2026年05月10日

【焦点】調査報道の軌跡と展望 潜入取材もっとやれる 学者・大手メディアとも連携 高田昌幸JCJ講演=橋詰雅博

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 『調査報道の戦後史 1945―2025』(昨年12月刊、旬報社)は「社会を変えた調査報道」という独自のモノサシでリストアップした150(巻末に掲載)のうち50の事例を詳述・検証した本だ。著者の専修大学文学部ジャーナリズム学科特任教授・高田昌幸氏=写真=は4月5日のJCJオンライン講演で調査報道の軌跡と成果、展望などを話した。
 高田目線≠ノよる調査報道とは@その時に報じなければ永遠に埋もれてしまうかもしれない事象を報道の責任において世に送り出す、A不条理やアンフェアな出来事を早期に見つけ、裏付けを取り、広く社会に伝える――。
その代表例として近年では読売新聞が報じた「女子受験者を一律減点 東京医大 恣意的操作」のスクープ記事(2018年8月2日付)を高田氏は挙げた。 
結婚や出産で女性は医師を辞めるケースが多いので11年から女子の合格者を3割前後に抑えるようにしたのがその理由。女性の社会進出を阻む新たな愚行が明るみに出た。高田氏は「この報道がきっかけでほかの大学でも同じようなことが行われていたことが発覚した。読売の調査報道がなければ、今も女子受験者の不当な減点は続いていただろう」と語った。文科省も「大学入学者選抜実施要項」を見直し差別禁止ルールを設定した。
まさに社会を変えた調査報道だった。

4タイプに分類

 高田氏は調査報道を@権力監視型、Aキャンペーン型、B深掘りルポ、Cその他に分けた。@の代表格は朝日新聞「リクルート事件」(1988年)と月刊文藝春秋『田中角栄研究 その金脈と人脈』(74年11月号)で、竹下登と田中の両首相を辞任に追い込んだ、Aは中国新聞「暴力追放キャンペーン」(63年から65年)で、広島の暴力団抗争と対峙したことにより市民が立ち上がった、Bは読売新聞「黄色い血の恐怖」(62年)、日雇い労働者に変装した社会部の本田靖春記者が東京・山谷ドヤ街に潜入し血液売買の実態を暴いたことで献血制度の設立につながった、ちなみに黄色い血は売血が多い人の症状で生命が危ぶまれる、Cは前述の大学における女子受験者の減点―。

欧米では常態化

 メディアの調査報道は後退しているとは思えないが、気がかりなのは、記者が権力の内側に入り込む「潜入取材」が消えたことだと指摘した高田氏はこう述べた。
 「欧米メディアでは潜入取材は普通にやっている。日本では参政党やユニクロなどに入り込んで取材したフリーランスの横田増生さんは今も続けている。コンプライアンス(法令遵守)に反する、裏を返せばそのやり方は卑怯だという漠とした感情がメディア側にある。しかし、潜入取材は本当に許されないのか。コンプライアンスという雑な言葉ではなく、法律家を交えて何の法律のどういうところが引っかかるのかを詰めればやれる余地はある」
 
波及効果ねらう

高田氏は調査報道を担う会社「フロントラインプレス」を19年に立ち上げ代表を務める。最近取り組んだのは国会議員の「選挙運動費用収支報告書」の全容だ。ネットメディアのスローニュースや政治学者と組んで報告書のデータベースを構築しスローニュースに掲載。この調査報道は昨年、ネットメディア部門でJCJ賞を受賞した。高田氏は「フロントラインプレスは、手掛けた調査報道をヤフーニュースのオリジナル特集やスローニュースで発表、あるいは毎日新聞と合同取材チームをつくり調査報道を行った。合同チームはニュースアプリの大手、グノシーの虚偽広告配信を取材。毎日新聞は20年3月18日に記事を掲載、グノシーは配信を認めた。影響力が大きいところと一緒にやっている。大手メディアのダメな部分はあるが、問題を追及するため連携する相手だと思っている」という。
 ネットメディアの調査報道は影響力がまだまだ小さい。ほかのメディアと手を組めば波及効果は大きくなる。ひいては社会を変えることに近づく。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年4月25日号 
 

posted by JCJ at 03:00 | TrackBack(0) | オンライン講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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