2022年07月02日

【リレー時評】新しい戦争報道 ウクライナ・デジタル=藤森研

 ロシアによるウクライナ侵略からすでに4か月。今も激しい戦争とその報道が続いている。
 1970年前後のベトナム戦争では、沢田教一ら多くの記者・カメラマンが戦地に入り、生々しい現場の様子が世界に報じられた。「見える戦争」と言われ、市民らの反戦運動につながった。
 それに懲りたか91年の湾岸戦争で、米軍は徹底的に報道を規制、代表取材だけ認める「プール取材」方式をとった。2003年のイラク戦争では、米軍戦車に記者が同乗する「エンベッド取材」が用意された。
 22年の今回の戦争の特徴は、SNSなどネットを通じて、多くの当事者や市民らが刻々の状況を世界にいち早く知らせ、再び「見える戦争」になったことだ。
 ネット情報には偽ゼレンスキーが登場するなどフェイクの危険性が伴うことも事実だ。ネット画像の信用性確認のために、英BBCは衛星画像による建物や地理的状況の確認、流れている音声が何語かなどを検証しているという(3月28日読売新聞)。
 多くのジャーナリストも、現地入りしている。その一人、フリーの村山祐介氏から24分のドキュメンタリー作品が送られてきた。現在ユーチューブで見られる(『ブチャ〜「死者の通り」8人虐殺事件を追う』)。村山氏は元朝日記者で、4月5日から何度もブチャに入り、ロシア軍による8人の虐殺を、証言などで具体的に明らかにした。現場近くに残っていた頭部のない遺体の映像は見るのに辛い。
 世界から集まるジャーナリストのために、現地ではウクライナ側の「プレスツアー」が組まれている。単独取材の場合、要注意は地雷。アスファルト上を歩くことが鉄則になっているらしい。
地元のジャーナリストも踏ん張っている。「ハリコフタイムズ」のセルゲイ・ボボク記者はNHK「国際報道2022」に、街にとどまって報道を続ける覚悟をこう語った。「自分たちが避難したら誰もこの街で起きていることを知ることができなくなってしまう」
 ネットにも、既存のメディアにも、長短がある。ネットの目は、遍在する。メディアは、裏取りの訓練や社名での責任の担保が長所であろう。
 両者は補完もし合う。村山氏は、虐殺直後の様子を撮影してネットに載せた地元男性を探し出し、直接話を聞いて、実相に迫る一助とした。
 逆に、ジャーナリストが体を張って撮った現地映像を、世界の市民が積極的にSNSなどでシェア、拡散しているのも今度の戦争の特徴だろう。ネット時代の市民とメディアの、緩い連帯の形とも言える。
  一方で、ロシア国内では前時代的な厳しい報道規制や、市民への弾圧が続く。報道の自由がないもとで、世論の戦争遂行への支持率は高止まりしている。
 ジャーナリズムの意味を改めて考えさせる、21世紀の戦争だ。
  藤森研(JCJ代表委員)
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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