2026年06月17日
【焦点】核のごみ処分地候補 南鳥島に「6つの難題」 安全な処分法 未来世代に 原子力資料情報室研究員の高野聡氏に聞く=橋詰雅博
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の地層処分地として東京都小笠原村の南鳥島が新たに選定され、第一段階の文献調査が始まった。2020年に文献調査を受け入れた北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村、24年の佐賀県玄海町はいずれも自治体が手を挙げたが、南鳥島は国が自治体に調査を申し入れ渋谷正昭村長が容認した国主導による初のケース。火山や地震がない太平洋プレート上にのるこの島は、地層処分の最も有力候補地と複数の地質学専門家が挙げていた。南鳥島の課題は何か。北海道と佐賀県の3候補地を調査し核のごみ問題に詳しい原子力資料情報室研究員の高野聡氏=写真=に話を聞いた。
国有地で住民がいない南鳥島(気象庁提供)
国が南鳥島を地層処分地に選定したことに関し高野氏は@原発の再稼働・新設を推進するには、増える核のごみ処分の見通しを示さないと原発立地自治体の反発が強まる、A電力の一大消費地、東京都にも負担、B島は国有地、C住民がいない―などの背景から白羽の矢が立ったと推測する。
日本のどこが地層処分に向いているか否かを調べた経済産業省が17年に作成した「科学的特性マップ」でも「好ましい特性がある」と推定される南鳥島には「6つ課題がある」と高野氏は指摘した。
地質は安定?
【火山活動の影響】地質的に安定しているというのが南鳥島の最大の特徴だが、その前提が崩れるかも。近海では海洋プレートの屈曲による「プチスポット火山活動」が発生している。その領域が同島から最短で46`bまで近づいたことが最新の研究で判明。「今後、より近距離での活動の可能性は否定できない」と高野氏は警鐘を鳴らす。
スペース不足
【地上作業は困難】島は面積が約1・5平方`b。地上施設は1〜2平方`bの規模でつくられ、掘削土を保管できる十分なスペースがない。海抜が低く高潮がきたら工事は難航し浸水リスクもある。台風の被害も想定される。地上施設や専用港湾の建設は困難が待ち受ける。
地下水の流入
【石灰岩がネック】サンゴ礁の島のため地下浅部の岩盤は、多孔性で遮水性が低い石灰岩。300b以深につくられる核のごみのガラス固化体を置く地下施設(6〜10平方`b)の建設では、海水を含む地下水が石灰岩から大量に流入も。掘削工事や坑道の安全性は担保できない。
青森から運ぶ
【長距離輸送危険】島と保管されるガラス固化体を搬出する青森県六ケ所村の再処理工場との距離は約2200`b。ガラス固化体を積んだ専用船は、長距離輸送を強いられる。事故や台風・津波のリスクが高まる。テロもあり得る。
続く温暖化
【海面上昇リスク】地球温暖化によってこの先、海面水位は確実に上昇する。195カ国・地域が参加する「気候変動政府間パネル」(IPCC)によれば、21世紀末(2081年から2100年平均)の日本近海の海面は2℃上昇なら0.4b上昇、4℃なら0.68bと予測。最高標高9bの平坦な小さい南鳥島は、水没はなくても、高潮で浸水の可能性は高い。
4兆円超え
【コスト予測不能】事業者の原子力発電環境整備機構(NUMO)は、処分費用を約4兆円と見込んでいる。難工事の地上・地下施設建設、高潮対策、六ケ所村と島との長距離輸送などで南鳥島における処分コストは膨れ上がる。「4兆円では済まない。いくらかかるか予測できない」と高野氏はいう。
核のごみという廃棄物を発生させた現世代で解決が国の基本方針だ。しかし、核のごみ処分地は「日本に適地はない」と地質学者300人が23年に声明を発表した。どうすればいいのか。放射能廃棄物をこれ以上増やさないため脱原発を決めることが先決としたうえで高野氏は「核のごみを安全に処分する方法は、今はありません。ですから地上で数百年暫定保管する。放射能のレベルはダウンする。安全性が確保される処分法について未来世代に託すという発想をしてもいいのではないか」と提言する。
核のごみ地層処分計画の概要
2000年に法律ができた核のごみ地層処分計画を振り返る。原発の使用済み核燃料を化学処理して回収したウランとプルトニウムからMOX(モックス)核燃料をつくり、改めて原発で使う核燃料サイクルが国の原発政策の方針だ。化学処理の過程で出る放射能レベルが高い廃液が核のごみ。これを溶かしたガラスと混ぜて冷やし固めてガラス固化体として処理・保管する。ところが青森県六ケ所村の再処理工場もMOX燃料工場も未完成。核燃サイクルが機能していないので使用済み核燃料は、専用船で輸送し、英仏で再処理。六ケ所村や茨城県東海村の施設で保管される計2530本のガラス固化体のほとんどは、英仏から返還されたものだ。
ガラス固化体4万本埋める
また原発にたまり続ける使用済み核燃料をガラス固化体に当てはめると推計約2万7000本。
最終的にガラス固化体は4万本とされる。4万本を1カ所の地層処分場に埋める。保管期間は数万年以上だ。放射能レベルは大幅に低下する。
事業完遂までに100年
処分候補地として国は10カ所程度を考えている。国から交付金最大20億円支給される文献調査(2年程度)、70億の第二段階の概要調査(4年程度)、交付金未定の第三段階の精密調査(14年程度)を経て最終処分地が決まる。事業完遂まで100年かかる。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年5月25日号
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