2026年03月13日

【焦点】ベネズエラ政情は安定 反米を維持し経済復興へ PSUV集団指導体制ゆるがず 中南米研究家の新藤通弘氏オンライン講演=橋詰雅博

 
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 「ロドリゲス大統領代行は、ボリバル革命(1999年、チャベス大統領が実行した反米・反新自由主義路線)維持を確保しながら米国など民間投資を促進し石油産業中心に経済発展を目指している」「軍、警察、市民が協力強化し政権を支えており、内紛やクーデターは起こり得ない」――ラテンアメリカ研究者の新藤通弘氏=写真=は、1月25日JCJオンライン講演で米軍が攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を米国に連れ去り体制を揺るがした南米ベネズエラの現状をこう見立てた。

独裁国家ではない

 トランプ米政権は、ベネズエラはマドゥロ大統領の独裁国家と決めつけるが、それは「当たらない」と新藤氏はいう。マドゥロ政権下では、@40近い政党が自由に政治活動している、A大統領選は6年ごと、国会議員選挙(一院制、277議席)は5年ごとに実施、犯罪歴のある者以外だれでも立候補できる、24年大統領選は10人出馬、B13局ある民間テレビ放送は政権批判が当たり前で、選挙では野党系候補者を支援、市民は自由に視聴、C紙の新聞は販売不振でなくなったが、新聞系ウエブサイトは反政府報道を発信、―など政治・選挙活動や報道・言論を統制していないそうで、ゆえに「独裁国家とは言い難い」というわけだ。

 ベネズエラ経済は、最大収入源の石油価格の下落、米国やEUの経済制裁強化、発行した仮想通貨「ペトロ」の失敗などで崩壊寸前に追い込まれ、18年には年率13万%と超ハイパーインフレが起きた。通貨ボリバルから米ドル政策に転換しインフレ抑制を進めたが23年190%、24年48%と下落したものの高水準。ただGDPは22年12%、23年5%、24年9%と回復基調で、石油、鉱業、建設、農業、貿易などが成長したのが要因だ。「食糧自給率は98%と驚異的なアップ」「また殺人率も92%減になった」という。
 生活苦などで7、800万人が国外に脱出と報じるメディアが多いが、「ざっと4人に1人が出国ということになり、これでは経済は立ち行かなくなる。私は昨年1月現地で『家族や友人、知人に出国した人がいますか』と10人ほどに尋ねましたが、出国者はゼロでした。ベネズエラ外務省の推計100万から150万人が脱出というのが妥当」と新藤氏は見る。

帝国の奴隷を拒む

 ベネズエラの反米意識は決して弱まることはないと断言した新藤氏は、大きな理由を2つ挙げた。
 一つ目は「社会を支える『コムーナ』つまり居住地共同体という組織がある。コムーナは都市、農村、漁村などの住民がつくったもので、雇用、教育、医療、福祉、道路、水などの問題を共同で解決に当たっている。国内約5000のコムーナをまとめるのがコムーナ評議会。この評議会はボリバル革命の強力な支持組織です」。

 二つ目は「政権を担う大祖国戦線(13政党で結成)の中心であるベネズエラ社会主義統一党(PSUV)の存在。マドゥロ、デルシー・ロドリゲス(大統領代行)、ホルヘ・ロドリゲス(デルシーの兄、国会議長)アダン・チャベス(チャベスの兄)など13人の政治局員は政府の要職についている。これら政治局員の集団指導体制のPSUVは『帝国(米国)の奴隷にはならない』で一致している」

国家主権尊重こそ

 こうした背景もあってか、トランプは石油利権獲得だけにとどまり、ベネズエラの体制転換に踏み込まないようだ。
 米国の「裏庭」とされる中南米はこれからどうなるかについて新藤は「トランプの裏庭への考えは『専一的に使用できる』すなわち自分の思い通りに使う。社会主義国のキューバや反米政権のニカラグアを親米政権に転換させるのが次の狙い」と述べた。
 トランプによるマドゥロ大統領夫妻の強制移送は国家主権の侵害だ。「日本は国家主権の尊重を強く訴えるべきだ」と新藤氏は語った。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号 
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