2013年01月18日

安倍亡国政権の暴走始まる(2)――生活保護費減額は「壊憲」に直結した愚策である

 報道によると、生活保護費の支給水準について、田村厚生労働相が引き下げを明言、慎重姿勢を示していた公明党の石井政調会長が容認する考えを示した。
 引き下げに法改正は必要なく、新基準を厚労相が告示することで実施できることから、東京新聞は17日の朝刊で「生活保護の支給水準が2013年度から引き下げられる見通しになった」と報じ、引き下げ幅は政府・与党が13年度予算の編成過程で決める。引き下げが実現すれば04年以来」と伝えた。
(JCJふらっしゅ「Y記者のニュースの検証」=小鷲順造)

 自民党は衆院選で支給水準の10%カットを公約していたが、同記事によると、田村氏が就任直後に引き下げに意欲を示したのに対し、石井氏は「慌ててやる話ではない」と慎重姿勢を示していた。ここへきて、公明党が下記の要因も含めて、何らかの理由から自民党に同調したものと思われる。

 南日本新聞は18日付の社説<[生活保護見直し] 引き下げありきですか>で、以下を指摘している。
1)厚生労働省が生活保護費のうち、食費や光熱水費に充てる「生活扶助」の支給水準と、年収120万円弱の低所得者の生活費とを比較検証した報告書を公表した。
2)この報告を受けて、田村厚労相は支給水準の引き下げを明言した。慎重だった公明党も容認に転じる見通しとなった。
3)生活保護受給者は昨年9月時点で213万人を突破した。給付総額は3兆7000億円となり、財政を圧迫している。
4)試算によると、夫婦と子ども(18歳未満)2人の4人世帯で、生活費が支給を14.2%下回った。しかし、今回の厚労省の試算でも、受給者の多くを占める60歳以上の世帯は、低所得者よりも厳しい支給水準だった。一律減額にならないようにと報告書は念を押している。
5)今月下旬の2013年度予算案の決定に向け、引き下げ幅が見直しの焦点になる情勢だ。報告書が出てから2週間余りしかない。
6)こんな窮屈な日程では、「最後の安全網」に頼る人々の声に耳を傾けるのは難しかろう。支給水準引き下げは最低賃金や修学援助などにも波及する。拙速な判断は避けるべきだ。

 また同社説は、厚労省社会保障審議会の部会がまとめた別の報告書を紹介し、「うなずける指摘は少なくない」としている。その内容は、以下の通りで、同社説は「不正(受給)への罰則強化と同時に、こうした支援策を充実させたい」と提言する。同感である。
1)受給者が働いて収入を得て、そのために保護費を減額される場合は、行政側が収入の一部を積み立てておき、保護から脱却した後にまとめて本人へ支給する。
2)困窮家庭の子どもの学習を支援し、貧困が次世代に引き継がれないようにする。
3)就労支援の仕組みをきちんと整える。貧しくても勉強したいという小さな声に手を差し伸べる。

 北海道新聞は18日付社説に「生活保護費 減額前提は本末転倒だ」を掲げ、以下を指摘した。
1)(生活保護費減額)で、注意しなければならないのは、基準額が受給者以外の人が利用する他の制度と連動していることである。
2)基準額が下がれば住民税の非課税世帯の一部も課税対象となり、医療や介護の負担が増す恐れがある。最低賃金の水準にも悪影響を与える。
3)政府は2%の物価上昇目標を日銀との合意文書に明記する考えだが、インフレに加え各種制度の内容が後退すると生活に苦しむ人が増えるだろう。これでは本末転倒だ。
4)生活保護費は社会保障費全体の1割にすぎない。年金や医療などにメスを入れないまま生活保護だけを狙い撃ちにするのであれば、「弱者切り捨て」になりかねない。
5)受給者は現在、全国に213万人いるが、資格がありながら受けていない人は800万人にも上ると言われる。最低賃金の引き上げなど、こうした層の生活を底上げする対策がなければ貧困問題は解決できない。
 
 まさにその通りだろう。
 自民党のやり方は自らの失政・悪政の責任を棚に挙げて、責任を「自己責任」として市民に押し付け、市民どうしを競わせたり対立させたりする構図に持ち込む。自民党はいまだにその保身と独りよがりの体質から脱していないのだ。

 低所得者と生活保護受給者を、不正受給など枠外の犯罪行為をことさらに取り上げ連動させて、競わせ、足の引っ張り合いがあるかのように描き出す。それをマスメディアが浅薄な興味本位で取り上げて、生活保護受給者をバッシングするネタを探し出して煽り立てる。そこには、北海道新聞が社説で指摘しているような、俯瞰的・冷徹な視点は存在しない。

 南日本新聞社説が指摘するように「最初に減額ありき」、北海道新聞が指摘するように「先に減額ありきの発想では制度の趣旨に反する」のである。
 こうした自民党の態度は、すでに「失政」が見事に証明されている小泉自公政権以降「縮小再生産」の負のループ、負のスパイラル路線のそのままであることを見事に暴露してやまない。そして厚生労働省も同様だ。お役所仕事もいいかげんにすべきだ。
 いったいなぜ、厚生労働省という名の省でありながら、全く異なる低所得者の増大の問題と生活保護制度の問題を乱暴に混同させることができるのか。非正規社員を膨張させ不安定就労層を増大させる政策を推進してきたのはだれなのか、担当したのはどこの役所なのか。こそこそと逃げ回るかのように、それにほおかむりして、その責任を「不正受給者」の存在をテコに、生活保護受給水準の引き下げに逃げ込もうとするとは――。

 まして、生活保護制度は、驚くべき欠陥と破綻が指摘されて再生をめざしている健康保険制度や年金制度とも密接に関連してくる。それだけではない。日本の経済社会そのものに「再生産」の機能を保障する社会システムでもある。そのうえ、安倍政権はデフレからの脱却を掲げているのではないのか。その矢先に、生活保護費減額とは、矛盾もはなはだしいうえに、悪政に失政と悪政を掛け合わせるようなものではないか。

 もう一度、上記の北海道新聞の指摘を繰り返しておかねばなるまい。

・基準額が下がれば住民税の非課税世帯の一部も課税対象となり、医療や介護の負担が増す恐れがある。最低賃金の水準にも悪影響を与える。
・政府は2%の物価上昇目標を日銀との合意文書に明記する考えだが、インフレに加え各種制度の内容が後退すると生活に苦しむ人が増えるだろう。これでは本末転倒だ。

 自民党の悪政はそのまま失政につながっている。ものの見事に日本の経済社会総体を年々シュリンクさせ続けてきた自民党の、君臨しようとするだけで政治に責任を持たず、自己保身のみを優先し、独りよがりで突っ走る政治に、今回あらためて、最後のピリオドを打つ必要を感じてやまない。どんな理由や事情が背景にあるのか知らないが、公明党もいいかげんこうした自民党の亡国政策とは縁を切るべきではないのか、と思う。

 後ろ向きの復古改憲とすでに破綻した新自由主義に毒された自民党はいざしらず、公明党はいまこそ、いったい誰のために、何のために誕生した政党なのか、じっくり胸に手を当てて、その支持層から託された使命と果たすべき役割について思い返すべきではないかと思う。

 このニュースに関連して、昨日、次のようなツイートをみかけた。
「低所得者が生活保護基準以下の生活をしているのはそれで十分だからではなく、そうせざるを得ないからだ。生活保護のことを知らせず、または利用したくないと思わせて生活保護を利用させない。そうして極低所得者を貧困の極みに押し込んだまま、更にそれを口実に生活保護基準を引き下げる厚労省の横暴。」
 これもまた一面の真実を見事にとらえ、現在の日本のお役所体質の貧困ぶりを指し示しているように思う。
1)低所得者が生活保護基準以下の生活をしているのはそれで十分だからではなく、そうせざるを得ないからだ。
2)生活保護のことを知らせず、または利用したくないと思わせて生活保護を利用させない。
3)そうして極低所得者を貧困の極みに押し込んだまま、更にそれを口実に生活保護基準を引き下げる厚労省の横暴。

 横暴であるといわざるをえないだろう。いかに制度上、引き下げだろうが引き上げだろうが、厚労相が告示すれば実施できるといっても、このルール無視、制度の意思・趣旨を逸脱した政治姿勢、役所の公務姿勢には驚きと憤りを禁じえない。

 もう一度、さきほど紹介した北海道新聞の社説に戻ろう。さきほど紹介したのは同社説の後半部分である。社説は前半で、次のように指摘・提言し、社説の中盤の締めでは、厚生労働省が報告書で行った「試算」に対して、「試算方法を見直すべきだ」と厳しく求めている。
1)政府は新年度から、生活保護の支給基準額を引き下げる方針を示した。
2)厚生労働省の社会保障審議会が低所得者の一般的な生活費より、基準額が上回っているケースがあると指摘したためだ。具体的な引き下げ幅は月内にも決める。
3)生活保護はあくまで最後の安全網である。保護を受けずに働く人の不公平感に配慮する必要はあるだろうが、受給者の暮らしが困難になる事態は避けなければならない。
4)高齢者世帯のように基準額が低所得者の生活費より低い受給者もいる。そうした人まで一律に引き下げるのでは到底、理解を得られない。
5)自民党は、社会保障費を抑制するために支給額の10%削減を衆院選で公約している。先に減額ありきの発想では制度の趣旨に反する。
6)見直すのであれば憲法で保障された健康で文化的な最低限の生活を維持するための方策を、多角的に検討することが欠かせない。
7)引き下げ対象は、生活保護費のうち食費や光熱水道費などに充てる生活扶助の基準額だ。5年に1回見直しており、前回は据え置いた。
8)審議会の試算では、夫婦と子ども2人の4人世帯は基準額が低所得者の生活費より14・2%上回った。受給者の半数を占める60歳以上の単身世帯は逆に4・5%下回った。試算そのものが現状を反映していないという指摘がある。
9)今回、比較対象となった低所得者には保護の受給資格があるのに受けていない人が相当数含まれているからだ。基準額を低めに誘導しているとみられても仕方ない。正確な状況を把握できなければ減額の根拠も崩れる。
10)低所得層の平均的な収入と比較するなど、試算方法を見直すべきだ。

 このように北海道新聞は、自民党が社会保障費を抑制するためにとして掲げた公約「支給額の10%削減」について、1)先に減額ありきの発想は制度の趣旨に反すること、2)見直すのであれば憲法で保障された健康で文化的な最低限の生活を維持するための方策を、多角的に検討すること、を求めている。
 そして、厚生労働省の試算で比較対象となった低所得者には、保護の受給資格があるのに受けていない人が相当数含まれている点に言及して、「基準額を低めに誘導しているとみられても仕方ない」と指摘、「正確な状況を把握できなければ減額の根拠も崩れる」として、試算方法の見直しを求めている。

 政府の財政事情を理由に、生活保護費の基準額を安易に下げる。その影響は、財政の規模の縮小に役立つという素人でも分かる足し算と引き算の問題にとどまるわけはないことを、政府も役所ももう一度よく認識しなおす必要がある。これは「減額」を掲げた自民党が、総選挙を経て政権に返り咲いたからという単純な話ではないはずである。
 この政策は、安倍政権の掲げる「改憲・壊憲(=水島朝穂氏)」政治に直結している。いや、「改憲・壊憲」政治そのものと呼ぶべき退行政策である。

 生活保護費の減額は、住民税の非課税でなんとかやりくりしている世帯を直撃する可能性がある。それはそのまま医療負担の増大や設定された最低賃金の引き下げにも影響しかねない。さらにその上に、インフレ政策による物価上昇と消費増税の負担がのしかかかるようなことがあれば、ただでさえ薄くなっている日本のバケツの底を突き破ってしまいかねない。そもそも危うさでいっぱいの「アベノミクス」もそのまま、日本を一気に「亡国」へと誘う危険な装置と化すことになりかねないだろう。

 最後のセーフティネットであり、かつ市民社会に再生産のダイナミズムを保障する社会システムであることを無視した自民党の生活保護引き下げ公約そのものが、国に課され託された役割と立場を無視し、転倒し混乱した古臭く傲慢で憎悪と保身に満ち溢れた者たちによる、みごとに目先だけにこだわった愚策にほかならない。
 ここで日本の生活の安全保障を、これ以上毀損させるわけにはいかない。この誤った策動を許すことは、そのまま安倍政権の亡国・壊憲政治を許容することにつながる。市民とジャーナリストは即座に連帯し立ち上がり、この悪政・失政をストップさせる必要が出ているように思えてならない。

(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)


*初出:JCJふらっしゅ 2013/01/18 2210号 http://archive.mag2.com/0000102032/20130118150116000.html
生活保護引き下げへ 厚労相明言 公明も一転容認 13年度から(東京新聞17日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013011702000090.html
[生活保護見直し] 引き下げありきですか(南日本新聞18日)
http://www.373news.com/_column/syasetu.php?ym=201301&storyid=45771
生活保護費 減額前提は本末転倒だ(北海道新聞18日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/434648.html
posted by JCJ at 15:12 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック