2026年05月16日

【Bookガイド】5月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)

ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)

◆西谷文和『なぜ中東で戦争が終わらないのか』かもがわ出版 5/7刊 1800円
中東では、2003年のイラク戦争以来、長くテロがテロを呼び戦争が延々と続いてきた。そこへトランプ+ネタニヤフによる両国軍がイランへ侵略の攻撃を、突如始める。なぜ?
戦場ジャーナリストによる現場からの告発。写真約200枚。
 著者は大阪市立大学経済学部卒業、吹田市役所勤務を経て、フリージャーナリストに転身。世界の紛争地を取材し、テレビや新聞、講演で現地情報を伝えている。『西谷文和 路上のラジオ』をネット配信。「イラクの子どもを救う会」を設立、2006年度「平和協同ジャーナリスト大賞」を受賞。
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◆梅田正己『天皇制国家はいかにして創られたか━「尊王思想」の形成から「帝国憲法」の制定まで』高文研 5/13刊 2400円
江戸時代の二百数十年間、天皇は、幕府による徹底した監視・統制下に置かれ、京都の「御所」から一歩も外に出ることのできない「幽閉」状態にあった。そのため人々は「天皇の存在」を知らなかった。一般国民には全く無縁・無名だった天皇が、幕末の「尊王攘夷」運動の動乱をへて、近代日本の頂点にそびえ立つ「元首」となる、そのプロセスを明快に説き明かしたのが本書。いま話題の「皇位継承」問題をふくめ、天皇制や近現代史に関心をもつ人には必読。
 著者は1936年、佐賀県唐津市に生まれる。出版社勤務を経て、1972年、高文研を設立。著書に『変貌する自衛隊と日米同盟』、『この国のゆくえ』(岩波ジュニア新書)ほか。
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◆神山典士『地方が溶ける━ふるさと再生の光と影』光文社新書 5/20刊 920円
地域社会やサービスは、どのように消失するのか。地方には何が残るのか。政治による分断(広島県安芸高田市)、国を活用する経営戦略(北海道東川町)、民間とのチームワーク(宮崎県小林市)、炭鉱の町の現在(福岡県直方市)、子供たちの変化(埼玉県越生町)、記憶の継承(宮城県女川町)。全国各地で「ふるさと作文教室」を主宰し、自らも「トカイナカ」移住生活を送るノンフィクション作家が記す、今日の地方をめぐる光と影。
 著者は1960年埼玉県入間市生まれ。信州大学卒業。ノンフィクション作家。著書『ライオンの夢』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。著書に『トカイナカに生きる』など。ふるさと大好き全国作文協議会事務局長。
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◆東海林さだお『アンコの丸かじり』朝日新聞出版 5/20刊 1800円
大人気「丸かじりシリーズ」のフィナーレを飾る最新刊。クスっと笑えて、ときに仄(ほの)見えるお色気にドキッとして……。B級グルメとビールを愛したショージ君が、最後にえらんだのは「アンコ」だった!
〈アンコというものは、どうも何かにもぐり込もうとする傾向がある。傾向というより、性癖? 饅頭の中にもぐり込んでいる。大福餅の中にもぐり込んでいる。最中の中にも、もちろんアンパンの中にももぐり込んでいる>。
 1988年刊『タコの丸かじり』から38年、週刊朝日の看板連載「あれも食いたいこれも食いたい」で繰り広げられた東海林ワールドがついに幕を閉じる。
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◆宇野重規『政治とは何か』講談社現代新書 5/21刊 1100円
権威主義国家の台頭、国際御法の無視などなど、近年の世界の政治状況は、「政治」という営みについての従来の常識を揺るがしかねない事象に満ち満ちている。逆に言えば、そういう時代であるからこそ、「正しい」政治のあり方について、今一度あらためて、その根本から考えてみる必要があるのではないか。本書では、西洋の政治学の基礎を作ったとされるアリストテレスに始まって、様々な思想家達の考えを簡潔明快にひも解く。
 著者は1967年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業。現在、東京大学教授。著書に『政治哲学へ 現代フランスとの対話』、『民主主義とは何か』、『保守主義とは何か』など。
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◆宮田 律『イラン戦争━アメリカ・イスラエルの策略』平凡社新書 5/27刊 1000円
イランの最高指導者ハメネイ師が殺害されるなど、2026年2月末に開始されたアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃は、国際法を無視したものであり、現在も対立・混乱が続いている。この両国に対し、日本はいかに対処するべきなのか。世界中を混乱に陥れているトランプとネタニヤフは、はたして何を求めているのだろうか。「イラン戦争」の背景にある相互不信の歴史のほか、宗教イデオロギー、政治・社会構造を掘り下げる1冊。
 著者は1955年山梨県生まれ。現代イスラム研究センター理事長。専攻はイスラム地域研究、国際政治。著書に『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』『黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル』『アメリカのイスラーム観』『ガザ紛争の正体』など。
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◆上山 慧『細川嘉六━「河童老人」の生涯とその時代』◆日本機関紙出版センター 5/28刊 4091円
昨年「治安維持法」が施行されて100年目。その治安維持法による最大の言論・出版弾圧事件が「横浜事件」だ。本書はその中心にいた人物・細川嘉六の生涯を、「スパイ防止法」制定を目論む現代日本に当てはめ、改めて問い直す。細川が検挙弾圧された容疑は、いずれも神奈川県特高警察による捏造であった。「横浜事件」の犠牲者は、改造社・中央公論社・朝日新聞社・岩波書店など、言論・出版関係者63名、氏名未確認の者を合わせ90名近くにのぼる。特高警察は自白を強要するため被疑者に激しい拷問を加え、その結果、獄死者4名、保釈直後死1名、失神者12名、負傷者32名にも及んだ。
 著者は1992 年大阪府箕面市生まれ。2014 年大谷大学卒。専攻は日本近現代史。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部常任理事。著書に『神戸平民俱楽部と大逆事件』。
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2026年05月05日

【5月出版界の動き】リアル書店減と新規開店への模索

◆雑誌・書籍販売金額1118億円(前年同月比7.4%減)
 書籍は743億5600万円(同8.4%減)、雑誌375億1200万円(同5.4%減)。雑誌の内訳は月刊誌が同5.5%減、週刊誌が同4.8%減。返品率は書籍が同0.4ポイント増の25.6%、雑誌は同1.0ポイント減の40.6%。
 書店店頭での売れ行きは、書籍が約2%減、文芸約2%増、文庫本約2%増、学参ほぼ前年なみ、ビジネス書約3%減、児童書約2%減、新書本約4%増、書籍扱いコミックス約6%減。雑誌は定期誌が約2%減、雑誌扱いコミックスが約21%減。
 なお出版科学研究所による紙書籍雑誌推定販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。雑誌にはコミックスの約9割が含まれる。

◆苦境の書店は活路を開けるか
 25年度の登録書店(リアル書店)数は前年から424店減の9,993店。ついに1万店を割り、最盛期の1998年度から差し引き1万4千もの売り場が消滅した。いかに販売拠点の数が紙出版物の売り上げに影響するか如実になっている。
 リアル書店の苦境が続くなか、三省堂書店神田神保町本店が3月19日にリニューアルオープン。22年5月に閉店した旧神保町本店を地上13階建ての新ビルに建て直し、書店は1階から3階までそれぞれ特色ある売り場を展開、4階には集英社「THEジャンプショップ神保町」が入居した。
 そのほかにも1月31日には紀伊國屋書店新宿本店で初の試みとなるオールナイトフェス「KINOFES 2026」が開催。チケットはXでの告知後わずか4時間で完売し、当日は関係者を含む750人が参加したといわれる。
 “本屋プロレス”など個性的なイベント開催で有名な伊野尾書店(新宿区・中井駅) は、3月末の閉店が決定していたが、「BOOKSHOPトランスビュー大江戸中井店」として6月より再オープンする。店舗の半分は従来型の本屋として書籍・雑誌等を販売し、もう半分はトランスビュー扱いの出版社の商材を中心に、展示・陳列するギャラリーを設け、出版社のポップアップストアとして活用できるようにするという。(「季刊 出版指標」2026年春号巻頭言・原正昭より)

◆図書館と出版業界による新文学賞案内
 47都道府県の図書館員が、地元に「在住」する作家の小説を選び、トーナメント方式で頂点を決める新しい文学賞「本の甲子園」が始まっている。直木賞作家の今村翔吾さんの発案によるものだ。今村さんが理事長を務める一般社団法人ホンミライが、図書館流通センター、日販と共同で開催している。
 日本の小説に属する本で、 発売から1年以内(24年10月〜25年9月)に刊行された日本の小説。文庫の場合は文庫オリジナル作品のみ対象となる。 6月 1日に各都道府県の代表作品発表。 7月〜9月 トーナメント戦(1〜3回戦・準々決勝)。10月20日(火)〜22日(木) 準決勝戦・決勝戦にて、頂点に立つ作品が決定。

◆出版市場占有率はコミック45%
 出版科学研究所が発表した25年のコミック市場推計を元に、ジャンル別の占有率を算出。コミック6925億円に対し、書籍(コミックを除く)が6173億円、雑誌(コミックを除く)が2364億円。市場占有率はコミック44.8%、書籍(コミックを除く)39.9%、雑誌(コミックを除く)15.3%となった。

◆デジタル教科書の有識者会議開始
 いま小中学生に無償配布の教科書は紙のみ。政府が正式な教科書として、「デジタル教科書」を、30年度の小学校から順次導入を計画している。しかしデジタルも教科書に位置付けられると、教科書は紙のみ、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」、完全デジタルの3形態になることが想定される。
 文科省の有識者会議は4月から、デジタルを導入できる学年・教科を示す指針の策定作業を始めた。認知科学などの知見を踏まえた議論など、10項目の論点が示されている。今後、「ハイブリッド」の教科書に占めるデジタルの比重や適否についても、慎重な検討が必要となる。

◆雑誌「学研の学習」16年ぶりに復刊
 1946年に創刊し、小学生向けの看板月刊誌として工作教材の付録が魅力だった。最盛期の79年には、月間発行部数が雑誌「科学」と合計で670万部に上った。ただ学校や家庭への訪問販売に陰りが出て、書店販売に切り替えたものの2010年に休刊した。
 7月9日発売の第1号は「はにわの大国宝展」と題し、東京国立博物館が監修。古墳時代の特集で国宝のはにわ「挂甲の武人」を6分の1サイズで再現するキットが付く。石の粉を含んだ素材を使って素焼きのような質感を実現した。インターネットで何でも調べられるデジタル全盛期だからこそ、子供の探求意欲を高めるリアルの体験がより重視されていると判断した。価格は4290円で当面は年1回発行する。

◆村上春樹の新作小説7月に刊行
 新潮社は、村上春樹さんの長編小説「夏帆━The Tale of KAHO」が7月3日に刊行すると発表。「街とその不確かな壁」から3年ぶりの長編小説となる。2024年3月に早稲田大学で開かれたイベントで朗読し、文芸誌「新潮」に掲載された短編「夏帆」が作品の出発点。その後書き継いできた作品群を加えて、新たな長編小説として刊行する。

◆「週刊文春」39万部「週刊現代」23万
 スマートフォンの普及に伴い、一般週刊誌は売上の厳しさに直面している。日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数で確認する。
 「サンデー毎日」が10万部を切り「AERA」もいまや5万部を割り込み、なお部数を減らし続ける形となっている。また20年1〜3月「SPA!」が10万部を割り込み、それ以降は10万部を超えられず低迷している。
 一般週刊誌の前年同期比でプラス領域にある雑誌は皆無。全誌がマイナス領域。昨今、何かと世間を騒がせている「週刊文春」だが、前年同期比でマイナス7.2%、参考までに前期比はマイナス1.8%。絶対部数の多さに支えられてはいるものの、中長期的な低迷感の中にあることは否定できない。
 大きく落ち込んだ雑誌のラインアップを再確認すると、「SPA!」「週刊現代」「週刊新潮」「週刊アサヒ芸能」といった、男性向けの大衆誌、あるいはゴシップ系雑誌がほとんどを占める。

◆「ドラえもん」終了を惜しむ
 1977年4月15日に創刊された月刊漫画誌「コロコロコミック」(小学館)5月号が4月15日に発売された。だが藤子・F・不二雄さんの代表作「ドラえもん」の再掲載が終了しているので、SNS上では惜しむ声が相次いでいる。
 河井質店Xアカウントは「『ドラえもん』がたくさん読める雑誌として77年に創刊されたコロコロコミック。これまでも『藤子・F・不二雄名作劇場ドラえもん』として再録され続けてきましたが、本日発売の5月号で最終回を迎えました。49年続いた歴史が終わってしまうのは本当に寂しいです。復活してくれることを切に願います」と、15日午前7時18分に投稿。その投稿から2時間強で、23万インプレッションと大きな反響を呼んでいる。
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2026年04月28日

【出版トピック】柚木麻子さん、自著『BUTTER』の版権を新潮社から河出書房新社へ

◆契機は深沢潮さんへの対応
 柚木麻子さんは22日、自身のインスタグラムを更新し、「この度、拙著『BUTTER』の版権を、新潮社様から河出書房新社様へ移す決断をいたしました」と報告。その内容を紹介する。
 「ここに至るまで、双方の会社と協議を重ね、円満な合意の上での移動となっております。新潮社様には長年にわたりお世話になり、作家として育てていただいたことに感謝しております。これまで支えてくださった各部署の皆様にも、心より御礼申し上げます」と綴った。
 さらに「今回の判断の背景には、昨年、作家仲間である深沢潮さんに著しい苦痛を与える記事が、彼女のデビュー元である新潮社発行の雑誌に掲載されたことがあります」と説明。「その後の状況や、彼女にかかった負担、そして孤立について見聞きし、出版というシステムの在り方を深く考え直す契機の一つとなりました」と振り返った。

 そして「作家として、自分にできる具体的なアクションは何か。検討を重ねた結果、新潮社様における複数の版権のうち、一作を他社へ移動するという選択に至りました。これは現時点での、私なりの最大限の意思表示です」と伝えた。
 また、「『BUTTER』のオーサーズツアーで各国の出版関係者と対話するなかでも、差別や排除に対しどう立ち向かうべきか、自身の立場を厳しく問われる機会がありました。私はいつも迷い、間違えることが多い人間ですので、本件は、国内外の同業者や関係者に相談し、助言を受けながら決断したものです」と心境を表明。

◆多様な文化や価値観を大切に
 版権の移動は、「多大な調整が必要となり、関係者の皆様にご負担をおかけしたことをお詫び申し上げます。なお、同様の行動を他の書き手に強制する意図は一切なく、それぞれが置かれた状況下での判断が尊重されるべきだと考えております」と伝え、「同時に、本作を愛してくださっている読者の皆様には、今回の移動後も変わらず作品を楽しんでいただけるよう、環境を整えてまいりますので、ご安心いただければ幸いです」と呼びかけた。

 改めて「出版の世界が、読者や作り手が安心して表現に向き合い、多様な文化や価値観を受け止められる場所であることを切に願っております。なお、本件に関しては、この声明文に記したことが全てであり、長期間の検討を経て出した結論です。そのため、個別のご質問や取材等はお受けいたしかねます。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」と説明。「海外の版元の皆様、国内の書店員の皆様にもご負担をおかけすることをお詫び申し上げます。サイン等の対応が必要な際は、河出書房新社様を通じてご連絡いただけますと幸いです。なによりも、深沢潮さんの今後の執筆活動が、健やかで安定した環境のもとで続けられることを、一人の作家、そして一人の友人として強く願っております」と締めくくった。

◆今も新潮社への抗議は続く
 柚木さんらが決断の背景にあるとした問題のコラムは、昨年の「週刊新潮」7月31日号に掲載された。高山正之氏の連載「変見自在」で、1940年、日本が朝鮮人に日本式の姓名に改名するよう強いた政策を引いて「創氏改名2・0」と題し、深沢さんをはじめ俳優や大学教授らの実名を挙げて、「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と書いた。
 深沢さんは、コラムの掲載後、2度にわたり、新潮社にコラムが差別的で人権侵害にあたるかどうか文書で質問した。だが深沢さんの代理人によると、新潮社は回答でコラムの内容に対する認識には言及しなかった。そうした経緯から、深沢さんは、2012年のデビュー作を収めた「縁を結うひと」のほか、新潮社から出ていた計4作品の出版契約を解除する意向を示し、昨年9月に解除が決まった。
 同じ9月には、コラムの内容や同社の対応に抗議する人たちが、「新潮社は差別で稼ぐな」などのプラカードを手に、新潮社前に集合した。

 コラム掲載後の新潮社の対応への批判は収まらず、澤村伊智さんは今年2月に自身のXで、新潮社から出版した「怪談小説という名の小説怪談」の契約を終了したと発表。「週刊新潮」編集部が、「民族差別的な記事を掲載し、その事実を認めないこと」や、文芸編集部も不誠実な対応をし続けていることなどが理由だと記していた。
 また、問題をめぐっては、昨年10月、ワック発行の月刊誌「WiLL」が「女流作家に屈伏した週刊新潮」と題する高山氏のコラムを掲載。11月には「週刊新潮」に掲載したコラムを収録した高山氏の書籍『高市早苗が習近平と朝日を黙らせる』を刊行する。
 深沢さんは今年1月、これらの内容が事実に反し、名誉感情を侵害するなどとして、出版社ワックと筆者の高山氏を相手取り、慰謝料を求める訴えを東京地裁に起こしている。
 なお河出書房新社からは、文庫版が6月15日に発売される。
            
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2026年04月24日

【お知らせ】 フリーランス法(取適法)は業務丸投げ+契約解除に対抗できるのか?〜宝島社「100分de名著 カール・マルクス『資本論』」裁判判決を素材に〜 27日(月)午後7時から8時30分

 3月19日宝島社裁判の控訴審判決が出されました。控訴棄却の不当判決です。
 控訴審判決は、公正取引委員会が下請法違反で行政指導をしたことを無視し、書籍制作一式の請負契約であるとした一審判決も否定し、編集業務だけの請負契約であって報酬相当額も支払済みであると決めつけました。その結果、「不当な給付内容の変更」の法解釈にまで踏み込まず、業務丸投げと契約解除の実態に即した判断をしていません。控訴審判決は、「取引条件の明示義務」違反の重要性を考慮せず、フリーランスに不利益を負わせるものであり、下請法(取適法)/フリーランス法の立法意義を没却するものです。看過するわけにはいきません。

 出版ネッツでは、下請法(取適法)/フリーランス法の専門家である岡田直己さん(青山学院大学法学部教授)を講師に招き、宝島社事件地裁・高裁判決の批判的検討と、「取引条件の明示義務」と「不当な給付内容の変更(契約解除や発注取消)」について学ぶ集会を開催します。
皆さんのご参加をお待ちしています。
〈集会概要〉
■場所:出版労連会議室(対面、オンライン併用)
東京都文京区本郷4-37-18 いろは本郷ビル2F
■対面、オンラインとも申込みが必要です
https://forms.gle/9XVb9QZpnVkobCEaA
※申込みの締め切りは、4月26日(日)18時
■参加費:無料
〈プログラム〉
○宝島社裁判の経過報告と判決批判:当裁判代理人弁護士 本間耕三さん
○講演「“契約書は作らない”という因習がフリーランスを窮地に追い込む―宝島社事件の批判的検討―」:青山学院大学法学部教授 岡田直己さん
○質疑応答
〔お問い合わせ先〕 https://union-nets.org/misc 主催:ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)
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2026年04月17日

【Bookガイド】4月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)

 ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)

◆『石牟礼道子━水俣病公式確認70年のために』KAWADE夢ムック増補新版 4/6刊 1600円
2026年は、水俣病が公式に確認されてから70年の節目。作家の石牟礼道子(1927〜2018)は、患者たちの運動を支援し、また『苦海浄土』などの作品を通じて水俣病や現代文明の抱える諸問題を問い続けた。石牟礼さん逝去を受け、18年に刊行した文藝別冊「追悼 石牟礼道子 さよなら、不知火海の言霊」を、多数の増補を行い刊行。
 石牟礼の没後70年、いま世界と日本を見れば、石牟礼が水俣にみた近代の終わりが、確実に現実化しようとしている。一方、石牟礼へのアプローチもこの間、深みと広がりを増している。石牟礼の仕事は、いまこそ読まれなければならない重みをもって輝く。
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◆大石芳野『あすへの記憶』日経BP日本経済新聞出版 4/6刊 2000円
広島・長崎、東京大空襲、アウシュヴィッツ、沖縄、ベトナム、コソボ、ウクライナ…。災禍を生きた人たちに向き合い、話を聴き、カメラに収めて半世紀。日本を代表するドキュメンタリー写真家が、これからを生きる人たちと共有したい記憶とは。著者撮影の写真30余点を収録。その対象に向けるまなざしは、人には温かく、戦禍には厳しい問いを投げつつ 写しとる。そこに添える文章もまた、私たちの琴線に触れて重く響く。
 著者は写真家。東京都出身。日大写真学科卒業。日本写真協会年度賞、芸術選奨文部大臣新人賞、土門拳賞、紫綬褒章など受賞・受章多数。
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◆林望『書物を楽しむ━あえて今、紙の本を読む理由』朝日新書 4/13刊 840円
「やっぱ。本は紙だね ぬくぬく冬の床で読む。スマホでは目が痛くなるし、タブレットでは重くて嫌になってしまう」━紙ならではの利便性を説く林先生に、本との付き合い方・読書の醍醐味を、徹底的に語りつくす。70年に及ぶ読書遍歴についても言及。ここで取り上げる本、作家へのウンチクに、読んで堪能すること間違いなし。
 著者は1949年東京生まれ。作家・書誌学者。慶應義塾大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『林望のイギリス観察辞典』で講談社エッセイ賞を受賞。
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◆西村章『高額療養費制度━ひろがる日本の<健康格差>』集英社新書 4/17刊 1050円
医療費が高額になった場合、自己負担額を一定に抑える「高額療養費制度」。自己免疫疾患の治療で長年この制度を利用してきたジャーナリストは、2024年冬に政府が発表した「改悪」案に不安と憤りをおぼえ、取材を開始する。各分野からの証言が浮き彫りにしたのは、健康に「格差」がある日本社会の現状や、セーフティネットとして十分に機能しない医療保険制度の姿だった。複雑で入り組んだ高額療養費制度の問題を、平明に解明する。
 著者は1964年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。自己免疫疾患の治療で09年から高額療養費制度を継続利用中。著書に『最後の王者MotoGPライダー・青山博一の軌跡』、『スポーツウォッシング なぜ〈勇気と感動〉は利用されるのか』など。
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◆星野博美『野馬追で会いましょう━相馬の馬文化と震災後の日常』集英社新書 4/17刊 1100円
海外で土着の馬に乗り、「馬の地」が紡ぐ歴史と人々の営みをたどる旅をしてきた著者は、日本では馬との暮らしが失われる中、馬文化のいまを知りたい。そう願って2021年夏、福島県相馬地方で行われる祭事「相馬野馬追」を初めて訪れた。浪江町で出会った「平本家」のメンバーは、東日本大震災でほぼ全員が被災し、全国に散らばって生活していた。
 かれらの語り、一人一人の選択から原発事故の影響がいまだ続く現実が見えてくる。日本の馬文化の現在地と震災後の日常を描くノンフィクション。
 著者はノ1966年、東京生まれ。ンフィクション作家、写真家。著書に『転がる香港に苔は生えない』『コンニャク屋漂流記』『世界は五反田から始まった』『みんな彗星を見ていた』など。
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◆米田一彦『家に帰ったらクマがいた』PHP新書 4/17刊 1200円
「駆除すべきか、人間が喰われるか」━オッと、その前にあなたはクマの真の姿を知っていますか。ある日家の玄関を開けると、黒くて大きな影が潜んでいた。「おいっ」と声をかけると、クマは私の脇腹をかすって逃げた。著者はこれまで3000回以上クマに遭遇し、9回襲われ、何とか生還してきた。人間とクマとの共生は可能なのか。研究を50年以上続ける日本一のクマ研究家が綴る、数奇な科学ノンフィクション。
 著者は1948年、青森県生まれ。秋田大学教育学部卒業。秋田県庁自然保護課勤務。86年に同庁を退職、フリーのクマ研究家となる。環境省の委託でツキノワグマの調査を行なってきた。著書に『クマ追い犬 タロ』『山でクマに会う方法』『熊が人を襲うとき』など。
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◆向井和美『ふたりの読書会━無期受刑者との本をめぐる往復書簡』岩波書店 4/28刊 2200円
始まったきっかけは、翻訳家である著者の元に、出版社を通じて届いた一通の手紙。知らない男性の名前があった。「突然申し訳ありません。私は刑務所で服役している者です」とはじまり、整った細かい字で書かれた文章。
 強盗殺人罪で20年以上服役している無期懲役囚からだった。向井さんの『読書会という幸福』(岩波新書)を読んだ感想と共に、自らの生い立ちや贖罪の意識が、7枚の便箋(びんせん)にびっしり綴られていた。そして二人の '魂の交流'がスタートした。その貴重な記録。
 著者は早稲田大学文学部卒。翻訳家。訳書に『100の思考実験』、『イエスの墓』など。
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2026年04月08日

【出版トピック】作家・綾辻行人さんの作品装う“偽本”がAmazonに出現 本人が注意喚起!

 作家の綾辻行人さんは、4月3日、自身の作品を装った偽の電子書籍がAmazonで販売されているとして、広く注意するよう呼びかけた。
 偽の電子書籍のタイトルは『続・十角館の殺人』『十角館の再訪』。綾辻さんは、「私はまったく関知しておらず、驚きました。誰かが生成AIで勝手に作ったもののようです」と説明している。
 綾辻さんが作家デビューを果たした著書『十角館の殺人』(講談社ノベルス)を想起させるもので、書影には、同書の表紙を手掛けた漫画家・喜国雅彦さんのイラストを模した画像を使っている。
 これら偽の電子書籍を手掛けた著者は「阿津川」を名乗り、作家の阿津川辰海さんの作品を装った電子書籍もAmazonで販売している。阿津川さんも、自身のXアカウントで「もちろん私はまるで関わっておりません……悪質なひともいるものですね」と注意を呼び掛けている。
 綾辻さんは自身のXアカウントで「こんな書影までAIで作って。喜国雅彦さんの絵のパクリもいいところ。あきれます」と指摘。『十角館の殺人』の版元である講談社に連絡し、対処中としている。
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2026年04月04日

 【4月出版界の動き】出版業界に押し寄せる第3の大波

◆書協が生成AI使用の指針を
 出版社の業界団体、日本書籍出版協会は出版社が生成AI(人工知能)を使う際の指針作成に乗り出す。出版社が行う翻訳・校正など編集業務にAIを導入する際のガイドラインを作成する。また本の著者が執筆時にAIを使う場合を想定し、契約書に規定を盛り込むといった対応を進める。
 生成AIへの対応を議論する検討会を設置して、381の加盟企業のうち約40社が検討会に参加。専門家からのヒアリングを交えて話し合う。秋にも出版社向けのガイドラインをまとめることを目指す。

◆2月出版販売金額2.3%増
 2026年2月期の紙書籍雑誌推定販売金額は取次ルートのみで、911億3700万円で前年同月比2.3%増、書籍は611億1800万円で同3.9%増、雑誌は300億1800万円で同0.6%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同2.0%増、週刊誌が同15.1%減。返品率は、書籍が同1.6ポイント減の28.5%、雑誌は同1.8ポイント減の42.2%。
 既存店店頭での売れ行きは、書籍がほぼ前年並みで、文芸約2%増、文庫本約4%増、学参約1%増、ビジネス書約3%減、児童書約1%減、新書本約4%増。雑誌は定期誌がほぼ前年並み、雑誌扱いコミックスが約8%減、ムックが約1%減、書籍扱いコミックスが約2%増。

◆小学館が性加害事件に対応
 小学館の漫画アプリ「マンガワン」が男性漫画家の性加害を知りながら、新連載の原作者に起用していた問題について、小学館は謝罪し、第三者委員会の設置を発表。だが漫画家たちからは対応を批判する声が相次いでいる。これを受けて再度3月9日に「お知らせ」と題する声明を発表し、謝罪と今後の取り組みについて報告。
 編集者の見識や漫画家への対応、出版・編集のモラル・責任などが問われている以上、今後の動きが調査報告と合わせ注目される。

◆出版インフラ担う講談社の動き
 講談社の関連会社であった豊国印刷、講談社ビジネスパートナーズ、第一紙業を統合して発足した株式会社KPSは、長年、講談社の印刷や物流、資材調達などの業務を行ってきた。これを再編し、KPSホールディングス傘下に「プロダクツ」「フルフィルメント」「ソリューションズ」「システムズ」の4事業会社を設立した。出版事業を始め物流、システム、各種業務などを、自社グループにとどまらず、他の出版社へも提供するサービスを進めている。培ったノウハウを生かし、多くの出版社に共通する業務を担うことを目指す。
 この発想は、同社の米国出版社が現地で業務委託しているペンギン・ランダムハウス・パブリーシングサービシーズから来ているという。KPSも将来的にはセールスなども含めて全般的な出版業務を請け負うことを目指す。物流部門では、取次出荷にとどまらず、直送など多様な流通に対応する。

◆オアシスがKADOKAWAの筆頭株主
 KADOKAWAは、物言う株主として知られる香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが、筆頭株主になった。オアシスの保有議決権数は総株主の議決権に対する割合が11.89%に達した。それまで筆頭株主の地位にあったソニーグループ株式会社が同位置から外れ、保有割合は10.10%から10.04%に減少した。オアシスは最近になって、さらに買い増しを進め、議決権に対する割合が13.76%となった。
 オアシスは日本でも積極的な働きかけを行っており、今回の大量取得も今後KADOKAWA経営陣に対して何らかの提案を行う可能性がある。

◆島根県大田市に2年ぶり書店誕生
 書店ゼロとなっていた大田市に今井書店が出店することが決まり、6月24日にオープンする。大田市には1987年から地元の人に愛されてきた市内唯一の書店があった。しかしネット通販の拡大や電子書籍の普及なで売り上げが減少、おととし3月に閉店。それ以降、大田市は書店ゼロとなっていた。
 大田市は出店にかかる費用を支援するため、10年間で最大5500万円を助成する独自の制度を創設し、事業者を公募したところ今井書店が名乗りを上げ、イオンタウン大田への出店が決まった。

◆「本なら売るほど」がマンガ大賞に
 書店員や漫画ファンの投票で決まる「マンガ大賞2026」に、児島青さんの「本なら売るほど」(KADOKAWA)が選ばれた。
 脱サラして古本店「十月堂」を開業した青年が、さまざまな人々と出会いながら、本の持つ魅力や価値に改めて気付いていく連作短編集。繊細な絵柄でリアリティーを感じさせる仕立てで、雑誌「ハルタ」で連載している。児島さんは性別や出身地など、詳しいプロフィールは非公表。
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2026年03月17日

【出版トピック】北海道新聞社説「小学館の姿勢 性加害者の擁護許されぬ」 3/15付

 学びや文化の発展を担う出版社として、人権感覚が著しく欠如していると疑わざるを得ない。性加害歴のある漫画家の起用を続けた小学館のことだ。
 札幌市内の通信制高校を卒業した女性が在学中、教員だった漫画家男性からの性被害で精神的苦痛を受け損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は男性に1100万円の支払いを命じた。
 判決後、小学館は男性の性加害を把握しながら作品を掲載していたと発表した。加害者を擁護していたことになる。女性は深く傷つき今も苦しんでいる。小学館の対応は許されない。
 訴訟で男性側は「同意があった」と反論した。一方、原告は性的目的を満たすため優しく手なずけるグルーミングの手口だったと主張し、判決も「男性が自ら優位に立つ関係を形成し性的欲求に応じさせた」とした。
 同様の犯罪の多発を受け、2022年施行の「教員による児童生徒性暴力防止法」は同意の有無を問わず児童生徒との性行為を禁止した。「同意があった」との弁解は通用しない。

 被害を受けた女性をさらにおとしめたのが小学館の対応だ。
 男性は20年、同じ女性への性加害で罰金刑を受けた。小学館の漫画配信サービス「マンガワン」編集部は男性の作品の掲載を中止した。
 その後、和解協議に加わった担当編集者が性加害の口外禁止などの条件を示した。女性は納得できず22年に提訴すると、編集部は男性を別のペンネームで新連載の原作者に起用した。
 小学館は判決後、「起用判断に瑕疵(かし)があった」として連載の配信を停止し謝罪した。第三者委員会で検証するという。
 性暴力を引き起こした元タレントを擁護したフジテレビ問題とも構図が重なる。人権より漫画家から得られる利益を優先したも同然で悪質だ。
 問題発覚後も後手の対応が続く。当初、社員らでつくる調査委員会で原因を究明するとしたが、複数の漫画家がマンガワンへの掲載中止を求めるなど非難が強まり、第三者委の設置へと軌道修正を余儀なくされた。
 性犯罪で有罪になった別の漫画家を起用するなど、女性の人権を軽視した事案が他にも判明した。検証を要する項目は多い。
 昨年、新潮社の「週刊新潮」に差別的なコラムが載った。大手出版社で人権感覚が問われる問題が続いたことは深刻だ。
 とりわけ小学館は子ども向けの書籍が評価されてきた。高校生の性被害を軽視し、信頼は失墜した。そのことを自覚し、検証を尽くす必要がある。
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2026年03月03日

【3月出版界の動き】取次・書店をめぐるリストラおよび統合

◆オーディオブック第3の書籍に
 ナレーターや声優が本を朗読した「聴く本」、すなわちオーディオブックを運営するオトバンクは、3月3日は「オーディオブックの日」にちなみ、「オーディオブック白書2026」を公開。
 この白書によると、ユーザーの7割以上が「移動・家事」を「読書」に変換し、平日・日中のスキマ活用が鮮明になった。オーディオブックユーザーと一般消費者の読書習慣を比較。読書の「時間」「場所」「目的」の違いから、オーディオブックが従来の読書スタイルをどのように拡張しているのかを明らかにしている。
 近年、スマートフォンやワイヤレスイヤホンの普及で音声コンテンツの利用環境が整ったことや、定額で様々な作品が聴き放題となるサブスクリプションサービス導入などを背景に、オーディオブックの利用者が急増。新しい読書のかたちとして、紙、電子書籍に続く、第3の書籍として広がりつつある。

◆新社長のトーハン早期退職者募集
 トーハンは取締役会で「取次事業の見通しがきかず、抜本的な改革が求められている。自ら率先して組織を変えていく」ため、9人だった常勤取締役を6人に減員し、1代表制とし大西良文専務が新社長に。機構改革では、「支社制の廃止、支店統合」などを決めた。
 さらにトーハン本体に従事する50代の社員を対象に、早期退職者を募る。880人の社員数を700人台の体制にする。既存の早期退職優遇制度の対象年齢を従来の50代前半から、今回に限り50代後半に拡大して行う。今回に限定して従来以上の割増し退職金を支払い、再就職支援も実施する。また26年度から満57歳を迎えた役職者を対象に「役職定年制度」を導入する。

◆啓文堂、紀伊國屋書店に屋号変更
 啓文堂書店 渋谷店が、「紀伊國屋書店 渋谷道玄坂店」としてリニューアルオープン。この屋号変更により、啓文堂書店の全20店舗の店名が「紀伊國屋書店」となった。リニューアルに際し、渋谷道玄坂店は同じく渋谷駅近隣で営業する「紀伊國屋書店 西武渋谷店」と連携したプレゼント施策などのキャンペーンを3月3日まで展開する。
 紀伊國屋書店の高井昌史会長は、旧啓文堂書店の各店舗が売上げを伸ばしてきた実績を報告した。また紀伊國屋書店グループ傘下の旭屋書店池袋店の屋号変更も示唆し、こうした対応は「本をしっかり売っていくのが、紀伊國屋の使命」だと語った。

◆コミック6925億円(1.7%減)
 25年(1〜12月期累計)の紙と電子を合わせたコミック市場は、6925億円(前年比1.7%減)となった(出版科学研究所発表)。7年連続のプラスで過去最高を更新した前年から、一転してマイナスとなった。出版市場におけるコミック(紙と電子)のシェアは前年同率の44.8%。
 紙(コミックスとコミック誌の合計)の売り上げが1652億円(同14.0%減)。その内訳はコミックスが1260億円(同14.4%減)、コミック誌が392億円(同12.7%減)。また電子コミックの売り上げは5273億円(同2.9%増)。引き続き伸長したものの伸び率の鈍化が鮮明となった。

◆矢部太郎が1人出版社設立
 お笑い芸人「カラテカ」、そして漫画家である矢部太郎(48)さんは、『大家さんと僕』シリーズ(新潮社)で有名だが、このほど彼は1人出版社「たろう社」を立ち上げた。「たろう社」の社名は「小さい頃、絵本や新聞をつくって父と遊んでいました。いつも発行元はたろう社でした。そのたろう社を実際につくってみました」と、自身の過去の記憶からつけたという。
 刊行1作目は、今も健在の父で絵本作家・やべみつのり(84)さんが綴ってきた、未発表のオールカラー絵日記『光子ノート』(3500円)。本書は矢部さんの姉・光子さんの誕生と成長の日々を、父のみつのりさんが残した38冊分のノートを、矢部自身がスキャニングして、厳選のうえ編集したもの。なんと992ページ、厚さ約6センチ、重さ約1キロになったという。
 光子さんが3歳だった75年1月から、矢部さんが生まれた1977年6月30日後の10月まで。矢部を絡めた子育て中に起きた極めて個人的な記録とはいえ、親になった喜びや「昭和という時代」の描写が、今もなお私たちの共感を呼びおこす。購入などの情報は、https://www.tarousha.com

◆講談社、売上高1.1%減1691億
 講談社の第87期(24.12.1〜25.11.30)売上高は1691億6900万円(前年比1.1%減)、当期純利益は111億8800万円(同19.4%増)。売上高の内訳は、「デジタル収入」861億9100万円(同8.0%増)、「ライツ収入」285億4000万円(同11.8%減)、「広告収入」69億2900万円(同2.6%減)、「不動産収入」30億0800万円(前年と同水準)。
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2026年02月28日

【出版トピック】フリーランスの春闘━報酬10%アップのオンライン署名に協力を

 出版ネッツが、「フリーランスの春闘宣言2026」を発表している。その内容は以下の通りだ。
<フリーランスの編集者、ライター、カメラマン、デザイナー、イラストレーター、校正者などのクリエーターの多くが、紙とデジタルとを問わず、数十年にわたって低廉な報酬で仕事をし、生活をしています。私たちの報酬は、安ければ安いほど良い「コスト」として、据え置かれています。
 賃上げから取り残されている私たちフリーランスの現状の周知をはかり、報酬アップの機運を高めていきましょう>

 出版ネッツでは、2022年以来、毎年、「フリーランスの春闘宣言」を発表し、1990年代からまったく上がっていないコンテンツ産業で働くフリーランスの報酬を上げようと、取り組みを行なっている。そのうえで、今年はフリーランスの春闘の可視化を目指し、オンライン署名に取り組み、こう呼びかけている。
<今のままではコンテンツ制作の技能だけでなく、産業の継承そのものが難しくなるのではないかと、私たちは危機感を持っています。報酬10%アップのオンライン署名に賛同をお願いします!
 産業を代表する働き手であるフリーランスの報酬を上げる機運を作るべく、周知ご協力をお願いいたします。
 フリーランサーの皆さまは、ぜひ、この宣言を仕事先に示して報酬アップを交渉してください>
 以下をクリックするとオンライン署名のページに飛びます。
      https://c.org/RsPF6xXNYB
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2026年02月12日

【出版ネッツ声明】生成AIにおけるクリエイター保護へ適切な法規制を求める

 生成AI開発や利活用が急速に進展しています。生成AIはイラストや動画、文章などを手軽に出力できる一方で、著作権の侵害やディープフェイクの拡大など大きな問題をはらんでいます。2025年5月、AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が成立し、同年12月、政府はAI基本計画を閣議決定しました。AI法や基本計画には、「イノベーション促進とリスク対応の両立」がうたわれていますが、リスク対応は後回しにされ、バランスが崩れているのが現状です。

 このような状況下、多くのクリエイターが無断で自身の創作物を生成AIに利用され傷つき苦しんでいます。作家狙い撃ちの生成AIによる嫌がらせにあっているという声も寄せられています。さらに多くのクリエイターが著作者としての権利と生計(仕事の継続)への脅威と不安を抱いています。他者の権利を侵害して生成される画像や動画、テキストが野放しになってしまってはコンテンツ産業に未来はありません。

 私たちはイラスト、マンガなどコンテンツ産業に携わるフリーランスのユニオンとして、生成AIについての法規制を求めます。AI規制法(仮)の基本方針として、基本的人権と著作者としての権利の保護を明示し、透明性、公正性、さらに説明と合意を担保することが求められます。また、実効性確保のために、違反行為を申告できる窓口、申し出があった場合の是正措置や罰則を定めることも必要です。すでにヨーロッパや韓国などではAI規制法が施行されています。
 クリエイターの権利保護は、喫緊の課題です。

 上記基本方針に基づき、具体的に策定するルールとして、以下の4点を求めます。
1学習データの開示義務化
 生成AIは著名なコンテンツを含む多くの表現を無断で取り込んでいます。どの著作物を学習させてつくられたのか、その権利関係情報を含む透明性の確保が必要不可欠です。学習データの開示がされないと、自分の作品が学習されているかどうかを確認することができず、権利侵害の有無の確認やオプトアウト(事後の不同意)したり公正な収益還元のためのアクションを起こすこともできません。

2生成AIの利用有無のラベリング義務化
 生成AIを利用した制作物であるにもかかわらず、それを伏せて公表するケースがこれまで多く見られました。たとえば、生成AI利用を伏せた制作物がコンペに応募されれば公正な審査ができなくなります。また写真の場合は、実際にあるものなのか、生成AIでつくられたものなのかが一目でわからないと混乱をきたします。
 生成AI事業者や利用者には、 生成AIを利用してつくられた制作物なのかどうかを明示する義務を課す必要があります。同時に、SNSのプラットフォーム企業にもラベリングが適切に行われているか管理・監督を行う責任を課すことを求めます。

3オプトイン、オプトアウトの義務に関するルールの策定
 クリエイターにとって著作権は非常に大事な権利です。無断で自分の著作物が短時間に大量に模倣されてしまうことは、数多のクリエイターによって支えられているコンテンツ産業の裾野を確実に衰退させます。生成AI事業者からクリエイターへのオプトイン(事前の同意)の義務化、クリエイターからのオプトアウト(事後の不同意)方法策定の義務化は、今後のコンテンツ産業の健全な発展のために必要不可欠です。
 とりわけ著作物の利用にあたって、著作権者に許諾を得ること(=オプトイン)は、著作権法の原則です。現行の著作権法では、著作物を生成AIの学習データとする場合のような情報解析を目的とする利用であって、著作物に表現された思想や感情を享受することを目的としない場合には、原則として許諾不要とされています(第30条の4)。しかし、その後の生成AI技術の急速な進展により、状況が大きく変化しています。今一度この条項の見直しを含め、著作権侵害を容認しないという原則の確認が必要です。

4ディープフェイク画像・動画・テキスト生成への罰則規定の導入
 生成AIには著作権以外にも問題点があります。それはディープフェイクの問題です。災害時や選挙期間などにおける政治的ディープフェイクの拡散は、人権侵害を引き起こすだけでなく、民主主義の基盤を危うくし、人々の「知る権利」を阻害します。とりわけ性的ディープフェイクの被害は深刻です。しかし、現在これを規制する法律はありません。早急な対応が求められています。

 現状では、生成AI画像の「類似性」が認められたとしても、フリーランスのクリエイターやディープフェイクの被害者が個人で裁判などを起こすことは非常に困難です。権利侵害を予防するためにも、法的な規制と相談・申告できる窓口が必要です。 著作権法上の権利と対価(報酬)は、クリエイターであるフリーランスの創作の源泉であり、ひいては文化的価値を生み出す源泉です。クリエイターの権利保護と創作環境の整備・維持のために、AI規制法の制定を強く求めるものです。
                           2026年2月1日
                    ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)
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2026年02月04日

【2月出版界の動き】25年出版市場は4年連続マイナス

◆書籍・雑誌は1兆円割る
 2025年度の紙と電子を合算した出版市場規模は1兆5462億円(前年比1.6%減)となった。出版科学研究所が発表した。4年連続のマイナス。市場規模はコロナ禍前の19年とほぼ同規模となった。
 紙の出版物は9647億円(同4.1%減)となり、ピークの1996年に2兆6千億円に達した市場も、ついに1兆円を割り込んだ。その内訳は、書籍が5939億円(前年と同率)、雑誌が3708億円(前年比10.0%減)。雑誌は月刊誌(ムック・コミックス含む)が3195億円(同8.6%減)、週刊誌が513億円(同17.9%減)。月刊誌の内訳は定期誌が約5%減、ムックが約4%減、コミックス(単行本)が約15%減。
 電子出版物は5815億円(同2.7%増)。内訳は電子コミックが5273億円(同2.9%増)、電子書籍が459億円(同1.5%増)、電子雑誌が83億円(同3.5%減)。
 これまで市場をけん引してきた電子コミックの伸び率が鈍化。各ストアでの割引やポイント還元、期間限定の全話無料施策が活発に行われた影響と推察されている。また電子雑誌は24年にサブスクの値上げでプラスとなったが、25年は会員減により再びマイナスに転じた。

◆「独立書店」支援200店
 トーハンは24年10月から独立書店向けに本を卸すサービス「HONYAL(ホンヤル)」を手がける。本の流通フローを簡略化することで、従来は口座開設に至らなかった少額の取引先とも持続的に取引が可能なスキームだ。すでにホンヤルを利用し50店が開業している。
 小さな店舗で営む「独立書店」が増えるなか、異業種からの参入でも経営ができるように支援するインフラが整ってきた。書籍販売への新規参入を促し、人と本とのタッチポイントを増やすことで、無書店自治体の増加などの課題解決に寄与することを目指す。
 この「HONYAL(ホンヤル)」を発展させるため、28年3月期末までに200店まで増やす目標を公表した。仕入れが月に5万円でもOK とのこと。

◆「ハルメク」書店販売
 定期購読者向けの生活雑誌「ハルメク」は、1月1日〜2月20日の期間限定で、全国の「TSUTAYA」200店舗で、雑誌「ハルメク」の過去号を販売する取り組みを実施。定期購読を中心に展開してきた同社が、全国規模で雑誌を書店販売するのは初めて。新たな読者との接点創出を図る。
 <「ハルメク」バックナンバーフェア>では、25年4月号〜11月号を販売する。通常、送料込みで販売価格880円(税込)のところ、フェアでは送料を除いた720円(同)で販売する。
 「ハルメク」は、「50代からの女性の心豊かな生き方・暮らし方を応援する」をコンセプトにした女性誌。自宅直送による定期購読のみで展開している。販売部数は46万2000部を誇り、50代以上の女性を中心に高い支持を集めている。

◆角川歴彦氏が控訴
 東京地裁は1月22日、東京五輪・パラリンピックのスポンサー選定をめぐる汚職事件で、角川歴彦氏(82)の判決公判を行い、中尾佳久裁判長が同氏に対して「懲役2年半、執行猶予4年」の有罪判決を言い渡した。角川氏はその後、弁護団と会見に臨み、「大変残念です。私の闘いは続きます」と話した。
 弁護士の弘中惇一郎氏は「客観的な裏付け証拠もなく、都合のいい証言を繋ぎ合わせた判決」とし、明日23日に控訴すると伝えた。村山浩昭弁護士は「人質司法、保釈してもらうための表面的な弱い供述をもとに判断されている」とし、元裁判官の立場から「嘆かわしい、必ず正す」と応答した。

◆深沢潮さん提訴
 「週刊新潮」が掲載した高山正之氏のコラムで、作家の深沢潮さんらが名指しで差別を受けた問題をめぐり、このコラムを収録した書籍を刊行するなどした出版社ワックと筆者の高山正之氏を相手取り、深沢さんが660万円の慰謝料を求める訴えを22日、東京地裁に起こした。
 コラムは昨年「週刊新潮」7月31日号に掲載された。1940年、日本が朝鮮人に日本式の姓名に改名するよう強いた政策を引いて<創氏改名2・0>と題し、深沢さんをはじめ俳優や大学教授らの実名を挙げて「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と記した。
 会見した深沢さんは「自分の尊厳が傷つくこと、差別されることを、そのままにしておくつもりはない。放置し続ければ、差別は果てしなく広がっていってしまう」と話している。
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2026年01月23日

【出版トピックス】岩波書店が新書など読み放題サービス始める

◆トーハン・日販とも「書籍」売上増
 トーハンと日本出版販売はそれぞれ、年末年始(昨年12月27日〜今年1月3日)のPOS店での売上動向調査の結果を発表した。
 両社とも「書籍」「マルチメディア/開発品」の昨年対比がプラスとなったほか、トーハンでは「総合」「雑誌」でも前年調査を超えた。
 トーハンの調査店1472店では、「総合」前年同期比0.9%増、「書籍」同5.8%増、「雑誌」同1.9%増、「コミック」同22.1%減、「マルチメディア」同7.9%増。トーハンの「書籍」のジャンル別でみれば、以下の通り。
〈文芸〉115.5%。「成瀬あかりシリーズ」の完結編『成瀬は都を駆け抜ける』(宮島未奈著/新潮社)が好調。
〈児童書〉103.9%。「最強王図鑑シリーズ」の最新刊『ドラゴン タッグ最強王図鑑』(Gakken)、『大ピンチずかん3』(小学館)、『おせち』(福音館書店)が上位に。
〈文庫〉107.0%。湊かなえ『人間標本』(KADOKAWA)、吉田修一『国宝』(朝日新聞出版)などが良好な売れ行き。
 日販の調査店1072店では、「総合」前年比1.2%減、「書籍」同5.4%増、「雑誌」同1.0%減、「コミック」同16.7%減、「開発品」同5.6%増。

◆KADOKAWA2年連続売上1位
 丸善ジュンク堂書店が発表の売上ランキングでは、KADOKAWAの金額は約30億4611万円で前年比1.1%減。トップ10の2位以降は、2位 講談社 2,911,439,615円、 3位 集英社 1,909,922,824円、4位 小学館 1,684,159,946 円、5位 Gakken 1,246,260,367円、6位 新潮社 1,060,356,567円、7位 朝日新聞出版 760,822,955 円。
 6位新潮社までは前年と同順位だが、昨年10位だった朝日新聞出版が7位にランクアップ。上位100社では、68位のぴあ(前年177位)の伸長が目立った。ランキングはISBNが付与された銘柄で、対象期間は25年1月1日から12月31日、対象店舗は121店。

◆ラノベ出版社が株式上場
 主に若者をターゲットにした娯楽小説ライトノベルやマンガの中堅出版社TOブックスが、2月13日に東京証券取引所スタンダード市場に上場する。
 上場に合わせてTOブックスは新株式発行で増資をするほか、創業者である本田武市氏が保有する株式の一部を売出す。増資による資金調達は16億8000万円程度を見込む。同社は、編集者、メディアミックスを担当するプロデューサー、営業部員などの人材投資に充当するほか、広告宣伝費と販売促進にも充てる予定。想定する公開価格3810円を基準に算出すると、時価増額は130億円を超える。
 TOブックスは14年に前身となる映像・音楽・出版事業のティー・オーエンタテインメントの出版事業が分社化するかたちで設立された。ラノベル出版を中心に、コミカライズ、アニメ化、舞台化、さらにドラマCDやグッズなど多角的に事業を広げている。
 25年4月期の売上高は94億2600万円、営業利益11億4900万円、経常利益11億4500万円、当期純利益7億7500万円。メディアミックスが活発になった20年代以降に急成長した。

◆「Kindle 」で読み放題
 岩波新書編集部は、岩波新書の多くのタイトルが、Amazonの電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」で読めるようになっている事をXで告知した。新書のほか「岩波文庫」「岩波ジュニア新書」「岩波科学ライブラリー」で、多くのタイトルが読み放題。新書では、朝永振一郎『物理学とは何だろうか』、清水幾太郎『論文の書き方』、池内了『擬似科学入門』、梅棹忠夫『知的生産の技術』など、多くが対象になっている。
 編集部は「気になっていたけど読んだことのないロングセラー、タイトルに惹かれたけど手に取っていない書籍……この機会に岩波新書の魅力に気軽に触れてみてください!」と呼び掛けている。
 「Kindle 」は、月額980円で500万冊以上が読み放題に。
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2026年01月03日

【1月出版界の動き】島根・大田市が書店事業者を公募!

◆11月紙書籍・雑誌の販売金額771億円・5.5%減
 直販ルートを除く取次ルート軽油で771億3700万円(前年同月比5.5%減)、書籍477億9300万円(同1.4%減)、雑誌293億4400万円(同11.5%減)。雑誌の内訳は、月刊誌が同8.4%減、週刊誌が同28.4%減。返品率は書籍が同1.2ポイント減の31.3%、雑誌は同0.7ポイント増の44.7%。
 書店店頭での売れ行きは、書籍が約3%増で、文芸約6%増、文庫本約5%増、ビジネス書約6%増、学参約8%増、児童書約2%増、新書本約3%増。雑誌は定期誌が約5%減、雑誌扱いコミックスが約6%減、ムックが約5%増。

◆生成AI×知的財産保護の新ルール案にパブコメ
 内閣府は生成AIと知的財産権の保護に関する規制案=「プリンシプル・コード」について、パブリックコメントの募集を始めた。
 これは「AI事業者コーポレートサイトで使用モデルの名称や設計仕様、AIのトレーニング法、学習データの種類などを開示する」など、生成AIサービスの基本情報を誰にでも見える形で開示するよう求めている。プリンシプル・コードは強制開示を求めるものではないものの、これに則らないAI事業者はその理由を説明する必要があるという。
 提出方法はWebと郵送に対応。募集期間は2026年1月26日まで。

◆無書店の島根・大田市が事業者公募
 開設資金として最大500万円支援。加えて家賃や販売促進費などの費用を1年につき最大500万円、10年間通して助成。同市役所で26年1月30日午後5時まで受け付け。
 主な応募条件は以下の通り。
1. 一般書から専門書まで多様な分野・ジャンルにわたる書籍を取り扱うこと
2. 書籍・雑誌に係る売り場面積が100u以上あること
3. 所定の定休日を除き、常時継続的かつ安定的に営業する店舗であること。不定期な営業形態によらないこと。
4. 計画認定の日(概ね2月頃)から1年以内に事業開始する見込みがあること

◆スマートニュース、KADOKAWAと提携 
 スマートニュースは自社のアプリで、KADOKAWAの漫画サイト「カドコミ」から厳選した作品の紹介コンテンツを順次配信をスタート。本取り組みを通じて、ユーザーが“知らなかった漫画に出会える”新しい読書体験の創出を目指す。
 あらすじや見どころを伝えるテキストとビジュアルを組み合わせ、ユーザーが気になる作品を見つけられる構成としている。取り上げる代表的な作品は以下のとおり。
『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ / 漫画:春河35)
『義妹生活』(原作:三河ごーすと / 漫画:奏ユミカ/ キャラクター原案:Hiten)
『夜は猫といっしょ』(著者:キュルZ)

◆年間ベストセラー1位『大ピンチずかん3』
 有隣堂が「25年間ベストセラー」ランキングを発表。書籍1位は『大ピンチずかん3』(小学館)、2位は『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』(朝日新聞出版)、3位は『カフネ』(講談社)。
 有隣堂のシステム「Book Store Central」のデータをもとに算出。集計期間は24年12月〜25年11月。有隣堂全店における雑誌・文庫・コミックを除いた販売数上位をランキング化。

◆「直木賞」候補作、14日に決定
 日本文学振興会が直木賞の候補作を下記の通り発表。受賞作は1月14日に決定。
 嶋津輝『カフェーの帰り道』(東京創元社)
 住田祐『白鷺立つ』(文藝春秋)
 大門剛明『神都の証人』(講談社)
 葉真中顕『家族』(文藝春秋)
 渡辺優『女王様の電話番』(集英社)

◆「夏の100分de名著フェア」好成績
 7月から9月末にかけて行ったNHK出版の同フェアの売上金額が、本体価格ベースで4026万円、4000万円の大台を突破。前年の約2480万円から1.6倍規模となり好調だった。参加書店は981店(前年は669店)で、受注金額は約1億0800万円(同約5800万円)。売上ベスト3の書店は、1位:丸善丸の内本店(東京)2位:紀伊國屋書店新宿本店 3位:ジュンク堂書店池袋本店。
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2025年12月11日

【出版界の動き】12月 コンテンツ産業支援に予算350億円

◆日販赤字16億円 物流費高騰
 日販の25年4〜9月期の連結決算は、売上高1633億円(前年同期比12%減)、営業損益16億円の赤字(前年同期は2400万円の赤字)。本業の取次事業でトラックなどの運搬物流コストが高騰、赤字幅が広がったことが要因。
 純利益は前年同期比3倍の3億3600万円。コンビニエンスストア向けの雑誌配送をトーハンに順次移管し、6月にコンビニ向けの物流から完全撤退。そのため閉鎖した物流拠点の不動産売却益21億円の計上が大きい。

◆トーハンも3年ぶり8億円赤字
 トーハンの単独決算(2025年4〜9月期)によると、最終損益8億9200万円の赤字(前年同期は6億4300万円の黒字)。赤字となるのは3年ぶり。書店やコンビニへの運賃費が高騰し、キロ当たり62円。25年3月期比で3割も高くなっている。
 26年3月期通期の経常損益は4億1000万円の赤字を見込む。27年3月期は経常黒字への転換を目指す。なお子会社を含めた25年4〜9月期の連結決算は、売上高1977億円(前年同期比5%増)、最終損益15億円の赤字(前年同期は2億7600万円の黒字)。

◆漫画海賊版に5億円を賠償命令
 講談社、集英社、小学館、KADOKAWAの出版大手4社が、「ONE PIECE(ワンピース)」など、人気漫画を無断で掲載する海賊版サイトへデータ配信サービスを提供した米IT企業「クラウドフレア」を相手取り、権利侵害を訴えていた。このほど東京地裁は約5億円の賠償を命じた。「権利侵害を幇助した」として、配信業者に賠償を認めた初の司法判断である。
 東京地裁はクラウド社が、出版社から著作権侵害と通知された後もサービス提供を続けた事態を「提供を停止する義務を怠った」と重くみた。クラウド社は「インターネットの効率、信頼性に深刻な影響を及ぼす」とし控訴する意向だというが、悪用を許していいわけはない。IT企業側はネットの利活用を進める上でも重い責任を自覚すべきだ。
 出版社などでつくる海賊版対策団体「ABJ」によると、被害額は推計で年約8兆5000億円にも上る。

◆出遅れコンテンツ産業底上げへ
 アニメや漫画などのコンテンツ産業支援に向け、大規模映像作品の制作や日本発海外向け配信サービスの流通網の整備など、日本発のコンテンツの海外展開を後押しする。これまでコンテンツ産業に関する日本の予算規模は約252億円、米国は6176億円、中国は1238億円、韓国は762億円と比べても、出遅れている。
 日本発コンテンツは現在、アニメやゲームが中心となっている。経産省の支援では、マンガ・アニメコンテンツだけに限らず、日本のすべての出版コンテンツが、世界中の読者に届けやすくなる環境を整備し、日本のコンテンツ産業を底上げする方向で取り組むべきである。

◆マンガに続け小説など輸出開拓 
 「漫画を除いた書籍の海外売り上げは、2019年比で3倍ほどになっている」。こうした状況を踏まえ、日本の出版各社が書籍の海外展開に力を入れている。11月初旬に開かれた商談会には過去最多の108社が出展し、海外の出版社と翻訳の交渉に臨んだ。漫画以外のジャンルでも海外からの関心が高まっている。それを捉えようと情報発信を強化するほか、マイナビ出版では自前で市場開拓する動きも出ている。

◆北米海外事業・拠点をサポート
 講談社は、コロナ禍以降の世界的なアニメ、マンガブームの隆盛を受け、昨年6月に海外ライツ事業と海外拠点をサポートするグローバル統括室を新設。海外、特に同社が現地に出版社を置き、直接出版活動を行っている北米では、日本マンガに対する需要が盛り上がり、『進撃の巨人』英語版が1千万部を超える。

◆海外事業好調で最高益更新
 紀伊国屋書店の売上高は1407億円(前期比4%増)だが、純利益が47億円(前期比37%増)、3期連続で最高益を更新。売り上げの25%を占める海外事業が好調だったほか、24年12月に完全子会社化した老舗書店「旭屋書店」と「東京旭屋書店」の業績が貢献した。
 とりわけ北米と東南アジアを軸にした海外店舗は11月末で47店舗になる。さらに26年8月期中までに10店舗以上の開業を見込む。26年春にはバングラデシュへの初出店を予定し、インド進出への足掛かりとする。

◆常駐フリー呼びかけチラシ配布
 出版ネッツは、先月11日に神保町交差点および地下鉄護国寺駅・講談社前にて、幟を立てハンドマイクで呼びかけをしながら、チラシを配布、年1回実施し今回で3回目となる。チラシの内容は、常駐フリーで働く人に向けての情報提供と、「働くうえで困っていることや不安なことはありませんか?」と呼びかけるもの。解決・交渉事例や、アンケート調査等で寄せられた常駐フリーの声(不安や要望)、相談窓口の連絡先も載せている。
 配布チラシは下記からダウンロードできる。
https://union-nets.org/wp-content/uploads/2025/11/a4b2484ae748d3e4341dad3a5027de78.pdf
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2025年11月05日

【出版界の動き】読書の秋━<本との出会い>へ各種イベント始まる=出版部会

◆9月期紙の出版物販売額936億5200万円(前年同月比1.8%減)
 その内訳は、書籍597億3100万円(同1.0%増)、雑誌339億2000万円(同6.5%減)。雑誌では月刊誌が同6.9%減、週刊誌が同4.3%減。返品率は書籍が29.3%(同1.6%減)、雑誌は41.2%(同0.9%減)。
 書店店頭での売れ行きは、書籍2%減で、文芸3%増、文庫本ほぼ前年並み、ビジネス書2%増、学参3%減、児童書3%減、新書本7%増。雑誌は定期誌3%減、雑誌扱いコミックス19%減、ムック2%減。
 なお、出版科学研究所による上記の販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。電子出版市場は1月と7月の年2回発表される。

◆「日刊ゲンダイ」創刊50年 政権批判を恐れぬタブロイド紙
 1975(昭和50)年10月27日に創刊し、このほど50年を迎えた、永久保存版「創刊50周年特別号」を発売した。
「日刊ゲンダイ」といえば一面の長〜い見出し。最近号でも庶民の声を反映し政権批判の<世にもおぞましい短命連立><高市も玉木もろくでなし まともな首相候補はいないのかと庶民の悲鳴><有権者はこの連立に呆然だ>と一面に踊る。ライバルとみなされる「夕刊フジ」は、56年の歴史に幕を閉じ、今年2月6日に休刊したが、「日刊ゲンダイ」は、なぜイエロージャーナリズムが悪い? と意気軒高だ。
 作家の五木寛之さんは、創刊1号から「流されゆく日々」を執筆、10月27日から51年目に入ったことを記念して、漫画家ちばてつや氏と特別対談を行っている。

◆「小学一年生」創刊100年 世相反映した付録の歴史
 1925年に創刊し、今年100周年を迎えた小学館の学習雑誌「小学一年生」。やさしい文章とわかりやすい図解で、子どもたちの学びと好奇心に応え、ピーク時には発行部数128万部を記録した。小学校に入学するピカピカの1年生が読んで楽しい雑誌。毎号、ワクワクするふろく、人気キャラのまんが・パズル、旬の話題など、さまざまなテーマの記事を収載。11月号には創刊&昭和100年━節目記念の付録<組み立て・くろでんわ>をつけている。

◆「オール読物新人賞」休止、藤沢周平ら人気作家を生む
 文芸春秋は、伝統ある公募文学賞「オール読物新人賞」を今年度の第105回で休止すると発表。同賞は優れた短編小説に贈られる文学賞で、1952年の創設。藤沢周平など多くのエンターテインメント系の人気作家を生んだ。
 1962年からはミステリーを対象とした「オール読物推理小説新人賞」も実施し、赤川次郎さんや宮部みゆきさんらを輩出した。2021年の第101回からは、歴史・時代小説に特化した賞になっていた。

◆政府の書店支援の取り組みに対する「評価」70%、期待が募る
 読売新聞社が「秋の読書推進月間」に合わせて実施した、全国世論調査の結果が出た。政府が書店の経営や新たな出店を支援する取り組みを「評価する」と答えた人は70%、「評価しない」の27%を大きく上回った。
 政府は6月、街の書店を地域の重要な文化拠点と位置づけ、減少に歯止めをかける「書店活性化プラン」を公表した。書店の経営効率化を支援し、自治体や図書館を含めた連携を促す取り組み。
 具体的な支援策に関しても、日本の文学作品がもっと世界で知られるよう、外国語への翻訳や海外発信を支援する政府の方針を「評価する」は86%。絵本の知識や読み聞かせの技術を身につけた「絵本専門士」が、子どもの読書活動を推進するために活躍することに「期待する」は87%に上った。

◆「読書の秋の国内最大級イベント」始まる
 「本との新しい出会い、はじまる」をスローガンに今年も「BOOK MEETS NEXT」が始まった。書店が減少し、読書離れが進む時代の中でも、「本が好きな人」をこれまで以上にワクワクさせ、「本との距離感が遠い人」には魅力的な出会いを届けるため、出版業界が一丸となって実施する。今年で4回目を迎える。
 開催期間:2025年10月25日(土)〜11月23日(日) 主なイベントは以下の通り
 BOOKスタンプラリー:全国3千の書店ポスターに表示のQRコードを読み取り、LINEアカウントを友達追加するとスタンプがもらえる。スタンプを貯めると本にちなんだ商品に応募することができる。
 「最強王図鑑」シリーズ店頭フェア:「最強王図鑑」シリーズ(書籍・雑貨)を1冊買うと1枚もらえる。どのデザインが当たるかは引いてのお楽しみ! コレクションしたくなるキラキラカードくじ(全10種、うちレア2種)。配布期間:2025年11月7日(金)〜なくなり次第終了。

◆電通3期連続の赤字見通し━AIで代理店が不要な時代に
 2025年12月期は193億円の最終利益を予想していたものの、660億円もの損失見込みに一転。2023年も赤字の上に、2024年12月期は1922億円もの損失を出していた。その結果、3期連続の赤字見通しとなった。その苦戦の主要な要因はアメリカ事業で、人員削減などに必要な構造改革費用、さらにのれんの減損損失が甚大な影響を与えている。
 アメリカではデジタル広告を中心に広告代理店を通さないインハウス化が進み、その背景にはAIの浸透によって、自前での製作が容易となり、コスト削減へシフトしている。日本の広告業界の未来も暗示しているようだ。
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2025年11月01日

【月刊マスコミ評・出版】矛盾と危機が臨界点を超えた自民党政治=荒屋敷 宏

 「とても首班指名で『高市早苗』と書くことはできない」(公明党の斉藤鉄夫代表)。10月10日、筆者が『高市早苗のぶっとび永田町日記』(サンドケー出版局、1995年)を読んでいる最中に自公連立解消のニュースが飛び込んできた。

 自民党総裁選前から極右雑誌の高市氏応援キャンペーンの過熱ぶりは異常だった。『WiLL』11月号の高市早苗氏「日本を強く豊かに 初の女性総理誕生へ!」では、「特に、自民党の選挙公約に『スパイ防止法』の文言が入った意義は大きい」と、統一教会と同じ政策を掲げたことを自画自賛した。『Hanada』では文芸評論家の小川榮太カ氏が「高市早苗戦闘宣言」で「高市早苗よ、政策暴走族として花と散れ」と時代錯誤の檄を飛ばしている。世論と乖離した議論が痛々しい。同誌の公明党前衆議院議員・伊佐進一氏による「自公連立解消!?公明党は高市さんともやっていけます」との太鼓判は何だったのか?

 『サンデー毎日』10月19・26日合併号で倉重篤郎氏は「高市早苗新総裁に3つの壁」として衆参両院での少数与党という壁、トランプ米国の壁、安倍政治がもたらした政治・経済の歪みという壁を鋭く指摘した。しかし、公明党の連立解消という壁はベテラン政治記者の予想を超えていたようだ。
 同誌の鈴木哲夫氏の「とんだ茶番劇だった自民党総裁選 今から始まる多党化戦国時代」の記事が参考になる。「公明から手厚く選挙協力をしてもらっている自民党議員は、公明の意向に沿って林氏に入れた者もいる」(自民党2回生議員)と、公明党は自民党総裁選で林芳正氏を応援していたとの証言がある。
 選挙では自公政権を批判しても、選挙が終わったら自民と組む政治状況が続いてきた。野党がまとまって政権交代をすべきだという声も多くなっている。

 日本共産党の志位和夫議長が『サンデー毎日』で倉重氏のインタビューに答えている。「『戦争国家』の暴走を許さない」との見出しがついているが、安保法制10年をどう総括するか、参院選結果と政治の排外主義化をどう見るか、マルクスブーム再燃の中で資本論から何を学ぶかの三つの問いかけが面白い。「自民政治には大企業・財界中心と対米従属という二つの歪みがあるが、その矛盾と危機が臨界点を超えた状態だ」との志位氏の話に耳を傾けるべき時代になってきたのかもしれない。 
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年10月25日号
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2025年10月06日

【出版界の動き】ガンバレ! 出版振興に向けての地道な取り組み

◆8月期・紙の出版物630億円(前年比5.0%減)
 その内訳は、書籍365億7400万円(同0.1%減)、雑誌264億7900万円(同10.9%減)。雑誌では月刊誌が同8.4%減、週刊誌が同23.8%減。返品率は書籍が36.6%(同1.2%減)、雑誌は46.3%(同0.3%増)。
 書店店頭での売れ行きは、書籍が5%増で、文芸6%増、文庫本8%増、ビジネス書11%増、学参5%増、児童書4%増、新書本4%増と、主要ジャンルすべてで前年を上回った。雑誌は定期誌が3%減、雑誌扱いコミックスが8%減、ムックは15%増。
 なお、出版科学研究所による上記の販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。電子出版市場は1月と7月の年2回発表される。

◆書店なし上郡町とトーハンが協定
 書店がない自治体の解消を目指すトーハンと兵庫県上郡町が、書店の創業支援や地域の活性化にむけ、ともに取り組む「地域連携協力に関する協定」を結んだ。トーハンによると県内では初めて、全国では7例目になるという。
 上郡町内では2018年に店舗を構える書店が姿を消し、「無書店自治体」になった。図書館はあるが、町民からは「本を買う機会がほしい」という声が根強い。上郡町とは昨年春から話し合いを始め、トーハンが町主催の催しに移動販売車を派遣するなど、関係を築き上げてきた。協定では、教育、地域の活性化、産業振興、書店の創業など7項目で協力する。

◆“本のまち”八戸「ブックフェス」盛況
 「本のまち」を掲げる青森県八戸市で、本に親しむ毎年恒例のイベント「ブックフェス」が
9月最終日の土日に実施された。全国でも珍しい公営の書店、八戸ブックセンターが毎年開いている。市の中心部にあるブックセンターと近くの市の施設などに、市内外の書店が古本を販売するコーナーや、全国の小規模な出版社がおすすめの本を展示・販売するコーナーが設けられた。訪れた人たちは、本を次々に手に取って買い求めた。

◆神保町は<世界で最もクールな街>
 世界各地の活気に満ちた魅力的な街を選出する、タイムアウトの「世界で最もクールな街」ランキングが発表された。2025年版では、東京の神保町が堂々の第1位に輝いた。
 この調査は、タイムアウトの現地ライターや編集者による広範なネットワークを通じて得られた地域の知見と内側からの専門的視点に基づき、世界各都市の街を評価したもの。基準となったのは、文化・コミュニティー・住みやすさ・ナイトライフ・飲食店・街のにぎわい、そして「今らしさ」といった要素である。その結果、神保町は「世界で最もクールな街」という枠を超え、「世界で最も活気にあふれた街」として頭角を現した。
 東京の知識人たちに何世代にもわたり愛されてきた神保町は、歴史ある大学街であり、書店好きにとっての楽園だ。東京のビジネス街からほど近い距離にありながら、独特の雰囲気を保っている。最大の魅力は約130軒に及ぶ古書店で、「小宮山書店」や「北沢書店」といった老舗もその中に含まれる。これらの店の多くは、昔ながらの喫茶店やカレー店と同じ建物に入った、やや古めかしい低層の雑居ビルに軒を連ねている。

◆「次にくるマンガ大賞 2025」1位は‥‥
 「次にくるマンガ大賞」は、これからのブレイクが予想される作品を発掘し紹介するという趣旨で2014年に創設された賞。一般ユーザーからの投票で大賞が決定する。このほど結果が発表された。コミックス部門の1位は、西修原作による宇佐崎しろ「魔男のイチ」、Webマンガ部門の1位は住吉九「サンキューピッチ」が受賞。
 「魔男のイチ」は、山暮らしをしている狩人の少年・イチを主人公に描く“魔法ハンティングファンタジー”。週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中。「サンキューピッチ」は、少年ジャンプ+で連載中だが、「ハイパーインフレーション」の住吉が描く野球譚。1日3球しか全力投球できない天才投手と、野球部員たちの物語だ。

◆ナンバーナイン、漫画出版に参入
 9年ほど前に創業したナンバーナインは、すべての漫画を電子コミック配信するデジタル配信サービスを業務としてきたが、「漫画で待ち遠しい未来をつくる。」をモットーに掲げ、自社で発掘・育成するオリジナル作品の価値を最大化するため、紙書籍出版事業へ新規参入する。新レーベル「No.9 Comics」「Blend Comics」を創刊し、第一弾5作品を10月28日に発売する。
 今回の紙書籍出版事業への参入は、デジタルでヒットした作品や有望なクリエイターの活躍の場をリアル書店へと広げ、デジタルとリアルの両軸で作品を盛り上げていくことを目的としている。

◆「陰謀論的思考の傾向」に差出る
 スマートニュース社の社内シンクタンク・スマートニュース メディア研究所は、日本国内の政治的・社会的分断や、人々のメデイア接触状況を概観する「スマートニュース・メディア価値観全国調査」(郵送方式)の結果を公表した。
 主なニュース情報源に、ユーチューブなどの動画系SNSを多く利用している人ほど、陰謀論的な思考をする傾向があり、新聞を多く利用している人は逆の傾向があるという。調査では陰謀論的思考の強さを測るため、5項目の内容について、どの程度正しいと思うかをそれぞれ5段階で尋ねた。
 「思う」と答えた割合が、最も高かった項目は「一般の人には決して知らされない、とても重大なことが世界で数多く起きている」の87%、最も低かったのは「政府当局が、すべての市民を厳重に監視している」の22%だった。
 ここには主なニュースの情報源として、ユーチューブ、インスタグラム、TikTokを週4日以上見ると答えた人、すなわち動画系SNSでニュースを視聴する頻度が高い人ほど、陰謀論的思考が強い傾向がみられた。一方、主に新聞を週4日以上見ると答えた人では、陰謀論的思考が薄かった。
 陰謀論的思考は、社会的孤立や生活上の不満と結びついている可能性があり、特定の層に限られた現象ではない。特に動画プラットフォームでは、視聴履歴に基づいて感情的・扇情的なコンテンツがアルゴリズムによって優先的に表示されやすく、それが陰謀論的な認識を強化する構造になっている可能性がある。
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2025年09月28日

【おすすめ本】萩原 健『ガザ、戦下の人道医療援助 』破壊しつくされる日常 その中で命を救う活動= 猫塚義夫(北海道パレスチナ医療奉仕団団長)

 イスラエルによるガザの軍事侵攻は、2年弱の 間に6万人の犠牲者と14万人の負傷者を生み出した。瓦礫と化したガザでは、多くの餓死者が出るなど、多面的なジェノサイドが進行中だ。
 著者は運動体としての国境なき医師団(MSF)に参加し、人道医療援助の活動を実践してきた。
 MSFには、医療者が中心と思われているが、その医療支援を実行するためには、水・食料や医 薬品の確保と組織の適切な運営が活動の前提である。また現地での医療団体や公的医療機関・行政との折衝も必要不可欠である。その大切な任務を遂行するのがMSF緊急対応コーディネーターである著者の働きである。

 本書での臨場感ある交渉場面は、パレスチナで医療支援活動を行う私たちに、大きな示唆を与えてくれた。また戦時下での状況判断やMSFの連携・調整活動、現地社会 との関係性構築の成否が使命達成に最重要なことがわかる。
 一方、私たち医療者の活動には国境はない。私の周りの地域医療とガザでの戦下での緊急医療には、状況の違いこそあれ理念的には連続性があるのだ。

 本書を通して、医療者以外からも、MSFなど人道支援の活動へ参加してくれる人が増える契機になることを、私は願ってやまない。
 著者も言うように、ガザ停戦と人道支援の活動は、すでに人道的視点の枠を超えて、政治の問題となっている。日本政府には外交の底力を示してほしい。そして私たちには「ガザ停戦」の声をい っそう強くすることを、著者は願っているのである。(ホーム社 2000円)
「ガザ、戦下の人道医療援助」.jpg
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2025年09月27日

【お知らせ】出版研究集会:出版をあきらめない━「紙の本」にこだわる・手放さない理由は

 デジタル化を基礎に版権ビジネスでの収益化に成功し、最高益を更新している大手出版社がある一方で、紙の出版物を柱に置く中小零細出版社の多くはデジタル化を進めつ つも、紙の雑誌の下げ止まらない売上減少などによって、きびしい経営を強いられている。またこの10年間で書店の総店舗数が3割減少し1万417店、2024年には書店ゼロの自治体数は493(28.2%)に増えている。  
 戦後80年、治安維持法100年の今年、平和な社会だからこそ言論・出版・表現の自由を存分に行使し、旺盛に出版活動してきた原点に立ち返り、出版の意義を再発見するとともに、出版産業のこれからを展望する。

期間: 10月2日(木)〜10月30日(木) 18:30〜20:30
会場: 出版労連会議室&Zoom
参加費:A 通し券:2,000円(全体会+全分科会のすべてに参加できます。アーカイブ視聴あり)
    B 特別分科会券:1,000円(10月4日特別分科会に参加できます。)
内容-日時・会場:チラシ参照
https://syuppan.net/s24/wp-content/uploads/2025/09/51syukken_akiramenai.pdf
申込方法:Peatixでチケットをご購入ください。https://51syukken.peatix.com/
問い合せ:電話03-3816-2911/メール:51syukken@syuppan.net

★概要は以下の通り。なお開始時間および会場は18:30〜20:30 出版労連会議室&Zoom
全体会:10月24日(金) 「紙の本」にこだわる・手放さない理由
講師 下中美都さん(一般社団法人出版梓会理事長/平凡社会長)
分科会@:10月2日(木) メディアとしての出版の役割
講師:美浦克教さん(共同通信/元新聞労連委員長)+講師:熊谷伸一郎さん(地平社・代表) 
分科会A:10月10日(金) KADOKAWA・BECプロジェクトの全貌
講師:五十嵐健一さん(KADOKAWA BEC推進部 部長)
分科会B:10月17日(金) 地元書店と連携した図書館運営
講師:中沢孝之さん(福島県白河市立図書館館長)★オンラインで講演の予定★  
分科会C:10月30日(木) デジタル教科書とAI活用の危険
講師:酒井邦嘉さん(東京大学大学院教授・言語脳科学者)
特別分科会:10月4日(土)13:00〜15:00 Workshop 「あなたもハマる紙の世界」
講師:小川亮さん(京橋紙業執行役員)

主催 出版労連・第51回出版研究集会実行委員会
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