2019年12月30日

【出版部会例会】アマゾン「ひとでなし」企業だ 秘密主義、労働者酷使、税金逃れ 潜入ルポ・横田増生さん講演=土居秀夫

 出版部会では、あらゆる分野の支配を狙うアマゾンの実像を知ろうと、流通現場への潜入ルポを執筆・刊行した横田増生さんを講師に招き、「『amazon帝国』の現場を撃つ―いま何が起きているか」と題した講演会を11月22日、都内で開いた。

5人死んでいる
 横田さんがアマゾンの小田原流通センターに作業員として再度の潜入を果たしたのは2017年。02年の潜入時と比べ、東京ドーム4つ分というセンターの巨大化と、かつては本が中心だった商品の多様化に驚かされたが、何よりも労働者管理の徹底が凄まじかった。
 商品を棚から抜き取るピッキング作業にもハンディスキャナーが使われるようになって、各人の作業効率が記録・公表され、労働者を追い立てる。しかしいまだに手作業が中心で、自ら計測した横田さんは、センター内を一日20qも歩いたという。
 小田原センターでは13年以降、5人が死亡している。人が倒れても、現場から119番通報ができない。アルバイト作業員から上の社員まで情報が伝わるのに時間がかかって、手遅れになるのだ。秘密主義のアマゾンは、労働者の死亡について一切語らない。横田さんは自身の潜入経験から、ユニクロは「ろくでなし」だが、アマゾンは「ひとでなし」だと言い切った。

世界3位の市場
 イギリスでは11年、議会でアマゾン問題の公聴会が開かれた。以来、サンデーミラー紙やBBCなどが毎年のように潜入取材を行っているが、日本では自ら取材するマスメディアはない。今やあらゆる商品を扱うアマゾンにとって、日本はアメリカ、ドイツに次ぐ世界3位の市場だが、政治家も含めてものを言う人が少ないのはおかしい、と横田さんは訴えた。
 アマゾンの最大の問題のひとつが租税回避(タックスヘイブン)だ。創業者のジェフ・ベゾス氏は、創業前、アメリカ先住民居住地に本社を置いて税逃れを企てるなど、その手法は一貫している。いくつもの州では売上税をめぐる裁判を起こされ、アマゾンは敗訴した。とはいえ、アマゾンジャパンが日本で払った法人税は14年の10億円のみ。書籍だけでも2000億円近い売り上げがあるので、限りなく違法に近い状態だ。

狙われる出版界
 アマゾンは送料無料のプライム会員制、学生割引などで書籍の再販売価格維持制度を無視している。それだけでなく、中小出版社に対し、好条件の直接取引を持ちかけるが、最終的には本来書店の取り分であった価格の22%を40%にするなど、アマゾンが最も利益を得ることになる。これに反旗を翻すどころか、出版社の多くはアマゾンに対して口をつぐんでいると、横田さんは指摘した。
 講演の終わりに、ドイツのアマゾンで労働組合が結成され、ライプチヒでは1500人中700人まで組織したこと、組合員の増加に伴い時給が上がったことを紹介。労働者軽視を止めさせるには労働組合が必要だと、横田さんは強調した。そして、大手メディアがアマゾンの租税回避や労働の実態をもっと取り上げるべきだし、政官の監視と指導が欠かせないと締めくくった。
 講演後の質疑では、アマゾンの消費税の支払い方への疑問やフェイクレビュー、売り上げの半分以上を占めるマーケットプレイスの問題などが取り上げられ、充実した議論になった。 

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月29日

【今週の風考計】12.29─見過ごせない中国の人権弾圧と覇権主義

★今年を振り返る各種<10大ニュース>、そこには天皇陛下即位・令和改元、ラクビーW杯・日本ベスト8、消費税10%、などの項目が上位に並ぶ。
 だが「徴用工」問題で日韓関係が悪化した事態こそ、トップにおいてよい重大なニュースだ。いまだに解決しないのも、日本が朝鮮を侵略し、「徴用工」として韓国人労働者を強制的に働かせてきた「加害責任」に、安倍政権が向き合わないことに根源がある。

★また隣の中国で起きている事態も、見過ごしてはならない。今年は中華人民共和国が誕生して70年(10/1)、チベット民衆が中国の支配に抵抗して蜂起した「チベット動乱」から60年(3/10)、中国の学生・市民の民主化要求を武力弾圧した「天安門事件」から30年(6/4)。
 重大な出来事が起きた銘記すべき年なのに、中国政府は、中国辺境地域のチベット族やウイグル人、そして香港の学生や市民への弾圧を、今もなお続けている。
★新疆ウイグル自治区では100万人のウイグル人住民が、中国当局の手で強制収容所に入れられていると、国連は懸念を強めている。「香港問題」への中国の介入も、6月に起きた200万人・平和デモの当初から、「組織的暴動」とレッテルを貼って抑圧のうえ、さらに丸腰の若者に向かって実弾を撃つまでに至った。これを習近平国家主席の督励のもとで実行している。まさに人権弾圧そのもの。
★日本が実効支配している尖閣諸島の周辺海域では、中国公船による領海侵入など延べ1053隻、去年の1・7倍の過去最多。威嚇による現状変更は海洋法違反だ。中国の覇権主義は露骨さを増している。そこへ習近平主席の来春「国賓訪日」が上積みされれば、どうなるか。過去にも中国で天皇陛下の政治利用がなされた歴史を踏まえれば、手放しで喜べるものではない。

★台風や火災による被害・文化財の消失も記憶しておきたい。発生した台風は29個に及ぶが、中でも台風19号は、東日本および東北地方に記録的な豪雨をもたらした。7県71河川の128箇所で堤防が決壊した。
 また10月31日、沖縄・首里城から出火、正殿など計8棟が焼損した。政府は再建に全力を挙げる方針だが、このバーターに辺野古基地埋め立ての加速を強いるのはゴメンこうむる。
★パリのノートルダム大聖堂も、4月15日夕から16日朝にかけて発生した大規模な火災で、高さ約90メートルの尖塔が焼失。幸いにも大聖堂正面の鐘楼は焼け残り、聖遺物「キリストのいばらの冠」は無事だった。現在も修復作業が続き、恒例のクリスマスミサは、216年ぶりに中止。

★その代わり、ギヨーム・ド・マショー作曲「ノートルダム・ミサ曲」に耳を傾ける。9月に発売されたCDは、ベルギーのシュメルツァーが率いる古楽集団グランドラヴォアの歌唱演奏(Glossa/PGCD-P32110)。<聖母マリア>を讃える荘厳な歌声に浸りながら除夜を迎えたい。皆さん、よいお年をお迎えください。(2019/12/29)
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【ジャーナリスト講座】ワンテーマずっと追求 フリーランスライター・畠山さん=橋詰雅博

 「広報担当者から『あなたは誰ですか』と聞かれて、フリーランスライターと答えてもラチが明かないときは、『日本国民です』と言います。これキラー・フレーズ≠ナすよ」――フリーランスライターの畠山理仁さん(46)は大まじめにこう言った。 
 12月11日の「フリーランスの世界―その利点と難しさ」は、笑いと驚きが混じるちょっと愉快なJ講座だった。

勤め人経験ない
 講師の畠山さんは早稲田大学第一文学部在学中から雑誌などに原稿を書いてきた。勤め人の経験はなく、26年間もフリーでライター活動を続けている。 
 注力するテーマは政治家と選挙だ。とりわけ泡沫候補者≠精力的に取材。大手メディアから無視され、誰も関心を持たないからだ。勝ち目がなくても実現したい政策を訴えたくて出馬する泡沫を畠山さんは無頼系独立候補≠ニ呼ぶ。約20年間のその独自の戦いをまとめた著書「黙殺 報じられない無頼系独立候補≠スちの戦い」(集英社)は、2017年開高健ノンフィクション賞を受賞した。
 畠山さんはフリーランスの利点をこう挙げた。
・個人事業主だから上司も面倒な部下もいない
・毎日満員電車に乗らなくて済む
・嫌な仕事は断れる
・自分の興味や関心で仕事ができる
 畠山さんは「興味あるテーマを追い続けられるのが最大の利点」と言う。畠山さん場合、そのテーマは無頼系独立候補者だ。
「どの候補者もインパクトがあり、政治を真剣に考えている人が多い。よく『選挙に出れば』と言われるが、取材する方がはるかに面白い」(畠山さん)。

アルバイトも
 一方、不利な点は何か。
・会社の看板がない
・相手から信用されない
・潜在的無職
・お金のことが心配
 畠山さんは「やはり経済的に苦しい。ライターの仕事のほかに掃除や引っ越しの手伝い、エキストラなどのアルバイトもやっています。ノンフィクション賞の賞金300万円は借金の返済であっという間に消えてしまった」と話す。
 とはいえ落ち込んではいられない。
「後ろ向きの考えになったら精神的に参ってしまう。好きな仕事をやっていることを忘れないように心掛けています」(畠山さん)
 フリーランスの世界は厳しい。しかし、これと思ったテーマを長く深く取材ができる。

 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月28日

【編集長EYE】政府推進の5G 人体への悪影響ひそむ=橋詰雅博

 国家安全保障会議(議長・安倍晋三首相)の事務局を担う国家安全保障局(局長・北村滋前内閣情報官)に来年4月に経済政策を立案する「経済班」が新設される。米国家経済会議(NEC)にならったこの日本版NEC≠ヘ、経済的手段を介して国の安全保障を追求する「経済安保」がその役割だという。手がける目玉政策が次世代の高速移動通信方式「5(ファイブ)G」の普及と促進だ。

 5Gは、超高速、大容量、低遅延、多接続が特長とされる。AI(人工知能)や自動走行車、ロボットなどにつなげて実用化すれば、あらゆるモノがネットでつながるIoTが実現されて日常生活が飛躍的に便利になると喧伝されている。経済班が練った計画をベースに安倍晋三政権は来春実用化サービス開始に向けて企業が5G投資を前倒しできるよう税制優遇支援策を打ち出し通信網の拡充を早急に実現しようとしている。ここには5G関連機器で先行する中国ファーウェイの市場への進出を阻む狙いがある。これはトランプ米政権の意向も反映されている。

 しかし5Gには人体への悪影響が懸念される。周波数が現在のスマホに用いられる4G(3、6GHz以下)よりも高く、最高が28GHzだ。携帯電話などの電磁波による頭痛やめまい、睡眠障害など「電磁波過敏症」が増えている。日本では人口の3〜6%が電磁波過敏症と言われる。しかも電磁波は周波数が高くなるほど波長が短いので、建物などに阻まれ、遠くまで届きにくい。このため5G基地局を約100bごとに設置が必要。東京では、都有施設、公園、電柱、地下鉄、バス停などに設けられる。

 そうなると電磁波被曝量が著しく増える。「健康への恐れがある」とベルギーのブリュッセル首都圏地域やスイスの4州などでは5G導入の一時停止を決めた。

 日本でも市民団体が基地局設置の反対運動を始めている。5Gのウラには健康を害する危険リスクが潜む。

 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月27日

【沖縄リポート】 辺野古埋め立て完了100年かかる?=浦島悦子

 辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会(土砂全協=土砂搬出予定地とされる西日本7県の市民団体などで組織)は12月2〜4日、沖縄島の中部、南部、北部の島ぐるみ会議各ブロックと共催で、「沖縄―全国の連帯で辺野古埋め立ては止められる!」連続学習会を開催した。3日間で300人以上の県民が参加し、今後計画されている大浦湾地盤改良工事の問題点や沖縄県土砂条例の改正について学んだ。

 学習会の講師はいずれも土砂全協顧問の3人。湯浅一郎氏(ピースデポ共同代表)は、「現在強行されている埋め立ては民主主義と地方自治の破壊であると同時に、生物多様性条約・国家戦略に真っ向から反し、国家による未来世代に対する犯罪行為」だと述べ、「マヨネーズ状」と言われる軟弱地盤の改良工事に使う砂杭7万7千本及び敷砂として必要な650万㎥(沖縄県の年間海砂採取量の3〜5年分)の砂採取は県内外に深刻な自然破壊をもたらすと強調した。

 北上田毅氏(沖縄平和市民連絡会/土木技師)は、「軟弱地盤問題は想像以上に深刻」「新基地の完成時期も総工費も全く見通しがつかない」と述べた。末田一秀氏(元大阪府環境行政担当)は地盤改良工事に使用される可能性の高い鉄鋼スラグの危険性と、沖縄県土砂条例(埋め立て用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例)を、行政指導から法的強制力を持たせるよう改正する必要を説いた。

 連続学習会途中の3日は、沖縄防衛局が民間企業である琉球セメントの安和桟橋から不法に埋め立て土砂搬出を強行開始してから1年目に当たり、桟橋に隣接する護岸を挟んで海・陸連帯抗議集会が行われた。海には66艇のカヌーと抗議船4隻の80人、陸には150人が参加。土砂全協の阿部悦子共同代表、3人の顧問ほか各地からも駆けつけ、連帯を確認した。

 辺野古側埋め立て区域への土砂投入開始から1年目の12月14日には、辺野古で海上抗議行動が行われたが、1年間で投入できた土砂量は全体の約1%余。単純計算でも100年はかかる?ことになり、その間、海は日々破壊されていく。国民の血税の壮大な浪費を許さないためにも来年こそ、この愚行を止めたい。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月26日

【香川支部】国家との対峙が戦争を妨げる 12・8高松集会=刎田鉱造

「12.8 日米開戦の日に考える」と題して集いを持ちました。主催はJCJ香川支部などが参加している「8・15戦争体験を語りつぐ集い実行委員会」。今年は8月15日が台風に直撃され中止のやむなきに至りました。そこで12月には同じテーマ、同じ講師で集いを持つことにしました。 
 「戦争で解決するしかないの〜社会の分断を超えて」と題して、饗場和彦・徳島大学教授の話を聞きました。「戦争の惨禍いくら語っても戦争は防げない」と話し、「理性で市民をだましにかかる政府・国家と対峙してこそ戦争をなくすことにつながる」と強い言葉で訴えました。

 会場とのやり取りで「先の戦争では日本だけが悪いわけではない」の声があり、これには「そのことだけをとらえて」全体のように話す傾向がある。注意しなくてはいけない」という意見が出されました。また戦争遺跡を調査する問題をめぐっては「韓国人徴用工を働かせた工場や彼らが作った橋など施設を記録していくことも大事だ」と今の課題が論議されました。
 この日午後からは高松駅前で日米共同訓練に伴いオスプレイが香川県の自衛隊演習場に来ていることに対する緊急抗議集会が開かれました。集い参加者も「オスプレイ来るな」とシュプレヒコールを上げました。

はねだ鉱造(香川支部)
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2019年12月23日

【メディア気象台】 11月末から12月初旬=編集部

◇樹木希林さん関連本、ベストセラー席巻
俳優の樹木希林さんが昨年9月に亡くなった後、関連本の出版本が相次ぎ、今年の出版界を席巻した。出版取次大手の日販とトーハンは28日、2019年の年間ベストセラーを発表、両社とも1位は「一切なりゆき 樹木希林のことば」(文芸春秋)だった。また日販の3位には「樹木希林 120の遺言」(宝島社)が入り、トーハンでも5位になった。(「朝日」11月29日付)

◇ヘイト名誉毀損認定、罰金刑〜京都地裁
ヘイトスピーチをしたとして名誉棄損罪に問われた「在日特権を許さない市民の会」の元京都支部長の西村斉被告(51)に対し、京都地裁は29日、罰金50万円(求刑懲役1年6月)の判決を言い渡した。懲役刑ではなく罰金刑とした理由を「公益を守る目的で主張を述べる中、名誉毀損の表現行為に及んだもので、相応に考慮すべきだ」と説明した。ヘイトスピーチをめぐり侮辱罪ではなく、より量刑の重い名誉棄損罪が適用されたのは極めて異例。(「朝日」11月30日付ほか)

◇福島氏の名誉「記事が毀損」
社民党の福島瑞穂副党首が、静岡新聞のコラムで名誉を傷つけられたとして、筆者で政治評論家の屋山太郎氏に330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は29日、請求全額の支払いを命じた。問題となったのは、今年2月6日付で掲載された屋山氏のコラム。福島氏について「実の妹が北朝鮮に生存している」などと批判したが、同紙は3日後に記事を訂正し謝罪した。(「朝日」11月30日付ほか)

◇ネット同時配信、時間短縮を検討
テレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「常時同時配信」を巡り、NHKが経費削減のため、配信時間を短くする方向で検討していることが分かった。従来の案では1日24時間の配信だったが、深夜などの時間帯は配信しない変更案が浮上している。(「東京」12月1日付ほか)

◇電通、違法残業で是正勧告
広告大手「電通」で、2018年に社員の違法残業などの労働基準法と労働安全衛生法違反があったとして、三田労働基準監督署が9月に是正勧告していることが、同社への取材で分かった。同社をめぐっては15年12月に新入社員高橋まつりさん=当時(24)=が過労自殺。法人として労基法違反罪で有期判決を受け、確定したにもかかわらず、適正な労務管理をしていなかった実態が指摘された。(「東京」12月6日付ほか)

◇映画の助成不交付、提訴へ
日本芸術文化振興会(河村潤子理事長、芸文振)が映画「宮本から君へ」の助成金を「公益性の観点」から不交付にした問題で、制作会社のスターサンズは7日までに、不交付決定は違憲かつ違法であるとして、芸文振に対して取り消しを求めて東京地裁に提訴する方針を固めた。芸文振は芸術文化活動の援助にかかわる文化庁所管の独立行政法人。「宮本から君へ」は真利子哲也監督の人間ドラマだ。原告となるスターサンズの河村光庸社長によると、3月に芸文振から1千万円の助成内定を得た。ところが、出演者の一人、ピエール瀧さんが麻薬取締法違反で執行猶予付き有罪判決を受けたことから、7月に「公益性の観点から適当ではない」との理由で、「不交付」を通知された。(「朝日」12月8日付)

編集部
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2019年12月22日

【今週の風考計】12.22─伊藤詩織さん勝訴が問いかける重い内容

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、性的暴行を受けたとして元TBS記者・山口敬之氏を訴えた裁判で、18日、東京地裁は「酒を飲んで意識を失った伊藤氏に対し、合意のないまま性行為に及んだ」と認め、330万円の賠償を命じる画期的な判決を言い渡した。
地裁は、タクシー運転手やホテルドアマンの証言、そしてホテルの監視カメラの映像などを検証し、山口氏の「性行為には合意があった」とする主張を退け、「重要部分の陳述には不合理な変遷があるとし、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実は認めることができる」と認定した。
さらに「伊藤氏は性犯罪の被害者を取り巻く法的・社会的状況の改善につながると考え、自身の体験を明らかにした」と述べ、その行動には公益を図る目的があったと認め、山口氏が名誉毀損を訴え1億3千万の賠償金を求めるスラップ訴訟も退けた。

だが、こともあろうに判決の翌日、加害者の山口氏は日本外国特派員協会で記者会見を開き、内外からの記者50人近くが出席した場で、即日控訴した理由について、「伊藤さんの発言はすべて嘘、本当の性犯罪被害者は会見で笑ったりしない」などのトンデモない発言を弄した。
会見の司会は花田紀凱・「月刊Hanada」編集長、同席者は弁護士に加え小川榮太郎氏。このメンバーは<安倍応援団>、伊藤さんバッシングを繰り広げてきた面々だ。
そもそも、山口氏はTBS時代から“安倍の太鼓持ち”と呼ばれるほど、安倍首相と個人的に親しく、自分の結婚披露宴に安倍首相を招き、また2016年参院選挙の1か月前には、山口敬之『総理』(幻冬舎)を刊行してヨイショ!

許せないのは伊藤さんが、勇気をふるって告発すると、山口氏に同調するネトウヨたちが「あなたにも落ち度があったとか、ハニートラップとか、枕営業とか」などとバッシングし、セカンドレイプで二重三重に傷つけた行為である。この責任はどうとるのか。
 思いおこしてほしい。今から4年半前、当時TBSのワシントン支局長だった49歳の山口氏が、就職活動のアドバイスを求め訪問してきた26歳の伊藤さんを、酒に酔わせて強姦するなど、社会常識からみても許されることではない。
ネット上には、伊藤さんを擁護し、判決を支持する痛烈な書き込みがあふれている。
「性被害にあったら、暗く俯いて隅っこで暮らしとけ、とでも言いたいのか? じゃあ山口氏は、妻子がいる50代の男性なのに20代女性と性的な関係を持った人らしく、申し訳なさそうな顔していてくださいよ。妻子側から見たら、合意があろうがなかろうが、あなたのやったことは不貞行為で妻子に対する裏切りであることに間違いないでしょ」

さて伊藤さんは、この判決が出る前に、準強姦容疑で刑事告訴したにも関わらず、山口氏の逮捕状が取り消されたり、不起訴処分にされたりしている。その背景には、捜査への圧力があったのではないかという、疑惑は今なお消えない。
実際、「週刊新潮」が山口氏へ送った<伊藤問題>での質問メールに、山口氏が<北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。 伊藤の件です。取り急ぎ転送します。 山口敬之>と、誤送信を「週刊新潮」編集部にしている。
この「北村」とは誰か。山口氏は「弁護士だった父親の知人の北村さん」と釈明しているが、内閣情報調査室のトップだった北村滋内閣情報官(現・国家安全保障局長)ではないのか、彼に取材の対応を相談したのではないか、今や確実な筋書きだという。ああ、山口さん!(2019/12/22)

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2019年12月19日

【おすすめ本】安田純平+危険地報道を考えるジャーナリストの会『自己検証・危険地報道』─「危険な取材」が担う役割と教訓=鵜塚健(毎日新聞)

 2014年4月、シリアで拘束されていた4人のフランス人ジャーナリストを空港で出迎えたのは、当時のオランド大統領だった。だが日本では必ず「自己責任論」が出て、政府がジャーナリストに旅券返納を命じるなど介入の動きが目立つ。
「危険を冒さないと得られないような情報はいらない」「外国メディアの情報で十分」との声も少なくないのが現実だ。

フリージャーナリスト・安田純平さんが3年4カ月、シリアで武装勢力に拘束後、解放されて1年が経過。本書で安田さんが自身の取材の歩みを詳細に報告。また中東や北朝鮮、アフリカなどの現場で取材するフリーや元新聞記者で作る「危険地報道を考えるジャーナリストの会」のメンバーが、今回の拘束事案での課題と今後の教訓を徹底的に討議。

 熱量の高い議論の裏には、遠い国の現実を伝える重要性、ジャーナリストの役割が軽視される危機感と苦悩がある。
 2015年にシリアでフリーの後藤健二さんと知人の湯川遙菜さんが殺害された直後、世論調査の内閣支持率は上昇した。2004年にイラクで旅行者の香田証生さんが拘束、殺害された際にも、政府の姿勢を巡っての議論は起きなかった。
 会のメンバー、綿井健陽氏は「彼らを処刑した実行犯は過激派組織だが、それを容認したのは誰だったか」と命題を投げかける。危険地報道というテーマを通じて問うているのは、政府やメディアのあり方だけでなく、社会を構成する私たち一人一人の意識だ。(集英社新書860円)
「自己検証  危険地報道」.jpg

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2019年12月15日

【今週の風考計】12.15─自衛隊の中東派遣etc.トンデモ閣議決定

国会が閉会したとたん、トンデモ閣議決定が頻発している。まずは10日の閣議決定、その中身は噴飯ものだ。「反社会的勢力の定義」について「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」とする答弁書を閣議決定したのだ。
 安倍総理主催の「桜を見る会」の参加者をめぐる疑惑を隠すため、ついに政府指針まで捻じ曲げたのである。

12年前の第1次安倍政権時に、政府の<犯罪対策閣僚会議幹事会>が決めた指針には、「反社会的勢力」とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である」と明確に定義している。
 この定義をもとに金融庁は各金融機関や業界団体に「反社データベース」の充実などを求め、また芸能プロダクションを含め民間企業でも反社会的勢力との関係遮断に、懸命に取り組んできた。
 定義が曖昧になってしまえば、「反社」勢力が復活・伸長するだけでなく、政府に都合の悪い人物や団体が、「反社」勢力に仕立て上げられる危険だって、ありうるのだ。

20日には、2020年度予算案102兆円を閣議決定する。そのうち防衛関係費は、8年連続して増額の5兆3223億円と過去最大。
 日本主導の下で自衛隊F2戦闘機の後継機を開発する費用100億円、地上配備型迎撃ミサイルパトリオット改修費に加え、最新鋭ステルス戦闘機F35の取得費、宇宙やサイバー空間などの新領域の防衛力強化などへの対策費、米国からの装備品の調達費なども盛り込まれている。国会に上程するからいいというものではない。
続いて27日には、海上自衛隊の中東派兵を、国会の審議にもかけず、閣議決定に持ち込む算段である。中東海域へ自衛隊270人、海上自衛隊の護衛艦1隻の派遣に加え、ジブチに駐留しているP3C哨戒機1機を転用する。派遣海域はオマーン湾、アラビア海北部の公海、バベルマンデブ海峡の東側の公海が中心になる。
 来年1月下旬にも活動が本格化する米国主導の有志連合「センチネル作戦」に対応して、情報収集などでトランプ大統領にイイ顔するためだ。もし自衛隊員や民間人の命にかかわる不測の事態が起きた場合には、海上警備行動を発令し、日本関連船舶の保護も想定するという。
 いくら派遣期限1年と区切っても、 憲法9条を無視し集団的自衛権の行使、実戦協力へ踏み込む閣議決定の無謀さは変わらない。

閣議決定とは何ぞや。国政に関する重要事項に関して、内閣の意思決定が必要なものについて、全閣僚の賛成を得て政府の方針を決定する手続きである。
 だが待てよ、国会や両院での委員会の招集は拒否して審議を妨げ、国会が閉会すれば閣議決定で事を進める、こんな手法がまかり通っていいのか。三権分立が踏みにじられ、内閣が国会や司法を抑え込む官邸政治の横暴は極まりない。
首相官邸内にある閣議室は広さ110u、そこにある5.2メートルの円卓を、閣僚が取り囲むように着席するという。決定文書に花押を記す墨汁入り硯と細筆が用意されている。会議は非公開だが、その議事録は5年前から作成が義務づけられている。
 10日に閣議決定した<「反社」勢力の定義変更の文書>に、一人でも「おかしい」と異議を唱える閣僚は、いなかったのか。警察・公安を統べる国務大臣、また下駄の雪と揶揄される公明党の閣僚は、どんな発言をし、どんな顔で署名・花押を認めたのだろうか。議事録の公開が待たれる。(2019/12/15)
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2019年12月11日

【内政】有力議員の地元相次ぎ集会 自民「地方」を改憲の主戦場に 九条の会や法律団体 反対運動も活発化=丸山重威

 自民党は、10月11日憲法改正推進本部を開き古屋圭司本部長代行をトップとする遊説組織「憲法改正推進遊説・組織委員会」を新設、改憲の必要性を訴える全国遊説を始めた。「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」や、全国の「九条の会」の地域での改憲反対運動に対抗したもので、改憲の「主戦場」は地域になってきている。
 一方国会では、憲法審査会で、欧州に調査のため派遣した委員の報告を行い、ついでに自民改憲案も議論する自由討議を始めることを計画。実際に委員会を開いた。メディアは「2年ぶりに自由討議」などと報じた。

幹事長の地元から
 自民党の全国遊説は、10月18日、二階俊博幹事長のお膝元・和歌山の「憲法を考える県民集会」でスタート。続いて28日には、埼玉で憲法改正をテーマにした「地方政調会」を開いた。
 和歌山では1600人が参加、安倍首相が「幹事長が改憲議論の先頭に立つ決意で地元で集会を開いた。敬意を表する」とビデオメッセージ。
 埼玉では岸田政調会長が「きょうの日が令和の時代に憲法の在り方を考える契機になるよう願っている」と挨拶し、桜井よしこ氏が講演した。自民党は11月18日には岸田氏の地元・広島で、12月2日には福島でも地方政調会を開くという。

与野党で海外視察
 「20年改憲」を目標とする自民党は、臨時国会で憲法審査会を開き、国民投票法の改正と改憲案の説明に入りたいとしてきている。
 衆院審査会は9月中下旬、自民党・森英介氏を団長に、立憲・山花郁夫、自民・新藤義孝、公明・北側一雄氏ら与野党合同で、ドイツ、ウクライナ、リトアニア、エストニアを訪問した。
 外国視察で与野党委員の「懇親」を図るのは自民党の常套手段だが、11月8日に報告の委員会が開かれた。「2年ぶり自由討議」と報じられたのはこの委員会。社文法律センター、自由法曹団、青法協、日民協などの「改憲問題対策法律家6団体連絡会」は12日、「安倍改憲のための憲法審査会の開催に強く反対する」とする緊急声明を発表した。しかし、委員会は14日にも開かれ、維新の会が立憲民主党内の「不一致」を問題にしたりしている。

報道これでいいか
 11月7日にはもう一つ、注目されるニュースがあった。全国22の裁判所に提訴された、原告約7700人の「安保法制違憲訴訟」のうち、東京地裁が訴えを棄却する判決を言い渡した。
 4月22日の札幌地裁に続くもので、判決では「平和とは抽象的な概念で、個人の思想や信条によって多様な捉え方が可能。国民の権利として具体的な意味を確定はできない」「原告の精神的苦痛は義憤ないし公憤。限度を超えているとはいえず、法的に保護する利益ではない」などとした。
 在京紙では、東京新聞が社会面できちんと報じ社説でも取り上げたが、他は朝日が3社面3段で扱っただけで、後は3社面の横書きの雑報扱い。
 議論があった裁判で、専門家から言えば、珍しくない判決。しかし、憲法がこれだけ問題になる中、ニュースとして、これでいいのだろうか。

丸山重威

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月10日

【ベネズエラ最新事情】報道の捏造次々明らかに 米の政権打倒作戦は失敗 イシカワ駐日大使ら真相を語る=吉原功

 本年初頭から3カ月近く、全国紙、NHK、民放キー局は連日のように南米ベネズエラの「政治的社会的混乱」を書き立て、言い募った。
 「政権不満が噴出、反乱兵が武器強奪」「野党の国会議長、暫定大統領宣誓、米、米州諸国次々承認」「トランプ氏、全力で圧力と声明」「政情混乱ベネズエラインフレ率1000万%!」「米、ベネズエラ石油に制裁」「国外逃避300万人」「ベネズエラ混乱マドゥロ政権に国際包囲網 欧米の多くグアイド氏支持」などなど延々と続く。4月以降、報道は激減したが姿勢は基本的に変わりない。

米宣伝戦略に乗る
 これらの報道から浮かび上がるのは、マドゥーロ大統領は人権弾圧する独裁者であり、経済政策の失敗によりベネズエラ国民を食糧危機・生命危機に陥れている張本人、暫定大統領を宣言したグアイド国会議長はそのベネズエラを民主化し経済を立て直す救世主といったイメージである。これは事実に基づいた正しいイメージなのであろうか。
 米国の宣伝戦略にみごとに乗ってしまった結果なのではあるまいか。ベネズエラの歴史と社会を多少とも知る人はそう懸念し、事実・真実を詳しく知りたいと思うのではなかろうか。

 10月末、その思いにピッタリの研究会が2回、JCJ事務所で開かれた。一回目はセイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使の報告と最近ベネズエラを訪れたキューバ友好協会の宮本真樹子さんの見聞を聞き、二回目は哲学者・社会思想家西谷修さんの、米国をどう理解するかという報告、および来日したベネズエラ外務省マウリシオ・ブランコ北米局長のチャベス革命の基本点についての報告があり活発な質疑が交わされた。
 出席は研究者、ジャーナリストを中心にともに15名ほど。イシカワ大使は9月にもブエノス・アミーゴスという市民団体主催の会でベネズエラの近況を報告し、マウリシオ局長は11月初頭、日本記者クラブで講演を行っている。いずれも極めて内容の濃い報告で紹介できないのは残念だが、以下ではイシカワ大使の9月の報告を含めた概要を紹介しよう。

損害・困窮に耐え
 大使は、本年米国務省のHPに掲載され直ちに削除されたベネゼエラに関するファクト・シートから話をはじめた。2015年から19年までに150の措置をとったと誇るものだったが、内容は経済的政治的制裁措置であり、ベネズエラの「体制転換戦略」を示しており、社会変革のベネズエラ・モデルを潰し、石油などの資源を奪取するというチャベス革命後継続的に取られてきた戦略の延長線上にあると指摘した。
 そのクライマックスがグアイド議長の暫定大統領宣言。メディアによる大キャンペーンにより、たった50カ国だったがグアイド氏を暫定大統領として認めさせることに成功した。しかし米国のこのグアイド・プロジェクトは音を立てて崩壊しつつあると大使は強調した。
 2月の「人道支援物資」強行搬入も、3月の軍部へのクーデタ呼びかけも失敗している。コロンビア国境における「支援物資」炎上は政権側の放火、マドゥーロ大統領とコロンビア暴力集団との結託などの報道が捏造であることも次々に明らかになっている。
 そもそも米国とグアイド・サイドはベネズエラの民衆と軍部を見くびっていたのだ。生活が苦しくなればなびいてくるだろうと。米国の制裁により13年以降外貨収入が90%も下落し、政府や石油産業が国際的な融資元にアクセスできなくなり、国際金融機関に保管されているベネズエラの資産数十億ドルの凍結が命じられた。これにより医薬品、食料品、経済活動に必要なさまざまな原材料などがブロックされることになった。
 150以上の制裁措置によって、ベネズエラは2013年〜17年の間に3500億ドルもの損失を被った。この5年間のGDPのうち3年間は何も生産しなかったと同じ数字だ。経済が低迷し民衆生活の困窮が生ずるのは当たり前だろう。だが民衆はそれに耐え、団結をつよくしている。軍部もそのことをよく理解している。

国連人権理事国に
 グアイド・プロジェクトの崩壊をイシカワ大使は概要以上のように説明した。大使自身、大使の家族、駐日ベネズエラ大使館職員も米国の金融制裁の余波をうけて日本の銀行口座が凍結されていることを付け加えておこう。
 国際社会も「50カ国」とは逆の判断をした。米国の激しい反対工作にもかかわらず、9月にベネゼエラが国連人権理事会理事国に選出されたのである。民衆団結の強化については、一例として農村共同体と都市共同体が協力して農産物の生産と配布のシステムを形成、食料不足を補っていることをあげておう。

 吉原功(JCJ代表委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月09日

【JCJ賞見る会】山形放送「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心〜」 戦時中の教育弾圧に焦点

 大学の教室のスクリーンに映し出されるTVの映像。そこには、昭和の初期に農村で働く人たちの姿を克明に描いた絵が次々に映し出され思わず見入ってしまう。絵を描いたのは山形県の小学生だ。           
 自分の身の回りをありのままに描く「想画」の実践が行われた山形県の小学校、しかし指導にあたった教師は治安維持法で検挙されてしまう。番組は戦時中の教育弾圧を掘り下げ、「今」に警鐘を鳴らす。

 山形放送が制作したドキュメンタリー「想画と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心〜」は2019年度のJCJ賞を受賞した。この作品を見る会が10月末、立教大学メディア社会学科の砂川浩慶教授のゼミなどが主催して開かれた。会場には、番組制作の責任者の伊藤清隆報道制作局長も招かれ、番組視聴後に学生も加わり、意見を交わした。視聴者と制作者が一体となった空間というのは実はとても嬉しいもので、伊藤さんには緊張感だけではなく笑顔もこぼれていた。

 伊藤さんはこの番組を思い立った契機について、おととし安倍政権が強行に成立させた共謀罪が、戦前の治安維持法に似ているのではないかという危機感、さらにその頃、地元山形で「想画」を本にまとめようという当時の小学生たちの活動を知ったことをあげる。
 「想画」をテーマに共謀罪の恐ろしさ、そして忖度や同調圧力が強まり閉塞感に覆われている今の社会に、「釘一本を打ち込む」番組を制作したいと考えたという。そして戦争を再び起こさないということが報道の一丁目一番地であり、だからこそ昭和の戦争の記憶を令和の時代にどう伝えていけるのかを問い続けていると、静かに決意を語った。

 砂川さんに言わせれば、学生たちがいま一番接しているのはツイッターということだが、その砂川ゼミの学生からの「小中高では与えられたテーマに模範的に回答していたので、好きに書いて、と大学で言われた時、戸惑った」の声に伊藤さんはこう答えた。
 「模範的は忖度や空気を読むことにつながる、何を表現するのか、まず自分と向き合い自分の心のうちと、取り巻く世界をどう表現していくのかを考えて欲しい」と励ましのエールを送った。

古川英一

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月08日

【今週の風考計】12.8─いま鋭く問われている日本の加害責任

★78年前の12月8日、日本は太平洋戦争に突入した。それ以前からの中国侵略を含め、アジア諸地域や南洋諸島への戦争拡大は15年に及ぶ。もたらした戦争被害はアジア諸国で2000万人以上、国内でも310万人を超えるといわれる。

★この6日、ドイツのメルケル首相は、ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所を訪問。来年1月27日にソ連軍による解放75年を迎えるにあたり、数多くのユダヤ人を銃殺した「死の壁」といわれる塀の前で献花し、黙とうした。
★さらにメルケル首相は、数多くの犠牲者の写真が掲げられた部屋で演説し、アウシュビッツで「ドイツ人が犯した蛮行を、深く恥じる」と謝罪した。人種差別や不寛容が広がる現代こそ、「反ユダヤ主義と闘うためには、絶滅収容所の歴史が共有され、語られる必要がある」と指摘。アウシュビッツは「この記憶を生かし続けることを要求している」と述べた。
 メルケル首相が訪問する前日の5日、ドイツ政府は同収容所の関連財団へ新たに6000万ユーロ(約72億円)を寄付すると発表した。

★それに引き換え、日本の安倍首相はどうか。南京事件、日本軍「慰安婦」問題、中国からの強制連行・朝鮮半島からの「徴用工」問題などなど、日本軍の加害責任や反省に触れた真摯な言葉もなければ、誠意ある実践もない。いまや贖罪意識すらないといってよい。
★とりわけ韓国の「徴用工」問題について、「被害者個人の請求権は存在している」と公式に認められている以上、「非人道的労働に対する慰謝料」として、日本政府・企業は誠実に向きあい、支払う努力をするのは当たり前ではないか。
★なぜしないのか。そこには安倍首相自らが、A級戦犯合祀の靖国神社へ玉ぐし料・真榊の奉納を続け、過去の侵略戦争と植民地支配に対する責任を放棄するどころか、逆に正当化する立場に固執し、ネトウヨや右派人脈が煽る<反中嫌韓>の露骨なヘイトに同調しているからに他ならない。メルケル首相の態度や覚悟、政策と比べ、天と地の開きだ。

★首相在任2900日を超す、憲政史上最長となった安倍首相、この約8年の間、中国や韓国の戦争被害者を記念する施設に訪問したことがあるだろうか。例えば中国の平頂山殉難記念館や韓国・天安市にある独立記念館はどうだろうか。
★前者は日本軍が中国・撫順炭鉱近くの平頂山の住民3000人を機銃掃射により集団虐殺、村を焼き払った事件を記念する。後者は日本軍が韓国人にした拷問や慰安婦の話など、韓国が自由と独立を勝ち取る闘いの歴史を記録した記念館だ。訪問したという話は聞かない。

★ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、先月24日、長崎・広島の両被爆地を訪問し、核の廃絶を求めるメッセージを発した。
 米国のオバマ大統領も、3年前、被爆地・広島を訪れ、原爆資料館を見学した後、原爆死没者慰霊碑に献花した。その場で所感を読みあげ、「核兵器なき世界」への決意を強調した。
★ちなみに原爆資料館や平和記念公園を訪れた世界の大統領や首相は、2009年から2019年の10年間で19人、外国からの賓客や要人は598人にのぼる。安倍首相も、海外に行くのなら、もっともっとアジア諸国の戦争被害者を祀る施設を行脚したら良い。(2019/12/8)
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2019年12月06日

【メディアウオッチ】NHK違憲の大嘗祭費支出を容認 岩田記者フェイク交えて解説=河野慎二

奉祝報道を競う
 天皇の即位に伴うパレード「祝賀御列の儀」が10日、行われた。NHKと民放キー5社は特番を編成し、このパレードを完全生中継した。
新聞のテレビ欄を見ると「カメラ46台展開歴史に残る30分お届け」(NHK)、「新時代の幕開け祝う歴史的瞬間≠ノ歓喜」(日本テレビ)、「新時代祝う令和の調べノーカット生中継」(テレビ朝日)などと、各局が奉祝報道≠競い合う。
 NHKが銀座のブライダル会社にまでカメラを出し生中継した。皇后の衣裳が関心を呼び「ローブデコルテに問い合わせが殺到」とリポートするが、「そこまでやるの?」と呆れる。

国民主権どこへ
 憲法第4条が定める国事行為としての「即位の礼」は、このパレードで五つの儀式がすべて終わったが、メディアの報道に共通するのは、憲法の国民主権や政教分離原則に根差した報道が欠落していることだ。
 象徴的なケースは10月22日に行われた「即位礼正殿の儀」の報道である。高御座(たかみくら)に立つ天皇を仰ぎ見る形で安倍首相が万歳三唱の音頭を取り、参列者が唱和した。憲法の国民主権はどこへ行ったのか。テレビは映像を垂れ流すだけで、憲法上の疑義には触れない。

 今回の「祝賀御列の儀」特番で、NHKの番組構成に重大な疑問が残った。それは、大嘗祭に関わるコーナーである。
 大嘗祭は、即位した天皇が今年取れた新米を天照大神や神々に供え、自らも食べて国民の安寧を祈る宗教行事で、14日から15日に行われた。
 NHK社会部の岡本記者は、秋篠宮が昨年の会見で経費について「大嘗祭は宗教色が強いことを踏まえて、天皇の生活費にあたる内廷費から支出されるべきだ」との考えを示したと説明、「皇室の公的予算である宮廷費からの支出を決めている政府方針と異なる異例の意見表明になった」と指摘した。
 大嘗宮建設費などが27億円に上ることについて秋篠宮は「身の丈に合った形で行うのが本来の姿ではないかと述べた」と解説した。
 岡本記者の解説は至極真っ当なものだが、ここで安倍政権に極めて近い岩田明子記者が登場する。

公的資金支出当然視
 岩田記者は「大嘗祭は極めて重要な伝統的皇位継承儀式として、政府が手立てをするのは当然としている。このため、宮内庁が管理する宮廷費から支出することにした」と、まるで安倍晋三首相の代弁のような解説。
 大嘗祭への公費支出は政教分離を定めた憲法に反する。岩田記者は「各地で裁判が起こされているが、いずれも国が勝訴し、司法の場でも肯定されている」と解説し秋篠宮の提言を一蹴した。
 岩田記者の解説は事実に反している。大阪高裁は95年3月、賠償請求は退けたものの「政教分離規定に違反するのではないかとの疑義は一概に否定できない」との判決を出している。
 フェイク混じりの岩田解説を容認し、官邸忖度のパレード特番を編成した「公共放送」NHKの責任は重い。

河野慎二

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月05日

【お知らせ】 ジャーナリスト講座 「フリーランスの『オモテとウラ』―醍醐味と難しさ」

 「黙殺 報じられない無頼系独立候補≠スちの戦い」(集英社)で2017年第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した
 畠山理仁(みちよし)さんが講演。18時30分から21時。日比谷図書文化会館4階小ホール。参加費1000円。


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2019年12月04日

【リアル北朝鮮】 南北関係 悪化の一途 金剛山の韓国側施設撤去へ=文聖姫

 「見ているだけで気分が悪くなるみすぼらしい南(注:韓国)側の施設を、南側の関係部門と合議して撤去させよ」
 金正恩朝鮮労働党委員長は10月下旬、金剛山を訪れ、韓国の現代峨山が建てたホテルやゴルフ場、文化会館、レストランなどを視察した後、これらを撤去するよう指示した。10月23日発の朝鮮中央通信が報じたが、訪問日時は明らかにされていない。

 昨年9月、平壌で開催された南北首脳会談を経て、金委員長と文在寅大統領は「9月平壌共同宣言」を締結した。そこには、「条件が整い次第」開城工業地区と金剛山観光事業をまず正常化させることがうたわれた。今年1月1日の新年の辞で金委員長は、「いかなる前提条件や対価を受け取ることなく、開城工業地区と金剛山観光を再開する用意がある」と語り、開城工業地区と金剛山観光の早期再開を韓国側に促した。だが、韓国側は動かなかった。

 冒頭の発言からは、金委員長の強い怒りがうかがえる。
 金委員長はこうも言っている。
 「金剛山がまるで北と南の共有物のように、北南関係の象徴、縮図であるかのようになっており、北南関係が発展しなければ金剛山観光もできないように言われているが、これは明らかに誤った認識だ」
 金剛山観光がもはや南北経済協力の象徴ではないことを示唆しているものとはいえまいか。

 そもそも金剛山観光は、2008年に起きた韓国人観光客射殺事件をきっかけに韓国政府によって中断された。後に開城観光も中断した。開城工業地区の操業中断も、2016年に朴槿恵政権によってなされたものだ。いわば韓国が独自に踏み切った措置で、国連の経済制裁とは関連がない。ならば、韓国政府の決断で再開もできるのではないか、というのが北朝鮮側の考えだろう。
 悪化の一途をたどる南北関係。当分改善は見込めないかもしれない。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 10:43 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月03日

逮捕で安易に犯人視 報道が冤罪つくる恐れ 袴田事件もとに小石さん講義=須貝道雄

 「報道が冤罪をつくってしまう恐れがある」。11月24日に東京で開いたジャーナリスト講座で、講師のフリーライター・小石勝朗さん(元朝日新聞記者)は静岡県で起きた「袴田事件」を取り上げ、警察取材の難しさを話した。 

 着衣次々変わる
 講座では、53年前の事件発生時の新聞紙面を見せながら、報道のあり方を問いかけた。警察情報に依拠し、「疑わしい人物」を安易に犯人視する記事、見出しの問題だ。
 例えば毎日新聞1966年7月4日の夕刊。見出しに「清水の殺人放火、従業員『H』浮かぶ、血ぞめのシャツを発見」とある。直後の7月5日朝刊記事では「血ぞめのシャツ」は消え、「血ぞめのパジャマ」に変わる。「従業員『袴田』に逮捕状」の記事では見出しに「寝間着の血がキメ手」とあった。小石さんは「これらパジャマや寝間着は、裁判での袴田さん有罪に何もつながっていない」と語った。
 起訴段階で検察側は、袴田さんはパジャマ姿で犯行に及んだとした。しかし裁判の途中で着衣を変更してしまう。事件から1年2カ月後、会社の味噌樽から多数の血痕がついた衣類5点が「発見」される。この5点の衣類が犯行時の着衣で、血痕は血液型から、被害者の返り血と袴田さんの血だと検察側は主張した。

「不敵な」と表現
 5点の衣類は袴田さん死刑判決の根拠となった。しかし第2次再審請求で静岡地裁が実施したDNA鑑定により事態は動く。弁護側鑑定人から、衣類の血痕は被害者の返り血や袴田さんの血ではないとの結果が出て、再審開始決定につながった。
 いったん警察に逮捕されると、その人を犯人視する報道は雪崩のように広がる。袴田事件はその典型だった。
 「袴田を連行、本格取り調べ」では、写真にそえて「不敵なうす笑い」の見出しが。「袴田ついに自供」の記事では「葬儀の日も高笑い、ジキルとハイド≠フ袴田」の見出しだ。
 小石さんが「何でもありですね」と嘆いたのは静岡支局長のコラムの文章だった。「彼の特色といえば、情操が欠け、一片の良心も持ち合わせていないが、知能だけは正常に発達していることである」

予断与えないか
 一連の報道が裁判に強く影響したと小石さんは指摘した。一審の静岡地裁で死刑判決を起案した元裁判官の熊本典道さんはインタビューで、自分は袴田さんが無罪と思ったが、他の二人の裁判官は有罪の判断で死刑判決となったことを明かしている。その中で、新聞報道を読めば「真面目な人だったら引っかかりますよ」(小石勝朗著『袴田事件これでも死刑なのか』から)と語り、有罪判断に報道が関係したことを示唆している。
 「今は裁判員裁判の時代。報道が予断を与えていないか、気配りする必要がある」と小石さんは強調した。    

 須貝道雄

▼袴田事件 1966年に清水市(現在は静岡市清水区)で起きた味噌会社の専務一家4人殺害・放火事件。住み込み従業員で元プロボクサーの袴田巖さん(当時30歳)が逮捕された。1日平均12時間に及ぶ取り調べの末、袴田さんは逮捕から20日目に「自白」。裁判で無実を訴えたが1980年、最高裁で死刑が確定した。再審請求で静岡地裁は2014年、再審開始を決定し、袴田さんは47年7カ月ぶりに釈放された。しかし18年に東京高裁が地裁決定を取り消し、再審請求を棄却。現在は最高裁の判断待ちになっている。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月02日

【支部リポート】 東海 「報ステ」元女性CPの講演に協力 活気があった3つの学習会

 8月1日に開幕した「表現の不自由展・その後」が脅迫・攻撃を受け3日で中止された。さらに南彰新聞労連委員長を講師に迎えて、充実した「8・15平和を語る名古屋集会」にしようと準備を進めていたのに、台風10号が直撃すると分かって、急きょ中止した悔しさを晴らそうと企画した勉強会が機縁となって、学習活動が活気づいた。

 昨年から続いている連帯ユニオン関西生コン支部という産別労組弾圧事件をテーマに選び、9月3日に愛知駐在の同支部執行委員、元座毅さんを講師に学習会を開いた。東海では大垣署市民監視事件など共謀罪の先取りと言われる事例が続発、同じ共謀罪型事件とあって、私たちは注目した。
 昨年8月からこれまでに、さみだれ式に組合員ら延べ87人が逮捕、1年以上も拘留されている人もいるのに、報道はほとんど沈黙。たまに取り上げれば警察発表の垂れ流しという奇怪さに、参加者から質問が相次いだ。

 同じ頃、愛知県の市民団体「町づくり懇談会」が10月27日、テレビ朝日のイベント事業戦略担当部長、松原文枝さんを招き「テレビ現場メディアの現場から」と題した講演をしてもらうが、この企画に協力してほしいと支部に依頼があった。
 松原さんは、人気番組「報道ステーション」のチーフプロデューサーとして活躍した人で、協力・提携に異論はない。当日は参加者約60人を前に、講演後の質疑で1時間余、現役の部長として答えづらい難問にも逃げずに、丁寧に回答し、学習活動の役割を見事果たした。
 それから1週間後の11月4日、今年度のJCJ賞を受けた山形放送制作のドキュメンタリー「『想画』と綴り方〜戦争が奪った子どもたちの心=vを見る会が開かれた。東京での上映会に参加した丹原美穂幹事が、その場で伊藤清隆・山形放送報道制作局長にお願いして、DVDを貸していただき実現した。

 戦前、文化教育は共産主義的だとして教壇を追われた青年教師・国分一太郎の見た悪夢と、現代における「表現の不自由」体験がピタリ重なったことを改めて痛感した。
 こう見てくると、3者3様の学習だったが、今後も多彩な活動を追求していきたい。

古木民夫  

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年12月01日

【今週の風考計】12.1─ほっかぶりの安倍首相に桜が泣いている

先週末、遅まきながら「桜を見る会」に夫婦で参加した。新宿御苑のそれではない。旅行会社が企画した観光ツアーに組み込まれていたもの。もちろん自費で参加。名づけて<小原の四季桜を見る会>。場所は愛知県・豊田市の北東、岐阜県との県境近くにある小原地区、そこに咲く四季桜を堪能するのが目的。
約1万本の四季桜が、国道419号線に沿って山の斜面を淡くピンクに、光の加減では白く、びっしりと彩る。しかもその斜面に、ぽんぽんと絵筆を挿すように、色づいた紅葉が赤のマダラ模様をつけていく。さらに銀杏の大木が、枝の黄葉を横に広げて、アクセントをつける。その彩りの見事さ。

「四季桜公園」では店も出て、ふるさと自慢のグルメや特産品が並ぶ。五平餅の匂いが食欲をそそる。興味しんしんで食べたのが<へぼ飯>、蜂の子を炊き込んだご飯といったら良いか、醤油味のきいた、ほのかに甘みが広がる不思議な味だ。
ほかにも、きわめて細長い天然自然薯やアユの干物を見ると買いたくなる。だが、なんといっても驚いたのは<愛宕ナシ>、そのジャンボぶりといったらない。1個で1キロはあるだろう。値段も1300円と高い。スライスしたのを試食すると、果汁が多くシャキシャキして歯切れがよい。重いのも構わず2個購入した。

桜を堪能したら、次は紅葉となる。おなじ観光バスで香嵐渓に向かった。足助町を七曲りにくねって流れる巴川に沿い、まるで山が燃えるように紅葉で包まれる。巴橋、待月橋を経て吊り橋の香蘭橋まで北側の道は紅葉のトンネルが続く。
手にした観光マップを見ながら中ほどにある山門をくぐって香積寺へと歩く。応永34 (1427) 年に白峰禅師によって開創された曹洞宗の古刹。一帯はもみじや杉木立が生い茂り、もみじの開祖・三栄和尚が植えたとされる杉も、いまだ2本残っている。
 本堂のわきを回って十六羅漢像や装束塚を見ながら、飯盛山へ足を延ばす。下っては足助八幡宮・足助神社をお参りし、香嵐渓の紅葉に別れを告げた。

さらに下って新城市にある鳳来寺山に向かう。ここも紅葉の名所として名高い。1300年前に利修仙人が開山したと伝わる霊山で、山全体が国の名勝・天然記念物に指定されている。緑の杉木立の間から赤く色づいた広葉樹の葉が光を受けて輝く。
 断崖絶壁・鏡岩の直下にある鳳来寺本堂に到着。ここで放浪の俳人・種田山頭火が16首ほど句を詠んだという。その扁額がある休み処から、奥三河の山々を望む。この山には“声の仏法僧”とも呼ばれる愛知県の県鳥・コノハズクが棲息しているという。

桜・紅葉を満喫し、家に帰ってさっそく、香嵐渓・香積寺の山門から本堂へと続く参道に広がる、鮮やかな紅葉の写真を、わがパソコンのデスクトップの背景に貼りつけた。
 安倍首相が毎回5500万円もの税金を使い、反社会的勢力メンバーまで招待し、8回も開催していた「桜を見る会」よりも、ずっとずっと素朴で純心に桜や紅葉を愛でるツアーだった。新宿御苑の桜が泣いている。(2019/12/1)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月30日

【沖縄リポート】 首里城焼失 琉球の歴史を見直すとき

 この間の沖縄での最大の事件といえば、やはり首里城の焼失だろう。10月31日の朝、テレビ画面に映った、燃え盛り崩れていく首里城の姿は私自身大きな衝撃だった。

 しかしその後の「首里城再建フィーバー」とも言えるような現象には、いささか違和感を覚えている。首里城は「沖縄の象徴・誇り」「県民の心のよりどころ」と誰もが口を揃え、燃えたその日から「再建」に向けた動きが始まり、日毎に勢いを増した。玉城デニー知事は翌11月1日、早速上京して政府に再建への協力を要請。菅義偉官房長官は「全力で取り組む」と応じた。
 地元紙は連日、紙面の多くを割いて若者たちや県内各界の募金活動、県外からの支援など「再建美談」を報道し、NHKは「再建に向けて官民がどれだけ協力できるかが課題だ」と繰り返した。自民党県連は「国営公園である首里城を、管理者である県が焼失させたことをまず(国に)謝罪すべきだ」と主張した。

 31日、辺野古の座り込み現場でも首里城焼失が話題になったが、「首里城が燃えるのを見たとき、あ、これは(政府に)利用される!と真っ先に思った」「首里城は大切だが、辺野古の海はもっと大切だ。自然がなければ文化も生まれない」などの意見が拍手を浴びた。
 集客力のあった首里城の焼失は沖縄観光にとって大きな痛手であり、一日も早い再建を願うのはわかる。沖縄戦で焼失した首里城を並々ならぬ努力でようやく復元(1992年)した研究者・技術者・関係者の悔しさも当然だ。しかし、今必要なことは、やみくもに再建を急ぐのではなく、これを機に、琉球・沖縄の歴史を日本・中国との関係も含めて県民自らがあらためて検証し、問い直す作業と並行しながら、時間をかけて行うことではないか。

 11月2日の『琉球新報』論壇で、沖縄出身の若き大学院生・町田星羅さん(宇都宮大学で琉球諸語復興の研究をしている)は、首里城焼失を琉球諸語の未来と重ねながら次のように述べている。
 「もう一つの琉球文化を支える私たちの言葉は、……最後の灯を燃やしている。この火が消えてしまう前にできることがある。歴史をひもとき、次世代に何を残すのか。私たちは今、自分を見つめ直す時期にある」

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
 
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2019年11月29日

【お知らせ】 12月集会、「日韓問題とメディア」8日に開催 岡本厚・金平茂紀氏が講演

韓国での徴用工判決をきっかけに日本政府は輸出規制に踏み切り韓国を追い詰め、日韓が最悪の関係に陥っている。この問題の背後に何があるのか、また日本のメディアは的確に報じているのか。
 元「世界」編集長で岩波書店社長・岡本厚さんとTBS「報道特集」キャスター・金平茂紀さんがじっくりと解説します。
会場は専修大神田キャンパス5号館561号、資料代は500円(学生と専大教職員は無料)
お問い合わせ=電話1(プッシュホン)03・3291・6475(月水金の午後に対応)
posted by JCJ at 16:04 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月28日

【リレー時評】「カジノ阻止、真っ当な大坂を」高まる反対運動=清水正文(JCJ代表委員)

 いま、全国でカジノを核とした統合型リゾート(IR)を誘致する動きがおこっている。政府は9月にIRの立地区域選定に向けた基本方針を公表、国内では最大3カ所で認めるとしているが、今まで「白紙」としてきた横浜市でも市長がカジノ誘致を表明。
 先行する大阪維新の会の府・市政が万博とセットで、大阪湾の埋め立て地・夢(ゆめ)洲(しま)にIRをもってくることにやっきになっている。観光庁の調査では、ほかにも北海道、千葉市、東京都、名古屋市、和歌山県、長崎県が誘致を「予定・検討している」と回答している。
 10月に行われた時事通信の世論調査では、国内誘致について「反対」が57.9%で、「賛成」の26.6%を大きく上回った。IRをめぐっては周辺の治安悪化などを懸念する声があり、慎重な意見が根強いことが浮き彫りになった。

 大阪ではこの万博を隠れ蓑にしたIRの誘致に反対する運動が、さまざまな形で取り組まれてきたが、10月22日には大阪市中央区で、「カジノあかん!夢洲危ない!ここで万博大丈夫?」と銘打った集会が開かれ、会場は800人を超える参加者で超満員となった。
 カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表の桜田照雄・阪南大教授がビデオメッセージで、大阪府市は、近く実施方針を策定して事業者の公募を開始することを狙っているとし、「カジノ推進派の最大の弱点は、問題だらけの夢洲でつくろうとしていること。危険性を府民・市民に広げ、夢洲にも日本のどこにもカジノはいらないと訴えよう」と呼びかけた。
 夢洲の危険性については、田結庄良昭・神戸大名誉教授が、南海トラフ地震で想定される被害について講演、「津波は自動車並みの高速で押し寄せ、地震動の液状化で沈下した護岸を越えて、大きな浸水被害が出る」と警告。液状化によるインフラの破壊、コンビナートタンクの損傷・火災などを挙げて、「こんな危険なところで、解決方法もないのにカジノや万博をやるのはいかがなものか」と訴えた。

 各分野からのリレートークも行われ、石田法子・元大阪弁護士会会長は、「カジノは賭博場であり、暴力団も関与。ギャンブル依存症や多重債務者も増える。そういう環境が子どもの成育に悪影響を与える」と強調した。
 小川陽太・前大阪市議は、夢洲で想定されるカジノ客1500万人のうち、外国人は2割だけで、「標的は日本人、大阪周辺の一般市民だ」と指摘、誘致のためのインフラ整備は、地下鉄中央線延伸だけで540億円に上り、「復調の兆しが見える大阪市財政を、暮らしや防災、地域経済に充てるべき。カジノを阻止してまっとうな大阪を」と発言した。
 全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会の新里宏二弁護士が連帯あいさつ。和歌山市・長崎市・横浜市・苫小牧市や台湾で反対運動に取り組む市民団体からもメッセージが寄せられ、大阪でのカジノ反対の大きな契機となった。
posted by JCJ at 10:24 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月27日

講座:東京新聞「税を追う」キャンペーン――いかに取材したか

《19年秋のJCJジャーナリスト講座》
「JCJ大賞・東京新聞税を追う<Lャンペーン――いかに取材したか」
★11月29日(金)午後6時半から9時★
 講師;東京新聞社会部・鷲野史彦記者

「税を追う」取材班キャップ
東京新聞社会部は2018年10月末から「税を追う」キャンペーンを始めた。米国からの兵器大量買いが日本の防衛予算をいかに歪めているか、危うい実情を明らかにした。沖縄・辺野古の新基地建設、五輪事業費問題にも取材は広がっていった。19年度のJCJ大賞を受賞。鷲野記者は取材班キャップを務めている。
【鷲野史彦記者の略歴】
1971年生まれ。93年に中日新聞に入社。中日スポーツに4年(Jリーグ名古屋グランパス、プロ野球中日ドラゴンズなど取材)、松任支局(石川県・現白山支局)、北陸報道部、東京社会部、さいたま支局を経て、2011年から社会部で警視庁キャップ、原発班、遊軍で東日本大震災の被災地取材などを担当。16年に浜支局デスク、17年8月から東京社会部、18年8月から調査報道班(税を追う取材班)のキャップ。

会場:日比谷図書文化館4階小ホール
 (東京・日比谷公園内、最寄りは地下鉄内幸町駅か霞ヶ関駅)
参加費:1000円(定員40人)
□受講ご希望の方へ□
要予約:参加ご希望の方は氏名、受講希望日、大学名(または職業など)、電話番号、メールアドレスを明記して、sukabura7@gmail.com にメールで申し込んでください。
お問い合わせ 日本ジャーナリスト会議・事務所 電話03・3291・6475=月水金の午後対応
posted by JCJ at 22:51 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【内政】 表現の自由侵害の恐怖 安倍政権に同調 自治体へ広がる 民主主義守るため抗う行動を=橋詰雅博

 安倍晋三政権がこのところ文化・芸術分野に手を突っ込み民主主義の根幹である表現の自由を脅かしている。加えて自治体も同調圧力を強める。

 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金中止はその典型だ。慰安婦を題材にした平和の少女像などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」の騒動を口実にした。萩生田光一文部科学省大臣は「県が、抗議が殺到して展示継続が難しくなる可能性を把握していながら文化庁(文科省の外局)に報告しなかった」と中止の理由を述べた。

後出し処分

 しかし、文化庁に提出する補助金申請書類には安全性の心配や展示内容を具体的に書く欄はない。気にくわない企画展(一時中止となったが、再開)を開いたので、トリエンナーレそのものに対して補助金を後出し処分≠ナ中止したのが真相だ。

 映画「宮本から君へ」は7月に助成金内定を取り消された。取り消した文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」は、出演者が不祥事を起こし(麻薬取締法違反で有罪のピエール瀧さんが出演)、公益性の観点から助成金交付は適当ではないとした。だが、要綱には公益性の観点から助成金交付を取り消すという文言はなかった。その後、要綱に公益性を入れ変更した。制作会社の河村光庸社長は「映画の内容は薬物とは全く関係なく、公益性という言葉も拡大解釈が可能。表現の自由を侵す行為で、絶対に認められない」と反論した。また、11月8日に文科省前で行われた表現の自由を取り戻す集会に河村社長はこうメッセージを寄せている。

 「公益性の概念で助成金を取り消せば、萎縮につながる。日本社会に同調圧力と忖度が広がっている」

 表現の自由侵害は自治体でも起きている。川崎市が共催した「しんゆり映画祭」で慰安婦の問題をテーマにしたドキュメンタリー「主戦場」の上映が中止になった。川崎市から登場者が提訴している映画を上映するのはどうなのかと言われた映画祭代表が上映を止めてしまったのだ。幸い、是枝裕和監督や市民らの強い抗議の結果、映画祭最終日に「主戦場」は上映された。ミキ・デザキ監督は「表現の自由の大勝利だ。圧力に負けずにこの映画を守ろうとサポートしてくれた人に感謝します」と語った。

展示を不可

 三重県伊勢崎市は、慰安婦を象徴する少女像の写真を片隅にコラージュした作品を市美術展覧会での展示不可にした。市は市民の安全性が担保できないと説明したが、制作者・花井利彦さんは「検閲は憲法違反。訴訟も視野に入れる」と闘う姿勢を見せている。

 オーストリアのウィーンにも飛び火≠オた。芸術展「ジャパン・アンリミテッド」で展示されていた安倍政権や福島原発事故を批判的に扱った作品などが問題視されたとして外務省は、日本との国交150年記念事業にふさわしくないと公認を撤回した。自民党国会議員が口出しする動きもあり、外務省が忖度した。芸術展の学芸員は「欧州では問題にならない作品。日本で検閲≠ェ強まっていると感じた」という。

 さいたま市の公民館だよりへの「九条俳句」不掲載訴訟の支援者で、「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」世話人代表の武内暁さんはこう言う。

 「こうした一連の出来事は市民感覚では検閲です。『9条俳句』裁判で勝訴(2018年12月)した後、安保法制反対など安倍政権を批判するチラシを検閲なし≠ナ公民館や図書館に置けるようになった。表現の自由が侵害されるようなことが起きたら、抗議の声を上げる。そうしないと萎縮や忖度が広がり、民主主義の基盤は揺らぎます」

 あきらめて黙っていてはダメだ。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 10:41 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月26日

【編集長EYE】 フリー置き去り ハラスメント指針案=橋詰雅博

 厚生労働省によると、2018年度に寄せられた個別労働相談のうちパワーハラスメントなどの「いじめ・嫌がらせ」は8万件超に上り過去最多。相談内容別でも25・6%を占めて7年連続トップだ。

 増え続けるハラスメントに関し、正社員より立場が弱いフリーランスの実態を日本俳優連合とMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)フリーランス連絡会、フリーランス協会の3団体が調査し、9月末に公表している。1218人がアンケートに答えた中で具体的なケースはこんな内容だ。

・打ち合わせと称して、ホテルに呼び出されレイプされた(女性40代、映像制作者)

・元大学教授の財団理事長からヒヤリングの場所を日帰りが難しい距離にある別荘を指定された。双方の仕事場が都内にあるのに、毎回、別荘以外では会わないと電話で言われる(女性40代、研究職)

・社長から打ち合わせの後にホテルのバーに連れていかれました。早めに帰ろうとしたら、手を握られました。拒否して帰りましたが、以来、それまでべた褒めだった私の原稿をことごとくけなすようになりました(女性20代、脚本家)

・ファックスで送れば自宅でできる仕事なのに、夜中にわざわざ自宅から2時間もかかるオフィスに来るように強要された(女性50代、編集者)

・主催者の自宅で稽古をすると言われて行ったら、お酒を飲まされて性的な行為をさせられた(女性20代、女優)

 問題はこのようなフリーランスが5月に成立したハラスメント規制法の対象外になっていることだ。厚労省が10月末に労働政策審議会に提示した同法指針素案では、企業は注意を払って欲しいにとどまっている。これでは横行するフリーランスを取り巻くハラスメント状況は、一向に改善されないだろう。

 6月に採択されたハラスメント禁止を求める国際労働機関(ILO)条約の基準より緩い指針案は、フリーランスを置き去りにしようとしている。

橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 11:31 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月25日

【月刊マスコミ評・新聞】 安倍一強ぐらつく 私物化へ批判=山田明

この秋も列島各地が相次ぐ災害に見舞われた。災害多発時代にどう備えるか。政治の最重要課題であり、「国土強靭化」政策と予算の検証が求められる。

 政治が大きく揺れ動いている。「1強」とも言われた安倍政権の求心力が急激に低下してきた。1週間で重要閣僚が2人も辞める異常事態。日経11月1日社説も「相次ぐ閣僚辞任が映す長期政権の緩み」と批判する。安倍首相は任命責任を繰り返すが、国会審議の場で自席から低劣なヤジを飛ばすなど、反省が全く見られない。

 問題は閣僚辞任にとどまらない。萩生田文科相が英語民間試験について「身の丈に合わせて」と発言。この問題発言に高校生をはじめ抗議の声が広がり、試験見送りとなった。民間試験導入は安倍首相主導の教育再生会議提言にさかのぼる。

今回の入試騒動は、発端も見送りも政治判断であった。東京2日「こちら特報部」は、背景に競争促す「新自由主義」があると。大学入試、教育が安倍政権により振り回されている。受験生を悩ます共通テスト問題は、国語や数学の記述式問題に広がる。採点はベネッセの子会社。入試の肝である採点をめぐり、大学関係者などから懸念の声が続出。毎日13日社説も記述式試験「延期するしかないのでは」と指摘する。

 さらに安倍政権を直撃したのが、首相主催の桜を見る会である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員の鋭い追及により、「公的行事の私物化」疑惑が明らかにされた。野党が結束して追及チームを発足させると、マスコミも大きく報道するようになり、事態は急展開する。

 毎日13日社説は公金私物化の疑問が募ると批判。朝日も首相の私物化許されぬと問題を投げかける。「首相に近しい者が特別な便宜を受けたのではないか。森友・加計問題でも指摘された、政治の公平・公正に関わる問題であると、首相は深刻に受け止めるべきだ。」

 安倍首相への批判が高まる中で、政府は14日、桜を見る会を来年は中止と即断した。概算要求後の異例の見直しだ。政権を揺るがす事態に、これで幕引きを図るつもりのようだが、問題は来年の花見ではない。ことは安倍首相周辺の公職選挙法にも関わる疑惑である。国会での徹底した追及と、安倍首相の説明責任を求めたい。

山田明

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
posted by JCJ at 10:22 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月24日

【今週の風考計】11.24─またも沖縄に配備の米軍弾道ミサイル!

先週、沖縄県宮古島市の海岸で、「ウランペレット(核燃料棒)」と記されたプラスチック製の筒状容器が発見された。すぐ自衛隊が出動し放射線量を測定したが検知されなかった。ホッと一安心。
 その後、メルカリに「教育用燃料見本キット」が出品されていて、それと類似しているのが分かった。イタズラでやったとしたらトンデモナイことだ。
ただでさえ沖縄には、返還時の「核抜き」合意が反故にされ、米軍の「核弾頭」貯蔵への疑念も、いまだに払拭されていない。
 あまつさえ米国と中国との緊張は続き、この2、3年のうちに日本が実効支配している尖閣諸島付近で、米中間での艦船攻撃など、紛争が起きると想定されている。そのため米国は沖縄の米軍基地を強化する対策を急いでいると、琉球新報(10/3付)が報じている。その概要について補足を加え紹介しよう。

この8月、中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効した。その結果、中距離弾道ミサイルの開発・製造禁止のタガがなくなり、米中ロによる開発競争が始まった。いま新たな緊張状態が生まれている。とくに米国は2020年末から21年にかけて、新鋭ミサイルを沖縄や北海道など日本本土に大量配備する計画を立てている。
米国が開発中の弾道および巡航ミサイルには、車載移動式ミサイルと潜水艦搭載用新型トマホークがある。いずれも「核弾頭」装備が可能だ。威力は10〜50キロトン、最低でも広島に投下された原爆12キロトン級の威力がある。発射すれば数分で目標に到達し、迎撃は困難を極める。純然たる先制攻撃用の兵器だ。
こうした能力がある地上発射型の中距離弾道ミサイルを日本に配備するとなったら、すでにPAC3が配備されている嘉手納基地はうってつけ、すぐにも配備したいのが本音だ。さらには新型トマホーク搭載の原子力潜水艦も、沖縄うるま市・ホワイトビーチに寄港させたいのは明らかだ。

先月18日、玉城デニー沖縄県知事は、米軍高官に対して、沖縄への新型ミサイル配備について問い質したところ、「開発にまだ時間がかかり、どこに配備するか発表できる段階ではない」と、述べたという。
 だが、沖縄へのオスプレイ配備の際には、日米両政府は直前まで秘匿していた経緯があり、どこまで信用できるか油断はできない。
すでに日本の陸上自衛隊は、奄美大島に地対艦ミサイルを配備し、さらに宮古島や石垣島でも導入を進め、米軍の作戦に主体的に関与している。ますます米国の核弾頭搭載ミサイルによって引き起こされる「核戦争」に巻き込まれる危険が増す。

沖縄だけではない。近いうちにイージス・アショアの配備が予定される秋田市・新屋演習場、山口県・むつみ演習場にも中距離弾道ミサイルが追加配備されるだろう。新型トマホーク搭載の原潜も神奈川県・横須賀、長崎県・佐世保などへ、頻繁に寄港するだろう。
 まさに「日米安保条約」が文字通り「核戦争同盟」へと全面的に転換しかねない事態だ。(2019/11/24)
posted by JCJ at 11:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月23日

【メディア気象台】 11月中旬=編集部

信頼度、新聞が初のトップ
公益財団法人「新聞通信調査会」は1日、メディアに関する全国世論調査の結果を発表した。2008年度の調査開始から、初めて信頼度で新聞が1位になった。昨年まで11年連続NHKがトップだったが、新聞が逆転。調査会は「NHKを批判する『NHKから国民を守る党』の影響もあるのかもしれない」としている。信頼度を100点満点で尋ねたところ、新聞は68.9点で前年よりも0.7点低下したが、メディアの中で最も高かった。
次いで前年から2.3点低下したNHK(68.5点)、順に民放テレビ(62.9点)、ラジオ(56.2点)、インターネット(48.6点)だった。この1年で新聞への信頼感が高くなった人に理由を尋ねると、「情報が正確だから」(37%)、「公正・中立な立場で報道しているから」(24%)が多かった。一方で信頼感が低くなった人の理由は「特定の勢力に偏った報道をしているから」が54%で最多だった。(「朝日」11月2日付)

朝ドラ脚本家、異例の交代
NHKは5日、来春放送開始の連続テレビ小説「エール」について、脚本家を告知予定していた林宏司さんから、清水友佳子さん、島田うれ葉さんと、演出の番組スタッフに交代すると発表した。脚本家の交代は異例。NHK広報局は「制作上の都合」としており、具体的な理由については「制作過程の詳細については答えを控える」としている。(「朝日」11月6日付ほか)

経営委員長辞任求める署名提出
かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK番組を巡り、日本郵政グループの抗議に同調したNHK経営委員会が上田良一会長を厳重注意した問題で、各地の市民団体が5日、石原進経営委員長の辞任を求める約5500人分の署名簿をNHKに共同提出した。署名は「NHKとメディアを考える会(兵庫)」などが呼び掛け、計18団体が参加した。昨年10月の経営委の厳重注意は「放送法が禁じる個別の番組への干渉であり、報道の自由を侵すことで国民の知る権利を侵害する」として、委員長の辞任を求めた。(「毎日」11月6日付ほか)

総務相、NHK同時配信を留保
高市早苗総務相は8日の閣議後の記者会見で、NHKから認可申請があったテレビ番組のインターネット同時配信に関連して、NHKに受信料の在り方や業務の縮小、効率化を検討するよう要請したと明らかにした。NHKは認可を経て2019年度中の同時配信を予定していたが、総務省は業務拡大が事業支出の増加につながるとして、現状では認可の適否を示さなかった。NHKは計画の修正が不可避となりそうだ。(「東京」11月9日付ほか)

「動画見放題」混雑時制限
スマートフォンで特定の動画サイトなどを無制限で視聴できる「ゼロレーティングサービス」について、総務省は通信制限も含めたルールを作る。大勢がスマホでネットに接続して回線が混雑する際に通信量の多い利用者から順に制限する。このサービスには携帯電話各社が相次ぎ参入しているが、アプリやコンテンツを提供する中小事業者の排除につながったり、回線が混雑したりする懸念も出ている。近く指針案を公表し、年内にも実施に移す。(「毎日」11月10日付)

編集部
posted by JCJ at 12:12 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月17日

【今週の風考計】11.17─160年前の「日米通商条約」の轍を踏む!

◆低山ハイクを楽しむ仲間と、伊豆半島・下田にある寝姿山を歩いた。黒船見張所跡や復元された大砲を確かめ、ついた山頂から大島や利島を望む。眼下の下田港に黒船サスケハナ号が入ってくる。
◆165年前の光景が立ちのぼる。米国のペリー提督が7隻からなる艦隊を率い、煙突から煙を吐き、礼砲を響かせ、海岸へと迫ってくる。人々が恐れ慄いたのも無理はない。ついに幕府は鎖国をやめ、「日米和親条約」を結び、この下田港への出入りを認めた。
◆4年後には、ハリスが米国総領事として下田に赴任。「日米通商条約」が結ばれた。とりわけ関税自主権を放棄したため、低い関税率に固定され、かつ米国には特権的優遇措置を約束、安い外国商品が日本に流入し、貿易不均衡が生じる事態となった。

◆はからずも、読み終えたばかりの木内昇『万波を翔る』(日本経済新聞出版社)には、黒船来航から明治維新へのドラマが生き生きと描かれている。外からは老獪な欧米列強の貿易交渉に攻められ、内からは尊王攘夷に煽られ、業を煮やした幕府は、関税や取引通貨の交換レートの折衝などにあたる外国局を新設した。
 この仕事に就いたのが田辺太一という男、今でいう外務省ノンキャリア官僚、彼の奮闘が目覚ましい。オビに「この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ」とある。改めて今だからこそ、同感!

◆帰りの伊豆急線が伊豆高原駅を通過した際、これまた不意に、佐藤雅美『大君の通貨』を思い出した。本書は作家としてのデビュー作で、かつ新田次郎賞を受賞した。その後は『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞受賞。江戸時代の町奉行や公事宿を描き、物書同心居眠り紋蔵シリーズが評判だった。
◆佐藤さんは伊豆高原に住んでいた。そして今年の7月末に78歳で亡くなられた。打ち合わせなどで会った佐藤さんの話ぶりや表情などが思い出される。

◆さて『大君の通貨』には、ペリーの来航以来、欧米との貨幣交換レートを巡る交渉に明け暮れた水野筑後守忠徳たちの姿が描かれている。
 幕末の日本では金よりも銀の値打ちが5倍も高い。しかし海外では逆で、金が高く銀の16倍も高い。そこに目をつけた米国のハリス総領事は、銀貨で日本の小判(金)を買いつけ、上海に持っていっては小判(金)を売り、儲けを増やす。また日本に来ては小判(金)を買う。こうした繰り返しにより莫大な利益を貪ったのだ。
◆その結果、日本から大量の小判(金)が流出し、物価の高騰・インフレにつながり、武士階級が困窮、幕府崩壊へと行きついた。まさに自滅である。

◆今の日本はどうか。日米貿易交渉ひとつとっても、安倍首相は「ウィンウィンの関係」だと自画自賛した。だが米国から輸入する牛肉・豚肉・農産物などの関税は引き下げ、かつ余剰トウモロコシまで買う約束をしたのに、米国へ輸出する自動車への関税については、「撤廃に向け、さらなる交渉を続ける」との口約束だけ。
 まさにトランプひとり「ウィン」じゃなかったのか。この「日米貿易協定」を、19日にも衆院で強行採決するに至っては、160年前の「日米通商条約」と同じ轍を踏んでいるのではないか。(2019/11/17)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする