2026年05月19日
【ITC】人間性を阻害か 若者にみられる「病的使用」気に動く各国 さいたまで学習会=木下寿国(ライター)
インターネットに代表される情報通信技術(ICT)を誰もが使える現代社会で、便利さに潜む負の影響が世界的に深刻な問題となってきた。3月28日、さいたま市で催された「ホントはどうなの?『読み書き』能力の低下とICT利用」学習会では、デジタル社会問題を研究する吉田雅人さんが、未成年者のソーシャルメディア(SNS)利用について報告した=写真=。
今年2月、こども家庭庁が発表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、高校生のネット利用は毎日、平均で6時間44分。学校や睡眠時間を除けは、ほぼ1日中とも言えそうな長さだ。若者の間には「病的使用」が疑われる事態が生じているとの報道もある。
見直しも
海外に目を転じるとアメリカでは21年10月、写真投稿アプリ「インスタグラム」を運用するフェイスブック(現メタ)が「利益最大化のために憎悪をあおり、中毒性のあるアルゴリズムを用いて人権や民主主義を脅かしている」と、同社の元プロダクトマネジャーが連邦議会上院で証言。膨大な資料をもとに非人間的な設計システムと非難した。以降、SNSの設計上の欠陥を巡り数千件の訴訟が起きている。
タブレットやPCを導入した教育のデジタル化でICT先進国とうたわれたスウェーデンは、学力の低下で紙の教科書の重要性を再認識。23年12月、法を改正し、教育のアナログ回帰を決めた。
また、25年12月、オーストラリアは世界で初めて16歳未満のSNS利用を禁止した。きっかけは未成年者がネット利用から性被害をうけ、自殺に追い込まれた事件だった。
同国は、16歳未満の利用者がアカウントを作成しないための「合理的な措置」を取るようXやTikTokなどSNS運営会社10社に義務付け、違反に最大約51億円の罰金を科すとした。
その特徴は利用者でなく企業の責任を明確にしたこと。吉田さんは「これが国際的な常識になった」と語った。
諸刃の剣
吉田さんは塾を主宰する一方、専門家らと続けてきた研究の成果をもとに、「ICT利用で考慮すべきは幼児期から思春期にかけての脳の発達の特徴を踏まえること」だ。「10代は脳の発達がまだ脆弱な時期であり、中高生だけでなく大学生の大半も考慮すべき対象だ」と指摘。人が自分の視覚や触覚を使い、手でものを書いたりする行為が、児童から青年期の脳の神経作用にいかに重要な影響をもたらすかを強調した。
吉田さんは、AIを使って簡単に結論を引き出す行為は、粘り強く考える力や思考力を低下させる危険があると指摘し、「ICTは諸刃の剣だ。便利な半面、失うものもある。その両方を見なければいけない。トータルな研究はまだない。ぼくらが研究者の話を学んで自分の頭で考えないと」と話した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年4月25日号
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