自衛隊募集の案内はがき
2019年1月、安倍晋三首相(当時)が衆議院本会議において自衛隊への名簿提供に応じるよう自治体にはっぱをかけるような答弁をしたこともきっかけに、2021年2月5日、防衛省と総務省の連名で、自衛隊法97条1項、同施行令120条を根拠に名簿提供をすることができ、住民基本台帳法上特段の問題を生じない旨の通知を全都道府県宛に発出した。
提訴の経緯は
これにより、名簿提供に応じる自治体が増加した。奈良市でも2023年1月30日に自衛隊奈良地本と覚書を締結し、翌2月上旬、翌年度18歳、22歳になる住民約6400人の個人4情報(氏名、生年月日、性別、住所)を提供した。それに基づいて発送された募集案内はがきを受け取った高校3年生(ニックネームRYU)が原告になることを決意し、2024年3月29日、国と奈良市を被告として奈良地裁に提訴した。弁護団は、近畿に事務所がある常任弁護団7名と北海道から福岡までの非常任弁護団6名の合計13名である。
最大の争点は、被告らが主張する自衛隊法97条1項や同施行令120条が名簿提供の法的根拠となるかどうかである。被告らは、施行令120条で防衛大臣が市町村長に提出を求めることができる「資料」に個人4情報が含まれると主張するが、プライバシー権(憲法13条)という基本的人権の制約が許されるかという視点が完全に欠落している。自衛隊法97条1項はプライバシー権について一切触れておらず、その委任命令で内閣の判断のみで制定される施行令によってプライバシー権を制約することが許されるはずがない。2006年の法改正で原則非公開となった住民基本台帳法の趣旨に反すると言わざるを得ない。そもそも、自衛隊法97条1項は、都道府県知事及び市町村長が行う募集事務の規定であり、国(自衛隊)が行う募集事務のために個人4情報を収集するなど対象の範囲外である。
問題点多すぎる
さらに、原告に届いた募集案内はがきには「防衛大学校生」や「防衛医科大学校生」の案内まで記載されているが、自衛官や自衛官候補生の募集事務を定めた上記法令の範囲外であるし、募集案内はがきの送付には不要な生年月日や性別まで提供したことは、覚書の利用目的にも反する。
その他、個人情報保護法違反や自衛官の本質、除外申請制度や職業紹介違反、利益相反の問題など多数の争点がある。是非、支援の会が作成したHP(https://jieitaimeibo-iken.net/)を参照していただきたい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年4月25日号
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