1月26日、那覇地裁には、片道3時間かかる沖縄本島の北の端から呼びつけられた東村高江の住民たちが集まっていた。この2年、
何度足を運んだことか。訴えられた住民の中には、裁判沙汰になって失職した人もいる。「被告」は、費用も気力も奪われていく。
この裁判で国は、高江の住民が米軍のヘリパッド建設現場で通行妨害したと訴えた。国が「国策に反対する国民」
を個人名で裁判にかけるのは前代未聞だ。確かに、北部訓練場の一部返還に伴うヘリパッドの移設は日米の合意事項かもしれない。
しかし今現在も演習場のど真ん中に住んでいる恐怖を味わう高江の集落近くに、さらに六つも着陸帯を新設する計画を座視できるはずはない。
力のない市民の最後の抵抗である「座りこみ」を「通行妨害」で訴える手法を社会が容認するなら、「座りこみ」は「禁じ手」にされてしまう。
「禁じ手」にすべきは、権力や財力のある国や企業が反対意見を持つ個人を報復的に訴える「SLAPP訴訟」の手法である。
この口頭弁論の日、関係者がみな那覇に行った隙を狙うように、現場に大人数の作業員が投入された。開廷中にその情報が入り、
法廷は騒然とした。「これが国のやり方か?」弁護士らも立ち上がって国に抗議した。法廷にいた私たちは「これこそSLAPP訴訟。
その概念の説明がトップ
ニュースだ」と決めた。放送後、内部では「刺激的すぎる」と批判もあった。
一方反響も大きく、HPへのアクセスとFAXの数は群を抜いていた。同じく、
住民運動がSLAPP裁判にかけられている山口県上関の原発問題関係者からの反応も速かった。
上関では、原発建設の埋め立てを阻止している漁師とカヤック隊が4800万円の損害賠償を求められている。
そのカヤック隊員の若者達が2月上旬高江にやってきた。そして3日間、当たり前のように住民と共に防衛局員を説得し、建設作業を止めていた。
中には山口県庁前で10日間のハンストを決行した、大阪出身の19歳の少年もいた。彼は、上関も高江も自分の問題だという。
「原発のごみは自分達世代の問題。上関の現場で命をかけている人をみて魂が動いたから、自分の問題になった。自分のことだからやっている」
高江と上関、この二つの現場のニュース映像は不思議なほど流れない。
しかし彼らの世代はテレビよりネットを見る時間が長い。テレビがやらない原発の問題や高江・辺野古のSOSをリアルタイムでキャッチし、
自分の問題と捉え、ツイッターで呼びかけて、みんなでUストリームで現場の生映像を見る。環境破壊のSOSを発している現場があればただ、
「行って止める。問題の根っこはどこも同じでしょう?」と見抜いている。
ベテラン記者が基地建設の経緯や過疎と原発のしがらみから問題を読み解こうと足踏みする間に、彼らは「地球を壊さないで!」と直球で動く。
これまで分断されていたそれぞれの現場の壁がネット世代によって融解し、新たな解決の地平が見えてくるのではないか。
そんな時代の流れを目の当たりにした。
いま、QABのHPでは高江の報道ばかりにアクセスが集中している。一度も全国ニュースになっていない二つのSLAPP裁判の現場を、
国民はネットで知っている。
大事なことに限って、地上波の報道は伝えない。それが常識になりつつある。
(みかみ・ちえ/琉球朝日放送キャスター)
*日本ジャーナリスト会議 機関紙「ジャーナリスト」 2011年2月25日号より
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JCJ機関紙「ジャーナリスト」見本(2011年2月25日号1面)
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