アメリカのベトナム帰還兵の子どもらに先天障害が現れている。枯葉剤を浴びて帰還したからである。障害児たちは2012年、NPO/COVVHA(帰還兵の子どもの健康医療連盟)を結成した。私はそれを取材した。NPOは直ちに米政府に対し補償を要求した。しかし拒絶されている。米政府はそれまで癌になった帰還兵への補償は行なってきた。一方でベトナム人の枯葉剤被害についてはいっさい補償しないできた。米帰還兵の子どもらの求めに応じなかったのは全く違う理由、つまり「子どもらは軍務についていない≠フで補償対象ではない」というのである。兵は優遇するが一般市民は対象外なのだ。
この仕組みは日本でも強固に構築されている。太平洋戦争の傷病兵または戦死者には今も続く恩給か遺族年金がたっぷりと与えられてきた。かたや犠牲となった国民に対してはどうか。東京大空襲をはじめ各地の空襲犠牲者あるいは引き揚げ者、総数200万とも300万ともされる被災民への補償は全くない。
権力の側がこうした構造を必要とした理由は何か。それは「お国のために兵として命をかければ報奨金を出すぞ」という兵員徴募のための必要条件だったのだ。出征兵士は地域を挙げて「万歳」「万歳」で送り出される。特攻隊さえ次々と志願者が出てくる。これに抗う者は非国民・スパイとされ弾圧対象となる。
最近の諸有事立法、スパイ防止法や国家情報会議創設などの動きを見ると、戦前の流れの再現が読み取れる。既に多くの自治体が自衛官募集に協力すべく18歳の住民の個人情報を自衛隊に提供している。
有事となれば多くの自衛隊員が戦死する。バラバラになった遺体の修復や埋葬までの手順、遺族への補償、追悼式典などが葬祭業者と自衛隊との間で詰められている(6月1日赤旗)。日本は既に臨戦態勢なのだ。
敵基地先制攻撃能力を備えたミサイルの南西諸島への配備も進んだ。それを発射したらどうなるか。必ず凄まじい反撃が来る。それに対して自衛隊基地に頑丈な壕を築き、兵隊だけは即刻避難できるようにした。自衛隊病院の増設や輸血血液の確保も計画された。では住民はどうなるか。
一般市民は通常、田畑や会社で働いているか漁に出ているか寝ているかである。住民用のシェルターも作るとされているが、分秒を争う事態の中でどこかにある防空壕に辿り着くのは不可能だ。おびただしい犠牲者は軍人ではなくまたもや民衆の側となる。相手の反撃目標はミサイル発
射基地に限定されるわけではない。戦端が開かれた限りは日本全土がターゲットとなる。
配置されている54基の原発はミサイルやドローンの格好の目標となる。破壊されて水が抜ければ核分裂が起き原爆同様の大爆発を起こす。
有事軍拡は日本壊滅への道なのである。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年6月25日号
2026年07月06日
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