2026年06月13日

 【おすすめ本】江原由美子『フェミニズム』━歴史をたどり平等への理論化、多様な人々との「連帯」へ=三成美保(追手門学院大学教授)

 フェミニズム研究の第一人者が、最新成果をふまえて初学者向けに書き下ろした新書である。おもしろくないはずがない。やはり、論旨は整然、筆致は明快でわかりやすい。フェミニズム本はあまたあれど、本書はそれらの筆頭に躍り出たと言って良い。

 本書は、序章と本章全9章からなる。フェミニズムを「わかりにくい」と思っている人は、序章と最終9章だけでも目を通してほしい。本書が決して女性向けの本ではないことに気づくだろう。
 人口の半分を占める、「女性」の日常は、ごく「普通」だ。しかし「女性」に注がれる世間のまなざしや社会での生き辛さは、時代や文化によって異なる。「男性」との関係も変化している。
 本書は「普通の状態」での問いとしてフェミニズムを捉えようと呼びかけ、広く長期的な視点から近代社会を問い直そうとする。
 このことは本論全9章の章立てからも明らかである。1〜5章は西洋、6章は日本のフェミニズム史、7章は「ジェンダー平等」の理論化にとって画期的意味をもつ「第二波フェミニズム」、8〜9章は現代的問題に焦点をあてる。

 「これからのフェミニズム」は、女性・男性・子どもなど、多様な属性をもつ人々との「連帯」をはかること―本書は、未来をそう展望する。近代以降、わたしたちの意識には、「らしさ」の規範(性別特性や性別役割など)が刷り込まれてきた。今日、社会は複雑になり、分断も強まっている。
 だからこそ、「フェミニズムが投げかけた問い」を問い続けていかねばならないと本書は語る。フェミニズムの歴史は終わらない。(岩波新書1060円)
    
fe.jpg
        
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック