どんな独裁国家でも「ファシズム国家だ」と言われるのは、断固として拒む。どんな人間(ことに政治家)でも「ファシスト」と呼ばれると激怒する。それほど「ファシズム」とは負のイメージの強い言葉だ。
だが、いつの時代でもファシストは存在し、民主主義に敵対してきた。ファシズムの歴史を踏まえ、危機にある現状への処方箋を記したのが本書だ。著者は現代政治学の第一人者。その研究成果が簡潔にまとめられ、まことに分かりやすい。
「民主主義の前提はいかにして崩れたか」を第2章~第5章で、経済・情報とコミュニケーション・民主主義などの分野別に分けて検討する。第3章ではメディアの問題を取り上げ、ポスト真実とフェイクの時代を検証し、SNSによる政治劣化への危惧を示す。
現代は民主主義の崩壊過程に入ってしまったのか。第5章で戦後日本政治を分析。安倍政治がもたらした停滞と閉塞の10年。右派ポピュリズムの台頭が現在の高市政権を生み出す。
第6章ではまさに現在の問題を取り上げる。今や世界はトランプ大統領のデタラメ政策によって大混乱に陥っている。トランプの手法は、21世紀型ファシズムなのか。トランプの思想や彼の支持層の分析を通して見えてくるものを、著者は「ポストファシズムの時代」と言い、経済学者の金子勝氏が名付けた「フェイクファシズム」を示唆的だとも記す。
終章では「自民党政治、そして日本の民主主義はどこへ行くのか」と高市政治の危険性と対処法を示す。
評者は、今を「ファシズム前夜」だと感じている。ファシズム当日を迎えさせぬための、これは貴重な提言書である。 (朝日新書900円)
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