2021年08月20日

【焦点】米国の白人人口が初めて減少 少数派に転じたとき待ち受ける社会は=橋詰雅博

米国でヒスパニック系(スペイン語を母語とするラテンアメリカ系住民)を除く白人の人口が初めて減少した。
 最新の2020年国勢調査によると、白人の人口は約1億9170万人で、10年前の調査より約500万人減った。1790年の調査開始以来初めてだ。全人口(約3億3100万人)に占める白人の割合も前回調査の63・7%から57・8%にダウン。最も増えたのはヒスパニック系で、約19%占めた。アフリカ系は約12%、アジア系は約6%だった。
 白人などの人種の割合は先行きどうなるのか。18年3月発表した米国勢調査局の報告書では、「2045年ころに白人は少数派になるだろう」と予測し、その時の人種割合は白人が49・7%、有色人種の合計は50・3%(ヒスパニック24・6%、黒人13・1%、アジア系7・9%など)とはじき出した。
 その主な理由として18年から2060年の間に有色人種の人口は74%増加する、もう一つはその間に高齢化が進む白人は、自然減で減り続けることを挙げている。

 白人が少数派に転落すると米社会はどんなことが待ち受けているのだろうか。矢部武さんの最新著書『アメリカ白人が少数派になる日』(かもがわ出版)によると、白人の特権≠ェ失われると指摘する。白人の特権とは何かについて、ペギー・マッキントッシュ博士が挙げた具体的な事例を書いている。
@ スピード違反や飲酒運転などの理由がない限り、警察官に呼び止められることはあまりない。
A 公共の宿泊施設の利用を拒否されるなどひどい扱いを受けることを心配する必要がない。
B 小切手やクレジットカードを使う、あるいは現金払いをする時、何か不都合が生じることはない。
C 一人でショッピングに行っても、警備員に「万引きではないか」と付け回されたり、嫌がらせを受けたりすることはない。
D お金さえあればどこでも好きな場所で家を購入できる、またはアパートを借りて住むことができる。
E テレビや新聞などで自分の人種の人たちがポジティブかつ好意的に報じられることが多い。
F 国の歴史や世界文明の話になると、自分の人種がいつも創始者として見られ、その功績がたくさん紹介される。
G アファーマティブアクション(積極的差別是正策)を取り入れている職場で働いていても、同僚から「個人の能力ではなく、人種のおかげで採用された」と陰口を言われることはない。
 マッキントッシュ博士は、米国では白人に有利な社会システムができているため有色人種のように努力しなくても特権を持つ白人はある程度成功おさめることができると分析している。
 だが、やがて訪れるだろう白人の人種的な優位性がなくなった時、少数派の白人は多数派の有色人種から仕返し≠受けるかもしれない。分断を回避するためなんらかの社会システムを備えるべきだ。
 橋詰雅博
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2021年08月19日

【スポーツ】いびつなメダル獲得策あらわ=大野晃

  異常五輪は、全国に新型コロナウイルス感染症の感染爆発をもたらした。
命の危険をメダル獲得が相殺するとでも言うように、テレビはメダルラッシュに大はしゃぎで、新聞は日本勢の競技ばかりに大きく紙面を割いた。
 コロナ禍で、海外代表が練習不足に追い込まれ、酷暑に悩まされる中での有利な条件下でも、日本代表のメダル獲得の内実は、5年前の五輪と大差なかった。
 獲得競技の極端な偏向が継続し、地の利は東京特薦の新競技に集中した。28競技306種目の前回から33競技339種目にも膨れたが、27の金メダル獲得のうち、24は、柔道、レスリング、水泳、体操の御四家計18と特薦3競技6が占めた。
 特薦競技を除けば3競技だけで、全競技の3分の1に満たない。58の総メダル獲得競技も、特薦競技を除くと前回から4競技増にとどまった。
 少ない競技で世界の頂点に挑む傾向は、21世紀に入ってから、ほぼ変わらない。

 人気の集団球技は、特薦競技で東京五輪後は消える野球とソフトボールで金メダルを確保し、女子バスケットが初めて銀メダルを獲得したが、他はほとんどがメダルには遠かった。
 開催国特権で全競技に出場した日本代表だが、政府主導のいびつなメダル獲り策では、広く多くの競技が発展する大きなバネにはならなかった。
 強引な開催は、日本代表を飛躍させることができず、世界新記録はわずかで、国際総合競技会としても、異様なほど低調だったことを示した。
 巨額な税金で整備された競技会施設を有効に利用するには、スポーツ基本法に基づく国民のスポーツ権を重視したスポーツ政策が不可欠である。
 マスメディアは、相変わらず日本勢の動きしか伝えず、世界が見えない鎖国的報道に終始した。映像観戦を強いられたファンが、会場などに詰めかけ、世界を知りたがったのは無理もない。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年08月17日

【焦点】五輪選手村訴訟 31日の結審では原告2人が口頭陳述=橋詰雅博

  
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            「晴海・正す会」ニュース8月8日号
都民33人が小池百合子都知事らを相手に損害賠償を求めた五輪選手村訴訟は8月31日(火)に東京地裁で結審(103号法廷 15時から)する。
 7月30日に裁判所に提出した原告弁護団の最終準備書面は、@不動産鑑定基準に則らず、採用する数値で価格を大きく操作できる「開発法」だけで算出した超格安な都有地の売却価格の不当性A都議会や都財産価格審議会にも諮らず、秘密裏に土地投げ売りを企んだ都の財務会計行為の違法性B1者入札で特定建築者(11社グループ)に工事を受注させる官製談合疑惑―などこれまでの裁判で被告の東京都を追及して明らかになったことなどを整理して盛り込んでいる。
 この中で注目されるのは、4月8日の証人尋問で日本不動産研究所(不動研)の不動産鑑定士・水戸部茂樹氏の証言から、都が不動研に予め目標価格を示して価格調査報告書を作成させた疑惑が浮上したことを新たに加えたことだ。
 結審では、中野幸則原告団長と原告の岩見良太郎埼玉大名誉教授の2人が合わせて15分以内の口頭陳述を行う。2017年8月17日の提訴以来、まる4年で一審は終了する。判決は早ければ年末にも。
 橋詰雅博
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2021年08月16日

【隅井孝雄メディアウオッチ】キューバでSNS活用の大規模デモ 政権崩壊も=隅井孝雄

                       
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 キューバ全土で、SNSと連動して反政府デモの波が7月11日、国中で一斉に起きた。この国では、反政府をスローガンに市民が立ち上がったことは珍しいが、市民の武器がSNSだったことも初めてだ。11日は日曜だった。そしてキューバのネット上にはこの日一日街頭デモの動画であふれた。しかしキューバ系の市民が多数いるアメリカ以外あまり伝えられていないので、私の知ることを、この場を借りてお伝えしたい。
 
数十年ぶり
 SNSと連動した抗議デモはキューバ全土で100か所に及んだとみられる。勇気をもって街頭に出た市民は3,000~6,000人に達するものとみられる
キューバでケータイを使ったデーター通信が使えるようになったのは2018年12月だった。政府は「近代化」の証として導入したとみられる。しかしその結果市民の側は政府の思惑を超えて「横のつながりを強める道具」としてネットを活用するようになり、情報統制と市民分断に風穴があくに至った。
  ワシントンポスト紙の報道によれば、人口の4割に当たる420万人の市民が携帯電話でネットを利用しているという(キューバの総人口、1132万人)。2019年にはLGBTの権利確立を求めるデモ,ゲーム好き集団SNETをつぶすな、デモなどがあった。また20年11月と21年1月には若手アーチストや知識人による文化省庁舎前での、表現の自由を求める大規模集会などが、ひんぱんに開かれていた。
活動家や独立系ジャーナリストはフェイスブックよりも、ワッツアップ、シグナル、テレグラムのアプリを好んで使っている。通信内容の暗号化しやすく警察や政府に傍受・妨害されにくいという特徴があるからだ。

日曜日早朝
 今回の7月11日のデモは3GのSNSにつながったキューバ市民が国中で一斉に街頭に繰り出し、政府への抗議の声をあげた。政治的自由と抑圧への抗議はもとよりだが、食料不足、コロナの感染拡大など、政府への批判の矢が放たれた。キューバでは停電が珍しいことではない。国の財政不足から、停電がひんぱんに起きている。医療品不足も深刻だ。病院に運ばれても薬がない。特にペニシリンやアスピリンなど、基本的な医薬品が全く不足している、

政府強権的
 こうした市民の行動に対し、キューバ政府は抑圧に乗り出した。キューバ内務省は13日、ハバナ郊外で暴徒となった複数の市民を拘束、うち一人が死亡したと発表した。しかし反政府グループは行方不明者が100人以上に達していると反論している。
 11日の街頭デモは当初は平穏な行動だった。しかしミゲル・ディアスカネル国家評議会議長が国営テレビに現れ、抗議の市民を「反革命分子、アメリカに操られて虫けら」と呼んだことで事態は一変した。治安部隊が出動、市民を次々に拘束する一方、デモ参加者はパトカーを転覆させ、政府の運営する店舗を略奪、放火の対象にした。
 SNS上には警察官や私服警察官らが、デモ参加の市民を殴る動画や、デモ後に行方が分からなくなった子供を捜している母親たち」と名乗る、警察署前の女性たちの動画などがみられたが、この日の夕方までにはインターネットがつながらなくなった。

 米強硬姿勢
 米国、バイデン大統領は12日、声明を発表,「われわれは、キューバの人々の自由への明確な呼びかけに賛同する。キューバ政府は、人々の声を封じ込める行動や暴力を控えるように求める」とのべた。また国務省プライス報道官は、13日の会見で「キューバ政府はインターネットの遮断、ジャーナリストや活動家への恣意的な拘束など、抑圧的な方法で人々の声を封じ込めている」と強い懸念を表明した。
 オバマ元大統領の時期に、一時的に両国関係の緊張が緩和の方向に向かったものの、今回のキューバ政権の抑圧的姿勢は許しがたいものと市民は受け止めている。

 国民の信えず
 キューバ当局は「国民は彼らの苦しみを食い物にする外国のプロパガンダに操られてきた」と主張する。ロドリゲス外相は11日の会見で「必ずしも意図的にネットを遮断しているわけではない。状況は複雑だ。停電が通信サービスに影響した可能性もある」とのやり取りがあった。
 表面で強権姿勢に見えるキューバ政府も、国民の痛みを意識していることが想像される。フィデル・カストロが亡くなった後、弟ラウル・カストロが一時継いだ。しかし、現政権を率いるディアスカネル政権は国民の信を得ているとはいいがたい。
アラブの春の再現もありうるように思われる。
隅井孝雄(ジャーナリスト)

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2021年08月15日

【今週の風考計】8.15─クラウドファンディング:コロナ禍で出会った「忘れたくない本」

コロナ感染拡大が深刻となり、13日には東京の感染者が5773人、1日当たり過去最多となった。新聞1面には「制御不能、病床ほぼ枯渇、自分で身を守る段階」の大見出しが躍る。
 もし罹ったら、どう対応したらよいか、自宅待機・療養というが、もし病状が悪くなったら、どこが受け入れてくれるのか、不安は限りなく募る。
帰省どころか、家に蟄居するしかない。無策の政府に腹が立つ。実態を隠した数値を振り回し、ワクチン供給は滞り、病床確保の対策はとらず、自粛・我慢の掛け声だけ。すべて責任を現場に押しつけてやり過ごす。もう「ガースー政権」は死に体、誰も信頼しないのははっきりした。

感染しないよう“巣ごもり”の日々、ツンドク本の中から、興味を覚えた数冊を手もとに置き、読書にふける。都心から郊外の筆者宅に避難してきた小学4年の孫は、コミック「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」に夢中だ。
 これまで勤めてきた出版界だけに、コロナの影響が気になる。このほど今年上半期(1〜6月期)の出版物の販売金額が発表された。紙と電子を合わせ8632億円(前年比8.6%増)となった。
とりわけ電子版出版物の売り上げが2187億円(同24.1%増)となり、全体の4分の1を占める。どうもコロナの影響はないかに見える。
 だが町の本屋さんは緊急事態宣言により営業時間の短縮や休業を強いられただけでなく、営業収益が減り、この1年間で484店が閉鎖に追い込まれた。大型書店の郊外チェーン店も、「閉店ドミノ・閉店ラッシュ」から逃れる術はなく、その結果、これまで駅の近くに必ずあった本屋さんが一軒もない事態となった。

本屋さんがなくなれば、本と出会う機会も減る。でも若い人には本を読んでほしい、感銘を受けた本を広く伝えたい、どうしたらよいか。そんな願いに応える企画が立ち上がった。
 日本出版クラブが主宰する「忘れたくない本のはなし 未来にのこすブックガイド」と銘打ったクラウドファンディングの登場だ。
コロナという未曾有の災禍の日々で出会った、「忘れたくない本」に関する話をまとめ、1冊の本をつくるプロジェクトだ。イタリアの作家パオロ・ジョルダーノの「コロナの時代の僕ら」というエッセイに刺激されて誕生した企画だという。
 目標額は100万円。支援金の調達期間は8月31日まで。その後、9月1日から10月31日までメッセージを募集し、11月1日から来年4月までにデジタルアーカイブとブックガイドを制作。4月末までにメッセージの公開とブックガイドを発送する予定という。詳細は下記にアクセスを!(2021/8/15)
https://www.kickstarter.com/projects/nihon-shuppan-club/660435252?lang=ja
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2021年08月14日

【緑陰図書─私のおすすめ】─LGBTを正しく理解するために=東 優子 (大阪府立大学教授)

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 LGBTとは性的マイノリティのうち「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の4つの頭文字をとった総称である。
 一見すると日本社会はLGBTに対してフレンドリ―であるかのような印象が持たれている。
 2015年ごろ東京都渋谷区や世田谷区が「パートナーシップ制度」の導入を発表してから、同制度を導入した自治体の数も三桁を超えている。
 また「性同一性障害者特例法」により、戸籍上の性別を変更した成人は一万人を超え、戸籍上とは異なる性別での入学・通学を希望する児童生徒への対応も進んでいる。
 こうした社会的変化に伴い、「正しい知識・正しい理解」の普及を目的とした講演・研修も、全国各地で開催されるようになった。

 LGBTを理解するうえで、何を読めばいいか迷ったときには、原ミナ汰・土肥いつき編著『にじの本棚 LGBTブックガイド』(三一書房)が良い。さまざまなジャンルの関連本について46人の執筆者が解説を加えたガイドブック。
 LGBT人口について「意外と多い」ことが強調されることも珍しくないが、マイノリティの人権を議論する際に、数の多少は本質的問題ではない。
 石田仁『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』(ナツメ社)は、多様にして複雑な問題をわかりやすく解説している。豊富なデータを駆使するだけでなく、数字のひとり歩きに警鐘を鳴らすことも忘れないなど、一般的な啓発本より深く考察している。
 森山至貴『LGBTを読み解く クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書)は、LGBTを入り口に、性の多様性をより深く、理論的に学べる良書だ。
 偏見・差別を解消するためには「良心(だけ)ではなく知識が必要」であるという著者が、丁寧に紐解く歴史を通じて、「正しい知識・正しい理解」が流動的なもので、個人や社会の都合で「事実」さえも変色することがあることに、気づかされる。
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2021年08月13日

【リレー時評】メディアの記事利用めぐりIT企業に対価=隅井孝雄

 新聞の購読をめぐって、アメリカやEU諸国ではIT大手(グーグル、フェイスブックなど)と政治の間に火花が散っている。
 ITに記事使用対価求める最初に狼煙が上がったのはオーストラリアだ。21年2月、ITの記事使用の対価支払いを強制する法案を成立させた。IT側の支払いの原資は,広告サイトや検索あるいはSNSなどでニュースを表示した際、手にする広告収入である。
 オーストラリア政府は法案提出の根拠として次の2点を強調した。「我が国のメディア産業が生き残るためITとメディアの間に公平なビジネス環境を守る必要がある」、「ジャーナリズムは民主主義社会に欠かせないがコストがかかる」。当初IT側は反発を見せたが、現在は新たな法律に基づく料金交渉が行われている。
 世界の検索の9割超を占めるグーグルの場合、2019年の広告収入は980億ドル(10兆1000億円)、この4年で4倍になり、全収入の6割を超える。報道機関の広告収入は減少する一方である。同じようなIT規制、メディア保護の動きドイツ、フランスなどEU諸国にも広がっている。
 アメリカ議会では上院、下院でともに「ジャーナリズムの競争と保護に関する法律」が提案されている。この法案は新聞もとより、ラジオ、テレビのパブリッシャーに大手ATとの交渉権を与えようというものだ。
 上院議員のエイミー・クロブシャー氏(民主党)に加え、ジョン・ケネディー氏(共和党)、デビッド・シシリン氏(民主党)、ケン・バック氏(共和党)など超党派の議員が支えている。多くの有力議員たちが新聞、ラジオ、テレビを民主主義の基盤ととらえ、フェイクが多く登場するインターネットと互角に競う存在に既存メディアが力をつけることを願っているといえるだろう。
 一方グーグルは2021年2月、報道機関に対価を払って記事の提供をする新サービス「ニュース・ショーケース」を開始した。英国ではフィナンシャル・タイムスやロイター通信など20の報道機関が参加するほか、アルゼンチン、ドイツ、ブラジルなど、現在までに参加する報道機関は450社以上となる。日本でも複数の報道機関と合意しているとグーグルは言っている。
 日本の新聞は近年減紙が目立つ。ピーク時の1997年に5376万部毎日発刊されていた新聞だが2021年1月新聞協会の発表では、3509万部に減少した。昨年1年では、272万部の減、年々幅が増加している。
 読者の支えなしにはやっていけないと朝日が7月から月ぎめ4,400円にした。京都新聞など多くの地方紙も追従する。しかし値上げでは読者離れが加速する一方ではないか。民主主義の担い手であることを鮮明に打ち出す紙面を提供するとともに、オンラインを急速に進める必要があるのではないか。
 隅井孝雄
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号

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2021年08月12日

【スポーツ】五輪成績が競技の死活にぎる=大野晃

 東京五輪の異常開催とともに、全国の新型コロナウイルス感染症の感染が急拡大し、忌まわしい五輪の印象を一段と強めた。
酷暑もあって、海外の有力代表の不振が目立ち、途中で棄権も出る中で、日本勢のメダル量産が続いた。
 五輪代表は、無観客で、海外のライバルと交流することなく、ただ懸命に競技し、テレビカメラに語りかけた。
 2008年北京五輪以来、13年ぶりに五輪競技に復帰した女子ソフトボールで2連覇を達成した日本代表のエース上野由岐子さん(39)は 「あきらめなければ夢は実現する」と訴えた。
 五輪競技から、はずれた途端に、金メダル実績を無視されて、国の援助が激減した苦しさに耐えてきたからだ。
 鉄棒一つにかけて失敗した男子体操の内村航平さん(32)は「体操ニッポンを続けることが重要」と挑んだ意味を強調した。五輪成績が競技の死活を握ることを知っていたからだ。五輪経験豊富なベテランたちに明暗はあったが、その意気込みは、単に花道を飾ることではなかった。 競技支援の将来への不安を払しょくするためのようだった。
 国民のスポーツ権を保障するスポーツ基本法を、五輪至上主義に歪めた自民党政権の冷たさが身に染みるからに違いない。
 野球やサッカー以外のマイナーと言われる競技で、競技生活の継続がむずかしい環境が、ベテラン競技者の歯を食いしばっての挑戦を促したようだ。
 異常開催の政府を批判できない弱い立場で、4年に1回、ちやほやされて、失敗すれば打ち捨てられる。マスメディアのメダルラッシュの絶叫の裏で、厳しい現状に変わりはない。国民の命を大切にしない政府は、競技者も政治利用の使い捨てである。
 政府が後押しする柔道は、しゃにむに金メダル獲りに邁進し続けた。勝つことしか意味がないかのように。新競技などで躍進した若い新代表は屈託がない。五輪至上の重圧を経験せずに、楽しんできたからだろう。
 異常開催の東京五輪は、日本のスポーツ行政の異常さも、あぶり出す。
  大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2021年08月11日

【事件】愛知リコール不思議 「不自由展その後」余聞=加藤剛

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 2019年の国際芸術祭・愛知トリエンナーレは主催者に愛知県と名古屋市が中核団体として加わり、代表が大村知事、代表代行が河村市長と言う体制でスタートした。

知事、市長なぜ対立
 ところが芸術祭の一部「表現の不自由展・その後」の展示作品(平和の少女像など)にネットで非難が出始め代表代行の河村氏が2日目に展示を見てその場で突如反対を叫び紛糾した。
 主催者の代表代行が展示を見て驚き代表に抗議するということは普通にはあり得ないことだ。前日に大阪市の松井市長から河村市長に展示のことで電話があったと言うから、その電話が重要な役割を果たしたのではないだろうか。

言いだしっぺは誰?
 大村愛知県知事へのリコール運動はクリニック院長の高須克哉氏が代表格で会長、河村市長が有力な応援団員という2人3脚の形で始まった。
ところが署名の不正・偽造が云々されるようになると、高須会長は「リコールをしようと思うが手伝ってくれるかという話が河村市長からあり、それが始まりだ」と言うようになった。一方河村氏は「高須さんからリコールの話があり、私は応援隊だ」と真っ向対立、怒った高須氏はメディア上で「もう河村氏とは絶交だ」と宣言、「この指とまれ」と言い出したのは誰か、今も謎となっている。

 目の敵にも順位?
 一昨年の「言論の不自由展・その後」では、展示作品への抗議は「平和の少女像」に集中、河村市長も少女像を目の敵にしていた。当時の「嫌韓ブーム」に背中を押されたかもしれない。
 一方、半年後の大村知事リコール運動では「天皇陛下の写真を燃やす作品に分担金を出せという大村知事はやめてチョウ」というのが謳い文句となった。その方が署名を取りやすいという判断があったのだろう。
 
 大宣伝、署名伸びず
リコール運動には百田直樹氏やデビ夫人ら著名人が応援に加わりメディアへの露出は派手だった。実際の活動はコツコツと署名を集める受任者たちに依存するが、その受任者の数が十分確保されなかったようで、私の周辺では署名したという話は皆無に近かった。街頭署名も実際に動くのは河村系地域政党「減税日本」や「維新」、「日本第一党」などの関係者が中心だった。
 昨年秋の締め切り直前に提出された署名は43万2千余人で必要数86万6千に程遠くリコールは不成立となった
 
 偽造決断、真相は?
普通ならそれで幕となるのだが選管の調査で集まった署名のうち36万人分(83%)が不正・無効と分かりアルバイトによる名簿の書き写し、一人で何人分もの拇印押しも判明、運動を取り仕切った田中孝博事務局長(元維新県議)らが地方自治法違反で逮捕、送検された。
田中事務局長は自白を拒んでおり法廷で真相がどこまで判明するか注目される。

 崩壊した「完全犯罪」
 この間のツイッターなどSNSをまとめた人のリポートによるとリコール運動に共鳴し署名集めに協力した人たちの中には集まった署名に「おかしいぞ」と疑念を抱く人が何人もおり中には「スパイの仕業ではないか」と疑い不正署名の束を抜き取って隠し、高須会長から窃盗の罪で告発された人もいたという。このため「不成立」なら団体にそのまま返還されるはずの署名が選管の管理下に置かれ選管の告発で警察の出番となった。団体の内部では、「不成立でも43万人以上がリコールを求めた」となれば知事を辞任に追い込むことができる」と言う話もささやかれていたという。そういう目論見も偽造の露見で雲散霧消した。
 7不思議の7番目は今年の「不自由展その後」への爆竹脅迫と会場閉鎖に関連するが捜査中でもあり割愛する。
加藤 剛
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
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2021年08月09日

【お知らせ】8月22日(日)午後2時から3時半まで オンライン講演会=敗戦から76年企画「日本は再び戦争をするのか?」

                                
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講師:防衛ジャーナリスト   半田 滋さん (元東京新聞論説兼編集委員)

解釈改憲で集団的自衛権を合憲とし、戦争法をつくった安倍政権と、その路線を引き継ぐ菅政権。そのもとで台湾有事になれば、日本が米軍の戦争に巻き込まれる危険性は極めて高い。「戦争をする国」への道は、自衛隊員を含む多くの若い世代を再び犠牲にする政策だ。憲法9条に基づき、戦争を止める平和外交がいまこそ求められる。

【講師の紹介】半田 滋(はんだ しげる) 1955年(昭和30)年生まれ。防衛ジャーナリスト。下野新聞社を経て、91年中日新聞社入社、元東京新聞論説兼編集委員。獨協大学非常勤講師。法政大学兼任講師。92年より防衛庁取材を担当。2007年、東京新聞・中日新聞連載の「新防人考」で第13回平和・協同ジャーナリスト基金賞(大賞)を受賞。
著書に、「変貌する日本の安全保障」(弓立社)、「安保法制下で進む! 先制攻撃できる自衛隊―新防衛大綱・中期防がもたらすもの」(あけび書房)、「検証 自衛隊・南スーダンPKO−融解するシビリアン・コントロール」(岩波書店)、「零戦パイロットからの遺言−原田要が空から見た戦争」(講談社)、「日本は戦争をするのか−集団的自衛権と自衛隊」(岩波新書)、「僕たちの国の自衛隊に21の質問」(講談社)、「「『戦地』派遣 変わる自衛隊」(岩波新書)=09年度日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞受賞、「自衛隊vs北朝鮮」(新潮新書)などがある。

参加費:500円 □参加のご希望の方はhttps://sensowano.peatix.com/をクリックして、お支払い手続きをしてください。
Zoom視聴用のURLは8月21日までにPeatixを通じてメールでお送りします。
【JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com に別途申し込んでください】
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)電話03‐6272‐9781(月水金13〜18時)
メール office@jcj.sakura.ne.jp ホームページ http://www.jcj.sakura.ne.jp/
【JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com に別途申し込んでください】
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2021年08月08日

【今週の風考計】8.8─「見上げてごらん」、上空のキノコ雲からオスプレイまで。

今週は空を見る日が続く。広島・長崎に原爆が投下されて76年。あの晴れた夏の青い空に立ちのぼるキノコ雲の写真を見るたびに、胸が締めつけられる。
 唯一の戦争被曝国・日本なのに、政府は「核兵器完全禁止条約」に背を向けて恥じない。今年1月に発効し、今や55の国と地域が批准している。「橋渡し」役などと詭弁を弄する姿勢に腹が立つ。

36年前の8月12日、午後7時ごろ、日航ジャンボ機が群馬県・上野村の御巣鷹山に墜落、乗客乗員520人が亡くなった。
 歌手の坂本九さんも犠牲となり、43歳の生涯を閉じた。今もなお天国から、私たちを見守っているだろう。代表曲「見上げてごらん夜の星を」のフレーズが、口をついて声に出る。
そうだ今年の8月13日は、ペルセウス座流星群が、8年に1度の好条件で観測できる。午前4時過ぎの空全体を広く見渡せば、流れ星が北東の空の放射点から1時間に50個ほど、放射状に飛び出すのを肉眼で見ることができる。
 こうした流星群シヨーは手放しで鑑賞できるが、空から降る航空機事故は絶対にダメ。しかも米軍が「日米安保」を盾に、日本の上空を我が物顔に飛び回り、事故を起こしているのは許せない。

今から17年前の8月13日、沖縄県宜野湾市にある沖縄国際大学の構内に、米軍の大型輸送ヘリが墜落した。
 墜落直後、隣の普天間基地から海兵隊員が大挙して大学構内に押し入り、機体やストロンチウム90による汚染土壌まで、すべて米軍が勝手に持ち去った。
 原因究明もできず、日本の法律も及ばず、まさに米軍は「治外法権」の横暴を働いたにも関わらず、日本政府は黙認してしまう。この現実が、いまだに続いている。

現に米軍横田基地のオスプレイが、7月初旬に青森県の小川原湖で、湖面すれすれの低空飛行訓練を繰り返している。日本政府への事前通告もない。一歩間違えば大惨事につながりかねない。
 在日米軍ヘリによる無法な低空飛行は、全国各地で激化している。東京都心の上空でも米軍ヘリが約200メートルの高度で通過、高層ビルを縫うような飛行を続けている。米軍に日本の航空法を適用させ、低空飛行の中止を求める課題が緊急になっている。
 成田や羽田空港での民間航空機の離着陸に際し、ニアミスや緊急事態が起きる危険性に続き、墜落惨事が起きてからでは遅い。(2021/8/8)
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2021年08月07日

【フォトアングル】新宿アルタ前 視覚障害者がオリパラ反対を訴える=酒井憲太郎

                              
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4度目の緊急事態宣言が東京に出た日、バッハ会長が来日し、都内のホテルに入った。菅首相の記者会見が映し出される新宿アルタ前で五輪中止を求めるア クショが繰り広げられた。「子どもの命を守れ!オリンピック観戦動員反対」を訴え、視覚障害者堀江さんもリレートークで「オリパラ御断り」と語った。主催は都教委包囲・首都圏ネットで参加者40名。=8日、東京新宿区の新宿アルタ前、酒井憲太郎撮影
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
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2021年08月06日

【沖縄リポート】土地規制法廃止へ声上げた名護市議会=浦島悦子

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  6月30日夕刻、名護市役所ピロティで「新基地建設のための美謝川付替えを許すな!/重要土地規制法の即時廃止を!」市民集会が行われ、梅雨末期の大雨の中、名護市議会議員・市民ら70人余が参加した(写真)。
 6月議会最終日のこの日、名護市議会は2つの決議・意見書を野党の賛成多数で採決した。一つは、沖縄防衛局が行う美謝川付替え(これをやらないと埋め立てはできない)に名護市との協議は不要として無条件に新基地建設を認める姿勢を示した渡具知市政に対し、美謝川付替え工事の中止を求めるもの、もう一つは、先の国会で強行採決された重要土地規制法の即時廃止と臨時的対応(内閣総理大臣からの情報提供要請への拒否など)を求めるものだ。沖縄への監視を強める土地規制法に対し、新基地問題の地元である名護市議会がいち早く声を上げた意義は大きい。
 集会では、それぞれの決議の提案議員からの報告があり、次期市長選(来年1月)への立候補を表明している岸本洋平市議が「市政を市民の手に取り戻そう」と訴えた。

 辺野古基地問題を巡っては、工事のためのサンゴ移植を許可するよう農林水産省が県に指示したのは違法だと、沖縄県が取り消しを求めた訴訟で、最高裁は7月6日、県の上告を棄却した。結果だけを見ると県の敗訴だが、裁判官5人のうち2人が「県の判断は違法とは言えない」と反対意見を述べたことは、国家権力の下僕となり下がった司法に絶望しか感じていなかった私たちにとって嬉しい驚きだった。
 反対意見は、「設計変更が不承認になった場合、移植は無駄になる」「移植が環境保全措置に該当しているとは判断できない」等と踏み込み、沖縄県や県民の主張と合致する。これまで私たちは、国を相手の訴訟を何度やっても門前払いされ、無力感とたたかいつつ続けてきたが、それは無駄ではなかった。設計変更申請に対する沖縄県の「不承認」判断が間もなく出る。しっかり支えていきたい。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
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