2013年09月29日

教育介入強める安倍内閣 自民党の国定教科書への強い志向=子どもと教科書全国ネット21・俵義文事務局長に聞く

――右派的な安倍内閣の教育政策が心配です。
 自民党の教育への考え方は、憲法や1947年制定の教育基本法とは180度正反対で、教育は国家の統治行為であるという「国家教育権」の考え方に立っています。
 本来、義務教育というのは親や国家が子どもたちに教育を施す義務があると規定しているのですが、2000年、小渕内閣の時に出された「21世紀日本の構想」懇談会の報告書は、「納税や遵法の義務と並んで、国民が一定の認識能力を身につけることが国家への義務」という考えを打ち出しています。この懇談会の座長だった河合隼雄氏の責任と影響は大きい。
 子どもたちに教育を受ける義務があることを徹底しないから、教室が荒れるのだというのがこの懇談会の考え方です。

 2006年の新教育基本法は、この国家教育権の立場で作られました。そこには国家の定めた愛国心や道徳心などの徳目が、教育の目的として定められています。しかし本当はそうした徳目は個人の内面に関わることであり、国家は介入しないというのが近代国家のあり方なのです。
 新教育基本法にそって2007年には教育三法が改定され、新学習指導要領が作られました。
 安倍教育改革の目的の一つは、国家教育権の立場を徹底させることです。戦前の中央集権化した教育の反省から、戦後は教育の地方分権が建前となっています。実態はかなり文科省が地方に介入しているのですが、さらに法的にも中央集権化しようとしています。
 もう一つの柱は、競争の徹底でグローバル競争に勝ち抜く人材を育てるという考え方の新自由主義的改革です。
 新保守主義と新自由主義の二つの政策がからみあいながら、自民党の教育政策は推進されています。
 新自由主義的な政策は、六三三四制の解体を目指しています。
 大学はエリートとそれを支える管理層を養成する場にする。今の大学は多すぎるとし、高校を卒業すればだれでも大学を受験できる現行制度を変え、大学受験資格を得るための試験、「日本型バカロレア」の導入を議論している。
 しかし実際には多くの大学を潰すわけにもいかないので、エリート校以外は職業訓練校的な学校に移行させて、中堅クラスと使い捨ての労働力はそこで養成する。
 もう一つの新保守主義的な政策は、教育の徹底的な管理統制を目指しています。一番の狙いは教科書です。教科書法を制定し、実質的な国定教科書にしたいと考えています。
 教科書法が初めに出てきたのは1956年のことです。教科書偏向攻撃の中、教育委員の公選制の廃止とともに国会に提出されました。公選制は廃止されましたが、教科書法案は日教組や出版労連の前身の出版労懇や日本教育学会などの反対運動で廃案に追い込みました。
 2度目は1980年に始まる教科書偏向攻撃です。歴史教科書の書き換えが近隣諸国の反発を受け日本国内でも教科書への関心が高まりました。
 自民党は教科書法案を準備しましたが、反対運動が盛り上がり、82年11月には武道館で2万人を集める大集会が開かれました。さらに翌83年12月には再び武道館で、多くのフォークシンガーや文化人が協力した集会も開催され、こうした運動により法案を国会に上程させませんでした。
――検定制度も危ない? 日本の教科書は学習指導要領に準拠して書かれます。指導要領は大綱的基準といって骨組みしか決めていません。
 文部省は指導要領に解説をつけています。その解説ではもっと細かく教科内容を指定しています。
 ただ教科書会社は解説を参考にはしますが、全てそれに則るわけではありません。自民党は解説のような事細かな指導要領を目指しています。
 さらに検定基準を改悪し、文部科学大臣が教科書に書く内容を指定し、政府見解を多数意見として書かせるなど二重三重の国家統制の仕組みをつくろうとしています。そうしたことを教科書法制定で実現させようと目論んでいるのです。
 自民党には国定教科書への強い志向があります。62年の教科書無償法制定の時にも国定化すべきという意見が出ました。
 しかし戦前の経験から、国定教科書には今でも風当たりが強い。かつては多様だった教科書を数種に絞り、限りなく国定教科書に近づけようとしています。
――教科書採択への介入もありますね。
 教科書は使う立場の教師が選ぶのが妥当ですが、文科省は広域採択制度を実施しています。
 規制緩和の流れで、教科書選択に関しては97年から3年間つづけて、「将来的には学校単位の採択にする。当面は教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択地区の小規模化や採択方法の工夫改善についての都道府県の取組みを促す」という閣議決定がされましたが、文科省はサボタージュしてきました。
 文科省などは教科書の採択権は教育委員会にあると主張してきましたが、首長や教育長が自由に教育行政を行うようになれば、「つくる会系」の教科書の採択も増えるでしょう。

【俵 義文(たわら・よしふみ)】1941年生まれ。出版社に勤務し、出版労連教科書対策部長などをつとめる。著書『ドキュメント・「慰安婦」問題と教科書攻撃』(高文研)で97年度JCJ奨励賞受賞。近著に『徹底検証 あぶない教科書』(学習の友社)がある。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2013年9月25日号より
聞き手=保坂義久


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posted by JCJ at 10:52 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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