2026年05月14日

【おすすめ本】森永 卓郎 (著) 古賀 茂明 (解説) マガジン9編集部 (編集)『森永卓郎の戦争と平和講座』―退路を断ってズバリ直言の生涯=芳地 隆之(ノンフィクション作家) 

 本書はウェブマガジン「マガジン9」に連載された、同名コラムから厳選した38遍からなっている。前半は旧民主党政権時代に書かれたものだが、同党の平等化促進の色合いの強いマニフェストを、党内の弱肉強食社会を望む勢力が叩き潰したあげくが、現在の日本の状況だとの指摘はアクチュアルだ。
 続く第二次安倍政権に対しては、安倍首相のかつての日本によるアジア侵略を否定する姿勢を批判し、連立パートナーである公明党の閣僚に反対するよう呼びかける。現在の政治状況を予見するような提言である。

 経済面では、日本の財政は年間60兆円の財政出動をする余力があることを指摘。国民一人当たり月額4万円程度のベーシカムが支給されれば、私たちは自分が食べるものは基本的に自分で作り、それで足りないものは近隣の人たちが提供する製品やサービスで補っていけるという。
 生活エリアで経済活動を完結させることができれば、グローバル資本主義に取り込まれることなく生きていけるだろう。
 AIに代替されない創造的な仕事をするために、国民全員がアーティストになろうという呼びかけも、その一環だ。

 周囲から一笑に付されるのは、たぶん織り込み済み。生前の森永さんは「発言するときはバットを振り抜く」と語っていた。「○○ではないだろうか」の物言いは皆無。逃げ道を作るような留保はしない。「○○なのだ」で締めくくられる。退路を断って、批判を恐れず。ご自身の生き方と合致する文章なのだ。(集英社新書960円)  
森永 (1).png

          


posted by JCJ at 03:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年05月03日

【おすすめ本】町山智浩『裸の王様トランプのアメリカ破壊日記』━トランプ政権の奇天烈な実態 痛烈な皮肉を交えて撃つ=矢部 武(国際ジャーナリスト)

 戦後の自由民主主義体制を主導してきたアメリカは、独裁者をめざすトランプ大統領により、自由、人権、司法、国際関 係など、徹底的に破壊された。その1年間をリアルタイムで報告した連載をまとめたのが本書だ。
 映画評論家として数十年米国に居住している著者は、日本から見えにくい第2次トランプ政権の実態を痛烈な皮肉を交えユーモラスに描く。
 トランプ大統領は復権すると、まず過去に自身を捜査した司法省・FBI関係者を解雇し、米国が長年重視してきたDEI(多様性、公平性、包 括性)施策を撤廃した。
 さらに批判的なメディアを訴訟するなどの圧力や電波法を用いた脅迫、議会未承認のベネズエラ攻撃、これら違法性が疑われる行為を繰り返している。

 「私はやりたいことを何でもできる」と豪語し王冠をかぶった姿をSNSに揚げたトランプ大統領の自己承認欲求は、10歳の子供レベルだというが、さらに問題は閣僚人事が不適格者ばかりで構成されていることだ。
 例えば、ヘグセス国防長官は国軍を指揮した経歴のない元テレビタレントで、しかもアルコール依存症で数々の問題を起こし、レイプで警察に通報されて和解金を支払っている。また史上最年少27歳の報道官として失言やウソの数で歴代最多を更新中のカロライン・レヴィット氏は、大統領と同様に支離滅裂なため、「エアーヘッド・バービー(アタマ空っぽの人形)」の異名を持つ。
 
 最後に著者は「この破壊はいつまで続くのか? アメリカはこの破壊から立ち直れるのか?」と問いかけているが、50年以上米国と関わってきた評者も、全く同じ懸念を抱いている。(文藝春秋1700円)
               
toran.jpg
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年04月30日

【おすすめ本】金平茂紀『流れにさからう SNS社会と公共≠フ融合』―現場で取材し人々の声を聴く「回遊魚」の真骨頂=岩崎 貞明(メディア総合研究所事務局長)

  ご存じ長年TBS『報道特集』キャスターを務めたテレビ記者・金平さんが国内各地で行った講演の記録だ。
 聴衆は、労働組合や市民団体、高校生などと幅広いが、問題意識は一貫している。本書のサブタイトルにある通り「SNS」をめぐる問題と「公共」とされるものが溶け出してしまっている問題だ。そして、それらに対峙すべきメディア自体が抱える問題も。
 SNSが席巻する様は今まで私たちが社会の基盤を形成していると信じてきたものが、見る影もなく崩れ去ろうとするかのようだ。そこに金平さんが極めて危機感を覚えているのがよくわかる。

 白眉だと思ったのは、2022年に札幌で開かれた「北の高校生会議10周年シンポジウム」のものようだ。金平さんを講師に招いたうえで、「北の高校生会議」に関わった若手のパネリストが、民主主義や政治参加などをテーマに真剣に討論したようすが、ビビッドに収録されている。
 その中で金平さんが、出された質問に真摯に回答していた。他の会場での講演でもそうだが、聴衆から寄せられた多様な質問に対して、ていねいに答えている姿が目に浮かぶ。

 金平さんは自身を「回遊魚」に例えているが、やはり根っからのジャーナリストなのだと思う。現場に自ら足を運んで取材し、人々の声にひたすら耳を傾け、そこから自分の言葉を紡ぎだす。
 そういう意味で広範な地域や世代による議論も併せて収録した本書は、まさに「ジャーナリスト金平茂紀」の真骨頂と言えるのではないか。(かもがわ出版 2000円) 
1408.gif
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年04月27日

【好書耕読】消えゆく村と農民に迫る=大野 和興(農業ジャーナリスト) 

 コロナ下、山形県の最上川沿いにある白鷹町に通い、ドキュメンタリー映画を製作した。その映画タイトルおよび書名が『出稼ぎの時代から』(社会評論社)である。国の戦後農村の変貌の一時期を表す出来事を頭に、その後の村の有様を追った。

 映画には主に農村の人たちから、様々な反響が寄せられた。村の男たちが冬から春先まで約半年、出稼ぎで都会に出かけ、村から姿を消した1960年代から70年代にかけての10年余は、深い影響を人々の心に残したことが、今さらのように分かった。映画で描ききれなかった反響を記録に残そうと思い立ち、出来上がったのが本書である。
 村から男たちの姿が消える半年の長い冬を、女性や子どもたちはどう過ごしたか、出稼ぎせずに済むにはどうしたらよいのか、出稼ぎ者を迎えた都市では、様々な人たちに登場願い、証言していただいた。本書は戦後農村を生きてきた人々自身が編む民衆史の様相を帯びる内容となった。
 同時に、ここでも映画づくりでぶつかったと同じ課題に突き当たった。村はこの先どうなるのか、人々はどうしようとしているのか、という問題である。

 出稼ぎの時代、村の男たちは半年姿を消したが、春には帰ってきて農作業に精を出した。だがいま村にはその姿はなく、土地は放棄され、朽ちかけた空き家が目立つ。出稼ぎ世代は次第にいなくなり、若い世代は戻ってこない。まさに村が消えかけている。
 その一方で為政者は、AIとロボットとハイテクと植物工場を振興させ、農業を輸出産業へと叫んでいる。村も人もいらないというのだ。 映画と本を作ってきた私たちは、その現実をそのまま描けばいいのだろうか。とはいえ、村と同化している私たちは、村の現実をどうにかしたいと、自分事でしか考えられない。そんな思いを抱えつつ自分たちなりの視点でこの先を描きたいと模索している。
                
81FhKYLVuvL._SY425_.jpg
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年04月25日

【おすすめ本】小松 由佳『シリアの家族』―過酷な日常を生きる一家 自らの苦闘と共に描く=高世 仁(ジャーナリスト)

 開高健ノンフィクション賞を受賞した本書は、一家の運命を通じて、シリア内戦を生きた人々の声を掬い取った、スケールの大きな傑作だ。
 写真家の著者が、初めてシリアを訪れたのは2008年。ラクダの放牧で生きる四代70人の大家族の伝統的な暮らしと文化に魅せられ、彼女は繰り返し現地へ通った。

 だが2011年、民主化運動とアサド政権による弾圧が、一家の運命を一変させる。政府軍に徴兵された十二男ラドワンは、民衆弾圧を拒んで脱走。民主化運動に加わった兄は、秘密警察に逮捕された。
 故郷パルミラも戦場となり、家族はトルコや欧州へと離散する。著者は国外に逃れたラドワンと結婚し、日本で二児を育てながら一家とシリアの激動を記録し続けた。

 物語は著者自身の家族にも及ぶ。男性優位の文化で育った夫は家事や育児を担わず、さらにはシリアから若い第二夫人を迎えたいと言い出す。
 著者は一人の女性として傷つきながらも、これを「第二夫人騒動」と名づけ、「貴重な異文化体験」として記録した。著者の記録者としての執念に感銘を受けると共に、固有の文化の内在的理解と近代的人権を、どう両立させるのかは、我々が異文化に向き合う際の根本的な課題であることにも気づかされる。

 アサド政権崩壊の報を受け、著者は「大手メディアの報道とは異なる切り口」で伝えようと考える。そこで夫を現場に立たせ「当事者」の目から激動の歴史的瞬間を描くことで「差別化」を図った。本書からはフリーランスとして生き抜く知恵をも学ぶことができる。(集英社 2200円)
         
シリア.jpg
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年04月21日

【好書耕読】ラジオの再生に挑んだ執念=丹原 美穂(JCJ東海支部代表)

  昨2025年はラジオ放送開始100年だった。
 延江浩『反骨魂』(文藝春秋)は、戦後ラジオの再生のために奮闘した人たちの物語。本書の主人公・後藤亘氏は「FM東海」(後のFM東京、現・エフエム東京)や日本初のFMネットワーク「TOKYO FM」の立ち上げに尽力し、「ミスターFM」として知られる。

 彼は少年航空兵に憧れ、お国のため、天皇陛下のために身を捧げることこそが、男子の本懐だと信じていた。その少年が、敗戦によってそれまでの価値観や倫理観を一変させられ、混乱や虚無感の中、「人はどう生きるか」を問いながら、ラジオを立て直そうと奔走する。
 きっかけは先輩の口から出た、次のような言葉だった。
 「ラジオは太平洋戦争中、国民を戦争に動員する役割を果たした。権力によって一度殺されたラジオを再生させて、教育に活用したい。学生たちのすさんだ心を癒やしてくれるのは勉学と教養である。そして友情。生きるための歓びの一環をラジオは担うことが出来る」
 さらに「これからの日本が民主国家として歩んでいくためには、なによりも言論の自由と、その多様性が必要だ」との訴えだった。
 それを踏まえて、後藤氏は「ラジオは人々の喜びのためにあるべきだ」との信念で、志を同じくする多くの仲間達とラジオに思いを託す。どんな時も希望だけは捨ててはいけないと、数々の困難も「トラブルはチャンス」「どんな逆境をも好機と捉える」と“反骨魂”で乗り切っていく。
 著者の延江氏は〈あとがき〉で「海の向こうでまた戦争が始まったこの時期に、ラジオにできることが、なにかないだろうか」と書いている。
 
 「戦争前夜」と言われる不安で危険な時流が増長する今だからこそ、「反骨魂」を持ち、「平和」と「民主主義」のために、メディアにできることがあるはずだ。 
             
叛骨魂.jpg
 
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年04月13日

【おすすめ本】小松 由佳=『シリアの家族』―過酷な日常を生きる一家 自らの苦闘を共に描く高世 仁(ジャーナリスト)

  開高健ノンフィクション賞を受賞した本書は、一家の運命を通じて、シリア内戦を生きた人々の声を掬い取った、スケールの大きな傑作だ。
 写真家の著者が、初めてシリアを訪れたのは2008年。ラクダの放牧で生きる四代70人の大家族の伝統的な暮らしと文化に魅せられ、彼女は繰り返し現地へ通った。

 だが2011年、民主化運動とアサド政権による弾圧が、一家の運命を一変させる。政府軍に徴兵された十二男ラドワンは、民衆弾圧を拒んで脱走。民主化運動に加わった兄は、秘密警察に逮捕された。
 故郷パルミラも戦場となり、家族はトルコや欧州へと離散する。著者は国外に逃れたラドワンと結婚し、日本で二児を育てながら一家とシリアの激動を記録し続けた。

 物語は著者自身の家族にも及ぶ。男性優位の文化で育った夫は家事や育児を担わず、さらにはシリアから若い第二夫人を迎えたいと言い出す。
 著者は一人の女性として傷つきながらも、これを「第二夫人騒動」と名づけ、「貴重な異文化体験」として記録した。著者の記録者としての執念に感銘を受けると共に、固有の文化の内在的理解と近代的人権を、どう両立させるのかは、我々が異文化に向き合う際の根本的な課題であることにも気づかされる。

 アサド政権崩壊の報を受け、著者は「大手メディアの報道とは異なる切り口」で伝えようと考える。そこで夫を現場に立たせ「当事者」の目から激動の歴史的瞬間を描くことで「差別化」を図った。本書からはフリーランスとして生き抜く知恵をも学ぶことができる。(集英社 2200円)
      
シリア.jpg
               
posted by JCJ at 10:12 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年04月07日

【おすすめ本】七沢 潔 『原発をとめた人びと──奥能登・珠洲 震源地からの伝言』―立地計画ストップの歩みを追う=鈴木 耕(編集者)

 2024年元日、能登半島を激震が襲った。傷跡は2年後の現在も消えていない。日本政府の災害対応は酷いものだが、その陰で珠洲市の人々の闘いに、感謝しなければならない事実がある。

 この地の「原発計画」を撤回させた住民運動がなければ、今回の地震で、あの福島原発と同等の、いや、もしかしたらそれ以上の災禍が日本を覆っていたに違いない。
 かつて著者は、NHKディレクターとして住民運動に密着した作品〈ドキュメンタリー’90 原発立地はこうして進む―奥能登土地攻防戦〉で、過疎地の原発計画が、いかに地域住民を苦しめ分断していくかを克明に描いた。その狭間で揺れる人々の心情を表す短歌を本書で引用する。
 〈原発ができれば珠洲を捨てますと少女は訴う涙ながらに〉

 原発を巡る幾度もの選挙や攻防を経て、中部電力は結局、計画を断念する。それを「民主主義の学校であった」と著者は記す。住民運動の輝かしい勝利ではあったけれど深い傷跡が地域には残った。それを払拭するための人々の動きまで、丁寧に拾い上げていく。
 誠実な著者のインタビューは、反対運動に携わった僧侶の塚本真如さんや落合督子さんや北野進さんたちだけではなく、原発の強力な誘致派として敵対した上田幸雄さん(元県議)にまで及ぶ。

 上田さんが原発を過疎地域の振興のために必要だとして苦闘する様を、著者は優しく解きほぐしていく。人間ドラマが読む者の胸を打つ。本書は著者の祈りをも込めた奥能登からの伝言である。(地平社1800円)
                     
gennpatu.jpg

                      
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年03月31日

【おすすめ本】書評清原悠 (編著), 模索舎アーカイブズ委員会 (監修)『自由への終わりなき模索──新宿、ミニコミ・自主出版物取扱書店「模索舎」の半世紀』―不思議な書店の歴史をひも解く=鈴木 耕(編集者)

 本書は900頁、厚さは4センチを超える。一晩で読もうなんて不可能だが、少しずつ読んでいくとあの時代≠知る者なら確実に胸が熱くなる。動乱の1970年に産声を上げ、今も東京新宿にある「模索舎」という不思議な書店の歴史の完全版だ。

 そこには他の本屋ではまったくお目にかからなミニコミや小冊子、新左翼と呼ばれた各党派の機関紙、ホッチキスで綴じた雑本までが並んでいた。つまり不穏な気配漂う社会運動のゴッタ煮とでもいうべき書店だったのだ。
 私が本書を取り上げるのには理由がある。模索舎創設の主役は五味正彦だったが、五味と親交の深かった川口秀彦が私の親友だった繋がりで、私も五味とは大学時代からの知り合いだった。

 川口が本書に寄稿した一文「模索舎外伝・五味正彦の思い出」には、私もほんの少しだけ関わった、大学時代の全共闘運年月を経て紆余曲折、私は五味とそれなりのつながりを持ち続けた。新宿の「かくれが」という当時を彷彿させる地下のバーで、五味や戸井十月らと酒を酌み交わしたこともあった。五味も戸井も早逝した。

 個人的な話は措くとして、本書の凄まじさは模索舎に関係した人々へのインタビュー、五味が所蔵のコレクションを読み解き、さらには現在に至る流れを克明に追い、模索舎の全体像を立体的に構成している点だ。70年代からの社会の激流を、これほどまでに眼前とさせる本は空前絶後である。(河出新書 7000円)
              
owari.jpg
      
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年03月29日

【おすすめ本】豊田 直巳 『消える風景 明日へのねがい──原発災害は今もそれでも「ふるさと」』―福島ー放射性物質は消えない 250年以上も残る現実=酒井 憲太郎(フォトジャーナリスト)

 本書は、著者の写真絵本シリーズ〈それでも「ふるさと」〉全10巻の10作目。最初の全3巻は2019年に産経児童出版文化賞(大賞)を受賞。カバー写真は「笑」の文字を花で表した木村紀夫さんの庭。彼は父、妻、娘を震災で失い、3人の名前の慰霊碑を建てた。

 3月11日、まどか保育園では子供たちを保育の先生らが急ぎ避難させ、カバンも靴もそのまま残っていた。まるで神隠しにあったようだ。その風景は2021年10月に写されて今も残っている。
 津波の被害とは違う恐ろしさを感じさせる。除染と家屋の解体が進み、残されていたものが全て消え、その場所は更地になった。その先は「復興シンボル軸」と呼ばれる道路が建設中だ。

 双葉町の「原子力正しい理解で豊かなくらし」の看板は、2019年には残っていたが今は撤去されている。壊れた柱や壁は「特定廃棄物」、敷地の庭や土地は「除去土壌等」と呼ばれる。
 黒い大きなフレコンバッグに詰められ、仮置場に運ばれる。さらに大熊町と双葉町にまたがるエリア「中間貯蔵施設」へ集められる。中間貯蔵施設に田畑と家の土地を提供して、30年中間貯蔵施設地権者会を立ち上げた門馬幸治さん。中間貯蔵施設エリア内で土地を提供しなかった木村紀夫さんは「大熊未来塾」を立ち上げ、「未来を考える」ための伝承活動を続けている。津波で亡くなった小学1年生の娘、夕凪が眠っている土地でだ。
 
 「複興でふるさとの風景は消えてしまったが、放射性物質は消えない。あと250年以上残る」と著者はあとがきに記す。(農山漁村文化協会2500円 )
toyoda.jpg
posted by JCJ at 03:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年03月26日

【おすすめ本】鶴見太郎『シオニズム イスラエルと現代世界』━ナショナリズムと植民地主義が複雑に絡み合った動きを辿る=大治朋子(毎日新聞専門編集委員)

 イスラエル・パレスチナ紛争の発端であり、その主因のひとつともいわれるシオニズムを、「等身大で精緻に」描写したという本書は、国際社会が直面する課題を浮かび上がらせる一冊だ。
 ちまたにはびこる「粗雑な」歴史認識を排し、 語られるべき問題や責任を次々と照らし出す。
 13万部の大ベストセラーとなった『ユダヤ人の歴史』(中公新書)の著者である、東京大学大学院准教授・鶴見太郎氏による最新刊である。

 著者によると、シオニズムは19世紀終盤のロシア帝国領で生まれた「ユダヤ人の民族的拠点をパレスチナに築くことを目指す思想・運動」。その起源はロシア帝国下のポグロム(ユダヤ人襲撃・迫害)に遡る。「ナショナリズムと植民地主義が複雑に絡み合った動き」だという。
 本書はキリスト教シオニズムの実像にも迫る。それは米国の4人に1人ともいわれる福音派プロテスタントが共有する宗教的世界観であり、米国とイスラエルを結ぶ太い絆となってきた。
 その存在は米中間選挙やイスラエル総選挙が予定される今年、改めて注目を集めそうだ。

 鶴見氏によれば、福音派にとってイスラエルは聖地を守ってくれる「用心棒」だ。だからこそ彼らは、「イスラエル応援 団」の最前線に立つ。だが「パレスチナ人のことはほとんど視野に入っていない」。
 その偏狭な世界観が、ガザ地区やヨルダン川西岸での悲劇をより深化させてきたという。
 本書はシオニズムの軌跡を振り返るとともに、イスラエルの「いま」を読み解く必携の書でもある。(岩波新書1120円)
              
sio.jpg
   
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年03月23日

【おすすめ本】〈漁業危機〉の深窓に切り込み 支援強化へ具体的提言=栩木 誠(元日経新聞編集委員)

 「水産王国日本」と評されたのは、はるか昔のこと。世界的に魚人気が高まり、漁獲量が過去最高を記録する中で、全く取り残されているのが現状だ。「このままでは、30年後には漁業者がいなくなり、日本の食卓から国産魚が消える」との声も聞かれるほどである。
 コメなど農業と共に、「日本人の食」を支えてきた、日本漁業がどうしてここまで衰退の道を強いられてきたのか。こうした〈漁業危機〉の深層に、鋭く切り込んだのが本書である。

 危機招来の要因について、メディアなどでは、とかく乱獲や資源減少、海流変化などを挙げがちだった。しかし事はそう単純ではない。地球温暖化の影響に加えて、担い手不足、操業コストの上昇、周辺国・地域との競合激化、海洋環境の悪化などの諸要因が、複合的に絡んでいるのである。だが同様の危機に瀕する農業と同様、政府は全くの「無為無策」、むしろ状況の悪化を促しているのが現状だ。

 農業とあわせ日本の食料安全保障を大きく揺るがす漁業危機に対応するために、いま何をなすべきか。著者は、経済学者の宇沢弘文氏が唱えた、「社会的共通資本」の理論に準拠し、「(漁村、漁業の)保護を社会的費用と捉え、人間社会の豊かさを保ったまま未来の子供たちに遺さなければならない」と強調。

 欧州などの先例に学び漁業者への直接支払い、国の水産物価格の保証など、具体的支援強化の重要性を指摘する。
 加えて、目先だけで安い輸入食品に走るのではなく「長い目で見た未来のために、進んで国産食品そして国産水産物を選んで消費する、そういう倫理的で賢明な消費者が増える」ことに強い期待をかける。(新潮新書 900円)
                
4106111098.jpg

              
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年03月14日

【Bookガイド】3月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)

 ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆高橋和夫『イランとアメリカ、そしてイスラエル━「ガザ以後」の中東』朝日新書 3/13刊 1400円
イランとの間で核開発について討議中に、トランプ大統領は再びイランを奇襲攻撃した。これに参加のイスラエルは、ガザとの停戦合意後もガザ空爆を続けている。ハマスと戦うイスラエル、その後ろ盾となるアメリカ、ハマスを支援するイラン。イランとアメリカの複雑な関係にイスラエルが加わり、ますます混迷を深めている。いくつかの流れが合流して中東を激動させる。国際政治の構造変化を軸に歴史、宗教、民族から最新動向まで中東研究の第一人者が解説。
 著者は1974年に大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒。放送大学名誉教授、国際政治学者。中東問題に関する著書は数多い。
1.jpg

◆沢野ひとし『ジジイ、ふたたび山へ 』 山と渓谷社 3/18刊 1700円
ワニ目画伯こと沢野ひとしが登ってきた山々の思い出を、美しい水彩イラストと軽妙なエッセイで描く。高校生の頃に山に目覚め、近所の低山から丹沢、八ヶ岳、北アルプス、ヒマラヤ、中国の山など、世界の山々を股にかけた壮大な山行記。ここ数年は「ジジイにふさわしい」静かな低山登山に目を向けている。登頂したという証拠写真と、ともに登った仲間たちとの面白エピソードが満載。
 著者は1944年、愛知県生まれ。「本の雑誌」創刊号より表紙絵・本文イラストを担当。近著『ジジイの片づけ』『ジジイの台所』『ジジイの文房具』(集英社クリエイティブ)の「ジジイ三部作」が評判を呼ぶ。

◆村木厚子『おどろきの刑事司法━“犯罪者”の作り方』講談社現代新書 3/19刊 1200円
約1分の勾留質問で164日間勾留、検事の作文で作られる供述調書、証拠改竄や捏造……。冤罪に巻き込まれた著者がみた驚愕の刑事司法の実態とは何か。法制審に参加した市民委員5人が戦慄した、抜け穴だらけの刑事司法改革。誰もが信頼できる刑事裁判のために、私たちにはなすべき事がある。取り調べの可視化、人質司法の解消、証拠開示制度・再審制度の見直しで、刑事司法は必ず変わる、必ず良くなると説く。
 著者は1955年高知県生まれ。元厚生労働事務次官。現在は全国社会福祉協議会会長。2009年「郵便不正事件」で逮捕・起訴されるも、2010年9月の裁判で無罪確定、1年3カ月ぶりに職場復帰。13年、厚生労働事務次官に就任。15年退職。
3.jpg

◆藤井克郎『百年映画館』 草思社3/24刊 2200円
「百年映画館」.jpg 日本には100年続く「奇跡の映画館」があった。世代を超えて愛される昭和のシネマパラダイスを大公開! かつて映画館は街の至る所にあり、地域文化の心臓部だった。シネコンや配信サービスが主流となった今も、ひっそりと、しかし力強く生き続ける「百年映画館」を探して日本各地を訪れ、大正・昭和の面影を残す建物や、劇場の空気を守る支配人、そして映画館へ集う人々を丹念に取材の成果を盛り込む。
 著者は1960年、福井県生まれ。東京外国語大学卒業後、フジ新聞社入社。夕刊フジ報道部、産経新聞社会部を経て、同文化部で映画を担当。退職してリーランスの映画記者として活動。共著に『戦後史開封』など。
4.jpg

◆伊原勇一『弱虫逃げ腰山東京伝』郁朋社 3/24刊 1200円
上田秋成に“吾妻に京伝あり”と言わせたマルチ文化人、山東京伝! 希代の戯作者の波瀾万丈の半生を四季折々の江戸風物の中に描く。二度の吉原遊女との結婚、筆禍による手鎖五十日の処罰……蔦重、馬琴、歌麿、写楽、南畝、一九、鈴木牧之らとの交流を通じて厳しい時代を生き抜いた人気戯作者の本当の姿を活写する。
 著者は1953年、東京生まれ。早稲田大学卒。江戸の文芸・絵画についての研究を続け、第21回歴史浪漫文学賞・創作部門優秀賞を受賞。著書に『反骨の江戸っ子絵師 小説・歌川国芳』『喜多川歌麿青春画譜』『明治画鬼草紙』など。
5.jpg

◆青島 顕『未還の名簿━シベリア最下層捕虜・村山常雄の祈り』集英社 3/26刊 2000円
 シベリア抑留死亡者46,300人の名簿を、たった一人で作った老帰還兵・村山常雄。彼を追って綴る執念と鎮魂の衝撃ノンフィクション。シベリア抑留死亡者の詳細は、長い間、人数も個人名も正確な事実が伝えられてこなかった。1990年代、ソ連などから日本へ死亡者名簿が届いた。だが記された名前は意味不明、ここから、正確な死亡者名簿作りが始まった。
先の見えない作業。孤独な日々。だが、無念を抱えて凍土に眠る無名の仲間を弔うために、そして生きて還ってきてしまった自分を癒すために、折れそうになる気持ちを奮い立たせた。その情熱は周囲の人々や日本政府関係者を動かし、ついに奇跡を起こした……!
 著者は1966年静岡市生まれ。早稲田大学法学部を卒業、毎日新聞社に入社。多摩総局長などを経て、現在は新聞研究本部に勤務。『MOCT━ 「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』で第21回開高健ノンフィクション賞を受賞。
6.jpg
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年03月11日

【おすすめ本】木瀬貴吉『本づくりで世の中を転がす 反ヘイト出版社の闘い方 』━惰性に流れずヘイトに抗い 出版の途を開拓した冒険譚=加藤直樹(ノンフィクション作家)

 副題に「反ヘイト出版社の闘い方」とある。そこから差別に反対する気骨ある出版社の生真面目な物語を想像すると間違う。これは出版を巡るワクワクするような冒険譚である。主人公の木瀬貴吉が、2人の仲間とともに、著者や書店に個性的な同志たちを見つけながら旅を続ける物語だ。
 リンゴが樹から落ちるように、世の中には「いい本を数百部だけ刷る良心的な出版社」と「悪い本(例えばヘイト本)を売りまくる出版社」という構図が確かにある。

 だが「『ころ』から車輪へ」という「パラダイムシフト」を掲げる「ころから」は、この構図を飛び越えて進んできた。惰性に流れず、それまでの慣習も段取りも疑って途を切り開いてきたのである。「ころから」がヘイトに「抗える」のは、まずはその出版過程そのものが抗いであり、冒険だからなのだ。
 例えば他社が出せなかった日本軍「慰安婦」を描いた絵本『花ばぁば』を、なぜ「ころから」は出せて、しかも三刷までできたのか。それは単に「良心的」だったからではなく、出版の過程で創意を大いに発揮しているからだ。

 この本は、だから出版の大変さとワクワクを伝える本である。いや、出版だけでなく、いろんな分野に「ころから」がいれば、世の中はもっと面白い方向に「転がって」いくだろう。
 実は、私もこの本の登場人物の一人だ。互いに全く無名だった時代に、「ころから」からの出版のオファーを受け入れたのは、サイトを見てピンと来たからだ。「この人たちとなら、冒険ができそうだ」と思った。そこから、私も「ころから」物語の登場人物の一人となり、冒険が始まったのである。(集英社新書1000円)
           
ho.jpg
       
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年03月01日

【おすすめ本】国武 貞克・佐藤 宏之『南回り、北回りの遭遇、列島のホモ・サピエンス──新・日本旧石器文化の成立』―日本列島に到来した 人類・旧石器文化の経路=やまなか けんじ(JCJ運営委員)

 本書は、アフリカに起源を持つホモ・サピエンス(現生人類)が日本列島へ到来した足取りをユラシア東方への拡散という壮大な時間軸に位置付け直す試みである。長野・香坂山遺跡と広島・冠遺跡の発見を軸に、北回りと南回り、二つの経路から列島に進出し、交錯していった可能性を指摘する。
 列島への現生人類の到来をめぐる議論は、長ら<3万8千年前以降に限定されてきた。しかし、近年の発掘成果はその枠組みを揺さぶりつつある。かつての捏造事件で学界の基盤が深く傷ついたなか、3万8千年前を語ることはタブー視されてきたが著者の国武貞克氏と佐藤宏之氏は、再びこの領域に光を当てる。
 香坂山遺跡の大型石刃はアルタイ〜中央アジアの初期上部旧石器時代と響き合い、近年検出された冠遺跡の4万2300年前の石器群は東アジア型中期旧石器の姿を留める。それは、現生人類が従来説より5千年も早く列島に現れていたことを示唆する。その論証の慎重さで倫理的緊張感は全編にみなぎっている。私自身、旧石器から中世に至るまで、人の痕跡が重層的に残る栃木・寺野東遺跡の近くで子ども時代を過ごし、日常の地続きに古代史が広がる幻視を抱いてきた。
 本書が提示する北方の原野を縦横に駆け列島に大型獣を追った人々と南方の豊かな植物相に依拠してきた人々の異なる生存戦略が列島で出会い、重層した場としての列島観は単線的な「日本人の起源」論を解体させる。日本列島が単なる移動の終着点ではなく、ルートを異にした人々が再収束を果たした特異地であったことはその後、いくつもの日本を起ち上げたのだ。(朝日選書 1550円)
             
asahi.jpg
      
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年02月23日

【おすすめ本】 青木 理 『闇の奥──頽廃する権力とメディア、そして仄かな光をめぐるルポ・時評集』―〈鹿児島県警の闇〉事件 垣間見えるメディア不信=河野 慎二(ジャーナリスト)

 長年にわたり権力とメディアの「闇」を 追及してきた著者が、鹿児島県警察本部を舞台に展開された「闇の奥」の 腐蝕に光を照射した。
 発端となったのはネットメディア「ハンター」 が2023年1月、「鹿 児島県警は性被害の捜査を求める女性の訴えを門前払いした」とスクープした記事だ。

 県民の訴えに耳を貸さない県警本部の対応に、藤井光樹巡査長が「ハンター」に内部告発した。
 鹿児島県警は24年4月8日、藤井巡査長を逮捕。同時に「ハンター」 を家宅捜索した。
 「ハンター」を主宰す る中願寺純則は、札幌のジャーナリスト小笠原淳との連携を密にしながら仕事を進めている。
 24年4月、小笠原のもとに10枚の文書が届いた。「闇を暴いてくださ い」と印字され「鹿児島 県警の闇」と題し4件の事案が列挙されている。
 鹿児島県警は5月31日に本田尚志前生活安全部長を、職務上知りえた情報を小笠原に漏らした国家公務員法違反容疑で逮捕した。

 本田前部長は逮捕後の勾留理由開示請求手続きの場で「野川明輝県警本部長が職員の犯罪行為を隠ぺいしようとしたことが許せなかった」と陳述した。「闇の奥」に迫る言に衝撃が広がった。
 本田前部長らはなぜ、地元に多数いる大手メディア記者ではなく、ネットメディアの記者を情報提供先に選んだのか。

 著者は「大手メディアは貴重な内部告発者からの信頼を失いつつあるという事実が垣間見える」と指摘する。
 そして「このままやり過ごせば、この国の主要メディアとジャーナリズムは、二重の敗北を喫することになる」と警告する。(河出書房新社 2,000円)
yami.jpg
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年02月18日

【おすすめ本】鈴木 宣弘 『もうコメは食えなくなるのか──国難を乗り切るのにほんとうに大切なものとは』―農と食、暮らしを強化 地域の自給圏づくりを提唱 =栩木 誠(元日経新聞編集委員)

 日本の農業と生産者に‟塗炭の苦しみ“を味合 せてきた、安倍農政の継承を標榜する市政権の登場で、「日本のコメ作 り」は今や、その生命線 すら絶たれようとしている。歴代自民党政権が進めてきた「米国への胃袋の従属化」の動きに、警 鐘を鳴らし続けてきた著者の危機感が、本書のタイトルに見事に凝縮されている。

 国連機関が「飢餓国の仲間国入りした」とする日本で、いま深刻化する「令和のコメ問題」。生 産コストなどへの所得補償、供給先の出口調整など、生産者が希望を見い出せる農業政策の再構築がない限り、コメの作り手の退場は続く。だが農業軽視の政府の無策は続く。本書は「2030年 までの5年間が正念場」と、指摘する。

 こうした日本農業の絶対危機のなかでも、「一 条の曙光」となるのが、「半農半X」など担い手の多様化、全国各地で進む生産者と消費者の連携による取り組みだ。世田谷区などの有機米給食や「14戸の作り手を900人の食べ手が支える」宮城県・鳴子温泉鬼首地区の試み、生協の供給圏づくりなど、創意工夫を凝らした「未来への希望の灯」が、燎原の火のように拡がりつつある。
 
 「胃袋からの独立」を 実現するために、著者はこう呼びかける。
 「自分たちが自分たちの地域から自分たちの力で地域の農と食と暮らしを強化して、『みんなで 作ってみんなで食べる』自給圏づくりを進めることが大切だ」と。
 「コメが食えなくなる」社会の到来を防ぎ、日本農業を再興していくために何より重要なのは、私たち自身の自覚と具体的行動なのだ。(講談社+α書新書 950円)
         
588.jpg

                  
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年02月14日

【Bookガイド】2月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)

ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)

◆武井彩佳『ホロコースト後の機能不全━ドイツ、イスラエル、犠牲と加害の関係』角川新書 2/10刊 980円
なぜドイツはイスラエルを批判できないのか? イスラエルのガザ攻撃はホロコーストの記憶とも結びつけられる。ドイツによるイスラエル支援は、補償にとどまらず武器供与まで及んだ。イスラエルへの安全保障は「国是」となっていた。ナチズムの克服は、より良い世界をつくるためではなかったのか。ドイツとイスラエルの特殊な関係を明確に分析し、ガザ紛争を防げなかった世界構造のねじれを解く。
 著者は1971年、愛知県生まれ。早稲田大学比較法研究所助手などを経て学習院女子大学教授。専攻はドイツ現代史、ホロコースト研究。著書に『歴史修正主義』(中公新書)など。
           
1.jpg


◆高橋信雄『裁かれた<偽りの科学>━原爆訴訟判決文から見えた真実』 花伝社 2/10刊–2700円
この国は、被爆者たちとどのように向き合ってきたのか。国の被爆者対策として成立した被爆者援護法。しかし援護申請は一方的に却下されるようになり、また残留放射線による被爆も認められず、被爆者たちは不合理に沈黙を強いられることになる。司法に正義を求め、国との裁判に挑んだ被爆者たち。〈科学〉の名の下に被爆者の訴えを退けようとした国は、いかにして裁かれたのか。救済を求めて闘った、被爆者たちを追うドキュメンタリー。
 著者は1950年生まれ。九州大学経済学部卒。元長崎新聞論説委員長。現在はノンフィクション作家。著書に『鈴木天眼 反戦反骨の大アジア主義』など。
2.jpg

◆松谷満『「右派市民」と日本政治━愛国・排外・反リベラルの論理』朝日新書2/13刊 870円
突然の<自己チュウ解散>そして総選挙の顛末に現れているように、異形の右派勢力が日本を動かす!? 安倍政権を熱狂的に支持した「岩盤保守層」。安倍氏の死後、かれらがよりどころにしたのは高市氏やトランプ氏。さらには参政党、日本保守党といった新たな右派アイコンの台頭だった――。いま日本政治を左右する、新しい「右派」の実像に迫る。
 著者は1974年、福島県生まれ。名古屋大学文学部を卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科で博士課程修了。中京大学教授。共編著に『外国人へのまなざしと政治意識』など。
4.jpg

◆平田オリザ『寂しさへの処方箋━芸術は社会的孤立を救うか』集英社新書 2/16刊 960円
いま日本は他国とは違う独特の「寂しさ」「いらつき」「不安」に覆われている。終わりの見えない不況、アジア唯一の先進国からの転落と国力の衰退などが、その背景にある。いかにして克服できるか、「日本再生のカギは芸術文化立国をめざすところにある!」と提案し、その試みを現代に合わせてさらに進化させ、モノが飽和しコトの消費が求められる時代に芸術と観光が果たせる役割、社会的孤立を救うための文化による社会包摂の動き、教育や地方が実現可能な少子化対策など、新しい処方箋を再提案する。
 著者は1962年、東京都生まれ。劇作家・演出家。芸術文化観光専門職大学学長、青森県立美術館館長。著書に『新しい広場をつくる 市民芸術概論綱要』など。
5.jpg

◆上月豊久『プーチンの歴史認識━隠された意図を読み解く』 新潮選書 2/18刊 1650円
権力者にとって歴史は「政治の道具」そのもの! 決して頭の中を覗かせない男の本音は、彼が発表してきた論文やスピーチの中にある。ロシアの成り立ち、正教の役割、統治の基本概念――難解とされる彼の論文の数々に、何が省かれ、歪曲されているのか。プーチンの「洗礼の十字架」とは何か。なぜ「大動乱の時代」を嫌悪するのか。前ロシア大使が独裁者の「内なる思考」を浮き彫りにする。
 著者は1956年、東京都生まれ。外務省欧州局長などを経てロシア連邦駐箚特命全権大使を務める。現在、東海大学平和戦略国際研究所所長・国際学部教授。
6.jpg

◆大塚真祐子ほか『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』knott books 2/20刊 1900円
出版不況といわれて久しい。売り上げがピークの半分になっても、いまだ改善する兆しは見えない。書店員のやる気を削ぐような無駄や理不尽がまかり通っている。いまどれほど書店の現場が疲弊しているか、書店員が何を考えて仕事をしているのか、何に怒っていて、何に不満があるのか、知られざる実態を明かす。さまざまな立場の書店員による、書店の苦境や書店員であることへの思い、出版業界の不満や出版社への不信感、本や読者への思いを一人称で綴った怒りと悲しみと愛の記録である。
 著者・大塚真祐子のほかに、水越麻由子/篠田宏昭/前田隆紀/笈入建志/モーグ女史/小国貴司/嶋田詔太の7人による現場からレポート。
7.jpg

◆江原由美子『フェミニズム』岩波新書 2/25刊 1060円
いったい「フェミニズム」とは何なのか。どのように生まれ、何を主張してきたのか。「女性である」という「普通」のことに差別や抑圧を見出すという「常識外れ」な主張は、どのように生まれ、いかなる変革を成し遂げてきたのか。共感と反感の嵐にさらされながら、多様な展開を生んでいる思想・運動。そのあゆみを長期的な視点から振り返り、フェミニズムとはいったい何なのか、わかりやすく語りかける。
 著者は1952年、神奈川県生まれ。東京都立大学名誉教授。神奈川人権センター理事長。日本のフェミニズム理論に大きな功績をあげる。著書に『持続するフェミニズムのために』など。
8.jpg
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年02月11日

【おすすめ本】雨宮処凛 『25年、フリーランスで食べてます──隙間産業で生きていく』―仕事をこなす秘策・鉄則を大公開!=鈴木 耕(編集者)

 めっちゃ(ちょっと若者風に)面白い「労働問題解説書」である。どう すれば25年間もフリーランスで食べてこられたのか、その仔細な道筋。 その解説が見事に腑に落ちる。
 でもこれは著者の華麗なトリック。第1章「フ リーランスのノウハウ、すべて晒します」。小見 出しを追っていくだけで読者をその気にさせる。

 でもよく読むと、かなりヘヴィな内容だ。確かにこれを実践できれば、あなたもフリーランスとして、1本立ちできるかもしれない。その気にさせる筆力は、さすがに25年の蓄積が生きている。 文章中のゴシック活字を拾い読みしていくだけで、内容がきちんと理解できる仕組み。
 フリーランスの鉄則の数々、そんじょそこらの人間にできる技じゃないよな、秘策の公開だ。
 隙間を狙え、締め切りに遅れるな、好きなことは無償でもやれ、いつでも辞められる態勢を作っておけ、自分しかできないことをしろ、岐路に立ったら危ない方へ、SNSから身を守る方法、絶対にドタキャンしないなどなど。

 これは仕事上のアドバイスだが、極めて真っ当な生き抜く術でもある。つまらぬ「自己啓発本」 など足元にも及ばぬ具体的な道筋が懇切丁寧に示されている。
 働くことの意味、つまり労働問題解説書としても超一流なのだ。そんな生き方をしている人たちへのインタビューや、弁護士に訊くフリーランスの自衛法も。そして圧巻は雨宮処凛の半生を綴った第4章だ。疾風怒濤の25年がまるで映画のよう…。めっちゃ面白かったよ! (河出新書 1,100円)
         
furi-.jpg
       
posted by JCJ at 03:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年02月07日

【おすすめ本】荻野 富士夫『治安維持法と「国体」』―いま日本で急速に進む 「新しい戦中」前夜の危機=藤田 廣登(治安 維持法犠牲者国家賠償要求同盟顧問)

 昨年は治安維持法成立100年を迎え、治安維持法暴圧を告発する人々の運動が盛り上がりをみせた。同時に同法の研究も顕著な進展があった。
 その一つが、荻野氏の『検証・治安維持法―なぜ「法の暴力」が蔓延し たのか』(平凡社)であ り、さらに本書である。
 前著の末尾で、荻野氏は「戦前を席巻した『国 体』はまだ出現していないが国際緊張の暴発、排外主義の沸騰は『新しい戦中・新しい国体』を発 現」すると警告していた。
 治安維持法は第一条で「国体を変革するために結社を組織・加入」を犯 罪とした。その「国体」 とは「大日本帝国憲法」 に規定される天皇絶対の専制支配権力である。
 本書の第一部は、どのようにして「国体」が治 安維持法の根幹に据えられ、拡張されて行ったのかを、三つの論考で解明し、社会変革を進める運動を抑え込むだけではなく、思想・学問を統制し 戦争遂行体制構築に結びついた、と結論する。
 第二部では、日本共産党が「君主制」・「天皇 制」をどう捉え、闘かっ たか、に焦点を当てる。
 荻野氏は、「新しい戦 前」という表現を、タモ リ氏発言(2022年) より4年も早く使って,わが国の軍事大国化とそれに並行する現代版治安維持法体制の構築に警鐘を乱打し、本書では「新しい戦中」前夜と表現している。
 いま進む高市極右政権の危険性と参院選で躍進した参政党が、大日本帝国憲法と教育勅語をベースに、「国体」を盛りこ んだ「新日本憲法」(構想案)を掲げているだけに、本書は広く読まれてほしい。(大月書店 2,800円)
 
ogino.jpg
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする