2020年02月06日

【映画の鏡】 カンヌで韓国初の最高賞パルムドール『パラサイト 半地下の家族』 貧者と金持ちの衝突で起きた亀裂=今井潤

 ソウルの半地下住宅に住む貧しい4人家族。父はたびたび事業に失敗するが、楽天的な性格、元ハンマー投げ選手の母、大学受験に落ち続ける息子、美大を目指すが、予備校に通う金もない妹。
 半地下の家は暮らしにくい。窓を開ければ路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が弱い。家族全員、ただ普通の暮らしがしたいと思っている。
 そんな時、有名大学生の息子の友人が訪ねてきて、「僕の代わりに家庭教師をしないか」と留学中の代役を頼む。息子が向かったのは高台の大豪邸、IT企業の社長の自宅だった。若く美しい妻が娘の部屋に案内する。
 偽造した大学在学証明書を警戒することもなく、母と娘の心をつかんでいく。「もう一人紹介したい家庭教師がいるんです」と妹を紹介、末っ子の教師となり、恐るべき速さで手なずけていく。
 こうして、父は自家用車のドライバーに、母は家政婦としてこの大豪邸で働くことになり、物語は波瀾万丈の展開となる。
 父を演ずるソン-ガンホは「殺人の記憶」、「グエルム漢江の怪物」に出演、最近の話題作「タクシ―運転手〜約束は海を越えて〜」の韓国の人気スターだ。
 昨年カンヌで韓国初のパルムドールを受賞したこの作品は血なまぐさい、荒唐無稽な結末へ向かうが、筆者は現代社会を表すための監督の表現とみている。
 ポン・ジュノ監督は「今日の資本主義社会には、目に見えない階級やカーストがあります。本作はますます二極化のすすむ社会の中で、二つの階級がぶつかり合う時に生ずる、避けられない亀裂を描いているのです」と述べている。
(公開は1月10日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか)
今井 潤
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月05日

【月刊マスコミ評・出版】 ルポ「コンビニ絶望経営」に注目=荒屋敷 宏

 第2次以降安倍内閣は、わずか7年間に消費税率5%から8%に、さらに10%への2度にわたる増税で合計13兆円もの大増税を強行した。2020年の日本経済は、「令和不況」の足音が早くも聞こえてきている。
 ジャーナリストの斎藤貴男氏が「世界」(岩波書店)1月号と2月号に発表したルポ「コンビニ絶望経営」(上・下)に注目した。「セブン−イレブン」東日本橋一丁目店のオーナー店長の死の謎を追うところから始まる。店長は、「9年間、365日24時間営業の店を年中無休で切り盛りし、多額の借金を背負った挙げ句、最愛の息子を失い、ついには縁もゆかりもない土地で、非業の死を遂げた」という。
 コンビニ経営の実情は、悲惨である。コンビニオーナーの死亡率が他の業種に比べて異常に高いという。妻が朝7時から夜10時、夫が夕方6時から翌朝8時、長男や次男も駆り出す家族経営となり、「家族全員が販売期限の切れた廃棄弁当を食べ、仕事の合間を縫っては、バックヤードに敷いた段ボールで仮眠をとった」との実情は、すさまじい。
 コンビニの本部社員が商品発注の締め切り時間ギリギリにやってきて、恵方巻などを「無断発注」し、大量仕入れを強要する等々。今年も予想される恵方巻の大量廃棄を生み出しているのは、コンビニ本部なのだ。加盟店の向かいに加盟店を出店させて、「共食い」を生み出すのもコンビニ本部。斎藤氏は、コンビニ店主が消費税の納税額分を回転資金に流用してしまいがちであることを指摘している。
 フランチャイズ契約とは、斎藤氏の言葉を借りれば、「本部による加盟店の一方的な搾取」「奴隷契約」だ。斎藤氏は、「日本にはフランチャイズ契約をきちんと規制する法整備がなされていない現実をご存じか」と提起している。本部に反乱を起こしたオーナーや普通の小売業と異なる「コンビニ会計」の話は、「世界」2月号に登場する。
 ほかに、読み応えがあったのは、「週刊朝日」1月17日号、元文部科学事務次官の前川喜平氏と作家の桐野夏生氏の対談「若者荒廃に危機感 現代の深層に何が?」だった。なぜ荒廃しているのか。桐野氏が「一つの大きなほころびの中で、若い女性も男性もあがいているような感じがするんですよ」と言えば、前川氏は「私が非常に危機感を抱いているのが、国全体として人を大切にしない政治がずっと続いていることです」と語る。現実をいかにリアルに見るか。課題は、そこにあると思う。
 荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月04日

【沖縄リポート】 総工費などの試算変更 防衛省に焦り=浦島悦子

 昨年12月27日の地元紙1面トップに「新基地土砂全て県内調達」という衝撃的な見出しが躍った。防衛省がこれまで、3分の2以上を県外から運び込むとしていた辺野古新基地建設のための埋め立て土砂(岩ズリ)や、海底の軟弱地盤改良のための海砂を、沖縄県内で全量調達する方向で検討しているというのだ。
 とっさに、沖縄の山も海も滅茶苦茶に破壊される!という危機感で背筋が寒くなった。日々、土砂搬出されている本部半島の採石場は既に惨憺たる光景をさらしているし、私の住む地域でも以前から、海砂採取による海岸の浸食や、海底地形が変化し魚が獲れなくなったという嘆きの声がある。そもそも、当初、県内調達予定だった土砂や海砂が県外調達になったのは、あまりにも深刻な自然破壊の予測に県民の大反発が起こったからだった。
 それが再び県内調達に回帰するのは言語道断だが、見方を変えれば、前回報告したような、県外土砂搬出予定地の人々による「辺野古に土砂を送らない」運動の広がりや、県外土砂による外来種侵入を規制する沖縄県土砂条例の制定などが、政府を追い込んだ「成果」とも言えるだろう。
 むろん、このような無謀な計画変更を沖縄県が承認するはずもないし、土木技師の北上田毅さんも、「量的には県内調達可能だが、運搬船が狭い海域に集中して作業できないだろう」と、全量県内調達は無理だとする。
 防衛省は同時に、辺野古新基地の総工費を9300億円(5年前に示した金額の2.7倍)、工期を、計画変更に対する沖縄県の承認から12年とする試算を示した。「工費2兆5500億円、工期13年以上」とした沖縄県の試算を否定していた防衛省自らが、このような試算を出さざるを得なくなったのは、追い込まれている証拠だ。大浦湾の軟弱地盤改良は技術的に不可能との見方も多い。どこから見ても無理無謀な工事をやめないのは、一度始めた公共工事を止めるわけにいかないという面子なのか、はたまたゼネコンの圧力か…?
一触即発の中東情勢に、米軍基地と隣り合わせに暮らす沖縄県民は不安を募らせている。軍事基地は内にも外にも不幸しか生まない。新基地建設を断念する「勇気」を政府に強く求めたい。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月03日

【月刊マスコミ評・新聞】 障害者殺傷公判 匿名審理正しいか=徳山喜雄

 障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が殺害され、26人が負傷した事件の裁判員裁判が始まった。植松聖被告の「障害者は生きていても仕方がない」という言葉が改めて衝撃をもたらし、匿名審理を巡っても議論が巻き起こった。
 裁判では横浜地裁が被害者の名前を法廷で明らかにせず、「甲A」「乙B」といった記号で呼ぶことになった。しかし、19歳の娘を失った母親がこのことに違和感を覚え、名前を公表した。
 名前は美帆さん。毎日が1月8日朝刊の1面トップにし、社会面でも大きな受け記事を掲載、手厚く報じた。遺族提供の4枚の美帆さんの写真が目を引く。「美帆は一生懸命生きていました。その証を残したいと思います。美帆の名前を覚えていてほしいです。……娘は甲でも乙でもなく美帆です」とする手記(要旨)も読ませた。
 法廷の様子も通常の裁判とは違ってくる。84席ある傍聴席の3分の1が被害者遺族や負傷者の家族に割り当てられ、遮蔽板を置いて他の傍聴人からは見えないようにした。日経は「匿名審理 揺れる遺族」との連載記事で、匿名化について掘り下げた(1月7日朝刊)。
「最高裁によると、09〜18年で(刑事訴訟法が定める)秘匿制度の適用が認められた被害者は約3万8900人に上る。認められなかったケースは約560人にとどまる。法廷での『匿名』は珍しい光景ではなくなっている」とする一方で、「一人ひとりの命の重み、事件の悲惨さを具体的に知ってほしいとの願いから、実名での審理を望む犯罪被害者遺族もいる」と読み解いた。
 さらに日経連載は「匿名のままでは事件の風化につながる恐れがある」とし、読売も初公判を報じる記事(1月9日朝刊)のなかで「匿名化により社会の関心から遠ざかる」という声を伝えた。
産経(1月9日朝刊)は、「全国知的障害者施設家族会連合会」(神戸市)理事長の「社会にはいまだに障害者への根強い差別感情がある。今回、司法がこういう決定をしたことで、差別意識を助長することにならないか心配だ」とする談話を紹介した。匿名審理が「差別意識の助長に繋がる」との視点も見逃せない。
 被害者の実名をどう報じていくのか。さらなる議論が求められる。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年02月02日

【今週の風考計】2.2─危ない! 「豚コレラ」に「ピーファス汚染」

新型肺炎に対するWHOの動きにヤキモキしていたが、ついに30日「緊急事態宣言」を発した。だが遅きに失したとの批判は免れない。
 この1週間ほどで中国国内での感染者は1万3700人を超え、死者も304人と幾何級数的に増大し、国外でも26カ国・地域に拡大している。
日本では感染者20人、人から人への感染が確認されている。やっと政府は「指定感染症」と定め、入国時には診察検査を行い、従わないときは罰則も課すこととなった。さらに強制的な入院や一定期間の休業指示も可能になる。合わせて感染予防と受け入れ態勢、診療・医療へのフォローが、きわめて緊急になっている。

「新型コロナウイルス」だけではない。遅きに失しないよう、緊急にとり組まねばならぬウイルス対策は他にもある。群馬・岐阜・沖縄など、日本で広がる「豚コレラ」(CSF)への対処だ。先月末に成立した家畜伝染病予防法によって、「豚コレラ」の蔓延を防ぐ「予防的殺処分」が可能になった。
 いまアジア地域に広がる「アフリカ豚コレラ」の侵入は、有効なワクチンが存在しないだけに、なんとしても防がねばならない。

もっと深刻なのは、後手に回っている「ピーファス(PFAS)汚染」への対策である。日本の米軍基地から高濃度の有害物質がダダ洩れし、地下水の汚染や飲料水に深刻な影響をもたらしている。
 これまで指摘されてきた沖縄の米軍基地周辺で深刻化する有機フッ素化合物「ピーファス」(PFAS)による地下水の水質汚染が、東京の横田基地周辺でも確認されたのだ。
 東京都は昨年1月、横田基地に近い4カ所の井戸を調査。立川市の井戸では、米国の飲料水の適正値から超えること、19倍という数値が検出された。これを受け都は飲料水の水源を、地下水から川の水などに切り替え、「ピーファス」濃度を下げる措置を取った。
有機フッ素化合物「ピーファス」は、耐熱・撥水に優れ、紙皿や調理道具のテフロン加工材として、また軍事訓練や防災訓練での消火剤としても使われてきた。「ピーファス」は数千年もの間、分解されずに水中や空気中を漂う。摂取すれば体内に「永遠の化学物質」として残る。しかも人体への影響が研究され、がん、肝機能障害、甲状腺疾患、発達障害との関連性が明らかとなってきた。
横田の米軍基地では「ピーファス」を含む泡消火剤を、2010年から7年間で、総計3161リットルも使用している。これが地下水に流れ込み、汚染を招いたとの疑念はぬぐえない。
 現に沖縄では、7つの市町村45万人の水が「ピーファス」で汚染され、その源は基地内から漏出する真っ白な泡の消火剤にあるといわれている。

「日米地位協定」に阻まれ、米軍基地内で調査ができない以上、すでに沖縄県が実施しているように、横田基地周辺を包囲する形で、井戸水のモニタリング調査をし、汚染源を特定し、被害状況や今後の影響を予測するのは不可欠だ。
 WHOでも「ピーファス」の人体への影響をとらえ、国際的に製造や使用の禁止が謳われている。だが遅れに遅れる日本の厚労省は、やっと「ピーファス」汚染を防ぐためのガイドライン値までは、この春、出すまでになった。一刻も早く製造・使用の禁止へ踏み出せ。(2020/2/2)
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2020年02月01日

カジノ疑獄 整備計画に変化 外資が群がる構図せん明に 横浜の反対集会に2千人=藤森研

雨の中のカジノ.JPG 
 安倍政権が成長戦略の柱として推進する、カジノ導入などのIR(統合型リゾート)計画に暗雲が広がり始めた。IR担当副大臣だった秋元司衆院議員が、事業参入を狙う中国企業からの収賄容疑で逮捕された。横浜市民らからは以前より誘致反対の声が挙がっており、計画が修正される可能性もありえよう。これを機に立ち止まって、ギャンブル依存症の日本の実態についても一度きちんと考えてみたい。
 秋元議員は否認しているようだが、贈賄側の供述や職務権限などから東京地検は強制捜査に踏み切った。事件の構図は、日本でのカジノに外国資本がよだれを垂らして群がって来るありさまを浮かび上がらせた。
横浜情緒を破壊
 横浜市民らによるカジノ誘致反対運動は至って活発である。昨年12月22日には氷雨にもかかわらず、横浜・山下公園に主催者発表で2千人もの市民が集まり、「カジノはいらない 勝手に決めるな」と声を挙げた。同市では、市長選で「白紙」を強調しながら、突然誘致を言い出した林文子市長への不信、風紀の乱れなど横浜情緒の破壊などへの反発も強いが、やはり大きいのはギャンブル依存症への不安だろう。集会でも、「ギャンブル依存症対策を取ると言うが、最大の依存症対策はカジノをつくらせないこと」「金が欲しいからと誘致する林市長こそカジノ依存症だ」などの発言が相次いだ。
 実は、日本は今すでに「ギャンブル依存症大国」である。厚生労働省の研究班が2014年に公表した調査結果によると、「ギャンブル依存症の疑いあり」が4・8%にのぼった。人口では536万人になる。同様の調査で諸外国は人口の1〜2%にとどまっていた。
「有病率」高い
 同省が2017年に発表した1万人面接調査によっても、生涯のうちに一度でもギャンブル依存症だった疑いのある人は推計3・6%、人口換算で約320万人。同じ判定基準で調査した海外各国は1〜2%以下の国が多く、日本の「有病率」は明らかに高い。
 主な原因は、パチンコ・パチスロの蔓延である。患者家族らの会の2015〜16年の調査では、パチンコ・パチスロが依存の対象として最も多く(92%)、ついで競馬(19%)、競艇(6%)などだった。
 最新データによると、世界中で合法的に導入されているゲーミングマシンは約740万台。うち半数以上の約430万台が日本にある。パチンコ・パチスロだ。日本はすでに「ギャンブル大国」でもある。それが高い依存症率を生んでいる事実を直視しなければならない。
 カジノを誘致する前に、政府もマスメディアも、すでにある日本のギャンブル依存状態に対し、きちんとメスを入れるべきだ
藤森研(神奈川支部代表)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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2020年01月31日

【イベント案内】日本初!川崎市ヘイト禁止条例の意味=神奈川支部

JCJ神奈川支部2月例会
日本初!川崎市ヘイト禁止条例の意味
 〜神奈川新聞石橋学記者に聞く〜

 昨年12月、川崎市議会は「差別のない人権尊重のまちづくり条例」を全会一致で成立させた。今年7月には全面施行される。日本で初の、ヘイトに対して罰則を科す条例の制定である。朝鮮半島出身の人々が集住する川崎市では近年、「朝鮮人は日本から出ていけ」などのヘイトスピーチをまき散らすデモが行われ、市民の人権を脅かしてきた。条例制定の意義は大きい。講師は、神奈川新聞でヘイトスピーチを鋭く批判してきた石橋学記者。条例制定の意味を聞く。
 
 また石橋氏は、昨年2月にヘイト団体が川崎市の会館で開いた集会での、「実は旧日本鋼管でいわゆるコリア系の方が日本鋼管の土地を占領しているんですけれども」などのヘイトスピーチを、「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と厳しく批判し報じたところ、ヘイト発言者は石橋氏を名誉棄損で訴えてきた。裁判は現在、横浜地裁川崎支部で審理が進められている。その裁判についても話をうかがう。

日 時  2020年2月1日(土)午後2時〜午後4時
会 場  横浜市開港記念会館6号室
     横浜市中区本町1−6 TEL045−201−0708
講 師  石橋 学(神奈川新聞記者)
参加費  500円 
主 催  JCJ神奈川支部
問合せ 保坂 080−8024−2417
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2020年01月30日

ズサン調査スクープから半年 陸上イージス配備計画見直しなるか 秋田魁記者・最新リポート

新屋演習場と住宅街.jpg
 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を秋田市に配備する計画は、昨年6月に秋田魁新報が防衛省調査のずさんさをスクープして以降、大きく揺れ動き続けている。防衛省は配備候補地を「ゼロベース」で見直すとして再調査を実施中。住宅地に隣接した陸上自衛隊新屋演習場への配備計画が見直されるかどうかが今後の焦点だ。
官邸サイドが動く
 「『住宅地との距離も考慮して評価するよう防衛省に指示した』と、官房長官からそういう話を伺った」。昨年11月20日、首相官邸で菅義偉官房長官と面会した佐竹敬久秋田県知事は、直前のやりとりを報道陣にこう明かした。
 防衛省は、新屋演習場が配備に適しているかに関する調査のずさんさが秋田魁新報のスクープで明らかになって以降、「ゼロベースでの再調査」を掲げ、新屋演習場を含む青森、秋田、山形3県の国有地20カ所を対象に配備の適否を再検討する作業を進めている。そうした中で、省庁に大きな影響力を持つ菅氏が「住宅地との距離」を考慮要素に挙げた発言は大きな意味を持つ。住宅地に近い新屋演習場が大きなマイナスポイントを抱えることになるのは明らかであり、佐竹知事は5日後の会見で「初めてそういう具体的な発言が官房長官からあったということは、当然官邸サイドでも動いているということだと思う」と述べ、配備候補地見直しへの期待感をにじませた。
17議会が「反対」
 防衛省調査のずさんさが明らかになって以降、秋田では「反新屋」のムードが高まる一方だ。
 7月の参院選では、配備反対を訴えた野党統一候補の新人が、自民現職に勝利。8月には、秋田市を地盤とする冨樫博之衆院議員(秋田1区)が「新屋への配備はもう無理」という考えを防衛省に伝えたことを明らかにした。
 配備反対の請願や陳情を市町村議会が採択する動きも広がり、12月議会までに県内25市町村のうち17市町村の議会が採択した。
 昨年12月10日には、共同通信が「政府が新屋演習場への配備計画を見直す方向で検討に入った」とする記事を配信し、翌日付の秋田魁新報など全国の地方紙・ブロック紙が掲載。他の通信社や全国紙も同趣旨の報道で続いた。
「新屋」拒否は不変
自民、公明の県組織は新屋配備反対を公式には唱えていないが、12月20日には、自民党県連青年局が「人口密集地にあまりに近く、県民の不安が大きすぎる。適地であるとはとても言えない」とする意見をフェイスブックで公表するという動きもあった。
 こうした中、配備計画が浮上した当初は配備の是非についてあいまいな発言を繰り返していた佐竹知事や穂積志秋田市長の発言も様変わりした。「住宅地との近さが一番重要な視点。後戻りするかもしれないけれども、賢明な判断を求めたい」(10月21日の会見で佐竹知事)、「(新屋配備について)市民の理解を得るのは難しいと、河野太郎防衛相にはっきり伝える」(1月9日、秋田市新屋地区の新年会で穂積市長)。こうした発言は、住民の間でおおむね好感を持って受けいれられている。
 防衛省が行っている再調査の期限は3月20日。得られたデータを基に、3県20カ所の国有地を「ゼロベース」で見比べて配備候補地を決めるというのが、防衛省の示しているシナリオだ。
 再調査の結果、防衛省が再び新屋演習場への配備方針を打ち出したとしても、地元の理解を得られる可能性は限りなく低いのが、秋田県内の現状といえる。
松川敦志(秋田魁新報社編集委員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年01月29日

判決「うれしい誤算」 責任とらせるまで追及続ける 森友疑惑情報開示 木村真市議寄稿

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 昨年12月17日、私が原告となって国を相手に争っていた森友裁判で、大阪高裁が原告側請求を全面的に認める判決を下した(国は上告せず、判決確定)。
2017年2月8日。私は、前年9月に豊中市内の国有地を森友学園に払い下げた売買契約書を公開請求したところ、売買金額や一部条文などが黒塗り・非公開とされたことは不当だとして、国を相手に裁判を起こした。この提訴をきっかけに売買金額が1億3千万円余という極端な低額であったことが分かった。安倍首相が「私や妻が関与していたなら、総理大臣も国会議員も辞める」と述べたことで、政局を揺るがす一大疑惑に発展した。その森友問題の発火点となった裁判で、国が全面敗訴したのである。
 昨年5月の大阪地裁判決では、金額を隠したことは違法とする一方、地下埋設物があることが記載された条文を非公開としたことについては適法とする、原告一部勝訴だった。こちらが控訴した高裁では弁論1回で結審した。間違いなく控訴棄却・原審維持だろうと思った。「忖度判決 恥を知れ!」というプラカードを20枚作成して傍聴者が手分けして法廷内に持ち込み、裁判長が「控訴を棄却する」という主文を読み上げた瞬間、私の「お前なんか裁判官辞めてまえ!」というヤジを合図に一斉に掲げるという段取りをしていた。
国は早期終結狙う
 ところが裁判長は「原審を変更する」。えっ?!「被控訴人(国)は控訴人(木村)に対し、(請求そのままの)11万円を支払え」。思わず隣の当方代理人弁護士さんに「勝ったってことですか」と尋ねると「全面勝訴や!」。傍聴席へ向かって「勝ったみたい」と声をかけると歓声が上がった。用意した抗議のプラカードは出番なし、「勝訴」の垂れ幕も用意しておらず(「不当判決」だけ持ち込んだ)、大阪弁護士会がノベルティ用につくった「勝訴」と書かれたタオルを持っている傍聴者がいたのでこれを拝借し、裁判所前で記念撮影した。
「嬉しい誤算」判決となったわけだが、喜んでばかりはいられない。情報公開訴訟として始めた裁判だが、その後すでに非公開部分の黒塗りは外れており、この勝訴で初めて明らかになることなど何もない。敗訴しても国は痛くもかゆくもないわけで、むしろ裁判を早期に終結させ、森友問題を「過去の問題」として片づけてしまおうということではないか。だから上告しなかったのだろうし、そもそも地裁判決後も、国は控訴しなかった。となると意外な判決ではないのかもしれない。
 しかし、この勝訴を弾みとして、森友問題の追及を続けていく。「お友だち優遇」「ウソと隠ぺい」「ごまかしと開き直り」は、森友問題だけに限ったことではなく、安倍政権の「体質」であることは、「桜を見る会」の一件からも明らか。森友問題をこのまま幕引きさせてしまえば、「桜」も「カケ」も、全てうやむやにされてしまうだろう。それはつまり、「権力さえ握っていれば、何をやっても構わない」ことを許してしまうことに他ならない。
流れ変わってきた
 翌日の18日には、東京地裁が、伊藤詩織さん準強姦事件で山口敬之氏に対して損害賠償を命じる判決を下した。民事とはいえ、「アベ友記者」をいわば「断罪」したわけだ。東西で2日続けての「嬉しい誤算」判決は、いよいよ流れが変わりつつあるのでは、とも思える。特別な力などない私たちができることは、しぶとく、しつこく、粘り強く食らいつくことだけ。しかるべき人物に、しかるべき形で責任を取らせるまで森友問題は終わらせない。つかんだ尻尾は放さない!
(大阪府豊中市議)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号


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2020年01月28日

性犯罪に甘い日本社会に一撃 同意ないと認定 伊藤詩織さん 他の被害者勇気づける判決

伊藤詩織写真.jpg
 海外からの注目も集めた判決が昨年12月、東京地裁で言い渡された。ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏から受けた性暴力被害を訴えた民事訴訟で、伊藤さんに「全面勝訴」の軍配が上がったのだ。裁判では伊藤さんが性行為に同意していたかどうかが争点となり、判決は「被告が酩酊状態にあり、意識のない原告に対して同意がないまま本件行為に及んだ」「(同意があったとする山口氏の主張には)不合理な変遷があり、信用性に疑念がある」などとして、同意はなかったと認定。山口氏に330万円の賠償を命じ、同時に山口氏が名誉毀損などを理由に巨額賠償と謝罪広告を求めた反訴を棄却した。
「公表内容は真実」
 伊藤さんが負った心身の傷を思えば十分な賠償とは呼べない。だが、この判決が画期的だったのは、伊藤さんが記者会見や自著で被害を訴えたことを「公表内容は真実」「性犯罪を取り巻く法的、社会的状況を改善しようとした。公共性および公的目的がある」と評価したことだ。
 日本社会には性被害を甘く見る土壌がある。加害者は責任が問われず、被害者の方が落ち度を責められる二次被害も起きる。伊藤さんも2017年に被害を公表して以降、ネットで根拠のない「ハニートラップ説」が流されるなどした。だから、被害の訴えを正面から受け止めた判決は、他の性被害者をも勇気づけたと思う。一人の女性は「被害者にとって、社会に居場所があることを意味する」と話してくれた。
こうなると、この事件はやっぱりおかしい。伊藤さんが酩酊状態で意に反する性行為を強要されたのが明らかなら、なぜ準強姦の刑事事件として起訴されなかったのか。
 性被害を巡る日本の刑事司法は冷たい。理由は刑法の規定にある。17年の改正で罪名を変えた強制性交罪(旧強姦罪)、準強制性交罪は「同意なし」だけでは成立しない。被害者が抵抗できなくなるほどの暴行・脅迫があったか、抵抗できない状態にあったかなどの要件が必要になる。
 伊藤さんは15年春、就職先を紹介してもらおうと山口氏と懇談の後、ホテルで「性暴力を受けた」と訴えた。伊藤さんは刑事処分を求めたが、検察は起訴せず、その判断の妥当性を審査する検察審査会も「起訴しないことが相当」と伊藤さんの申し立てを退けた。
国策の匂い拭えず
 刑事事件にならず、真相に近づきたいと民事訴訟に訴えた結果が今回の判決だ。確かに民事は、被告が無罪推定を受ける刑事裁判とは異なり、当事者同士が争い、相手よりも主張が勝ればいい。しかし、だからと言って真実性が低いわけではない。また伊藤さんの事件には、こんな一般論では解けない「国策」のにおいもぬぐえないのだ。
 山口氏は政権に近い人物とされ、捜査に圧力がかかったのではとの見方もある。「捜査関係者から、上層部の判断で逮捕を止められたと聞いたことがある」。伊藤さんは勝訴後の会見でこう語り、自著でもそう記した。その真偽はひとまずおいても、性犯罪に甘い日本では刑事司法当局も例外ではないのだ。米ワシントンポスト紙が「時代後れの保守派に運営されている国」「日本人女性の権利の勝利」と判決を報じたように、事件は徹頭徹尾、日本社会の後進性を表していた。判決を不服とした山口氏は控訴を宣言した記者会見で「性被害者は会見の場で笑ったりしない」と言った。伊藤さんの人格を貶め、被害者を「型」にはめた、まさに後進的な考え方が示されたのだ。
 日本社会が性犯罪に対する認識を変えていけるのか。控訴審の行方もまた、世界から注目されることになる。
佐藤直子
(東京新聞記者、メディアで働く女性ネットワーク会員)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号

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2020年01月27日

韓国メディアに広がるファクトチェック 17年大統領選がきっかけ ソウル大研究者と労組幹部が報告=橋詰雅博

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 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と韓国の全国言論労働組合(言論労組)が14年ぶりに交流を復活させて、共同でファクトチェックができないかの検討を始めると本紙12月号で報じた。その言論労組首席副委員長のソン・ヒョンジュンさんと、国立ソウル大(SNU)ファクトチェックセンター所長のチョン・ウンリョンさんが日本のファクト・イニシアティブの招きで来日し、1月11日に早稲田大学で講演した。
ソンさんは公共放送のKBS、チョンさんは東亜日報、どちらも記者出身だ。日本の先を行く韓国メディアの活発なファクトチェックを二人が語った。
27メディアが加盟
 SNUファクトチェックセンターの概要をチョンさんは、こう説明した。現在、新聞やテレビ、ネットの27メディアが加盟する同センターの設立のきっかけは、現大統領の文在寅らが出馬した2017年の大統領選だった。国内世論の後押しもあって各候補者の発言や主張が正しいかそうでないかのチェックが必要ということで、政治的中立性を保てる大学内に発足した。この17年が韓国ファクトチェックの元年と位置づけられている。3月下旬から5月初旬にかけて各メディアが検証を行った約180件のうち、半数が誤りと判定された。同センターは各社から提供される検証記事を集約するプラットフォームの役割を果たしている。運営費は韓国を代表するポータルサイト「ネイバー(NAVER)」が提供。ネイバー上で流されたニュースの広告収入の30%をセンターが受け取っている。今年が3年契約の最終年で、契約更新の有無はまだ決まっていない。
JTBCが先駆け
ソンさんは韓国放送界を中心にファクトチェックの現状を報告した。
 放送や新聞などでファクトチェックが広がった大きな理由は、2つある。14年のセウォル号事件で事実と異なる報道により主要メディアの信頼が地に落ちたためメディア間で挽回の機運が高まったのが一つの理由。もう一つは中央日報系の新興テレビ局JTBCが14年から設けたファクトチェックコーナーが人気を呼んだことだ。こうしたことで、KBSやMBC、SBSなどの各局がファクトチェックコーナーを次々に設けた。朝鮮日報、韓国日報、中央日報、韓国経済といった新聞や連合ニュースなどの通信社、ノーカットニュースなどのネットメディアもファクトチェックに乗り出した。
 ソンさんの出身メディアKBSは、放送で流したニュース記事、ホームページに掲載した記事、ユーチューブに上げた動画をそれぞれファクトチェックしている。
 にもかかわらず国民のメディアへの信頼はまだ回復していない。デジタルニュースレポートによれば、国別ランキングでは17年は36カ国中36位、18年が37国中37位、19年は38国中38位と3年連続で最下位だ。ファクトチェックは政治的に利用されるリスクを伴うが、国民の信頼を得るには「ファクトチェックジャーナリズムは韓国メディアにとって最低限の仕事」と認識されている。
 メディアに対する評価のレベルが高くなっている国民と共にファクトチェックを軸とした「メディア改革」の世論形成とその拡大がこれからの課題だと指摘した。
 日韓による共同ファクトチェック作業については「議論がまだ深まっていない」そうだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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2020年01月26日

【今週の風考計】1.26─‶新型肺炎"阻止にWHOと日本は全力を

猛威を振るっている「新型コロナウイルス」による肺炎は、昨年12月8日、中国の湖北省・武漢で最初の感染者が出て以降、いまや中国全土に広がり、感染者は1300人、死者は50人を超える。日本国内でも3人目の患者が確認されている。さらに東南アジアや米仏諸国へ14カ国・地域に広がる。

肺炎を起こす「新型コロナウイルス」は、タケネズミやヘビなどの動物に寄宿している。中国での発生源は武漢の海鮮市場だが、この海鮮市場では他にもアナグマ、ハクビシン、キツネ、野ウサギ、クジャク、サソリ、ワニなど100種以上の動物が「食品」として日常的に売られている。
 しかも目の前で殺して、調理もしない生肉を売っている。ここの価格表には生きたタケネズミ1匹85元(約1400円)、クジャク1羽500元(約8000円)、シカ1頭6千元(約9万6千円)などと記されている。
野生動物の捕獲や売買、摂取を取り締る法律はあるが、その法をかいくぐってでも、「机と飛行機以外は、なんでも食べる」中国人の食生活に加え、あえて野生動物を食べる「野味」という習慣も関係している。
 タケネズミやヘビを食べて感染したのは間違いない。しかも武漢市当局は、感染の事実を中央政府に報告せず隠ぺいしたため、ますます感染者は広がり、さらに23日の武漢「封鎖令」が出る直前には、いち早く武漢を脱出した者が数千人とも数万人とも言われる。

今回の「新型コロナウイルス」は、2002年に中国南部の広東省から広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)のコロナウイルスに近い。世界30カ国8,422人が感染、916人が死亡した。また2012年の中東呼吸器症候群(MERS)も、このコロナウイルスが関係し、中東諸国や韓国など2,070人が感染し712人が死亡した。
 この二例とも感染源はコウモリ、かつコウモリを捕食した野生のヘビが第2次感染源となっている。武漢市の海鮮市場ではヘビも売られていたから、コウモリからヘビに感染した「新型コロナウイルス」が人へとうつり、今回の流行を引き起こした可能性が高い。

恐ろしいのは「新型コロナウイルス」には効く薬がないことだ。感染を防ぐワクチンもない。感染した場合は、安静にして熱・せきを和らげる「対症療法」しかない。
 しかも「新型コロナウイルス」には、すでに「スーパー・スプレッダー」が存在しているといわれる。すなわち多くの人への感染拡大の源となった患者からの「アウトブレイク」(集団感染)が起きている危険である。
1月25日の「春節」を挟むおよそ40日間、中国では延べ約30億人が国内のみならず世界中を大移動する。「新型コロナウイルス」による“大規模肺炎”の拡大は、SARSの再来を招きかねない。
 今のところ死亡率がSARSより低いことが救いだが、感染拡大を封じ込めないと、「新型コロナウイルス」に変異が生じて、さらに毒性が強くなるかもしれない。
 日本とWHO は検疫体制を強化し、各国共同の水際作戦で感染拡大を阻止しなければならない。(2020/1/26)
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2020年01月25日

【編集長EYE】安全性に疑義のゲノム編集食品うられる=橋詰雅博

 ゲノム編集した受精卵を用い双子を含む赤ちゃん3人を誕生させたことを公表した中国の研究者に対し、昨年暮れ広東省深圳市の裁判所は医学倫理の最低ラインを超えたと厳しく批判し、懲役3年と罰金3百万元(約4800万円)を言い渡した。ゲノム編集は、狙った遺伝子を自在に改変できる遺伝子操作の技術だ。発展途上国の爆発的な人口増による食糧難の解決策として期待がもてるとされる。農水畜産物の品種改良で利用が広がる。
 筑波大は、血圧上昇を抑えストレスを緩和する成分GABA(ギャバ)を数倍増やしたトマト、産業技術総合研究所は、生んだ卵にアレルギー物質が少ないニワトリ、大阪大や理化学研究所は、芽に含まれる天然毒素が極めて少ないジャガイモを開発した。京大は、肉の量が多いマッチョマダイ≠誕生させた。夢のバイオテクノロジーと評されるゆえんだ。
 とはいえ、ゲノム編集食品につきまとうのは安全性の問題。
昨年11月に都内で講演した 「食べものが劣化する日本」(食べもの通信社)の著者・安田節子さんはこう話した。
「米国コロンビア大学や米FDA(食品医薬品局)などの研究では、標的遺伝子を破壊・切断すると予期し得ない変異が起る恐れがあると指摘しています。つまりゲノム編集技術の安全性に疑義生じている。だからドイツやニュージーランドはゲノム編集食品を規制し、欧州連合(EU)司法裁判所も規制適用すべきと判断した」
 ところが安倍晋三首相は、ゲノム編集技術を成長戦略と位置付け大胆な政策を実行すると決めた。これを受けて厚生労働省は、昨年10月からゲノム編集食品について、国産も輸入品も届け出だけで販売できる新制度をスタートさせた。
 「新制度はゲノム編集などを使った遺伝子組み換え食品市場の拡大を狙うトランプ米大統領の意向にそったものです」(安田さん)
 疑念をはらせないゲノム編集食品。何らかの規制が必要だ。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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2020年01月24日

拡大運営委を2月26日(水)に、会費と購読料値上げがテーマ

 2020年度は、本部予算案は赤字を組まざるを得なくなっています。会員と読者の拡大はなかなか進まず、この危機的状態を乗り越えるには会費と購読料のアップが必要と考えています。午後2時から6時まで事務所で開く拡大運営委員会では本部・地方支部・部会の財政状態を明らかにした上で、値上げ問題を徹底論議し、結論を出す方針です。多くの地方支部の方の参加をとくに期待しています。


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2020年01月23日

【メディア気象台】 2020年1月中旬まで

◇新聞の総発行部数3780万1249部、前年比5.3%減
新聞協会加盟の日刊紙116紙の総発行部数は2019年10月現在で3780万部1249部だった。前年比(以下同)5.3%減。減少幅は過去最大だった18年と同じだった。部数でみると210万部327部落ち込んでいる。地区別でみると、減少幅は九州が最も大きく6.9%減、大阪(6.4%減)、四国(6.0%減)、東京(5.8%減)、関東(5.6%減)と続く。1世帯当たりの部数は0.04部減の0.66部。人口千人当たりの部数は20部源の30部となった。(「新聞協会報」1月1日号)
◇契約終了通知撤回を〜テレ朝に抗議声明
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は10日、テレビ朝日が昨年末、番組リニューアルを理由にして報道番組「報道ステーション」の社外スタッフ約10人に契約終了を通知したことに対する抗議声明を発表した。「真摯に番組制作に取り組んできた労働者の権利と尊厳を踏みにじる行為」であり、「10年前後の経験豊かなスタッフの大量排除は、事実上の番組解体につながるものだ」と批判。今回の強引な労務政策により、番組スタッフ以外にも不安が広まっていると指摘。「メディア関連労組として、雇用不安がジャーナリズムの萎縮につながることを危惧しています」と述べ、契約終了通知の速やかな撤回を求めた。(「しんぶん赤旗」1月11日付ほか)
◇新聞協会、個人情報保護法見直し案に意見
日本新聞協会は10日、個人情報保護法の改正大綱案への意見を発表した。同案には個人情報の不適切な利用に歯止めをかけるため、政府の個人情報保護委員会が先月公表したもの。協会は報道目的での個人情報の取り扱いに関する記述が不十分だとして再考を求めた。新聞協会は個人情報保護法の施行を背景として社会的な萎縮や匿名化が進み、取材活動に甚大な悪影響が出ていると指摘。保護法をたてに不祥事を隠す事業者などがいるとして「個人情報の適正な利用」を求めた。また、報道は規制の適用除外になることが国民に広く理解されるよう、法律の構成を改める必要性にも言及した。(「朝日」1月11日付ほか)
◇「旅券発給拒否は違憲」〜安田純平さん、国提訴
内戦下のシリアで約3年4か月拘束され、2018年10月に解放されたフリージャーナリストの安田純平さん(45)が、外務省から旅券(パスポート)の発給を拒否されたのは「外国への移動の自由を保障する憲法に違反する」として、国に発給拒否処分の取り消しと発給を求めて東京地裁に提訴した。安田さんの代理人弁護士が明らかにした。(「毎日」1月14日付ほか)
◇NHK同時配信認可〜ネット視聴、3月にもスタート
NHKのテレビ番組が放送と同時にテレビで見られる「常時同時配信」が、今春にスタートすることが決まった。総合テレビとEテレビが対象で、過去一週間分の番組がネットで視聴できる「見逃し配信」も始まる。総務省が14日、NHKが申請していた常時配信の実施基準を認可した。(「朝日」1月15日付ほか)
◇大分合同、4月から夕刊廃止
大分合同新聞社(大分市)は14日、4月1日から夕刊を廃止し朝刊に統合すると発表した。地域によっては配達員の確保が難しくなってきたことや、読者のライフスタイルの変化などで新聞を取り巻く環境が厳しくなったことなどを理由に挙げている。(「朝日」1月15日付ほか)
編集部


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2020年01月22日

3・11から9年「大川小の悲劇はなぜ起きたのか」2月13日ジャーナリスト講座

2020年2月13日(木)のJCJジャーナリスト講座は、東日本大震災から9年「大川小の非劇はなぜ起きたか〜「事後対応」という2次的人災に迫る」がテーマだ。
講師はライター兼フォトグラファーの加藤順子さん。大川小訴訟は19遺族・家族への約14億円の賠償で終結。だが、遺族たちがこだわった被告である石巻市側らの「事後対応の加害性」は判決で認められなかった。9年間、説明会や検証委員会、裁判などを取材してきた加藤さんが振り返ります。
時間:午後6時半から9時
会場:日比谷図書文化館4階小ホール
参加費:1000円
要予約:参加希望日、氏名、大学名(職業)、電話番号、メールアドレスを明記。sukabura7@gmail.comに申し込む
お問い合わせ:日本ジャーナリスト会議 電話03・3291・6475(月水金の午後対応)
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2020年01月19日

【今週の風考計】1.19─60年前の258万人スト・13万人国会デモ

★19日は「60年安保」から60年となる。若い人たちに伝えたい。60年前、「昭和の妖怪」と言われた岸信介首相、なにあろう今の安倍首相のお爺さんが、米国のアイゼンハワー大統領と会談し、日本に米軍基地を置き米兵の駐留を認める「60年日米安保条約」に調印したのだ。
★「へちまに歯が生えた顔」とも比喩される岸信介さんは、東条内閣の商工大臣として太平洋戦争を始める詔書に署名し、軍備増強に辣腕を振るい、敗戦後、A級戦犯容疑で巣鴨プリズンに3年も拘束された人物だ。その戦争責任は極めて重い。だが1953年には政界に復帰し、わずか4年で首相になった。
 その岸首相が、意気揚々と帰国して「60年安保条約」案を国会に上程し承認を求めた。だが国会審議は「核の持ち込み」や「日米地位協定」の内容など、判然としない答弁が続き、未曾有の混乱をもたらした。

★5月19日には自民党は単独で「60年安保条約」案を強行採決。火に油を注ぐ暴挙に、国会外での安保闘争は、いっそう激しくなり、国会周辺は連日デモ隊に包囲された。昨年から続く「香港200万人デモ」を、思い浮かべてほしい。これとそっくりな熱い闘いが、日本でも繰り広げられたのだ。
★6月4日には560万人を超える組合員がストに入り、2万の商店がシャッターを下ろし閉店ストを行う。15日には580万人のスト、13万人の国会請願デモが展開された。
 その際、警官隊の暴行やヤクザ・右翼団体の襲撃で多数の負傷者を出し、大学生・樺美智子さんが死亡するや、反対運動は頂点に達した。しかし19日、「60年安保」が自然成立。

★「60年安保」の期限は10年、以後は1年前の予告により一方的に破棄できると定めてある。しかし60年間、同時に締結された「日米地位協定」も含め、破棄どころか全く変更も修正もされていない。核兵器を積んだ戦艦や航空機の通過には事前協議すら適用しない旨の密約まで継続されている。
★日本に米軍基地が131か所もある。その施設内での米軍特権、税金の免除、兵士・軍属の犯罪に対する裁判権放棄など、日本の法律が適用されない事態が放置されたままなのだ。そのうえ日本が提供する米軍への「思いやり予算」は、この43年間で10兆円にのぼる。

★安倍政権は19日、外務省の飯倉公館で「60年安保」60周年記念行事を開く。待てよ!まずは米兵犯罪の裁判権を日本に取り戻すのが先ではないか。 EU諸国では実現しているにもかかわらず、米国から兵器の爆買いばかりに血道をあげる、真逆な愚は、もう止めたらいい。(2020/1/19)
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2020年01月17日

【`19読書回顧─私のいちおし】組織に抗う個人の姿が日常の風景になれ=尾崎孝史(写真家)

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 組織と個人のあり方について考えさせられた年だった。鮮明に記憶しているのは、れいわ新選組の街頭演説会で耳にした言葉だ。「世の中の構造と同じことが創価学会の中でも起こってるよ」。
 参院選の3日前、新橋駅SL広場で声をあげたのは創価学会婦人部の女性。公明党の山口代表に「ガチンコ勝負」を挑んだ学会員、野原善正氏に寄せた応援演説だった。この日の野原氏の演説は、山本太郎『#あなたを幸せにしたいんだ』(集英社)に掲載されている。
 「池田先生が作った公明党さえ守っていれば安全だと教えられているみんな。違うよ!」。応援演説の女性は、濃密な人間関係で構築された組織に身を置きながら、内部告発を続けた。
 駅のホームで雑居ビルの前で、思わず振り返る金曜日の夜のサラリーマン。少なからぬ人が、選挙や個別団体の問題にとどまらぬ何かを感じたようだ。こんな化学反応が起きたのは、「空気を読まない、流されない。這いずり回ってでも体を張ってでも抵抗を続ける」という、山本氏の野良犬魂あってのことだろう。

 米誌タイムが選んだ今年の人は、スウェーデンの16歳だった。『グレタ たったひとりのストライキ』(海と月社)の主人公、グレタ・トゥーンベリ。本はオペラ歌手の母、マレーナが家族の物語から書きはじめる。「歌に対する私の愛は無限大で、ひとつのジャンルや組織に縛られたくなかった。常に主流に反していて、いつも独りだった」
 グレタの父、スヴァンテは舞台俳優だったが、妻の妊娠を機に主夫になる。家族はマレーナの公演にあわせて、欧州の都市を点々とする。「ほかの家族とは違う、あまりにも素晴らしい」日常が、若き環境活動家を生んだのだと納得させられる。
 「誰もかれもがグレタ、グレタ、グレタ」という状況に、「どうにかしているよ」と苦笑する妹のベアタ。来年こそ、組織に抗う個人の姿が、どこにでもある日常の風景になればよいのに、と思う。
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2020年01月12日

【今週の風考計】1.12─「エレファント・カーブ」と我が老後!

松が取れた途端、妻が新聞を見ながら、「もう年に1回の旅行は止め! 外食も贅沢、貯金はガタ減りよ」とのたまう。12日付の朝日新聞5面<長寿時代 財布のひも固く>への反応である。この紙面には、同社の世論調査の結果がまとめられている。
 年金世代は、貯蓄の目的が「老後の生活費」88%、「病気介護の備え」71%がずば抜けて高く、「旅行・レジャー」は22%だった。
 年金生活の我が身に置き換えて、妻の叱声に耳を傾けざるを得ない。晩酌も週に2回するか3回にするか、ここが思案のしどころ。

この機会に、世界や日本の経済格差や貧富について、おさらいをすることにした。まずは世界的規模で格差が拡大している実態である。2019年の「世界のビリオネア」(10億ドル以上の資産保有者)は2153人、総額8兆7千億ドル、32年間で29倍、アフリカのGDPの4年分に匹敵する。
アマゾンのCEOジェフ・ベゾスが2年連続のトップ。保有資産額を前年から190億ドル(約2兆1300億円)増やし1310億ドル(約14兆6600億円)となった。日本ではユニクロの柳井正会長が41位、資産額222億ドル(約2兆4600億円)。
 世界の1%の富裕層が強欲に遂行する資産増加ぶりは、この20年の世界経済格差を象徴的に示す「エレファント・カーブ」そのものだといえる。

金持ちの話はいい。貧富の貧に目を向けよう。日本の貧困率は、1人当たりの年間可処分所得によって算定する。最新データによる日本の可処分所得は年間245万円、その額の半分しか所得のない世帯を貧困層と呼んでいる。世界第3位の経済大国でありながら、貧困率は15.6%となり7人に1人が貧困にあえぎ、1人親世帯での貧困率は50.6%まで上昇し、半数以上が貧困に苦しんでいる。
高齢者世帯の貧困状態も深刻だ。65歳以上の高齢者のいる世帯の貧困率は27.0%になる。しかも、単身世帯での貧困率はさらに深刻で、男性単身世帯で36.4%、女性の単身世帯では実に56.2%にもなる。65歳以上の女性の一人暮らしは、2人に1人以上が貧困の状態に置かれている。

家計調査年報(2017年)によると、無職の高齢者世帯が得る収入の平均は月額で12万2千円、年換算で147万円となっている。その一方で、勤労している高齢者世帯の平均貯蓄額は70歳以上で2385万円、60代で2382万円と、現役世代に比べて圧倒的に高く、40代の2倍以上となっている。つまり高齢者世帯になればなるほど、貧富の格差が拡大しているという現実がある。
 さてさて我が老後資金は、本当に大丈夫か。正直いって現実に目を向けるのが怖い。(2020.1.12)
posted by JCJ at 12:34 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月10日

【支部リポート】 福岡 「大きな敵と闘っている」 植村隆講演会に100人超=白垣詔男

 昨年秋、福岡支部に加入した西嶋真司さん(支部幹事、RKB毎日放送OB)の仲介で、今年8月4日(日)、元朝日新聞記者、植村隆さんの講演会を主催して開いた。懇意にさせてもらっている「九州民放OB会」に呼び掛けて共催になってもらった。

 支部主催の講演会は、直近がいつだったか思い出せないぐらい久し振りなので、何人入れる会場を確保すればいいのかから始まってチラシ作成、宣伝方法など五里霧中だった。

 一番、頭を悩ませたのが、「参加者が何人になるか」だった。そもそも植村さんを知っていて話を聞いてみようという人がどれぐらいいるのか。宣伝しすぎて参加者があふれてもいけないし、かといって参加者が極端に少ないと植村さんに失礼だし…。とりあえず、日刊紙にチラシを送ったが、反応がなかった。そこで、記者を知っている、そのうちの2紙に直接「告知」してくれるように頼んで書いてもらった。諸集会などでもチラシを配った。

 結果的に、80人弱座れる会場に100人超の参加者が集まり、座れない30人超は約2時間も立ったままだった。主催者としては心苦しい限りで、冒頭に「お詫び」を申し上げた。植村さんも話の初めに、座れない方々に「お詫び」をしてくれた。植村さんのお心遣いに頭が下がった。

 さて、講演会では、初めに西嶋さんが監督として制作中の、植村さんを主人公にした映画「標的」のダイジェスト版を上映、西嶋さんが解説をした。

 その後、登壇した植村さんは、自らの経歴を交えて、裁判についての説明、解説を熱く語った。その中で、植村さんが、安倍首相と裁判の被告・櫻井よしこさんの「親密な仲」を解説して「私は、大きな敵と闘っている」と解説したのが深く印象に残った。

 なお、当日集めた資料代は、「標的」制作に向けてクラウドファンディングで資金を集めていた西嶋監督に全額、カンパした。                   

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
posted by JCJ at 10:52 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月09日

市民メディア全国交流集会inあだち SNS時代ローカルの「これから」を模索 ケーブルTV、ミニコミ紙、コミュニティFMなど参加=鈴木賀津彦

 多様な市民メディア活動に携わる全国各地の人たちが集まり交流する「あだちメディフェス2019(第17回市民メディア全国交流集会)」が11月23、24両日、東京・足立区の北千住で開催された。情報の発信者に誰もがなれる時代に、市民の発信力をさらに高めて、地域のコミュニティ活動などを活発にしていこうと、開催都市を変えながら毎年開いている。

今年は北千住でインターネット動画の番組を配信する「Cwave」のメンバーらが事務局になり企画・運営した。「動画メディアの進化」「市民が街の魅力を発見する、発信する、発想する」をテーマに、各地のケーブルテレビから、ミニコミ誌やコミュニティFM、インターネットの動画配信で地域情報の発信に取り組む団体や個人、さらにローカルメディアなどを研究課題にしている大学生らが参加し、議論を深めた。

ご当地アイドルも

街歩き企画「北千住リアル謎解きゲーム」なども併催、二日間で600人弱の参加者があった。会場も、銭湯が廃業し、長年使われていないビルの地下空間を劇場のように改装してアートスペースにした「BUoY(ブイ)」をメーンに、東京芸大千住キャンパスや東京芸術センターのスタジオなどで、地域の連携を生み出す効果もあった。

初日は、市民メディアをテーマにネット放送の特番を組んだ「12時間生放送」や、各地のローカルメディアの活動発表のほか、地域の「キーパーソン取材」に行く実践企画など盛りだくさん。懇親会での交流も、ご当地アイドルが出演するなどネット時代のメディア活動の盛り上がりを示すものとなった。

翌日は二つのセッション。まず、シティプロモーションを意識した「足立で生きる≠発想する」のワークショップでは、東海大学の河井孝仁教授の指導で、足立区をもっと生きがいのある町にするために、参加者が企画力や表現・発信力をどう高めるかを考えた。

最先端事例を紹介

「SNS時代のこれからのローカルメディア」のセッションは、著書に『ローカルメディアのつくりかた』などがある影山裕樹さんが、全国で取材した先端事例を紹介。元TBSキャスターで令和メディア研究所主宰の下村健一さんの進行で、各地でメディアづくりに取り組んでいる参加者らの発言を交え「これから」の在り方を議論した。

5Gなど送信速度が高まり、動画の発信などに注目が集まるネット時代だが、一方で地道な雑誌メディアが地域で大きな役割を果たし、活字メディアの未来も語られた。「市民が自主的、主体的に、各自にふさわしいメディアを活用して表現、発信している」取り組みが強調され、情報の単なる受け手ではなく発信者になることで、メディアリテラシーも高められることが示された集会となった。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2020年01月08日

【月刊マスコミ評・新聞】田中真紀子氏の安倍評に納得=白垣詔男

「桜を見る会」の疑惑にフタをさせまいと野党が、異例とも言える、臨時国会の会期延長を求めたが与党側は安倍晋三首相に最後まで「一問一答」形式の審議をさせないままで強引に閉幕した。

12月10日付毎日新聞夕刊2面の「特集ワイド」に田中真紀子元外相が登場。「通算在職日数が憲政史上最長となった安倍首相をどう見ているか」との質問に田中さんは「はぐらかす、ごまかす、強弁する。たちの悪い人。勉強もしていない。権力の頂点に立つと、その人の特性が出ると言うけど、安倍さんは姑息な人だと思います」とズバリ斬っている。その「正確な安倍評」には納得できる。

さて、臨時国会の閉幕にあたって各紙社説がどう主張しているか―。

朝日(10日付)は「政権の専横を忘れまい」、毎日(10日付)「長期政権のひずみ一段と」、西日本(7日付)「疑惑の幕引きは許されない」との見出しで3紙とも「税金による公私混同」「招待者名簿を廃棄した公文書隠ぺい」を指摘している。

それに対して読売(8日付)は「政策論議の劣化を懸念する」との見出しで「首相側は地元後援会員らを多数招待していた。桜を見る会の趣旨に反しており、節度を欠いたとの批判は免れない」「野党5党は…事細かに問題点をあげつらった」と書き、安倍内閣の「公私混同」「公文書隠ぺい」には触れていない。産経(10日付)は「臨時国会閉幕、役割果たしたとは言えぬ」との見出しで「内閣府による招待者名簿破棄などがあり、首相や政府側の説明は十分ではなかった」と書いているが「税金の公私混同」は不問だった。

既に「ジャーナリズム」ではない読売、産経は、「安倍政権応援団」の色彩が強くなっている。「桜を見る会」を扱った社説は読売が11月14日付「桜を見る会中止 疑念の払拭へ政府は襟を正せ」と1回だけ。産経もこの間、11月24日の「桜を見る会 花見をやっている場合か」と題する1回だけだった。その社説では「(安倍)首相在任中の中止も決めるべきだろう」「選挙目当てに私物化したと批判されても仕方あるまい」と指摘している。しかし、後が続かなかった。

これに対して朝日、毎日、西日本は3〜4回、節目節目で、安倍政権が「疑惑解明」に積極的ではないことを指弾していた。

白垣詔男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2020年01月07日

【月刊マスコミ評・放送】 NHKの独立性 揺れつつ越年=諸川麻衣 

「桜」で霞みがちだが、NHKのあり方がさまざまな点で大きく問われた一年だった。

「NHKから国民を守る党」の国政進出で注目され、支持する世論が多い「スクランブル放送化」=事実上の公共放送解体。NHKも総務省もスクランブル化は否定するが、衛星デジタル放送で導入されたCAS(限定受信システム)も、将来のネット配信に想定されるパスワードも、実態はスクランブル放送では?

 かんぽ不正を取り上げた『クロ―ズアップ現代+』の続編の中止、経営委による会長への厳重注意という放送法違反の番組への介入、さらにNHK幹部の郵政側への情けない「謝罪」。慰安婦番組の改変問題に匹敵する外圧への屈服だが、真相究明も責任追及もなされず…。

 「官邸に近い」とされる板野元理事の復活人事と、明治憲法を礼賛し、安倍応援団を自認する長谷川三千子経営委員の異例の三期目就任。

 要員と予算を食うばかりの「国策」の4K8K放送。自宅で視聴したことのある人はたった一.五%に過ぎない!

 放送法改正で道筋がついたはずの「ネット同時配信」に、二年ぶりに就任した高市総務相が「既存業務全体の見直しと受信料額の検討」を求めて「待った」をかけた問題。NHKの悲願であるネットからの受信料徴収は遠のいた。高市発言を「桜を見る会」報道と結びつけた今井尚哉総理秘書官兼補佐官の暴言も、NHKを政権に無害なメディアにしておきたいとの狙いを示すものだった。

 さらに秋以降、局内の報道・スポーツの部署で複数の急死者が出たとの情報がある(詳細は公表されていない)。仮に過労死なら、鳴り物入りの「働き方改革」の内実が鋭く問われることになる。

前田晃伸・次期会長は「政権との距離で大事なのは公平感、信頼される番組作りが大事」と述べているが、ここに挙げた諸課題はほぼそのまま来年に持ち越されそうである。そして数年後には世帯数が減少に転じ、今は好調な受信料収入にも黄信号が点る。「経営体として存続するためには、放送法の定める自主自立を投げ捨てて政権にすり寄っても構わない」と言わんばかりの幹部の一連の振舞いは、NHKの独立を財政面で保障するための受信料制度の根拠を、自ら掘り崩すことになる。

一方で今年は、予算などを盾に取った権力の放送支配を防ぐため、放送行政を独立行政委員会に移そうとの動きも改めて活性化してきた。来年は、「オリパラ」などよりこうした問題こそ注目の的かも知れない。

諸川麻衣

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2020年01月06日

【リレー時評】近現代史を学んで戦争加害の実相を知る=白垣詔男

 昨年、韓国大法院(最高裁)が「徴用工問題」について被害者らに賠償を認めてから、「日韓関係」がおかしくなる一方だ。そうした事態を受けて、「日韓問題」「徴用工裁判」「中国人強制連行・強制労働」などを主題とした講演・学習会が多くなっている。幾つかの講演を聞いて私は、知らなかった日本の近現代史の詳細を知ることができた。
 その中で、「中国人強制連行・強制労働」裁判の弁護団の一員で福岡県春日市の法律事務所所属、稲村晴夫さんの話には学ぶことが多かった。
 私が知らなかった点は@「徴用工」と「強制連行の労工」の違いA強制連行・強制労働での中国人死者数が、「極寒地で劣悪の労働」と言われたシベリア抑留者の2倍近かったB戦後すぐ、中国人を強制連行・強制労働をさせた日本企業が国に損害賠償を求め、国が応じて補償したC中国人強制連行・強制労働についての2報告書(外務省と事業所が作成)を作成側が焼き捨てたが1部が持ち出されて、その内容をNHKがスクープ報道した―などだ。いずれも「周知の事実」とも思われるが私は知らなかった。
 まず、強制連行した韓国人を「徴用工」と呼び中国人をそう呼ばないのは、植民地だった韓国は「内地」で、中国は「外国」だったからだ。また、中国人労工に満足な賃金も食事も与えなかった加害企業が「中国人からモノを壊され、モノを取られた」と国に訴え、「被害金額」として三井は774万円、三菱は286万円(今の貨幣価値では数百億円から1千億円)を手当てしてもらった。国がどちらを向いているか現代にも通じる内容だ。
 そして、「NHKのスクープ報道」。これが明らかになったのは1993年で、政府も強制連行・強制労働を認めざるを得なくなった。当時の柿澤弘治外相はそれでも「反強制的な形でやられたことは遺憾」と、「強制」は認めず、謝罪ではなく「遺憾」でお茶を濁している。
これはNHKの功績だが、「アベチャンネル」化している現在のNHKでは、このスクープは幹部によって握りつぶされるのは確実と思われる。その時代は、まだ「みなさまのNHK」は健在だったことが分かる。この経過はNHK出版が書籍にしている。
 これ以外でも、中国人強制連行・強制労働問題は、一部企業と被害者らが「和解」した際、政府は口を挟まなかったが、今回の「徴用工問題」で安倍政権は、他国の判決にまで口を出し、加害企業にも「徴用工問題」については何の対応もしないよう口出しをした形跡があり、企業側も韓国最高裁判決を「黙殺」している。これもおかしなことだ。
 日本はアジア・太平洋戦争では被害者でもあり、それ以上の加害者でもある。こうした「加害の近現代史」を、私たちはもっと学び、まず「真実」知らなければならない。私は最近、深く反省をしている。
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号

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2020年01月05日

【今週の風考計】1.5─トランプ大統領の無謀なイラン先制攻撃

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。年末年始、子供や孫に囲まれ、年越しそばを啜り、「おせち」に舌鼓を打ちながら、若い世代の息吹を感じとらせてもらった。

年末はNHK紅白歌合戦、小中学生5人組ユニット・Foorinが “パプリカダンス”に合わせて歌いだすと、小学1年の孫も歌いつつノリノリでステップを踏み始める。知らなかったのが恥ずかしい。いま2020年応援歌として、<パプリカ花が咲いたら…種をまこう…ハレルーヤ…この指とまれ>と、ダンスと共に大ブームであるのが分かった。
その後に続く歌唱も初めて聴くものばかり。半ば頃になって、これも初めて耳にする「白日」の歌唱に釘づけになった。ラフな服装だが熱のこもった裏声を響かせる。テレビ画面の下に載る<時には誰かを…傷つけてしまったり…後悔ばかりの人生だ…降りしきる雪よ、全てを包み込んでくれ…>の歌詞を追う。
 何か琴線に触れる情感とシンパシーが交錯しつつ聴き入る。脇で40歳になった息子が、4人組バンド「King Gnu」の大ヒット曲だという。
後で調べてみると、「King Gnu」は東京芸大出身の4人で構成され、1年前にメジャーデビューしたばかりだ。「白日」は配信限定のシングルだが、すでに再生回数は1億回を突破している。この15日に、初CD「ceremony」 (アリオラ・ジャパン)が発売される。待ち遠しい。年始はスポーツ観戦にふけった。孫とのチャンネル争いも忙しかった。

さて、その間、IRカジノ汚職で自民党議員が逮捕され、他にも特捜部から事情聴取されている政治家5人、さらに疑われる政治家は15人ともいわれる。強行採決までして成立させた安倍政権の目玉政策が、ワイロまみれだったとは呆れはてる。
さらに新年3日、トランプ大統領の命令で、米軍はイラクの首都バグダッドを空爆し、隣国のイラン革命防衛隊「コッズ部隊」を率いるガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。イラクの主権すら侵害する前代未聞の作戦は、中東地域に深刻で危険な事態を生み出し、戦争への導火線に火を近づける無謀な挑発となった。
イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐」に言及し、国内では3日、各地で総勢10万人が「米国に死を!」と叫んで司令官の殺害を非難し、反米デモが広がっている。
 米国は、昨年12月末に約750人の米部隊を増派したが、それに加え、4日には3500人の部隊を追加増派し、イランの52か所の重要施設を爆撃すると脅す。これに対抗するイランは、すぐにでもホルムズ海峡の封鎖に踏み切ることも視野に入るだろう。
 またイラン近隣諸国も、一斉に「犯罪的な米国の攻撃」を非難し始めている。湾岸諸国の米軍基地やホルムズ海峡を航行する石油タンカーや貨物船への攻撃が始まる可能性すらある。

だが日本の安倍首相は、この間、フィットネスクラブ通いと映画鑑賞と4日で4回のゴルフ三昧に興じていた。あまつさえイランに対する米国の先制攻撃について一言も言及せず、自衛隊の中東派遣がもたらす深刻な事態への対応にも触れない。
 安倍首相はイランのハメネイ師やロウハニ大統領と昨年6月・12月に会談して、「イランの最高指導者とサシで話せる関係を築いた」と、米国・イランの仲を取り持つ日本の外交を誇っていたが、トランプ大統領に今回の暴挙を諫める覚悟はあるのか。1月中旬の中東訪問は、逆に手痛いしっぺ返しを食らう公算は大きい。(2020/1/5)
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2020年01月04日

【メディアウオッチ】 メディア労組 日韓の交流復活 共同でファクトチェックも=須貝道雄

南・呉握手 .jpg

 日本と韓国のメディア労働者間での交流活動が復活した。新聞、テレビなどの労働組合でつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と韓国の全国言論労働組合(言論労組=呉政勲委員長)は20005年以来、途絶えていた日韓の交流をこの秋に再開した。「共通の基盤作りをしたい」とMIC議長の南彰・新聞労連委員長は抱負を語っている。

事実と向き合う
12月7日、東京で「日韓新聞記者が語るメディアと憲法」(東京法律事務所9条の会主催)と題する催しが開かれた。講師の南委員長は11月24日にソウルを訪問し、言論労組と交流した様子を報告した。そこで確認したのは、2020年に韓国側を呼び日本でシンポジウムを開くこと、さらにニュースや言説の真偽を確かめるファクトチェックを両国でできないか検討することだった。
南氏はファクトチェックについて「歴史の事実とどう向き合うかの問題だ」と前置きし、ねじ曲げられた言説で不当なバッシングを受けた元朝日新聞記者の植村隆さんのことを指摘。日韓で事実の確認に取り組むことの大切さを話した。
MICと韓国言論労組が交流を再開するきっかけになったのは9月6日に新聞労連が発表した声明「『嫌韓』あおり報道はやめよう」だった。TBS系情報番組で大学教授が「韓国女性が入ってきたら暴行しないといかん」と発言し、『週刊ポスト』が「韓国なんて要らない」という見出しの広告を出した時だ。

香港政府に抗議
この声明に対し、韓国言論労組から呼びかけがあり、接点が生まれた。これまでに日韓で二つの共同宣言・声明を出した。「事実に基づいた報道で、国境を越えて平和と人権が尊重される社会を目指そう」(9月28日)と「東アジアの言論・表現の自由を守るため、市民の自由を弾圧する香港政府に抗議する」(11月25日)だ。
南氏は12月7日の集会で、日韓仲良し大特集を組んだ雑誌『東京グラフィティ』を紹介。「政治に流されず、しなやかな感性を生きる若手編集者がいることに勇気づけられた」と語り、こうした可能性を摘むことがないようにするのもメディア労組の役割だと強調した。
南氏と対談したハンギョレ新聞東京支局長のチョ・ギウォンさんは「韓国には『嫌日』はない。でも昔の植民地支配を正当化する政治家の発言に反感はある」と語り、一部政治家が日韓関係を危うくしていると指摘した。
 須貝道雄      
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2020年01月03日

【JCJ12月集会】「日韓関係とメディア」岡本・金平氏対談 歴史認識が問題の根底に 安倍政権の主張を垂れ流し報道 日本は「謝罪」韓国は「許す」勇気を=保坂義久

 今年大きく悪化した日韓関係。その本質は何か。JCJは12月8日、専修大学神田キャンパスで12月集会「日韓問題とメディア」を開いた。

 雑誌「世界」の編集長として長年、韓国の反体制運動と関わってきた岩波書店・岡本厚社長と、TBS「報道特集」のキャスター・金平茂紀氏が講演とクロストークした。

 7月に有志で声明「韓国は敵なのか」を発表した岡本氏は、1998年に当時の小渕恵三首相と金大中大統領が発表した日韓パートナーシップ宣言に言及。植民地支配により多大の損害と苦痛への反省とお詫びを表明した小渕首相と安倍現首相とでは、歴史認識で雲泥の差があると評した。

 また安倍政権が「韓国は国際法違反」と意図的に言い続けていること、それをメディアが口移しに繰り返していると批判。これが10年前なら「徴用工問題とは何か」などの特集記事が出ただろうと、近年のメディアの劣化を指摘した。 

<strong>恐怖と警戒抱く</strong>

安倍政権は韓国の反日感情を喚起してしまったが日本の報道はそれを批判せず、文在寅政権の反日政策の批判に終始してきた。岡本氏は、在日を含む朝鮮人について恐怖と警戒をもって見てきた日本人の視線がその根底にあるという。

 1965年の日韓基本条約の問題点も言及された。基本条約には植民地支配への謝罪や補償はなく、経済援助について当時の椎名悦三郎外相は「独立のお祝い金」と発言。第二条の「大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定はもはや無効」という文言も、韓国側では1910年当時から無効だったという解釈で、終戦までは有効とする日本の解釈とは異なっている。

<strong>拉致問題の影響</strong>

 金平氏は日韓関係悪化の根底にあるのは日本の歴史認識だという。今年8月に島根県で行われた日韓の大学生の合宿を取材した金平氏は、韓国の学生と比べ日本の学生は現代史について圧倒的に知識がないという。

 韓国が国際条約を守らないとする日本のメディア報道について、外務省で国際人権規約bの批准を担当した浅井基文氏の主張を紹介し批判した。 

日本も批准している人権規約bでは過去に被害を与えた人たちの損なわれた人権を回復する措置をとると定められている。

 金平氏はまた、今の日韓報道を制約しているフレームは拉致問題だと指摘した。1978年頃、日本海連続アベック失踪事件を産経新聞が報道した。当時、金平氏が公安二課に取材したところ「これは事件にならないよ」と言われた。公安は前から知っていたはずだが、事件化しなかった。

拉致という国家犯罪が、政治の思惑で道具に使われた。

<strong>金大中の言葉</strong>

 後半は会場から回収した質問用紙をもとに両氏がクロストークした。

 「日本人はドラスティックな改革を好まないのでは?」という問いに岡本氏は「日本では政権交代しても生活にたいした変化が起きないので、政に対する関心が薄いのでは」と答え、金平氏も「永田町で行われていることだけが政治ではなく、生きていくことは政治的」と強調した。

 また「韓国側がいう心からの謝罪とはなにか」について、岡本氏は「一国内のことだが」と断りながら、中南米などの独裁政権下で拉致・虐殺された被害者の家族は、独裁政権が倒れた後に、国民和解≠ニいうプロセスで「加害者が真実を語れば許す」との枠組みが示されたとしても、加害者のことを簡単には許せないものだと指摘した。

 それでも岡本氏は「日本は真実を認めて謝罪する勇気を、韓国は受け入れて許す勇気を」という金大中元大統領の言葉を引用した。

参加者は150人。

<strong>保坂義久</strong>

 <strong>JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号</strong>

 


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2020年01月02日

【リアル北朝鮮】米朝 再び緊張関係に突入か=文聖姫

 このコラムをみなさんが読んでいる頃には、北朝鮮で「重大な決定」が下されているかもしれない。今月4日、朝鮮中央通信は、朝鮮労働党中央委員会政治局常務委員会が党中央委員会第7期第5回総会を12月下旬に招集することを決定したと報じた。「朝鮮革命の発展と変化した対内外情勢の要求に即して重大な問題を討議、決定するため」という。「重大な決定」とは何かだが、ここで下手な推測はしないでおこう。ちなみに、北朝鮮は1993年に核不拡散条約(NPT)からの脱退を決める際にも党中央委員会を開催した。

 北朝鮮の国防科学院は12月7日と13日、西海衛星発射場で重大な実験を立て続けに行った。朴正天・朝鮮人民軍総参謀長は14日に談話を発表し、「実験の資料、経験、新たな技術はアメリカの核の脅威を牽制し、制圧するためのまた異なる戦略兵器開発にそのまま適用される」と述べた。「アメリカの核の脅威を牽制し、制圧するための」実験である点が気になる。  
 北朝鮮は10月2日には潜水艦弾道弾の実験を実施し、11月29日発朝鮮中央通信は金正恩・朝鮮労働党委員長の立ち合いのもと、国防科学院が超大型放射砲実験射撃を参観したと報じた。放射砲の戦闘適用性を最終検討するためのものだという。

 北朝鮮はアメリカとの非核化交渉の期限を今年末までとしている。その背景のひとつに、海外に派遣された北朝鮮の労働者の帰国問題があると筆者は考える。2017年12月22日、国連安全保障理事会が採択した決議には、海外に派遣された北朝鮮の労働者を24カ月以内に本国に送還させる内容が含まれている。北朝鮮にとって海外への労働者派遣は貴重な外貨獲得手段のひとつだ。諸外国がどれだけ制裁を履行するかにもよるが、北朝鮮にとっては痛手になることは間違いない。
 「重大な決定」の内容によっては、朝鮮半島情勢は再び緊張局面を迎えることになる。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
posted by JCJ at 13:50 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月01日

【メディアウオッチ】市民と野党共闘で放送の独立を実現 新法性で報道の自由徹底 欧米では第三者委員会が権限=JCJ代表委員・隅井孝雄

市民と国会議員、放送関係者が「独立行政委員会で行う新たな放送法制の構築」を目指すキックオフ集会≠ェ3日、参議院議員会館で開かれた。集会では、市民連合呼びかけ人の山口二郎法政大学教授が「自由な報道は民主主義のインフラ」と強調。参加者全員が「独立行政委員会」実現へ全力で取り組むことを確認した。集会で発言した隅井孝雄JCJ代表委員に、新たな運動の意義などについて寄稿してもらった。

<strong>50年ぶりに感動</strong>

 7月の参議院議員選挙に先立ち、市民連合が4立憲野党1会派と取り決めた統一要求の第13項目として、「国民の知る権利を確保する観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築する」

と明記されているのを目にし、私は新たな感動すら覚えました。

 私自身が「放送改革試案」を発表、放送行政を政府から切り離すべきだと提案したのはほぼ50年前のことです。

<strong>田キャスター退任</strong>

当時、私は民放労連の放送対策担当の副委員長などを務めておりました。1960年代後半から70年代にかけて、放送メディアに対して政府から直接的な介入、干渉がさまざまありました。

 一つだけ、TBSの例を申し上げますと、日本最初のニュースキャスターだった田英夫さんが北爆下のハノイを取材「ハノイ、田英夫の証言」(67年10月)を制作しました。

 これに対し、福田赳夫、田中角栄ら政府自民党首脳は今道潤三社長らを呼びつけ「反米番組だ」などと直接叱責。その後、TBSへの圧力が一段と強まる中、田キャスターは68年3月、番組から消えました。

<strong>放送改革試案」</strong>

 民放労連では、日本でどうしたら放送を真に報道機関たらしめるか、真剣に議論を重ね、70年「放送改革試案」を作りました。

 その第1項目が「民主的な行政を確立するために、中央と地方に放送委員会を設け、電波・放送行政を郵政省(現総務省)から切り離す。委員は公選制とする」です。

 切り離すだけでは不十分と考えた私たちは、視聴者、国民の発言権を保障する制度を検討しました。現在のBPO(放送倫理、番組向上機構」がそれにあたります。

 さらに労働者、制作者の権利保障として、個々の放送企業内でも職場、職能組織代表の発言の場を設けるとともに、番組編成制作にかかわる首脳陣のリコール権、良心に反する業務の拒否権が必要などを盛り込みました。放送メディアの立体的運営を図ったといえる

でしょう。

<strong>EU報道憲章」</strong>

政府が放送の監督権限を握っているのは、日本の他、中国、北朝鮮、ロシア、ベトナムラオスなど、限定的です。それ以外の国はメディアの独立性を尊重し、第3者委員会が免許や管理権限を持っています。

 ここで、EU(ヨーロッパ連合)が2009年に制定した「EU報道憲章」を紹介します。その第1項目は「報道の自由は民主主義には欠かせない。報道の自由、政治的文化的多様性を守ることは政府の責務である」。第2項目は「すべてのメディアの独立性は守られる。

メディア、ジャーナリストを一切、刑罰、処罰の対象にしない。独立性を妨げる立法は制定してはならない」としています。

 NHK、民放はいずれもインターネットとの融合を図り、力を蓄えつつ新しい時代に入ろうとしています。今こそ放送を政府の監督下から切り離すべきです。

 私は、市民連合と野党共闘の力で、日本の放送が政府から独立した存在となることに、再度努力したいと思います。

<strong>JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号</strong>

 

 


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2019年12月31日

核兵器使用は犯罪 非武装こそ真の平和 ローマ教皇 被爆地・広島で訴え=沢田正

 ローマ教皇(法王)フランシスコ(82)は11月23日から25日にかけて初来日し、被爆地の長崎と広島で演説。「戦争のため原子力使用は犯罪。核兵器保有自体が倫理に反する」と断罪し、カトリック教会は「核兵器禁止条約を含め核軍縮と不拡散に関する国際的な法的原則に則り行動する」との決意を表明した。
 世界で13億人の信者を擁するカトリック教会の長である教皇の被爆地訪問は38年ぶり2回目。24日午前に訪れた長崎では爆心地公園で演説し、「武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、日ごと武器はいっそう破壊的になっている。これらはテロ行為」と厳しく批判。世界の政治指導者に「核兵器は国家の安全保障への脅威に関して守ってくれるものではない。人道および環境の観点から核兵器使用の壊滅的な破壊を考え、核の理論による恐れ、不信、敵意の増幅を止めなければならない」と呼びかけた。

切り開く3つの力
 次いで夜に広島入りし、平和記念公園で被爆者やさまざまな宗教の代表者ら2000人が参加する「平和のための集い」に臨み、被爆者二人の証言を聞いたあとにスピーチ。「この場所のすべての犠牲者を記憶にとどめる。また生き延びた方々の強さと誇りに深く敬意を表する」と述べ、「思い出し、ともに歩み、守ること、この三つは、平和となる道を切り開く力があり、現在と将来の世代がここでおきたことを忘れてはならない」と被爆地の記憶の普遍性を指摘。また「紛争の解決策として核戦争の脅威による威嚇をちらつかせながらどうして平和を提案できるだろうか。真の平和とは非武装の平和以外にありえない」と世界に訴えた。
 バチカン(教皇庁)は東西冷戦時代、抑止力として核兵器を容認していたが、2013年就任の教皇は核抑止を否定。バチカン市国は17年7月に国連で採択された核兵器禁止条約を同9月に批准した。条約は50カ国が批准した90日後に発効する。全核保有国が条約に後ろ向きだが、教皇が滞日中にアンティグア・バーブーダが34番目の批准国となり、発効への流れはもはやとどめ難い。
 ストックホルム国際平和研究所によると、今年1月時点で世界の核弾頭数は9カ国計約1万3865個、前年より600個減ったものの世界を何回も破滅させる量だ。米ロが全体の約9割を保有するが、トランプ米政権は中距離核戦力(INF)全廃条約から一方的に離脱し、同条約は今年8月に失効。INFと並び核軍縮の要となってきた新戦略兵器削減条約(新START)も21年の期限切れ後の先行きは不透明だ。その一方で、両国とも新たな核巡航ミサイルの開発に乗り出すなど核軍拡に転じている。
 また米国の「核の傘」に依存、追随する日本政府は禁止条約に反対し、批准しないと公言している。

被爆者をよく理解
 今年3月末時点の被爆者健康手帳保持者の平均年齢は82・65歳。被爆者や被爆地の市民が、核なき世界の実現へ向けて教皇の発信力へ期待するものは大きい。
 教皇と握手した広島県被団協の佐久間邦彦理事長(75)は「広島のメッセージを世界に呼びかけてくださいと伝えた。生きて記憶を語り、核兵器をなくしていこうと言っている、被爆者のことをよく理解されている。原子力を戦争に使うのは犯罪といわれたことはうれしい」と語る。
 生後9カ月で爆心から3`の自宅で被爆、母に背負われて避難場所に向かう途中で黒い雨も浴びた。被爆者の相談活動に携わるが、今でも「被爆者手帳を取得したい」「原爆症の認定を受けたい」という相談を受けるという。「原爆は昔のことではなく今のこと。核兵器をなくすのは、今のわれわれ自身の問題ということを市民社会に訴えるのに教皇のメッセージは大きな意味がある」と、教皇の被爆地訪問を高く評価した。

沢田正(広島支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
posted by JCJ at 10:57 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする