◆「全てを疑う」が衰えた 東アジアの二極化、 危うい
東アジアの情勢があわただしく動く中で、新聞やテレビの役割を問う日本ジャーナリスト会議(JCJ)の12月集会が12月8日、
東京・市ヶ谷の自動車会館で開かれた。テーマは「安保・沖縄・東アジア 報道の批評精神はどこへ」で、
信濃毎日新聞社主筆の中馬清福氏が講演した。
中馬氏は現在を転換期ととらえ、「今のような転換期を乗り越えるには、複数の様々な見解を新聞に載せ、
大いに議論するようなフォーラム性が欠かせない」と述べ、日米同盟などを一本調子で肯定する報道のあり方を批判した。
集会では冒頭にJCJの柴田鉄治代表委員が開会のあいさつをした。中馬氏は朝日新聞社の出身で、
憲法擁護の大社説を同紙が出した時の論説主幹だったことを紹介。
続く講演で中馬氏は、新聞紙面の質の低下について触れ、「全てを疑うという、最も大切な感覚が擦り切れ、衰えてきた」と指摘した。
さらに中国や北朝鮮をめぐる問題にも言及。「危険なのは東アジアが日米韓と中ロ北朝鮮に二極化していくことだ」としたうえで、
日本の行動の不可解さを取り上げた。 北朝鮮の砲撃事件に対して、韓国と米国が共同行動をとることは条約上からも理解できるが、「なぜ、
そこに日本が首を突っ込むのか。対馬や日本近海が危いわけではないのに、とたんに日米で軍事演習を始める。これは便乗型の演習ではないか」
と問いかけた。
急に新聞紙上をにぎわすことになったTPP(環太平洋経済連携協定)については、米国が参加を表明したとたんに「バスに乗り遅れるな」
と主張し始めたマスコミに対し、「戦争中に聞いたフレーズだ」と皮肉った。
現状ではTPPのもとで「農村の棚田をブルドーザーでならしてしまい、大農場は商社が経営するから農民はいらないよ」
といった方向に行きかねないとして、日本の食糧安保をどう考えるか、新聞がきちんと対応すべきだと語った。
しかし、一方で希望につながる動きとして、長野県松川村の中学校を紹介した。沖縄の新聞と本土の新聞を読み比べ、
基地問題の扱いなど報道の差に疑問を抱いた生徒たちが歴史や文化、料理も含めて沖縄を研究。「沖縄新聞」
と題する12ページの新聞を発行した。信濃毎日新聞の読者センター長が8日発行の同新聞を松川村から運び、会場で配布。
参加者から感嘆の声が上がった。
講演後、休憩をはさんで元東大教授の桂敬一氏と中馬氏が会場の質問に答えながら対談した。会場から、
沖縄タイムス東京支社の銘苅一哲記者が沖縄県知事選について発言。普天間基地の「県外移設」か「国外移設」かで、有力2候補が争ったが、
「県民には同じに映ってしまったようだ」と振り返った。
北海道新聞社東京報道センターの往住嘉文記者は「新聞の原点を考えると、やはり弱者に視点を置くべきだろう」と決意を語った。
昭和女子大学教員の清水真氏は地方紙連携の重要性を指摘し、地方紙のすぐれた記事を集めた著書『日本の現場』を披露した。(S)
(JCJ機関紙「ジャーナリスト」2010年12月25号より)


