2022年02月26日

【おすすめ本】森住 卓『浪江町津島 風下の村の人びと』─密着して写し取った心の叫び!=酒井憲太郎(フォトジャーナリスト)

まえがきで著者は「この本は原告団の心からの叫びと願いをまとめた」と言う。原告とは福島原発事故を起こした東京電力を訴えた人びとだ。
 著者は訴訟以前の2011年3月13日から取材を始めたが、その頃は「浪江町津島」に高濃度の放射性物質が降下した事実を知らなかった。その年の12月、福島県飯館村で野鳥・キビタキの死骸から出る放射線を、東大名誉教授の協力で映像化した。それ以降、高感度・高明細な写真フィルムで撮影している。
 2014年浪江町津島の草むらにある黒御影石を発見、その上に大判の写真フィルムを密着させ3ヶ月後に回収・現像すると、「絆」の文字が浮かび上がった。「汚染の 実態を視覚化し、国の言う嘘を暴かなければならないと思った」という。

 本書の圧巻は最後の「けもの物語─カモシカのつぶやき」だ。裏表紙の写真にあるニホンカモシカは、前著『災害列島・日本』(扶桑社)にも登場するが、カメラをみつめるニホンカモシカを、どのように撮影したのか、その答えが本書にある。
 著者は2019年春から浪江町津島字赤宇木地区の空き家に、承諾を得て無人カメラ数台を仕掛け、野生動物を撮影してきた。
 本書には数多くの野生動物が登場するが、それらを代表してカモシカが「原発事故など絶対起こさないで欲しい」と訴えている。
 2021年7月30日、「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」原告団に対し、福島地裁郡山支部は「東電に10億円支払い命令 原状回復請求は却下」の判決を出した。(新日本出版社2200円)
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする