2022年09月01日

【焦点】米IT企業 労組結成 アマゾンなど日本に飛ぶ火 労働者の反乱始まった=橋詰雅博

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ビックテックと呼ばれる米国巨大IT企業で労働組合結成が相次いでいる。グーグルのエンジニアらが親会社のアルファベット社員の協力を得て昨年1月に労組を誕生させた動きは、今年に入り加速した。4月にニューヨーク市スタテン島にあるアマゾンの倉庫で、6月にメリーランド州ボルチモア近郊のアップル直営店で労組が生まれた。「利益につながらない」と労組結成に反対する経営者に抗ったのは、コロナ禍で命の危険にさらされながら働いてきたのに賃金上昇が物価高騰に追いつかず、さらなる賃上げが必要という切実な要求が背景にある。

動きに株主も呼応

 この動きに株主も呼応した。5月末の米国アマゾンのオンライン株主総会で、アクティビスト(物言う株主)の英国企業のCEOが倉庫従業員の賃金と労働条件の改善を求める提案をした。一人の倉庫従業員が「投資家の皆さんは自らのリターンを支えている労働者の安全についてどう考えていますか」と訴え、否決されたものの提案への賛成率は44%にも達した。
 一度解雇されても諦めずにアマゾン労組を結成した黒人リーダーのクリスチャン・スモールズ氏は「これで会社と対等に交渉できる」としたうえで「労働者の権利を認めない雇用者には何かしらの罰が必要だ。そうでないと米国で働く人々は苦しみ続ける」と話した。
 最低賃金を20jから22jに引き上げるという会社側の提案に屈しなかったアップル労組幹部は「全米約270店舗のうち、20数店舗で労組結成への関心を示している」と見通しを語った。「労働者が反乱した」と指摘した米学者もいた。

大統領は労組支援

米改革派労働運動団体「レーバー・ノーツ」と交流がある東京管理職ユニオン委員長の鈴木剛さんは米国の動きをこう見る。
 「NPO法人・労働教育調査プロジェクトが79年創刊した月刊誌の名称であるレーバー・ノーツは、雑誌編集と労働運動リーダー育成が主な事業です。労組再生に向けたオルガナイザー教育を受けた女性やヒスパニック系、黒人らは働く職場や住む地域で精力的に活動している。賃上げ要求に加えて気候変動対策、ジェンダー平等、人種差別撤廃などを掲げ社会的労働運動を盛り上げてきたことと、バイデン大統領の公約である労組支援が組合結成に拍車をかけた」
 東京管理職ユニオンは個人加入の労組。鈴木さんは15年にアマゾンジャパン東京本社や物流センターのマネージャークラスからなる「アマゾンジャパン労組」結成に尽力した。成績不振を口実した退職強要や組合支部長の不当解雇撤回の戦いに取り組んできた=写真=。

配達員組合も誕生

 米国の勢いは日本に飛び火した。アマゾンジャパンの荷物を神奈川県横須賀市で宅配するドライバー10人は「アマゾン配達員組合横須賀支部」を6月につくり東京ユニオンに加入。配達中に事故で荷物が破損した時、ドライバーが負担したお金の返金などをアマゾンに要求している。
 この労組立ち上げをサポートした鈴木さんによると、全国各地のアマゾンドライバーから労組結成の相談がきているという。
 企業において生産性や利益向上にとってマイナスだと労組を敵視する合同会社アマゾンジャパンに対し鈴木さんは「決算報告や株主総会開催の義務もない合同会社は社会的な透明性が低い」と批判した。
 世界最大のコーヒーチェーンのスターバックスでも米国内100店舗で組合が誕生した。従業員をないがしろにした株主至上主義の経営は曲がり角にきているようだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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