2025年08月09日
【オンライン講演】李大統領 経済回復に躍起 国益重視の実用主義 対米・中両利き外交$ュ権交代の韓国政治 五味洋治氏語る=橋詰雅博
韓国の李在明(イ・ジェミョン)新大統領は、国益重視中心の現実路線に沿う「実用主義」を掲げる。政権交代の国会で革新(進歩)系与党「共に民主党」が圧倒的多数を占め権力盤石の李政権は、国内政治で何をやり、日本を含む外交でどう動くのか。6月28日JCJオンライン講演に登場した元東京新聞ソウル特派員のジャーナリスト・五味洋治氏=写真写真=は、最近の日韓世論調査などに基づき予測した。
AIで経済強国へ
内政
時事通信の世論調査によれば、韓国民の77%は「経済回復」「物価高対策」を求めている。このため李大統領は大規模投資でAI分野において世界第3位をめざし経済力アップを狙う。景気刺激策として国民一人当たり最大55万㌆(約5万8000円)を11月末と使用期限を定めた電子マネーなどで給付を始めた。「物価対策では専従チームを立ち上げ、大統領自ら市場や食堂に出向き現場を視察している」(五味氏)という。これには大統領選での虚偽発言疑惑など3つの裁判で在宅起訴されたうえ2つの疑惑も捜査中という司法リスク≠李氏が抱えていることが背景にある。在宅起訴の裁判は延期されている。
「韓国地上波3社(KBS、MBC、SBS)の出口調査では国民の64%は『裁判は継続』と答えている。経済が低迷(OECDの25年韓国GDP予測は1%)したままなら裁判再開の世論が高まり大統領はピンチに陥る。経済回復に躍起なのはそのためです」(五味氏)
歴史問題スルー?
対日外交
かつて「日本は敵性国家」と過激な発言した李氏だが、大統領になって日本への認識を改めたようだ。
「読売・韓国日報の共同世論調査では、日本に対する『よい』印象が韓国で初めて55%に達し、日本の韓国に対する『よい』印象も52%。保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル) 前政権による日韓関係改善の基調が続いている。23年は日本から韓国に300万、韓国から日本に700万人が訪れている。徴用工問題や慰安婦問題にこだわり良好な日韓関係に悪影響を与えるのはマイナスと李大統領は考えているのではないでしょうか」(五味氏)
カナダG7で石破茂首相と初会談した李大統領は「小さな違いはあるが、両国は協力して役立つ関係にしたい」と述べた。日韓国交正常化から60周年、「李大統領は日本を協力パートナーと見ている」と五味氏はいう。
トランプが警戒
対米
韓国東アジア研究院の調査では、一番重要な外交相手は「米国」と答えた人は90%を超えている。しかし「信頼できる」と回答した人は、24年より4・7ポイント減の68・4%、「信頼できない」は10ポイント増の28・6%。トランプ2・0で米韓安保協力体制が転換するのではないという不安がこの結果につながっていると分析したうえで五味氏はこう話す。「『台湾有事(米中交戦も)は韓国と無関係』と述べたことがある李氏はトランプ氏に警戒されているようです。かといって貿易依存度が高い中国と対立したくない。どちらの国にもいい顔する両利き外交≠ニいう難しい立ち位置で臨むのではないか」
ケンカは避けたい
対中
アジア研究院の同じ調査によれば、中国との関係は「とても重要」と「重要」と答えた人の合計は88・4%と24年より増えた。五味氏は「頭が上がらない中国とケンカは避けたいが李大統領の本音です」と述べた。
対日強硬あり得る
軍事的緊張緩和が対北朝鮮、関係発展が対ロシアとの外交姿勢だ。
五味氏は「李政権は内政で実績を作り、安保は米国、経済は中国と使い分ける。内政でうまく行かない場合、国民の目をそらすため対日強硬に出る可能性もある」と語った。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年7月25日号
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