2026年03月18日

【月刊マスコミ評・新聞】新聞に大義なき選挙加担の自覚は=六光寺 弦

  実績がない高市早苗首相が仕掛けた「人気投票」の衆院選で、自民党が単独で3分の2超の議席を得た。露骨に「白紙委任」を求める手法は大義を欠いていたのに、選挙は強行され「サナエ推し」の情感の高まりに、問われるべきだった「高市政治の危険性」は見えにくくなっていった。この流れに自らの政治報道、選挙報道が加担したのではないか、との自覚は新聞にあるだろうか。

 始まりは1月9日夜。読売新聞がデジタル版で、高市首相が衆院解散を検討と報じた。10日付の朝刊紙面では、早版(12版)から1面トップで「首相、衆院解散検討」「2月上中旬投開票」の見出しが躍った。総合面にも「政権安定へ勝負」「高支持率 慎重論振り切る」の記事。批判も疑義もなく、むしろ決断への賞賛がにじんでいた。
 10日には他紙も追随。野党各党も選挙の準備に入ることを表明。選挙実務の面でも、都道府県の選挙管理委員会事務局に対し、総務省が準備を進めるよう事務連絡を出した。

 高市首相が沈黙したまま、衆院解散と選挙の実施は既成事実になった。首相が記者会見したのは19日。衆院解散のわずか4日前だ。
選挙戦に入ると新聞通信各社は情勢調査の結果を相次いで報道。「与党優勢」が伝えられる中で、朝日新聞は2月1日夜、デジタル版で「自維 300議席超うかがう 中道半減も」と報じた。

 投票日まで1週間。朝日の記事は、投票態度を明らかにしていない人が選挙区で4割、比例区で3割おり、情勢は動く可能性があるとしていた。結果的に、自民党の獲得議席はこの予測を軽々と超えた。
 NHKの報道によると、高市首相のXのフォロワーは2月1日以降急増した。「300超」の予測報道の始まりと時期が符合する。有権者の「勝ち馬に乗る」心理を誘発した可能性はないか、検証が必要ではないか。
 高市政治の危険性に焦点を当てた報道もあった。「白紙委任」に警鐘を鳴らす社説もあったが、「新聞離れ」が進む中で、どこまで社会に届いたか。そんな中で、大義のない選挙に道が開かれ、独裁と戦争国家への転換が危惧される結果になったことに加担したとすれば、それこそが本当の新聞の危機ではないか。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号 

posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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