戦後80年を迎えた今年、新たな戦前状況にあらがうため沖縄のメディアは、過去の戦争や戦後史を検証して教訓とし、再び戦争をさせない報道に懸命に取り組んでいる。
市民運動も新たな展開をしている。「戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク」が結成され、6月に東京行動を実施するなど、活動の規模を拡大してきた。
しかし、日本の軍事費は拡大を続け、米軍と一体となった戦争準備を着々と進めている。軍事演習が日常化し、生活の場に軍事が無遠慮に入り込み、全国でミサイル配備、弾薬庫整備などの計画が目白押しだ。
8月12日には、昨年7月に日本の海上自衛隊艦が中国領海に侵入して威嚇砲撃を受けていたと報じられた(共同通信)。戦争になっていたかもしれない事態が、1年以上たって国民に知らされるとは、恐怖と言うほかない。沖縄から見ると、1972年の日本復帰以後、今が最も戦争に近い状況にあると感じる。
しかし、新たな戦前、戦争準備にあらがう取り組みは、日本の中でうねりになっていない。国民は戦争の惨禍を忘れてしまったのだろうか。7月の参議院議員選挙は、沖縄県民さえもそうなのかと考えさせる結果だった。
沖縄選挙区では「オール沖縄」が擁立した高良沙哉(さちか)氏が自公候補に3万票余りの差をつけて当選、「平和の1議席」を死守した一方、参政党候補が12万票余を獲得した。勝利した高良氏の得票率は40%にとどまった。
比例代表の結果も驚きだった。得票率を多い順に見ると自民16・92%に次ぐのは参政12・87%だった。そして公明10・64%、れいわ10・36%と続いた。既成政党が軒並み減らし、参政、れいわが大きく増やした。おおむね全国と同じ傾向だった。
6月、「復帰50年の沖縄世論」(筑摩選書、熊本博之・田辺俊介編著)という本が出版された。
編著者らが2022年に実施した世論調査などに基づいて沖縄の世論を分析した。若い世代ほど基地問題を重視しない理由として、ローカルメディアに接触せず、「右傾化」する「本土」のインターネットの言論空間にのみ接触するようになっていることを挙げた。復帰50年、戦後80年で「沖縄の心」が、日本に取り込まれそうになっている。
これは、日本でも沖縄でも、「戦争の危機」と「メディアの危機」が同時進行していることを意味している。新聞、テレビなど既存メディアの影響力が低下し、経営も厳しさを増している。特定の記者を排除する政党や政治家が現れ、ネットにはヘイトとうそがあふれ、リンチが横行している。これらが「戦争の危機」助長につながっていく。
この二重の危機に立ち向かい健全な民主主義を支えるために今一番必要なのは、ジャーナリスト、メディアの連帯ではないだろうか。そして市民との連帯だ。ここにJCJの役割があると思う。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年8月25日号
2025年09月11日
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