昨2025年はラジオ放送開始100年だった。
延江浩『反骨魂』(文藝春秋)は、戦後ラジオの再生のために奮闘した人たちの物語。本書の主人公・後藤亘氏は「FM東海」(後のFM東京、現・エフエム東京)や日本初のFMネットワーク「TOKYO FM」の立ち上げに尽力し、「ミスターFM」として知られる。
彼は少年航空兵に憧れ、お国のため、天皇陛下のために身を捧げることこそが、男子の本懐だと信じていた。その少年が、敗戦によってそれまでの価値観や倫理観を一変させられ、混乱や虚無感の中、「人はどう生きるか」を問いながら、ラジオを立て直そうと奔走する。
きっかけは先輩の口から出た、次のような言葉だった。
「ラジオは太平洋戦争中、国民を戦争に動員する役割を果たした。権力によって一度殺されたラジオを再生させて、教育に活用したい。学生たちのすさんだ心を癒やしてくれるのは勉学と教養である。そして友情。生きるための歓びの一環をラジオは担うことが出来る」
さらに「これからの日本が民主国家として歩んでいくためには、なによりも言論の自由と、その多様性が必要だ」との訴えだった。
それを踏まえて、後藤氏は「ラジオは人々の喜びのためにあるべきだ」との信念で、志を同じくする多くの仲間達とラジオに思いを託す。どんな時も希望だけは捨ててはいけないと、数々の困難も「トラブルはチャンス」「どんな逆境をも好機と捉える」と“反骨魂”で乗り切っていく。
著者の延江氏は〈あとがき〉で「海の向こうでまた戦争が始まったこの時期に、ラジオにできることが、なにかないだろうか」と書いている。
「戦争前夜」と言われる不安で危険な時流が増長する今だからこそ、「反骨魂」を持ち、「平和」と「民主主義」のために、メディアにできることがあるはずだ。
2026年04月21日
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