最大勢力、小学館労組脱退
マスメディアの労働組合がご多分に漏れずいろいろ難しい問題に直面している。先頃のフジテレビ問題で、同社の労組への加入が急激に増えたという話があったが、多くの場合、任意加入の労働組合は、組織率が相当落ち込んでいる。時代の変化を受けたものと言ってよいだろう。
そんな中でいまだに高い組織率を誇っているのはユニオンショップ制、つまり管理職以外は原則として社員が全員加盟という仕組みの会社だ。電通や朝日新聞社がそれにあたる。出版社の場合は、講談社や小学館、集英社を始め、ユニオンショップ制が多い。ただその場合も時代の変化を受けて、例えば講談社などは出版労連(日本出版労働組合連合会)に加盟せず、独自の方針をとっている。
そしてこの夏、その出版労連に激震を走らせたのが、最大の勢力を誇った小学館労組が脱退を決議したことだ。社員が全員加盟制だから当然組合員も多いし、その組合費から一人当たり年間2万円が出版労連に収められていたというから、財政面でも労連を支えていたと言ってよい。
そこが脱退ということ自体、大きな打撃なのだが、この決定が出版労連加盟の他の組合にも影響を及ぼすのではないかと言われている。
オンライン投票の結果だが
小学館労組が出版労連脱退を決めたのはこの夏の臨時組合大会だった。給料が上がらず物価ばかり上がっている現状で、組合費が生活の負担になっているという声が出た。お金がかかる割にはメリットが少ないという、一人の意見だったが、その人物は執行委員に自ら立候補し、出版労連を脱退する公約を掲げたという。
組合員がこう語る。
「臨時組合大会を開いて賛否を問う投票を行うことになったのです。組合大会といえば昔は組合員が顔を揃えて議論も行われたのですが、コロナ禍以降、代議員会議(職場討議)もオンラインになり、今回もネットを使って投票ということになりました。このやり方自体も結果に影響を及ぼしたと思います」
その結果はどうだったかといえば、脱退に賛成が約5割、反対が1割だった。一見圧倒的多数で可決したと見えるが、特徴的なのは棄権・保留が約4割もあったことだ。顔を合わせて議論していればこの保留票が反対に回った可能性もある。反対と棄権・保留の票は49%に達したというから、考え方によっては51対49の僅差だったともいえる。しかし、ともあれ賛成票が過半数に達したとして労連脱退は可決されてしまった。
かつて組合員が集まって顔を合わせて組合大会が開かれていた時期には、参加者に弁当が支給されるなど、人を集める努力もなされていたが、オンラインで大会が開かれるようになってそういう取り組みもなされなくなった。
決定に至る経緯に混乱も
今回の経緯について、ある組合員がこう語る。
「出版労連からの脱退が提案されるというのが伝わって、実は2度にわたって小学館労組の労連脱退に関する説明会が設けられました。社内の狭い会議室に労連の執行部や小学館労組の役員などが集まり、それはオンラインで全組合員が視聴できるようにしたのです。
ところが驚いたことに、その会議を視聴していた組合員が極端に少なかった。もともと今、出版社の社員はみんな忙しいし、顔を合わせて熱い議論を交わす機会自体が減ってしまったので、そういう機会を設けても参加者がわずかという状況になってしまったのです。出席者の中には、これでは民主主義的プロセスとして機能していないではないかと怒り出す人もいました」
今回の決定に至る経緯には混乱も見られたようで、何らかの「不正」が行われたのではないか、実際には51対49が覆る可能性もあったのではという指摘もなされている。脱退を提案した執行委員の一人は次期、小学館執行委員会には留まらず一般組合員に戻り、小学館執行委員会委員長もその座を退いた。何となく後味の悪い結末だけが残ったようだ。
昔は小学館労組といえば熱心な組合員がおり、それは学生運動を体験した団塊の世代が多かったためと言われるが、その世代もほとんど定年を迎えてリタイアしてしまった。昔の学生運動がそうだったように、組合活動においても各自がイデオロギーを闘わせるという光景も見られたのだが、今はそういう状況もほとんどなくなってしまった。
労働組合といっても政治的テーマに取り組むというよりも賃上げや福利厚生に活動の重点が置かれるようになっていたので、それにしては組合費やカンパばかりとられて…という不満が大きくなってしまったわけだ。
相賀昌弘会長は憂慮‥‥
小学館労組は出版労連最大の勢力だっただけに、毎年、出版労連委員長は同労組から選出されていた。また新聞労連、民放労連、出版労連、広告労協、さらに印刷、映画、音楽などマスコミ業界の横断組織としてマスコミ文化情報労組会議(MIC)という組織があるのだが、その議長は新聞労連委員長が務め、副議長は出版労連委員長である小学館の組合員が務めてきた。今回、小学館労組が出版労連を脱退することで、当然その副議長の座も明け渡すことになる。
今後、波紋は出版労連全体に大きく広がっていきそうだが、時代の変化によるものとはいえ、いろいろなことを考えさせられる事態といえる。
ある小学館社員がこう語っていた。
「相賀昌弘会長は、戦後の紙の調達が大変だった時代を知っており、従業員側の繋がりである労働組合の大切さを理解されている方です。今回の出版労連脱退の経緯については憂慮されていると聞きました」(Yahoo 2025/9/13付け)
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