FIJセミナーで話す横山記者
SNSで誤情報やデマがあふれて大荒れだった10月宮城県知事選において、地元紙の河北新報は、本腰入れたファクトチック記事を報じ注目された。発案者で自らも記事を手がけた一方でアンカー役も務めた政治班・横山勲記者(37)が12月14日ファクトチエック普及活動を進めるFIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)セミナーで自身の体験を話した。筆者はオンラインで視聴した。
兵庫知事選引き金
河北新報が「かほQcheck」と名付けたファクトチエック記事に取り組むきっかけは、2024年11月の兵庫県知事選。SNS上でデマが氾濫、知事選に出馬した「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首(名誉棄損容疑で逮捕、不起訴処分)が再選めざす斎藤元彦氏の応援に転じた「2馬力選挙」を展開するなど異様だった。
地元紙の神戸新聞はSNSで「偏向報道」と攻撃を受けた。横山氏は「神戸新聞の知事選担当記者から話を聞く機会がありました。新聞は信用されていない、(ユ―チューバ―を含む)聴衆が取材中の記者を取り囲む、居酒屋で記者が絡まれるといったことを聞き、25年は7月に参院選、10月に宮城県知事選があるので、何か対応が必要と思いました。編集幹部も同じ認識でした」と報告した。
読者に評価任せる
横山氏が思いついたのはファクトチエック記事の作成。福島総局のとき、役人が平気でウソをつくので、対抗手段としてファクトチエックを研究した経験がヒントになった。新聞の信頼回復が最終目標だ。神戸新聞へのヒアリングや専門家による社内勉強会を行ったうえで25年2月に作成したファクトチエック記事の主な基本方針は@虚偽または誤解を与えかねない情報が対象、A誤魔化す恐れがあるレーティングつまり「〇」「×」の評価はしない、B読者に判断をゆだねる、C取材の偏りを防ぐため2人1組で取材する――。
7月の参院選は、初のファクトチエック記事9本のうち7本を横山氏が書いた。「編集局全体の取り組みとして幹部が呼びかけたのですが、実際に動いたのはごくわずか。ただ、『不倫騒動ポスター』(立憲民主党の石垣のり子候補を誹謗中傷、現参院議員)問題を報じたことがN党立花党首の刑事告訴のきっかけになりました。一定の成果は得られました」(横山氏)
記者8人が専任で
10月宮城県知事選は、記者8人と担当デスク1人の本格態勢で臨む。知事6選をめざした村井嘉浩県政下で問題になった水道事業「一部民営化」、イスラム教徒の外国人受け入れのため検討した「土葬墓地整備」、「メガソーラー建設計画」は、争点になると予測されたので選挙前に材料を仕込んだ。
河北新報のファクトチエック記事「かほQcheck」
選挙期間中の10月18日から25日(投開票日前日)の間に▼「水道みやぎ」導入の経緯って?▼「土葬墓地」検討撤回の経緯って?▼「メガソーラー大歓迎」は事実誤認 これまでの経緯と対策は?▼「次、落とすのはこのドクソ野郎」一部県議がSNSで誹謗中傷被害―など計9本のファクトチエック記事を報じた。
読者の反響について横山氏は「『村井寄り』という声もあったが、おおむね好評。『河北新報は本気出している』と感じ取ってくれたのでは」と語った。
デマに関し「事実の意味を書き換え、被害者意識を植え付けて受益をささやく手法、これが大衆の心をつかむ」(横山氏)と分析。
「書き手の確保」「臨機応変に対応するための密なコミュニケーション」が日常の備えとして重要と横山氏は述べた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年1月25日号
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