2023年06月03日

【月刊マスコミ評・新聞】民意は性急な改憲を求めていない=六光寺 弦

岸田文雄政権が敵基地攻撃能力の保有を始めとする軍拡路線を進める中で迎えた今年の憲法記念日。全国紙の5月3日付朝刊では、岸田首相の単独インタビューを1面トップに据えた産経新聞の紙面が目を引いた。「改憲へ国民投票 早期に」の見出し。改憲に前のめりの姿勢を隠さない。
 産経は社説で、憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の部分を「完全な誤り、偽り」と決めつけ、戦力不保持を定めた9条2項の削除を求めた。例年にも増して9条改変の主張に鼻息が荒い。

 同じく改憲を社是とする読売新聞の1面トップ「憲法改正『賛成』61%」は、憲法を巡る自社の郵送世論調査の結果。改憲に賛成の意見が、2年連続で60%台の高い水準だという。社説では「時代や安全保障環境の変化を踏まえ、最高法規のあり方を建設的に論じ合い、必要な部分については改めなければならない」と主張。9条については「改正の議論は低調だ」と不満をにじませている。

 朝日新聞は、敵基地攻撃能力の保有と9条との整合性が議論されていない様子のリポートを、毎日新聞は、岸田首相の本音を探る読み物をそれぞれ1面トップに掲載。社説でも、民主主義の形骸化の危惧や、軍拡に歯止めが必要なことなどをそれぞれ論じた。
紙面の比較では、総じて改憲論が勢いづいているように感じられる。だが、民意は冷静だ。
読売のほか、朝日、共同通信も憲法を巡る郵送世論調査を実施している。改憲の機運が高まっているかを尋ねた共同通信の調査では、「どちらかと言えば」を含めて「高まっていない」との回答が70%に上った。民意が性急な改憲を求めていないことは明白だ。
 
9条についても、1項と2項に分けて改正の必要性を尋ねた読売調査では、戦争放棄の1項は「改正の必要がない」が75%に上った。戦力不保持の2項は「改正の必要がある」は51%止まり。9条全体について尋ねた朝日調査では「変えない方がよい」が55%を占めた。

 ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射、中国の軍備拡張に社会の不安が増しているのは確かだろう。しかし、危機をあおる論調があっても、民意が早急に改憲を求めているわけではないし、9条を変えることにも慎重だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年5月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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