1959年の両局開局時、出資した旺文社の赤尾好夫の一族が90年代、マネーゲームに奔った。
著者は、フジを巡るマネーゲームと最高権力者日枝久・フジサンケイグループ代表の経営姿勢に多くのページを割く。
日枝は92年、創業者一族の鹿内宏明を追放し、以後30年近く経営のトップに君臨する。だが2005年、ライブドアの堀江貴文がニッポン放送株を50%確保して、フジ支配を謀るという危機の瀬戸際に、日枝は立たせられる。彼は堀江との和解で危機をしのぐが、翌年1月の堀江逮捕でライブドア株は暴落、フジの経営は深傷を負う。
著者は、一連のメディア買収戦が「日枝だけでなく、キー局の経営者や放送行政当局の発想を内向きのベクトルに導いた」と分析する。総務省は認定放送持株会社制度を新設し「放送業界を守ることに価値を置く新秩序が定まった」。
18年7月のカジノ法成立は「日枝にとって最大の障壁だった法整備が決着した」と、著者は指摘した上で「収益向上を歪んだ形で表出」しようとする日枝の計略を厳しく批判する。
テレビ朝日は、赤尾一族のマネーゲームによる被害の最大化は阻止したものの、安倍首相と親密な会長の早河洋のもとで「権力監視機能は弱体化する方向へ向かうだろう」と、著者は強い懸念を示す。(講談社2400円)


