2026年04月28日

【出版トピック】柚木麻子さん、自著『BUTTER』の版権を新潮社から河出書房新社へ

◆契機は深沢潮さんへの対応
 柚木麻子さんは22日、自身のインスタグラムを更新し、「この度、拙著『BUTTER』の版権を、新潮社様から河出書房新社様へ移す決断をいたしました」と報告。その内容を紹介する。
 「ここに至るまで、双方の会社と協議を重ね、円満な合意の上での移動となっております。新潮社様には長年にわたりお世話になり、作家として育てていただいたことに感謝しております。これまで支えてくださった各部署の皆様にも、心より御礼申し上げます」と綴った。
 さらに「今回の判断の背景には、昨年、作家仲間である深沢潮さんに著しい苦痛を与える記事が、彼女のデビュー元である新潮社発行の雑誌に掲載されたことがあります」と説明。「その後の状況や、彼女にかかった負担、そして孤立について見聞きし、出版というシステムの在り方を深く考え直す契機の一つとなりました」と振り返った。

 そして「作家として、自分にできる具体的なアクションは何か。検討を重ねた結果、新潮社様における複数の版権のうち、一作を他社へ移動するという選択に至りました。これは現時点での、私なりの最大限の意思表示です」と伝えた。
 また、「『BUTTER』のオーサーズツアーで各国の出版関係者と対話するなかでも、差別や排除に対しどう立ち向かうべきか、自身の立場を厳しく問われる機会がありました。私はいつも迷い、間違えることが多い人間ですので、本件は、国内外の同業者や関係者に相談し、助言を受けながら決断したものです」と心境を表明。

◆多様な文化や価値観を大切に
 版権の移動は、「多大な調整が必要となり、関係者の皆様にご負担をおかけしたことをお詫び申し上げます。なお、同様の行動を他の書き手に強制する意図は一切なく、それぞれが置かれた状況下での判断が尊重されるべきだと考えております」と伝え、「同時に、本作を愛してくださっている読者の皆様には、今回の移動後も変わらず作品を楽しんでいただけるよう、環境を整えてまいりますので、ご安心いただければ幸いです」と呼びかけた。

 改めて「出版の世界が、読者や作り手が安心して表現に向き合い、多様な文化や価値観を受け止められる場所であることを切に願っております。なお、本件に関しては、この声明文に記したことが全てであり、長期間の検討を経て出した結論です。そのため、個別のご質問や取材等はお受けいたしかねます。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」と説明。「海外の版元の皆様、国内の書店員の皆様にもご負担をおかけすることをお詫び申し上げます。サイン等の対応が必要な際は、河出書房新社様を通じてご連絡いただけますと幸いです。なによりも、深沢潮さんの今後の執筆活動が、健やかで安定した環境のもとで続けられることを、一人の作家、そして一人の友人として強く願っております」と締めくくった。

◆今も新潮社への抗議は続く
 柚木さんらが決断の背景にあるとした問題のコラムは、昨年の「週刊新潮」7月31日号に掲載された。高山正之氏の連載「変見自在」で、1940年、日本が朝鮮人に日本式の姓名に改名するよう強いた政策を引いて「創氏改名2・0」と題し、深沢さんをはじめ俳優や大学教授らの実名を挙げて、「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と書いた。
 深沢さんは、コラムの掲載後、2度にわたり、新潮社にコラムが差別的で人権侵害にあたるかどうか文書で質問した。だが深沢さんの代理人によると、新潮社は回答でコラムの内容に対する認識には言及しなかった。そうした経緯から、深沢さんは、2012年のデビュー作を収めた「縁を結うひと」のほか、新潮社から出ていた計4作品の出版契約を解除する意向を示し、昨年9月に解除が決まった。
 同じ9月には、コラムの内容や同社の対応に抗議する人たちが、「新潮社は差別で稼ぐな」などのプラカードを手に、新潮社前に集合した。

 コラム掲載後の新潮社の対応への批判は収まらず、澤村伊智さんは今年2月に自身のXで、新潮社から出版した「怪談小説という名の小説怪談」の契約を終了したと発表。「週刊新潮」編集部が、「民族差別的な記事を掲載し、その事実を認めないこと」や、文芸編集部も不誠実な対応をし続けていることなどが理由だと記していた。
 また、問題をめぐっては、昨年10月、ワック発行の月刊誌「WiLL」が「女流作家に屈伏した週刊新潮」と題する高山氏のコラムを掲載。11月には「週刊新潮」に掲載したコラムを収録した高山氏の書籍『高市早苗が習近平と朝日を黙らせる』を刊行する。
 深沢さんは今年1月、これらの内容が事実に反し、名誉感情を侵害するなどとして、出版社ワックと筆者の高山氏を相手取り、慰謝料を求める訴えを東京地裁に起こしている。
 なお河出書房新社からは、文庫版が6月15日に発売される。
            
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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