Passo Passo+Atiqa Kawakami
浪曲を聴いたことのない若い世代も、この映画で初めて浪曲に出会うと、新鮮な「現代的魅力」を感じて、とりこになるのではないだろうか。映画を起爆剤に新たな浪曲ファンが増え、新しいブームが巻き起こってほしいと期待し、妄想が膨らんでくる。
私が観に行った8月5日の横浜シネマリンでの上映初日、川上アチカ監督の舞台挨拶もあり、客席は満席に近い入りだが、観客は浪曲をよく知る年配者が多かった。さて、大勢の若者にもっと見てもらうにはどうすればいいだろう、そんなことを考えてしまった。
次世代に見てほしいと思った理由は、浪曲の「現代的な魅力」が分かりやすく盛り込まれているからだ。もちろん迫力のある口演のシーンも魅力的なのだが、浪曲界の日常の人と人との関係、日常の生活が見事にとらえられているのだ。
「伝説の芸豪・港家小柳に惚れ込み弟子入りした港家小そめが、晴れて名披露目興業の日を迎えるまでの物語」を追ったドキュメンタリーだが、小柳師匠に弟子入りした思いを小そめが語る場面で、こんな言葉をつぶやく。
「今ちょっと住みにくくて、今現在が。綺麗すぎるっていうか。きちんとし過ぎてるっていうか。息苦しいっていうか。だから余計、そういう昔ながらの人を見ると良いなって思うのかもしれない」。そう、今の社会が失ってしまったものが、浪曲に生きる人たちの日常には脈々と生きている。
川上監督が同様に小柳の魅力に引き込まれたのも、同じ思い。日常生活に密着した映像からほとばしるメッセージを、次の世代に受け止めてもらいたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年8月25日号
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