ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆『石牟礼道子━水俣病公式確認70年のために』KAWADE夢ムック増補新版 4/6刊 1600円
2026年は、水俣病が公式に確認されてから70年の節目。作家の石牟礼道子(1927〜2018)は、患者たちの運動を支援し、また『苦海浄土』などの作品を通じて水俣病や現代文明の抱える諸問題を問い続けた。石牟礼さん逝去を受け、18年に刊行した文藝別冊「追悼 石牟礼道子 さよなら、不知火海の言霊」を、多数の増補を行い刊行。
石牟礼の没後70年、いま世界と日本を見れば、石牟礼が水俣にみた近代の終わりが、確実に現実化しようとしている。一方、石牟礼へのアプローチもこの間、深みと広がりを増している。石牟礼の仕事は、いまこそ読まれなければならない重みをもって輝く。
◆大石芳野『あすへの記憶』日経BP日本経済新聞出版 4/6刊 2000円
広島・長崎、東京大空襲、アウシュヴィッツ、沖縄、ベトナム、コソボ、ウクライナ…。災禍を生きた人たちに向き合い、話を聴き、カメラに収めて半世紀。日本を代表するドキュメンタリー写真家が、これからを生きる人たちと共有したい記憶とは。著者撮影の写真30余点を収録。その対象に向けるまなざしは、人には温かく、戦禍には厳しい問いを投げつつ 写しとる。そこに添える文章もまた、私たちの琴線に触れて重く響く。
著者は写真家。東京都出身。日大写真学科卒業。日本写真協会年度賞、芸術選奨文部大臣新人賞、土門拳賞、紫綬褒章など受賞・受章多数。
◆林望『書物を楽しむ━あえて今、紙の本を読む理由』朝日新書 4/13刊 840円
「やっぱ。本は紙だね ぬくぬく冬の床で読む。スマホでは目が痛くなるし、タブレットでは重くて嫌になってしまう」━紙ならではの利便性を説く林先生に、本との付き合い方・読書の醍醐味を、徹底的に語りつくす。70年に及ぶ読書遍歴についても言及。ここで取り上げる本、作家へのウンチクに、読んで堪能すること間違いなし。
著者は1949年東京生まれ。作家・書誌学者。慶應義塾大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『林望のイギリス観察辞典』で講談社エッセイ賞を受賞。
◆西村章『高額療養費制度━ひろがる日本の<健康格差>』集英社新書 4/17刊 1050円
医療費が高額になった場合、自己負担額を一定に抑える「高額療養費制度」。自己免疫疾患の治療で長年この制度を利用してきたジャーナリストは、2024年冬に政府が発表した「改悪」案に不安と憤りをおぼえ、取材を開始する。各分野からの証言が浮き彫りにしたのは、健康に「格差」がある日本社会の現状や、セーフティネットとして十分に機能しない医療保険制度の姿だった。複雑で入り組んだ高額療養費制度の問題を、平明に解明する。
著者は1964年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。自己免疫疾患の治療で09年から高額療養費制度を継続利用中。著書に『最後の王者MotoGPライダー・青山博一の軌跡』、『スポーツウォッシング なぜ〈勇気と感動〉は利用されるのか』など。
◆星野博美『野馬追で会いましょう━相馬の馬文化と震災後の日常』集英社新書 4/17刊 1100円
海外で土着の馬に乗り、「馬の地」が紡ぐ歴史と人々の営みをたどる旅をしてきた著者は、日本では馬との暮らしが失われる中、馬文化のいまを知りたい。そう願って2021年夏、福島県相馬地方で行われる祭事「相馬野馬追」を初めて訪れた。浪江町で出会った「平本家」のメンバーは、東日本大震災でほぼ全員が被災し、全国に散らばって生活していた。
かれらの語り、一人一人の選択から原発事故の影響がいまだ続く現実が見えてくる。日本の馬文化の現在地と震災後の日常を描くノンフィクション。
著者はノ1966年、東京生まれ。ンフィクション作家、写真家。著書に『転がる香港に苔は生えない』『コンニャク屋漂流記』『世界は五反田から始まった』『みんな彗星を見ていた』など。
◆米田一彦『家に帰ったらクマがいた』PHP新書 4/17刊 1200円
「駆除すべきか、人間が喰われるか」━オッと、その前にあなたはクマの真の姿を知っていますか。ある日家の玄関を開けると、黒くて大きな影が潜んでいた。「おいっ」と声をかけると、クマは私の脇腹をかすって逃げた。著者はこれまで3000回以上クマに遭遇し、9回襲われ、何とか生還してきた。人間とクマとの共生は可能なのか。研究を50年以上続ける日本一のクマ研究家が綴る、数奇な科学ノンフィクション。
著者は1948年、青森県生まれ。秋田大学教育学部卒業。秋田県庁自然保護課勤務。86年に同庁を退職、フリーのクマ研究家となる。環境省の委託でツキノワグマの調査を行なってきた。著書に『クマ追い犬 タロ』『山でクマに会う方法』『熊が人を襲うとき』など。
◆向井和美『ふたりの読書会━無期受刑者との本をめぐる往復書簡』岩波書店 4/28刊 2200円
始まったきっかけは、翻訳家である著者の元に、出版社を通じて届いた一通の手紙。知らない男性の名前があった。「突然申し訳ありません。私は刑務所で服役している者です」とはじまり、整った細かい字で書かれた文章。
強盗殺人罪で20年以上服役している無期懲役囚からだった。向井さんの『読書会という幸福』(岩波新書)を読んだ感想と共に、自らの生い立ちや贖罪の意識が、7枚の便箋(びんせん)にびっしり綴られていた。そして二人の '魂の交流'がスタートした。その貴重な記録。
著者は早稲田大学文学部卒。翻訳家。訳書に『100の思考実験』、『イエスの墓』など。
2026年04月17日
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