4月末からポレポレ東中野(東京)で始まった劇場公開は6月第1週まで延長が決まり、全国の自主上映活動が40都道府県250会場での上映会が確定、広がりを見せている。描かれている戦前の日本の姿から、現代の私たちの目の前で今起きている出来事を重ね合わせて考えさせてくれる。そう、今だからこそ見るべき作品なのである。
原作は藤田廣登著「時代の証言者 伊藤千代子」(学習の友社)。歌人・土屋文明が「こころざしつつ たふれし少女(おとめ)よ」と詠んで非業の死を悼んだ女性活動家の生涯を調査・研究、「100年前、声をあげた女性がいた」と打ち出し、「その清冽な生き方が現代を撃つ」と今によみがえらせた本だ。
桂壮三郎監督は「戦争反対などが『国賊』『非国民』扱いされた絶対的天皇専制時代、帝国主義侵略戦争に反対し、主権在民、社会的平等を願って24歳の若さで斃(たお)れた伊藤千代子の苦難と希望とこころざしを格調高く描く」と述べ、伊藤を知らない人、特に若者へ、伊藤の生きた時代を理解し生き方への共感を得る、と狙いを強調している。
治安維持法下、特高の拷問で亡くなった小林多喜二と同時代に、弾圧にも自らの志を貫いた生き方を見ていると、ロシアのウクライナ侵攻の今の事態から何を学び、どう行動していく必要があるのかを、この映画は当事者意識を持って考えよと語りかけているようにも感じる。現代の視点から伊藤にスポットを当てた意味は大きい。
映画とともに、漫画「伊藤千代子の青春」(ワタネベ・コウ著、新日本出版社)も好評で3刷が出ている。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年5月25日号
2022年06月10日
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