「情報は氾濫し偏在し欠落する」という。いくら言論があふれても、それだけで読者を動かせるものではない。かえって「森に木の葉を隠す」ことになってしまう。「集団的自衛権」報道についても同じことが言えるのではないか。
この問題、報道・解説・社論に多く取り上げられている。「氾濫している」といっていい。ただし、その言説が読者に伝わっているとは思えない。理由は、大半が「事実報道一点張り」「当局発表寄りかかり」であり、また抽象的に語義解釈し、また漠然と9条との矛盾を撫でているにすぎないからだ。読者は「国際法講座」や「憲法講義」が聞きたいのではない。「事実」と「意味」を求めているのだ。
マッカーシズムを批判報道したエド・マローの盟友、フレッド・フレンドリーが書いた本にこんな引用がある。
「解説というのは、現在の事実、過去の事実、あるいは現在の事実から判断される将来の可能性に関するものである。論説というのは、あるべき姿に関するものである」
この定義に沿って考えてみる。
第1に、「集団的自衛権とはどういうものか」を「現在の事実」と照合しつつ報道する努力が欠けている。自衛隊と米軍の関係に即してみれば、すでに05年から両軍の「役割・任務・能力」を合致させる「再編計画」が動いている。新装備、訓練、基地の動向にそれはあきらかだ。なぜ、現状と実態的に結びつけて報じないのか。策定中の「新防衛計画の大綱」「新ガイドライン」の内容からも論点は容易に見つかるはずだ。
つぎに「なぜ今、問題となっているのか」について、「過去の事実」を踏まえた検証がなされていない点がある。たとえば、なぜベトナム戦争、湾岸戦争に自衛隊は参戦しなかったか。それは日米安保条約に集団的自衛権が規定されていないからだ。
憲法9条との整合性に気兼ねしつつ締結された条約であるゆえ当然であるが、この条約は「日本の施政の下にある地域の共同防衛」、つまり日本が個別的自衛権行使にとどまることを前提としている。だから米韓、米比相互防衛条約、米・豪州・NZ3国のANZUS条約のような参戦義務を盛り込めなかった。解釈変更は、以後「アメリカの戦争」に参加する意思表示となる。自衛隊員はそれを望むか、ぜひ聞いてほしい。
また、論調は、政府が憲法解釈を変更することでもたらされる「あるべき姿」の崩壊を、歴史から学びとる視点も欠けている。1935年の「天皇機関説」排撃と政府の「国体明徴」声明がその一例だ。右派の攻撃に耐えかねた岡田啓介内閣は、それまでの憲法解釈、「国家は法人」「天皇はその一機関」とする路線を修正、「統治権の主体は天皇」へと転換させた。
明治憲法では、統治権のかなめとなる「統帥権」は軍部に独占されていたので、結果は「軍部専横国家」へとひとまたぎだった。翌年「2・26事件」、「軍部大臣現役武官制」、さらにその翌年には「日中全面戦争」開始となる。
集団的自衛権の解釈変更を、そのような「歴史の因果律」とかさねて論じる姿勢が、いま言論機関に必要なのではないか。
(軍事評論家)
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