ご存じ長年TBS『報道特集』キャスターを務めたテレビ記者・金平さんが国内各地で行った講演の記録だ。
聴衆は、労働組合や市民団体、高校生などと幅広いが、問題意識は一貫している。本書のサブタイトルにある通り「SNS」をめぐる問題と「公共」とされるものが溶け出してしまっている問題だ。そして、それらに対峙すべきメディア自体が抱える問題も。
SNSが席巻する様は今まで私たちが社会の基盤を形成していると信じてきたものが、見る影もなく崩れ去ろうとするかのようだ。そこに金平さんが極めて危機感を覚えているのがよくわかる。
白眉だと思ったのは、2022年に札幌で開かれた「北の高校生会議10周年シンポジウム」のものようだ。金平さんを講師に招いたうえで、「北の高校生会議」に関わった若手のパネリストが、民主主義や政治参加などをテーマに真剣に討論したようすが、ビビッドに収録されている。
その中で金平さんが、出された質問に真摯に回答していた。他の会場での講演でもそうだが、聴衆から寄せられた多様な質問に対して、ていねいに答えている姿が目に浮かぶ。
金平さんは自身を「回遊魚」に例えているが、やはり根っからのジャーナリストなのだと思う。現場に自ら足を運んで取材し、人々の声にひたすら耳を傾け、そこから自分の言葉を紡ぎだす。
そういう意味で広範な地域や世代による議論も併せて収録した本書は、まさに「ジャーナリスト金平茂紀」の真骨頂と言えるのではないか。(かもがわ出版 2000円)
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