軍事優先国家への転換を進める高市早苗政権。殺傷能力がある武器の輸出を解禁した後は、国家情報会議の設置に続き、安保3文書改定、スパイ防止法の制定を見据える。その先は憲法の自衛隊明記、さらには軍への“昇格”だろう。その自衛隊はと言えば、規律はガタガタ。文民統制は危機的な状況だ。
4月の自民党大会で、陸自の歌姫と呼ばれる3等陸曹が制服姿で君が代斉唱をリードした。露骨な自衛隊の政治利用なのに、その場にいた高市首相は違法と認めない。小泉進次郎防衛相は3曹と撮った写真を一時、SNSに投稿した。罷免ないしは辞職が相当だ。
3月には、東京の中国大使館に刃物を持って侵入した3等陸尉が逮捕された。日本政府は小泉防衛相や木原稔官房長官が「遺憾」を口にしただけだ。高市首相自身の台湾有事発言のために、日中関係は悪化したまま。メンツにかけて、中国に頭は下げないのか。
こうした高市政権の姿勢を巡って危惧するのは、現場の自衛官らに、政治的中立を逸脱する行為でも、首相や政権の意向に沿うことなら許される、と受け取られかねないことだ。例えば自衛官の制服姿での集団参拝も、高市首相の靖国への姿勢を見れば「何も問題ない」となりかねない。軍国主義と旧軍への思慕が広がる恐れがある。
規律の緩みに加え、緩みが放置された軍事組織の肥大は極めて危険だが、新聞はその視点が弱いのではないか。
自民党大会の3曹の登壇に対し、朝日新聞は4月16日付の社説で「自民党と自衛隊双方に、民主主義の原則と法令順守への意識が欠如していては、幅広い国民の信頼は得られない」と説いた。毎日新聞も4月21日付社説で、中立を損ねる政治利用だと批判した。
自衛隊に政治的中立を求めるのは、軍が政治に介入し戦争に進んだ戦前の歴史の反省からだ。自衛隊の規律や統制に責任を持つのは政治だが、朝日も毎日も批判はしながら、高市首相や小泉防衛相の責任を問う姿勢に厳しさを欠いている。
読売新聞も4月27日付で「自民も自衛隊も緊張感足りぬ」との社説を掲載したが、軍拡支持の社論に則して、大事な時期だから国民の目を意識して緊張感を持てとの内容。本末転倒だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年6月25日号
2026年06月12日
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