2026年06月11日

【月刊マスコミ評・放送】民放ドキュメンタリーの力作が2本=諸川 麻衣

 大型連休の時期、民放でドキュメンタリーの力作が2本放送された。
 まず、4月26日放送の日本テレビ『NNNドキュメント’26 なぜ山本美香は銃撃されたのか〜伝え続けた戦場の声なき声〜』。
 ジャーナリストの山本美香は2012年、内戦下のシリアで取材中に銃撃され、亡くなったが、誰が何のために彼女を撃ったのかは不明のままだった。当時、一緒に取材していたジャーナリストで、山本の公私にわたるパートナーだった佐藤和孝は、シリアの独裁政権が崩壊し、再び取材できるようになったことを受けて13年ぶりに現地を訪れた。そして現地の人から、アサド政権を支持していた武装集団が、日本人ジャーナリストが取材に来たとの情報をつかんで攻撃に出たとの情報を得た。

 ジャーナリスト保護委員会によると、シリアでは内戦を通じてジャーナリスト145人が殺害されたという。弱い立場の人に寄り添い、その声を世界に発信し続けた山本の死から、ジャーナリズムの使命を問いかけた。
 次は5月3日の北海道テレビ(HBC)の『ドキュメンタリー「解放区」 差別に抗うのは誰か〜先住民族アイヌとマジョリティー〜』。
 アイヌは明治以降様々な差別を受けてきたが、近年、新しい差別が広がっている。「アイヌは先住民族ではない」「誰でもアイヌになれる」「アイヌは優遇されてきた」などの事実に反する言説だ。それらは、札幌市の公共施設で、パネル展や講演会という形で流布されている。
 ヘイトに反対する市民団体やアイヌは、差別的な催しに使わせないよう市に求めてきたが、市は、「アイヌ差別の定義がなく、地方自治法の規定により公共施設の利用を拒むことはできない」としてきた。
 
 番組は、反ヘイト行動に立ち上がる市民、学術研究への曲解に抗議する研究者、バッシングを受けながらも差別問題を歌うアーティストなどを通して、マジョリティーの側がマジョリティーによる差別に反対して立ち上がるという新しい構図、そして市の対応の変化を伝えた。
 10年前から取材を続けてきた担当の山ア裕侍氏は、2019年以降ヘイト勢力による現場での妨害やHBCへのデモなどにさらされてきたという。「デマや差別によって社会が壊れるのを防ぐのが地域メディアの役割であり、ジャーナリズムの使命だ」との氏の言葉は、今や全国に通じる。 
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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