理由に、休刊に踏み切った。
 最終号のテーマは「『生きる』を探しに」。2022年に亡くなった松居直(ただし)さんが創刊号の編集長として、このテーマを立ち上げた。松居さんは、3人の兄を戦中戦後に戦場や病気で亡くした経験から「生きるということを皆さんと考えたいと思って、この雑誌を作った」と生前に繰り返していたという。

◆「パレスチナ」書名本押収
 イスラエル警察は2月9日、東エルサレムのパレスチナ人が経営する「エデュケーショナル書店」を扇動容疑で捜索し、書名に「パレスチナ」とつく約100冊の本を押収、店主ら2人を逮捕した。警察当局は「扇動とテロ支援を含む本を販売した」との理由を挙げた。
 1984年に開店した書店は、パレスチナ問題を扱う本を多くそろえ、学者や外交官、記者のたまり場であり、「イスラエル人とパレスチナ人が出会う文化の発信拠点であった。警察の行為は恥ずべきだ」と、多くの人々が憤り書店の「略奪」を非難する公式声明を発表した。
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2025年02月19日

【焦点】第7次エネルギー基本計画(エネ基)が18日に閣議決定、原発利権温存が狙い=橋詰雅博

 昨年12月27日から今年1月26日まで実施された第7次エネ基に対するパブリックコメント(意見公募)は約4万件に上った。これまでのエネ基のパブコメのなかで最も多く、原発を推進すべきではないなど反対意見が多く出た。例えば<7次エネルギー基本計画(案)を廃案とするべきである。現状において,原子力依存度の増加や再生可能エネルギーの推進不足,市民意見の反映不十分であることから、より持続可能で安全なエネルギー政策への転換を求める>といった具合だ。にもかかわらず原子力政策の基本は変わらなかった。

 筆者は今年1月号JCJ機関紙で第7エネ基は「原発回帰」と喝破した(http://jcj-daily.seesaa.net/category/27511239-1.html)。半導体工場やデータセンターの新設による電力需要増大を口実にしたもので、省エネによる電力需要抑制を無視した計画案だった。結局は、原発を主事業とする電力会社(電力業界は自民党への大口政治献金の常連)の経営基盤を守る利権温存が狙い。第7次エネ基では2040年の再生可能エネルギーは4〜5割目標で、EU(欧州連合)がすでに実現している水準にとどまっている。これでは世界に向けた50年温室効果ガス実質ゼロの公約の達成は困難ではないか。

 国際環境NGO「FoE Japan」は、<原発や火力などの大規模集中型の電源による電力の大量生産・大量消費の構造をそのまま維持する内容である。気候危機に向き合わず、一般市民や将来世代に大きな負担を強い、現実からも乖離している。これに抗議する>と声明を18日に出した。
https://foejapan.org/issue/20250218/22944/

●関連情報
シンポジウム:原発事故から14年−福島と能登から考えるエネルギーの未来
https://foejapan.org/issue/20250130/22214/

珠洲市在住の北野進さん、浪江町から避難した菅野みずえさんによる講演に加え、全国各地の原発や関連施設などの周辺から7名の方にご報告をいただきます。また、「エネルギーの民主化を実現するために」をテーマに若い世代もまじえてパネルディスカッションを開催します。
日時:2025年3月1日(土)14:00-16:30
会場:法政大学 市ヶ谷キャンパス 富士見ゲート G401教室 またはZoom
▼詳細、お申込みは以下から
https://foejapan.org/issue/20250130/22214/
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2025年02月18日

【映像】オンライン講演「裁判官はこうも堕落したのか」―YouTubeで一般公開=JCJ事務局

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 11月30日実施した〈JCJ Online講演会〉「裁判官はこうも堕落したのか」、講演者は24年度JCJ賞受賞の後藤秀典さん。後藤さんのご厚意により、記録をYouTubeで一般公開させていただけるはこびとなりました。
 このYouTubeコンテンツは、どなたでもアクセス可能ですので、JCJ会員のみなさま始め広くご視聴いただければと思います。JCJ活動の一端として機関紙購読や会員の拡大につながっていくこと期待です。

https://youtu.be/O29yTweWoFY ←YouTube

https://x.com/jcj_online/status/1890613817362546874 ←X(旧twitter)告知

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2025年02月17日

【オピニオン】国家賠償と核廃絶 被団協の訴えにどう応える=藤元康之(広島支部)

 「1994年12月、2法を合体した『原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律』が制定されましたが、何十万人という死者に対する補償は一切なく、日本政府は一貫して国家補償を拒み、放射線被害に限定した対策のみを今日まで続けてきています。もう一度繰り返します。原爆で亡くなった死者に対する償いは、日本政府は全くしていないという事実をお知りいただきたいと思います」

 日本被団協の田中煕巳代表委員のノーベル平和賞受賞式演説で、私が一番感動したところだ。しかし、中継したNHKニュースや直後のテレビ朝日報道ステーションでは、何の説明も解説もなかった。翌日からの報道で「もう一度繰り返します」のところは、用意した原稿にはなく、「いまの世界情勢を考えると、繰り返して言わなければと衝動的に思った」と田中さんは明かしている。

 被団協の二つの基本要求は演説のなかで分かりやすく述べられている。一つは、日本政府の「戦争の被害は国民が受忍しなければならない」との主張にあらがい、原爆被害は戦争を開始し遂行した国によって償われなければならないという運動。二つは、核兵器は極めて非人道的な殺戮兵器であり人類とは共存させてはならない、すみやかに廃絶しなければならない、という運動である。

 演説は、原爆死没者への日本政府の補償と言っているが、意味するところは戦争を起こす全ての国家の責任を断罪しているのだと思う。米国による原爆投下から80年も経つのに、再び核戦争の危機が充満する世界にあって、戦争は誤った国策によって国家が起こすこと、それを止める大きな役割をジャーナリストが担っていることを、再認識したい。

 残念なことに、広島市の松井一実市長は記者会見で、国家補償を求める被団協の運動は、大切なことと述べながらも、世界から評価されたのは平和や核廃絶を訴える運動に限られているとの見解を述べた。この人は、パールハーバーと広島平和公園の「姉妹協定」締結や市職員研修で教育勅語を肯定的に引用するなど、私から見れば世間常識とはかなりずれていると思うのだが、今回も独自見解を披露してくれた。ただ、これも残念なことに広島のメディアでさえ大きく報じられなかった。

 フリー記者の宮崎園子さんのYahooニュースによると、田中さんは「核兵器廃絶と国家補償という私たちの二つの基本要求によって『核のタブー』が形成されたということについて、ノーベル委員会は適切に理解してくださっている」と述べ、ノーベル委員会からは、事前原稿ではなく実際のスピーチの内容を正式文書として残すとの説明を受けたという。

 日本国憲法前文は「日本国民は……政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し……」で始まる。80年前に終わった戦争は、政府=国家が起こしたと明記し、二度としないことを日本国民は決意した。しかし、自民党の憲法改正草案(12年)では、この大切な文言は削除され「平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する」と、戦争の反省も不戦の誓いも感じられないものになった。そして被爆地広島から選出された岸田文雄前首相は、米国の要求に従って、中国に対抗する軍事力増強に舵を切った。米国のトランプ新大統領は防衛費のさらなる増額を要求すると言われている。
 昭和100年、戦後80年のことし、年老いた被爆者の訴えに私たちは、どう応えるのか、きわめて大切な1年になる。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
 

 
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2025年02月16日

【国民発議制度創設】有権者の請求で国民投票実施 国会に議連、模擬投票も=小石 勝朗(ライター)

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 特定のテーマについて一定数の有権者が請求すれば国民投票が実施される「国民発議」制度の創設へ向けた動きが活発化してきた。国会議員による超党派の議員連盟が昨年暮れに発足=写真・小石勝朗撮影=。市民団体はウェブで模擬投票を行い、制度の周知に注力している。

「諮問型」を想定
 「『国民発議』制度の導入を目指す超党派議員連盟」=には、自民、立憲民主、維新、国民民主など7会派の衆・参院議員約20人が入会の意向を示している。設立総会で共同代表に船田元・衆院議員と桜井充・参院議員(ともに自民)、杉尾秀哉・参院議員(立憲民主)を選んだ。
 当面は、海外の事例調査や課題のあぶり出し、識者の意見聴取などに取り組み、制度の内容を固めて法案を作成することを目標にしている。総会に出席した議員からは「民主主義を根づかせる手段になる」といった声が出た。
 
 憲法41条は国会が「唯一の立法機関」と定めており、選挙による間接民主制を採用しているとして、国民投票のような直接民主制の手法に抵抗感を抱く国会議員も多い。それだけに、国会にこうした議連ができたのは新しい潮流と言える。

 制度化に当たっても同条との関係が問題になる。議連に参加する議員らは、国民投票の結果に法的な強制力を持たせるのではなく、政府や国会に尊重義務を課すにとどめる「諮問型」と位置づけることで、憲法との整合性は保てるとみている。間接民主制を補完する、との位置づけだ。

 国民発議が注目される背景には、政治や行政への根強い不信がある。内閣府の世論調査(23年11月)によると、国の政策に国民の考えや意見が「ほとんど反映されていない」との回答が26・1%、「あまり反映されていない」が49・6%。両者の合計は1年前より4・3㌽上がっている。
 国民投票の対象になるテーマとしては、たとえば夫婦別姓、原発、死刑などが想定される。選挙と違ってテーマごとに意思表示ができるため、実現すれば国民の政治参加を進め、不信の払拭にもつながると期待される。
 
 議連の結成を働きかけたのは、一般社団法人・INIT国民発議プロジェクト。「選挙の時だけでなく365日ずっと主権者でいるために発案・拒否・決定権を行使できる制度を」と22年に発足し、昨年末時点で1820人が賛同者登録している。

 INITは昨年12月の1週間、選択的夫婦別姓、消費税、紙の保険証、NHK受信料、死刑、インボイスの6件をテーマに、ウェブで模擬国民投票を実施した。事前に賛同者に何を発議したいか募り、希望を踏まえてテーマを設定した。
 各テーマについて賛否の代表的な意見をホームページに掲載。一部のテーマでは双方の論客による公開討論会も開くなど本番同様のしつらえにした。

 投票数は、最多の夫婦別姓で3197件。「賛成」が9割近かったが、ほぼ全員が賛否両方の意見を確認したうえで投票していた。INITは「投票結果よりも、学び考えて1票を投じたことが意義深い」と捉えており、国民投票は熟議を促すと自信を深めている。
 年内に「原発・エネルギー」(3月)などをテーマにさらに3回の模擬投票を計画する。多くの人に国民投票を「実感」してもらうとともに、プロセスや結果を検証。議連とも連携して制度設計に生かしていく方針だ。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号
 

  

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2025年02月15日

【JCJオンライン講演会】「トランプ2・0」は世界をこう変える 講師:ロイター通信日本支局長・豊田祐基子氏 3月8日(土)午後2時から4時

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 米大統領に返り咲いたトランプ氏は、大統領令を次から次に発動。国内外に混乱をもたらし、当事者たちは対応に右往左往だ。ウクライナ戦争とガザ戦闘は奇策≠ナ停戦にというトランプ戦術も大きな波紋を呼ぶ。「ゆすり」「たかり」「脅し」というこれまでの成功体験から生まれた手法を駆使している。金主ゆえトランプ氏が起用した新設「政府効率化省(DOGE)」のトップの実業家・イーロン・マスク氏の言動も波乱の要因。予見不能「トランプ2・0」政権は、世界をどう変えるのか誰もが知りたいところ。日米の政治、経済に詳しいロイター通信日本支局長の豊田祐基子がズバリ予測する。

■講演者プロフィール:豊田 祐基子(とよだ・ゆきこ)ロイター通信 日本支局長
 2022年2月から現職。外交・安全保障からエネルギー、金融・財政政策、金融市場、産業まで、日本に関わるあらゆるニュースの取材を統括し、世界へ発信している。ロイター入社以前は25年間にわたり、共同通信で外交・防衛、日銀などを取材した。 
 2009年から13年までシンガポール支局長、15年から18年までワシントン特派員を歴任。その後は特別報道室次長として共同の調査取材チームを率い、国際調査報道ジャーナリスト連合にも参加、東京五輪誘致に絡む資金の流れを報じた。日米間の外交・防衛関係の取材を重ね、共同通信憲法取材班として日米同盟に関する記事を執筆。新潮社から出版『「改憲」の系譜 9条と日米同盟の現場』で2007年日本ジャーナリスト会議JCJ賞を受賞。早稲田大学で博士号(公共政策)を取得。米ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院の客員研究員を務めた。

■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0308.peatix.com)で参加費をお支払いください。
(JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に支部・部会名を明記の上お申し込み下さい)
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
    03–6272-9781(月水金の13時から18時まで)
      https://jcj.gr.jp/
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