対談する山本赤旗日曜版編集長(左)と新谷文春編集局長
菅首相の長男と総務省の幹部との会食問題や、学術会議の任命拒否問題など、政治権力の在り方を世の中に問う大スクープ。「週刊文春」と「しんぶん赤旗」は次々にこうしたスクープで権力の闇を暴いてきた。このメディアとしての「元気さ」はなぜ?4月のJCJのオンライン講演会は「週刊文春」の新谷学編集局長と、「しんぶん赤旗」の山本豊彦日曜版編集長の2人に対談で、「スクープの秘訣」について語ってもらった。聞き手は藤森研JCJ代表委員。
―スクープとは?
新谷 相手がいかに強かろうが書くものは書く。読者の声援を背に闘い続ける。そして闘い続けるメディアに情報は集まる。世の中に問いたいと思った時に、文春だったら相手に権力があろうが忖度しないだろうと思ってもらえる。なぜスクープを狙うのか、前のめりになって、とことん問い続けている。
山本 赤旗や文春はタブーなく物が言える。今の日本のメディアにとって、そこが大きな問題ではないか。そして文春や赤旗でしか報じないものが売れる。活字媒体が売れない中で、どうすれば売れるのか、それがスクープ、読んで得になる情報を出していく。
―具体的事例は?
山本 安倍前首相の「桜を見る会」の問題は、国会で、財務省が予算を毎年増やしていることが明らかにされたことがきっかけ。なぜ増やしているのか、違和感を感じて取材を始めた。公開されている情報になぜ、ほかのメディアが気づかなかったのか。学術会議の問題でも、拒否された学者がフェイスブックに載せたのを見つけ、これは大変だと取材した。ほかの社も書くかと思ったら、記事として出したのは赤旗だけで、スクープに。
新谷 舛添元東京都知事の、公用車で別荘通いのスクープは、記者がアンテナを張っていた都の幹部がポツリと「公用車の使い方が」とつぶやいたのがきっかけ。そこで情報公開で知事の動きを確かめ、別荘の前で張り込んでいたところ、知事が公用車で現れた。
―どうすれば?
新谷 問題意識を持つこと。基本的に「週刊文春」はど真ん中を目指す。左右どちらかの主張にとらわれず、フラットな目線で。スクープは、編集長が腹をくくることが必要。甘利大臣の現金受領スクープについても「大臣室で現金を受け取った」という情報が入った時、まさかと思った。でも本当だったら大変なこと。取材には経費や人手もかかるが、そこで一歩を踏み出せるかどうか、編集長の覚悟が問われる。
山本 記者はやらされている仕事をこなすのではなく、自分で探し、自分の目で確かめていく、「向かっていく」という姿勢を。そして記者は「この問題ならこの人に聞く」という人間関係を持っているかどうか。「桜を見る会」の取材でも保守系の人ともつきあう中で情報を積み上げていった。相手は本気。全人格をかけて勝負しない限りネタは取れない。
―今のメディアは?
山本 スクープを出せないということはマスメディアの劣化。今求められているのは。「前うち」ではなく「独自ネタ」。大手メディアはそこにシフトできていない。それは記者の問題ではなくデスクや編集幹部の問題ではないか。
新谷 スクープが、組織の小さい文春、とは健全なメディア状況とはいえない。またデジタルの時代に新聞やTVのビジネスモデルは崩壊していると思う。ダイナミックなデジタルシフトが必要ではないか。
―最後に一言
新谷 後に続く若い人たちにスクープのおもしろさ、気持ちよさを味わってほしい。いろいろなメディアがしのぎを削っていきたい。
山本 なぜスクープを、それはおもしろいから。おもしろがらないと話が始まらない。そしてメディア全体が元気にならないと。
古川英一
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
2021年06月21日
2021年06月12日
【オンライン講演】監視強化に進むデジタル法 大住弁護士が講演 個人情報保護は二の次=須貝道雄
デジタル庁創設などを規定した「デジタル改革関連法」が5月12日、成立した。JCJはそれに先立つ4月24日、同法の問題点を考えるオンライン講演会を開いた。講師の弁護士、大住広太さん(写真)は同法を「デジタル監視法案」と呼ぶのがふさわしいと指摘。政府・警察や企業による個人情報の利活用が優先され、市民のプライバシーは危険にさらされると警鐘を鳴らした。
AIによる悪用
生年月日や住所、健康状態、趣味嗜好といった個人情報が政府や企業によって吸い上げられ、データベース化されると、AI(人工知能)が発達した現在では思わぬ形で利用される。大住弁護士は例をあげて説明した。
米国の一部裁判所では、いくつかの個人情報をもとにAIで再犯率を計算し、判決で執行猶予を付けるか否かなどの判断材料に採用している。フェイスブックから大量の個人情報入手し、的を絞って政治広告に生かした疑惑(ケンブリッジ・アナリティカ事件)も米大統領選挙であった。日本も例外ではない。就職活動支援で集めた学生らの個人情報を分析し、内定辞退率を企業向けに販売したリクナビ事件は耳に新しい。
デジタル監視法のもとで創設されるデジタル庁はマイナンバーカードの利用を推進する。同カードは健康保険証、運転免許証、銀行口座、国家資格などと関連付けられる予定で、デジタル庁には膨大な個人情報が集まる。自治体の持つ個人情報も一元管理が可能となる。
政府と警察接近
この情報を誰がどのように利用するかが問題だ。デジタル庁のトップは首相で、強大な権限を持つ。情報機関の内閣情報調査室と連携して仕事をする可能性が高く、かつ内閣官房では警察出身者が要職についている。法律では「相当な理由」があれば行政組織間で個人情報のやり取りができる。個人情報をめぐって「政府と警察の接近が進む」と大住弁護士。市民監視、治安維持に重点利用される可能性が高い。
もう一つは民間のIT企業が食い込む恐れだ。デジタル庁には特別職のデジタル監一人を置き、民間から起用する方針だ。職員(100人程度)も民間から週3日勤務の非常勤で採用する。IT企業の自席からパソコンで役所の仕事をする勤務も可能で、「所属するデジタル企業に有利な政策判断がされやすくなる」
民間企業による個人情報の第三者への提供には@法令にもとづくA国への協力B学術研究の目的――の条件クリアが必要だが、解釈はいかようにもでき、本人同意のないまま個人情報の流出が広がる懸念も強いという。
公的給付金を素早く受け取ることができる、書類の押印を省くなど、デジタル化の利便性を政府は強調する。だがその利点はわずかで、同法の主眼は、中央に吸い上げた個人情報を政府・企業が市民監視や経済目的に円滑に活用できるようにする点にある。情報保護は二の次だ。
データの支配権
これに対しEUには一般データ保護規則(GDPR)があり「自然人は自身の個人データの支配権を持つべきである」(前文)との原則を掲げている。勝手に本人に無断で個人情報を第三者に提供できないよう「情報の自己コントロール権」をうたっているのである。
具体的には情報主体によるアクセス権、消去の権利、自動化による決定(AI活用)の対象とされない権利などだ。今回の日本の法律にはこの権利規定が不十分で「AIが広まった社会に対応していない」と大住弁護士は批判した。
これまで個人情報は各自治体と政府の間で分散して収集・管理していた。デジタル庁で一元管理されるとサイバー攻撃に脆弱となり、情報漏れが起きると被害は甚大になる。こうした難点にも法は目をつぶっている。
端的に表現すると、日本のデジタル化は「欧米型とは異なり、監視社会の中国型」。個人情報の利活用に歯止めをかける適切な規制が不可欠だと提言した。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
2021年05月12日
【オンライン講演】政権交代 浄化の一番の手段 「政治とメディア」星浩氏講演=須貝道雄
JCJは3月21日、「政治とメディアを考える」のテーマでオンライン講演会を開いた。政治ジャーナリストの星浩さん(TBSスペシャルコメンテーター)は秋までにある総選挙に触れ、自民党の政治のカネに絡む問題、スキャンダルを追及するには「検察庁頼みでは限界。やはり政権交代が必要になる」と語り、米国大統領選挙のような交代劇こそ、政治浄化の一番の手段だと強調した。
政治に緊張感も
総選挙の見通しについては「政治記者の勘に基づく楽観論」として、次のように述べた。「任期満了の解散だと野党に有利だ。自民党が40〜50議席ぐらい減らすだろう。国会は与野党が拮抗し、次の政権も不安定になる。2022年の参院選を経て、その次の総選挙が政権交代のチャンスとなるだろう。少しは日本の政治にも緊張感が出てくるのでは」
与野党の政権交代は、自民党支持者の3割が野党に投票しないと実現しないという。2009年に民主党(当時)が政権をとった時に起きた現象だ。現在の立憲民主党も「左のことばかり言っていると難しい」と注文。例えば@選択的夫婦別姓を実現し、世の中の多様性に合わせるA富裕層への増税をきちんとやる――などの政策を訴えたら、変化が出るのではないかと話した。
ポスト菅政権で河野太郎氏の名が出ることが多い。星さんの河野評は「政治リーダーの資格なし。あるのは勢いだけ」と厳しい。
19年7月、当時外相だった河野氏が徴用工の問題で駐日韓国大使を呼びつけ、報道陣のカメラの前で罵倒したことがあった。
「これは外相として絶対にやってはいけないこと。相手国とのパイプになり、多少評判の悪い人ともきちんと付き合うのが役割だ。本来なら、よくいらっしゃいました、お互い本音で話しましょうと言うべきだ」
包囲網に3兆円
国際情勢をめぐっては、日本が対中国ミサイル包囲網システムに組み込まれようとしている実情を指摘した。3月に開かれた日米の外務・防衛閣僚会合「2プラス2」がそのスタートラインだったという。共同声明では中国を名指しで批判した。米側から「自衛隊もミサイル基地をつくれ。カネも出せ」という要求が出てくる可能性が高いと読む。
というのも、米軍が昨年秋に「いま中国と戦争になったらどうなるか」のシミュレーション(模擬実験)をしたところ「米軍がこてんぱにやられることがわかったからだ」。対中ミサイル包囲網には3兆円ほどかかる。「日本はどこまでやるか」。憲法との関係で大きな問題になろう。
メディアについては、分断を乗り越えるために横断型のNPOなど、ジャーナリストの拠点作りが必要で、自身もその枠組みを考えていると語った。首相記者会見で「お聞かせください」などと、へりくだった言葉を使う記者の姿を批判し「なめられますからね」と警句を発した。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年4月25日号
2021年04月20日
【オンライン講演会】 ヤジと民主主義 排除→暴走の恐怖 無視されたマスコミ=須貝道雄
ドキュメンタリー番組「ヤジと民主主義」を企画した北海道放送(HBC)の報道部編集長、山崎裕侍さんを講師に2月13日、JCJはオンライン講演会を開いた。
番組の舞台は2019年7月の札幌。参院選挙で街頭演説をする安倍晋三首相(当時)に、「安倍やめろ」とヤジを飛ばした男性が警察官に力づくで排除された。疑問を抱いた山崎さんらが実情を掘り下げた。
警察が善悪判断
別の女子学生も安倍批判の言葉を叫んだとたんに警官に囲まれた。警官は「コーラですか、ジンジャエールですか、買ってあげますよ」と話しかけた。「女子学生の叫び、言論の自由に、120円のジンジャエールの価値しかないと、現場が考えているとしたら、大きな問題だ」と山崎さん。
「年金100年安心プランどうなった?」のプラカードを手にした女性も警官に妨害された。安倍歓迎のプラカードを掲げる人には何もせず、批判をするプラカードは妨害する。信条の違いで排除しており「善悪を決めるのは警察という恐怖がある」と番組作りに至った動機を話した。
ヤジをめぐっては「排除とは思わない」「なぜ問題なのか」と話す記者も周囲にはいた。街頭演説の現場には多くの記者がいてカメラを回していたが、堂々と警察官がヤジを排除した。番組では元北海道警の原田宏二さんがマスコミが無視された証左だと指摘。「報道の側で権力の暴走を食い止める力が弱くなっている」と山崎さんも危機感を語った。
再生は29万回超
「たかがヤジ」と問題を軽く見る向きがある中で、山崎さんの頭に浮かんだのは反ナチ運動の牧師、ニーメラー(1892〜1984年)の詩だった。最初に共産主義者が攻撃されたとき、自分は関係ないと声をあげなかった。時を経て、やがて自分が攻撃されたときには、私のために声をあげる人はだれも残っていなかったという内容だ。「ヤジの権利を奪われると、やがてもっとひどいことになるのでは」と小さな芽の段階から対応する必要性に触れた。
HBCの「ヤジと民主主義」は20年2月に放映後、ユーチューブで全国誰でも視聴できるようにした。1時間版の再生回数は29
万回以上に達した。「#検察庁法改正案に抗議します」で広がったツイッターデモ。最初の発信者であった笛美さんもこの番組で刺激を受け、ツイッターで声を上げ始めたのだという。
北海道警はヤジ排除の根拠に警察官職務執行法第4条(避難等の措置)をあげた。だが「説明には無理がある」が専門家の見解だ。
狂犬や暴れ馬が出た時に人を守る行動と、ヤジ排除が同じとは奇妙だ。市民とメディアの権力監視がますます大事だと話を聞きながら思った。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
番組の舞台は2019年7月の札幌。参院選挙で街頭演説をする安倍晋三首相(当時)に、「安倍やめろ」とヤジを飛ばした男性が警察官に力づくで排除された。疑問を抱いた山崎さんらが実情を掘り下げた。
警察が善悪判断
別の女子学生も安倍批判の言葉を叫んだとたんに警官に囲まれた。警官は「コーラですか、ジンジャエールですか、買ってあげますよ」と話しかけた。「女子学生の叫び、言論の自由に、120円のジンジャエールの価値しかないと、現場が考えているとしたら、大きな問題だ」と山崎さん。
「年金100年安心プランどうなった?」のプラカードを手にした女性も警官に妨害された。安倍歓迎のプラカードを掲げる人には何もせず、批判をするプラカードは妨害する。信条の違いで排除しており「善悪を決めるのは警察という恐怖がある」と番組作りに至った動機を話した。
ヤジをめぐっては「排除とは思わない」「なぜ問題なのか」と話す記者も周囲にはいた。街頭演説の現場には多くの記者がいてカメラを回していたが、堂々と警察官がヤジを排除した。番組では元北海道警の原田宏二さんがマスコミが無視された証左だと指摘。「報道の側で権力の暴走を食い止める力が弱くなっている」と山崎さんも危機感を語った。
再生は29万回超
「たかがヤジ」と問題を軽く見る向きがある中で、山崎さんの頭に浮かんだのは反ナチ運動の牧師、ニーメラー(1892〜1984年)の詩だった。最初に共産主義者が攻撃されたとき、自分は関係ないと声をあげなかった。時を経て、やがて自分が攻撃されたときには、私のために声をあげる人はだれも残っていなかったという内容だ。「ヤジの権利を奪われると、やがてもっとひどいことになるのでは」と小さな芽の段階から対応する必要性に触れた。
HBCの「ヤジと民主主義」は20年2月に放映後、ユーチューブで全国誰でも視聴できるようにした。1時間版の再生回数は29
万回以上に達した。「#検察庁法改正案に抗議します」で広がったツイッターデモ。最初の発信者であった笛美さんもこの番組で刺激を受け、ツイッターで声を上げ始めたのだという。
北海道警はヤジ排除の根拠に警察官職務執行法第4条(避難等の措置)をあげた。だが「説明には無理がある」が専門家の見解だ。
狂犬や暴れ馬が出た時に人を守る行動と、ヤジ排除が同じとは奇妙だ。市民とメディアの権力監視がますます大事だと話を聞きながら思った。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
2021年01月06日
【オンライン講演】 沖縄復帰50年に向け 玉城知事と対話イベント 女性サミット開催めざす ソフトパワーを提示=須貝道雄
2022年、沖縄は本土に復帰して50年を迎える。玉城デニー沖縄県知事(写真上)は11月22日に開いたJCJ主催の対話イベントで、50周年を機に、在日米軍専用施設の70・3%を抱える現状を変え、その割合を50%にまで減らす案を、新たな振興計画に盛り込む意向を明らかにした。
米国のバイデン新政権について玉城知事は、大統領に直接会うため「正直に扉をノックさせていただく」と述べた。女性初の副大統領となるカマラ・ハリス氏にも会い、アジア全体の「女性サミット」を沖縄で開催するため、呼びかけなどの協力を依頼する考えも示した。
辺野古新基地建設については、軟弱地盤の問題から技術、環境の両面か「辺野古は無理」と指摘。日米政府に沖縄県も加えた協議の場をつくり「対話による解決を」と訴えた。
対話イベントはオンラインで開催し、毎日新聞専門記者の大治朋子氏、BS―TBS「報道1930」コメンテーターの堤伸輔氏、フリー編集者の鈴木耕氏が玉城知事と語り合った。
玉城知事との対話の主な内容は次の通り。
大治朋子 菅義偉首相の印象はどうか。
玉城知事 会社の上司的な雰囲気だ。あまり枕詞を重ねずに、単刀直入に話し、ものごとを進めていく感じだ。
大治 辺野古の埋め立て工事でマヨネーズ状の軟弱地盤が出てきた。
知事 この軟弱地盤の改良工事を日本はかつてやったことがない。やる機械も持っていない。70bまでの機械は持っているが、深さは90bまで達すると専門家は指摘している。しかも大浦湾に7万7千本余りの砂杭を打ち込む。とてつもない負荷を与える。それを世界がどう見るか、日本の環境問題に対する姿勢が問われる。
長い滑走路は不要
堤伸輔 バイデン氏が新大統領になる。
知事 来年、米国に行って、本当にお会いできるか、正直に扉をノックさせていただく。できればカマラさん(次期副大統領)とも会い、ぜひカマラさんが主体となったアジア全体の女性サミットを沖縄で開催していただきたいとお願いする。その時は世界の女性首相・大臣にも、できればカマラさんから声をかけていただく。
堤 いまニュージーランドはアーダーンさんという女性首相だし、豪州は女性の国防大臣。面白いアイデアだ。
知事 時代の転換期にはやはり女性が集まって、自由、平和、平等、人権、子どもというテーマをしっかりと話し合うことが、重要なメッセージになると期待している。
堤 普天間飛行場(宜野湾市)の負担軽減をどう進めるか。
知事 普天間に残された機能は地上部隊と訓練をともにするヘリコプターの部隊だけだ。(だから辺野古に)重厚な基地を作る必要はない。すでに海兵隊は遠征前方基地作戦(EABO)という新作戦をつくって、大規模で恒久的な基地は軍事的に脆弱であることから、部隊の分散を目指しているという。もう、固定翼機が使うような長い滑走路は必要ない。菅首相にどこかの場面で転換を図ってもらいたい。
(続きを読む)
(→続きを読む)
2020年11月27日
【オンライン講演】 東京五輪「政治とカネ」後藤逸郎さん語る IOCのエゴイズム 開催可否は国民投票で=嶋沢裕志
コロナ禍の収束が見通せない中、来夏に延期された東京五輪・パラリンピックを「簡素化」して開催する準備が加速している。欧米などの感染状況を鑑みれば、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会、政府、東京都の前のめり感も否めないが、東京五輪は一体どうなるのか。JCJは9月26日、五輪問題に詳しいジャーナリスト、後藤逸郎さん=写真=のオンライン講演会を開いた。後藤さんは4月、「オリンピック・マネー誰も知らない東京五輪の裏側」(文春新書)を上梓した。
講演会は大会組織委とIOCが、大会関係者の削減や会場の装飾を減らすなど、52項目の簡素化で合意した翌日に行われた。リモート取材に参加した後藤さんは「300億円程度のコスト削減が決まったが、延期に伴う経費(約3千億円)にコロナ対策費を含めれば6千億円とも言れ1兆3500億円に膨らんだ大会予算もまだまだ増える」と指摘。一方、「IOCは開催式の時間短縮など米テレビ局の放送権料収入に関わる事項だけは一切譲歩しなかった」と、IOCのエゴイズムむき出しの実態を明かした。「平和の祭典」を仕切るIOCは、国連とも平和機関でもない巨大な興行主であり、開催すれば儲けが出る「開催ありき」の組織だと断じる。
日本では「コロナ解雇」が6万人を超え、23万社が倒産・廃業の危機にある。海外にはもっと悲惨な国もある。そんな状況下、無尽蔵に税金を注ぎ込むより、コロナ対策に回せばどれだけの命を救えるかという視点も大事だと問題提起した。
五輪開催ルールにも疑念が残る。選手の入国時に陰性証明と行動計画書があれば14日間の待機を免除すること。交通機関を使ってのホストタウンへの移動を容認することだ。懸念材料はまだある。選手村で感染者が出た場合、感染が蔓延しないかという点だ。「アスリートファーストと言いつつ選手の生命を軽んじていないか?」。
また、パラリンピック選手には基礎疾患を持つ人が多く、感染で重篤化するリスクも高いのに、あまり報じられることはない。背景には、メディア自身が「奉加帳」方式で五輪スポンサーとなっており、運命共同体として中止すべきなどと言い出しにくい面があるのではないか。
前代未聞の環境下で行われるオリンピックなら、開催の可否を問う国民投票があってもいい、と後藤さんは考えている。「五輪はその国の民主主義の成熟度を測る物差し」と締めくくった。
嶋沢裕志
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号
2020年10月21日
【オンライン講演】 会見は記者の主戦場 南彰新聞労連委員長が語る=須貝道雄
「記者会見は現代の主戦場だ」――新聞労連の南彰委員長(朝日新聞記者=写真=)は8月23日、オンライン講演会「メディアは今、何が問題か」で首相・官房長官会見を取り上げ「政治家の言いっ放し、宣伝の場にしてはならない」と語った。
政治取材では自宅への夜回りやオフレコ取材が重視され、報道側は「表の場」である記者会見に力を入れない傾向があった。南氏はその転換を訴えた。
政治家はツイッターなどのSNSやネットで市民に直接情報を発信し「やってる感」を演出するようになった。一方で記者会見の無力化、形骸化を狙っていると話した。
実際に2017年以降、官房長官会見では「公務があるのであと1問」と官邸側が発し、質問制限が露骨になった。その結果、会見は長くても10分か15分で終わっている。
今年8月6日、広島市であった安倍晋三首相の会見では、質問を求めた朝日新聞記者に対し、官邸報道室の職員が「ダメだよ。終わり」と腕をつかんで妨害した。明らかな知る権利の侵害だった。
記者会見がネット中継され、可視化される中で「記者は質問を通じて、市民の期待に応え、報道への信頼を勝ち取っていくことが大事。その意味で会見 は主戦場だ」と南氏は繰り返した。
官房長官会見は元々、時間制限無しがルールだったという。菅義偉官房長官のもとで制限が生まれた。「官房長官が代わったら、時間制限無しのルールに戻す必要がある」と呼び掛けた。
「桜を見る会」をめぐり安倍首相への疑惑が深まった19年11月、報道各社の官邸キャップは首相と中華料理店で懇談をした。その後も総理番、ベテラン記者と懇談が続いた。世間からは「正式な会見を要求すべきだ」と批判の声があがった。
南氏はこの事態を「官邸側の作戦勝ち」と見ている。懇談の日程は官邸側が設定する。「この時期に懇談をすればメディアを共犯者にできるし、メディア不信もかき立てることができる」と分析。報道側はその意図を見抜き、「作戦」に乗らず、記者会見を機能させていくことが大事だと強調。「会見を、ある意味で記者の怖さ≠伝えていく場にしていくことが重要だ」と語った。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号
2020年09月07日
【オンライン講演】 金正与氏が外交を担う 米朝に「10月サプライズも」=須貝道雄
JCJはオンライン講演会を7月26日、「どうなる朝鮮半島情勢」のテーマで開いた。開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を北朝鮮は6月に爆破し、世界に衝撃を与えた。指示したのは最高指導者・金正恩氏の妹、金与正氏。彼女はどんな人物か、また米朝会談は再開されるのかなどについて、講師の東京新聞・五味洋治論説委員から話を聞いた。
五味さんが冒頭に紹介したのは大ヒットの韓国ドラマ「愛の不時着」だった。パラグライダー中の事故で北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢が、身分を隠して暮らす物語。脱北者から取材して制作したということで、北朝鮮の人々の生活がリアルに描かれている。
興味深いのは北朝鮮の兵士が勤務中にヘッドホンで韓国ドラマ「天国の階段」を見ている場面だ。テレビに人気女優チェ・ジウの顔が映っている。彼女のことを「ジウ姫」と兵士は呼んでいたという。これは日本での愛称と同じだ。
五味さんは「日本と韓国と北朝鮮は同じ文化圏。感受性でつながるところがあり、同じように楽しんでいる」と解説した。
連絡事務所の爆破という過激な指示を出した金与正氏について、父の金正日氏はかつて「ヨジョナ」と呼んでかわいがり、後継者の一人として期待をかけていた。おきゃんな性格、トクスンイ(しっかりもの)の評もある。
今年に入り、コロナ問題や米国との関係悪化で兄の正恩氏が「意欲喪失状態」にあるため、彼女が兄に働きかけ、(爆破指示という形で)厳しく出たのではないかと、韓国紙記者は見ているそうだ。
米朝会談について金与正氏は7月に「今は米国だけに利益がある」と拒否的な姿勢を示した。五味さんは「外交問題でこれだけ堂々と言える人は妹だけ。兄の代わりに外交部門を担当していると見て間違いない」と分析。今後は過激化とは逆に、違った面を見せる可能性にも触れた。
米独立記念日に関し彼女は「アメリカのパレードのDVDが欲しい。国の参考にしたい」と書いていた。SNS上によくみられる、かわいらしい感じの言葉づかいだったという。
ひょっとすると電撃的な米朝会談の再現、オクトーバー(10月)サプライズも「ゼロとは言えない」と五味さんは指摘した。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年8月25日号
2020年08月12日
【オンライン講演】 黒人暴行死で矢部氏が講演 少数派になる白人に不安 米の暗部 KKK時代から=須貝道雄
米国ミネソタ州のミネアポリスで5月に起きた白人警察官による黒人暴行死事件。その背景には何があるのか――。JCJは7月4日、米国事情に詳しいジャーナリスト、矢部武さんを講師に「黒人が殺される国アメリカの深層」と題してオンライン講演会を開いた。ビデオ会議システムZoomを使う初めての試みだった。
標的は大きな体
8分46秒にわたって警官の膝で首を圧迫され、死んだ黒人男性ジョージ・フロイドさん(46)は以前から「オレはいつ殺されるかわからない」と友人に漏らしていたという。白人警官から、車を停止させられることがしょっちゅうあったからだ。
矢部さんによれば、白人警官は体が大きくて強そうな黒人男性を標的にする。国勢調査のデータでは2015年からの5年間、全米で毎年千人から千数百人が警官の暴力で死亡し、うち黒人は約26%を占めた。黒人の人口比は約13%だから、その2倍の数値だ。
今回の事件では10代の通行人が撮ったとされる衝撃的な動画が世論を喚起した。遺族は「殺意は明白。公開処刑だ」と世に訴えた。だがもし、この映像が無かったら「フロイドさんの死も、単なる数字の一つとして片付けられ、何もわからなかっただろう」と矢部さんは話した。
警官の行動の背後には白人至上主義がある。トランプ大統領は「白人の国を取り戻してくれ」という声に乗って選挙に勝った。米国勢調査局によれば、白人の人口比は現在60%だが、2045年には49%台にまで減る。いわば少数派に転じるわけで、その不安が白人至上主義への同調につながっているという。
「奇妙な果実」が
米国の黒人差別の歴史は400年以上になる。初めてアフリカから奴隷を連れてきたのが1619年。1865年の南北戦争で北軍が勝ち、奴隷制度は廃止になる。だが同時に、奴隷を使っていた白人至上主義者たちが黒人を迫害するKKK(クー・クラックス・クラン)という団体をつくる。白頭巾にたいまつを持って現れ、黒人の家に火をつけ、逃げた者を木につるして殺すなどのリンチが1950年代まで続いた。
ジャズ歌手のビリー・ホリディ(1915〜1959年)はこうしたリンチに抗議し、「奇妙な果実」の曲名で悲劇の黒人たちを歌った。
1964年の公民権法で黒人差別は明確に禁止された。だが意識は変わらず、資産格差も大きい。矢部さんが示したのは資産保有額の中央値だ。2013年時点で黒人世帯は1万1200jなのに対し、白人世帯はその13倍の額に達している。
延期か中止狙う
こうした中で、今年の大統領選挙はどなるかに話が進んだ。トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大に、あまり心配する様子を見せていない。矢部さんは「彼は混乱が大好きだから。どんどん感染が広がり、死者も2〜3倍になれば、11月選挙どころではなくなる。延期か中止をもくろんでいるのではないか」と推測した。
米国の友人とも話したという。ただ延期や中止を決める権限は議会にある。もし、トランプ大統領が選挙をせずに、21年もその座にとどまろうとしたら、おそらくペロシ下院議長が暫定大統領となり、ホワイトハウスに軍を送って、大統領は引きずり出されるだろうという議論になったとか。予断を許さない情勢だ。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
2020年06月11日
真実つかむ取材を 報道の自由 ネットセミナー=須貝道雄
国連が定めた世界報道自由デー(5月3日)にちなむネット上のセミナーが9日、会議システムzoomを使って開催された。法政大学の坂本旬教授を中心とした実行委員会の主催で、JCJも協力。大学のゼミ生を含めて約130人がパソコンやスマホで視聴した。
セミナーでは「国境なき記者団」の日本特派員、瀬川牧子さんが「緊急事態宣言と強化される情報統制」のテーマで話をした。強調したのは、日本と海外とでは「全くメディア文化が違う」ことだった。
ルール破りOK
例えば日本のメディアは、延期になった東京五輪を「復興五輪」と称してプラスイメージで報じ、マイナス面をほとんど取り上げていない。
これに対し、瀬川さんが取材に協力したノルウェーやスウェーデンの記者は異なった。彼らは「五輪を揶揄(やゆ)するため、福島の問題をもっと取り上げる」という狙いで来日している。「英国の記者たちもバーっと福島へ行く。五輪をやじりたいためだ」。ロンドン五輪(2012年)の際には、ホームレスの記事を書いて「五輪をやっている時ではない」と批判する英国メディアもあった。
2012年1月に、仏メディア「フランス24」のジャーナリストが福島原発から20`圏内の立ち入り禁止区域に潜入し、警察に逮捕されたことがあった。国境なき記者団はパリの日本大使館に抗議したという。その理由は「潜入させるほど、記者に(報道の)自由を与えなかったのは日本政府の責任」だからだ。
「国境なき記者団にとって、真実をつかむためにルールを破るのは全くOKなんです。ジャーナリストはトラブルメーカーでなければならない。やばい、えぐい話を取材し、報じてほしい」と呼びかけた。
次に登場したのは毎日新聞社会部の大場弘行記者で「報道の自由と公文書・情報公開」の題で講演した。毎日新聞は18年1月から「公文書クライシス」のキャンペーン報道を続けている。
話題にしたのは、東京・霞が関の官庁街で「闇から闇に消える文書」の存在だった。例えば「総理のご意向」の字句で有名になった文科省から出た文書。これは一般に「レク資料」と呼ばれ、官僚たちの証言によれば、まぎれもない公文書でありながら、口頭説明の一部として扱われ、表向きは存在しないことになっている。
数億通のメール
「ベタ打ちメール」も公文書として扱われていない。ベタ打ちとは、添付ファイルに書くのではなく、メールの画面にベタベタ字を打ち込むことから付いた名だ。ベタ打ちメールは一つの省庁で年間数千万から数億通に上るという。加計学園問題でも重要なメールがあった。
もう一つ、大きな問題は公文書を束ねたファイル名をわざと抽象化し、中身をわからなくする手法があることだ。検索が難しくなり、情報公開請求がやりにくくなる。
防衛省はイラク復興支援に関する文書のファイル名を「運用一般」と表記し、南スーダン派遣の文書を「注研究」、セクハラに関する報告を「服務指導」としていた。その結果、異動で担当者が変わると、何の文書がファイルされているかわからず、自衛隊のイラク日報を捜しきれず、後から見つかるということも起きたと話した。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号


