2026年03月10日

【月刊マスコミ評・出版】日本列島は、強く豊かになるのか=荒屋敷 宏

 あっという間の総選挙だった。解散から投票まで戦後最短の16日間。『文芸春秋』3月号の赤坂太郎氏「最強の参与・今井尚哉の解散戦略」によると、昨年の臨時国会の後、内閣官房参与の今井尚哉氏ら側近が通常国会の冒頭解散戦略を高市早苗首相に進言したという。 
1月20日公示・2月1日投開票のシナリオが1週間ずれたのは、高市首相の心の揺れで解散を一度封印したからだという。しかし、結果は見ての通りだ。

 高市政権は「日本列島を、強く豊かに。」を大量宣伝しながら、国論を二分するはずの東京電力柏崎・刈羽原発6号機の再稼働を15年ぶりに容認した。公示前の1月21日に再稼働を開始したが、制御棒のトラブルのため、たった一日で運転停止。総選挙で自民党が大勝したのを見届けるかのように投開票の翌2月9日に再稼働した。

2011年3月11日の東日本大震災による福島第第一原発事故を引き起こした東京電力の驚くべき秘密を暴露したのはノンフィクション作家の森功氏「大成建設の天皇、大いに語るD」の「柏崎・刈羽原発『再稼働工作』の内幕」(『文芸春秋』同)だ。原発事故処理や原発再稼働を進めてきた元大成建設会長の山内隆司氏の話を紹介している。

 福島原発事故から3カ月経過した2011年6月、経済産業省資源エネルギー庁長官から九州電力川内原発を再稼働第一号にしたいと山内氏に電話が入る。すぐさま三菱重工と九州電力とチームを組んで対応し、2015年8月の川内原発再稼働となったという。原発事故から5カ月後には四国電力社長が再稼働の相談で山内氏を訪ねたという。

 2012年1月には東京電力から柏崎・刈羽原発もお願いできないかと大成建設に協力要請があったと証言している。元施工の鹿島から施工データをもらってくるからお願いしたいと頼まれたという。他社の企業秘密を渡すから教えてほしいという東京電力の執拗な再稼働工作が今回の柏崎・刈羽原発再稼働となった。民主党政権時代からエネ庁と電力会社は秘密裏に計画を進めていたのだ。

 『世界』3月号の池内了氏「原発再稼働と『新たな神話』」は原発の「相対的安全論」と「新たな神話」のねつ造と流布を解説し、「このまま無批判な原発待望論が強まると、再び大事故が起こるのではないか、私はそのことを一番畏れている」と警告している。こんなことで日本列島は強く豊かになるのだろうか。 
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号 


posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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