軍制研究などで知られる歴史学者の纐纈さんは、集団的自衛権行使容認の閣議決定など安倍政権の暴走にかねがね危機感を強めていた。今年1月、野党から統一候補にとの要請に応えて決断した。山口県は衆参ともに自民が議席を独占する。安倍首相の地盤でもある。「それだけに反発する声も根強くある土地柄」だが、議席には届かなかった。
自公は野党統一候補に対して、野合と批判した。纐纈さんは「本来、政党はそれぞれの綱領に従って政策を訴える。しかし巨大な与党勢力によって平和憲法が破壊されようとしている現状に対して野党はまとまっていく必要がある。野合批判をする自公の政策綱領には多くの点で違いがある」と反論。政権交代は必要で「政権がいったり、きたりすることで濁った水は浄化される」と述べた。
安倍首相が強調する日米同盟の今後について纐纈さんは、核兵器問題などで深刻な見方を示した。
米は東アジアの覇権を手放したくないが、経済の衰退などで足元がふらつき、余裕がなくなっている。そのため米の安全保障負担を同盟国へ移してしまえとする考え方「オフショア・バランシング」論が根強くあると紹介。「米は沖合に退いて前線は日韓を利用すればいい」として、日本の核武装を容認する声さえあるという。こうした動きに安倍首相は乗っているのではないか。実際、3月に内閣法制局の横畠裕介長官が、現行憲法でも核使用を禁じていないと国会答弁。次いで閣議決定をした。纐纈さんは「核武装は核戦争を誘発しかねない」と憂慮する。
自民は憲法草案に「国防軍を保持する」と書いている。纐纈さんは「現実にそうなると核武装、軍法会議、徴兵制が強行される」と指摘。また「緊急事態」の章を新設し、戦争になれば「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定できる」としている。
纐纈さんは「まさに戦前の国家総動員法。国民を好きなように使うことができる。
これはジョーカー、すなわちオールマイティーになる。近代憲法の全否定だ。国家を人々の命よりも優位に置く戦前政治へ安倍政権が逆走しているのは許せない」と憤った。
(広島支部)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」(2016年9月25日号)
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